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タカ・イシイギャラリー

写真で現代美術を語る!「日本の写真マーケットが成熟するのは、まさにこれから」

いちおしアート

ギャラリーガイド

ギャラリストインタビュー


日本の写真マーケットがファインアートとして成熟していくのは、まさにこれからでしょう。


タカ・イシイギャラリー
石井孝之氏
−−ギャラリーをはじめて最初に行った展覧会は何でしたか。
ラリー・クラーク(※)の個展です。そのオープニングのときに荒木経惟さんが来てくれたのですが、「いいギャラリーだね」と言ってもらって、それがきっかけで私のギャラリーで展覧会をしてくださることになりました。タカ・イシイギャラリーとして3回目に行った展覧会が荒木さんの展覧会で、「墨汁綺譚」というタイトルでした。これは同名の画集にもなっていますが、以降、荒木さんはこれまでに10回の個展を行っています。
(※ ラリー・クラーク Larry Clark 写真家/映画監督。1943年オクラホマ生まれ。アメリカのティーンエイジャーを題材に、セックス・ドラッグ・暴力を鋭く描写した作品が多い)

ラリー・クラーク 「Untitled」
1973年 27×35cm、B & W print
Teenage Lust Portfolio

荒木経惟 「墨汁綺譚」展
インビテーション・カード 5 Nov. - 17 Dec, 1994, Taka Ishii Gallery

−−ギャラリストになる前は何をしていらっしゃいましたか。
当時はロサンゼルスに住んでいて、現地でアート作品を買いつけて日本のアート業者向けに卸す仕事をしていました。作品を売って得たお金は、ほとんど自分で作品を購入するのに使っていましたね。若いアーティストのスタジオに行き、直接交渉して新作を売ってもらったりしていました。
−−いつ頃から海外にいらしたのですか。
1982年、高校を卒業してすぐです。最初ファッションを勉強するつもりで渡米したのですが、途中で専攻を変えてペインティングを学ぶコースに進みました。ロサンゼルスにあるOtis College of Art and Designというアートスクールに通っていました。
−−ニューヨークでなくロサンゼルスを選んだ理由は?
サーフィンが好きだったので、海に近い方がいいと思ったのが理由です。渡米直後、最初のホームステイ先も、ハンティントン・ビーチという、サーフィンで有名なビーチのすぐそばのところをわざわざ選んだくらい。 今でもサーフィンは千葉の外房などに出かけていって時々しますが、私のギャラリーの取り扱い作家の中でもダグ・エイケンはサーフィンが好きなので、彼が来日したときには一緒に行きますね。逆に、彼はロサンゼルスの、ベニスビーチのそばに住んでいるので、私が家に行ったときには一緒に波に乗るんです。
−−タカ・イシイギャラリー取り扱い作家についてお聞きします。どんな基準で作家を選ばれているのですか。
特にコンセプトというのがあるわけでもないですが、ちょっとブラックユーモアを持った作家を選ぶ傾向がありますね。どこかひねくれたところを持った作家が好きなのは、私自身そういう性格だからでしょう。それから、身体性とか生活のこととか、自分自身のことを作品として表現する人に魅力を感じます。逆に、政治的なメッセージを与えるようなものは嫌いなので、そういう作家は扱わないですね。
−−写真作家を多く扱うギャラリーという印象が強いですが。
たまたま私がギャラリストとして仕事を始めた90年代のはじめが、写真がファインアートと融合してその境がなくなってきた、写真の作品がちょうど面白くなり始めた時期だったのです。それで自然と写真の展覧会が多くなったのですが、別に写真にこだわっているわけではありません。ジャンルで分けるつもりはないです。
−−今回、タグボートには荒木経惟、森山大道をセレクトしていただいていますが、この2名を選んだ理由を教えてください。
2人とも著名な作家ですが、オリジナルプリントの作品が出回っているのはほとんど海外で、意外に日本ではまだそれほど流通していません。日本では写真のマーケットが成熟するのはこれからです。したがってまずはこうした巨匠から紹介していって、それから段々と若い作家を出していければと考えています。
−−海外マーケットといえば、アートフェアにも積極的に参加されていますね。
だいたいいくらくらいの予算で、どういう傾向のものが好きか。それを伝えていただけるとこちらもその人にあわせたご提案がしやすいです。たとえば、あまりお金はかけられないがどうしてもこの作家で買えるものが欲しいということであれば、写真の場合、エディションの多いものなら20万円以下からあります。荒木さんを例に挙げると、ポラロイドの作品は3万円から、またプレートサイズの小さなものなら、夫人の陽子さんがボートに乗っている様子を撮った有名な写真や、「いとしのチロ」のカットでも、20万円台から買うことができる。森山さんでもオープンエディション(※エディションナンバーがつかない写真作品のこと)なら15万円と、そんなに高くない。最初は安いものからちょっとずつ集めていって、それからお金をためて段々にエディションの少なくて大きな作品を買うというのもひとつだと思いますね。
(インタビュー収録 2006年9月7日/タカ・イシイギャラリーにて)