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幕内政治が覗いたおすすめアートイベント情報
2007年4月アーカイブ

《4/25》
・須藤由希子 「この庭に ~黒いミンクの話」原画展
GALLERY at lammfromm
東京都渋谷区上原1-1-21 山口ビル1F
3/24(土)~4/26(木)
月~金:12:00~20:00/土:11:00~20:00/日祝:11:00~19:00
須藤由希子3/24DM.jpg

やさしい風合いが心地よい鉛筆画。
素朴な風景、場面が、やわらかな感触でていねいに描かれていたのが印象的で、鉛筆の鉛色が紙の白をよりやさしく引き立てているような風合いも、なんともほっこりと和める雰囲気で。
この展示では紙に描かれた鉛筆画のみの出展でしたが、現在オペラシティで開催中のProject Nではキャンバスに描かれた作品も出展されているようで、ぜひ観に行ってみたいです。


☆オノマトペ vol.3 ― 回帰線上のpale note CHIHIRO ABE×KUMIKO YAGI
@@ギャラリーエス S zone
東京都渋谷区神宮前5-46-13 ツインエルビル
4/24(火)~4/29(日)
11:00~19:00(最終日:~17:00)
オノマトペDM.jpg


・本多久美子 個展
@@ギャラリー悠玄
東京都中央区銀座6-3-17 悠玄ビル
4/24(火)~4/29(月)
11:00~19:00(最終日:~17:00)
本多久美子/24DM.jpg

渋めの色調で繰り広げられる、ふわりとした日本画。
入口すぐの手のひらの大きさの小品や、大きな画面でのどこか牧歌的というか、のんびりとした、悠久の雰囲気が漂う場面などが印象に残ります。
また、ところどころに登場している動物の素朴なかわいらしさもいい感じです。

本多久美子01 本多久美子03

本多久美子02


☆<倉重迅「His Shadow Enwraps Me」
ミヅマ・アクション
東京都目黒区上目黒1-3-9 藤屋ビル2F
4/25(水)~526(土)日月祝休
11:00~19:00
倉重迅4/25DM.jpg


・Yoo Seung Ho展“echowords”
MIZUMA ART GALLERY
東京都目黒区上目黒1-3-9 藤屋ビル2F
4/25(水)~526(土)日月祝休
11:00~19:00
Yoo Seung Ho 4/25DM.jpg

ミヅマのメインスペースで今回フィーチャーされているのは、韓国のアーティスト。
森美術館での「秘すれば花」でも出展されていた方で、モノクロームの作品がずらりと並んで渋い世界を作り上げています。
遠めで眺めると実にオーソドックスな水墨画の風合いなのですが、至近で観ると遠目では滲んだグラデーションに見えていた部分でさえも、すべてハングルやアルファベットの文字で描き出されていてとにかく驚かされます。
そして、特別大きい画面というわけではないのにもかかわらず、大陸的な堂々とした雄大さ、スケールの大きさを感じます。


・第28回グラフィックアート『ひとつぼ展』
ガーディアン・ガーデン
東京都中央区銀座7-3-5 リクリートGINZAビルB1F
4/9(月)~4/27(金)日祝休
12:00~19:00
ひとつぼ展4/9パンフ.jpg

既知のアーティストが多数出展されていた今回のひとつぼ展。
限られた壁のなかでそれぞれのアーティストがしっかりと個性を発揮していて楽しめました。

ふわりとピンク色が広がる山城えりかさん、虫の死骸を精緻に銅版で再現した齋藤悠紀さん、ペットボトルのキャップを使ってキュートな世界を繰り広げているmayuさん、今回はじめて拝見して、その細かな描き込みに驚かされた増子博子さんなど、印象に残るクリエイションが個人的に多かったなか、グランプリに選ばれたのが服部公太郎さん。
作品はキャンバスを分解して4本足の動物に作り替えてられた、いかにも服部さんらしい「あるもののもともとの姿、意味に別の意味を与える」というもの。そのアプローチのユニークさに加えて、そこにポップな感性も織り込まれています。
その服部さんが個展でどんなイメージの提示をもたらしてくれるか、楽しみです。


《4/27》
ART AWARD TOKYO 2007
@行幸地下ギャラリー
東京都千代田区丸の内2
4/27(金)~5/27(日)
11:00~20:00
AAT2007.gif


《4/28》
☆ShinPA 東京藝術大学デザイン科描画系
おぶせミュージアム
長野県上高井郡小布施町大字小布施595
2/16(金)~5/15(火)
9:00~17:00
ShinPA2007パンフ.jpg


☆山本修路「松 From lammfromm」
GALLERY at lammfromm
東京都渋谷区上原1-1-21 山口ビル1F
4/28(土)~5/29(火)
月~金:12:00~20:00/土:11:00~20:00/日祝:11:00~19:00
山本修路4/28DM.jpg

松岡歩展
@銀座スルガ台画廊
東京都中央区銀座6-5-8 トップビル2F
4/16(月)~4/21(土)
11:00~19:00(最終日:~17:30)
松岡歩4/16DM.jpg


日本画に収められた、エキゾチックなリズム。


スルガ台画廊での松岡歩さんの個展です。
極力少ない数の色彩で作り上げられる独特の世界。
そこに描き出されるモチーフのユニークさ。
そういったさまざまな要素が興味深い日本画です。


入口を入ると、まず2点の大作が。
遠目で観る限りは茶系の色面の広がりに感じられるのですが、至近で見るとそこにはたくさんの花や葉がぼんやり浮かんでいます。


松岡歩@スルガ台10


松岡さんの作品は、地味ながらもたいへん個性的に感じられる色彩が広がります。
土っぽくもあり、または鉄錆のようでもあり...画面の絶妙の凹凸感が独特の渋味、深みをもたらしています。
そこにさりげなく織り込まれるモチーフのエキゾチックな風合い。さらに、幾何学的なかたちが連な模様。
こういったものが、絵のなかに登場する人物の姿と響きあって、そこで奏でられる物語を作り上げているように感じられます。


松岡歩@スルガ台03 松岡歩@スルガ台02

松岡歩@スルガ台01


横向きの女性の憂いを帯びた表情。
その仕草は、独特の色彩とさまざまなモチーフによってさらに引き立てられ、独特の雰囲気を醸し出しています。


松岡歩@スルガ台06 松岡歩@スルガ台05

松岡歩@スルガ台04


小さな画面の作品では、その画面に登場する月、花、動物など、そして幾何学的なかたちの連なりとが織り込まれて、シンプルながらもしっかりと、和とも洋ともいえないユニークな雰囲気がさらりと滲み出ています。


松岡歩@スルガ台08 松岡歩@スルガ台07

松岡歩@スルガ台09


松岡さんの作品からは「夜」のイメージが思い浮かびます。
さまざまなもののかたちがおぼろげになって...でも、だんだんと目が慣れてくるとその姿が浮かび上がってきて、その輪郭もはっきりとしてくるような...。
描かれるモチーフが醸し出すものも含め、そんなゆるやかな時間を実感させてくれる風合いがあるように思えます。


松岡歩@スルガ台11

石塚桜子展
@ギャラリーアーチストスペース
東京都中央区銀座6-13-4 長山ビル3F
4/16(月)~4/21(土)
12:00~19:00(最終日:~17:00)
石塚桜子4/16DM.jpg

封じ込められた、熱い闇。


石塚桜子 09


これまで佐藤美術館でのグループショーで拝見してきた、石塚桜子さんの個展に行ってきました。
初めて拝見したとき、画面表面の艶と、その艶の奥に渦巻く黒の世界の力強さのインパクトが鮮烈に印象の残っていました。


あらためて個展で拝見しても、やはりその異様なまで力強さは圧倒的です。
ニスを何層にも重ね塗りされることで作り上げられる画面の表面の透明な艶は、てらてらとそこにあるものを映します。目の前に広がる虚の世界との距離感、すぐそこにあるのに決して近付けないような遠さを、その透明な膜が感じさせてくれます。


石塚桜子 01

石塚桜子 02


さまざまな色彩が画面のなかに現れていますが、何よりも、黒が印象的です。
すべての色彩の向こう側にはどこまでも続く闇があるように感じさせてくれるほど、どこまでも深い黒。
そしてそこに広がるさまざまな色彩もまた、その黒の引力に抵抗するように、異質の力強さを内包しているようにも思えます。
その色彩によって現されている人面のよなモチーフは、石塚さんの絵の世界に声にならない叫びを轟かサテいるようにも感じられます。


石塚桜子 10 石塚桜子 08

石塚桜子 07


小品においてもその異様な世界は変わらず。
それでいて、やはりその大きさだからこそ展開することができる、実験的とも思えるさまざまな構成が描き出されています。
ぐんとバリエーションを広げているようにも感じられ、このクリエイションの果ての無さを実感します。


石塚桜子 06 石塚桜子 05

石塚桜子 04


挑むような抽象世界。
物理的な独特の質感と奥行きが印象に残ります。


石塚桜子 03

井上裕起展 salaMandala/EDEN
和田画廊
東京都中央区八重洲2-9-8 近和ビル302
4/24(火)~4/30(月)
13:00~19:30(最終日:~17:30)
井上裕起4/24DM.jpg

やわらかな色彩を纏ったサンショウウオ。


和田画廊での、前回の山本麻矢さんに続いて開催される木彫の展覧会。
今回は、井上裕起さんによる、なんともかわいらしい木彫りのサンショウウオがギャラリーの床を這っています。


まず、入口で1匹お出迎え。


井上裕起04


尖った首まわりのエリや、前足後足の指など、本当にひとつの木から掘り出したことが信じられないくらいに精緻で、かつなめらかさが印象的です。


だいたい手のひらに乗るほどの大きさのサンショウウオなのですが、1匹だけ石彫の大きなサンショウウオがテーブルの上に鎮座してます。


井上裕起03 井上裕起02


深く黒光りする表面といい、その表面に浮かぶ石の紋様といい、木彫のサンショウウオとはまた違ってどんとした存在感のインパクトはかなりのもの。
でも、瞳がつぶらだったりして、やっぱり妙に愛嬌もあるんです。


井上裕起01


そして、この石彫のサンショウウオが見下ろすギャラリーの床一面に散らばる木彫のサンショウウオ。
まず、1匹1匹のカラフルな色彩が醸し出すふわりとした幸福感が、感性を包んでくれます。


井上裕起09 井上裕起08 井上裕起07


さまざまな仕草のサンショウウオ。
前脚を立ち上げて首を持ち上げていたり、地面に視線を這わせているものがいたり。
浮き出るあばらの骨なども再現されていますが、やはり空をたゆたう「尾」の姿が、この空間の気の流れさえもやわらかく変えてしまっているように感じられるほどに、優雅に可憐に作り込まれています。
とにかくあの薄さに驚嘆。内側にぐるりと巻き込むような尾など、あらためて本当に彫ったのか、とにわかに信じ難いほど。

それほどまでにていねいに作り込まれ、透明感のある彩色が施されたサンショウウオのひとつひとつに、井上さんの心尽しが滲み出てきているように思えます。
浮き出る木目もまた美しいです。

井上裕起10 井上裕起11


ぱっと明るい空間のそこかしこから放たれるやわらかい色彩が作り上げる浮遊感。
全体を俯瞰したときの幸せな高揚感がたまらなく気持ちいいです。
そして続いて、足で踏んでしまわないように注意しながらそれぞれのサンショウウオに近付いてそこに注ぎ込まれた木彫のスキルの素晴らしさや、精緻に彫り込まれた部分、そして木目の模様などに目を凝らせば、またたくさんの発見と驚きがあるんです。


井上裕起06

forerunners & four eggs 小橋陽介&坂田祐加里
GALLERY MoMo
東京都港区六本木6-2-6 サンビル第3 2F
4/17(火)~4/28(土)日月祝休
12:00~19:00
four eggsパンフ.jpg


見事なまでの陰と陽。


2ヶ月にわたって開催されているGALLERY MoMoの企画、「forerunners & four eggs」の最後を飾るのが、小橋陽介さんと坂田祐加里さん。
墨絵を中心とした坂田さんのモノクロの世界と、どこまでも明るい小橋さんの世界とのコントラストも痛快な展覧会です。


まず、坂田さんの作品。深い夜のイメージ。
和紙の質感もしっかりと残り、そこにグロテスクなモチーフなどが織り込まれ、ダークな風合いが充満しています。


坂田祐加里07 坂田祐加里08

坂田祐加里06


精緻に描き込まれた部分の異様なまでの妖しさ。
墨によって植物や虫が細やかに、かつ美しく再現されています。
色彩がないぶん、余計にその妖しさ、おどろおどろしさが押し出されているような感触です。


坂田祐加里05

坂田祐加里04


メインのスペースには水墨画によって構成されていますが、カウンター付近には油彩の作品も。
画面のなかでうねる鮮やかな色調から受けるインパクトは結構鮮烈。


坂田祐加里01 坂田祐加里02


おそらく水墨画も坂田さんにとって「冒険」だと思うのですが、そのチャレンジングな姿勢は油彩の作品のユニークな構成や画面表面の風合いからも充分に伝わってきます。


坂田祐加里10

坂田祐加里09


この夜の世界を通過して隣の小橋さんのコーナーへと足を踏み込むと...


小橋陽介002


出ました自画像!
うってかわって明るい色彩によって展開される突き抜けたポジティブな世界がそれぞれの画面のなかで展開されています。
素朴だったり、どこか切迫しているような表情だったり...ホントにさまざまな「自画像」が登場し、そのダイナミックでアグレッシブな雰囲気は痛快です。


小品も多数展示されています。
かわいかったり、やけにリアルだったり。


小橋陽介006 小橋陽介004 小橋陽介003

小橋陽介005


絵のなかとはいえ、これほどまでに「やりたい放題」やられるともう呆れちゃうというか...「しょうがないなぁ(笑)」といった感じで。
しかし、どこまでも奔放で伸び伸びとしたその自由人っぷりがたまらなく楽しいんです。
むしろ「どんどんやってくれぇ!」とエールを送らずにはいられないという、そういうポジティブさに溢れています。


小橋陽介001


二人のアーティストが作り上げた質感がまったく違う「深み」が印象的です。

タムラサトル POINT OF CONTACT ―接点―
Takuro Someya Contemporary Art
千葉県柏市若葉町3-3 TSCA KASHIWA
4/21(土)~5/27(日)月火水、5/10~5/12休・4/30開廊
12:00~21:00
タムラサトル4/21青図.jpg

SPARK!!!

タムラサトル@TSCA 14


昨年のGallery Qでの個展や、今年最初のTSCAのショーケースなどで作品を拝見しているタムラサトルさんの、満を持してのTakuro Someya Contemporary Artでの個展に行ってきました。


入口を入るとまず、その吹き抜けのスペースでさっそく...


SPARK!!!

タムラサトル@TSCA 06


天井から吊り下げられた砲丸、その先に接点となる金属の棒が取り付けられ、床に置かれた円形の大きな金属板の上を揺れる砲丸が通過するたびにその先の棒が床面に接触するというダイナミックな作品がいきなり展示されています。


タムラサトル@TSCA 04 タムラサトル@TSCA 07

接点部分が接触するたびに、その傍に床置きされた電球が光り、瞬間の接触だとその灯りも一瞬灯り、砲丸の振幅が狭くなって円のなかを棒が引きずられるようになると煌々と明るく光ります。
その引きずられる棒の様子は、これだけ機能のみを追求された出で立ちの作品のなかにあって妙に有機的で、眺めているとだんだんと和んでくるから不思議。


タムラサトル@TSCA 02

階段を昇ると今度は、回転する接点が。
1分置きに回転と停止とを繰り返し、ふたつの円形の金属板に接触する瞬間とその内側を引きずるところで火花が散っています。


タムラサトル@TSCA 12 タムラサトル@TSCA 10


もちろんこちらにも電球が。
回転中、ぱんぱんに光を放ちます。


タムラサトル@TSCA 09


接触部分の「ジー」というノイズ、さらには接触面にぶつかる瞬間の「ガン!」というノイズもかなりのインパクト。
これだけ大掛かりでありながら、肝心なところが究極的にアナログなのがまた面白くて、愛嬌もあるように感じられるんです。


タムラサトル@TSCA 08

続く細長い空間では、Gallery Qでの個展にも出展されていたものをこの空間のために再構築された作品が。


タムラサトル@TSCA 20


要は全体を延長しただけではあるのですが、チェーンに引きずられて向こうまで行って還ってくるという単純な仕組みでありながら、その時間が心地良くて。


タムラサトル@TSCA 16 タムラサトル@TSCA 15


もちろん電球も。
ただ整然と並べてあるだけなのに、この姿にも愛着が湧いてきます。


タムラサトル@TSCA 18


棒が細長い板を引きずった痕も生々しく残ります。
こちらも例に漏れずアナログな仕組みですが、その単純な構造が醸し出すどこか不器用な感触が面白いんです。


タムラサトル@TSCA 13

最後のスペースでは小品が、壁と台とに並んで展示されています。
展示されている大きな作品のミニチュア版のような作品も。
そして、それぞれの設置部分が放つ火花は線香花火のようにちりちりと地味で、接地している時の「ヂー」というノイズも実に小さいのですが、それがまたかわいいんです。


壁掛けで、回転するディスク部分の接点に起こる火花。

タムラサトル@TSCA 21 タムラサトル@TSCA 22


吹き抜けのところに展示された作品のミニチュア版。
振り子の揺れがちょっとせわしなく感じるのもご愛嬌。

タムラサトル@TSCA 23 タムラサトル@TSCA 24


壁掛けで、階段を昇った最初のコーナーの作品のミニチュア版。
大きな作品ほどの派手さこそないものの。そこに起こる実に小さなスパークが何故かいとおしくて。

タムラサトル@TSCA 25 タムラサトル@TSCA 26


台上の作品で、先の曲がった接地部分が金属面を回転していて、その痕がくっきりと残っています。
小さな丸みを帯びたそのかたちは、絶妙な美しさを放っているように感じるのです。
そして、そこでスパークする小さな火花をよりクリアに見えるように、電球の灯りを遮る遮光板が取り付けられていて、それもまたなんともかわいらしい。。。

タムラサトル@TSCA 27 タムラサトル@TSCA 28


台上の作品、接地は回転するディスク。
このディスクはタムラさんの名刺代わりのユニークなクリエイションです。

タムラサトル@TSCA 29 タムラサトル@TSCA 30

タムラさんの今回出展された火花系の作品は、余計な装飾は一切なく、単純にスパークさせるための機能のみを考えて製作されていて、その潔さはホントに痛快です。
そして、例えば接触部分に取り付けられたラジエーターやある程度の可動範囲を確保するためのスプリング、ちいさな火花を見やすいように取り付けられた板など、その究極的なスマートさのなかにちょこちょとっと取り入れられるアイデアの面白さも見逃せません。

そうやって提示されるスパークの数々。
派手にバチンと弾けるものからチリチリと線香花火よりも地味なものまで、それぞれの一期一会の出会いも楽しく、エキサイティングでありながらほっと和める世界が繰り広げられています。


何より、このTakuro Someya Contemporary Artのたっぷりの空間でそれを体感できるのはホントにありがたいです。

たしかに都心からだとちょっと遠いですが、足を運ぶだけの価値があるエンターテイメントです!


タムラサトル@TSCA 17

大森暁生展 -Lunatic Party-
新宿高島屋 10階美術画廊
東京都渋谷区千駄ヶ谷5-24-2
4/19(木)~5/1(火)
10:00~20:30(4/21、最終日~16:00)
大森暁生4/19DM.jpg


リニューアルオープンを迎えた新宿タカシマヤに新たにできた美術画廊。
こちらの画廊はこれまでの百貨店のなかにある画廊とは一線を画し、コンテンポラリーにも対応できる斬新な内装が素晴らしくて、作品のポテンシャルも十二分に引き出せ得ると思われるスペースとなっていて、まずそのことに驚き、かつ、嬉しくなった次第です。


そのこけら落としにフィーチャ-された大森暁生さん。
まさにオープニングショーにふさわしく、空間のシックな雰囲気やゆったりとした面積など、そのユニークさを存分に活かした至高のインスタレーションが展開されています。

多くの作品が、額装された鏡面に木彫が取り付けられ、まるでオブジェが宙に浮かぶような演出がなされています。このアイデアには、心底感服した次第。

入口ではたくさんの揚羽蝶が壁際を飛んでいます。
美しい羽の模様が木彫りで白い部分を抜くことで見事に再現され、黒のフォルムの妖しげな雰囲気が渋い木製の額と鏡面とによってさらに演出されています。


大森暁生14

大森暁生13


虚空を舞う、羽が付いた無数の黒い薔薇。


大森暁生15

大森暁生12


腹の付け根からそれぞれがそれぞれの長さで糸を出した蜘蛛の一群。
足の1本1本もリアルに再現され、それがずらりと並ぶ様子は壮観です。


大森暁生16

大森暁生17


アートフェア東京でも展開された「BAD LAND」。
暗めの照明も、妖しいムードを演出します。


大森暁生05 大森暁生06


この一角に設置された巨大なコウモリのオブジェ。抜群の存在感。
羽の間接部分の金具の臨場感もひときわ強く伝わってきます。


大森暁生04

展示スペースのほぼ中央には、ガラスのテーブルが。
そして、ここには巨大な古代魚が悠然とその姿を晒しています。
尋常でない迫力。鱗のひとつひとつ、鰭、顔のパーツなどが実に精緻に再現されていて、見応えも充分。


大森暁生09 大森暁生08


腰を屈め、その古代魚の姿をじっくりと眺め、その迫力を間近に感じると、時空を超えた世界へと心が誘なわれるような気分です。


大森暁生07


各所に配置された小品もステキです。
マスクにしても百合のオブジェにしても、それらが醸し出す優雅で幽玄な雰囲気が素晴らしいです。


大森暁生10 大森暁生11


いちばん奥の一角で展開されている羽ばたく鳥の一群を再現したインスタレーション。
これがホントに素晴らしい!

地上から眺めることしかできない空を飛ぶ鳥の姿。
その飛ぶ鳥の姿が、鏡面を用いることでホントに羽ばたいているように提示されています。
もちろん、それぞれの鳥は、広げる羽の雄大さも素朴な目もていねいに表現されていて、ひとつひとつを木彫作品として眺めていくだけでも感動が心に広がっていきます。


大森暁生03 大森暁生02


その作品がこうやってインスタレーションされ、その全体を俯瞰するとまるで飛行する鳥の一群のなかにいるような臨場感がリアルに伝わってきます。
この感動は、イマジネーションもぐんと押し広げ、ホントに気持ちいいんです。


大森暁生01

作品のひとつひとつで。
壁一面で。
そして、空間全体で。
さまざまな視点から楽しめる素晴らしい展覧会です!

大河原愛「網膜の記憶」
十一月画廊
東京都中央区銀座7-11-11 長谷川ビル3F
4/16(月)~4/28(土)日休
12:00~20:00(土:~17:00)
大河原愛4/16DM.jpg

削がれた躯に見い出される美しさ。


十一月画廊で開催されている大河原愛さんの個展です。
展覧会ごとにさまざまなスタイルを取り入れていく大河原さん、今回もまた新たに独特の色彩を手中に収め、その個性的な世界を広げています。


入口左手奥の壁では、前回あたりからの展開でもある、大きな画面いっぱいに広がる鮮やかな色面から浮き上がる躯の作品が。
まるで水面に浮かぶように、色のなかに現れる女性のヌード。顔がななく、脇腹が浮き出てるほどの痩身が醸し出す特有の艶かしさが強く印象に残ります。


大河原愛12

大河原愛13


今回は、キャンバスの地の質感を残し、それがブラウンに染め上げられてやけに物質的な質感が押し出された風合いをバックに、大河原さんの線がすらりと走っています。
そのブラウンの色彩の有機的な感触が、画面をうごめく曲線に宿る生命感をさらに強く感じさせてくれます。


大河原愛02 大河原愛03

大河原愛01


そして、この色彩と線とで展開する作品がさまざなまサイズで出展されています。
この風合いが、今回の個展における空間に統一感をもたらしています。
黒や白の線で描き出されるフォルムの有機的な風合いが、そしてそこにさらに描き加えられる色彩によって繰り出される陰影が、より臨場感を伴ってそれぞれの画面から現れています。


大河原愛04 大河原愛10 大河原愛11

大河原愛08


線で描かれる細身の体躯は一様に伸びやかでさまざまな表情があり、そしてこれほどまでに有機的。しかし、顔がないせいか、そこには感情、あるいは意識のようなものがあからさまには伝わってこない...それが大河原さんが描き出す世界に奥行きをもたらしています。

伝わらないから、探る...。
そこに感情がないのではなくて、そこに「封じ込められた」ような感触。言葉にならない思い。
複雑ですぐには分からない、読み込むことでそこに込められたメッセージをようやく汲み取れる小説にも通ずる「深み」があるような気がするんです。


大河原愛05 大河原愛06

大河原愛07


さまざまな小品も、合わせて出展されています。
洋書のページに描かれたもの、ちいさな画面に現れる体躯。
その小さな世界にも、やはり何かが封じ込められたような風合いがあり、それぞれが独特の深み、物語を内包しているように感じられます。


大河原愛15 大河原愛16

大河原愛14


女性らしいやわらかさ、艶かしさ、そして、強さ。
画面のなかで展開される「動き」のダイナミックさ、そしてそこに存在するはずの感情を思わず追い求めてしまう、奥行きある世界。

おそらく数本の線を引くだけで、大河原さんはそこに世界を創りだせるような気がします。


大河原愛09

山本太郎展“日々是日本゜-ヒビコレニッポン”
Bunkamura Arts&Crafts
東京都渋谷区道玄坂2-24-1
4/2(月)~4/15(日)
10:00~19:30
山本太郎4/2DM.jpg


「なるほど!」と思わず膝を叩いてしまいたくなるような、ポンと伝わるユニークさ。


今年のVOCA賞のアーティスト、山本太郎さんの個展に行ってきました。
そのVOCA展では、何やら意味深なモチーフが織り込まれ、腕組みをしてそこに収められたメッセージ性を汲み取ろうとじっくり鑑賞するような屏風の作品でしたが、その深みに触れたあとで今回開催された個展を拝見して、


ワカッタ-----(゜∀゜)----- !!!!


と心のなかで歓喜してしまうほどに。
いわゆる日本のわび、さびを感じさせるモチーフと今の時代のアイコン的なものとがひとつの画面に収められて、そのユーモアがたまらないんです。


まず、この展示でのもっとも大きな屏風の作品。
金箔を背景に満開の桜。苔が生し鮮やかな緑が乗る幹の力強いうねりとその枝に咲く桜のケレン味のなさ。
そして、その桜の堂々とした姿の前に、ある種の傍若無人ささえも感じるほど佇む信号機。2機のジェット機。緑の柵。
そのあまりにも大胆であからさまな構図に「空気読めw」とか思ったりもするのですが、しかし思い返すと現実には、大きな桜の樹がある場所には信号機もあるかもしれないし、柵も設置されているだろうし、飛行機が向こうの空に飛んでいてもまったくおかしくない。。。

「当たり前」をこうやって絵のなかで提示されるとこれほどまでにシュールでユーモラスになるのか、いう驚きが心のなかに広がってそれがまた痛快で。


山本太郎01

山本太郎02


小さな屏風と軸の作品も1点ずつ展示されていて、こちらではひとつのモチーフにスポットが当てられたシンプルな構成。


山本太郎03 山本太郎04


扇子も多く展示されていました。
ちいさいパノラマを思わせる扇子の画面には、時間の流れを感じる横への展開に、これまた山本さんらしいユーモラスな組み合わせのモチーフが織り込まれています。
特に、年末年始がもみの木の木陰から抜けでるサンタクロースのシルエットと、松林へと向かう鶴とで表現されたものがかなりツボで。


山本太郎08

山本太郎09


もうひとつの大きな作品。
ウィンドウから観るようなかたちで展示されていました。

碗を逆さにしたようなフォルムの山が折り重なり、そこにはくねくねと艶かしい幹の松や桜の木が並んで植えられていて、下のほうの浜辺には銀色の波が打つ。。。
桜と松が整然と並ぶ山の表面には、これまた真直ぐな道路が山を横切り、山と山の間には最新鋭の鉄道車両がトンネルからその姿を現しています。

どうよ、このシュールさ。このユーモア。

もう、楽しくてしょうがないんです。


山本太郎07 山本太郎06

山本太郎05


それにしても、繰り返しになるのですが、現実には桜の樹のそばには信号もあって道路も通っているのに、こうやって絵のなかで提示されると逆にそれが現実から遠く感じられるのがホントに興味深く感じられます。
いかに、何かを見るときに実際に見えているものを意識から外しているか...そういうことを、あらためて気付かさせられたような気がします。
そして、そういったことがしっかり提示できているのは、ただこういった構図を描いたのではなく、モチーフのひとつひとつが実は細やかにディテールを再現され、さらに連綿と続く日本画のスキルがしっかりと積み上げられているからでは、とも思うのです。

日本画ではなくて「ニッポン画」と敢えて名乗る山本さんのスタンスもまた、痛快で頼もしく感じられます。
今度はどんな現実を提示してくれるのか、ホントに楽しみです!

《4/20》
・第32回木村伊兵衛写真賞受賞作品展 本城直季「small planet」
コニカミノルタプラザ ギャラリーC
東京都新宿区新宿3-26-11 新宿高野ビル4F
4/20(金)~4/27(金)
10:30~19:00(最終日:~15:00)
木村伊兵衛賞4/20DM.jpg

大きな画面で眺める本城さんの写真はホントに楽しくなってきます。
普段の街並みが、線路がすぐ側を走る運動場が、夜の光景が、例のミニチュア風な質感に仕上げられていて、なんともいえない和み感も。


大和田良 "Strings of Life"
B GALLERY
東京都新宿区新宿3-32-6 BEAMS JAPAN 6F
4/19(木)~5/15(火)
11:00~20:00
大和田良4/19DM.jpg


《4/21》
☆大森暁生展 -Lunatic Party-
新宿高島屋 10階美術画廊
東京都渋谷区千駄ヶ谷5-24-2
4/19(木)~5/1(火)
10:00~20:30(4/21、最終日~16:00)
大森暁生4/19DM.jpg


・原田節子展
MA2 GALLERY
東京都渋谷区恵比寿3-3-8
4/3(火)~4/21(土)日月祝休
11:30~19:00
原田節子4/3DM.jpg

色鉛筆で描かれた抽象的な色の線の重なり。
そこに同時に収められた日付けの走り書きと相まって、刹那的な風合いを醸し出しています。
「・・・分からない」と拒絶しようとすると、そこから画面のなかの線が花に見えてくる不思議。
一度花に見えると、どんどんそのなかに封じ込まれた美しさが現れてくるような...。

MA2 GALLERYのふたつのフロアの各所に配された花の絵。実は尋常でない数の表に出て来ていない作品があるそう。
すべて同じ大きさの作品でしたが、もっと大きな画面、あるいはミニマムな画面の作品も観てみたい気がします。

原田節子01


☆forerunners & four eggs 小橋陽介&坂田祐加里
GALLERY MoMo
東京都港区六本木6-2-6 サンビル第3 2F
4/17(火)~4/28(土)日月祝休
12:00~19:00
four eggsパンフ.jpg


☆松岡歩展
@銀座スルガ台画廊
東京都中央区銀座6-5-8 トップビル2F
4/16(月)~4/21(土)
11:00~19:00(最終日:~17:30)
松岡歩4/16DM.jpg


ミヤケマイ展 LUNA PARK
村越画廊
東京都中央区銀座6-7-16 岩月ビル8F
4/16(月)~4/21(土)
10:00~19:00(土:~18:30)

ホントに楽しい!
文句なく楽しい!

アートフェア東京でもフィーチャ-されていたミヤケマイさんの、昨年に続いて開催された村越画廊での個展。
さまざまな遊園地の光景が織り込まれ、さらに表面に被せられたアクリル板に描かれた文字が影となって画面にアクセントをもたらしていたり、ちょっとしたユーモアがすごく活かされている楽しい作品に溢れていました。


☆石塚桜子展
@ギャラリーアーチストスペース
東京都中央区銀座6-13-4 長山ビル3F
4/16(月)~4/21(土)
12:00~19:00(最終日:~17:00)
石塚桜子4/16DM.jpg


大河原愛「網膜の記憶」
十一月画廊
東京都中央区銀座7-11-11 長谷川ビル3F
4/16(月)~4/28(土)日休
12:00~20:00(土:~17:00)
大河原愛4/16DM.jpg


・GALLERY EXPECTS vol.9 大島真由美
フタバ画廊
東京都中央区銀座1-5-6 福神ビルB1
4/16(月)~4/22(日)
11:00~19:00(最終日:~16:30)

昨年の芸大の記念館での展示が印象的だった大島真由美さんの個展。
以前の屏風のインスタレーションはしばらくお休みのようで、今回は軸とコラージュ的な作品の展示でした。

屏風のときのポップな風合いとは打って代わって、精緻な描き込みによる実に渋い世界が軸のなかの画面に広がっています。

大島真由美01 大島真由美05

奥のほうの壁にダイナミックに展示されている写真作品。
それぞれの作品に、大島さんの手によるアクセントが手描きで施されていて、それぞれの画面のどこに手描きの絵があるかを探すのも楽しいです。

大島真由美04

そして、芸大でも展示された3点組の作品。
作り込まれた間接照明のなかに浮かび上がっていた色彩の麗らかさも印象的でしたが、ホワイトキューブと蛍光との空間に展示されるとその作品が持つ色彩の鮮やかさが全面に押し出され、細やかさもよりはっきり鑑賞することができて嬉しいです。

大島真由美03

大島真由美02


・SPRING BOARD 2007 Part 2
Break Station Gallery

4/21(土)~5/10(木)
7:00~23:00
SPRING BOARD2007パンフ.jpg

上野駅の一角を展示スペースとして利用している展覧会。
6名のさまざまなアーティストがピックアップされていますが、なかでも先日アートスペース羅針盤で開催された個展が印象的だった屋宜久美子さんの作品の、あの表面のアクリル板の影の映り込みが美しく再現されていたのと、東京画廊で開催されている「25×4=□」展でのファーストインパクト、柴田鑑三さんのスチロールボードをカットして製作された小品を観ることができたのが嬉しかったです。


タムラサトル POINT OF CONTACT ―接点―
Takuro Someya Contemporary Art
千葉県柏市若葉町3-3 TSCA KASHIWA
4/21(土)~5/27(日)月火水、5/10~5/12休・4/30開廊
12:00~21:00
タムラサトル4/21青図.jpg


《4/22》
石森忍展 “動物農場”
GALLERY HANA SHIMOKITZAWA
東京都世田谷区北沢3-26-2
4/20(金)~4/25(水)
11:00~19:00(最終日:~17:00)
石森忍4/20DM.jpg

ユニークなコラージュ。
動物のシルエットのなかにいろんな画像が織り込まれ、それがさまざまなイメージを喚起させてくれます。
まずは小品があって、それを拡大、分割して紙に取り込み、それをパネルに貼って重ね、さらにメディウムらしきもので表面を処理した作品。観てすぐ伝わるかっこよさ。

石森忍05

ギャラリーの中央部で、回転する台の上に置かれたオブジェも面白い!

石森忍01

コラージュの手法の面白さと、それをエディションものとして再現したアイデアのユニークさに感服です。

石森忍03 石森忍04

石森忍02

NEXT DOOR vo.1
T&G ARTS
東京都港区六本木5-9-20
4/14(土)~4/28(土)日月祝休
11:00~19:00(土:~17:00)
(Bar Time:20:00~29:00)
NEXT DOOR 4/14DM.jpg

So Funny,So Cute!


六本木の芋洗坂沿い、レントゲンやタロウナスが入るコンプレックスビルへ向かう少し手前にあるアートスーペース、T&G ARTSで開催されている、素敵な個性がパッケージされた展覧会です。

これまでに個展で拝見している畑中宝子さんと海老原靖さんとが参加されているということで楽しみだったのですが、その他のアーティストの作品もユニークでフレッシュなものが多くて楽しめます!


入口には海老原靖さんの作品がお出迎え。

海老原靖@T&G01


1階と2階との2フロアで、しかもそれぞれがたっぷりのスペース。
6名のアーティストがそれぞれのコーナーでその個性がしっかりと発揮されていて、6つの個展をひとつの空間で観られるような感じもあり、それでいてハイアベレージでまとめられたセレクションでお互いの個性がひとつの空間で引き立てあっているようにも感じられます。


まず1階の中矢篤志さん。
クッションのような丸い画面に描かれていて、そのキュートな色彩には楽しくなってきますが、それとは裏腹の歪んだ有機的な絵のなかに現れる「目」にドキッとします。

中矢篤志@T&G01 中矢篤志@T&G03

1点だけ出展されている方形の作品でも、丸い画面とかわらず、色彩の有機的なうねりに迫力が。

中矢篤志@T&G02

壁からぽこんと盛り上がるような丸い画面が空間にどこかユーモラスなアクセントになっているようにも感じられます。

中矢篤志@T&G04

林真世さんの作品は、浮かんだイメージからのリアクションがそのまま作品に収められたような感じが痛快です。
画面にたくさんの情報量が詰め込まれています。緻密でもあり、イメージに追い付こうとする痕跡のようなものも伝わってきたり。

林真世@T&G01 林真世@T&G02

入口側の柱のような部分の壁には、今回展示されているオブジェの元絵なのか、それともそのオブジェを観ながら描いたものなのか...そういったことを想像するのも楽しいです。

林真世@T&G03

そして、さまざまな作品が壁に展示されて、インスタレーション的な風合いも醸し出しています。
描くという「遊び」が、そしてクリエイトする楽しさが真直ぐ伝わってきます。

林真世@T&G04


1階のスペースから2階へと向かう途中にバーカウンターがあり、そこと2階への階段で展開されているのが渡辺元佳さんのインスタレーション。
もう、いたるところにサル、サル、サル。

渡辺元佳@T&G02

壁に、階段に、床に、そして天井からぶら下がって。
数えませんでしたが、思い返しても軽く20匹ほどはいたはず。
紙でできたサルたちがいたるところでやんちゃに遊んでいます。
その1匹1匹はホントに愛嬌ある表情で、コミカルな仕草がまたかわいくて。

渡辺元佳@T&G03

なかには、マクドナルドのハンバーガーの包装紙とレシートに覆われたサルが台の上で前え倣え。
よくも食ったり、もとい、よくも作ったり、といった感じで笑えます!

渡辺元佳@T&G01

他にも体中に一円玉を貼りめぐらされたのがバーのところでぶら下がっていたり。
あと、外のウィンドウでも大きな袋でかくれんぼしてるような展示がなされていてこちらもぜひチェックしてほしいポイントです。かわいく動くウサギもいます(笑)。

渡辺元佳@T&G04


2階へあがると、畑中宝子さんの作品が。
どちらかというと「濃いめ」のクリエイションが続いた1階を観たあとで畑中さんの作品が目に入ってきて、その淡い色彩で展開される女の子の日常をモチーフにしたような繊細さと儚げな風合いに、なんだか気分もリフレッシュ。

畑中宝子@T&G03

ギャラリーエスでの個展での、畑中さんの作品だけに囲まれた空間もぐっときましたが、今回のグループ展ではその浮遊したような色彩がより引き立てられているように感じられます。

畑中宝子@T&G02

こういったグループショーにおいて、ちょうどバイキング料理の途中でいただく氷菓子の爽やかさにも通ずる、嬉しいアクセントになっています。

畑中宝子@T&G01


美島菊名さんの作品には思わず「やられた。。。」と。
画像を出力されたもので、写真とは違うざらつきが画面に残り、それが黒く色塗られた額とともに、美島さんのキッチュな世界をさらに奇妙なものへと押し上げているように感じられます。

美島菊名@T&G04

人形に覆われた女の子が振り向く様子。
テーブルの上に置かれた赤いワンピースの女の子とアーティスティックに剥かれた林檎。
・・・などなど、どこか妖しげな演出がなされた作品は、女の子のアーティストならではの大胆さが充満しています。

美島菊名@T&G03

そして、今回新しく製作された「花」の作品。
女の子の腕に描かれた花、それを愛おしむ女の子。
・・・なんだろう、この説得力は...と、実にシンプルなアイデアなのにもかかわらず、画面のなかの女の子の恍惚とした表情と合わせた腕に咲く花の奇妙な美しさに魅入られてしまいます。

美島菊名@T&G02

美島菊名@T&G01


最後のコーナーには、海老原靖さんのダイナミックな世界が。
フタバ画廊での個展で展開されていた、たしか映画のワンシーンを一旦停止にしてそれを元に描いた作品。
画面いっぱいに描かれた俳優、女優の顔、そしてそこに走る色彩のノイズ。そのコントラストから迫力と刹那的な風合いが感じられます。

海老原靖@T&G02

今回出展されたすべてのアーティストの作品のなかでもっとも巨大な画面で繰り広げられる大写しの顔。
おそらく海老原さんが敬愛するマコーレ・カルキンのものと思われるのですが、とにかくこれほどの画面で展開されるとそれだけでもう圧倒されてしまいます。

海老原靖@T&G03

そしてこの作品を敢えて何が描かれているか分からないほどの至近で観てみると、横の動線を持つ色の流れにものすごいスピードを感じ、ぐんと意識がその動線に引っ張られるような錯覚を覚えるほど。

海老原靖@T&G04


たっぷりのスペースで繰り広げられているユニークなクリエイション。
視覚だけじゃなく、さまざまな感性を総増員させてポジティブに楽しめる展覧会です。

また、このT&G ARTS、ギャラリーの営業時間は夜の7時までなのですが、それから1時間のインターバルをおいた後、20:00から翌日5:00までバーとして営業され、その間はギャラリースペースにソファなどが設置されてゆったりとアートも楽しめる空間・時間が現れるそう。
ぜひ遅い時間にも伺ってみたいです。

呉亜沙「the CAST」
ギャラリー椿
東京都中央区京橋3-3-10 第1下村ビル1F
4/14(土)~4/28(土)日休
11:00~18:30
呉亜沙4/14DM.jpg

おかえりなさい!


呉亜沙01

文化庁の留学制度で1年間ニューヨークに滞在されていた呉亜沙さん。
その渡米の直前に開催された個展で拝見したメランコリックな世界が忘れられず、ニューヨークにいらっしゃる間も折りに触れて過去の小品なども拝見しながら、次の呉亜沙さんの展開を楽しみにしていたのですが、その膨らんだ期待を充分に満足させてくれる素敵な世界が今回のギャラリー椿での個展でもいっぱいに広がっています。


呉亜沙06


さまざまなサイズの画面のなかで、おなじみの2本足で立つウサギと女の子とで繰り広げられる物語。
今回出展された作品に登場するキャラクターたちは稜線があってくっきりとしていて、そのせいか「ここにいるんだよ!」っていうことをアピールしているような印象を覚えます。
どこか淋しげな雰囲気を漂わせていた前回の個展のときとくらべても、より「元気な」というか、溌溂とした感じが伝わってきます。
加えて、僕の記憶ではこれまではひとつの画面のなかに女の子はひとりしか登場しなかったと思うのですが、今回はウサギたちと同様にたくさんの女の子ががひとつの画面に登場していて、それもポジティブな印象をさらに強くさせてくれているような気がします。


呉亜沙09 呉亜沙08

呉亜沙04


色彩は、特に「青」が印象的です。
入口と対角にある長い壁に展示されている作品はほぼ「青」の作品で統一されていて、その清々しさを浴びるように感じて、深呼吸して爽やかな空気を胸いっぱいに吸い込んだような気持ちよさがあるような気がします。


呉亜沙07 呉亜沙10 呉亜沙03

呉亜沙05


その青のなかに並ぶ、絵と立体の組み合わせによる楽しい作品。
いたずらっぽさ、おてんばさがなんともユーモラス。


呉亜沙11

呉亜沙12

もうひとつ、立体の作品が。
こちらは床面が円形のテントのようなもので、その下の方でテントのなかに顔を突っ込んだ女の子たちがぐるりと輪になっています。
呉亜沙さんの絵の世界をそのまま再現したような何とも楽しい雰囲気が溢れています。
そして、実際に自分もそのテントのなかに顔を突っ込んでみると・・・。


呉亜沙13

呉亜沙14


爽やかさとポジティブな雰囲気に溢れた気持ちいい展覧会です。
きっとニューヨークは楽しかったんだろうな、と想像して呉亜沙さんに尋ねると、「いろいろありましたけどね」と笑顔で答えが返ってきました。

この素敵な世界を再び堪能できたことが嬉しいです。
観られたことで充分、嬉しい。
そして、7月に佐藤美術館で今回に続いて開催される個展もすごく楽しみ!

大切にしたい、ずっと大事に観続けていきたい、そして紡がれる世界をその都度楽しんでいきたいクリエイションです。


呉亜沙02

岡野香 -壁飾り- 展
Bunkamura Gallery
東京都渋谷区道玄坂2-24-1
4/14(月)~4/22(日)
10:00~19:30
岡野香DM.jpg

エキゾチックな色、かたち。


Bunkamura Galleryで開催されている、ガラス作品のアーティスト、岡野香さんの個展へ行ってきました。
一度、同じ場所で開催された3人展で岡野さんの作品を拝見していて、そのときにも独特の風合いが印象に残っていて、今回の個展も楽しみで。


ギャラリーに入ってすぐ、入り口沿いの壁に小品による展開が。
十数センチ四方のスクエアのかたちを中心に、さまざまな小品が壁一面に散らばっています。
そこに収められたいろんな色彩、質感から、白い壁にさまざまな景色が目に浮かんで、その場所が別のどこかへと意識が誘われていくようです。


岡野香01


岡野さんの作品を拝見して感じるのは、岡野さんの「色」と「かたち」を持ったアーティストだなぁ、ということ。

重ねられたガラスの作品で、そのガラスの裏面に彩色がなされています。
その面は若干のざらつきが施されたうえで彩色されているそうで、もしかしたらその微妙な凹凸が絶妙の陰影を生み出しているのも、岡野さんの「色」に独特の個性をもたらしているのかも知れません。
特に、黄色と黒、そしてシルバーによるコントラストが味わい深いです。ガラス絵特有の透明感に加わる渋さというか...。

ガラス絵という手法のユニークさに加え、どこかエキゾチックさを感じる色彩の広がり、そしてなにより、さまざまなかたちのガラスを重ねて作り上げられる奥行きがたいへん面白いんです。


岡野香11 岡野香07

岡野香08


今回の個展はちろん白い壁での展示となっていますが、そのユニークなフォルムと色彩に触れると、自然とそれぞれの作品のシチュエーションを想像してしまいます。
入口すぐのスクエアの小品は、石造りの壁の一部に組み込まれているようなイメージですし、こちらの縦長の作品なども、柱などの細い位置にあるといい感じだろうな...などなど、インテリア的な想像が自然と浮かんでくるも楽しいです。


岡野香02 岡野香03 岡野香04


かたちのバリエーションの多さに、その想像も広がりを留めません。
スクエアの作品も小品から結構な大きさのものまであり、さらにはシャープなかたちが重なるもの、そして小さくてちょっと歪んだ四角がランダムに重なるものなど...。
そして、重なるガラスの枚数以上の奥行き、実際は2枚でももっとたくさんのガラスが重なっているように見えるから不思議です。
もちろん横から見るとその数は一目瞭然なのですが、だからこそその中に収められた岡野さんのクリエイティビティにあらためて感服する次第です。


岡野香05 岡野香09

岡野香06


それぞれの作品に対して、それが何であるかという具体的なイメージは湧かないものの、それ以上にその作品がある場所が思い浮かぶというのは、あらためて思い返すとホントに新鮮な体験だなぁ、と。
それも、素材がガラスということもあって、知らぬ地への思いが喚起されるのが不思議です。

「壁飾り」が誘うイメージの豊かさ。

素敵な世界が、感動が岡野さんのガラスのなかには詰まっているような気がします。


岡野香10

佐原和人展 - Hidden Window -
COOLTRAIN GALLERY
東京都港区六本木7-7-4 ハリントンガーデンB1F
4/11(水)~4/23(月)火休
10:30~17:00
佐原和人4/11DM.jpg

できたばかりの東京ミッドタウンと国立新美術館のちょうど中間あたり、ちょっと入り組んだところにあるCOOLTRAIN GALLERY
夜はジャズのライブハウスとして営業されている空間で、その準備が始まるまでの時間がギャラリーとして運営されているという、たいへんユニークな形態をとっているスペースです。

そこで開催されている佐原和人さんの個展に行ってきました。


ジャズの香りが漂うレンガ造りの壁が地下へと続く階段に配され、その降り切ったところにまず1点、佐原さんの作品が出迎えてくれます。


佐原和人11


バーカウンターとソファがある空間。外は日が高くても、まるで夜。
ステージにはピアノ、ドラムセット、アンプ類が置かれていて、僕の場合にわかに別の血も騒ぎます。

ぐるりと見渡して、ソファの後ろの壁に展示されている大作に目が向かいます。
この空間に合わせて製作されたという作品。この位置に展示されることを前提にあつらえられたと思われる横長のコットン、そこに描かれているのは、ある記憶を辿り、時間の流れを現したような雰囲気が漂う風合いの絵。

横長の方形のなかにそれが何かを認識できるモチーフのシルエットが織り込まれ、その外側の色彩のスプレッドとのコントラストも美しいです。視線を移しながら作品を観ていると、なんだか映像を眺めているような感じがします。


佐原和人02 佐原和人03

佐原和人01


さまざまなサイズの作品がこの空間の各所に展示されています。
街並み、林、歩く人々などのシルエットが、透明感がある赤や青などの軽やかな色彩で描かれています。なんともいえない揺らめき、夜見る夢のような曖昧な記憶のような風合いが、その色彩の重なりによって演出されているような気がします。
そのシルエットは例えば建物の窓枠なども実に精緻に再現されていますが、マスキングやステンシルの手法は用いず、すべて手描きとのこと。そのていねいさには驚かされます。
コットン地のやわらかな風合いが、どこか儚げな雰囲気をより引き立てているように思えます。


佐原和人08 佐原和人05 佐原和人10

佐原和人06


カウンターの中にも数点の小品が展示されています。
いろんなお酒のボトルやグラスが並んだ棚の間にちょこんと置かれた幻想的な風景が、壁のミラーと居並ぶグラスや瓶類が醸し出す夜の雰囲気に映え、見つけて嬉しいこの空間のアクセントとなっています。


佐原和人09


そして、正面の壁で上映されているアニメーション。
これがまたすごく面白いんです。
延々と続く道路。滲んだ赤い空、あるときは青い夜空も現れて。
トンネルをくぐったり、断崖を通過したり。


佐原和人14 佐原和人13 佐原和人17


この映像作品、手描きによるおそらく水彩の絵を取り込み、編集しているそうなのですが、そのコマ数が3200とのこと。
およそ20分の作品で、スピードが突然早くなったりする箇所も織りまぜつつ繰り広げられ、どこかほっこりと温かみを感じる絵に心を委ね、緩やかな時間が過ごせるような気がします。


佐原和人12 佐原和人15 佐原和人16

くっきりと滲む独特の風合いで展開される佐原さんの作品が、この空間と調和してお互いに響きあい、心に残る素敵な展示となっています。

展示タイトルの「Hidden Window」、隠された窓というのもすごくいいなぁ、と。


佐原和人04

花澤武夫「Opti-mystic」
GALLERY SIDE2
東京都港区赤坂2-18-3
4/13(金)~5/10(木)日月祝休
11:00~19:00

異次元の色彩に心を掴まれる。


GALLERY SIDE2での花澤武夫さんの個展に行ってきました。
前回の曽根さんの展示の最終日に伺ったときに事務所のスペースに花澤さんの小品が展示されていて、そのユニークなモチーフの取り込み具合が面白くて、それで楽しみにしていた今回の個展。


いや、ぐっときました。
未知のクリエイションに触れる醍醐味をたっぷり堪能した次第。


花澤武夫05

振り上げる両手が勇ましい猿。
この作品のなかの猿、実は磁器だそうなのですが、こうやってキャンバスに描かれ画面の中で再現されることで、新たな生命が吹き込まれ、画面の暗闇をいきいきと支配するかのように感じられます。
頼もしく、痛快でもあります。

ギャラリーには2点の大作と、数点の小品が展示されています。

油彩らしい艶かしさで繰り広げられる未知の世界。
今回出展された中でもっとも大きな作品にぐっと意識が持っていかれます。
どの世界の森なのか...少なくとも記憶を辿っても思い浮かばない、形容し難い色の世界。
その森をかき分けて見つけた、不思議な生き物。その、虫のような、あるいは鳥のような姿はその姿と同様に不思議な色彩が広がる景色の中に映え、自分でも意外なほどにその存在に興味を覚え、魅力を感じてしまいます。


花澤武夫03 花澤武夫02


ぼんやりとした色彩の広がりがあるかと思えば、実に小さなところにさまざまな色彩が凝縮されているところもあり...俯瞰したときに込み上げるなんともいえない奇妙な嬉しさと、至近で凝視したときのミニマムな色彩のコントラストに煽られる高揚感と。


花澤武夫01


この展示で、おそらくまず目に止まる色彩は、正面の大作の黒い色面に囲まれたブルーだと思います。
雄の鳥の求愛表現をモチーフにして描かれたというこの作品。
か細い2本の脚で精一杯の姿を晒す...その「生」への極限的で果無げな行為、その美しさがものすごくダイナミックに描き出されています。
さらに、その背景、ピンク色の地面、青く縁取られた植物、そういった微妙な違和感をもたらす色彩をもったさまざまな要素が、この画面の中央の黒を、そしてその中のブルーをさらに際立たせています。
加えてパネル傍の垂れた絵の具の痕が醸し出す現実世界の生々しさとのギャップもアクセントとなって迫ってきます。


花澤武夫07

花澤武夫06


小品は、構成がシンプルな印象です。
出展されている多くの作品に付けられたタイトルは、花澤さんのフェイバリットな映画や音楽から引用されていて、それがまたそれぞれの作品と展示全体に奥行きをもたらしています。
ぼやけた感じに描き現され、それがその小さな画面の中の世界の空気の揺れや上昇する蒸気のようなものを感じさせてくれます。


花澤武夫09

花澤武夫08


ひとつの画面に収められたさまざまなもの。
これまで体験したことがない色彩のスプレッドに意識が進み、のめり込むようにその世界を体感しました。
できることならもっと大きな画面の作品も観てみたいです。


花澤武夫04

華・非・華
トーキョーワンダーサイト本郷
東京都文京区本郷2-4-16
3/28(水)~4/22(日)月休
11:00~19:00
華非華 パンフ.jpg


台湾と日本のアーティストによる共演。

トーキョーワンダーサイト本郷で開催されている、ホワン・サンサンさんのキュレーションによる二人展です。
暗めに設定された照明の中で、ふたつの個性が響きあっています。


台湾のアーティスト、呉詠潔(ウ・ウォンジェ)さん。
白い下地のうえに、淡いグラデーションを伴った色彩で描かれる子供と花と。
薄いスクリーンが掛けられた入口を通ってまず左手の壁に展開されている、壁とパネルとを組合わせた作品に目が行きます。
おそらくパネルだけが普通に壁掛けで展示されていても充分に面白そうな作品で、それがこうやって組み合わせられ、さらに壁に直接描かれるドローイングによって繋げられてひとつのインスタレーションの中にパッケージされることで、見事に関連性、物語性が生み出され、その提示の仕方に感嘆。

何より、東アジア的な独特の風味を感じます。
どの絵の具、顔料を使用されているか確認しなかったのですが、水墨画的な滲みを全面に出したどこか浮遊するような風合いがこうやってコンテンポラリーのなかに活かされ、オリエンタルなエキゾチックさを醸し出しています。


呉詠潔@TWS 01

呉詠潔@TWS 02


入口と対角の位置にある、ずらりと並ぶピンク色のスクエアの作品群。
画面の中に描かれるモノクロームの花の儚げな佇まいと、画面全体を覆う淡いグラデーションのピンク色とが、互いを引き立てあっています。
また、ちょこっと描かれる小さなキャラクターには「吹き出し」などによって感情が現されていてユーモラス。美しいものを愛でる感覚だけじゃ収めさせない、絶妙のアクセントとなっていて痛快です。


呉詠潔@TWS 05

呉詠潔@TWS 04


仄々と緩やかに広がる色彩のなかにシャープさも感じます。
作品の中に登場する子供の顔のパーツが図形的に描かれているのがもっとも印象的で、オーソドックスな技術を極めたような花の描かれ方とのコントラストがシュールさを生み出しているように思えます。


呉詠潔@TWS 03

日本からは森本太郎さん。
画面に折り重なるクリアな色面の盛り上がったエッジの部分のインパクトにまず意識が向かいます。
実際に画面の前に立つと、画面に定着した立体的なラインがより生々しく迫ってきます。
それが、充分にくっきりとした色彩のクリアさを、さらにぐんと押し出しているように感じられます。


森本太郎@TWS 02


至近で観て、そこから距離を置いて再び眺めると、まずは全体の色面の鮮やかなコントラストを俯瞰し、そこからそこに描かれている何かに気付きます。
こちらの作品は女性の後ろ姿のようで、これだけはっきりとした色彩であることが、このシルエットのグラデーションをたいへんユニークなものへと昇華させているように思えて面白いです。


森本太郎@TWS 01


棚のところに展示された刺繍の作品。
ちいさな画面で額に収められていて、ペインティングとはまた違った立体感があります。


森本太郎@TWS 03


画面いっぱいにその姿を広げる花。
ひとつひとつの色面は、むしろその絵の具の発色の美しさを全面に押し出しているような印象ですが、それが重なって花の姿をダイナミックに構成し、そこに力強い新たな生命が宿るように感じられるのも興味深いです。


森本太郎@TWS 04

森本さんの作品における、無機質とも受け取れる色彩の重なりが生み出すグラデーション。
呉詠潔さんとはまったくテイストの違う質感でありながら、そのグラデーションのくっきりとした「滲み」が呉詠潔さんの作品の中にある滲みと同じ空間に展示されることで、お互いの質感をより際立たせていて、それぞれの個性が強く印象に残る展覧会です。

PRAY PLAY PAINT RYO MATSUOKA
CALM & PUNK GALLERY
東京都港区西麻布1-15-15 浅井ビル1F
4/9(月)~4/22(日)4/15休
11:00~19:00
pray play paint 4/9DM.jpg

溢れるイマジネーション。
衝動の色彩、快哉の線。

CALM & PUNK GALLERYで開催されている松岡亮さんの展覧会に行ってきました。


松岡亮01


CALM & PUNK GALLERYは今回はじめて伺ったのですが、天井をぶち抜いて1階と本来2階だった部分とを合わせて造られた空間で、麻布の奥まった一角にこんなスペースがあったんだ、と、まずびっくり。

そして、この広々とした空間の壁いっぱいに、ダイナミックな松岡さんの世界が繰り広げられています。
ところ狭しとばかりに壁中を埋め尽くすペインティング。描かれたひとつひとつに生命が宿り、いきいきと踊っているかのような印象を受けるほど。
空間に一歩足を踏み入れただけで、その躍動する色彩とケレン味のない黒の線とが四方から、そして頭上から迫ってきます。それを体全体で浴びるように感じて、こちらのイメージもぐんと膨らみます。


松岡亮05 松岡亮04

松岡亮03 松岡亮02


すべては壁に直接描かれたようになっています。
そこかしこがさまざまなサイズの手描きの黒い枠で仕切られ、しかしその枠をはみ出さんとばかりに色彩が、そして線が溢れています。
描き手である松岡さんの衝動が、さらには描くことの楽しさがそのまま伝わってくるような気がします。


松岡亮06 松岡亮07


ここで観られる絵はちょうど僕が伺うまでの会期中に描かれたそう。
そこかしこに置きっぱなしになっている絵の具や脚立もこの空間にむしろ必要なアクセントとなっているように感じられます。
制作過程の中で伺えなかったことがちょっとだけ悔やまれますが、それ以上にこれだけポジティブな気分を高揚させてくれる素晴らしい空間が作り上げられていることに心から嬉しく思えて、感謝の気持ちも沸き起こります。

スペースとアーティストが響きあって創り上げられた、至高のインスタレーションです。


松岡亮08

ラントシャフト 阿部未奈子/大平龍一/成田義靖
ヴァイスフェルト
東京都港区六本木6-8-14 コンプレックス北館3F
4/6(金)~4/28(土)日月祝休
11:00~19:00
ラントシャフト2007DM.jpg

レントゲンヴェルケの「風景」。


不定期に企画される、いかにも「レントゲン的だ!」と唸らされるセレクションがたいへん興味深いグループショーです。
今回ピックアップされた3人のアーティストはそれぞれに鮮烈な個性を放っていますが、それが見事ひとつの空間にパッケージされていて、その手腕にも脱帽です。

写真で提示される成田義靖さんの「風景」。
建築現場を捉えた光景が大きな画面に引き伸ばされて展開されています。

まず、現場に組まれた足場や道路の脚部が構築する幾何学的なデザインのかっこよさに引き込まれます。
晒された無機的な光景が醸し出す殺伐とした雰囲気。機能、能率を最重要視し、美しさなど本来は追求されていないはずのフォルムに、成田さんの先鋭な視点によって、いわゆる「機能美」とはまた違うアバンギャルドな美しさが引き出されているように感じられます。

更に感じるのは、成田さんの視点の冷静さ、冷徹さです。
有機的な質感、生命の存在が画面からはまったく伝わってこない。。。
ある意味残酷とまで思えるくらいに、その場において目の前で展開される光景のそのまま切り取られているよう。
この冷静さがこの作品の中に広がる風景をただの風景写真に留められず、観る側の視点さえもぐんと醒めさせるように感じられます。そしてその醒めたまっさらの状態から、この刺すようなかっこよさを感じ、新たな感情が沸き上がってくるんです。


成田義靖 02

成田義靖 01

昨年のBASE GALLERYでの個展も印象深かった阿部未奈子さんのペインティング。歪められた「風景」が提示されています。

ひとつひとつの色面のエッジの鋭さが、その色彩の鮮やかさをさらにくっきりと際立たせます。
現実の風景が歪められたかたちに対して本来感じるはずの不自然さよりも、むしろそのかたちのユニークさがポップでキャッチーな風合いを醸し出していて面白いんです。

今回はグループショーということもあり、出展された作品のサイズも前回の個展で拝見した作品と比べると小さいのですが、それでもその画面で展開される歪みや大胆な配色は、実際のサイズをもって余りあるほどのダイナミズムを生み出しています。まるでコンピュータグラフィックの映像作品のなかに入ったかのような想像も喚起され、ぐんぐんと色彩が力強く広がるような感触も痛快です。

そしてこの鮮やかな色彩と、成田さんのアバンギャルドさとが作り上げるコントラストも見事です。

阿部未奈子 02

阿部未奈子 01

もうひとりのアーティストは、ちょうど同じ時期に開催されている東京画廊での「25×4=□」展にもクレジットされている大平龍一さんの段ボール。


大平龍一 05 大平龍一 02 大平龍一 03


これはもう、実際に目にしていただくしかない...。

はっきりいって段ボールそのもの
実際に、この展示をぱっと観ただけでは石畳のうえに段ボールが敷かれているだけにしか思えない。
しかし、木彫なんです。かなりの時間を割いてしげしげと眺めてきましたが、改めて思い返してもちょっと信じ難いほどのクオリティ。

何せ、段ボールの中のうねうねと重なる紙の部分や留めてあるホチキスの金具、果てはガムテープの厚みさえもが精緻に再現されていて、東京画廊での畳と同様に感服しきり。。。
これだけのものを再現するために、どれだけのスキルが積み上げられたのだろう...。


大平龍一 04 大平龍一 06 大平龍一 07


もし、ただ段ボールがそこに敷かれているだけだったら、おそらく「だから、何?」という印象がようやく浮かぶ程度で、そこから自主的にそこに込められたメッセージを探る作業に移るのですが、こうやって木彫で制作されているおかげで、その面積、領域に対して意識がのめり込んでいくことを強く自覚させられます。

そして、この作品が置かれるシチュエーションをいろいろと想像すると、これがまた楽しい!
花見でにぎわう一角にさりげなく置かれてた状況や、逆に本来あっちゃいけない場所に設置された様子などを思い浮かべると、気付く人と気付かない人と、どちらの意識も興味深く思えるし、さらにこの作品自体がそれぞれの領域のなかでの強烈なアクセントに成り得ることに、あらためてこの作品と大平さんに対して敬意を払いたくなります。


大平龍一 01


観れば観るほどにイマジネーションを刺激してくれる、それぞれのクリエイション。
見応え充分の展覧会です!

《4/10》
・ヤマガミユキヒロ展 lightSpace
neutron
京都府中京区三条通烏丸西入ル 文椿ビルヂング2F
4/3(火)~4/15(日)
11:00~23:00(最終日:~21:00)
ヤマガミユキヒロDM.jpg

仕事で京都へいくことがあり、せっかくなので、先日チェックし損ねた京都のギャラリー、neutronへ。
カフェスペースの一角に設けられたスペースで展開されていたのは、ヤマガミユキヒロさんの写真画像を用いたインスタレーション的な展示。
空の写真のフィルムを額に収め、背面から発光させた作品。

ヤマガミユキヒロ01

そして、台の上に無数に並べられた空の青がその台の中からの光を受けて発光している作品。
無数に並ぶ空の表情はひとつひとつ違っていて、それぞれ微妙な差があったり、あるいは他とまったく違うユニークなものなどもあり、台上のどの部分を観てもさまざまな発見があって。

ヤマガミユキヒロ02

ヤマガミユキヒロ03

透明ガラスに囲まれたこの空間全体にそれぞれの作品の青が広がり、その空間全体が発光しているかのような雰囲気のなかにいて、未来的な空間にいるような印象でした。
ファイルを拝見すると過去にもユニークな展開のものが多く、もっといろいろとヤマガミさんのクリエイションを体感してみたいと思った次第です。

《4/13》
華雪書展
WALL
東京都港区南青山6-13-9 アニエス南青山B1-A
4/13(金)~4/26(木)
13:00~19:00(最終日:~17:00)
華雪4/13DM.jpg

このギャラリーの細い空間を通り抜け、メインのスペースに出て作品を目にして、それぞれほぼ同じ大木さ、同じかたちの紙に配された4つの点に対する第一印象では李禹煥的なミニマリズムを感じたのですが...
華雪さんは「画家」ではなく「書家」で、となるとこれらの作品も文字のはず、と思い直し、あらためて眺めてみて、これらの4つの点がこの展示タイトルの「花」を現していることに気付いたときの嬉しさといったら...。

華雪01

そしてこれだけ崩されたかたちだあるにもかかわらず、一度文字として認識したらもうこれらが「花」に鹿見えなくなることがまた興味深く感じられます。

華雪02

通路の壁には「篆刻」、すなわち印の作品が。
こちらもデフォルメされた文字で展開されていて、それぞれ読めたときにより面白さが増します。
無論、そのかたちにもアーティスティックな面白さも充分伝わってきます。

華雪04

華雪03

現代アートの空間で観る「書」。
作品と空間とが見事に響きあっていて、すごく新鮮なクリエイティビティに触れた気がしています。

☆花澤武夫「Opti-mystic」
GALLERY SIDE2
東京都港区赤坂2-18-3
4/13(金)~5/10(木)日月祝休
11:00~19:00

・クラブナイトプレビューver.2.0@シンワアートオークション
銀座シンワアートミュージアム
東京都中央区銀座7-4-12
4/13(金)
17:00~21:00
C.N.P@S.A.A.ver.2.0DM.jpg

現代美術のオークションの前日に開催されたイベント。
まずは作品を観て回って、はじめて石田徹也さんの作品を直に拝見することができたのですが、石田さんの作品としてはむしろかなり小さなものであったにもかかわらず、自分でも驚くほどにその世界に引き込まれてしまいました。
イベントでは、nipponia electronicaの、激し4つ打ちのテクノビートに乗って展開する映像にかなり笑わせていただきました。

《4/14》
☆呉亜沙「the CAST」
ギャラリー椿
東京都中央区京橋3-3-10 第1下村ビル1F
4/14(土)~4/28(土)日休
11:00~18:30
呉亜沙4/14DM.jpg

・「月おとことニビ女」松浦カレー
アートギャラリー環
東京都中央区日本橋室町4-3-7 川妻ビル
4/2(月)~4/14(土)日休
11:00~18:30(最終日:~17:00)
松浦カレー4/2DM.jpg

昨年は羽田美奈さんとの二人展で拝見している松浦カレーさん(元・松浦香織さん。カレーが好きだから変名、とのこと)の個展。
メディウム版画というかなりユニークな技法で制作される作品は、独特の鈍い色彩とシュールな線とで描き出されるキャラクターの妙なかわいらしさが印象的です。

松浦カレー03 松浦カレー02

松浦カレー01

☆PRAY PLAY PAINT RYO MATSUOKA
CALM & PUNK GALLERY
東京都港区西麻布1-15-15 浅井ビル1F
4/9(月)~4/22(日)4/15休
11:00~19:00
pray play paint 4/9DM.jpg

☆NEXT DOOR vo.1
T&G ARTS
東京都港区六本木5-9-20
4/14(土)~4/28(土)日月祝休
11:00~19:00(土:~17:00)
NEXT DOOR 4/14DM.jpg

・VICA MITRICHENKA Grandmother's Treasuers & Grandfather's Prediction
CIBONE AOYAMA
東京都港区北青山2-14-6 青山ベルコモンズB1d
4/14(土)~6/20(火)
11:00~21:00
VICA MITRICHENKA DM.jpg

積み上げられた磁器。
さまざまな模様が入り組んだカップ。
前者は発散型、後者は内包型のスリリングさを持ち合わせているように感じられます。
それぞれ、展示会場にも提示されている物語を元に制作されているような感じで、不思議な奇妙さに溢れたなかなか興味深いインスタレーションが展開されています。

《4/15》
・Self Projection 絵画という自己投影法
佐藤美術館
東京都新宿区大京町31-10
4/3(水)~4/20(金)月休
10:00~17:00(金:~19:00)
Self Projection パンフ.jpg

油彩、日本画、アクリルなど、さまざまな技法のクリエイションがパッケージされた展覧会です。

吉田宜代さんの作品は、細かい色面が重なりあって具象的なものを描き出しています。
鮮やかで明るい色彩も気持ちいいです。

SP吉田宜代

藤井拓馬さんのアンダーグラウンド感が漂う作品。
闇を削りとるようなざっくりとした動線が画面上を縦横に走り、ダークな世界の中に動きを感じます。

SP藤井拓馬

シェル美術賞でも拝見してる高桑康二郎さん。
日常の光景に潜むシュールさに妙な面白さがあって。

SP高桑康二郎

石塚桜子さんの作品は、観る側の姿が画面に映り込むほどに画面表面に艶が施されています。
熱を感じる抽象世界を封じ込めたような質感が印象的です。

SP石塚桜子

板垣幸子さんの日本画は、モチーフこそオーソドックスながら、くっきりと明るい色彩による展開が目に鮮やかです。

SP板垣幸子

高崎賀朗さんの作品は、ボール、あるいは笹を画面に置くなどしてそこにスプレーを吹き付けて制作されたような作品。
無彩色で画面に展開される世界は、無条件にかっこいいです。

SP高崎賀朗01

SP高崎賀朗02

今回参加されているアーティストの中で僕がもっともよく拝見している小林英且さん。
あらたしい大作を拝見できたのがまず嬉しいです。色彩も渋めに構成されていて、小林さんの精緻な描き込みによって作り上げられる幻想的な世界が、独特な浮遊感を伴って広がって伝わってきます。

SP小林英且01

鉛筆によるデッサンも出展されています。
いまにも動き出しそうなほどにリアルに描かれていて、この精緻さには言葉を失います。

SP小林英且02

☆華・非・華
トーキョーワンダーサイト本郷
東京都文京区本郷2-4-16
3/28(水)~4/22(日)月休
11:00~19:00
華非華 パンフ.jpg

☆佐原和人展 - Hidden Window -
COOLTRAIN GALLERY
東京都港区六本木7-7-4 ハリントンガーデンB1F
4/11(水)~4/23(月)火休
10:30~17:00
佐原和人4/11DM.jpg

岡野香 -壁飾り- 展
Bunkamura Gallery
東京都渋谷区道玄坂2-24-1
4/14(月)~4/22(日)
10:00~19:30
岡野香DM.jpg

山本麻矢展「桜」
和田画廊
東京都中央区八重洲2-9-8 近和ビル302
4/15(日)~4/22(日)
13:00~19:00(最終日:~17:00)
山本麻矢4/15DM.jpg


本当の桜の花の満開のときを過ぎ、儚く散りゆくこの季節に現れる、散らない桜...


昨年と同じく、和田画廊で開催されている木彫作家の山本麻矢さんの個展です。
一足先にお邪魔して拝見してきました。
昨年夏の個展では、床一面に白い猫がいっぱい、そして起立する鰺の開きを狙う猫という展示でしたが...


まず、入口で一匹の猫が棚の上に乗ってお出迎え。
この無垢な表情、それでいてどこか切なげな目許がなんともかわいらしい。。。


山本麻矢 桜 04


そして、ギャラリーの中へ入ると...


1匹の猫。そして、額に収められた桜。
たったそれだけ。
しかし、それで充分に素晴らしくわび、さびの効いた空間が作り上げられてるんです。

ほかに何もいらない、ホントにたったこれだけで、風景や時間が心の中に思い起こされ、広がっていきます。


長い尾を伸ばし、何かに惹かれた表情を浮かべて後ろを振り返る白猫。


山本麻矢 桜 03


その猫のまわりに散る桜の花弁。
これすら木を彫って作られているんです。ひとつひとつの花弁に目をやると、その精緻な仕事の巧みさへの感嘆と、木彫らしくどこか朴訥とした風合いも滲み出ていて、小指のさきに乗ってしまうほどのちいさな花弁を見つめるだけでその世界に心が沈み込んでいきます。


山本麻矢 桜 02


ギャラリーの中央に佇む猫と、まわりに散る桜。
ここに収められた、止まった時間。あたたかみと洗練とが同時に伝わってきます。


山本麻矢 桜 01

正面の壁に、縦長の額。
その中に、花をつけた桜の木の枝。


山本麻矢 桜 05


正方形の箔を配したように仕上げられた背景。
そこに、桜の枝が額の中で上から下へと向かう縦の動線をもたらしながら収められています。

こちらも、先の猫のまわりの花弁と同様に、木彫で作り込まれた桜の花、葉の蕾み、幹などが精緻に再現されていて驚かされます。
彩色も実にていねいです。
加えて、敢えて木の枝を木で彫りだして見事に再現していることへは、尊敬の念すら沸き起こってきます。


山本麻矢 桜 09 山本麻矢 桜 11 山本麻矢 桜 08


まるで日本画ような木彫作品。
暗めに設定された照明のなか、ひときわ明るいスポットに照らし出されてその背景に滲む影にも、味わい深いものを感じます。


山本麻矢 桜 07


敢えて、東京ではちょうど桜の季節が終わってしまうこの絶妙なタイミングで始まる今回の山本さんの展覧会。
空間になくてもいいものを極限まで削ぎながら、なおかつこだわる部分、精緻に再現するべきものへの誠意や心尽くしが作り上げる「和」の渋い静謐感。

展示は、猫、花弁、そして桜の枝によって作り上げられています。
多くの方にぜひ足を運んでいただいて、空間ごと、じっくりと堪能してほしいです。

「25×4=□」展 尾崎真悟・大平龍一・柴田鑑三・飯田竜太
東京画廊
東京都中央区銀座8-10-5-7F
4/4(水)~4/28(土)日月祝休
11:00~19:00(土:~17:00)
25×44/4DM.jpg

衝撃の連続。
すごい。すごすぎる。


たいへんユニークな個性を持ち合わせた4名のアーティストをパッケージした展覧会です。
しかも、参加アーティストが全員、25才。
いや、もう、ギャラリーに足を一歩踏み入れたところから驚きがどんどん押し寄せてくるという、文句なしにすごい展示。


・・・というのも、今回の展示、靴を脱いで上がるんです。ギャラリーの床のほぼ全面に畳が敷き詰められ、それ以外の部分も板の間となっています。
それだけで「ここまでやるか!」と。


もっとも、その靴を脱ぐ前に訪れるファーストインパクトが。
柴田鑑三さんの作品です。

入口を塞ぐように設置された、スチロール板を地図の等高線のようにカットして押し出した作品。
カットされた断面が僅かずつにずらされることで現れる立体的な凄みは相当なもの。
ギャラリーの入口のほう、すなわち今回のインスタレーションの外側からその作品の中央部分にスポットが当てられていて、外側から観ると引力を感じるような質感、中に入って観ると、スチロール板が光を透過し、何かの胎動が起こっているような異様なまでの力強さが伝わってきます。

□柴田鑑三02 □柴田鑑三01


それ以上に、この精緻さに圧倒されるのです。
実際に目にすると「よくぞこの幅を残せたものだ」と、感心などといったレベルははるかに超え、いくら観ても驚きが消えることはなく。。。


□柴田鑑三04

このブログでも紹介する機会が多い飯田竜太さんの作品。
今回も洋書にカットが施された作品が出展されているのですが、いつもと違うのは、カットだけに留まらず、裏表紙の厚紙の部分を使って立体的に組み上げられているところ。
このアプローチがすごく面白い!


□飯田竜太02 □飯田竜太03


そして、そうやって立体的に姿を変えた本が壁に設置された棚に置かれ、照明によって幾何学的なかたちの影が壁に投影されています。その知的な静謐感も、これまで拝見してきた展示とはまた違った味わいがあり、飯田さんの世界にさらに広がりをもたらしているように感じられます。


□飯田竜太01

尾崎真悟さんの作品は、正面の壁に展示されたモニターで展開されています。
一見、能面が黒い背景に映されれているだけの映像。


□尾崎真悟02

しかし。。。


僅かずつに面の角度に変化がもたらされていて、じっと見つめているとある瞬間に少し前とはまったく別の感情を現しているような表情に変わっています。


□尾崎真悟01


言葉を発しない面が持つ表情の豊かさを、ゆっくりと過ぎる時間のなかで実感します。
並ぶモニターに映し出されるそれぞれの面の変化をじっくりと味わいながら過ごす時間に、なんだかいつもの時間とは違うスピードで流れる時の中に入り込んだかのような印象です。


□尾崎真悟03


尾崎さんの作品はもうひとつ、奥まったところにもう一点あります。
窓から射す外光を僅かに取り込むことで生み出される微妙なコントラストが印象的な作品です。

・・・と、ここまでチェックして一旦インスタレーションの外に出て、参加アーティストの数と作品の数とを合わせてみると、ひとりぶん足りない。


・・・ん?


そういえば、敷かれた畳の一枚が色違いだったなぁ。


踵を返し、最入場。

!!!!!Σ( ̄口 ̄;)

ありえん。
敷き詰められた畳のうち、色が違う真ん中のが大平龍一さんの作品。
しかも、木彫


木彫て。。。

□大平龍一01


とりあえず、この作品を目にして絶句。
まったく隙のない作品。畳の目が緻密に再現されていて、そのクオリティは信じられないほどの凄まじさ。
実際、これがもし住宅展示場であったら、おそらく作品の存在に気付かなかったかもしれない...。
また、この作品を再現するために積み上げられたスキルを思うと、さらにこの作品への感動が増します。


そして、ここにも注目↓


□大平龍一03


なんてさりげないんだ!Σ( ̄口 ̄;)


もとい、敷かれた畳のひとつが木彫で再現されることで、その空間における一部分がピックアップされていることを意識させられます。
否が応でもその「領域」の存在を意識せざるを得ない。
普通に敷かれた畳ではそこまで意識が回らないところを、このインスタレーションのようにあれほどの凄まじい精度で提示されるおかげで、僕自身の「領域」に対する考え方にも変化がもたらされたような気がします。


□大平龍一02

とにかく、ぞれぞれの作品のそれ自体の面白さに加え、そこに内包されたメッセージも実に深いものを感じます。
なんとしてもたくさんの方に観てもらわなければ、と思わずに入られない、至高のインスタレーションです。

アートフェア東京2007
東京国際フォーラム 地下2階 展示ホール1
東京都千代田区丸の内3-5-1
4/10(火)11:00~20:00
4/11(水)11:00~21:00
4/12(木)11:00~17:00
アートフェア東京2007.jpg


およそ2年振りのアートフェア東京。
こういうふうにたくさんのギャラリーがひとつの空間にパッケージされて展開されると、やっぱり楽しいです。


入口すぐにYOKOI FINE ART
石居麻耶さんの作品、昨年の個展とはまた違うテイストが感じられ、特に今回出展された作品は、より色彩的に軽やかさが増したようにました。
野依幸治さんのライトグリーンの風景も。

東京画廊にあったグランドピアノに西澤千晴さんの絵が描かれていてびっくり。

増保美術は永井夏夕さんひとりをフィーチャー。先日、BankART NYKにレジデンスで入り、そちらで制作されていた作品が出展されていて、あらためてこういったかたちで拝見できて感慨もひとしお。
永井さんが描く空は、どこか切なくて、でも凛としていて。

東邦アートの福井江太郎さん、昨年の個展とは打って変わり、おなじみのダチョウのシリーズ。粒子の粗い黒の顔料の素材の存在感が、ただでさえ躍動感に溢れるダチョウのダイナミズムをさらにパワフルに押し上げています。

不忍画廊では、藤田夢香さんのガラス作品が素敵に展示されていました。白熱灯に照らされた空間に、その透明感がいっそう映えていました。
呉亜沙さんの銅版画も独特のかわいさ。


日動画廊の小木曽誠さんの油彩。あらためてその筆致の凄みに感服。小木曽さんの絵の中に登場する水差しを見ると、そこに自分が映り込んでいるんじゃないかと本気で覗き込んでしまうほどの写実力。

TARO NASUにあった花札をモチーフにした作品。花札って面白いモチーフだと常々思っていて、それを油彩で描かれていたのが大変興味深かったです。おそらく西原功織さんの作品かと。。。

ギャラリー広田美術では、封筒の中のギャラリーの最初にフィーチャーしたアーティスト、寺内誠さんのタブローが久し振りに観られて嬉しかったです。その透明感溢れる色彩の美しさにあらためて魅了されました。
冨川美和子さんの独特の鮮やかさが印象的な日本画も。

版画廊、おなじみミヤケマイさんの楽しすぎてかわいすぎる作品。「デザートは別腹なの」的な、どれだけたくさんの作品を観たあとでも、やっぱり観ると嬉しくなるんです。

ベイスギャラリーには城田圭介の作品が。孤高の空間が収められた作品、そのクールさはこういった場所であってもやはり圧倒的。

ギャラリーゑぎぬの高島圭史さん。壁いっぱいの大作の遠い記憶を呼び覚ましてくれそうな空気感。ひと味違う、郷愁と爽やかさとに溢れています。

ミヅマアートギャラリー、おなじみのアーティストの作品がぎっしり。青山悟さんの犬、近藤聡乃さんの作品、大島梢さんの青い絵などなど。

Yuka Sasahara Galleryに置かれていた雨宮庸介さんの林檎にあらためて魅了された次第。無彩色の林檎も。

SCAI THE BATHHOUSEのブースでは名和晃平さんがライブペインティング中。グルーをスプレーで噴射させて、画面に立体感溢れる鋭い線が乗せられていく様子は観ていてスリリング。

そして、レントゲンヴェルケ
内海聖史さん、カンノサカンさん、長塚秀人さんなど、とにかく無条件にそのかっこよさにやられてしまう、大好きなクリエイションが揃った空間に、今回の「封筒の中のギャラリー vol.3」、あるがせいじさんの「ひらき」を、ちょうど目の高さで覗き込めるような位置に設置された棚の上に展示していただいていました。


・・・おかげさまでたいへんご好評をいただいて感無量でございます。
お買い上げいただいた皆様、ご覧いただいた皆様には心より御礼申し上げる次第です。
ありがとうございます!

鑑賞半分、挨拶半分といった感じの今年のアートフェア東京。
今年はアンティークはずいぶんと少なめだったなぁとも思うのですが、メインストリームもコンテンポラリーも、どちらも好きな僕からすると本当に楽しいイベントで。
もっとも、欲しいと思ったらすぐ購入できる余裕がないj経済力はこういった場所ではホントに実感して刹那的に心の中に寒風が吹き、遠いところに視線を送ってしまったりもするのですが。。。
ただ、こういったアートフェアにずっと観てるアーティストが出展しているのを観て、たくさんの人の目に触れる機会が得られているのがなにより嬉しいです。
で、今回出展していないけど、こういうところでぜひ観たいと思うアーティストももちろんたくさんいるのですが...。

今回は新しい個性との出会いは少なかったです。
なので余計に、観続けているアーティストの今を知り、これからを期待する機会だったように思えます。

今後のアートフェア東京も楽しみだし、それぞれのギャラリー、それぞれのアーティストの今後もやっぱり楽しみです。

"Sweet Distance" 元木孝美
トキ・アートスペース
東京都渋谷区神宮前3-42-5 サイオンビル1F
4/2(月)~4/15(日)水休
11:30~19:00(最終日:~17:00)
元木孝美DM.jpg


今年のワンダーシードでも作品が出展されていた、元木孝美さんのトキ・アートスペースでの個展に行ってきました。

これまでグループ展などで折りに触れて拝見してきていて、そのたびに細くカットされたトタン板で繰り広げられる知的さとユーモラスさとの両方と感じる世界が印象に残っていました。
で、これまで拝見してきた作品は区切られた画面のなかで展開されているもので、それはそれでもちろんそのユニークさが面白かったのですが、ぜひ個展を拝見したいと常々思っていたところで。

元木さんにひとつの空間が与えられたら、そこでどんな展開をしてくるだろう、と興味津々。

短い階段を下ってギャラリーのドアを開けると、壁沿いに一列に並ぶトタン板の家。
ずべて、家の影を立体的に現したように、壁から斜めに建ったようなかたち。
すべて同じかたちをしてはいるのですが、ゾーンによってサイズに違いがあって、しかもトタン板の表面の斑と若干の平面的な歪みがひとつひとつに微妙な個性を与えていて、なんとも味わい深いものに仕立てられています。


元木孝美07


この家が、ギャラリーの壁に配され、まっすぐの1列に並んで空間をぐるりと囲みます。
ひとつひとつが小さいので圧迫される感じはなし。
しかし、若干暗めに設定された照明によって、その家の影が壁にさまざまな角度と濃度で映り込み、その様子がまた面白く、この展示の大きな見どころとなっています。
なので、全体で空間を、そしてひとつひとつの作品を、いろんな方向から眺めるのが面白いんです。
正面か、真横、あるいは真下と、視点を変化させるだけで充分に、それぞれ違う表情を見せてくれます。


元木孝美01 元木孝美02

元木孝美03


とにかく一見無機質な構成に見えながら、そこに収められたクリエイションはホントにさまざまな表情を見せてくれています。
入口から射し込む自然光とギャラリーの中の照明と、ふたつの質の違う光が壁にグラデーションを与えていて、特に僕が伺ったのが日が高い時間だったこともあり、どこか爽やかな静謐感をもつ入口付近と、ほぼ照明の光だけで照らされる奥の方とでは印象が違うもの興味深いです。


元木孝美04


入った瞬巻から「なるほど!」と唸る構成。
ひとつのかたちを並べることでテーマも絞り、シンプルに作り上げられた空間。
そのシンプルさのおかげで、この元木さんの作品のポテンシャルがうまく引き出され、ホントにユニークな雰囲気が作り上げられているような気がします。


元木孝美06

GRAPP Exhibition The Evil & Sexy
新生堂
東京都港区南青山5-4-30
3/28(水)~4/7(土)日休
11:00~18:00(最終日:~17:00)
grapp3/28DM2.jpg grapp 3/28DM1.jpg

ユニークな個性の「余裕」のコラボレーション。

これまでC-DEPOTで拝見してきたGRAPPの新生堂での展覧会です。
画家の瀧下和之さん、デザイナーの松尾紀之さん、ファッションデザイナーの深民尚さん、写真家の三戸建秀さんの4名で構成されるGRAPP。
モノクロームの作品で構成され、ひとつの画面にそれぞれのジャンルによる手法がしっかりと取り込まれています。


なにより面白いのは、鬼のセパレートを身につけたモデルのポートレートに絡む瀧下和之さんの桃太郎図。いつもはパネルの作品の中で遊び回ってる鬼たちが、さらに遊び心をふんだんに溢れさせ、画面のいろんなところに登場します。


GRAPP003 GRAPP004


「あれ、いない?」と思ったら文字の中に潜んでいたり。


GRAPP001

GRAPP002


キャンバス地の作品も。
こちらにも手描きの鬼たちが。
キャンバスとなると、やはり味わいが変わってきます。


GRAPP007 GRAPP009

GRAPP008


こちらは文字のコンポジションに遊び心を感じる構成。


GRAPP006

GRAPP005


シンプルにポートレートだけの作品も。
逆にこの展示のアクセントとなって感じられる不思議な面白さ。


GRAPP010


作品によっては画面上にメンバーが参加していないのかな、と思われるものもあるのですが、それでもその中にはしっかりと関りが感じ取れて興味深いです。

そして、これらの作品に充満する「余裕」がすごく頼もしい!
すべてを出し切らなくても面白いものができる、という自信。そこにはそれぞれのジャンルでしっかりと痕跡を残して生きているという自負がバックボーンとなっているのが伺える気がします。
今回は「アート」のフィールドでの展覧会でしたが、今後、ファッションやデザインでの作品発表も期待したいです。

《4/5》
山本太郎展“日々是日本゜-ヒビコレニッポン”
Bunkamura Arts&Crafts
東京都渋谷区道玄坂2-24-1
4/2(月)~4/15(日)
10:00~19:30
山本太郎4/2DM.jpg

今年のVOCA賞のアーティスト、山本太郎さんの個展。
ギャラリーのウィンドウとGALLERY+とに大きな屏風の作品があり、さらに扇子の作品が数点。もう、すごく面白い!
VOCA展では、ちょっと考えさせられるような深いテーマの存在が印象に残ったのですが、こちらでは、ぱっと明るい賑やかさとユーモアとが直で伝わってきます。
幹のかたちがユーモラスな松や桜がずらると並ぶ山の表面にグレーの道路が水平に通っていたり、扇に現される年末年始が「もみの木とサンタ」から「松と鶴」へと移り変わるように描かれていたり、他にも信号機や飛行機、コーラなどのモチーフがうまい具合織り込まれていておもわず笑みがこぼれる構成で。
現実の世界では桜だけ、あるいは松だけの風景というのははむしろ演出された場所で、実際は道路脇に桜の木があったりして、いわゆる日本の情緒の象徴と近代化の象徴とが混在しているわけですが、こうやってひとつの画面に収められると絵画の世界は逆にシュールに感じられるのがすごく興味深かったです。


《4/7》
・狩野久美子展 [BACKYARD ―隠れた庭― 2007]
新宿ニコンサロン
狩野久美子4/3DM.jpg

狩野さんの展示は檻に触れて拝見しているのですが、その都度、風景と「もの」との関係、全体と部分との関係が織り成すコントラストが印象に残ります。
モノクロームで現れたさまざまな写真、一見すると全体として統一感がなさそうな時間の切り取り方のように思えるのですが、ひとつの画面の中に内包される「なんでこんなものがこんなところにあるんだろう」という違和感、そして展示全体を俯瞰したときに感じる「なんでこの展示のこの写真があるんだろう」と、同じように感じられる違和感とが妙に心に残ります。
今回の展示では、写真の明るい部分の銀色のぎらつきが、これまで以上に無機的で、それぞれの光景のクールさをさらに演出していたような気がします。


・strange embroideries 中島弘美
Cystem Gallery
東京都渋谷区千駄ヶ谷3-20-10
3/2(金)~4/22(日)月休
12:00~19:00
中島弘美3/2DM.jpg

はじめて伺ったCystem Gallery。1階と地下とに展示スペースがあり、今回の展示はその両方を観ることで中島さんのクリエイションが立体的に感じられる展覧会となっています。

1階では、デッサンが壁中に、そして床にも溢れて展示されています。
そのボリュームは圧倒的。溢れるイメージというよりも、むしろ切迫感が感じられるほどに、さまざまな種類、サイズの紙に狼のデッサンを中心に描かれています。観ていて意識が呑み込まれます。

中島弘美01 中島弘美02

地下にはアクリル画が壁に直接描かれた絵とともにインスタレーションされています。
大きな画面の作品がそれぞれの壁にダイナミックに配され、僕は地下のスペースから見始めたこともあってすぐには気付かなかったのですが、それぞれの画面に描き込まれる狼の姿に気付いた瞬間から、ここで展開されるひとつの世界により臨場感が感じられました。
ダークな物語の世界の中に入り込んでしまったかのような...。

中島弘美04 中島弘美03

中島弘美05


☆"Sweet Distance" 元木孝美
トキ・アートスペース
東京都渋谷区神宮前3-42-5 サイオンビル1F
4/2(月)~4/15(日)水休
11:30~19:00(最終日:~17:00)
元木孝美DM.jpg


・-神話宇宙- 峰田三根子展
Gallery≠Gallery
東京都中央区新川1-3-23 八重洲優和ビル2F
3/31(土)~4/12(木)
12:00~19:00(最終日:~17:00)
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写真をいくつかコラージュして構成された作品。
「和」を感じるモチーフと「未来」の感覚とのコントラストがかっこいいです。
それぞれの画面が元となったショートムービーも上映されていて、こちらも圧倒的な世界が展開されています。

峰田三根子02 峰田三根子01

峰田三根子03


・第六十二回 春の院展
日本橋三越本店7階ギャラリー
東京都中央区日本橋室町1-4-1
3/27(火)~4/8(日)
10:00~19:30

僕にとっては院展もコンテンポラリー。
続けて拝見している日本画のアーティストの今の作品が観られるので毎回楽しみなのですが、今回もそれぞれ力作が出展されていて、見応え充分。そして、展示スペースの複雑さには未だに慣れないのです(汗)。

近藤仁さん。冬の陽射しとその季節の空気の張り詰めた感じが伝わる風合い。眩しいほどに画面いっぱいに広がる爽やかさが嬉しい作品です。そして、「冬の蝉」というタイトルに、来るべき季節に備えて地面で暮らす蝉の幼虫の存在、そこで過ごす時間の長さを感じ、それがさらに絵の世界に深みをもたらしているように感じられました。

川瀬伊人さんの作品におけるモノクロームの背景のかっこよさも健在。銀箔に引っ掻き傷が入り、そこから滲む墨のシャープさが、華や鳥の姿が描かれる「和」の世界にオリエンタルでフューチャリスティックな味わいももたらしています。

荒木恵信さん。屋根のある駅の光景で、独特なやわらかさをもたらしている画面にまず惹かれます。
暗い駅の構内の屋根から光が射し込む様子が描かれ、光の広がりに神々しさが感じられます。荒木さんの光の表現には毎度胸を打たれます。

永井健志さんの作品、赤、黒、金の色彩で描かれる紅葉。いかにも和的な色合いで描かれていながら、繊細なその佇まいのなかに、信じられないほどのシャープさが感じられ、その強さ、強靱さに魅入られてしまいました。

院展ではいつも、加來万周さんの作品と対峙する瞬間に備えて気持ちが緊張しているのですが、今回も見つけた刹那の感動はやはり相当なもので。
深い黒の背景、そこに散らばる金箔。横たわる女性の姿。目にした刹那に引力が増したような錯覚さえもたらされるほどの重厚さ。

小畑薫さんが描く幸せ感いっぱいのあったかい色彩に出会えたことも嬉しかったです。のんびりとした雰囲気が伝わる南のどこかの風景。岩絵の具のやさしさも活きていて、そのあたたかさを更に演出しています。

はじめて拝見するなかでは、川地ふじ子さんの画面いっぱいに溢れる枝葉の臨場感と、中村英生さんの銀色で描かれた漁場の作品が特に印象的でした。

ほか、大石朋生さんの鮮やかな色彩、大河原典子さんの冬の運動場、高島圭史さんの優しくしなやかな風合い、高橋雅美さんのやわらかな赤が広がる部屋、廣瀬貴洋さんの魚の存在感、野地美樹子さんの銀杏の鮮やかな黄色、佐々木益さんの闇に広がる水輪などなどもチェックできて満足です。


内林武史展 [attic]
ギャラリー椿GT2
東京都中央区京橋3-3-10 第1下村ビル1F
4/2(月)~4/14(土)日休
11:00~18:30(最終日:~17:00)
内林武史4/2DM.jpg

それぞれの作品の中からにじみ出るやさしい風合いに心が和み、もう何にもいらないって気持ちが沸き上がってきます。
昨年はメインスペースで開催された内林武史さんの個展、今回はギャラリー椿GT2で開催されているのですが、空間全体が狭まったぶん、そのひとつひとつの世界への距離感も近くなった感じです。
やわらかな灯りが広がる照明が内包された作品の優しさ、スイッチなどを入れるとラジオが鳴ったり灯りが灯ったりする、実際に動かしてみて楽しいものなど、ユニークなクリエイションが詰め込まれています。
驚いたのが、DMにもなっているミニチュアの机の作品。スイッチを入れるとラジオが鳴るのですが、これがその机の上に置かれた錆びたような風合いが施された回路が実は生きているそう。
ゆったりとした時間が過ごせる素敵な展覧会です。


・軸丸智香子展
ぎゃらりぃ朋
東京都中央区銀座1-5-1 第3太陽ビル2F
4/6(金)~4/14(土)日休
12:00~19:00
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ふわりとした色彩で描かれる、女の子が登場する作品がいい味醸し出しています。
また、遊具を描いた作品のダイナミックさも印象的です。

軸丸智香子01 軸丸智香子02

軸丸智香子03


☆「25×4=□」展 尾崎真悟・大平龍一・柴田鑑三・飯田竜太
東京画廊
東京都中央区銀座8-10-5-7F
4/4(水)~4/28(土)日月祝休
11:00~19:00(土:~17:00)
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・forerunners & four eggs 奈良美智&福島淑子
GALLERY MoMo
東京都港区六本木6-2-6 サンビル第3 2F
4/3(火)~4/14(土)日月祝休
12:00~19:00
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「forerunners & four eggs」の第3弾。昨年のシェル美術賞でも入賞された福島淑子さんがフィーチャ-されています。
どこか暗さが感じられる作品。絵の中に登場する人物の憂いを帯びたような表情に、自然に感情移入してしまいます。

福島淑子03 福島淑子04

福島淑子05 福島淑子02

福島淑子01


☆ラントシャフト 阿部未奈子/大平龍一/成田義靖
ヴァイスフェルト
東京都港区六本木6-8-14 コンプレックス北館3F
4/6(金)~4/28(土)日月祝休
11:00~19:00
ラントシャフト2007DM.jpg

明日から一般公開されるアートフェア東京のレントゲンヴェルゲのブースで、「封筒の中のギャラリーVol.3 あるがせいじ」が出展・販売されます。

1冊5000円、エディションは80です。
ぜひチェックしてみてください!

木村剛士展
exhibit Live & Moris
東京都中央区銀座8-10-7 東成ビルB2
3/26(月)~3/31(土)
12:00~19:30(最終日:~17:00)
木村剛士3/26DM.jpg


しかしまあ、このサイズの作品を地下へ持ち込んだものだと感心...。

昨年もちょうどこの時期に同じexhibit Live & Morisでの個展を拝見している木村剛士さん。
FRPによるオブジェで、前回も独特の渋いフォルムと色味が印象的でしたが、今回はそれに拍車がかかり、信じられないくらいのサイズの作品がこの地下のスペースに持ち込まれ、さらに深いアングラ感を醸し出していました。


まず、入口から続く壁に設置された小さな鹿の壁飾り。
こちらは3点それぞれに違う素材が用いられていて、そこから伝わる印象の違いも面白い展示。


木村剛士01

そして、FRPの作品。まずは、子鹿に跨がる子供のオブジェ。
どこかのんびりとした子供の表情と、細い4本の足で地面を踏みしめる鹿の姿が印象に残ります。


木村剛士03 木村剛士04

木村剛士02


盲導犬の作品は、そのリアルさに驚かされます。
さまざまな角度で眺めてみて、今にも歩き出しそうなほど。
肉感も本物さながらですが、そのぼこぼことした肌の感じがいかにも木村さんらしいと思えます。


木村剛士06

木村剛士05

そして、この空間のほぼすべてを占める巨大な作品。
足が長い四つ足の動物がモチーフとなり、長めの首の先が繋がっています。
大きな皺が細身の体全体に施され、その皺がダイナミックな大気の流れのようなものを感じさせてくれます。


木村剛士09


ちょっと暗めの照明設定によって、鈍いグレーの体中に入る大きな皺に影が生まれ、その皺の立体感がさらに迫ってきます。
また、この作品全体がもたらす影の味わいも独特です。


木村剛士12 木村剛士08

木村剛士11 木村剛士10

木村剛士07


この作品はブロンズでも制作されているそうで、詳しい場所は伺わなかったのですが(たしか金沢方面だったような)、機会があればぜひそちらも観てみたいです。

杉田陽平展
アート・インタラクティブ東京
東京都港区西新橋1-4-12 長尾ビル7F
3/26(月)~4/4(水)日休
12:00~19:00
杉田陽平パンフ.jpg


ユニークな手法と、それを活かし切るセンス。

先日開催されたワンダーシードでも特に印象に残った杉田陽平さんの個展。
それ以前も何度か杉田さんの作品はグループ展で拝見していたのですが、ワンダーシードでの、それまでのぼんやりと滲んだ画風とはまったく違うインパクトに驚き、今回の個展も興味津々で。


杉田陽平11


とにかく手法が面白いです。
油絵の具をパレットの上に乗せて板状の「パーツ」を作り、それを画面に重ねるといったもの。
そのひとつひとつのパーツのなかに混在している色もそれだけで充分に見応えがあるのですが、その質感の面白さに頼らず、そのパーツでしっかりと人物の肖像や風景を描いているのがすごく面白いんです。

したがって、至近で見て感じる色彩の混沌と、遠めで眺めたときに見えてくる具象的なものとの、視点を変えて生み出されるコントラストの面白さが印象に残ります。


杉田陽平03 杉田陽平04 杉田陽平02

杉田陽平01


1点だけあったモノクロームの作品。
今回出展されている作品はどれも大まかに「何色の作品」といった感じなのですが、このモノクロームの作品は、その独特の立体的な画面の質感がより臨場感を伴ってリアルに感じられます。


杉田陽平05

杉田陽平06


じっくりと拝見していて気付くのは、白が効いているなぁ、ということ。
ひとつひとつのパーツだけをとれば、充分に抽象画的な雰囲気が充満しているのですが、それが重たくならないのはやはりその中に思いのほか「白」がたくさん入っていることが理由のような気がします。
油絵の具の生々しい質感が、白を多く使用されることでもたらされる軽さによって、いい塩梅で調和されているんです。


杉田陽平07 杉田陽平09

杉田陽平10


できることならすごく大きな画面の作品を観てみたい!
または、さらにこのパーツのコントロールの精度を増し、細密な表現もできるようになったらどんな感じだろう、とか、敢えてまったくの1色で描かれたらどうだろう、など、さまざまなイメージが浮かび、杉田さんのクリエイションの今後に期待を抱かせてくれます。


杉田陽平08

「アート IN 赤坂」プロジェクト 丸橋伴晃個展『赤坂娘』
@赤坂通り
東京都港区赤坂6丁目周辺
3/26(月)~4/8(日)(会期は予定)

こんな真骨頂。


『赤坂娘』11


BOICE PLANNINGの主要メンバーである丸橋伴晃さんの個展が開催されているとBOICE PLANNINGのブログ「ボイスの穴」で知り、早速チェックに。

赤坂の商店街が主催しているイベントのなかで、赤坂通りの両側に、端から端まで並んだ街灯にずらりと設置されたフラッグ。このそれぞれに、赤坂とゆかりのある女性のポートレートがさまざまな構図でプリントされ、ある箇所では味わい深い、別のところではユーモラスに、といった具合に通りにアクセントをもたらしています。


『赤坂娘』02 『赤坂娘』07 『赤坂娘』01


しかし、長い。(汗)
往復で1kmは軽くこえるほどの総延長。
それぞれ同じ色のフラッグが続くように設置されているのですが、

色が変わった!!!Σ( ̄口 ̄;)
また変わった!!!Σ( ̄口 ̄;)
またまた変わった!!!Σ( ̄口 ̄;)
またまたまた(以下略)


・・・と、この連続。
しかも、同じものは一切無し。


ぜ、


ぜ、

全部観なきゃならんじゃないかぁぁぁっっ!!!Σ( ̄口 ̄;)


と内心歓喜の雄叫びを上げながら歩く赤坂路。


『赤坂娘』05 『赤坂娘』04 『赤坂娘』06


延々と続くフラッグを眺めながら通りを歩いていると、ひょっとしたら丸橋さんの映像作品のなかに入り込んでしまっているんじゃないんたろうか、と本気の錯覚が沸き起こります。

風になびく静止画の連続。それが「次の場面への期待」を喚起し、実に長尺かつリアルタイムの映像を彷彿させるアプローチがすごく面白く感じられました。


『赤坂娘』08 『赤坂娘』09 『赤坂娘』03

それにしてもこのアプローチ、街があって、そこで何かをやろうとなったときに、その街の「人」をピックアップするというのは、すごく丸橋さんらしいなぁ、と。
人が集まるクリエイション、BOICEの真骨頂、本領発揮。

フラッグに登場する女性のさまざまな表情が、それぞれのフラッグの色に映え、さらにそのフラッグがさまざまな商店や小料理屋、ビル、建築現場、さらには日枝神社の鳥居と同じ視界に収まって、それが痛快に思える展示です。

残念だったのは、僕の体調とお天気がイマイチだったことで。。。
あったかいときにまた近くを通ることがあれば、またちょっと寄ってみようと思います。

『赤坂娘』10

第1回shiseido art egg 内海聖史
SHISEIDO GALLERY
東京都中央区銀座8-8-3 東京銀座資生堂ビルB1F
3/9(金)~4/1(日)月休
11:00~19:00(日祝:~18:00)
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このクリエイションをリアルタイムで観られることの嬉しさをあらためて実感。

資生堂ギャラリーで開催されたshiseido art eggの最後を飾った内海聖史さんの展覧会。
この展示のための作品製作の過程も内海さんのブログで逐一拝見していて、始まるずいぶん前から楽しみで。

オープニングには伺えなかったものの、翌日の土曜日から毎週、銀座に来たときは必ず足を運び、その都度刺激を受け、展示されているこの状態で体感できる内海さんのクリエイションをできる限り堪能しました。

しかし、きっと毎日観たとしてもその分だけの発見があるだろうことは想像に難くないですし、おそらく製作者の内海さんにとっても、製作段階から、さらにこの企画が決まったときからご自身の内側に新しい発見が起こり続けられていたのでは、と思うのです。


この展示を初めて目にしたときの嬉しい衝撃。
内海さんは油彩の、すなわち平面のアーティストでありながら、作品が発表されるほぼすべての機会において、その「空間」での展示を前提に、展示位置に始まって作品のサイズや構図などが決まっていくそうなのですが、銀座随一といってもいい資生堂ギャラリーの広々とした容積をどうインスタレーションしてくるか興味深々で。

まず、階段を降った正面の壁に、昨年秋にヴァイスフェルトで発表された「三千世界」のミニマムな作品群が整然と展開されているのが目に入ってきて、「そうきたか!」と。
この作品のポテンシャルの大きさをこのようなかたちで実感するとは。。。

広々とした壁にシャープに展開されている三千世界を右手に階段を降りきり、メインスペースに辿り着くと一気に視界が開けるのですが、まさに待ち受けているといった感じの無数の青のドットがそこに。
正面の壁一面のみ、上下2段で合計22枚のパネルで展開されている広大な作品が1点。隣り合う壁はキャプションどころかちいさなくすみさえも排除され、空間的な構成こそシンプルながら、そのダイナミックさがよりいっそうの迫力を伴って、観る者の意識、さらに感覚を呑み込み、圧倒していきます。
基調となる青もさまざまな濃さがあり、さらには黄色や赤、黒などの色彩のドットの重なりが、上下と前後感覚を失わせたような例えようのない奥行きをもたらし、その色彩の中に突っ込んでいきたくなるような衝動も沸き起こります。

その作品のインパクトは、一度この空間を体感してから2度3度と伺った際にも変わることなく伝わってきます。


3度目に来たときは、この作品を観る人の姿といっしょにこの作品を観る面白さに気付きました。
画面の方へと近付く人と画面との距離の変化が、作品の縮尺のイメージをかなり劇的に刺激します。
こういう感覚は川村記念美術館でのロバート・ライマン展以来です。
画面の至近に人がいるとより絵の実際の大きさが実感できるのと同時に、その色彩が織り成す背景に人の姿が溶け込み、動かないはずの色彩のドットが揺れるような印象も。さらには人々の身につける服と作品の色との関係が響きあい、そのたびに新鮮なアクセントを視界にもたらすんです。

僕が伺った最後の土曜日は、内海さんがいらっしゃってて、嬉しいことに今回もいろいろとお話を伺えました。
内海さんが発するクリエイションに関する言葉はいつもクリアで毎度感心させられます。

今回の展示における興味深い話は、まず、階段の踊り場やエレベーター、倉庫などがある関係で実際はかなり複雑になっている資生堂ギャラリーの空間をどう解釈したか、ということ。
実際はふたつの直方体が一部で重なりあうような空間になっているところを、ふたつの直方体が入ったひとつの空間と解釈し、そのなかでもっとも広い壁に三千世界を展開し、その向かいに22枚のパネルの大作を、という構成にすることにしたのだそう。
なので、「三千世界」は階段や踊り場で隠れた壁の部分に実際に展示された数よりも100近くのミニマムなパネルが展示されているイメージが起こるような工夫がなされていて、実際に目にすると壁が繋がって感じられました。

また、この作品を観る人はすべてを観るのではなく、その一部を観ながら意識にない部分を記憶などを元にしながら想像することでいろんなイメージを持つはず、というような話もたいへん興味深かったです。
たしかに、これだけの色面だとすべてを一度に把握するのは難しく、画面上で視線を動かしながら、気に留まった部分を見つめ、その部分から広がっている色彩の響きを堪能しつつ、しかし少し視点をずらすと直前まで感じていた印象とはまた違った感触がある...この連続なんです。
今読んでいる脳の本で、記憶の要素がひとつずつ増えるとその関係性は2乗ずつ増加していく、しかし忘れてもいくといったことが書かれていて、まさにこのことが内海さんの作品を観ているときに起こっているのかな、と。
時間をかけて眺めると、確実にその深みが心に積み上げられつつも、一度観たはずの部分にも新鮮なインパクトを受けます。


内海さんの作風は抽象画ではあるのですが、これほどまでに記憶や知識といった何らかの「既知の事物」に頼ることなく、その絵の色彩によって構築される世界のままを楽しめるのは希有のような気がします。
もちろん、内海さんの作品をこれまで続けて拝見していて、そのクリエイションの素晴らしさ自体を経験していることは大きな要素ですが、それを差し引いても、そこに描かれているものから純粋にイメージが喚起され、広がっていくんです。


・・・とここまで書いて、実は4度足を運んで観るうちに、4度目にして今回の作品が「ヨーロッパ大陸」に似てるのに気付き、「おおー」と思ったり(笑)。

次は夏に渋谷の大好きなスペース、ギャラリエ・アンドウでの個展が予定されていて、このギャラリーも変型の空間なので、どう展開してくるかすごく楽しみです。

屋宜久美子展
アートスペース羅針盤
東京都中央区京橋3-5-3 京栄ビル2F
3/19(月)~3/24(土)
11:00~19:00(最終日:~17:00)
屋宜久美子3/19DM.jpg


「謎」が解けた安堵と、それが面白いことに気付けた嬉しさ。


羅針盤での屋宜久美子さんの個展です。
屋宜さんの作品は昨年度の芸大の修了制作展で拝見していたのですが、その時に観た作品は、若干セピアがかった赤が広がる縦長の画面にアクリルケースが被せられているというもので、正直なところ、その意図が掴めなかったんです。
しかし、何故か心に引っ掛かっていて、今回の個展が実にいいタイミングで屋宜さんの作品に触れることができました。


屋宜久美子06


このギャラリーとしては珍しく照明を落とされ、薄暗くなった空間に、ほぼ同型のパネルにアクリルケースが設置されています。
そして、赤ではなく青の画面に、人のシルエットが描かれています。


屋宜久美子04

屋宜久美子05←この部分


「なるほど」と納得しながら一通り展示を観て、ふたたび観始め、ある作品のところで至近で眺めてたら、画面に描かれていたはずの影が消えたんです。
よく観てみると、この影は本当の「影」で、もとはマウントされているアクリルケースに溶剤を絵の具のように用いて描かれたもの。

ほんのわずなか凹凸が織りなす影の妖しさ、なんとなき懐かしい記憶を思い起こさせてくれるような風合い。このアイデアに感服した次第です。
確かによく観察すると、アクリル板に僅かな凹凸が見受けられます。


屋宜久美子02

屋宜久美子03


屋宜さんにお話を伺ったところによると、やはり影に興味をお持ちとのこと。
このユニークさがさらにコントロールされるとどうなるんだろう、と、さらに面白い展開に期待してしまいます。

で、この展示が終わってからほとんど間隔を置かない4/24からギャラリーエスで、屋宜さんと安倍千尋さんの二人展「onomatopee vol.3 -回帰線上の pale tone-」が開催されます。こちらも楽しみです。


屋宜久美子01

村井美穂 作品展 -キマジメ装置-
藍画廊
東京都中央区京橋3-3-8 新京橋ビル1F
3/19(月)~3/24(土)
11:30~19:00(最終日:~18:00)
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予想外にも「笑える」展示でしたよいやホント。
それも爆笑。


京橋のコンパクトなスペース、藍画廊での村井美穂さんの個展に行ってきました。
村井さんは未知のアーティストでしたが、DMを見て気になって、きっと面白いだろうと。


いや、面白いのは面白かったんですけど、こういうふうにツボに入ってくるとは思ってもみなかったもので。


展示されていた作品は、ウィンドウにあったものも含めて4点。
機能美ここに極まれり、というわけでもないんですけど、ビー玉やボールが作品の中で動くように設定されていて、その動きが極めて生真面目。作品タイトルも「キマジメ装置」だし。

まず、木製の作品。
幼児玩具の手押し車で押すとカタカタいってアヒルだかなんだかの絵が描いてある板が動いてけっこううるさい(おい)やつに見た目が似ています。
モーターで筒が上下運動をゆるやかに繰り返し、そうすることでビー玉がその筒の上を通過し、向こうまで辿り着いたら今度は中の部分を通って返ってくるという。


村井美穂02 村井美穂03


いや、すごいんですよ、見事なんですよ。
・・・でも、笑える。
手前の筒からビー玉がちょこんと顔を出したあたりなど、思わず番茶吹いた状態。
ま、要するに、かわいいんです。


村井美穂01

続いて透明のアクリル板によって構成された作品。
台の上に黄色いアクリル板が立てて置いてあって、その右端にはガラスの小皿、その中にビー玉。
村井さんに促され、そのビー玉を黄色いアクリル板とその手前に取り付けられている無色透明のアクリル板との間に乗せてみる。

こ、降下かよ!!!Σ( ̄口 ̄;)


ツツーと2枚のアクリル板の間を斜めに転がっていくビー玉。
で、右端の小皿に到達してチャリーンと音をたてるビー玉。
その刹那といったら、まさにラムネ吹いた状態。


村井美穂04

村井美穂05

そして、布で仕切られた奥のスペース。
手前のスペースで試されたアイデアがこんなかたちで結実しているとは。。。

暗室となった空間に、下方から照射されるブラックライトがフューチャリスティックな雰囲気を演出しています。
そのブラックライトに照らされることで発光して見えるボールが、複雑に組み上げられたアクリル板の中を移動するという作品。


村井美穂09 村井美穂08


ボールは先のアクリル板2枚だけを重ね合わせた作品と同じ理屈で、この作品の中を光のラインを残しつつくるくると回転しながら動いていきます。
3つのボールそれぞれ、赤、緑、黄色と違う光を放っていて、それぞれが暗闇に浮かび上がる美しさも印象に残る作品。


村井美穂06


この、期せずしてダイナミックな展示構成となっていたこの村井さんの個展。
いや、もう、すごく楽しませていただきました。

このユニークなアイデアとクリエイション、もっと大きな空間で、大きな作品でぜひ見てみたいです。


村井美穂07

不覚にも風邪をひいてしまい、思うように観て回れなかったこの週。。。


《3/27》
☆GRAPP Exhibition The Evil & Sexy
新生堂
東京都港区南青山5-4-30
3/28(水)~4/7(土)日休
11:00~18:00(最終日:~17:00)
grapp3/28DM2.jpg grapp 3/28DM1.jpg


《3/31》
・Anton Henning
TARO NASU
東京都港区六本木6-8-14-2F
3/24(土)~4/28(土)日月祝休
11:00~19:00
Anton Henning.jpg

屈指のコンテンポラリーアートギャラリーが美術館に...。
そんな印象を受ける展示となっています。
油彩の作品は2点だけ、しかしそれぞれは、白熱灯の照明が上部に取り付けられた木製の額に収められて、それこそ本当に美術館に展示されているような雰囲気を醸し出しているんです。
描かれている絵も、不思議と古風な感触もたたえつつ、それが逆に斬新にも思えててくるという...。

おそらく入口正面の壁に展示された横長の大作の上を這い回るように撮影された映像も楽しげなトイミュージックとともに上映されていて、これもまたなんとも不思議な雰囲気を更に演出しているように感じられました。


☆「アート IN 赤坂」プロジェクト 丸橋伴晃個展『赤坂娘』
@赤坂通り
東京都港区赤坂6丁目周辺
3/26(月)~4/8(日)(会期は予定)


☆杉田陽平展
アート・インタラクティブ東京
東京都港区西新橋1-4-12 長尾ビル7F
3/26(月)~4/4(水)日休
12:00~19:00
杉田陽平パンフ.jpg


☆木村剛士展
exhibit Live & Moris
東京都中央区銀座8-10-7 東成ビルB2
3/26(月)~3/31(土)
12:00~19:30(最終日:~17:00)
木村剛士3/26DM.jpg


・金工二人展 草野晃 祝迫義郎
Gallery銀座一丁目
東京都中央区銀座1-9-8奥野ビル4F
3/26(月)~3/31(土)
12:00~19:00(最終日:~17:00)
草野・祝迫DM.jpg

祝迫義郎さんの作品が出展されているということで、今度はどんなことを作品に盛り込んでくるか楽しみだったのですが、いつになく危険なモチーフが、しかも女性のアイテムに取り入れられていて。

ショーツの複雑な紋様のなかには戦闘機の運転室。
祝迫義郎@銀座 01

金属のきらめきが美しいヒールは、踵の部分がナイフになっていて、相当にアバンギャルド。
祝迫義郎@銀座 05

そしてケースに収められた口紅。紅の部分が七宝で作られていて、ひとつひとつの色の美しさも印象的ですが、それぞれが弾丸になっています。
祝迫義郎@銀座 03

モチーフの組み合わせのスリルが今回も興味深く感じられました。無論、かっこいい作品群です。


・石井弓展《尾鰭》
フタバ画廊
東京都中央区銀座1-5-6 福神ビルB1
3/26(月)~4/1(日)
11:00~19:00(最終日:~16:30)
石井弓3/26DM.jpg

昨年度の造形大の修了展示で拝見した石井弓さんの個展。
薄暗いスペースに、紙粘土で制作された不思議な味わいのあるかたちのオブジェが低い台の上に、壁に、棚に配されていて、淡い深みを感じるインスタレーションが展開されていました。

石井弓1

石井弓4 石井弓5

その紙粘土のオブジェをスキャナーで取り込み、平面の中に封じこめた作品も。
光の広がり方など、写真とはまた違う風合いが感じられます。

石井弓3

一部白い作品もありましたが、ホワイトキューブに散らばる無彩色がユニークな空間を構成していたのが印象的でした。

石井弓2

・第55回 朝日広告賞
有楽町朝日ホール ギャラリー
東京都千代田区有楽町2-5-1 有楽町マリオン11F
3/30(金)~4/3(火)

広告の登竜門的な公募の入賞作品の展示。
はじめて拝見したのですが、ワンカップ大関やS&B、広辞苑など、文字を使った広告がかなりツボに入って笑えました。

そして入口に設置された、神田サオリさん製作によるマネキンのインスタレーション。
展示タイトルも神田さんらしい文字で。

神田サオリ@朝広02

マネキンが身に纏った和紙で作られた服と、そのバックに配された和紙の簾。淡いピンクと黒、そして和紙の穏やかな白とで、ゆらゆらと妖艶に揺れる雰囲気が醸し出されていて、若干暗めのロビースペースにはっとしてほっとするようなアクセントとなっていました。

神田サオリ@朝広01

「みみなり」忽滑谷昭太郎
フタバ画廊
東京都中央区銀座1-5-6 福神ビルB1
3/19(月)~3/25(日)
11:00~19:00(最終日:~16:30)
怱滑谷昭太郎3/19DM.jpg

鉛筆の独特の黒い輝きによって構築される硬質さと、抽象的な色彩の飛沫との同居。


フタバ画廊での忽滑谷昭太郎さんの個展に行ってきました。
実際に見て、直接視覚から伝わってくるその凄みといったら...。


ひとつの画面に現れるのは、有機的なフォルムのカラフルな部分と、硬質な印象を受けるほどに、鉛筆で塗りつぶされた部分。
何よりもまず、その鉛筆部分に意識がぐんと引き寄せられます。硬質な印象を受けるのはその鈍い銀色の金属にも通ずる質感とともに、さまざまな角度の動線で塗りつぶされ、それらが隣り合うパーツごとに変化を持たせているために、独特の立体感、奥行きが画面に現れているのも大きな理由です。

観る側も位置を変えることで、鉛筆の部分が表情を変え、画面の印象も物理的に変化します。


怱滑谷昭太郎06

観る位置と作品に当たるスポットとの角度的な関係が変わることで、鉛筆部分に浮き出る模様に違いが現れるんです。

怱滑谷昭太郎07


忽滑谷さんの作品は、まず画面にカラフルな色彩の飛沫、抽象的な構成によって画面が覆われ、その上から鉛筆で塗りつぶしていく、という順番で描かれるとのこと。
鉛筆部分と色彩部分との割合的なバランスは作品によって相当に異なっています。
しかし、カラフルな色彩と無彩色、さらに有機的なかたちと無機的な質感とによるコントラストはそれぞれの画面においてたいへんユニークに感じられます。

怱滑谷昭太郎02 怱滑谷昭太郎03

怱滑谷昭太郎01


描く順番が絵の具の次に鉛筆、というふうになっているのは、パネルの側面で分かります。
画面の中の色彩が側面に残っているものもあり、それがこの鉛筆によって塗り潰された部分の下にも同じように色彩のうねりが存在するのが伝わってきます。


怱滑谷昭太郎05

怱滑谷昭太郎04


僕には、絵の具の色彩の部分と鉛筆の部分のどちらにも、「増殖」のイメージが充満して感じられます。
順番こそ決まってはいますが、実際に忽滑谷さんが画面にのこした「痕跡」だけを観ていると、もともと黒い世界に有機的な存在が勢力を増しているようにも見えたり、逆にその色彩の広がりを硬質な何かが覆っていくような想像も浮かびます。
いずれにしても、そのせめぎ合いの「過程」が封じ込められたようなスリリングなインパクトが観る側の意識を引き付けるんです。


怱滑谷昭太郎10 怱滑谷昭太郎08

怱滑谷昭太郎11


凄まじくアナログな素材、アナログな手法で制作されていながら、これほどまでに刺激的な光景が現れていることに大きな驚きがあるんです。
これだけの広さを鉛筆で埋め尽くすための仕事の量のすごさも、無論、想像に難くないです。
そして、立体的なインパクトも痛快!

今後の展開もすごく楽しみなアーティスト、クリエイションです。


怱滑谷昭太郎09

松永龍太郎 個展
@銀座スルガ台画廊
東京都中央区銀座6-5-8 トップビル2F
3/19(月)~3/24(土)
11:00~19:00(土:~17:30)
松永龍太郎3/19DM.jpg

日本画の画材で、敢えてこのモチーフを描く。


松永龍太郎06


以前から続けて拝見している松永龍太郎さんの個展。
これまではグループ展や、芸大デザイン科関係の展示で、一度に拝見できる作品数も少なく、ぜひ個展で拝見したいと常々思っていたので、今回の展示はずいぶん前から楽しみで。

やはり、ひとりの個性で空間が占められると、その個性が醸し出す味わいをより体全体で感じられ、変な表現になりますが、観る側の達成感もより増すような気がします。無論、描き手である松永さんにとってもその満足感は相当なものであったと想像するに難くないのですが、僕としても念願が叶った感じで、印象深いものとなりました。

こういった機会が多く提供される、銀座スルガ台画廊が毎年企画するレスポワール展は、貴重だなぁとあらためて思った次第です。

まず、正面の壁で展開されていた4点の縦長のパネルの作品。
整然と並べられた揉まれた和紙の支持体の大きな画面に、松永さんがよく取り上げるモチーフであるサテライトが、その無機的で未来的な姿を晒しています。そこにさらに有機的なモチーフも同時に取り上げられています。

松永龍太郎09 松永龍太郎08


岩絵の具、墨、箔、そして和紙といった日本画の画材が放つ独特の渋味とサテライトとのコントラストの妙。
さらに、サテライトといった未来的なイメージを放つモチーフと、貝などのむしろ太古のイメージを喚起させるモチーフとのギャップ。
こういった「表裏」の要素がひとつの画面に収められ、独特のハーモニーを奏でます。


松永龍太郎03 松永龍太郎02

松永龍太郎01

縦長の板の質感も味わい深い小品も印象的です。
それぞれのモチーフの格好良さが、木の板の質感、背景の色彩の渋味によって見事に浮き出ています。
さらに、画面に登場するシャープな弧や直線が、そのモチーフに動的な演出を加え、小さな画面にダイナミックさをもたらしています。


松永龍太郎10 松永龍太郎12 松永龍太郎11

多くの作品にサテライトが登場していたのですが、そのなかで余計に印象に残ったのが、大きな画面にさまざまな花が舞う作品。
花という日本画としてはもっともスタンダードな画題が取り上げられていながら、それでも失われていない松永さんの個性に脱帽しつつ、逆に敢えて花のみが描かれているこの作品の深みもたいへん興味深く感じられました。


松永龍太郎04


松永さんの、あっさりとした風合い、清々しい渋さが、観終わってからも心地よい後味となって残っています。
そして、これからもしさらに深味が増し、呑み込まれるような展開が画面の中にもたらされたらまた面白いだろうな、という期待も沸き起こります。


松永龍太郎07