トップページ > アートな生活 > アートとの付き合い方 ギャラリスト小山登美夫 / 自分が買うならこの一枚 [小山登美夫が選ぶタグボートのアート作品](2004.02.16)

ギャラリスト小山登美夫が語るアートとの付き合い方
自分が買うならこの一枚 [小山登美夫が選ぶタグボートのアート作品] (2004.02.16)
タグボート(以下T):今、小山さんのご自宅にはどんな絵がかけてあるのですか?

小山氏(以下K):どうしたの唐突に?!

T:いえ、今回はこれまでとは少し視点を変えて、ギャラリスト・小山登美夫が自分のために絵を買うとしたらどんな作品を選ぶのかということをお聞きしたいと思いまして。そこから等身大のアートとのつきあい方が見えてくるのではないかと。

K:なるほど、そういうこと。今、自宅にはウォルフガング・ティルマンズの作品などが掛かっていますよ。

T:奥様に絵を贈られる、なんてことはあるのですか?

K:ありますよ。ティルマンズもそうだったな。何点かはありますね。

T:もし小山さんがご自宅にかける一枚としてタグボートのギャラリーから作品を買われるとすれば、どれになさるのでしょうね?

K:そうですね。トニー・アウスラーかな。今タグボートのサイトに上がっているアウスラーの作品は3点共ドローイングだし実際に作品のイメージも良いので捨て難い。それともリチャード・プリンスにしようか。

T:リチャード・プリンスの作品集はアートブックの専門ストアでも人気があるという話を以前、小山さんされてましたよね。デザイナーの方などが買われていくケースが多いと。作品もそうなのでしょうか。

K:プリンスは日本では持っている方はまだ少ないと思います。でも何年か前に私のギャラリーでも展覧会で取り扱ったことがあります。現在は海外のマーケットで150万円する作品が当時の売値は20万円程度でしたから、だいぶプリンスも値が上がってきました。

T:購入した作品に対する二次的マーケットがあることが、アート作品を買う安心感に繋がっている、と言えますね。ところで、「小山登美夫が選ぶこの一枚」はトニー・アウスラーで決定でよろしいですか?

K:うーん、一枚となると結構悩みますね。ジョナサン・ラスカーの「タウン・アンド・カントリー」もいいし……。やっぱりこちらにすることにしましょう。エリザベス・ペイトンの「キス(トニー)」

T:どうしてこちらに決められたのですか?

K:ペイトンはここ10年くらいで人気が高まってきた作家ですが、有名なのはレオナルド・ディカプリオやカート・コバーン(バンド「ニルヴァーナ」のヴォーカリスト)など有名人を描いたポートレート作品ですよね。ただ、この「キス(トニー)」のように自分の近しい友人たちを描いた作品も多い。

つまり、彼女にとっては著名なロックスターの肖像を描くのも、友人を描くのもまったく同じ感覚なわけです。そこには“自分が好きと思う”人を描くという作家としての正直さがあり、しかし同時に美術史的に見れば絵画の世界で連綿と続いてきた肖像画の領域において、有名無名関係なく“マイ・フェイバリット”こそが肖像の対象となりえるという、非常に現代的なアプローチがそこにはある。

肖像画は文字通り常にその時代の肖像を描いてきたわけですが、その意味でまさしくペイトンは“現代の肖像とは何か”を提示している。だからこの作家はやはり面白いし、何点かは持っておきたいなと思ってこの作品を選びました。

T:なるほど。これまでにもペイトンは持っていらっしゃったのですか?

K:ええ。もう今ではペインティングを探すのはほとんど困難になってきたペイトンですが、版画をつくるようになって手が届きやすくなりましたからね。今のうちにもう何点か購入しておきたいと思っていますよ。