トップページ > アートな生活 > アートとの付き合い方 ギャラリスト小山登美夫 / ギャラリーの仕事をすべて教えます!〔後編〕(2004.10.25)

ギャラリスト小山登美夫が語るアートとの付き合い方
ギャラリーの仕事をすべて教えます! 〔後編〕 (2004.10.25)
タグボート(以下T):小山さん、海外に行かれることが本当に多いですよね? ギャラリストは海外に行ったとき、何をしているんですか?

小山氏(以下K):自分のところのアーティストが海外の美術館で展覧会を行うことになれば、その下見やオープニングパーティーで出向かけなければいけない。あるいはアートフェアに出店するために出かけていく。いろいろですよ。またそういう用事のあるときには海外のギャラリーや美術館も見に行くようにしています。お客さんのコレクターのお宅を訪ねていくこともある。面白いと思ったアーティストが見つかれば、そのアトリエに出かけていって作品を見せてもらうとか、大体そんなところですね。

T:現在、海外のアートフェアではどこに出店されていますか?

K:いろいろ出たけど、今はスイスのバーゼル・アートフェア、NYのアーモリー・ショー、マイアミのバーゼル・マイアミビーチ・アートフェアが毎年行っているもので、それに今年はイタリアのトリノ・アートフェア、それから北京アートフェアが加わりました。

T:海外のギャラリーではどんな都市をチェックされるんですか?

K:NY、ロサンゼルス、パリ、ロンドン、それくらいですかね。

T:今、小山さんはどこの都市が一番アートシーンとして面白いと思われますか?

K:最近いろいろ新しいギャラリーが出てきているベルリンとか。アーティストもいっぱい住んでいますよね。でも数の上で言えばNYは他の10倍くらいギャラリーがあるから、やっぱりNYかな。

T:NYでは最近新しいギャラリーが多くできてきていると言われるウィリアムズバーグ地区やD.U.M.B.O(※1)なども行かれますか?

K:あまり行っていないです。何回かブルックリンには行ったけど、若いギャラリストがやっているという感じでもなくて、個人的にはそんなに惹かれるものがなかった。むしろマンハッタンの下の方、ローワー・イーストサイドあたりでここ2年くらいの間に若くて新しいギャラリーが幾つか出始めていてそちらの方が面白いと思う。リビングトン・アームス(Rivington Arms)(※2)とか。若い女の子2人組が始めたギャラリーだけど、結構いいのをやっている。でも基本的に今はチェルシーでしょう。大御所クラスも若いギャラリーも全部集まれるだけの許容量を今のチェルシーは持っている。

T:その中でも若手エッジ系というと、エリザベス・ペイトンやピーター・ドイグなどを扱っていることで有名なギャラリー、ギャビン・ブラウン・エンタープライズがある辺りがメッカということになりますか?

K:ギャビン・ブラウンは相当影響力があると思いますね。最近出てきている若手のギャラリーもギャビンが店を出した後に、その周りでどんどん出てきたという印象がある。彼はまた新しい場所に移りましたね。

T:話を戻しますと、海外のアートフェアというのはギャラリーの仕事として、どういう意味を持っているのでしょう?

K:アートフェアは一言で言えば世界中のギャラリーが集まって開く即売展覧会ですよ。でも一方で自分のギャラリーがどういうビジョンを持ち、どういう作家のラインナップで行っているかをインフォメーションする場でもあります。だからここに来れば世界中のギャラリーのカラーと、どの作品が幾らで売られているかが全部わかるわけです。

T:最近では海外のアートフェアに出店する日本のギャラリーが増えてきましたね。それはどうしてなんですか?

K:それは自分たちが扱っている作家が国内市場だけではなく、海外でも売れることが実感としてわかってきたからです。実際、日本のアーティストの作品は世界的に見ても非常にクオリティが高いんですよ。技術も非常に高いレベルを持っているし、ビジョンという点でも他にはない固有のものを持っているアーティストが多い。ただ、これまでは「海外に持っていって見せる」という、非常に単純なことが意外にされてこなかった。見せさえすれば可能性はいくらでも開けたのにそれをあまりこれまではしてこなかったんですね。

T:これまでもチャンスは常にあったということですか?

K:そう思います。ともあれ現在はどんどん海外に出て行って、自分のところの作家がどの国どのマーケットで通用するかということが徐々にわかってきた日本のギャラリーが増えてきた。ようやく今そういう時代になりつつあるんです。

T:だから小山さんはしょっちゅう海外に行くんですね(笑)

K:まあそうです(笑)。しかし僕らのようなギャラリーとはつまるところ、そうした市場を通して、まだ世の中で認められる前の新しい価値というものを社会に残していくのが仕事なわけです。言い換えれば、それができて初めて、10年後、20年後あるいは100年後にそのアーティストがどんな評価を得ていくかに繋がっていくということが言えるんですね。

 
スイスのバーゼル・アートフェア会場、小山登美夫ギャラリーブース風景。バックに奈良さんのドローイングが見えます。



落合多武さんの作品。アートフェアでは各ブースでそのギャラリーのラインナップがわかるので作品のチェックには格好の場です



海外のコレクターたちがこぞって訪れます。写真は、前回のこの連載でオープニングパーティーの模様をお届けした福井篤さんの作品。



海外でも注目株、三宅信太郎さんが扮する“イノシー”と小山登美夫ギャラリースタッフ、長瀬さんのツーショット。



三宅信太郎さんと言えば“スイートさん”。今回のバーゼルでは大型のインスタレー ションを発表していました。



三宅さんは着ぐるみを脱ぐとこんな感じの方です。10/28〜12/4までベルリンのギャラリーc/o Atle Gerhardsenで、個展が開催中!

(※1)ウィリアムズバーグ地区/D.U.M.B.O……マンハッタンの地価が上がるのに合わせて現在ではブルックリンのウィリアムズバーグ、D.U.M.B.O辺りに若いギャラリーやアーティストのアトリエが多く集まってきている。
(※2)Rivington Arms  102 Rivington St,New York, NY 10002-2204 Phone: 1-646-654-3213