- 現在はオランダ在住ですね。今回は 横浜トリエンナーレ2005出品の“for you”のために、日本にいらしたのですか。
そうです。本日9月27日のオークションから始まる私の作品“for you”の作品発表のため、3日前に来日しました。明日オランダに戻り、コンサート前日となる10月25日にまた来日する予定です。
- 今回はただお一人の落札者と共有する一夜きりのコンサートのために、会場のホールを貸しきり、ご自身もオランダと日本を往復され、準備が大掛かりですね。
そうですね、会場は横浜みなとみらいホールといって2020人は収容できるとても大きなホールです。きちんとライトアップされ、最高のピアノが用意され、クロークが3名、チケット切りが2名、シャンパンバーでは、シャンパンのサービスもあります。私自身もアムステルダムからコンサートのためだけに来日するのです。一夜に1000万円はかかっているでしょうか。
それが全部、たった一人の観客の15分間の演奏会のためだなんて、贅沢ですよね。私は今回の横浜トリエンナーレにおけるこのコンサートは「至福のプロジェクト」であると考えています。
- 確かに至福ですね。オークションで最高値落札者一名のみが“for you”を享受することができるのですよね。
ええ。お金の話で恐縮なんですけれど、お金を払っていただいても、私の作品の場所や空間はその時にしか存在しないもので、物質的に残るものではありません。また、一対一の関係でないと成立しませんので、自分の体験を他者と共有することもできません。評論家や録音といったコンサートの証人となるものもありません。そうなると、購入者は何に支払いをしているのでしょうか。演奏に対してでしょうか、贅沢さを得るためでしょうか、好奇心のためでしょうか。購入者なしには作品も成立しないのですから自分自身に支払っているのかもしれませんね。私の作品は、「カネと精神性」、この2つの関係を考えざるを得ない仕掛けになっていると思います。
- 大変興味深いアプローチだと思いますが、このシリーズをはじめたきっかけは何だったのでしょうか。
友人のアコーディオン奏者の話からヒントを得ました。彼が、スカンジナビアでソロ・コンサートを開いた日が、運悪く大きなサッカーの試合と重なってしまったんですね。開演になって舞台に上がってみると、観客は女性たった一人。そこで彼は舞台から降りて行き、握手をして自己紹介をし、彼女の選んだ曲を演奏して、最後には晩御飯を一緒にたべたんですって。音楽を媒介にした、従来とは違う観客とのコミュニケーションの形だと思いました。