トップページ > アートな生活 > アートとの付き合い方 ギャラリスト小山登美夫 / 作家の見方──取り扱いギャラリーから知る(2004.05.17)

ギャラリスト小山登美夫が語るアートとの付き合い方
作家の見方──取り扱いギャラリーから知る(2004.05.17)
小山氏(以下K):ロバート・ロンゴの「アリーナ・ブレインズ」、順調に売れているそうだね。


Rick / ロバート・ロンゴ


Wave / ロバート・ロンゴ
タグボート(以下T):おかげさまでこちらは売りきれになりまして、今回再入荷をしたばかりです。今回、新たにロンゴの作品を4点入荷したのですが、彼の作品の中でも特によく知られている「Men in the cities」シリーズから「Rick」、「Jule」の2点、また一点モノでオリジナルドローイングの作品「ボディーハンマーのための習作」、そして最新のシリーズである「Wave」となっています。こちらも今後のお客様の反応が楽しみです。

K:「Wave」のシリーズは先日見てきたN.Y.のホイットニー美術館の「ホイットニービエンナーレ2004」にも出品されていたね。ロンゴはよく知られているように、一時期、映画監督に転向して映画『JM』を撮ったりしていたけど、最近またこの波の連作をきっかけにアートの世界で再評価の気運が高まりつつある。

T:北野武、それから『マトリックス』のキアヌ・リーブスが共演した映画ですね。ただ、あの映画を撮った監督がロバート・ロンゴだと知っている人は意外に少ないのではないでしょうか。

K:当時はエンターテインメントへ転向したロンゴのことを批判する声も一部でありましたが、結果的にはそうした美術以外の経験が確実に今の作品の中に活きていると思いますね。最近の作品は一段と"抜けた"感じがする。この「Wave」を見てもわかるように、静かな波じゃないところがロンゴらしいというか、非常に劇場的で、ダイナミック。こういうところが彼のかっこよさですね。

そういえばロンゴの作品は、初期の頃から変わらずニューヨークのMetro Picturesというギャラリーが扱ってるんだけど、作家を見るときには、その人がどこのギャラリーで取り扱われているかを知ることも非常に重要なんですよ。


T:例えばどんなケースがありますか。

K:例を挙げると、今、若手でエッジの立った作家を数多く輩出していることで知られているニューヨークのギャラリーにGavin Brownがある。この連載の前回の記事でも紹介した、ピーター・ドイグなどは皆、このギャラリーの取り扱い作家です。


右 : グランデ・リビエラ / ピーター・ドイグ    左 : Untitled / ローラ・オーウェンス



なぜかについては誰もが理論をもっている T / カール・ファッジ
T:同じく若手のカール・ファッジなどはニューヨークのRonald Feldman Fine Artsが扱っていますよね。

K:Ronald Feldmanはもともと70年代にニューヨークでヨーゼフ・ボイスを最初に紹介した画廊として知られていますが、一方でウォーホルやリキテンシュタインなど、ポップアートの作家を多く扱ったことでも有名。その、ポップアートをずっと引っ張ってきたFeldmanが今、最も力を入れている若手がカール・ファッジなんですね。



トート(トートバッグ) / ウィリアム・ウェグマン
T:ウィリアム・ウェグマンもFeldmanですよね。

K:そう。ただしウェグマンは非常に人気のある作家だから、それ以外にもいろんなギャラリーで引っ張りだこです。日本では"犬の作家"という印象の強いウェグマンですが、海外ではコンセプチュアル・アーティストとして非常に高い評価を受けているし、だからこそいろんな画廊で展覧会が行なわれている。犬をモチーフにした作品はあくまで彼のスタイルの一部分に過ぎないんです。このあいだウェグマンの大きなショーを行ったSperone Westwaterとか、60年代のドローイング展を行ったGorney Bravin+Leeなど、非常に良いギャラリーがついています。



エトセトラ / エドワード・ルッシェ
T:エドワード・ルッシェ…、このあたりの巨匠クラスはいずれも、今は故きニューヨークの名画商、レオ・キャステリの元で育っていった作家ですよね。

K:ええ。で、そのキャステリが目をかけていたのがラリー・ガゴシアン。現在のGagosian Galleryのオーナーですが、ここはニューヨークに2店、その他にもビバリーヒルズとロンドンに支店を持つ、文字通りビッグギャラリーとなっています。ヴァネッサ・ビークロフトなどはここ。キャステリでやっていたルッシェやサイ・トゥオンブリーなども今はこちらに移っています。


T:なるほど、ギャラリーとの関係で見ていくと興味深いですね。

K:さらに1人の作家が、ニューヨークではここ、ロンドンでは、イタリアでは、という風に横のつながりで見ていくともっと面白い。例えば、先ほどのピーター・ドイグで言えばニューヨークではGavin Brownですが、ロンドンではVictoria Miroが扱っている。このギャラリーはダグ・エイケンのメインギャラリーで知られているところ。また草間彌生のロンドンでの取り扱い元もここです。あるいはローラ・オーウェンスの場合にはロンドンではSadie Colesという素晴らしいギャラリーがついている。こちらのラインナップにはリチャード・プリンスやサラ・ルーカスなどがいます。



無題11 / デニス・ホリングスワース
T:作家を見るときに、その人がどこのギャラリーでやられているか、また、そのギャラリーで扱っているその他の作家には誰がいるか、というのは一つの指針になるわけですね。では最後に、今回小山登美夫ギャラリーセレクションに4月30日付けで新たに加わった作家、デニス・ホリングスワースの場合には?


K:ドイツ・ケルンのAndre Buchmann、ニューヨークのNicole Klagsbrun、そして日本は私のギャラリーということになりますが、最近ではそれ以外でもオランダ、イタリアなどヨーロッパを中心に各地で個展が増えている作家です。是非一度ご覧になって下さい。


【参考資料;本文中に登場したギャラリーの一覧】
METRO PICTURES / ロバート・ロンゴ、シンディ・シャーマン、トニー・アウスラーなど
Gavin Brown’s enterprise / ピーター・ドイグ、エリザベス・ペイトンなど最新の若手を多く輩出
Ronald Feldman Fine Arts / リキテンスタインなどポップアートの大御所から、ウィリアム・ウェグマン、カール・ファッジまで
Sperone Westwater / リチャード・タトル、ウィリアム・ウェグマン、トム・サックスなど
Gorney Bravin+Lee / ジリアン・ウェアリング、キャサリン・オピー、ウィリアム・ウェグマンなど
Gagosian Gallery / ダミアン・ハースト、ヴァネッサ・ビークロフトなど、ビッグ・ギャラリーとして知られる。
Victoria Miro Gallery / ダグ・エイケン、草間彌生、ピーター・ドイグほか
Sadie Coles / ローラ・オーウェンス、エリザベス・ペイトン、リチャード・プリンスほか
Nicole Klagsbrun Gallery / デニス・ホリングスワース、杉戸洋など