トップページ > アートな生活 > アートとの付き合い方 ギャラリスト小山登美夫 / 自分が買うならこの一枚 [小山登美夫が選ぶタグボートのアート作品](2004.02.16)

ギャラリスト小山登美夫が語るアートとの付き合い方
知られざるキース・へリングの魅力 その人気の理由とは (2004.03.15)
タグボート(以下T):この間の広本さんのコラムにもありましたが、キース・へリングのマーケット・プライスがこの15年間で300%上昇とのことです(2004年1月23日付『ウォール・ストリート・ジャーナル』調べ)。本当に人気が衰えないですね。

小山氏(以下K):80年代に出てきたニューペインティングの作家の中でも、キース・へリングとジャン=ミッシェル・バスキアの2人はやはり別格ですよ。特にキース・へリングは一見すると平坦な感じに見えるけど、実際にはどの作品もすべて一筆描きで、しかも即興で描いているわけで、すごいデッサン力に基づいて描かれた絵なんです。それは彼が若い頃、ニューヨークの地下鉄などでグラフィティをやっていたことと大いに関係していて、常に描き直しが一切効かない緊張感のある中でずっと絵を描いてきたから。そうした強さ、集中力が作品の中に表れている。

T:ポップというととかく軽いテイストと見られがちですが、そうではないんですね。

K:全然そんなことはないです。キースには絵が持つ根源的な強さがある。また同じポップ・アートでもウォーホルはニヒルで渇いた雰囲気、それに対してキースは楽しくて、しかも熱い感じがあって、そういう違いがまた絵を見る楽しみと言えます。
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グローイングW

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グローイングT
T:どんな人たちがキース・へリングを買っているんでしょう?

K:彼の作品は特にヨーロッパで人気が高いんです。アメリカの人にはどちらかと言えばクールな絵を好む傾向が強いけど、ヨーロッパの人の中にはもう少し楽しい感じが欲しいと言ってキースを買うケースが少なくない。

T:タグボートで扱っているキース・へリングの作品の中から選ぶとしたら、どれがおすすめですか?

K:この中だったら「グローイング」のシリーズでしょうか。「グローイングW」などは、彼が地下鉄で描いていた頃の勢いみたいなものが非常によく出ていると思う。それに、タグボートで取り扱っているこのシリーズの作品はどれも(注釈*1)トライアル・プルーフなので、通常のエディションと色が違うんです。
例えば「グローイングT」はもともと黄色のバックに赤で絵柄が刷られていますが、こちらは白地に紫。40枚しか刷ってないから、これかなり貴重な作品ですよ。

(注釈*1:トライアル・プルーフ=本来、本刷りをする前に試し刷りとして刷られたものだが、枚数も少なくその希少価値から現在ではコレクターズ・アイテムとして流通している)

T:トライアル・プルーフの作品って市場でどのくらい流通しているんですか?

K:そんなに簡単に見つからないものなんですよ。実際、これ探すの僕も手伝ったけど大変でしたからね。でも状態もいいし、キースのサインも入っているから、これはお買い得だと思いますよ。