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東京画廊

今、アジアを代表する現代美術画廊として、世界的にも注目を集めている画廊。最先端のアジアンのアートを手に入れるならここです。

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東京画廊/B.T.A.P. ディレクター 田畑幸人氏
東京以外に2002年から北京でもギャラリー「B.T.A.P.(Beijing Tokyo Art Projects)」を構えている東京画廊のディレクター、田畑幸人さんに話を聞きました。 
−−北京はどういうきっかけで画廊を出されたのですか。 
89年頃から、中国には面白い作家がいるということで、東京画廊で紹介を始め、95年に上海で画廊をつくろうと思いましたが、その当時は時期が早過ぎたのか、なにしろ買い手がいない状況だったので、結局そのとき上海に出店することを断念しました。
しかし、その後2002年になって、友人でもある中国人アーティスト、黄鋭(ファン・ルイ)から一緒に北京の798というエリアでスペースを借りないかと持ちかけられました。早速場所を見に行ったところ面白い工場だったので借りようかという話になったのですが、「Timezone 8 Art Books」というそのエリアにあったアート・ブックショップのオーナーが「もっと面白い場所があるよ」と。紹介されて行ってみると、とにかく大きくて、広さは400平米はありました。どうしようかと思っていると黄鋭から「中国は改装にかかるお金も安くてできる。借りよう」と言われて、結局、半分を彼のアトリエ、もう半分をうちがギャラリーとして使うことになったんです。
−−798地区は今や北京でもアートギャラリーが最も集まるメッカとして知られる場所ですよね。
ええ。今では北京でも一番のギャラリータウン、ここだけで60軒のギャラリーが集まっています。しかももう私のところなんて小さい方になってしまった。400〜2000平米のギャラリーなんてざらですから。この1年半ですよ、急激に変わったのは。この間に中国のアートマーケットはとんでもなく拡大しました。今では資本を持った人たちがこぞって世界中から入ってきている。実は海外から798に出たギャラリーはうちが最初なんです。というかその頃は今と違い、回りにギャラリーどころか何もなかった。何しろまだほんの2年前までは工場街のオーナーは不動産屋にまるごと売り払って一帯をマンションにするつもりでいたくらいですから。しかし現在では、どんどん画廊ができ、アーティストも住み始めて、レストランがつくられて、一気にトレンドスポットになってしまいました。
−−2000平米のギャラリー! 日本では想像もつかないです。
それどころではありません。「アラリオ北京」などは5000平米もありますからね。アラリオは百貨店、映画館、バス会社などを傘下に持つ韓国の大企業ですが、会社で儲けたお金を今全部中国に注ぎ込んでいます。売れっ子のアーティストに多額の現金を目の前で積んで、「これで年間10点描いてくれ」と言うんですよ。若いアーティストの作品だって、これで買い取るから、と言って大金をポンッと渡す。ここにかなうところはないですね。
−−中国国内のアートマーケットがすごいという噂は聞いていましたが、想像を遥かに超えていますね。
本当に向こうに行くと、日本だけが市場で取り残されていると感じますよ。今は韓国もすごいですしね。インドだってそう。今や倍倍ゲームでインドの作家の値段が上がっている。というのも、もう欧米が新しいものを生み出せる時代が終わってしまったんですよ。それでそれ以外の国のアートに注目が集まっている。その筆頭格が中国なわけです。今じゃ作品の値段が億を超えている作家が何人もいますから。張暁剛(ザン・シャオガン)、岳敏君(ユエ・ミンジュン)、うちで扱っている蔡国強(ツァイグオチャン)…。2番手くらいの作家でも普通に8万ドル10万ドルしますから、それくらいはもう「高くない」がこちらの感覚ですね。
−−尋常ではない値上がりですね。
本当にそうです。今回うちで個展を行った俸正杰(フォン・ジョンジェ/2006年9月8日-9月30日)だって、2002年に私が15万円で買った作品が今では300万円。1年前に買った大きい作品が当時180万円くらいだったのが、今では900万円ですよ。そもそも貨幣価値も違うんです。5000万円だったら3.5億円くらいの価値。だいたい7倍くらいと考えてください。
−−そうなるとアーティストも億万長者ということになりますが。
知り合いの中国人アーティストにしても、2002年に私が北京でギャラリーをオープンさせたときはまだ本当に満足に食べるお金もなくて、ご飯をおごってあげていたくらいなのに、去年1年の売上が億を超えるんですよ。それで家を買って、車3台買って、3000平米のアトリエを買って…。当時からしたら信じられないですよね。
−−この現象はいっときのアートバブルではないかという声もありますが、いかがですか。

確かにここまで勢いが早いとは思わなかったのは事実です。しかしこれはバブルというスケールの話ではないです。北京で見ている者の実感としては、まだこれでも「始まり」に過ぎないと感じます。来年には798にウーレンスというベルギーの財団が5000平米で美術館を建てることが決まっているし、またグッゲンハイムやポンピドゥーも美術館建設を視野にずっとこの辺りで場所を探している。また、パーティーをやったって多くは欧米人、あと中国の大金持ちです。今中国アートの値段が上がっている理由の一つは、地元の作家を欧米人が買い漁っているのを阻止するために中国人が買い始めたことにあるんです。ヨーロッパ、アメリカ、台湾、韓国、それから最近は中近東のお金持ちも入り始めているし、本当に世界中から集まってきています。

−−まだまだ世界中で買い手が待っている状態、ということですか。
そうです。ちょうど一昨日北京から帰ってきたのですが、向こうではアートバーゼル(世界でNo1と言われるスイスのアートフェア)が中国と組んで何かをしよう、ということで催されたパーティーに招かれたからです。招待したのはアメリカ系華僑のハンデル・リー、彼は香港にビルを買ってその一棟まるごとをギャラリーにしています。
−−ついていけません(笑)。しかし東京画廊では中国、韓国などアジアのアーティストが30名以上と多いですが、一方で日本の若手アーティストはどうなのでしょう。そういうアジアのマーケットに入っていける可能性は。
中国と日本を比べて、日本の作家がクオリティの上で負けているとはまったく思いません。ただ値段は10倍違うわけです。だから向こうのマーケットに持っていこうと。今、香港クリスティーズがアジアの現代アートを3年前から本格的にやっているのですが、そこに私の画廊の日本の若手、たとえば西澤千晴、金田勝一、松浦浩之といった作家たちを紹介しようとしているところです。先日も西澤千晴がエスティメートの3倍近い750万円相当で落札されました。また、2007年からは北京にあるうちのギャラリーで大々的に日本人アーティストを紹介していこうと考えています。金田勝一は鮫のレーシングカーのオブジェが6000ユーロ(80万円相当)なのですが、もう在庫がない状態、西澤千晴もほとんど売れてしまって新作を待っているところですが、今言えることは彼らの作品も手近な値段で買えるのは今がもう最後ということです。
−−アジアというマーケットが存在感を持ちはじめて、大きくアートの市場構造は変わり始めていることを実感しますが、今後どうなっていくと思われますか。
10年後、もしかすると欧米とアジアの力関係ががらっと変わっているかもしれない。今スイスのバーゼルアートフェアと言われているけれども、そのときには北京のバーゼルと言われている可能性だってある。クリスティーズだって、このまま行ったらNYのクリスティーズでなく香港クリスティーズが中心になる日が来るかもしれない。世界のアートマーケットの本拠地が中国になるということが十分にありうる、と私は思いますね。(インタビュー収録 2006年9月14日/東京画廊にて)