タグボート(以下T):バーゼル・アートフェア(正式名称Art
35 Basel/2004年6月16日〜21日/バーゼル市国際見本市会場)に参加されるのは今年で4回目だそうですが、今回はいかがでしたか? 公表されているところでは4日間の開催で約5万人を集めたとのことですが。
小山氏(以下K):アートフェアは世界のいろんなところで行われているけど、その中でもバーゼルはもっとも権威あるアートフェアと言われています。したがってギャラリストはもちろんのこと、アートコレクター、美術館のキュレーター、アーティストたちが世界中から集まってきます。今はどの作家が面白くて、それがどこから発信されているか、また作品の値上がり具合はどうかなど、情報収集をするためにフェアはこれ以上ない場所。当然、作品もバーゼルが一番よく売れます。
T:今年は三宅信太郎さん、村上さん、奈良さん、福井篤さんなどを出品していらっしゃいましたよね。
K:今回のフェアのために奈良さんに新作のドローイングを描いてもらいました。でもロンドンのスティーブン・フリードマン・ギャラリーではセカンダリー(※)のペインティングが出されていました。村上さんは、今回うちではルイ・ヴィトンのお花の作品を展示しました。
(※)「セカンダリー」とは、オークションなど、2次流通のマーケットから仕入れてきた作品のこと。 T:それにしてもものすごいギャラリーの数ですよね。270以上のギャラリーが参加しているわけで、到底一日では全部は見きれない……。
K:相当な数ですが、しかもギャラリーならどこでも出展できるというわけではなく、フェアを運営するコミッティーから参加を認められたところだけが集まってきているので非常に質が高いんです。人気のあるフェアではどこもそうですが、とりわけバーゼルはその基準が厳しいとされています。なかなか入れてもらうのは難しく、しかも面白くなければ次回からは呼んでもらえないこともよくある。だから、常に新しくて面白いギャラリーが入ってきているんです。
T:会場のすぐ近くでは、若手のギャラリーばかりが集まる「Liste」という、また別のアートフェアも行われていたりしますね。
K:そう。バーゼルに限らず、アートフェアがあるときには、若手ギャラリストたちのフェアが一緒に行われていたり、周りの美術館でも面白い展覧会が企画されていたりと、そういう楽しみもある。バーゼル・アートフェアの会場から歩いていけるところには、ヨーロッパでも最も歴史の古いミュージアムとして知られるクンストミュージアム・バーゼルや、ヴィトラ・デザインミュージアム(建築はフランク・O・ゲーリー)、青山のプラダを手がけたことで有名な建築家、ヘルツォーク&ド・ムーロンによるアートスペース「Schaulager」、他にも現代美術館、クンストハーレなどさまざまなアート関連の見どころがあります。バーゼルを見るなら、2日間をフェアにあてて、残りの1日は周辺の美術館を見て回るのがいいと思います。
T:さきほどアートフェアとは情報収集の場所とおっしゃいましたが、具体的に来ている人たちはどんなことをチェックしているのでしょうか?
K:まず、世界中からギャラリーが集まっているわけなので、それぞれのギャラリーのテイストを知ることができます。それから、「この作家はこのギャラリーで扱っているんだ」という、取り扱い作家の顔ぶれもわかりますよね。さらに毎年見ていくことによって、誰がどこのギャラリーに移ったか、などといった情報もアクティブに知ることが可能です。また値段の変化などを見ることで、作家のマーケットバリューがどのように変わったかなどもわかります。
T:だから世界のアートマーケット動向を知る上で、アートフェアをチェックすることは欠かせないわけですね。
K:そうです。例えば、以前このコラムでも話したピーター・ドイグなどにしても、昨年のフェアでは数点見かけたけど、今年はまったく見かけなかった。ということは昨年以上に作品が手に入りにくくなっていることがわかるわけです。あと、コレクターやキュレーター、アーティストたちも世界中から来ていますから、この場所で顔を合わせてはまたお互いの情報を交換しています。
T:バーゼル・アートフェアは特に有名ですが、それ以外に世界ではどんなアートフェアがあるのでしょうか?
K: イタリアはボローニャ、トリノ、ミラノでそれぞれ行われており、 ロンドンには昨年からフリーズ・アートフェアが始まりました。ドイツでは歴史的に古くからあるのがケルン・アートフェア、それから最近新しくベルリン・アートフェアが行われています。パリはFIACというフェアが昔から行われています。スペインでは、マドリッドで行われているARCO。アメリカでは、ニューヨークのアーモリー・ショー、シカゴのインターナショナル・アートフェア、それからアートバーゼルと同じところが運営しているアートバーゼル・マイアミビーチは最近評判を呼んでいるフェアの一つですね。他にもオーストラリアのメルボルン・アートフェアなど、たくさんあります。
T:アートバーゼル以外で小山さんのおすすめというと、どこになりますか?
K: フリーズ・アートフェアは面白い。それからアートバーゼル・マイアミビーチも。マイアミはヨーロッパのほとんどの都市からダイレクトフライトなんですよ。だからロンドン、パリ、アムステルダム、あらゆるところから人が集まってくる。アーモリー・ショーもいいですね。アーモリーの場合はフェアと合わせて、ニューヨークのギャラリーを見て回れる良さもある。それからドイツのアートシーンが知りたければケルンのアートフェアとか。ドイツのギャラリーは殆ど出ていますから。同じドイツでもベルリン・アートフェアはもっと国際色が強く、違った魅力があります。僕はまだ行ったことがないけど、マドリッドのARCOも評判が良いようです。
T:最近では、今年から始まった北京アートフェアや、来年からスタートする台湾アートフェアなど、アジアなどでも次々新しいアートフェアが生まれていますよね。どこを見に行こうか、迷ってしまいます。
K:アートフェアはもちろん一般の方でも普通に見て回ることができますし、作品の価格も10万円クラスのものからありますから、ぜひ一度行かれてみてはと思います。フェアに来たら、気軽にどんどん値段を聞いてみてください。最新の作品と情報が行き交うアートフェアは、展覧会を見るのとはまた違う、アートの醍醐味だと思いますよ。 |

Art Basel 35での小山登美夫ギャラリー展示ブースの様子。

村上 隆の作品(左)。

三宅信太郎の作品 「Art Unlimited」会場に設置。 
ロバート・ロンゴ(他ブースの展示より)。 
ダミアン・ハースト(他ブース展示より)。 
若手ギャラリーが集まるアートフェア「Liste04」も同時期に行われている。

「Liste04」会場風景

フェア会場にて。ブース前小山登美夫氏(左)。 |