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ディレクター広本の『アートをマーケットから読み解く』
来年のヴェネツィアを目指して夏を頑張る二人の女性キュレーター (2004.08.23)
 2005年に第51回を迎える、国際現代美術展のヴェネツィア・ビエンナーレのディレクターに史上初めて女性のキュレーターが抜擢された。また、今まではイタリア館の総合展示と、最近のアートの傾向を紹介する展示(かつて「アペルト」という名称で呼ばれていた)とを一人のディレクターが受け持っていたが、これを二人に分担させるという新しい試みがなされる。

ブリジット・ライリー
「シルヴァン」 2000年
 現代美術の歴史的展観と言える前者の展示を担当するのは、レイナ・ソフィア・アート・センターの元ディレクターで、バルセロナのラ・カイサ財団現代美術コレクションを作り上げたことでも知られる、マリア・デ・コラル女史。1986年ヴェネツィア・ビエンナーレ・スペイン館のキュレーターを務めた人物でもある。一方、アルセナーレ(造船所跡)を会場として行われる、後者を担当するのは同じくスペイン出身のインディペンデント・キュレーター、ローザ・マルティネス女史。1996年ロッテルダムで開催された第1回「マニフェスタ」(注)のキュレーターを務めたほか、1997年イスタンブール・ビエンナーレ、1999年サイト・サンタフェ・ビエンナーレ、そして昨年にはヴェネツィア・ビエンナーレ・スペイン館のキュレーターも務めた。まさに世界中を飛び回っている。
(注:ヨーロッパ現代美術ビエンナーレのこと。2回目以降はルクセンブルク、リュブリアナ、フランクフルト、と毎回異なる都市で開催。5回目の今年はスペインのサンセバスチャンで9月30日まで開催中)

ルイーズ・ブルジョワ 「ベッドの8人」 2000年
 ヴェネツィア・ビエンナーレ出品は作家にとって大きな業績であり、これによって作品の価格も上昇する。1968年、第34回展に出品し、37歳で国際絵画賞を受賞したブリジット・ライリーは、今年5月のフィリップス・オークションで1964年の162x162cmの作品が792,000ドル(約8,700万円)の高値で落札された。1993年の第45回に出品、80歳を過ぎてからアメリカ館代表となったルイーズ・ブルジョワは、2002年クリスティーズNYのオークションで1984年の大理石の作品が、エスティメートの倍の1,439,500ドル(約1億7,000万円)をつけた。2001年の第49回にベルギー館代表として出品したリュック・タイマンスの作品が、昨年秋のフィリップス・オークションでエスティメートの倍以上の427,500ドル(約5,000万円)の高額落札となり、話題になったのも記憶に新しい。

リュック・タイマンス 「エンジェル(天使)」 2004年
 デ・コラル女史が担当する“現在と最も重要な過去との関係”、一方、マルティネス女史による“現在と最も革新的な動向との関係”、この二つの観点から選ばれる、来年のヴェネツィア・ビエンナーレ出品作家の顔ぶれは今から気になるところだ。


[ヴェネツィア・ビエンナーレ]……世界の各地で行われている国際美術展の中でも最も規模が大きく、世界のアートの現況を知るうえでは欠かすことのできない芸術祭。1895年に始まり既に100年以上の歴史を持つ。2年に一度開催される同展は、芸術のオリンピックとも言われ、世界各国から選ばれた作家たちが招待され作品を展示する。参加各国が自国の展示館(パヴィリオン)を使用して自国を代表する作家の個展、グループ展を開催する。展示館を持たない国は、教会などを借りて展覧会をする。各国の展示はそれぞれのコミッショナーあるいはキュレーターが企画。全体の監修とイタリア館でのテーマ展示及びアルセナーレ会場での現代美術展をその年のディレクターが受け持つ。
次回第51回は来年、2005年夏に開催。
http://www.labiennale.org/