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バイヤーレポート | ニューヨーク | クリスティーズ・プリントオークション編 2004年 秋
こんにちは、タグボートの新米バイヤー"アスカ"です。前回、ロンドン出張の模様をレポートさせて頂いたばかりですが、立て続けに買い付けの出張が入り、またまた行ってまいりました。今回は、11月のニューヨーク。この時期、美術業界はオークションシーズンで、NY、ロンドンなどでセールが目白押しです。中でも代表的なクリスティーズのプリント・セールと、アーモリーで行われているプリント・フェアの模様をレポートさせて頂きます。どうぞお楽しみ下さい!


【アスカ・プロフィール】
ロンドン・クリスティーズで西洋美術史とアンティークを学ぶ。オークション会社でのインターンを経て、帰国。異業種から突如コンテンポラリーアートに目覚め、一転タグボートのバイヤーに。アミノ酸タブレット片手に作品調達奮闘中!


クリスティーズオークションの前に立ち寄ったリキテンスタイン財団にて。回顧展のカタログを頂きました!


  2004年11月1日 NY到着〜クリスティーズ・セール下見〜

NY到着
午前10時半にNY,JFK空港に到着。セキュリティが厳しくなり、顔写真と指紋を取られるようになりました。入国手続きも済み、荷物をピックアップしていざ市内へ向かいます。
お天気も良く、幸先のいいスタートです。ホテルにチェックイン後、早速ロックフェラーセンターにあるクリスティーズへ。11/3に行われるセール「Prints & Multiples」の下見で商品チェックをします。



エントランスの前に、リキテンスタインの大きなオブジェが! 
これも11/10のイブニングセールに出品された、れっきとした"商品"なのです。
 
このエントランスをくぐると、数々の美術品があるクリスティーズです!


Christie's Preview

セールルームのある2階に上がると、リキテンスタインが迎えてくれました。

カタログ記述だけでは見えてこない、細部のコンディションをチェックします。

額を外してくれるスタッフの方々。

ビスで留まっている額を外すのは一苦労。でも、買うためには入念なチェックが必要。

今回気になったのは、アンディ・ウォーホルの人気作品「Flowers」の5枚組です。
額装を外してもらい、紙端の折れや曲がりがないか、色味などをチェックします。
    
5種類を1セットにしての出品です。

その他の作品

アンディ・ウォーホルの「ミックジャガー」。
 
トム・ウェッセルマン
大人気のウェッセルマンが出品されていました。

ロバート・ロンゴ「Men In the Cities」
11/3のセールに臨むために、しっかりと見てきました。お目当ての作品が難なく落とせるか、それとも切迫した競りになるか…、2日後にまた戻ってきます!



  2004年11月2日 チェルシーのギャラリー巡り/フランク・ステラに会う!

今日は朝から、地下鉄に乗ってチェルシーに行ってきました。ギャラリーが立ち並ぶチェルシー地区では、あちこちで展覧会や新作発表が行われています。

Robert Miller Gallery 「草間彌生展」
老舗のギャラリー、ロバート・ミラー・ギャラリーのウィンドウから覗く白いオブジェ…、見覚えのあるかたちと思って入ってみると…、「Yayoi Kusama」の文字が! ちょうど草間彌生の展覧会が行われている真っ最中でした。

副題が「Steel Balls And Soft White Objects」となってい て、入って一番奥のメインギャラリーでは地面を覆いつくすかのようにスチールのボールが敷き詰められ、壁には95年の作品"インフニティスターズ"が飾られていました。(右の写真)。このペインティングはタグボートで扱っている版画作品、「インフニティ・ネッツ」と同シリーズの柄ですが、また違う質感と迫力があります。

これらの作品は、去年の夏、ホイットニー・ビエンナーレの会期中にセントラルパークに展示されていたそうです。おおよその値段は、120,000ドルから180,000ドルとなっています。
日本より先にアメリカで認められた作家なだけに、たくさんの人が集まってきていました。


ロバート・ミラー・ギャラリーの草間彌生展。

窓から見えたいそぎんちゃく!? 91年の作品"Heaven & Earth"です。

床一面に敷き詰められたスチールボール。タイトル「Narcissus steel mirrored ball」の通り、作品を眺める私たちの姿が写しこまれます。


フランク・ステラのアトリエを訪問
 

フランク・ステラ氏とのツーショット。感激!
Chelseaを堪能した後、フランク・ステラのスタジオにお邪魔してきました。ガレージのような場所が彼のスタジオになっています。2Fに上がると、巨大なオブジェが待ち受けていました。2メートル四方はありそうなのですが、これでも野外彫刻の「模型」だそうです。本作品は一体どのくらいの大きさなのでしょう。これまで訪れたアーティストスタジオの中で、一番スケールが大きく、ダイナミックだったのがこちら、ステラのスタジオです。床には作品から滴り落ちた絵の具がこぼれていましたが、一缶ひっくりかえしたような勢いです。鉄のオブジェ、アルミニウムの作品、全てが大胆で、迫力満点でした。
1Fに下りると、板から表面をはがしたばかりの、およそ3メートル丈くらいの作品が横たわっていました。こちらは、特別に刷った版画を切り抜いて、コラージュした作品がありました。

初めて見る私でも、「今」の斬新さを感じる作品ばかりで、これらが15〜20年前に制作されていたということに、彼のスケールの大きさを感じました。スタジオのカウチでシガーをくゆらす姿が印象的でした。
 




  2004年11月3日 クリスティーズ・セール/プリントフェア・プレビュー

Roy Lichtenstein財団を訪問
本日は朝、リキテンスタインの回顧展について伺うために、Chelseaにあるリキテンスタイン財団を訪れました。この展覧会は2003年にデンマークの現代美術館、ルイジアナミュージアムから始まり、ロンドンのヘイワード・ギャラリー、マドリッドの国立ソフィア美術館を経て、現在はサンフランシスコ現代美術館にて開催中です。

財団のある場所は閑静な住宅街。外側からは全くわからず、ドア一枚くぐるとリキテンスタインのオブジェやオリジナル作品が山とあるのです。そんな知る人ぞ知る場所に行けたのは、我らがタグボートオフィシャルアドバイザー、広本さんのおかげ。リキテンスタイン本人はもちろん、彼のアシスタントを務めていたカッサンドラさんとは旧知の仲で、昔話に花が咲きました。


リキテンスタインが使っていた絵の具の瓶なども保存されています。
 
リキテンスタインのオブジェや作品があちこちに!
 
財団のカッサンドラさんとタグボートのオフィシャルアドバイザー、広本伸幸氏。



Chrstie's Afternoon Session
いよいよオークション会場へ。今回は、午後のセッションなので割とカジュアルですが、イブニング・セールともなると非常に盛り上がります。
レジスターデスクでパドル(番号が書かれています)という札を受け取り、会場へ。満席で活気もあり、どんどん進行していきます。長いビッドでも1分から1分30秒くらい、短いものだと15秒くらいでハンマープライスとなります。1時間で、100作品も進みました。

セールのハイライトその1は、リキテンスタイン。なんだか今日はリキテンスタインデーのようです。比較的予想落札価格内で収まっていますが、ビッドする人数の多いこと! ビッドの仕方には3通りあり、我々のようにオークション会場で直接パドルを挙げる方法、予め書面で金額を決めておく、または電話で参加する方法があります。壁際には何台もの電話が置かれ、スタッフが電話口のお客様の代わりにビッドしていきます。オークショニアは一瞬で誰がビッドしているかを見分けなくてはならず、さらに流暢に金額を言わなくてはなりません。金額に加え、「前方のジェントルマン」などと、誰がビッドしているかを指し示すこともあります。この独特の喋り方をマスターする為に、演劇学校に通うそうです。確かに演技力が必要!

ハイライトその2は、セット作品。ロバート・ロンゴの「Men in the Cities」シリーズ5枚組は、なんと予想の3倍の値がつきました! ロンゴ人気は確実に高まっています。また、タグボートでも人気の高い村上隆のオフセット20枚組も約3.5倍まで上がりました。セット内容には、Flower, Genki Ball, Kaikai Kiki Newsなどが含まれていて、タグボートでも売れ筋の作品とNYマーケット人気が噛み合っていることを実感しました。


また、セールの後半を盛り上げたのは、ウォーホル! プレビューで目を付けていたFlower, マリリンはもちろん、タグボートで最近入荷した「サムという名の猫」も、高値で競り落とされていました。



11月10日に行われるセールに出品されるマウリツィオ・カテランの彫刻。
 

ロバート・ロンゴの"Men In the Cities"。5枚組みのセットでした。予想の約3倍の値段で落札されていました。
Print Fair Preview
11月のNYでオークションと同じく重要なのが、プリント・フェア。前回訪れたロンドンのFrieze Art Fairとは異なり、こちらは版画に特化しており、17世紀レンブラントの銅版画から、タグボートの扱うコンテンポラリーまで、幅広い品揃えです。プレビューのチケットは$200! にも関わらずたくさんの人が集まって大変にぎやかでした。日本で探しにくい人気の作品、これからお客様にご紹介したい作品を見つけるために、会場を端から端まで歩き尽くしました。



プリントフェアの会場にて。中央に見えるのは、リサ・ライター!


どのフェアに行っても、プレビューにはたくさんの人が集まります。


  2004年11月4日 プリントフェア&ブックフェア

Print Fair
昨晩プレビューで訪れたプリントフェア、今日は気になっている作品をチェックします。



会場入り口にはおなじみのロゴが。NYの後は、サンフランシスコ、L.A.で行われます。
 
昨日のパーティーとは打って変わり、今日はビジネスっぽく落ち着いた雰囲気の入り口。
 
ローラ・オーウェンスの2004年の新作が来ていました。彼女らしいかわいらしい作品です
 


ロンドンでもN.Y.でも人気のジュリアン・オピーです。
 
ジュリアン・オピーが壁一面に!
 
キキ・スミスの新作もありました。ラメがかかって、こちらもかわいい!
 

アンディ・ウォーホルのルネッサンスモチーフの作品。
急速に値段が上がっています。


エディション&アーティストブックフェア
その後Chelseaに移動し、エディション&アーティストブックフェアという、コンテンポラリーに焦点を絞ったフェアを訪れました。こちらはビルのフロアで開催されていて、ギャラリーのオープニングのようでした。オープニングナイトと称されるブックフェアプレビューにはDJが入り、賑やか!

エッジな若いアーティストを輩出しているマイケル・スタインバーグ氏のスタンドに立ち寄るとミルレー・ヒューズ氏が来ていました。ヒューズ氏は、彼の作品と同じような表面が光る加工のジャケットをお召しになっていて、思わず「それも作品!?」と聞いてしまいました。何でも作品のイメージに合わせてオーダーしたそうです。


ブックフェアの会場へ。
DJブースがあり、フェアのプレビューというより、パーティー感覚。
 
ミルレー・ヒューズ氏。以前ボスがスタジオにお邪魔したこともあります。


人気沸騰中のエリザベス・ペイトンマーク・ジェイコブスのカラー版も出ていました。

ジェフ・クーンズの「パピー」。フラワーベースにもなるオブジェ。花を生けた感じがまた愛らしい。

ブックフェアは若手作家の面白い作品がたくさん。こちらはブラックユーモアの効いた塩&胡椒入れ。




  2004年11月5日 NY最終日〜クリスティーズ・プライベートビューイング・パーティー〜
Chelsea New Museum
リニューアルオープンしたNew Museumを訪れました。
1977年にオープンした当初は、NY市で唯一のコンテンポラリーアートに特化したミュージアムでした。アメリカに限らず、世界中の若手アーティストの作品を紹介する場所として、ウィリアム・ケントリッジやポール・マッカーシーの展示も行われました。今回で6回目を迎えるAltoids Collectionの展示を見てきました。1998年に創られた本コレクションは、毎年、10人ほどのキュレーターたちが選ぶ新進気鋭作家の作品が一堂に顔を揃えています。NewYorkの"今"を感じられます。



New Museum 「Altoids Collection」のフライヤー。
←左のフライヤーにも映っていますが、日本の浮世絵とアメリカン・ポップの融合した作風の作家、イオナ・ロジール・ブラウン(写真左)は新進気鋭の作家。タグボートでもいち早く入荷しました!


Chelsea ピアの近くにあるNew Museum

Christie's Private Viewing Party
11月10日のコンテンポラリー・アート・セールはとても規模が大きく、プレビューを兼ねたオープニングパーティーがありました。NY最後の夜はこちらのパーティーにお邪魔してみました。プライベートオンリーとなっていますが、割とアクセス自由な雰囲気です。が、中へ進んでいくと着飾ったマダムやお金持ちの紳士など、独特の洗練されたムードが漂い、にぎわっています。作品に直接触れられるくらいの距離で展示されているので、セキュリティのガードマンがあちこちに立っています。それもそのはず、展示されている作品は、ウォーホル、リキテンスタイン、へリング、どれも巨匠の高額品ばかり。

 



オープニングパーティーの様子。ウォーホルやウェッセルマンを見ながらグラスを傾けます。
 


セール出品予定の奈良美智の作品群。
 
キース・へリングのペインティングと彫刻を一緒に飾ったヘリング・コーナーもありました。
 

今回はクリスティーズNYの日本人スタッフ、Yさんのおかげでまだ展示中のメインセールルームを見学でき、コンテンポラリーのスペシャリスト、アンドリューとも会えました。彼は奈良美智や村上隆をはじめ、日本人アーティストを大々的に取り扱い、カタログの表紙に起用する、など革新的な試みをする方です。今回も、セールに出品される奈良美智の作品について熱く語ってくれました。


NY買い付けの感想
11月はNYのみならず、ロンドンやパリでもオークションとフェアのピーク時期にあたっていますが、実際に行ってみると、まさしく芸術の秋まっさかりという印象でした。今回見つけた作品や情報を元に、タグボートの商品充実、現代アートの生の情報を、随時お客様に届けて行きたいと思います! 
今後もタグボート及び新米バイヤーをよろしくお願い申し上げます。

クリスティーズYさんとスペシャリストのアンドリューと。