トップページ > アートな生活 > アートとの付き合い方 ギャラリスト小山登美夫 / 現代の肖像たち 〜サトエリKo2ちゃんからPUPPY、そしてトニーまで〜(2004.06.14)

ギャラリスト小山登美夫が語るアートとの付き合い方
現代の肖像たち 〜サトエリKo2ちゃんからPUPPY、そしてトニーまで〜(2004.06.14)
タグボート(以下T):小山登美夫ギャラリーで現在開催されている「村上 隆展 −サトエリKo2ちゃん−」(*1)、たった今見てきたのですが、びっくりしました。まさか、あのフィギュア作品の「Ko2ちゃん」が本物の人間になってしまうなんて。

小山氏(以下K):もともと「Ko2ちゃん」は、日本のオタク文化の肖像とも言うべき存在。アニメのキャラクターという、架空の憧れ美少女を等身大の彫刻にすることによって現代の偶像をつくり上げたわけです。

T:その作品「Miss Ko2」が57万ドルという高値で落札されたのが、ちょうど1年前の今頃でしたね。

K:今回の「サトエリKo2ちゃん」はある意味、8年にわたって続いてきたこのプロジェクトの集大成とも言える作品です。理想の美少女を擬似化したフィギュアの「Ko2ちゃん」を、さらに実際の女性が演じるというパラドックス。

T:コスプレ、アイドル、アニメが合体したまさに日本のポップカルチャーの化身のような作品。

そういえば今回タグボートでは、村上さんの作品と一緒にジェフ・クーンズを入荷しました。ジェフ・クーンズってある意味、村上さんと比較して見ると面白い気がするのですが。

K:そうだね。ジェフ・クーンズの作品に描かれているのも普通の人たちの欲望というか、例えば、"カワイイ""大好き"なモノをこれでもかというくらいに誇張して見せることで時代の象徴として見せている。

最初にロックフェラーセンターの前で展示されて、現在はビルバオ・グッゲンハイム美術館で飾られている、クーンズの代表的な作品「PUPPY」にしてもそうでしょう。全身がお花で覆われている巨大な仔犬。まさに“カワイイ”の具現化。

T:確かに、今回仕入れた「Loopy」にしても、アメリカの人たちにとっての"大好きなモノ"たちが一杯に詰め込まれていますものね。シュークリームに砂糖漬けのチェリー、漫画のキャラクター……。

K:だから、村上さんも、クーンズも現代の風俗を題材にしつつ、それぞれのやり方で作品をつくっていると言うことができると思いますね。

T:現代の風俗をテーマにしているという点では、最近のエリザベス・ペイトンやリサ・ライターなども同じですよね。

K:そうですね。彼女たちが描いている人物像も、"特別な人"ではない。ペイトンは有名人などもモチーフとして多く取り上げているけど、あくまで日常的な視点で描いている。あの、普段のままの姿として描くところが逆に時代を映していているんだと思う。日々の生活の絵画というか。仲の良い友人の「トニー」を描いた作品なんて特にそうですね。

T:そうした意味では、世代がひとまわり上のアレックス・カッツなども同じ系譜にあたっていますね。

K:そうそう。実際、ペイトンを始め現在の新しい世代の作家の中にはカッツを再評価している人が多くいます。ローラ・オーウェンスなどもそう。都会生活の一風景をさらりと描きながら、その色やかたち、構図などの使い方の巧さは今の作家に多大な影響を与えている。

T:さきほどの話にあった、クーンズの作品の中に現れているアメリカということから連想すると、カッツの作品にはまた違ったアメリカの姿が描き出されている気がします。

K: ニューヨークの都会的な空気が流れている作品だけど、ロバート・ロンゴなんかの持っている都会性ともまた違っているんですよね。同じニューヨークでも、何というのかな、そう、例えばポール・オースターの小説から感じるような……。

T:自分のお部屋にかけた人物画をそういった視点から眺めてみるのも楽しいですね。小山さんはポートレートの作品とか結構お家に飾られていたりしますか?

K: 僕はもともとポートレートの作品が好きで、自分で絵を買うことがあると、大体ポートレートになってしまうですよね。また最近の作家の作品なんて特にそうですが、こんな生活をしていてこんな人なんだろうな、ということを想像して見られるところが、人物を描いた作品の楽しみの一つだと思いますね。


 

今回タグボートでも村上隆作品入荷しました。ロンドンのSurpentine Galleryによるエディション。稀少な品です。



ジェフ・クーンズ「Loopy」。シュークリーム、さくらんぼ、漫画…。アメリカの消費生活を象徴するようなアイテムがずらり。



エリザベス・ペイトン「Kiss(Tony)」。ペイトンはロックスターを描くときも自分の友人が題材のときも、常に日常的な視点で描いている。



アレックス・カッツ「Brisk Day U」。カッツの描く都会的なポートレート画は、ペイトンやリサ・ライターなど現代の肖像画家たちにも影響を与えている。
(*1)「村上隆展 −サトエリKo2ちゃん−」は小山登美夫ギャラリーにて2004年5月24日から6月5日まで行われました。
小山登美夫ギャラリー http://www.tomiokoyamagallery.com/