トップページ  >  お役立ちアートコラム  >  海外アートフェアレポート
Buyer Tossy Forn New York
このコーナーではタグボートの新米バイヤー、通称“トッシー”がアート・ディーラーのS氏に同行してニューヨークでの買い付けに行ったときの模様をレポートいたします! 一週間、無我夢中で走り回ったという彼女の奮闘ぶりを、今月の新着作品情報と合わせ、どうぞお楽しみ下さい。
【“トッシー”プロフィール】
某外資系金融会社に勤務の後、一転してアートの道へ。
現在、@Galleryタグボートの新米バイヤーとして日々奔走しています。
Tossy
S氏 : N.Y.、ロンドンと幅広いネットワークを持つ屈指のアート・ディーラー。特にNYではギャラリーや作家本人との強いパイプを持ち、新進作家の目利きに定評がある。
@Galleryタグボートでは作品買い付けにあたってギャラリスト・小山登美夫氏と共にオフィシャル・アドバイザーをお引き受けいただいています。

ボス : タグボートの事業責任者。アートの専門家ではなく、ビジネス専門の30代後半のおとうさん。
「新しい人に新しい絵画を」を合言葉に、自分と同じような多くの人々が、当たり前のように安心してアートを楽しめるマーケット作りに邁進中。
好きな作家リュック・タイマンス(←このセレクトは「人生に閉塞感を感じている?」との周囲の声)

  2004年3月10日〜ニューヨーク到着

From : トッシー

皆さんおはようございます。
飛行機が遅れ、予定よりN.Y.に到着するのが大幅に遅れてしまいました!

すでに夕方の到着となり、早速ヴィック・ムニーズ宅のプライベート・パーティーに出かけました。
ヴィックはホイットニー美術館で2001年に行った個展でも知られるように、今やNYのアートシーンでもっとも注目されている作家の1人です。実際に会ってみると全然気負ったところはなく、とても気さくな人でした。ブラジル出身という点が、彼の明るく社交的なキャラクターにぴったりとマッチしている気がしました。


パーティーには彼の作品のコレクターやThe Armory Showに現在出展しているアーティストやギャラリストなどが出席していましたが、誰とでも分け隔てなく接している彼の姿勢に感動。また、私が日本からお土産に持っていったおもちゃ(ドラゴンボールのフィギュア)に、子供のように大喜びしてくれたことが嬉しかったです!



From : ボス

無事到着、安心しました。あくまで「お客様の代表」という立場からの視点を忘れずに!
ヴィックが来日する機会があれば、是非お客様とのコミュニケーションの場をつくりたいですね。


  写真 ヴィック・ムニーズ近影
ヴィック・ムニーズ氏。気さくでキュートで、創造力あふれる雰囲気が「アーティスト」




  2004年3月11日 〜The Armory Show(アーモリー・ショー)・プレビュー

From : トッシー

今日はThe Armory Show(※アーモリー・ショーについて詳しくはこちらをご覧下さい)のプレビューに行ってきました。プレビューにも関わらず既に買い物をしている人たちが何名もいらっしゃいました。また会場の大きさにびっくり。これだけ多くのギャラリーが一同に会する機会は、顧客にとってもとても便利で、とにかくわくわくしますね。全部見るには一日ではとても足りない。とりあえずサラッと全体をチェック。

ヴィック・ムニーズの「ペレ」(チョコレートで描かれている)を発見!ヴィックの典型的なポートレートの作品で、ペレは言うまでもなく偉大なサッカー選手でもあり、ワールドカップに向け日本のサッカー熱もまた盛り上がりそう!ぜひ購入を検討したいと思います。

また、S氏によれば、今回のThe Armory Showのカタログの表紙にもなっている、リサ・ライターの版画が発売されるようになったら、即買いだとのこと。ニューヨークでは既にかなり有名になってきているが、5月のオークションでも作品が出てくるはずなので更に評価が高まり、要注目! ということです。




From : ボス

たくさんの情報のなかで、何が私たちのお客様にとって良いものなのか?つねに考えましょう。このわくわく感をしっかりと伝えたいですね。リサ・ライターは、30代後半の私にとって、何かノスタルジックな感じがしますが、一方で直感的なかっこよさが伝わりますね。イイですね!
  写真 ヴィック・ムニーズによる「ペレ」
ヴィック・ムニーズの「ペレ」。
サッカーファン垂涎の一品?!



写真 アーモリーショーカタログ表紙
The Armory Showカタログの表紙も飾ったリサ・ライター。人気急上昇中の作家。



  2004年3月12日 〜アーモリー・ショー再訪&夜のウィリアムズバーグ

From : トッシー

昨日に引き続き、再びアーモリーへ。閉店の夜8時まで会場をくまなく歩きまわりました。週末ということで、NYの一般市民もたくさんいて、なんと入り口の前には300メーターぐらいの列ができていた。アーモリーは毎年活気が倍増していると聞きました。作品も非常に早い回転率で売り切れているとのこと。

夜はウィリアムズバーグに行ってきました。今日だけ特別にこの界隈のギャラリーが深夜0時までオープンしていると聞いたからです。さすがは今もっとも若手のギャラリーが元気というウィリアムズバーグだけあって、エネルギーに溢れている作品にいくつも出会えました。


From : ボス

くまなく歩きクタクタでしょう。お疲れ様。こうやって足で歩き、たくさんのギャラリーの方々と直接話をすることは、生の情報を得るためにとても大事なことです。チェルシーに続くNYアートのホットスポット「ウイリアムズバーグ」は、次回の訪問で徹底的にチェックしてみましょう。必ず何かありそうですね!

  写真 ヴィック・ムニーズ近影
The Armory Showの会場でチャック・クロース氏にお会いしました! 




  2004年3月13日 〜Whitney Biennial 2004(ホイットニー・ビエンナーレ2004)、Pace Printsほか

From : トッシー

午前中は「ローラ・オーウェンス、マウリツィオ・カテランと、タグボート扱い作家が4人も選ばれていてなんだかちょっと嬉しい。あらためて、小山さんやS氏の「目利き」パワーに納得です。

その後、タグボートがいつもお世話になっている画廊、Pace Printsを訪問。チャック・クロース、ブリジット・ライリーの作品などをチェック。 こうやってNYギャラリーで、たくさんの絵を前に話をする機会に感謝しつつ、もしここにお客様が一緒にいたら、どんなにいいだろうと思いました。
  写真 Pace Printsにて
Pace Printsにて。

引き続いて「Scope Art Fair」へ。若手のギャラリーが中心になって行う、注目のアートフェアとして知られています。新しい作家がたくさん見られるので有り難い。また、ホテルを会場に使っているところが大変ユニーク。3〜6階の各室がギャラリー空間と化していました。

本日の締めくくりは、Gavin Brown Galleryのオープニング・パーティー。ここはエリザベス・ペイトンの版元です。また、タグボートでも4/5新入荷を予定している、ローラ・オーウェンスの作品も扱っている。ギャラリーの方と話したところ、ローラの人気は相変わらずで新作は全部売れきれのこと。


From : ボス

「Pace Prints」は、タグボートの立ち上げ段階から、良い作品を確かな品質で推薦してくれるNYの老舗です。「日本の方々にも、コンテンポラリーアートの素晴らしさを是非伝えたい」という彼らの気持ちに感謝しつつ、お客様が喜ぶ作品をしっかりとチェックしてください。
  写真 Scope Art Fair
Scope Art Fair。新進気鋭のギャラリーが数多く集まる。


  2004年3月14日 〜コレクター宅を訪問

From : トッシー

午前中は、メトロポリタン美術館で「チャック・クロース」展鑑賞。レゾネを購入する。この展覧会は前日訪問した「Pace Prints」のサポートがあっての事だそうです。

その後、あるコレクターのお家に行ってきたのですが、飾ってある作品のあまり数の多さに圧倒されました。それでもコレクションの3分の1程度だとか・・・もはやここは個人のお宅というより美術館です!

もっと興味を引いたことがあります。それは、このコレクターはいわゆるビジネスで財を成した歴史あるお金持ちなのですが、コレクションの対象が、コンテンポラリー・アートのそれも若く、これからの作家を中心にコレクションを続けているという事実です。すでに有名になった作家ではなく、新しい作家に焦点をあて、彼らの成長を楽しみとするその視点は、「パトロン」といった感じなのでしょうか?こういったところに、海外におけるアートマーケットの底力を見るようでした。



From : ボス

きっとそのコレクターの方は、将来を大きく見越した考えを元に若手の作家を「支援」しているとも言えるのでしょうね。日本でもそのような時代が到来するように、今我々が行っていることがそこにつながっていくように頑張りましょう!
  写真 コレクター宅


マンハッタンのコレクター宅にて。作品の数の多さにびっくり。

美術館も顔負けです。

そしてその作品が、いわゆる「エッジ」なものが多いことにまたびっくり!



  2004年3月15日 〜ArtnetライターのCharlieとランチ

From : トッシー

Two Palms Press (版画工房)で打ち合わせ。若いご夫婦がやっていらしゃるのですが、すでにNYでは評判と信用を得ているとのこと。Two Palms Pressではペイトンも出版しているが、去年のエディションズフェアにあったマーク・ジェイコブズの図柄は全てSold Out!今はソフィア・コッポラを描いた新作のプリントを企画中だという。日本を舞台とした「ロスト イン トランスレーション」の監督でもあり、マークジェイコブスの香水のCMにも出ているし、ソフィア・コッポラのプリントが制作されたら、是非日本のお客様にお届けしたいです。そのために早めに彼らと交渉をいたしました。

お昼、ArtnetでライターをしているCharlieとランチ。Artnetとは、アート・ビジネスに関わる人すべてが必ずお世話になっているはずの、「アートに関する巨大なデータベース」です。作家情報から、全世界のオークション価格、リアルなトピックなどが満載です。

CharlieはそのArtnetにて、作家/作品のレビューやリコメンド、美術館/ギャラリーの展覧会の批評などをしています。
そのCharlieが、今一番注目している作家をこっそり教えてもらいました。

まずは「ローラ・オーウェンス」、そしてやはり「エリザベス・ペイトン」、最後に「ポール・ヘンリー・ラミレス」という作家だそうです。
子供の時からアートに接しているCharlieは、ピーター・ハリーとは高校からの大親友。さらにドナルド・ジャッドは親戚筋にあたるというから2度驚き!アートってやっぱりDNAや環境?そんなことはないですよね。誰もが楽しめるからこそアートです。

写真 ペイトンのリトグラフ
Two Palms Pressにて。
エリザベス・ペイトンのリトグラフ。これが噂の「マーク・ジェイコブス」
写真 ライターCharlie氏
ArtnetでライターをしているCharlie。
彼のおうちもアートでいっぱい。


From : ボス

お疲れ様!後半に入りだいぶ調子が出てきているようですね。今日のCharlieのように、ギャラリスト以外の方と話をして、情報を得ることは非常に重要です。Charlieのような方は、「顧客視点や中立性」を忘れずに作家や作品と接しています。ギャラリーの方々は作家や作品に愛着と誇りを持っているので、もちろん自信をもってそれをお勧めするでしょう。でも、Charlieのような視点からの意見は、顧客の判断にとっても非常に有益なことが多いです。


  2004年3月16日 〜雪のニューヨーク

From : トッシー

今日はNYでは吹雪で、15センチぐらい雪が積もりました。明日、飛行機が無事に飛ぶかどうかが心配。

午後はソーホーにあるBrooke Alexanderへ作品を見に行きました。最近は有名ブランドのショップやアパレルショップが軒を並べ、ギャラリーの多くはチェルシー地区へ移転しています。コンテンポラリー・ギャラリー発祥の地といえるソーホーに、今でもギャラリーを構える老舗で、タグボートが日頃大変お世話になっているところです。

彼はこのNYのコンテンポラリー・アートの歴史そのものような方であり、詳しくは下記↓の本に、その姿が書かれています。タグボートに参画してから、私の愛読書のひとつです。とてもおもしろくてお勧めしたいです。皆さんもご興味があれば是非いかがですか?

『アート・ディーラー 現代美術を動かす人々 PARCO PICTURE BACKS』
(木下哲夫訳 パル出版) →Amazon


チャック・クロース、ソル・ルウィット、サム・フランシスやタグボートでも既に複数のお客さんにご購入頂いたロバート・ロンゴの新作を見せてもらいました。「欲しい!」と思わせるだけの作品が数多くあり、日本に戻りじっくりと購入を検討したいと思っています。


From : ボス

すでに一定の評価を得ている上記の作家も、常に新しい試みをもって作品を世に送り出しています。こういった作家は、既に世に出ている作品数も多く安心はできますが、多くの作品の中から何を選べば良いのか?悩みますよね。こういった時に、Alexander氏のコメントやその裏づけなどは、お客様にとって非常に参考になりますよね。そういった視点をいつも忘れずに!
  写真 SOHOにあるBrooke Alexander Editions


SOHOにあるBrooke Alexander Editions。
数多くの著名作家の版元として有名。

彼のギャラリーは多くの作品を一度に並べるという展示の形式で、他のギャラリーとは少し雰囲気が違いました。でも、何かたくさんの中から選べるというワクワク感があります。



  2004年3月17日 〜ニューヨーク出張を振り返って

From : トッシー

今回のニューヨーク出張は今日でおしまいですが、日本に戻ってくる飛行機の暗がりの中でこの1週間のことをゆっくりと思い返していました。

滞在中、S氏のお知り合い、LA出身のアート・ディーラーと彼女のアート友達とディナーしたときのことを思い出しました。彼女の話では、つい最近までLAは、人々の興味がアートに向かず、マーケット的に乏しかったが、この10年間でギャラリーも増え、アート市場が急速に成長し始めているとのこと。

経済状況が上向きになるのと合わせて、アートを買う一部の人たちが出始め、さらにその人たちに影響を受けた友人が買う、という好循環が起こったことが大きい、と言っていました。「アートの良さは伝播しやすい」ということか?日本もそうなるように、タグボートがその手伝いが出来るように、もっとがんばりたいな!

新米バイヤーですが、お客様の視点に立ち、気軽に安心して、しかも新しい驚きや喜びを感じていただけるように、より良い作品をお届けできるよう努力いたしますので、@Galleryタグボートをこれからもよろしくお願いいたします。

次回の出張は5月の予定です。まだまだ頼りないですが、皆様の代表として頑張ります。ご意見やご叱咤、こんなこと、あんなことを知りたいなど何でも結構です。どしどしお声をお寄せください。お客様のお声を元に、作品の調達に邁進いたします。


From : ボス

大変お疲れ様でした。たくさんの人や絵画、そして情報に接した中で、常に「顧客視点」をもとにお客様にとって大事なことは何かと考え、実行することです。トッシーが新米から少しづつ成長しているのが眼に浮かびました。次回はもっとパワーアップしたレポートを期待していますよ。

  写真 Brooke Alexandar
Brooke Alexandar氏と。

彼にとっては赤ちゃん同様な私ですが、厳しくも暖かくいろいろと教えてくださいます。