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ディレクター広本の『アートをマーケットから読み解く』
5月のニューヨーク・オークション・レポート(2004.06.14)
今回、アメリカ美術史はお休みして、5月のオークション結果の特集。
(※文中、リンクが貼られている箇所ではオークション作品の情報を見ることができます)

5月11日、クリスティーズNY、コンテンポラリー・アートのセール、この分野では過去最高の1億210万ドル(112億円、$=\110)の売り上げを達成。14年前、バブル期のサザビーズ9830万ドル(147億円、$=\150)を上回った。

ハイライトはMoMAが売りに出したポロックの作品『ナンバー12』〔1949年 78.8x57.1cm 紙に油彩〕。キャンバスではなく紙作品だが500-700万ドルのエスティメートの倍の11,655,500ドル(12億8000万円)で落札。マーク・ロスコの『No.15』〔1958年 235.6x211.8cm〕は、昨年の同オークションに出品された福岡シティ銀行所蔵『No.9』〔1958年〕の16,359,500ドル(約19億円)には及ばなかったものの、896万ドル(9億8000万円)、ウォーホルの『ラージ・フラワーズ』〔1964年 208x411cm〕が672万ドル(7億4000万円)。アメリカ現代美術の代表作3点で30億円!

エスティメートの倍で落札されたもう1点は、ジェフ・クーンズ『ジム・ビーム、J.B.ターナー・トレイン』〔1986年 28x289.5x16.5cm〕、ウイスキーの入ったステンレス・スチール製の模型機関車のエスティメートが何と200-300万ドル、落札価格は5,495,500ドル(6億円)、このクーンズ作品をはじめ上記のポロックとロスコ計3点を手に入れたのは、C&Art、ニューヨーク随一のセカンダリーのギャラリーである。ロスコのカタログ・レゾネを編集したデイヴィッド・アンファン氏をアドバイザーとして擁する同ギャラリーの目は確かである。

他には、チャック・クロース『グイン』〔1982年 188x148cm〕が280万ドル(3億円)、エドワード・ルッシェ『DAMAGE』〔1964年 183x170cm〕が359万ドル(4億円)、珍しいドナルド・ジャッド初期のペインティング『無題』〔1961年〕がエスティメート倍の79万ドル(8700万円)といったところ。



一方のサザビーズNYは翌12日がコンテンポラリー・アートのセール、売り上げ総額6567万ドル(72億円)となった。

価格トップはリキテンスタイン『ペダル式ゴミ箱と足』〔1961年 81x132cm〕。ポップ・アート初期の代表作としては安価な510万ドル(5億6000万円)、ゲルハルト・リヒターの人気は変わらず、『壜と林檎』〔1988年 81x61cm〕の油彩がエスティメート倍の225万ドル(2億5000万円)、剥製の馬がロープで吊り下げられたマウリツィオ・カテランの作品『トロツキーのバラード』〔1996年〕は制作されて8年足らずのものだがエスティメート3倍の200万ドル(2億2000万円)となり、(文字通り“ダーク・ホース”というべきか)、同じく3倍になった村上隆『フラワー・ボール 3D』〔2002年 250x250cm〕が62万4000ドル(6900万円)、奈良美智の典型的な女の子の『ブルー・シープ』〔1999年 122x112cm〕は19万8400ドル(2200万円)。この二人の日本人作家はオークションで必ず出品されるようになった。

もう一箇所のフィリップスはさらに翌13日に開催、エスティメートの4倍となって驚かされたのは、日本では知名度という点ではまだ低いリチャード・プリンスのジョーク・シリーズ『My Name』〔1987年 142x244cm〕の74万7200ドル(8200万円)であった。

ジャン=ミシェル・バスキア『ブルー・ヘッズ』〔1983年〕は202万ドル(2億2000万円)、5年前には66万ドルだった作品だ! 落札したのはウォーホル・コレクターとして有名なホセ・ムグラビ氏、バスキアも相当数集めており、コレクションによるバスキア展を数年前にウイーンをはじめヨーロッパを巡回させている。

おまけにもう一つ、5月18日、クリスティーズNY、アメリカ美術のセールに第一回のコラムでご紹介したチャールズ・ウイルソン・ピールの『ジョージ・ワシントン』〔c.1780-82、127x101cm〕が出品され、エスティメート倍の616万ドル(6億8000万円)で落札された。




次回はアメリカ現代美術コレクターの先駆的存在ペギー・グッゲンハイムのことなどをご案内さしあげる予定。どうぞお楽しみに。

オークション順位2004年5月 (註)
  1. ポロック《ナンバー12》、1949年 78.8x57.1cm 紙に油彩、1165万ドル(12億8000万円)
  2. ロスコ《No.15》、1958年 235.6x211.8cm、896万ドル(9億8000万円)
  3. ウォーホル《自画像》、1967年、183x183cm、695万ドル(7億6000万円)
  4. ウォーホル《ラージ・フラワーズ》、1964年 208x411cm、672万ドル(7億4000万円)
  5. ジェフ・クーンズ《ジム・ビーム、J.B.ターナー・トレイン》、1986年 28x289.5x16.5cm、549万ドル(6億円)
  6. リキテンスタイン《ペダル式ゴミ箱と足》、1961年 81x132cm、510万ドル(5億6000万円)
  7. ルッシェ《DAMAGE》、1964年 183x170cm、359万ドル(4億円)
  8. ラウシェンバーグ《モンク》、1955年、紙と木にコラージュ、35.5x30.5cm 292万ドル(3億2000万円)
  9. チャック・クロース《グイン》、1982年 188x148cm、280万ドル(3億円)
  10. ゲルハルト・リヒター 《壜と林檎》、1988年 81x61cm 油彩、225万ドル(2億5000万円)
(註)この順位はサザビーズ、クリスティーズのWebサイトを元に、タグボートで編集させて頂きました。