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バーゼル・アートフェア レポート

  2004年6月15日 (1日目)スイス・バーゼル到着。早速プレスプレビュー。

前日夕刻バーゼル入り、翌朝11時からのプレス・プレビューに一番乗りしました。
このプレビューは招待者のみの集まりであるにも関わらず、開場前から入口には人だかりで、良い作品をゲットするぞという熱気でみなぎっていました。見るからにお金持ちっぽい優雅な人々や、気合の入った感じのアートディーラーなど、会場内の人々を観察するのも非常に面白いです。

会場は1、2Fにわかれたメイン会場と、「Art Unlimited」とタイトルのついた、通常のブースには展示できないような巨大インスタレーションや映像作品などを集めた別会場の2つで構成されています。

1Fは前回の小山登美夫氏のコラムにも出てきたGagogianやCheim&Read、モダンアートのBeyelerなど大御所画廊が並び、2FにはMetro PicturesやSadie Coles、Victoria Miro、Andrea Rosenなどさらにエッジな画廊が集まっています。小山登美夫ギャラリーやシュウゴアーツといった日本勢も2Fでがんばっていました! 数は少ないですがPace PrintsやParagon Press、Brook Alexanderなど、タグボートでもお馴染みのエディションを扱う画廊のブースも2Fの1区画にまとめられています。

とにかくすごい物量。圧倒されてしまって知恵熱が出そうなほどでした。一日中、20時過ぎまでフェア会場を歩き続けたにも関わらず、全体の半分も見られませんでした!
とは言いながら、草間彌生の初期の作品をあちこちのギャラリーで目にすることによって、世界のアート市場で安定した地位をもつ草間彌生というアーティストの姿が実感値をもって浮かび上がってくるといったように、新人発掘も含めて、現在進行形の売買現場の傾向を肌で感じることができる良い機会だと思いました。
3〜4年前に比べると映像の作品が減って、ペインティングが増えているということです。個人的にいいな! と思うものは写真の作品が多かったです。例えばGalleri RiisでみたEline Mugaasなど。特に北欧の作家の写真作品にきれいなものが多かったので、寒い場所の硬質な感性と写真というテクニックがあうのかも、などと思いました。Luisa Lambrieの建築物を撮った写真も、7000ユーロはしますが、非常に美しい。
それにしてもコレクターW氏の情報力と眼力はさすが玄人としか思えないものがあり、脱帽しました。一緒に見て歩くなかで、様々解説までいただいて非常にいい勉強になりました。(この場を借りて、ありがとうございます!) また、W氏のイチオシ作品はBTの今月号で表紙を飾る作家です。

Art Unlimitedの会場では、がらんとした巨大な空間に、大型インスタレーション作品が展示してあります。ミュージアムと決定的に違うのは、キャプションに“price on request”と記載されているところでしょうか。村上隆さんの作品は今回非常に少なかったのですが、かわって青島千穂さんの巨大壁画がありました。三宅信太郎さんもスィートさんが沢山描かれた「イノシーのおうち」で制作をするパフォーマンスをしていました。会期中ずっと住んでいる(?)そうです。
 
バーゼル市内の風景 緑いっぱいでのどかです



バーゼル・アートフェア 会場前




“イノシー”姿の三宅さん。一日の仕事を終えたところです。お疲れ様。


  2004年6月16日 (2日目)またまたアートバーゼル会場へ

朝はModern CultureのBarryさんとブレックファーストミーティング。
エリザベス・ヤングの作品をさらにオススメしてくれるということで話が盛り上がりました。近々ヤングの新着作品をご紹介できそうです。

フェアは11時にオープンなので、それまでバーゼル現代美術館を見学。Metro Picturesプレゼンツの展覧会『Loise Lawler and Others』を開催中でした。
その後は、その日も11時から19時までフェア会場を歩き倒しました。ヨーロッパは夏時間で暗くなるのが22時頃と遅く、アクティヴになれる気候です。会期中は画廊やフェアの主催者や、スポンサーなどが企画するパーティーが連日開かれていて、フェアのスケジュールを見るといろんなパーティーやイベントの予定が記載されています。毎晩23時から深夜3時まで、ひっきりなしにパーティーが入っているのにはさすがと思うばかりでした。
アートフィルムのショーも毎晩上映されていて、いくつか見た中では、シュウゴアーツ制作のCandice Breitzによる「Aiwa to Zen」がなかなか面白く、またほとんど映画のような、なが〜いEmmanuelle Anilleの映像作品「Angels Camp」も、音楽がクールで非常に印象的でした。
(※)Candice BreitzのAiwa to zenは現在、東京ワンダーサイトでも見られるようです。

2日間見て歩きましたが、エディションの作品はなかなか掘り出し物がなく、どうしたものかと思っています。Paragon Pressでダミアン・ハーストのかなり大きいドットのプリントが出ていました。ひとつひとつのドットが全部違うカラーで刷られた丁寧な作りのプリントですが、$16,000といいお値段です。Calolina Nitschではローラ・オーウェンスの新作版画が出ていると聞いて楽しみにしていたのですが、こちらは今ひとつ期待外れでした。
とはいえ、ドイツとスペインのコンテンポラリー作家のリーズナブルなエディションを出している版元を発見し、そこから何点か仕入をする予定です。

 
フェアの様子:2Fギャラリーブースにて



  2004年6月17日 (3日目)今日は『Liste04』に行ってみました!

見本市会場から歩いて10分ほどの場所で、若手ギャラリーを中心にしたアートフェア 『Liste04』をやっていると聞き、足を伸ばしてみました。アートバーゼルと同時開催で今年10年目を迎えます。若手ギャラリーに出展のチャンスを広げるため出場回数も3〜4回までと決められていたり、また出展作家は40歳以下の作家とするなど制限があります。アートバーゼルの予備軍といった感じ。見本市会場とは全く違ったカジュアルな雰囲気です。以前小山登美夫ギャラリーが入っていた、旧佐賀町食料倉庫ビルを思い出させるような古い建物の中で行われていました。ごちゃごちゃとした展示の割には、いざ気になった作家の略歴を尋ねると既に今年のホイットニー・ビエンナーレにもフィーチャーされている作家だったりして、意外な発見が多々ありました。
ここではTeamというNYの画廊のブースで、スーパーマリオなどを使い映像の作品をつくっている若いアーティストCory Arcangel&Beigeのエディションのプリントを購入。作家のサイン入り、スーパーマリオの雲ポスターも20ユーロで売っていました。一応サインも入っているし、彼がブレイクしたらお宝になるかも知れません!

そして、再びフェア会場へ。
初日、2日は各ギャラリーとも非常に忙しそうだったのですが、売るものはちゃんと売れた3日目くらいから、ようやく多少落ち着きを取り戻しているようです。(ということで、小山さんのところでもスマイルな写真をとってきました。)
日本の画廊にとっては、欧米のコレクターとの直接のコンタクトの機会としての役割も大きいということでした。また会場ではアーティストたちを見かけることも多く、ここでも福井篤志さんと三宅信太郎さんに遭遇。初日には奈良美智さんやリサ・ライターにも会いました。他にも多くの作家が会場に来ています。

この頃になると、ディーラー間では「何買った?」というのが挨拶代わりの会話になっているようです。 タグポートのお買い物としては、コレクターW氏も目をとめたJousseというパリの画廊が扱っているAlexandra Mirという女性作家の写真作品を1点購入しました(2,300ユーロ)。イギリスの画廊も押しているという、これからどんどん成長しそうな作家です。今後のプロジェクトも期待できそう。追ってWeb上にてご紹介できると思います、お楽しみに。

さて、アートバーゼルに出ている作品の気になるお値段ですが、「>5000」とか「<5000」と書かれた小さな黄色丸シールたまに貼ってあって、 5000ユーロ(あるいはドル)がひとつの下限基準値になっているようでした。ちょっといいなと思う作品は写真でもすぐ4000〜5000ドルの値段は行ってしまい、大御所画廊が集まる1Fをまわると、さらに桁違いで何千万円の値札がさりげなく付いていたりします。写真などは1年で倍くらいの価格まで上がったりもすることもあるようなので、いかに目ざとく伸びそうな作家を押さえて早いタイミングで決断しゲットするか、というのが肝のようです。S氏によると、今回の印象としては全体的に価格が2割り増しくらいになっているようで、これはユーロが強いせいだけでなく、マーケットが強いということ(美術品に対して人々の期待が大きいこと<期待値>)だそうです。

明日早朝にはバーゼル出発です。
実はこの街美術館や建築関係でもなかなか充実していて、ヘルツォーク・ド・ムーロン設計の漫画博物館やレンゾ・ピアノ設計のバイエラー財団、もうすこし足をのばせばヴィトラ・ミュージアムなど他にもみたいところがいろいろあって心残りです。
 
小山登美夫ギャラリーブースにて。小山さんとギャラリースタッフの長瀬さん




福井篤志さん。自作の展示インスタレーションを背景に『六本木クロッシング』での展示がそのまま再現されていました




三宅信太郎さん




『Liste04』会場にて。Team GalleryのアーティストCory Arcangel&Beige




  2004年6月18日 (4日目)リヒター版画回顧展を観に、ボン(ドイツ)に立ち寄り

早朝バーゼルからデュッセルドルフへ飛行機移動、のち列車でボン(Bonn)へ。
ボン美術館(Kunstmusem Bonn)ではゲルハルト・リヒターの版画作品回顧展『Gerhard Richter Printed!』を開催中とのことで観に行きました。同美術館では近代〜現代美術の常設展に加え、リヒターの他にもモナ・ハトゥームとバゼリッツの大規模な企画展を開催していました。

リヒターの版画回顧展では、「Ice」をはじめタグボート扱いの作品もしっかり展示されていて嬉しくなりました。ほぼエディション作品のみの構成にも関わらずやはり壮観で、リヒターはすごい作家だと改めて感じたのですが、そのあと観た常設展コーナーにはオークションハウスで観るよりもさらにすごいリヒターの一級のペインティングの部屋があり度肝を抜かれました。またポルケやボイスやロニ・ホーンのインスタレーションなど、日本ではあまり作品を見る機会がない作家の非常にいい作品が、さりげなく展示されていて、本当に感動しました。
このように現代アートの良質の作品に触れる場があることに、本当に羨ましくなってしまいます。ボスをして「ドイツあなどれない、恐れ入りました!」と言わしめた文化度の高さに驚きです。
また、イギリス在住のパレスチナ出身女性作家モナ・ハトゥームの展示では、展示内容の充実もさることながら、大手画廊所有の作品や、まさにアートバーゼル出展中の作品が展示されていたりして、作家や作品が世に出て価値が上がっていく上での戦略的な構造を垣間見た気がしました。

ライン川沿いや飛行機に乗るためにボンからフランクフルトに移動する車中の窓から眺めた風景は、そのままリヒターやティルマンスの風景になりそうな緑で、なんだか納得させられました。

 
ボン美術館 外観

リヒター展 展示風景。「Ice」を発見!

リヒター展 展示風景。「雲」もありました!

ざっくりですが、以上駆け足のアートバーゼル報告でした。
より詳しくお知りになりたいところがありましたら、どうぞお尋ねください。「ええい、まどろっこしい、自分で見てみたい!」と思われた方もいらっしゃると思います。通常の会期中は、有料で(一日券30スイスフラン、会期中有効パス55スイスフラン)誰でも入場できます。来年はヴェネチアビエンナーレもありますので、両方一度にまわってしまうなどという、アートな旅もありではないでしょうか。その場合は宿の確保を含む旅行手配をできるだけ早めに始められることをお勧めします。


Basel 35 Art: Data file
開催場所: バーゼル市国際見本市会場
開催期間: 2004年6月16日〜21日(15日は招待者のみ)
参加ギャラリー数: 270
出展作家数: 1500
出展作品数: 5000
入場者数: 50,000
公式HP: http://www.art.ch/ca/cc/ss/
(公式ホームページからはカタログも購入できます。定価=55スイスフラン)