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ヒロミ ヨシイ

アートの新しい波が来つつあります。

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ギャラリストインタビュー


hiromi yoshiiオーナー兼ディレクター 吉井仁実氏インタビュー


hiromi yoshii
オーナー兼ディレクター
吉井仁実氏

*写真はアーティスト・エンライトメントによる吉井仁実氏ポートレートです。

−−ギャラリー・コンセプトについて教えてください。
主に9.11以降の国内外のアーティストを扱っています。ギャラリーを始めたのは2001年ですが、その頃にはもう90年代のアートが成熟し、もう次の新しい波が来つつあるという予感がしていました。そこへあの9.11の事件が起こった。あれが20世紀と21世紀の境目ではないかと思ったのです。90年代がプライベートなことをテーマにした作品が多かったが、あの出来事以降、出てくるアーティストとそこで表現される事柄が確実に変わってきています。そういったところにフォーカスをあてていくのが私の仕事ではないかと思っています。
−−海外の作家はどんな人を取り扱っていますか?
マイアミ、デラ・クルス氏のオープン・ハウス1
マイアミ、デラ・クルス氏のオープン・ハウス2
 マイアミ、デラ・クルス氏のオープン・ハウス。
例えば、アーミー・デッカというアムステルダム出身のアーティストがいます。彼女は私のギャラリーの取り扱いのうちでも最も人気の高い作家の一人ですが、前回2005年の4月に行った展覧会では展覧会初日の午前中に完売してしまったほどです。2007年にも展覧会を予定していますが既に予約が入っている状況です。彼女の作品は、ニューヨークのダメレオテラスをはじめ海外で数軒扱っているところがありますが、今はどこも売る品物がないと言われています。
他に、アシューム・ヴィヴィッド・アストロ・フォーカスやクリスチャン・ホルスタッドといった作家も、海外での評価が日増しに高くなっています。2人ともホイットニー・ビエンナーレ(2004年)にも選ばれています。先日、全米3大コレクターの一人、マイアミのデラ・クルス氏のオープンハウス(注:コレクターが自らのアートコレクションを一般に特別公開すること)が行われましたが、彼は10年に一度、コレクションの一部のコンセプトをリニューアルすることで知られています。そしてこれまでメインのフロアを飾っていたガブリエル・オロツコなど90年代を代表するアーティストたちが、今回行ったらそれがクリスチャン・ホルスタッドやアシューム・ヴィヴィッド・アストロ・フォーカスなどに変わっていました。
−−作家の情報はどこから得ているのですか?
日本で「アート」とされる根拠はまだまだ欧米の基準に偏っていると思います。しかし「日本の美術」と考えたときに、「アート」と「そうでないもの」の中間地点(ボーダーライン)の表現に、日本独特のものがあるのではないかと考えています。だからこそ、私たちが「ボーダーラインぎりぎり」を次々紹介していくことによって、日本のアートシーンがもっと豊かになるのではないかと思います。
──Q4.ギャラリーとしては、どんなスタンスで活動していますか?
さまざまですが、今は『K48』という雑誌は、アート好きならチェックしておいて損はないでしょう。世界中のギャラリストがここで紹介される若いアーティストに注目していますから。もともとK48は、スコット・ハグという若いキュレーターが卒業制作のときにつくった自主制作本。しかしそこに載っていた無名の若いアーティストたちが、センスが良いというので若いギャラリストのあいだで話題になりました。今ではNYの若手ギャラリーが現在推す作家のうちで、この『K48』出身の作家は少なくありません。 (注:『K48』は国内書店ではNADiffとラムフロムで取り扱いがあります。hiromi yoshiiからも購入可能です)
−−hiromi yoshiiで扱っている日本のアーティストは、海外ではどのような評価を受けているのですか?
日本でも非常に良い売れ行きですが、世界のアートフェアでも評判は良いですね。また今年6月には、NYのジェフリー・ダイチ(バスキア、ジェフ・クーンズや森万里子を扱っていることで有名なギャラリー)で、私がキュレーションを手がけるグループ展を行うことになっています。そこでうちで取り扱っている日本人作家の中から、榎本耕一、東義孝、松原壮志朗、泉太郎他をアメリカの人々に紹介する予定です。
−−エディションものを専門に扱う「HIROMI YOSHII EDIITION」も営まれていますね。
こちらはhiromi yoshiiとは、またアーティストのラインナップが異なります。もともと親しくさせていただいていた杉本博司さんから、工房があるんなら(注:HIROMI YOSHII EDITIONは横浜・鶴見に版画工房を所有している)何か一緒につくらないか、と言われたのがきっかけでした。ですから今回タグボートに出品している杉本博司さんの「陰翳礼賛」が、その一番初めに制作したエディションなんですよ。その後、森万里子さんや、カレン・キリムニック、アレッサンドロ・ラホ、束芋など、国内外の数多くの作家と一緒にオリジナル・エディションを手がけました。アーティストと直に制作に関わって、作品を一緒につくっていけるところがHIROMI YOSHII EDITIONの一番の醍醐味ですね。
−−それ以外の「MAGICAL」、「T&Gアーツ」といった活動についても教えてください。
「MAGICAL」は、hiromi yoshiiが以前あった六本木のスペースを使って行っている、若いアーティストたちに発表の機会を与えていく場です。岡田聡(コレクター、精神科医)、市原研太郎(評論家)、ヒロ杉山(アーティスト)、後藤繁雄(編集者)の4氏に、私を加えた5人で運営しています。企画展を行う以外に、今後は雑誌などもつくっていきたいと考えているところです。
「T& Gアーツ」は、テイクアンドギブ・ニーズの野尻社長との共同で2005年夏から始めたギャラリーです。この3月17日からアーティスト、サム・テイラー・ウッドが来日し話題作「Crying Men」(ハリウッド俳優28人の“泣く姿”を収めた写真シリーズ)の展覧会をここで行います。
−−タグボートをご覧になられている方々へのメッセージをお願いします。
ここ2、3年でアートのマーケットもダイナミックに変わってきました。そしてまた、日本の中でアートの購買層も広がってきています。野尻社長や青年実業家などもアーミー・デッカを買われたりしていますが、そこで言われたのは「これまでもアートを買うことに興味は持っていたが、どこから入ったらいいかがわからなかった」という言葉。だから我々ギャラリストがまずすべきこととは、どれだけきちんと見せていく場をつくっていけるか。そうした仕掛けを積極的に行っていくことで、マーケットをつくっていきたいですね。 (インタビュー収録 2006年1月24日 清澄白河・hiromi yoshiiにて)