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幕内政治が覗いたおすすめアートイベント情報
2007年5月アーカイブ

篠原愛
Gallery Q
東京都中央区銀座1-15-7 マック銀座ビル2F
5/28(月)~6/2(土)
篠原愛5/28DM.jpg


シュールな絵の世界に広がる耽美的な風合い。


篠原愛さんの個展に行ってきました。

Gallery Qの比較的コンパクトなスペースに、油彩の作品とモノクロームのイラストが並びます。
そしてそれぞれ、シュールなモチーフがつくり出すホラーチックな構成のそこかしこに潜む、実に細やかな描き込みに目が奪われます。

DMにも使用された、入口正面の壁に展示された大きな作品。
テーブルに臥せる女の子の躯から生える薔薇や朝顔の根元の赤の生々しい鮮やかさ、その薔薇のなかには鳥が鋭い目線をこちらに向けていて、そういったモチーフのインパクトは鮮烈です。
そして、何と言っても、圧巻の細かい描き込み。画面を横切る細くて白いレース、女の子が身に纏う黒のレース、そしてその女の子の髪、臥せるテーブルの木目、そういったものが実に精緻に描かれていて、その奇妙な絵の世界に強烈なリアリズムがもたらされています。


篠原愛04 篠原愛02 篠原愛05 篠原愛03

篠原愛01


加えて、色彩の鮮やかさも印象的です。
やわらかで明るい色彩に魅入られ、心を許して絵の世界に入ろうとすると、そのシュールな絵の世界にやられてしまう・・・このふたつの要素がもたらすギャップも印象に残ります。


篠原愛07

篠原愛06


入口から続く壁にはイラストの作品が並びます。
こちらも繊細で鋭い線の重なりで、部分的にスクリーントーンも用いながら、実に精緻にさまざまなシュールな場面が描かれています。


篠原愛10

篠原愛09


そして、1点だけ出展されていた鉛筆画。
独特のやわらかな風合いを醸し出していて、今回の展示のアクセントとなっています。


篠原愛08

それぞれの作品が持つ力に圧倒されながら、かつその色の鮮やかさを堪能し、さらに細かい写実的な描き込みをじっくりと凝視して感嘆する...さまざまな驚きに満ちた展示です。

水野温子展「きらきら」
GALLERY HOUSE MAYA
東京都港区北青山2-10-26
5/28(月)~6/2(土)
11:30~19:00(最終日:~17:00)
水野温子5/28DM.jpg


あざやかな色彩の重なりが醸し出す、やわらかい光のハーモニー。

GALLERY HOUSE MAYAで開催中の水野温子さんの2年振りの個展に行ってきました。


水野温子08


ひとつひとつの作品におけるさまざまなモチーフは、スッスッと走る細かい線がひとつの色面を作り上げ、それらが重なって描かれています。
また、色面のひとつひとつがくっきりとしているのもたいへん特徴的です。マスキングテープを駆使して、花弁や葉の1枚1枚、茎の部分など、あるいはある風景のなかのシルエットをていねいに象っいくことで、淡く美しいグラデーションを伴った色面が画面に、まるで薄い紙のようなものを置いていかれたかのように描かれています。
この画面の絵の具の立体感は、至近で拝見するとよりリアルに伝わってきます。


水野温子02 水野温子03

水野温子01


厚めのパネルが用いられていて、その側面にも表面の絵の続きが描かれているのもユニークです。
横だけでなく、下のほうにも。


水野温子04

水野温子05


このような、たいへんユニークなアプローチがなされていながら、その色のやわらかさ、描かれるモチーフから伝わってくるやさしい時間などによって、さわやかな気持ちが心のなかに広がります。
バラや桜など、花を描いた作品は、その花の可憐な美しさがていねいに引き出されていて、一方でいつかのシーンを切り取って独特の彩りで描かれた作品は、不思議な懐かしさ...未来の記憶を思い起こさせてくれるようでもあったり、ある物語のなかに入り込んだような気持ちが沸き起こってきたり。。。


水野温子06 水野温子12 水野温子11

水野温子10


ふわりとやさしい色に包まれた空間が、できあがっています。
清々しいイメージが溢れてきて気持ちいいんです。


水野温子09

黒糖のにほひ 東京―波照間往復絵日記展 藤田夢香+坪谷彩子
美篶堂
東京都千代田区外神田2-1-2 東進ビル1F
5/22(火)~6/3(日)月休
11:00~20:00(土日:~18:00)
黒糖のにほひDM.jpg

沖縄と東京、遠く離れたふたつの場所で綴られた時間。


藤田夢香さんと坪谷彩子さんの2人展に行ってきました。
藤田さんはこれまでもいろんな展覧会で作品を拝見していて、最近ではクリルタルにシルクスクリーンプリントが施されたオブジェが印象的なのですが、今回はこれまでとは志向が違っていそうで楽しみでした。


まず、ギャラリーの中央のテーブルに本が積まれています。
身の丈の言葉といった風合いの、どこかほっとするような言葉と、シルクスクリーンの作品などもいっしょに綴じられている本。
真っ白な表紙と、美篶堂らしいていねいな仕上げから、すっと清々しい印象を受けます。


黒糖のにほひ01

黒糖のにほひ02


向かい合う壁に、坪谷さんと藤田さんの作品がそれぞれ展示されています。
坪谷さんは、机の引き出しをパネルに見立てて、そこにモノクロームの写真と小さなカラーの写真を収めているもの。
それぞれの風景、場面に想い出が詰まっているような感じがしみじみと伝わってきます。


黒糖 坪谷彩子02 黒糖 坪谷彩子03

黒糖 坪谷彩子01


藤田さんは、今回は紙の作品。
やわらかな色彩に染められ、そこに文字が乗って、さらに箱のかたちに組み上げられています。


黒糖 藤田夢香04


文字と色彩とから思い浮かんでくるイメージも楽しい作品です。
向かいの坪谷さんの作品が記憶を辿るような雰囲気で、こちらの藤田さんの作品は、もしかしたらそこから伝わった雰囲気から浮かんできたイメージを紡いでいるような、そんなやさしさが滲んできている感じです。


黒糖 藤田夢香06 黒糖 藤田夢香05 黒糖 藤田夢香03

黒糖 藤田夢香02


また、1点だけ展示されている手製の封筒も実に味わい深い風合いを醸し出しています。


黒糖 藤田夢香01


ふたりの想い出におじゃましているような、なんとなく欲凝りとした気分に浸れる素敵な展示です。
置いてある黒砂糖をいただくと、この雰囲気と繋がっているようにやさしい風味が口のなかに広がります。


黒糖のにほひ03

《5/22》
井上鑑 Soundings 2007「音は旅、音は砂、音は血のように熱く甘い闇」
NADiff
東京都渋谷区神宮前4-9-8 カソレール原宿B1
5/12(土)~5/22(火)
11:00~20:00
井上鑑5/12パンフ.jpg

NADiffの真ん中にあるギャラリースペース、その両側の入口が白いカーテンで仕切られ、中に入るとちょっとした風景に紛れ込んだような思いを抱かせるインスタレーションになっていました。
そして、チキチキというイントロに続いて流れてきたのは、分厚いサラウンドサウンドによるストリングスとピアノのアンサンブル。
部分的にエフェクトがかけられていて、アコースティックな響きの中に刹那的に電気的に加工されたディレイ音が聴こえてきたり。狭くて薄暗い空間の中を満たす重厚な音楽に浸りながら、思わず目を閉じて音から見える景色を脳裏に浮かべていると...不思議とていねいなナレーションが聴こえてきそうなほど、童話の世界に紛れ込んだようなイメージが湧いてきました。
一曲終え、この展覧会の常連という方と入れ代わりで出てきて、ひと呼吸おいてあらためて。
先ほどと同じイントロダクションに導かれて現れた曲は、ぐんぐんと煽るようにグルーブする変拍子のアフリカンビート。息もつかせぬリズムの展開、その上をすらすらと力強く舞うサックス、そして軽妙な井上氏のボーカル。局面で登場するアグレッシブなフレージングのユニゾンアンサンブルは圧巻で、その瞬間が訪れるとそれまで何とか把握していたビートの流れを見失ったときの緊張感がまた堪らない。。。

アートの空間で堪能する最上級のサウンド。音から得るイマジネーションも、いつもよりも豊かに感じられました。
ちょうどいらっしゃってた井上さんとご挨拶できたのも嬉しいサプライズ。
もうずいぶん昔、僕が楽器を始めるか始めないかの頃にNHK教育で放送されていた「ベストサウンド」という番組ではたいへんお世話になった(といってもその頃の僕には内容が難し過ぎて、「学んだ」というよりゲストや井上さんのライブを楽しんだりゲストとのトークが面白かったり、といった思い出なのですが)こともあって、なんとも感慨深かったのです。

☆黒糖のにほひ 東京―波照間往復絵日記展 藤田夢香+坪谷彩子
美篶堂
東京都千代田区外神田2-1-2 東進ビル1F
5/22(火)~6/3(日)月休
11:00~20:00(土日:~18:00)
黒糖のにほひDM.jpg

オリジナリティ溢れるシルクスクリーンのアーティスト、藤田夢香さんと、一時期沖縄の黒砂糖工場で働いていたという坪谷彩子さんとによる、ふたつの場所で綴られた時間を現した展示です。
それぞれの記録からにじみ出るあたたかさがなんとも印象的。

《5/26》
・瀧下和之展 ~過去から現在~
GALLERY SHOREWOOD
東京都港区南青山3-9-5
5/21(月)~6/14(木)日祝休
11:00~18:00
瀧下和之5/21DM.jpg

「桃太郎」のシリーズでおなじみの瀧下さんの、過去の作品を中心にした展覧会です。
もちろん鬼ヶ島でイキイキと動き回る鬼たちの姿がそこかしこに見受けられる展覧会なのですが、逆に新鮮で嬉しいのが、もしかしたらそれ以前に制作された、動物を描いた作品が観られることで。
うねうねとコミカルに走る桃太郎シリーズの線、そして風神雷神や虎、龍の作品などで見受けられるくっきりとした稜線がなく、ふわりと広がる色彩のグラデーションが美しい深い孔雀や犬などの絵の味わい深さは、近作と比べて鑑みると独特で興味深いです。

瀧下和之@S 02 瀧下和之@S 03

そしてもちろん、鬼ケ島。
広い画面でじゃれあう桃太郎の家来たちと鬼たち。毎度のことながら、ホントに楽しい雰囲気が充満した世界です。

瀧下和之@S 01

《5/27》
・梅田恭子 銅版画+ドローイング「コトヅテノツブテ」
ギャラリーf分の1
東京都千代田区神田駿河台1-5-6 コトー駿河台
5/23(火)~6/2(土)月休
11:00~18:30(日、最終日:~17:00)
梅田恭子5/23DM.jpg


ちょうどこの日が最終日だったギャラリー人での3人展にも参加されていた梅田恭子さんの、もう何度目かになるギャラリーf分の1での個展です。
雁皮紙に加え、肌理の細かい紙を用いることで、メタリックな渋さを発散させる抽象的な銅版画がずらりと並んでいます。作品によっては手描きも加えられ、なんとも深みのある世界が展開されています。

梅田恭子02

梅田恭子06 梅田恭子05

床置きのアクリルケースなどの中には、折り畳まれて本のサイズに纏められた作品が。

梅田恭子03

作品によっては何かを具体的に連想させてくれる、それでいて曖昧さが独特の雰囲気を醸し出している作品も。
じんわりと心に響く感じが印象的です。

梅田恭子04

When too perfect...,liber gott boese./Room/机上位
BOICE PLANNING
神奈川県相模原市相原5-12-47-2F
5/19(土)~6/17(土)土日祝のみオープン
12:00~19:00(最終日:~17:00)
BP5/19パンフ.jpg

表向きには3つの展覧会が開催されている、この初夏のBOICE PLANNING
3階のSPACE Aで、海外の3名のアーティストのインスタレーションが展開されている「When too perfect...,liber gott boese.」。
2階のSPACE Bでは、輪派絵師団の映像作品「ROOM」が上映。
そしてSTUDIOでは、BOICEのメンバーがそれぞれ、1台のテーブルの上で個展形式の展開をする「机上位」。
・・・といった具合で。

順路通り、まずは3階から。

《When too perfect...,liber gott boese.》
いかにも海外のアーティストらしい、コンセプトが全面に押し出されたインタラクティブなインスタレーションが3つパッケージされています。

まず、オーストリアのトニ・クラインレルヒャーさんのインスタレーション。
まず手前に、「お箸なげ」が。
コンクリートの上に妙に行儀よく配置されたそれぞれの行為の案内が不思議な感じを醸し出しています。

BOICE TONI 02 BOICE TONI 03

で、「芸が細かい」と思わず唸ったのが、置かれた紙に漢字が当てられたトニさんの印が押されているところ。これが入ってることで、いろんな人がこの紙にいろんなことを描いても、それが自分の作品なのだそう。人が描いたものを自分の作品にするのではなくて、自分の作品が人の手によって他方面へと広がる、そんなイメージのようで、なかなかユニークなアプローチだなぁ、と。

BOICE TONI 01

その奥には、瓶に詰められた豆腐が。そしてそれらは山のかたちをしているのですが、「富士山」とのことで。

BOICE TONI 04

しかもその数、36個。

富嶽三十六景かよ!Σ( ̄口 ̄;)

また、その豆腐に突き刺さる割り箸は、宗教的な意味合いも込められているようでした。

BOICE TONI 05


ディーター・ブッハートさんの「交換のモニュメント」には、長いテーブルにさまざまなものが置かれていて、それらをどんどん物々交換していうというもの。その光景はどんどん変化していきます。実際に、かなりキテレツなものも置かれていたり。

BOICE Dieter 02 BOICE Dieter 03

BOICE Dieter 01

もうひとりのマルコ・エヴァリスティさんのところには、かなり奇妙な感じで缶詰が並べて置かれていたわけですが...ちょっと分からなかったです(汗)。

《ROOM》
輪派絵師団の映像作品が、2階の手前のコーナーであるSPACE Bで上映されていたのですが、これがめちゃくちゃ面白い!
なんでも、彼らの映像がYouTubeでかなりのアクセスを集めて話題にもなっているそう。

冒頭に登場する男。
電話をかけて、一日の終わりを迎え、ベッドに横たわって眠りに入る男のこの部屋で、このあとから繰り広げられていく空前絶後、波乱万丈な展開に、ひとときたりとも目を離せないのです。

輪派絵師団 01 輪派絵師団 02

時には「えっ!!!」と思わず息を呑むようなアクロバティックなシーンも。
ひとつ前の段階ではたしかにその部屋に描かれたり作られたりしたものが、次の場面では消えていたり、劇的に変化していったり。
そして最後に登場する木。ここまでの紆余曲折がとにかく見応え充分、抜群の臨場感で。

輪派絵師団 03

サブスペースの小さなモニターでも映像作品が流れていて、それを観て気付いたのですが、多摩美術大学の昨年度の学内卒業・修了制作展で観て強く印象に残っていたのでした。
サイトを拝見すると、ライブペインティングも精力的に行っているようなので、そちらもぜひ時間を作って伺いたいと思っています。


《机上位》
そして、僕にとっては、いつも展示のオープニングの歓談の場になっている印象が強いスペースでは、BOICEのメンバーがそれぞれ1台のテーブルの上でさまざまな展開を行うという面白い企画が開催されているんです。

まず、同日に府中での展示もチェックしている横手山慎二さん。
まずシンプルなのが、逆に奇妙なインパクトを感じます。
テーブルの上に置かれたアイテムはふたつ。
合版と反射鏡による、なんだか最先端のアイテムを模したようなものと、ビールケースから生えていて、ビニールが被せられたセイタカアワダチソウっぽい雑草。

机上位 横手山慎二01 机上位 横手山慎二02

シンプルなのはその光景だけだはなく、素材も。
セイタカアワダチソウに見えるものももちろん、といか、実はというか...。
素材がはっきりと認識できるところに、横手山さんのクリエイションのユニークさが力強く込められているような気がします。
・・・敢えて『この』精度。今は具体的な言葉が浮かんでこないのですが、そこに奥深さが潜んでいるような感じで、この先の展開もすごく興味深いです。


机上位 横手山慎二03

山下美幸さん。
焦茶色に塗られたテーブルの上に描かれる、白に淡い色彩が滲む、このなかでひときわ素直な美しさをやわらかく発散している作品。
桜を思わせる太い木の幹、地面に広がる先端が尖った草の葉。そして、唐突に、ボーリングのピンが。
泡のような白の色面が寄り添って描き出す世界。もっとこの続きを観てみたくなるような。
テーブルスタンドの強い灯りもむしろ自然にそこに収まっているんです。

机上位 山下美幸04 机上位 山下美幸02 机上位 山下美幸03

机上位 山下美幸01


丸橋伴晃さんは、またこれが丸橋さんらしい構成で。
そのテーブルの一角の壁には、先月開催されていた「赤坂娘」がところ狭しと重ねられています。この距離で見て、改めてその大きさを実感。

机上位 丸橋伴晃02 机上位 丸橋伴晃03

そして、テーブルの上はクロスが敷かれ、その上にはお茶碗とお箸が。
さらに正面には、女の子がひたすら食べる映像が流されています。

机上位 丸橋伴晃04

カメラの主(おそらく丸橋さん)と談笑しながら食べる女の子、何やら不可解な行動で食べる女の子とその仕草はさまざま。
なかでもいちばん強烈だったのが、唯一逆回しで編集されている女子高生。
口から食べ物が出てくるわけですが、出てきてもまだ口を動かしてる・・・


ど、


ど、


どんだけ食ったんだぁぁぁっっ!!!Σ( ̄口 ̄;)

という具合に絶句、しかもメロンパンにサラダにカラアゲにヤキソバその他、合間に飲むのはオレンジジュース、それらをとっかえひっかえ。
いや、すごいものを観た、という、充実感、達成感が。

机上位 丸橋伴晃01

佐藤純也さんは、今の佐藤さんを現しているような感じです。
スクエアの画面に描かれたさまざまなモチーフと、そこにいっしょに置かれた何も書かれてないノートのコピー。
現在進行形のクリエイションは、どの時点からでも始まりなんだ、ということを主張しているかのようで、それが頼もしく思えてきます。

机上位 佐藤純也01 机上位 佐藤純也02

周辺には、小品がいろいろと置かれていて、こちらも観ていて楽しいです。

机上位 佐藤純也03


そして、それでは終わらない...!
テーブルの下に配された白熱灯が照らすのは、テーブルの下の絵。
このあたりのユーモアが堪らないんです。


机上位 佐藤純也04


雨宮庸介さんは、いちばん奥の薄暗い一角で。
しかも、テーブルではなく、イーゼルに平面の作品が置かれています。
では、テーブルは、というと、絵のなかに。
雨宮さんのタブローというのも新鮮でたいへん興味深く、それがロウソクの火の灯りだけで照らされて、さらに描いている現場そのままの感触が伝わるように、いっぱいの灰皿や筆立てなども置かれていて、それが絵の世界の奇妙さに臨場感をもたらしています。

机上位 雨宮庸介02

机上位 雨宮庸介01


これらの3つの展示で発揮されたクリエイションは、アーティストの数以上の大きさ、規模で。
それぞれが思い切りのある展開なのが痛快で、さて次は、と期待も膨らむ展覧会です。


《おまけ》
丸橋さんのテーブルの下で蠢く人影に全米が泣いた

バサッ、バサッ UFO!

永井夏夕展 -un/real-
GALLERY HIRAWATA
神奈川県藤沢市遠藤2969-2
5/12(土)~6/10(日)月火休
13:00~18:00
永井夏夕5/12DM.jpg


『空』に会いに。


GALLERY HIRAWATAでの永井夏夕さんの個展に行ってきました。
前回こちらで開催された個展はサブスペースのみの展示だったのですが、今回はメインの広いスペースにも永井さんの作品が並ぶということで、それだけで期待が高まります。
しかも、BankART NYKでのレジデンス期間中に永井さんが制作されていた大作も、こちらでその全貌が観られるというのも大きな楽しみのひとつで。

壮観。

ゆったりと長く、天井も高い空間。
そのいちばん広い壁に、透き通った空がぐんと広がり、そのずっと向こうに水平線が走っています。
さらに、雄大な景色のなかで、悠然と大気が動いている...視界をそんな光景に占められて、とてつもなくダイナミックなイメージが心のなかに広がります。
広くて遠い空に舞う鳥の影がさらに圧倒的な臨場感を伝え、そして右手前の無彩色の島が力強いアクセントをここにもたらしています。

伺った日は天気もよく、この作品と対面する扉が開け放たれ、さらに開放感に満ちていました。


永井夏夕04 永井夏夕03

永井夏夕02

昨年のおぶせミュージアムでの「作家の卵」展に出展された作品もこちらでふたたび観ることができたのも嬉しかったです。
こちらの作品は、今年の始めに佐藤美術館で開催された巡回展示の際、高さが佐藤美術館の壁に収まらず展示ができなかったそうなのですが、こちらではゆったりと展示されています。
どこまでも続いているような遠い空が印象的です。


永井夏夕06

永井夏夕05

スクエアの画面4点が縦に並ぶユニークな作品。
これまでの永井さんの作品は、コンビナートが主に黒系統の無彩色で描かれていてそれが空の青に映えていることが多かったのですが、この作品ではそのコンビナートタワーが白で描かれています。
それが、永井さんの作品のイメージに広がりをもたらしていて、たいへん新鮮なんです。
構成のユニークさもさることながら、これまでとはひと味違うクールさ、これまでの作品では感じられなかった独特のキュートさが溢れています。


永井夏夕08 永井夏夕09

永井夏夕07


他、さまざまな大きさの作品がギャラリーの各所に配されていて、それぞれの画面が広々としたイメージをもたらしてくれます。
雲が広がっていく空、暮れる空、冬の冷たい空...それぞれの空の表情がいとおしく感じられます。


永井夏夕17永井夏夕15 永井夏夕16

永井夏夕18


遊び心に溢れたオブジェ魅力的です。
天気が良かったので外の芝生に展示されていた、机と椅子の上に作り上げられたジオラマ。
ギャラリーの隅っこに掛けられた長い長い梯子。
サブスペースの小品。
それぞれが、なんともいえないキュートさを醸し出しながら、それでいて平面の作品と通ずるフィクショナルなイメージもあって、この展覧会の素敵なアクセントとなっています。


永井夏夕10 永井夏夕12

永井夏夕13


僕にとって思い出深いしらみず美術での5人展以来、永井さんの展示は折りに触れて拝見しているのですが、かわいらしさとアバンギャルドさが同居した「箱庭」や、空想のコンビナートをコラージュの手法も取り入れながら描いた作品、昨年のごらくギャラリーでの個展におけるさまざまな空の表情を経て、アートフェア東京での増保美術のブースでの展開、そして今回の個展と、今の永井さんの充実ぶりはホントに目を見張るものがありますし、続けて観ているものとしてホントに嬉しく感じられます。

湘南台駅からバスで行くギャラリーで、都心からだと行くのがちょっとたいへんなところなのですが、それでもぜひたくさんの方に観てほしい、素晴らしい展覧会です。

そして、できれば、晴れた日に。


永井夏夕01

金子健太郎 ナイーブこくはつ展2
ギャラリーエス S zone
東京都渋谷区神宮前5-46-13 ツインエルビル
5/22(火)~5/27(日)
11:00~19:00(最終日:~17:00)
金子健太郎5/22DM.jpg


クレイジーな描き込みがもたらす、尋常でない奥行き感。


ギャラリーエスでの金子健太郎さんの個展です。
相当にキワモノ的なモチーフが描かれていますが、何より凄いのが、ペンによる描き込み。
もう「そこまで描くか!」っていうくらいに、精密、精緻。


金子健太郎05


意志が強そうで、それでいてなんとなく淀んだ表情の女の子が描かれたこの作品。
その背景は微妙な差の色調がうねり、折り重なって独特のコントラストがもたらされていますが、実はこれ、すべ、この女の子の思いを現した「言葉」になっています。
黒っぽいのは、漢字などを用いた密度の濃い文字が使用されているから。
この凄み、ちょっと画像では伝えられないのです。


その横の、ニワトリを描いた作品。
とさかの皮膚の凹凸感、羽の繊維の質感、そういったものが下地の色の上に描き加えられるペンの線によって実に精密に再現されていて、否応無しに至近でじっくりと見入ってしまいます。


金子健太郎02 金子健太郎04 金子健太郎03

金子健太郎01


描き込み、もとい、書き込みが凄まじいのはこの作品も。
鈍重な黄色い色彩に乗る細かいドット。
僕が撮って掲載する画像だと、現状ではこれが限界なのですが...これ、「月火水木金土日」の羅列。
いや、この行為の痕跡はヤバすぎますよ、ホントに。


金子健太郎06

金子健太郎07


その他、同じく精密な線が下地の色彩に立体感と奥行き感をもたらしている作品がずらりと並んでいます。
どれも見応え充分。下地の色にペンの色が重なることで、画面の色に変化がもたらされるのも面白く感じられます。


金子健太郎10

金子健太郎08 金子健太郎09


この凄み、ぜひ実際に至近で堪能してほしいです!


金子健太郎11

名雪園代 漆展
galleria ACCa
東京都台東区下谷3-1-32
5/19(土)~5/26(土)
11:00~18:30(最終日:~16:00)
名雪園代5/19DM.jpg


自然のかたちを活かしたコンテンポラリーな漆芸の世界。


とあるところでDMを目にして面白そうで、名雪園代さんの個展に行ってきました。
DMの」画像を見た限りでは、七宝か焼物か、というイメージだったのですが、漆芸の展覧会で。
しかし、そのアプローチがたいへんユニーク。


DMにおさめれていた作品、DMでは正面から撮影されていたのですが、実際は立体的に結構な奥行きがある作品。
直方体の正面に、おそらく樹木の皮のチップが漆で定着させてあるかっこいい作品。
その皮の凹凸感やチップが並ぶ軽妙なリズム感など、漆の渋さとともにいろんなイメージが浮かんできます。


名雪園代02

名雪園代01

ギャラリーのそこかしこに配置された小品が、また面白いんです。
まず、壁の棚に置かれたいろんな「種」。
ていねいに作られ、漆で彩色されているんです。ものによっては本物と見紛うほど。


名雪園代04


床に置かれた低いテーブルには、小石や木の皮のチップを漆で塗ったものが。
そのまま置かれるものもあれば、標本のようにちいさなケースに収められているものも。黒と赤とのコントラストが小さな世界に深みをもたらしているように思えます。

棚にはかんざし。ホントにさまざまなかたちのかんざしがずらりと並んでいて、洗練されたフォルムを見比べる楽しさに溢れています。


名雪園代05 名雪園代06 名雪園代07

名雪園代09 名雪園代08


壁には、板に彩色された作品がずらりと。
こちらもさまざまな大きさ、さまざまなかたち、そしてそこにいろんな紋様が描かれています。
かたちの有機的な面白さと整然とした模様のリズムとが、お互いを引き立てあって、さらに漆独特の深みのある色合いが、かたちと模様とのコントラストにまた別のユニークさをもたらしている、という感じです。


名雪園代11 名雪園代10

名雪園代12


なかなか目にする機会はないものの、漆という素材はホントに魅力的で、可能性もあることを再認識させられました。もっとも、この驚きと発見は毎度のことなのですが。
何はともあれ、それぞれの小さな世界が奏でる奥深さを堪能した次第です。


名雪園代03

田中みぎわ展 さんざめく野の予感
ギャラリー桜の木 銀座
東京都中央区銀座5-3-12 壹番館ビルディング3F
5/18(金)~5/31(木)日祝休
11:00~19:00
田中みぎわ5/18DM.jpg


連綿と伝わる水墨画。
そこに吹き込む新しい風...


田中みぎわ05


ギャラリー桜の木での田中みぎわさんの個展です。
田中さんというと、一昨年のVOCA展で、カラフルな作品のなかで、和紙に水墨という極めてシンプルな色彩感でひときわその渋さや静謐感が印象深かったのですが、今回あらためて個展で拝見する機会を得て、会場の各所にかけられたさまざまな風景に感じ入った次第です。


田中みぎわ02 田中みぎわ06

田中みぎわ07


墨がもたらす微妙で絶妙なグラデーション。
コントロールされた、あるいはもしかしたら敢えて意図せずに自然にまかせてもたらされた滲みが、画面に描き出される風景に膨らみ、奥行きをもたらし、さらにはそこに吹く風の音、水面に広がるさざ波の声を届けてくれるかのようです。
ある作品はその地にいるかのようなイメージが湧き、また別の作品は記憶の残像を蘇せたかのような刹那的な風合いが印象的です。


田中みぎわ04 田中みぎわ08

田中みぎわ03


いちばん奥の一角には、今回の展示でのもっとも大きな作品が展示されています。
大きな画面での抽象的な水墨の配色。それでいて、不思議と、どこか静かな場所にいるような気持ちを呼び起こさせてくれるんです。
懐かしさとは違って、むしろ新しい世界が広がっているように感じられます。


田中みぎわ01


作品はホントにシンプルに、和紙に墨、で描かれているそうですが、その墨の粒子が、照明によってきらきらと輝いているのも美しいです。

モノクロームで繰り広げられる静謐感が溢れる美しい作品。
コンテンポラリーな魅力も収められた水墨の世界。
だからこそ、眺めていてさまざまな想像がゆるやかに訪れてきて、気付くと豊かなイメージが溢れているんです。

Viviane★Kick(近藤彩)襲名披露エキシビション
横濱 牙狼画廊
神奈川県横浜市中区山下町122
5/19(土)~5/31(木)月休
11:30~19:30
近藤彩5/19DM.jpg


さらに情動的に...!


今年に入ってすでに3つの展覧会をこなしているこんどうあやさんの、牙狼画廊でのグループ展に続いて開催される個展です。
ここでのグループ展には伺えなかったので、今回の個展で改めて伺った次第で。


曙橋と新宿での展示で拝見して、アグレッシブな木版画の世界にさらに拍車がかかった感じはしていたのですが、今回の個展ではそれがさらに全面に押し出され、臨場感や迫力がぐんと増しているよう感じられます。

炎を思わせる朱に包まれる光景。
その朱が、画面のなかに収められた女の子のほとばしる情動をダイナミックに現してしているように感じられます。


近藤彩01

近藤彩02


セーターを纏った女の子の作品も。
手彩色による青の鮮やかさが、こんどんさんの熱っぽい木版画に清々しいアクセントをもたらしていて新鮮です。


近藤彩03

近藤彩05


自画像が小品も、その画面の小ささに関らず、結構な迫力です!
小さいからこそ、そこにぎゅっと強い意志が封じ込められたような。


近藤彩06 近藤彩07


木版画というと、どこか朴訥としておだやかな風合いが魅力だと思うのですが、こんどうさんの場合「木版は刃物を使って創るんだ」という尋常でない強さを感じます。
凸版の面のエッジのケレン味のなさといい、取り上げるモチーフの熱さといい、作品のなかのさまざまな要素からはむしろ感情に対するリアクションが最優先されてしかるべき、と感じてしまうのですが、それが「木版」という、他の版技法ほどではないにしても作品になる前に一度「摺る」という客観的な行程が加えられる手法で描き出されていることが、あらためて興味深く感じられます。

今後も、火傷するような熱い展開を期待してしまいます...!


近藤彩04

小林万希子展「Pieces "カケラあわせ"」
GALLERY HOUSE MAYA
東京都港区北青山2-10-26
5/21(月)~5/26(土)
11:30~19:00(最終日:~17:00)
小林万希子5/21DM.jpg

言葉そのままの、やさしい色、やさしい場面。


GALLERY HOUSE MAYAでの2年振りの小林万希子さんの個展に行ってきました。
前回の個展以来、ハードカバーの本や文庫本にも小林さんの作品が登場するようになったようで、今回の個展では表紙に使用された作品とともに、その本も置かれていて、見比べるのもまた楽しいです。


ふわりとした質感の紙にオイルパステルで描かれるさまざまな風景。
レイドバックしたような、なんだか懐かしい風合いの色彩が、やさしく心を包んでくれるような感じです。


小林万希子02 小林万希子01

小林万希子08


ひとつの作品に用いられる淡い色彩はおおむね統一感があって、それぞれの色彩のグラデーションも緩やかに織り重ねられていきます。
また、背景に広がる色はふっくらとしていて、あたたかみを感じます。


小林万希子05

小林万希子09 小林万希子03

小林万希子07


小林さんの作品でユニークなのは、そのオイルパステルでひとつひとつの色面を描きながら、稜線を白く残していくところ。
紙の色がそのままの稜線は、まるでそこだけマスキングが施されたようにていねいに同じ幅ですらりと画面にのこされています。それが、パステルのふわりとした風合いで広がる色彩を引き立てていて、かつ、木々の葉や、家や納屋の壁板、床板など、細やかに描かれているものにもやわらかさが滲み出ているんです。


小林万希子04


ああ、なんにもいらないなぁ、と。
やさしさをやさしいと感じる心だけで、充分にほっこりとした気持ちになれる、穏やかな雰囲気の素敵な展覧会です。

羽田美奈展
シロタ画廊
東京都中央区銀座7-10-8
5/14(月)~5/26(土)日休
11:00~19:00(最終日:~17:30)
羽田美奈5/14DM.jpg


この「味」。ひとたびその面白さを感じると、もうたまらない。


個展やアートギャラリー環での二人展などで拝見している羽田美奈さんの、シロタ画廊のちいさなほうのスペースで開催されている個展です。

いや、もう、ホントに面白い。この奇妙なかわいさがたまらない。
凹版と凸版の木版を組み合わせて描き出される、なんとも奇妙な姿の犬たち。
より現実の姿からは離れていっているはずなのに、より擬人化の具合が強くなっているというか、その仕草や表情から伝わってくるイメージの豊かさ、深みは留まるところを知らないと思わせられるほど。


羽田美奈 03 羽田美奈 02

羽田美奈 01


その犬の姿に組み合わさる矩形。イスの形をしていたり、台のようなものだったり。
それがまた大変にユニークな奥行きを画面にもたらしています。
その矩形と絡まる犬に心で「なにやってんの...」と問いかけると、「関係ないでしょ」とまるで取り合わないようなつれない返事が返ってきそうな感じで。


羽田美奈 09

羽田美奈 04


黒い紙に摺られた作品がまたかっこいい・・・!
和紙の繊維の質感が全面からにじみ出ている「闇」のなかに浮かび上がる白い犬の姿。本来の紙の色の作品での鯔背な朴訥感から思うと、ものすごくクールな妖しさを放ちつつ、妙な色香も感じるんです。


羽田美奈 07

羽田美奈 06


また、今回の個展では1点だけドローイングも。
なんだかまた新しい展開が始まりそうで、すごく楽しみです。


羽田美奈 08


いろんな違和感が詰まった世界で、僕もはじめて羽田さんの木版画を観たときの第一印象が、絵の犬に向かって「・・・なんだお前...」みたいな感じだったのが、今はそのユーモラスさに触れるのが心地よくて。
一度ほれると病み付きに。
ちょっと試しに観てみてほしい世界です。


羽田美奈 10

青黒い平面
@ギャラリー・しらみず美術
東京都中央区銀座5-3-12 壹番館ビルディング4F
5/17(木)~5/25(金)日祝休
12:00~18:30
青黒い平面DM.jpg

奇妙さが魅力の3つの個性。


二人の岩彩のアーティストとひとりの木版画のアーティストがパッケージされ、それぞれ独特な風合いを醸し出している展覧会です。
「青黒い」という形容もその奇妙な面白さを言い得ているというか、もちろん色彩的なこともあるのですが、それ以上にこの言葉の響きが展覧会に合っているような感じです。


アートスペース羅針盤での個展で続けて拝見してきた西川芳孝さん。
化物が画面に現れていて、それらがコワイというよりもなんだか愛嬌があって、妙に素朴な仕草が印象に残る画風です。
今回は額に収められた小品が数点出展されていて、一見すると水彩画のような感じなのですが、作品によっては岩彩と銅版とを組み合わせたものだそう。細かい線で描き出される不思議な線の流れが、独特のしなやかさ、そして鋼の線のような強さを放っていて、背景のやさしい色に引き立てられていてかっこいいんです。


西川芳孝@しらみず01 西川芳孝@しらみず02

西川芳孝@しらみず03


そして、大作も1点出展されています。
濃い青を背景に、無数に縦横に走る黒い線、複雑に交差し、うねり、絡まりあいながら、それらが化物の姿をさりげなく現していき、魑魅魍魎の世界を作り上げています。
線を追って眺めるとその時間とともに絵の世界に引き込まれていきます。
難波田父子のスタイルをひとつの画面に合わせたような雰囲気も面白く感じられます。


西川芳孝@しらみず04

西川芳孝@しらみず05

佐藤美術館でのグループ展、b.TOKYOやコバヤシ画廊での個展などでは、パネルが複雑にが組み合わさって構築される迫力の立体岩彩作品を出展されていた市川裕司さん。今回の展覧会では、敢えて平面への再挑戦といった感のある、力強い作品が出展されています。

画面から溢れる黒い布が印象的な小品群。
なによりアプローチが面白いのと、モノクロームの色彩のクールさが印象的です。


市川裕司@しらみず04 市川裕司@しらみず05


入口正面に展示された大作は、平面をまさに逆手に取ったような感じの作品です。
黒い布が放つ幽玄な流れ、透明の支持体に描き込まれる白のうねり。これらが一体となって平面から溢れ、ウ否応無しに観る者の意識を呑み込んでしまうような異様な迫力に満ちています。


市川裕司@しらみず02 市川裕司@しらみず03

市川裕司@しらみず01

この展覧会ではじめて拝見する、唯一の女性であり木版画の渡邊麻衣子さん。
木版らしいやわらかな色彩に溢れて、この空間の心地よいアクセントとなっています。


渡邊麻衣子@しらみず03


重なる花のシルエットが幽玄なイメージを連想させてくれます。
どことなく奥が深く感じられる雰囲気。なんだか現実から一歩離れた空間に紛れ込んだような感触が、妙に心地よいんです。


渡邊麻衣子@しらみず01 渡邊麻衣子@しらみず04 渡邊麻衣子@しらみず05


そして、さまざまな色彩のなかにもぱっと思わず目を見張る透明感溢れる鮮やかな色も。
木版の緩やかさ、穏やかさのなかに現れる瑞々しい色彩は、まるでその風景が揺らぐような妖しさを醸し出しているよう感じられます。


渡邊麻衣子@しらみず02


それぞれ異なる個性がひとつの空間に収められて奏でるハーモニーも面白い、さまざまな想像を喚起してくれる展覧会です。

・米岡響子展
アートスペース羅針盤
東京都中央区京橋3-5-3 京栄ビル2F
5/21(月)~5/26(土)
11:00~19:00(最終日:~17:00)
米岡響子5/21DM.jpg

これまで、グループ展などで折りに触れて拝見し、細かい描き込みなどが印象に残っていた米岡響子さんの個展です。
この個展では、貝殻などがていねいに描かれた水の底を思わせる場所の穏やかな赤と、そこから上への黒へと緩やかに変わっていくグラデーションの美しさが印象的な作品が、さまざまな大きさに画面に描かれ、展示されていて、その空間に入ったかのような独特な雰囲気が作り上げられています。
そのなかに揺らめくように存在する金属色の有機的な何かが、深い風合いをさらに演出しています。

米岡響子04 米岡響子05 米岡響子06

なかでも、入口左手の壁いっぱいの画面の作品は圧巻。
遠く深い悠久の世界へと誘ってくれるような感じです。

米岡響子03 米岡響子02

米岡響子01

今回はひとつの色彩で統一されていますが、他の色彩での展開も観てみたいです。


・永井雅人展
なびす画廊
東京都中央区銀座1-5-2 ギンザファーストビル3F
5/21(月)~5/26(土)
11:30~19:00(最終日:~17:00)
永井雅人5/21DM.jpg

力強さを放つ銅版画。
一昨年に青山の画廊で個展を拝見した永井雅人さんの久々の個展です。
モノクロームの大きな作品は、さまざまなうねりが縦横に広がるアバンギャルドな雰囲気が強く印象に残ります。

永井雅人05 永井雅人06

目に鮮やかな、さまざまな色彩が登場する作品も。
こちらは重ねられた版によって作り上げられた模様の面白さに加え、手描きの箇所もそこかしこに織り込まれて、さらにユニークな感触です。

永井雅人04 永井雅人03 永井雅人02

永井雅人01


・篠田飛鳥 -image-
ギャラリー悠玄
東京都中央区銀座6-3-17 悠玄ビル
5/20(日)~5/26(土)
11:00~19:00(最終日:~17:00)
篠田飛鳥5/20DM.jpg

昨年の個展も印象的だった篠田飛鳥さんのおよそ1年ぶりの個展です。

篠田飛鳥 02

どこかユーモラスな感じにデフォルメされたさまざまなモチーフ。
そして、やわらかい質感がなんとも和めます。そんな雰囲気の作品が、小品を中心にずらりと並んでいます。
たくさんあるのもなんだか楽しくなります。

篠田飛鳥 05 篠田飛鳥 04 篠田飛鳥 03

絵のなかの色彩がほっこりとしていて、それでいて鮮やかさもあるのがいい感じです。

篠田飛鳥 01

《5/16》
・青木千絵展
ギャラリー手
東京都中央区京橋3-5-3 竹河岸ビル1F
5/14(月)~6/2(土)日休
11:00~19:00
青木千絵5/14DM.jpg

漆の黒と赤とが美しい艶を放つ、存在感たっぷりのオブジェ。
壁沿いにはドローイングが並びます。

青木千絵04

ギャラリーの中央に、そのオブジェは展示されています。
ほぼ実物大の、座る人の半身が大きな塊から生えるようになっていて、どこか憂いを帯びたようなその佇まいと、巨大な塊が放つ力強い静謐さとが、深遠なイメージを喚起させる圧倒的な世界を作り上げています。
とにかく、赤から黒へと向かうグラデーションが美しいんです。

青木千絵03 青木千絵02

青木千絵01


☆羽田美奈展
シロタ画廊
東京都中央区銀座7-10-8
5/14(月)~5/26(土)日休
11:00~19:00(最終日:~17:30)
羽田美奈5/14DM.jpg

一度気になったらもう、そのへんてこな犬の味わい深すぎる表情や仕草の虜に。
本来の犬の姿からも遠ざかっているのですが、それが余計に擬人化されているように思えるから不思議です。


《5/18》
・Book / Art Group Show
Gallery Jin
東京都台東区谷中2-5-22 山岡ビル1F
5/18(金)~5/27(日)月火休
12:00~19:00
Book/Art DM.jpg

綴じたり纏められたり、飾られるだけに留まらず、実際に手にとって味わえるクリエイションがパッケージされた、ユニークな展覧会です。
足立涼子さんの押し花、梅田恭子さんの銅版画、常田泰由さんの木版画。それぞれに、手に取って感じる距離が嬉しい作品。
ちょっと今、手を怪我していて思うように楽しめなかったのが残念ですが、時間をかけて堪能したい展覧会です。


・土屋信子 昔々あるところに魚駐車というプロジェクトがありました
SCAI THE BATHHOUSE
東京都台東区谷中6-1-23 柏湯跡
5/18(金)~6/30(土)日月祝休
12:00~19:00
土屋信子5/18DM.jpg

がらくた、といってしまうと元も子もないのですが、そういったものやファイバーらしきものを素材として、これほどまでにキュートなオブジェが作られることにびっくり。
ひとつひとつを時間をかけて眺めていられるというか、それといっしょに過ごす時間は問答のようでもあるし癒されているようでもあるんです。
それぞれが小さなジオラマのようでもあり、あるいは四つ足の動物の姿に似ていたり、思った以上にさまざまなイメージが浮かんできます。
今回の展示はSCAIのコンクリートの床の上に直に置かれていますが、もしここが白いふわふわのカーペットとか、あるいは白い砂が敷き詰められた場所だったりとか、そんなやわらかな場所に置かれたらもっと雰囲気が出るような気がして。


《5/19》
☆青黒い平面
@ギャラリー・しらみず美術
東京都中央区銀座5-3-12 壹番館ビルディング4F
5/17(木)~5/25(金)日祝休
12:00~18:30
青黒い平面DM.jpg

ユーモラスな幽玄さが面白い西川芳孝さんの岩彩、市川裕司さんの平面へのアバンギャルドな挑戦、やわらかな色彩と形が重なる渡邊麻衣子さんの木版画。
ユニークな個性を持つ3名のアーティストのグループ展です。


☆田中みぎわ展 さんざめく野の予感
ギャラリー桜の木 銀座
東京都中央区銀座5-3-12 壹番館ビルディング3F
5/18(金)~5/31(木)日祝休
11:00~19:00
田中みぎわ5/18DM.jpg

一昨年のVOCA展でも、雄大で幽玄な大作が印象的だった田中みぎわさんの個展です。
極めてオーソドックスな水墨画なのに、そこから滲む静けさをたたえた風景には、どこか新しさ、コンテンポラリーな風合いを感じます。


・岸本雅樹&横手山慎二
VFX Studio LOOPHOLE
東京都府中市宮西町1-15-13
4/14(土)~5/19(木)日月休
14:00~18:00
岸本&横手山4/14DM.jpg

なんかもう、「やっちゃった」感と「やりっぱなし」感とがたまらなく痛快な展覧会でした。
岸本雅樹さんの作品、まず入口手前の壁にどーんと展示されたドローイングの、ケレン味のない描き具合が圧倒的。それでいて、絵のなかに登場するキャラクターの関係性がけっこう興味深いんです。

岸本雅樹@VFX01

奥のスペースには、祭壇のようなものが作られていて、そこにいろんなものが置かれていて。
これらは見た目にはかなりいい加減な感じなんですが、岸本さんがいろんな方からいただいたものを配置しているそう。無意味と意味、他者と本人、その間にあるギャップが感じられるのがなんとも痛快です。

岸本雅樹@VFX02

そして、横手山さん。

何でそんなところに干し柿が!!!Σ( ̄口 ̄;)
ハーゲンダッツかよ!!!Σ( ̄口 ̄;)

・・・みたいな、ツッコミどころ満載のオブジェ。
しかし、それぞれがそのままであることが妙に気になるというか、そのままであることに込められた意味を探りたくなるような気持ちになるのが不思議です。

横手山慎二@VFX01


☆When too perfect...,liber gott boese./Room/机上位
BOICE PLANNING
神奈川県相模原市相原5-12-47-2F
5/19(土)~6/17(土)土日祝のみオープン
12:00~19:00(最終日:~17:00)
BP5/19パンフ.jpg

同時開催される3つの展覧会。
海外のアーティストによるインスタレーションの「When too perfect...,liber gott boese.」、輪派絵師団による、部屋のなかで破天荒に展開する面白すぎる映像作品「Room」、そして、BOICEのメンバー各人がテーブルの上で個展を開催している「机上位」。


《5/20》
・活版再生展
世田谷文化生活情報センター
東京都世田谷区太子堂4-1-1 三軒茶屋キャロットタワー3、4F
5/4(金)~5/20(日)
11:00~19:00
活版再生展パンフ.jpg

活版、金属の凸版を紹介する展覧会。
その歴史や行程などを紹介したスペースも見応えがありましたが、アーティストが活版を使用した作品も面白いものがたくさん。
おなじみイチハラヒロコさんのポジティブなパワーが溢れる文字と言葉、西尾彩さんの箔押しなども施された小物などなど。
エッジが効いた活版の黒い文字のストレートさがより実感できる展覧会でした。


・水の情景 ―モネ、大観から現代まで 展
横浜美術館
神奈川県横浜市西区みなとみらい3-4-1
4/21(土)~7/1(日)木休(5/3開館、5/7休)
10:00~18:00(金:~20:00)
一般\1000、大高生\700、小中生\400
水の情景パンフ.jpg

タイトル通り、日本画、洋画、そして現代の作品まで、水をテーマにしたさまざまな作品が一堂に会した見応え充分な展覧会です。
それぞれの作品が、時代やスタイルを敢えて纏めず、日本画の隣に映像作品があったり、写真と洋画が同じ展示室に配置されていたりと、ユニークな構成も面白く、モネやシニャック、クールベの作品もこれまでとは違った見え方がして興味深かったです。
すらりと並ぶ屏風、軸も、こうやって実は久し振りに20世紀始めの時代の日本の作品に触れ、やっぱり味わい深いなあ、いいなぁと感じ入った次第で。

しかし、やはり僕の視線というか、現代のアーティストのクリエイションをしっかりチェックしたい、と。

まず、藤芳あいさんの、昨年レントゲンヴァイスフェルトで発表されたスイミングプールのオブジェが冒頭に
展示されていて、「水」をテーマにしたこの展覧会の最高のイントロダクションになっていたのが嬉しくて。
樹脂で制作された、立体的に再現された水の塊。白い台の上に置かれ、その透明感、波打つ様子が臨場感を伴って迫ってきます。

ロビーのようなスペースに設置された映像の暗室で上映されていたふたつの作品が白眉。

まず、石田尚志さんの、3つの画面で展開される作品。
尋常でない映像の迫力、見る者の意識を深く呑み込んでしまうほどに力強く展開していく映像世界に、時間を忘れて見入ってしまいます。
例によって、少し描き加えてはワンカット撮り、というのを繰り返して作り上げられている、壁にどんどん描かれていく、うねる色彩。そこに費やされた時間を思うと、この映像作品がどれほどクレイジーなものか分かるというもの。それを数分で提示してしまっているのだから、この凄みは他では味わえないような気がします。

もうひとつは、高嶺格さんの、映像を用いた作品。
水槽に映し出される人影。揺らめく水のなかに、さらにゆらゆらと動くその影の美しさといったら。。。
どこまでも幻想的です。
そして、その水槽によって屈折し、それが黒い壁にも光が届いて揺らめいています。こちらも筆舌に尽くしがたい美しさです。

いちばん最後に照屋勇賢さんのインスタレーション。
こんなにシンプルな提示なのに、しっかりと考えさせられるものとなっていて、照屋さんらしいな、と。

あと、アートギャラリーの淀川テクニックが最高です。「祝 モネ様」て。


・林靖子 日本画展
みなとみらいギャラリー
神奈川県横浜市みなとみらい2-3-5 クィーンズスクエア横浜クィーンモール2F
5/14(月)~5/20(日)
11:00~19:00(初日:13:00~、最終日:~17:00)
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昨年の個展も印象的だった林靖子さんの、ほぼ1年ぶりの個展に行ってきました。
大作を中心に、かわいい小品が並んでいて、さまざまな質感、風合いの作品が並んでいましたが、それでもどれも林さんらしい色使いが印象に残る展覧会で。

林靖子 02 林靖子 04 林靖子 03

この展示のメインは、横長の大作。スペインの風景をモチーフに描いたそうなのですが、至近で観ないと分からない画面の質感をそこかしこに忍ばせつつも、距離を置いて俯瞰したときにの眼前に広がるエキゾチックな風景に、なんだかデジャブ感というか、知らないのに懐かしい気持ちに浸れました。

林靖子 01


☆Viviane★Kick(近藤彩)襲名披露エキシビション
横濱 牙狼画廊
神奈川県横浜市中区山下町122
5/19(土)~5/31(木)月休
11:30~19:30
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弾ける木版画!
木版凸版のエッジの鋭さが痛快な作品がずらりと並んでいます。


☆永井夏夕展 -un/real-
GALLERY HIRAWATA
神奈川県藤沢市遠藤2969-2
5/12(土)~6/10(日)月火休
13:00~18:00
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空間と作品とが見事に響きあった、素敵な展覧会です。
都内からだとちょっと遠いですが、ぜひ足を運んでほしい展覧会です。
永井さんの描く青空。大きな画面に本当に合います。

interface furniture by MONGOOSE STUDIO
foro08
東京都港区白金台5-13-14 白金台The1000 地下1階
5/12(土)~5/26(土)月休
12:00~20:00(最終日:~18:00)
MONGOOSE DM.jpg


C-DEPOTのメンバーでもある八木澤優紀さん、松山真也さんもそのメンバーにクレジットされているクリエイティブ集団、MONGOOSE STUDIOの展覧会に行ってきました。
もう、とにかくキャッチーでエンターテイメント性に富んだクリエイションが詰まっています。アイテムのひとつひとつが楽しい!

まず、壁に取り付けられたふたつの真鍮のパネル。
入口から手前のには、その中央に文字盤のようなものが。

MONGOOSE02

ノックすると・・・

MONGOOSE03

その文字盤のなかに小さな顔が8つ起きだしてきて、それに合わせて照明が灯ります。
いや、文句なくかわいすぎる(笑)。
そして、しばらくしたらまた眠くなってきて、だんだん消えていって、照明も暗くなっていきます。

MONGOOSE01


その隣のは、ダイアル式のスイッチ。

MONGOOSE04

これをくるくると回すと照明が灯って明るくなったり暗くなったり。
真鍮のダイアルの手触りの高級な感じといい、スムーズな回転といい、そして照明の広がり具合も、いろんな要素が気持ちよくて、ただのオンオフのスイッチとはひと味もふた味も違う優しさが詰まっています。

MONGOOSE05 MONGOOSE06 MONGOOSE07


一昨年のC-DEPOT展に出展されていた、置く場所の色に合わせてその灯りの色もかわるという何とも不思議な卓上照明。結構な精度で色が変化するので、あらためてびっくり。

MONGOOSE08 MONGOOSE09


八木澤さんの代名詞といってもいい、座ると色がかわるイス、「fuwapica」。
暗いなかにやさしい色の光が滲んで、ホントに綺麗です。

MONGOOSE11 MONGOOSE12 MONGOOSE13

中央のテーブルもまた大きな見どころ。
設置された4つのイスの色に合わせて、このテーブルの真ん中の画面の色もじんわりと変化します。

MONGOOSE14

ユニークなアイデアとテクノロジーとが見事に合わさった、素敵なインテリア。
実用的な場所でも座ってみて、ここで食事したりしたら楽しいだろうな、と想像も膨らむんです。

MONGOOSE10


こちらも光が灯るイス。
座ると色も変化するのですが、ひとつユーモラスなプログラムが組み込まれているんです。
2人がけのソファなわけですが、その2人の距離が遠いときと近いときとで灯りの色がかわる、という。
しかも、距離が近いとロマンチックな色になるみたいなんです(笑)。

MONGOOSE15


こちらは昨年のC-DEPOT展でも出展された、スイッチを押すとその時間が感熱紙に刻まれて出てくるという時計。
「ジー」と音を立てて吐き出される感熱紙がいとおしくて(笑)。

MONGOOSE18

まるでこのスペースに元からあるように置かれたラック。
これがまた面白い仕掛けになっているんです。

MONGOOSE19

このラック自体がi-Podになっているらしく、それぞれの棚に曲が割り振られていて、開けたり閉めたりするとこのスペースに流れている音楽も変わります。
棚のなかにそのBGMに合わせたアイテムを入れてあって、開けてみて音楽が変わると「おぉ...」と感嘆しきり。

MONGOOSE20

いろいろと眺めてみたり実際に触れて楽しんだりして、ユニークでハイファイなクリエイションを満喫した次第。
いろんな場所にこんなアイテムがさりげなく配されていると、すごくオシャレだなぁ、と。


で...

MONGOOSE17


ブラインドがかかった窓。
最初は「あ、何度かここは来てるけど、こんなところに窓があったんだな。」と別段気にも留めてなかったんですけど。


よく考えたらここ地下じゃん!Σ( ̄口 ̄;)
なんでこんなとこに窓があるんだよ!Σ( ̄口 ̄;)

・・・というわけで(実は八木澤さんに教えていただいて気付いたのですが。汗)、これも作品。
ブラインドの裏側に発光するプレートが貼られていて、それで地下にもこんなに見事に灯りが射し込む窓が現れるという。


いやぁ、やられました。これはホントに面白い!


MONGOOSE16


ぜひ実際に直にそれぞれの作品と接して、その面白さを実感してほしい、満足度最高レベルのの展覧会です!

気高い手 村山留里子
山本現代
東京都新宿区西五軒町3-7 ミナト第3ビル4F
5/12(土)~6/7(木)日月休
11:00~19:00
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高貴な遊び心。


さまざまな素材を活かして独特の世界を作り上げる村山留里子さんの展覧会です。

まず、入口沿いの壁に展示されている3つ連作に目が向かいます。
この作品、青山悟さんとのコラボレーションで生まれた、「コーヒーの染み」。
手前が青山さんの刺繍、奥が村山さんの茶系のパール色のビーズによる作品、そして中央がこのふたりのユニークな手法がひとつの画面におさめられています。


村山留里子02 村山留里子03 村山留里子04


染みに縁の部分までが再現され、それが刺繍で描き出されていることへの驚きの大きさがそのまま嬉しさへと繋がる青山さんの高精度の染みと、その染みがあたかも泡立っているかのように、観るものに臨場感を伴って迫ってくる村山さんの激しい染み。このコントラストが3つの画面でだんだんと移り変わるような構成がなされているのが、とにかく面白い!
そしてその箇所ごとに至近で眺めても、さまざまなグラデーションが見え隠れしていて発見が尽きないのです。


村山留里子01

そして、この素敵なイントロダクションを経て、村山さんの個性的な美の世界へと入っていきます。
これまで高橋コレクションなどでの展示で拝見してきた「痛快な過剰さ」が、今回の展示ではやや鳴りを潜め、どこか静謐で神々しさ、高貴さを醸し出しているのが印象的です。


まず、壁に設置された棚に置かれたオブジェ。
型を取られて再現された立体の肖像に漆が施され、そこにさまざまな素材で至高の世界が築き上げられています。
漆の艶と、そこに乗るさまざまなアイテムとが美しく響きあって、独特の高貴な風合いを醸し出しています。


村山留里子06 村山留里子07

村山留里子05


村山さん自身の腕をかたどって制作されたオブジェも、洗練されていてなお、どこか妖しさも漂わせながら、特有の美を現しています。
いろんな要素が漆の黒に実に映えます。


村山留里子09 村山留里子08

村山留里子10


そしてこの展示でひときわその存在感を放っているのが、この立像。
こちらの作品では、これまでのいかにも村山さんらしい幸せ感溢れる遊び心がふんだんに詰め込まれています。


村山留里子12 村山留里子13 村山留里子14

村山留里子11


単純に楽しかったり、深遠で知的だったり、そこに込められた物語に思いを馳せたり...それぞれの作品がいろんなイメージを伝えてくれる、エンターテイメント性に富んだ素敵な展覧会です!

奇器借景 小瀬村真美
Yuka Sasahara Gallery
東京都新宿区西五軒町3-7 高橋工芸社ビル3F
5/12(土)~6/16(土)日月祝休
11:00~19:00
小瀬村真美5/12DM.jpg


朽ちていく架空の風景に、深く、意識が沈み込む...
そして、なぜか泣きたくなってくる...

昨年の横浜美術館での企画でもひときわ深く印象に残った小瀬村真美さんの、Yuka Sasahara Galleryでの個展です。

入口に暗幕が張られて真っ暗なギャラリー、こちらでおよそ14分の映像作品が上映されています。


小瀬村真美04


真っ暗ななかにぼんやりと浮かび上がるどこかの美しい光景。
2度、3度と霞んでははっきりと映ってを繰り返した後に、そこからだんだんと、黒の侵食を許していく。。。
そして...


暗幕が張られる手前、カウンターがあるスペースには、今回の映像と関連がある作品が数点展示されています。


小瀬村真美01


静止画で眺める奇景。
ここに収められた風景は架空のものだそう。
それがどこか...知っているようで知らない、分かるようで分からない、そんな曖昧なイメージが脳裏に広がります。


小瀬村真美02


そして、その風景には、画面の縁から黒が滲むように侵食しています。
紙が燃焼して焦げていくような激しさではなく、むしろ黴びていく、腐食していくような印象に近い、この染みのような黒。
とてつもなく妖しげで、危なくて...暗いもの、怖いものへの好奇心がどこからか湧いてきて、切り取られたその場面の過去、そして未来へと想像が広がっていきます。


小瀬村真美03


・・・さて、映像作品のほう。。。

無音で綴られる、どこまでも暗く、深い時間。
ほんの僅かずつ変化していくその光景は、その僅かな変化のすべての瞬間が劇的で、さらにもう少し長いスパンでの変化にも意識が引きずられていくように...。
もどかしくて...でも、動けない。
完全に、このアバンギャルドな映像美心がロックされてしまって...。

そして、その朽ちていく風景のなかにさまざまな表情を浮かべながら、儚く消えゆくその過程のなかに、なぜだか泣きたくなってきます。
この妖しく危ない時間の美しさへの感動、幼い頃に見た怖い夢を思い出したような感触、消えゆく風景の儚さ...いろんな要素が、そういう気持ちへと誘ってくれてるような。


至高の映像美、静かに堪能した次第です。
また観たい。。。
機会があれば、もっとおおきなスクリーンで観てみたい...。


小瀬村真美05

イリュージョンの楽園
MA2 GALLERY
東京都渋谷区恵比寿3-3-8
5/11(金)~6/16(土)日月祝休
13:00~19:00
イリュージョンの楽園DM.jpg


「イリュージョン」の楽園。
実際は存在しない風景や景色が集まった、すこぶるクリエイティブな、楽園。


とにかくユニークな個性がパッケージされた、太郎千恵蔵さんのキュレーションによるグループショー。
それぞれのアーティストのアプローチを眺めていて、その違いにあらためて感心、感動しっぱなしで。

1階のフロアでは、まず太郎千恵蔵さんの大作がどーん!と目に飛び込んできます。
圧巻の色調、色彩のインパクトがすごいです。特に、画面の真ん中を流れる河のなかの原色と絡まりは目を引きます。眺めているとそのなかに意識がどんどんと呑まれていくような。


MA2 太郎千恵蔵01


高木紗恵子さんが描く、春を思わせる色彩がふわりと広がる、女性たちの肖像。薄塗りの淡い色彩と、それによって描き出される豊かな光の表情が、爽やかで幸せな雰囲気を醸し出しています。
オペラシティやVOCA展で拝見した作品の立体的なマチエルが今回の作品にはなく、今回はより色彩の軽やかさが際立っているように感じられます。


MA2 高木紗恵子02 MA2 高木紗恵子03

MA2 高木紗恵子01


今年の東京都現代美術館でのMOTアニュアル2007「等身大の約束」でも、深遠なメッセージを感じさせてくれる、奥行きのあるインスタレーションを展開されていた中山ダイスケさんの平面の作品、例によって画面いっぱいに記された数字が、ただそこに木が佇んでいるだけではない何かを感じさせてくれます。
普通に絵を観るように、画面から少し距離を置いて眺めると、そこにはぼんやりと淡く木の全貌が現れているのですが、いったん距離を詰めて至近で眺めると、そこに羅列されている無数の数字に、一気に違う、アバンギャルドにも思える世界へと引き込まれます。
俯瞰したときのなんとなく和めるやわらかな雰囲気と、数字の羅列が醸し出す伝わりやすい難解さとのギャップが堪らなく、そして興味深いです。
観続けていきたい、そして、おそらくその都度で異なるかたちで脳裏に走る刺激を堪能したいクリエイションです。


MA2 中山ダイスケ01 MA2 中山ダイスケ02


鬼頭健吾さんの作品、遊び心がふんだんに詰まったファンタジックな景色。
きらきらときらめく粒と、その上に走るパステルカラーの線。このふたつの質感で作り上げられる世界は独特なかわいらしさが溢れています。
また、この線を目で追いながら、刹那に何かが見えてくるのもまた楽しいです。素材の質感が強い作品なだけに、そこにとらわれていた間隔が瞬間的に別なイメージへと変化するのがホントにスリリングです。


MA2 鬼頭健吾01 MA2 鬼頭健吾02


今回のショーのなかで、大きな発見のひとつ、横内賢太郎さん。
この歪んだ壺の絵は、本に掲載されていた写真か何かをもとに、その本を開いて生まれた歪みもそのままに描いたものとのこと。元になる絵が具体的の存在するという点で、今回の展覧会でもしかしたらもっとも「写実」の作品かも知れない、というのが逆に面白いです。


MA2 横内賢太郎01 MA2 横内賢太郎02


森本太郎さんの作品は、先にトーキョーワンダーサイト本郷でも発表された、女性の後ろ姿のシルエットがモチーフとなったものが再び登場。
こちらでは窓から自然光がしっかりと入ってくる場所に展示され、前回の薄暗い空間にスポットで照らされていたときとはかなり違う雰囲気を感じ、こんなにクリアな色彩だったんだと。


MA2 森本太郎01 MA2 森本太郎02


この展覧会で大庭大介さんの名前を見つけたとき、「面白い!」と快哉をあげました。
というのも、2階のスペースには大きなガラス張りのところがあって、ここに大庭さんの作品が展示されたら外光によって変化する表情を楽しめるはず、と。
今回展示されているのは、ふたつの小品と、ひとつの大作。僕がイメージしていた場所に、大きな作品は展示されています。
広い画面を覆うパール系の色彩、ある角度から眺めると、ほぼ同じ感じのパールの輝きが一面に広がっているように見えます。

MA2 大庭大介02

見る位置を変えると、今度はその絵に描かれた林の光景がぐんと立ち上がり、眼前に広がります。
まさに目の前でイリュージョンが繰り広げられているかのように、わずかなグラデーションだったところに見事なコントラストが見えくるんです。

MA2 大庭大介03

時間帯が変われば、窓から入る光の量によって、画面の表情が変化するんです。

MA2 大庭大介01


黒田恵美子さんが描く風景には、独特のキュートさに溢れています。
明るい色彩でシンプルに描き出されるどこかの景色、場面。なんとなく懐かしく、童心に還るような感じです。

MA2 黒田恵美子01


この展覧会で唯一の立体作品、征矢貴美子さんが作ったちいさな丘。

MA2 征矢貴美子01

そこかしこに生えるかわいらしい木や、いろんな色の毛糸がふんだんに用いられていたりと、このなかに遊び心が詰め込まれていて、黒田さんの作品が醸し出す懐かしさとはまた違う楽しかった記憶が呼び起こされます。

MA2 征矢貴美子02 MA2 征矢貴美子03


スパイラルでの個展や、府中市美術館での公開制作などでも印象に残る、手塚愛子さんの作品も。
照明が落とされ、ひときわ静かな一角に、例によって布がていねいにほぐされ、もともとの柄に、そこに実は存在していた違う紋様が引き出され、手塚さんの手によってあらわにされた美しさが静かに迫ってきます。その仕事の質、量に対するリスペクトもともに心になかに生まれます。

MA2 手塚愛子03 MA2 手塚愛子02

MA2 手塚愛子01


他にも各所にそれぞれのアーティストの小品も配され、それらにもユニークなクリエイションがしっかりと発揮されています。

思い返して、独特のマチエル、画面の質感に個性をもったクリエイションが集められていることに気付いた次第です。
そして、それらがお互いの個性を引き立てあって、たいへん見応えのある構成となっているような感じです。
俯瞰して、至近で、それぞれの作品を楽しみ、隣り合うクリエイションを同時に眺めてそこに生まれている関係性を味わったりと、さまざまな楽しみ方を堪能できると思うのです。

石田朱日子展
ぎゃらりぃ朋
東京都中央区銀座1-5-1 第3太陽ビル2F
5/11(金)~5/19(土)日休
12:00~19:00
石田朱日子5/11DM.jpg


渋い。
むしろその渋さが新鮮なくらいに、渋い。


2年ぶりに開催されている、石田朱日子さんの個展です。
前回の個展を拝見したときにも、実にていねいな線描、揉み紙がもたらす画面のグラデーション、たおやかな構図、そして色彩の渋さ、さらに工芸的な作り込みが見事な額まで、作品を構成するすべての要素が合わさって作り上げられている独特の雰囲気が強く印象に残っていて、今回の展覧会も楽しみで。

そうやって迎えた今回の石田さんの個展。
たまにいただく濃い日本茶のその苦味に美味しさを感じるのにも似た、穏やかな佇まいが醸し出す渋味が堪らない独特の風合いがそれぞれの作品から滲み出ています。

「柿」を描いた作品。
まだ熟れぬ柿の微妙な緑、そしてその柿の実の、表からひとつ引いたようなひっそりとした佇まいをむしろ引き立てる、ぐんと力強い濃青を滲ませる柿の葉。
揉まれて細かく皺が寄った麻紙の質感が醸し出す、どこか柿に通ずる風合いも、この絵のなかの空間にさらに奥行きやゆったりとした渋い印象を演出しているように感じられます。


石田朱日子01


蓮を描いた一連の作品群。
凛として花弁を可憐に広げる花のどこか切るような鋭さをもった輪郭、しおしおとゆるやかに広がる葉。それぞれが繊細な輪郭線でていねいに描き出され、そこに絶妙の陰影が施され、実際に画面と対峙すると、ぐんと引き込まれるほどに蓮の葉や花の姿が立ち上がってきます。
背景の揉み紙の細かな凹凸と、それを染め上げる渋い薄緑にわずかに忍ぶように加えられたパール色のきらめきが、ただ渋いだけに留まらせない高貴さを醸し出しています。


石田朱日子02 石田朱日子03

石田朱日子04


細長い画面に描かれるほっそりとした女性の肖像も印象的です。
憂いを帯びた表情もぐっときますが、頭髪1本1本がていねいに描き出され、そこから伝わる艶かしくも優しさに満ちた流れに、さらに服の模様の渋い鮮やかさにも目が引き寄せられます。


石田朱日子07 石田朱日子08

石田朱日子09


遠くに目線を送る豹の表情にも憂いを感じます。
まるで肖像のように、その目から、そして表情から、さまざまな思いが心を巡ります。


石田朱日子06


花菖蒲の可憐な佇まい。
わずかに施されたオレンジ色がもたらすアクセントも印象的です。


石田朱日子05


展示されている作品は、額もすべて石田さんの手によるもの。
表面の細かいチップが奏でるリズム、画面奥に施された渋い柄の布。これらも石田さんの作品の風合いにとって大事な要素のひとつのように感じられます。

真摯な心尽くしと、そこにほんの僅かに加えられる斬新さ。
僕はけっこうたくさんの日本画、岩彩の作品を拝見していると思うのですが、これほどまでに個性的な渋さ、個性的といってもひとつの大きな日本画のメインストリームからおおきくはみ出すことはなく、それでいて他にないと思えるくらいの独特な風合いを持つ石田さんの絵の世界に、より強く魅入られるのです。

西村伊央「innsr blue」
Pepper's Gallery
東京都中央区銀座7-13-2 銀座パインビルB1
5/14(月)~5/19(土)
11:00~19:00(最終日:~16:00)
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眼前に広がる圧倒的な青のアクアの世界。


Pepper's Galleryで開催されている連続展覧会企画「Landscape IX 風景」での、西村伊央さんの個展に行ってきました。


階段を下り切って、薄暗い地下の入り口に立つともう、一気に西村さんが築き上げた荘厳でかつフューチャリスティクな世界が迫ってきます。


西村伊央01


ひとつひとつがパネルにマウントされた無数のフォトグラフが、ゆるやかに弧を描くように配置されたパーテーションに敷き詰められています。
全体を眺めたときの壮観さは言葉にあらわせないほどの迫力。。。

透明感溢れる青の景色。
深く濃い紺色があれば、うっすらと淡い水色、そしてさらに透明さを増した感のある白い光、さまざまな青が、ひとつひとつ違う表情で並んでいて、少し視線を動かすたびに発見があって。
細かい水滴や水泡がつくり出しているミニマムなリズム、美しい曲線、そして泡の周辺の濃い青から中央の光へと向かうグラデーション。
水を入れたグラスやガラス板を空にかざして撮影された無数の青、直接空に向けられたものもあれば、窓越しの青を向こうに撮られたものもあるそうで、それがここに集まったひとつひとつの画面に豊かな個性をもたらしています。
また、この青が空の青、自然の青であることも、なんだか嬉しい感じがします。


西村伊央12 西村伊央10 西村伊央11

西村伊央09


ここに展示された写真は1年以上をかけて撮りためられたものとのこと。そういった時間の集積でもあることに思いを馳せると、またこの空間で提示されたものの重厚さ、奥深さがより実感できるような気がします。


西村伊央08 西村伊央07 西村伊央06


違う時間に撮られたそれぞれの青の表情。

ひとつひとつの違いを楽しみ、そして少し距離を置いて俯瞰して、偶然に生み出された隣り合う画像と画像との関係性、そしてそれらがひとつの塊となってまた違った風景をイメージさせてくれて、さらにその塊と塊とが響きあって...といった具合に、ここに提示されたさまざまな情報が関連し合い、どんどん繋がってイメージが凄まじいスピードで活発に大きくなっていくのが分かります。

正面に見据える、斜めに見下ろす、しゃがんで見上げてみる...見る角度を変えてもそれに応えて、豊かに表情を変化させてくれます。


西村伊央03 西村伊央05 西村伊央04


とにかくこの大きさが充分に活かされた、壮大なイメージが演出された地下空間、爽快な展示です。
そこに体全体で対峙し、透明感溢れる青の世界に飛び込むような気持ちで・・・!


西村伊央02

たからもののじょおうさま
ヴァイスフェルト
東京都港区六本木6-8-14 コンプレックス北館3F
5/11(金)~5/26(土)日月祝休
11:00~19:00
たからものDM.jpg

「じょおうさまとお呼びっ!」


・・・なんて高慢さはなくて、むしろ親しみ溢れるクリエイションがそこかしこに配置されて、ユニークでユーモアもあるグループショーです。
さまざまな発見やイマジネーションに彩られた素敵な展覧会。


まず、石川結介さんの絵がばっと目の前に現れて圧倒されます。
壁に直接描かれた、巨大なダイヤモンド。
屈折して導きだされたさまざまな光の色彩が、迫力ある立体感をもたらしています。

たからもの 石川結介01


青木克世さんのセラミック。
今回はこの1点のみですが、その存在感はある意味圧倒的です。
とにかく精緻な作り込みと釉薬の「照り」とがゴージャスさをいっぱいに発散させています。

たからもの 青木克世01

たからもの 青木克世02


勝本みつるさんの作品は、箱のなか繰り広げられる静かなジオラマ風。
緑の繊維のかたまりが、奇妙なかわいさを醸し出しています。

たからもの 勝本みつる01

たからもの 勝本みつる02


入口左手の壁に取り付けられた2段の細長い棚にずらりと居並ぶ、久保田珠美さんの手によるキュートな人形のオブジェ。
さまざまな姿、形、模様、そして色がなんとも楽しい!

たからもの 久保田珠美02 たからもの 久保田珠美03

たからもの 久保田珠美01


芳木麻里絵さんの作品が、今回の展示の中で一番の驚き。

ぱっと見ると、額に収められたレースの布、ボタン、絆創膏。
しかし、それらはすこぶるクリアな色彩で、特にボタンの赤のやわらかさを伴った鮮やかさが印象的。
そしてこれらの作品のクレジットを見てみると・・・シルクスクリーン、とある。

・・・え?

シルクスクリーンかよ!Σ( ̄口 ̄;)
版なのかよ!Σ( ̄口 ̄;)

と、その刹那の戸惑いの直後に訪れる衝撃。

なんでも、ひとつの版を繰り返し繰り返し刷ることで作り上げられた、いわば「インクの塊」。
そうと分かって観ると、レースの精緻な柄が、絆創膏の模様が、それまでとはまた違うインパクトで迫ってきます。
横から見ると、たしかに幾重にも重ねられた痕が見受けられて、その驚きも倍増。

たからもの 芳木麻里絵04 たからもの 芳木麻里絵03

たからもの 芳木麻里絵02


そして、その下方に設置されたガラスの棚の上にかかっているレースのハンカチが。
もう、何も言うまい(笑)。

たからもの 芳木麻里絵01


中央に置かれた長いテーブル。
グラスが美しく配置されて実にきらびやかにこの空間を演出しています。
そしてこのテーブルの上にもユニークなクリエイションが置かれています。

藤芳あいさんの「水」。
昨年開催された個展ではプールに張られた水を立体的に再現した美しい作品が展示されていましたが(現在横浜美術館で開催中の展覧会にも出展されているようです)、今回はその一部のような、ちいさな水のオブジェが。
鮮やかな青の透明さが、グラスが並ぶテーブルの上でひときわ映え、瑞々しいアクセントをもたらしています。

たからもの 藤芳あい01


岩井久美子さんが咲かせたティッシュの花。
その姿はまるで手品のような可憐さ。素材が親しみあるだけに、そのギャップが醸し出すユーモアも味わい深いです。

たからもの 岩井久美子


カットされた文庫本に細かく施された刺繍。
福田尚代さんの作品で、表に現れた文章が、おそらくこの本の文脈からは離れてしまって、不思議な説得力を持って迫ってきます。

たからもの 福田尚代


長谷川ちか子さんのクリスタル。それぞれの奥に潜むミニマムな紋の美しさ。
鮮烈でアグレッシブな色彩、そしてそれがこのサイズの画面に収められることで、ぎゅっとエネルギーも詰め込まれたような。
力強さに溢れ、それがいろんなパターンで提示されていて、思わず見入ってしまいます。

たからもの 長谷川ちか子

たからもの 01

なんとなく、この展覧会のタイトルが漢字で「女王様」と書かずにひらがななのもなんだか分かる気がします。
敢えてひらがなになっていることで、やわらかさや親しみが現れていて、そこに逆の奇妙さ、コメディアンが演ずる悪役が醸し出す妖しさ、というと例えとしてはネガティブだしちょっと大げさなんですけど、まあ、そんな感じも伝わってきます。

岡本啓[景色]写真の裾野
ギャラリー椿
東京都中央区京橋3-3-10 第1下村ビル1F
5/10(木)~5/23(水)日休
11:00~18:30
岡本啓5/10DM.jpg

Fresh!!!

印画紙に描き出される鮮やかな色彩。
前回の個展はサブスペースで開催され、今回は満を持してのメインスペース。岡本啓さんの個展に行ってきました。


岡本啓04


岡本さんの作品のなかで広がるすべての色彩からは、尋常でないほどの鮮度が発散されているような感じがします。
画面の中に描き出されるものは抽象的でありながら、重なる色彩や鮮やかなグラデーションを伴った有機的なかたちには南国の花、植物を思わせるいきいきとした生命感に溢れ、ふわっと滲むように広がる青は、まさにその冷たさが心地よい水のなかにいることを連想させてくれます。
瑞々しさ、透明感がある画面を前にしていると、清々しい気分が沸き上がってきます。

いろんなサイズの透明のパネルにマウントされ、その「もの」としての重量感から伝わる荘厳な印象も、この世界の広がりをさらに力強く実感させてくれます。


岡本啓03 岡本啓05 岡本啓01

岡本啓02


カウンター沿いの壁に展示された作品は、その画面の広くを覆う白の透明感溢れる鮮やかさが特に印象的です。
そして、ほぼ抽象的な色彩の広がりの中にさりげなく織り込まれる現存する風景。どこまでも広がっているようなイメージを喚起させてくれる白を、さらに大きな広がりへと誘ってくれます。


岡本啓08 岡本啓07

岡本啓06


さまざまな形での提示が可能なのも、岡本さんの作品の大きな魅力です。
壁掛けの平面に留まらず、分厚い透明のキューブのなかに挟まれてその透明感にさらに立体的な奥行きが加えられて、ちいさな作品に壮大なイメージが詰め込まれているかのよう。
水平に置かれると、ホントに現実とは違う世界を覗き込んでいるような感じで面白いです。
また、カメラのレンズを覗き込むようなかたちの作品も。


岡本啓10 岡本啓12

岡本啓11


印画紙にダイレクトにエフェクトをかけて描き出される鮮やかで爽快な世界。
制作する過程はあらゆる作品のなかでもおそらくもっともケミカルな手法が取り入れられていると思うのですが、そうやって作り上げられ、提示される世界はどこまでもナチュラルな印象です。
分子レベルでは結局、すべては自然に還るのかなぁ、なんて想像も思い浮かびます。


岡本啓09

《5/8》
中ザワヒデキ 脳内混色絵画
GALLERY CELLER
愛知県名古屋市東桜1-5-10 collection東桜1F
4/21(土)~5/12(土)日月祝休
14:00~19:00
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脳は、「グレー」という色をこういうふうに認識しているらしい、というのをモチーフに制作された作品。
デジタルチックな矩形が画面上で組み合わさっていて、そのハイパーに硬質な感じは強烈で、さらにクリアーな発色で鮮烈な色彩感のインパクトも痛快です。
府中市美術館での公開制作も観ておくべきだったなぁ...。


中ザワヒデキ01 中ザワヒデキ02

中ザワヒデキ03


《5/11》
・風間サチコ展
@無人島プロダクション
東京都杉並区高円寺南3-58-15 平間ビル3F
5/11(金)~6/9(土木金土のみ(月~水は要予約)
11:00~19:00
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先日、VOCA展と時期を同じくして開催されていた文化庁の買い上げ作品お披露目の展覧会で、他のすべての作品を食ってしまうほどにパワフルでダイナミックな木版画による艦船。
それを制作されたアーティスト、風間サチコさんの個展です。

無人島の小さなスペースに詰め込まれたモノクロームの木版画。マンションなどの建造物がモチーフになっている右肩上がりのシリーズや、角栄関連のユーモラスな作品群。とにかく尋常でない画力で精緻に彫り上げられ、摺られた作品が壁から力強く迫ってきます。
しかも、ひとつの版に対してひとつの作品しか出さない、という大胆さ。それぞれの作品は、おそらく墨を版に乗せるところで濃淡などをコントロールしていこうという意図も感じられるほどに、絶妙なグラデーションがそこかしこに見受けられます。
新作もあって、これも視点のユニークさが際立つ独特の毒を持った作品で。
風間さん、年内にもう一度=、展覧会が開かれそうな感じで、それもすごく楽しみです。

風間サチコ03 風間サチコ01

風間サチコ02


☆イリュージョンの楽園
GALLERY MA2
東京都渋谷区恵比寿3-3-8
5/11(金)~6/16(土)日月祝休
13:00~19:00
イリュージョンの楽園DM.jpg

太郎千恵蔵さんのキュレーションによる、総勢10名の個性的なアーティストがピックアップされたグループショーです。それぞれがそのスタイルのユニークさを発揮しています。


☆たからもののじょおうさま
ヴァイスフェルト
東京都港区六本木6-8-14 コンプレックス北館3F
5/11(金)~5/26(土)日月祝休
11:00~19:00
たからものDM.jpg

こちらもユニークなグループショー。
キラリと光るクリエイションがそこかしこに配置されていて、見応えとともに発見が多い展覧会です。


《5/12》
・渡邊加奈子
galleria grafica bis
東京都中央区銀座6-13-4 銀座S2ビル1F
5/7(月)~5/12(土)
11:00~19:00(最終日:~17:00)
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木版凹版で作り上げられるアーバンな世界。
画面に走る、真直ぐ引かれるシャープな線の鮮烈さ、そしてぼんやりと滲むような陰影で浮かび上がるさまざまな物語のモチーフの存在感。
いろんな質感が画面の中に複雑に収められて展開し、クールなイメージが惹起されます。


渡邊加奈子05 渡邊加奈子04


この展示で、正面の壁に展示されたいちばん大きな作品。
ベニヤ板の繊維に入るインクが画面に現れてそれが木版のおだやかな風合いを感じさせつつも、ガリッとベニヤを刃物が走る音が生々しく聴こえてきそうな線の黒のスピード感に圧倒されます。硬質で鋭い展開が圧巻です。
シンプルで、シンプルだからこそ、画面の大きさに留まらないイメージの広がりを感じます。

渡邊加奈子02 渡邊加奈子03

渡邊加奈子01


☆岡本啓[景色]写真の裾野
ギャラリー椿
東京都中央区京橋3-3-10 第1下村ビル1F
5/10(木)~5/23(水)日休
11:00~18:30
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印画紙をコントロールして、こんなにも鮮やかで透明感のある色彩が。
瑞々しい色に溢れた展覧会です。


☆奇器借景 小瀬村真美
Yuka Sasahara Gallery
東京都新宿区西五軒町3-7 高橋工芸社ビル3F
5/12(土)~6/16(土)日月祝休
11:00~19:00
小瀬村真美5/12DM.jpg

あんな凄みをもった映像作品は、ちょっと記憶にない...


☆気高い手 村山留里子
山本現代
東京都新宿区西五軒町3-7 ミナト第3ビル4F
5/12(土)~6/7(木)日月休
11:00~19:00
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力強いほどに華やかな立像。
神々しさを感じさせてくれるオブジェ。
そして、青山悟さんとのコラボレーション。すべてが必見の個性的なクリエイションです!


《5/13》
☆interface furniture by MONGOOSE STUDIO
foro08
東京都港区白金台5-13-14 白金台The1000 地下1階
5/12(土)~5/26(土)月休
12:00~20:00(最終日:~18:00)
MONGOOSE DM.jpg

光るイス、ユーモラスな灯りのスイッチ、そして、窓。
・・・・窓?
それぞれの作品に詰め込まれたアイデアが楽しすぎる展覧会です。

ebc オープンアトリエvol.3 「corona」
@ebcアトリエ
神奈川県川崎市麻生区高石1-11-1-1F
5/3(木)~5/6(日)
12:00~20:00


春のebc


新しいメンバーも加わっていっそう賑やかになったebcのオープンアトリエに遊びに行ってきました。
もう3度目ということもあって、アトリエの場所にたどり着けないことはないのですが、伺った日は味スタでFC東京と鹿島とのデーゲームがあり、後半にワンチョペがようやく決めたと思って「うお~」と興奮したのに終わってみたら逆転負け、そんなやり場のない傷心を抱えながら自転車で百合ヶ丘へと向かったのですが、よみうりランドの山は傷心を抱えた身体にはきつかった...乗ったまま越えてやるという意気込みも絵に描いたようなヘアピンカーブで敢え無く断念、そこから押して頂上まで昇って、そこからは下りなので逆に怖かったりして...

・・・と、無駄話はこの辺までにして。

今回も楽しいクリエイションに溢れたebc、まず、茂木あすかさんの細かくてカラフルな線の作品が。
くねくねと画面のなかを、そして壁にまで広がっていく線、これがかわいいんです。


ebc0705茂木あすか01


堤岳彦さんの、おなじみの紙パックアート。
単純なコンセプトから生み出されるのは、止め処ないイマジネーションの広がり。繰り返されるキャッチーなパターンがさまざまなイメージを喚起します。


ebc0705堤岳彦01


その堤さんと、新しくメンバーに加わった深海武範さんの共作が面白い!
堤さんの手による可憐な花のドローイング、そして深海さんのキッチュな妖しさが充満した世界とがユニークな雰囲気を作り上げています。


ebc0705堤・深海01

ebc0705堤・深海02


もともと堤さんや金丸さんとは交流が深い深海さん、たくさんの作品が出展されていて、常々まとめて深海さんの作品を観てみたいと思っていた僕には嬉しい構成で。
平面の油彩の作品は、モチーフの面白さに加え、ひと味違うコミカルさがふんだんに取り入れられて、もう面白いと思ったものをそのまま画面に現したかのような気っ風の良さが堪らなく痛快!


ebc0705深海武範03

ebc0705深海武範02


平面の作品に加えて、多数展示されていたのがセーラー服姿の女の子をモチーフにした作品群。
シュールなシーンが演出されていて、かなり笑えます。

ebc0705深海武範06 ebc0705深海武範04 ebc0705深海武範07

ebc0705深海武範05


カフェコーナーには大きめの作品も。
もっと大きな作品も観てみたくなるような、きっと好きな人には堪らない痛快なシュールさが印象的です。


ebc0705深海武範01


その近く、寺嶋悟さんの作品もいい感じです。
妙に現実的なモチーフを取り入れながら、それでいて、浮遊感溢れるなんともファンタジックな雰囲気が伝わってきます。


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アニメーションの井上禎幸さん。
平面の作品は、かわいい場面がカラッと明るい色彩で描かれています。


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井上さんの作品は入口すぐのところ上映されていたアニメーションもあって、こちらは自転車山越えの疲れも癒しながらじっくりと拝見させていただいて。
ちょっと寂しい結末のような気もしましたが、それすらもやわらかく包んでくれるキャラクターの愛らしい表情や仕草が楽しい作品でした。


おなじみ、金丸悠児さん。
粗目の朝布を用いたちょっとユーモラスな渋さに溢れた小品が頭上に、そして板に描かれた遊び心が詰まったものも。
いかにも金丸さんらしい色使いが嬉しくなってきます。

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山内唯志さんの作品は、ほぼ想像上で作り上げられたトンボの作品。
わざとそれらしく仕立てられたメモ書きといい、やけに奇妙な姿になったトンボといい、言われないとホントかも、と思ってしまうほどの雰囲気が面白いです。
・・・で、実在するものの実は紛れ込ませてあるそうなのですが(笑)。


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他にも各所にさまざまなクリエイションが。
食堂でいただいたごはんも美味。

展示に加えて面白く思ったのが、このアトリエの運営費を得る目的で、メンバーのクリエイションをパッケージしたものを販売しているというもの。
小さいほうはメンバーの絵が入ったポストカードのセットが中心、そして大きいほうは、顔を描いた金丸さんの手描きのイラストや深海さんの極小キャンバスの作品などなどが詰まったなんとも贅沢な内容。
こういうアイデアも楽しいです。


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今回自転車で行けることが分かったebcアトリエ、帰りは山越えがなくて楽で。
また次に伺う機会も今から楽しみです!

大谷有花展 -picnic-
GALLERY MoMo
東京都港区六本木6-2-6 サンビル第3 2F
5/5(土)~6/2(土)日月休
12:00~19:00
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さらなる広がりを求めて、希望の霧の中を進む...!

5月のGALLERY MoMo、といったら大谷有花さん。
さっそく初日に伺ってきました。


大谷有花0706


入口に辿り着くともう、目の前にあの鮮やかなキミドリの世界が。
今回の展示は、いつもはギャラリーの中央に設置されているパーテーションも畳まれ、ぐんと広いスペースになっています。

そして、向かい合う壁に展示されたおおきな作品。このふたつの画面に挟まれ、ときにどちらかの作品に近付いて間近で眺めては振り返ってもうひとつの世界を俯瞰したり。


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大谷有花0701


・・・しかし、色彩こそ大谷さんらしさがこれ以上ないほどに溢れていますが、これまでの作品に必ず登場していたおなじみのアイテムやキャラクター...ソファや、ウサギねずみ、そして前回の個展で画面から咲き溢れていた花などが見当たらなくて、一瞬「おや・・・?」と感じてしまいます。


大谷有花0705 大谷有花0704


そして、これまでにお目にかからなかったさまざまなものも。
特に印象的なのが、鋭く移動しているようなフォルムの鳥や、大きな木、葉っぱ。
なかには、金色なんていう色彩も作品によって画面にポトンと乗っていて、その意外さに驚かされます。


大谷有花0708


また、この展示にあって唯一の鮮やかな赤の作品は、広がる緑の爽やかさにポジティブな力強さ、大胆で迷いのない明るさが空間に解き放たれているような。このアクセントが気分を爽快に高揚させてくれます。


大谷有花0707


これまで大谷さんの作品をさまざまな展示を通じて拝見し続けてきたからそんなイメージが思い浮かぶ気がするですが...敢えて、あらたな風景、イメージを得るために、これまで作り上げてきた世界から前へ、上へと進んだかのような世界が広がっているように感じられます。
大谷さんともお話ししていて強く思ったのは、今回の個展で提示された景色は、おそらく霧がかったイメージのなかにあるものを手探りで、素直に感じ取ったものを現したような印象です。
だから、名刺代わりといっていいこのキミドリの世界に囲まれても、むしろ「知らない世界」を経験させていただいているような、そんな期待と希望に満ちあふれた思いが心のなかに広がっていくんです。

そして、この展覧会のなかにあってもっともぐっときたのが...


大谷有花0710


この作品の背景のキミドリ。
画像だと伝わりづらくて口惜しいのですが、こんなに薄くて...それでいて、その薄いなかにやわらかな濃淡のグラデーションがあって...なんとなく、今、大谷さんが心の目で見えているいちばん遠い景色、そんな気がするんです。
この薄いキミドリは、まさにイメージにかかる「霧」なのかもしれない、と...


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始まったばかりの展覧会の感想としてはいかがなものか、という気もあるのですが、今回の大谷さんの展覧会は、「これから」がすごく楽しみで、「この次」を早く観てみたい、そういう強い期待を抱いてしまいます。
画面にはいないけど、それぞれの世界のなかで振り返ったり足元を眺めたりしたら、きっとソファもあるしウサギねずみもいるような...確実に、この世界は大谷さんがこれまで積み上げてきたクリエイションから連綿と続いたもので、そのもっとも新しい、最前線の景色なんだと思うんです。


この「霧」が消えたとき。。。
どんな希望が見えるんだろう。


大谷有花0709

STARBUCKS COFFEE Ginza Marronnier-dori ART EXHIBITION MOBY DICK
スターバックスコーヒー 銀座マロニエ通り店
東京都中央区銀座3-7-3 銀座オーミビル
4/27(金)~5/29(火)
7:00~22:00
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スターバックスでアートを観る贅沢。


現在、銀座松屋の裏手ににあるスターバックスコーヒー銀座マロニエ通り店で、山本理子さんによる、小説「白鯨」がモチーフとなった切り絵が展示されています。

まず、ガラス張りの入口で展開されるダイナミックな切り絵。
直接ガラスに貼られた、空へと向かって飛行するような白い鯨の雄大な姿に、圧倒されます。


山本理子01


作品は、2階に展示されています。
横長の画面の作品が3点。シックな内装に合った色彩の壁紙のようなものが用いられ、素敵な世界がそれぞれの画面で繰り広げられています。
それぞれの作品には、山本さんが「白鯨」から得たインスピレーションをもとに制作されたそうで、さまざなまものが画面に現れています。ひとつの画面に注ぎ込まれた情報量は相当なもので、コーヒーをいただきながら時間をかけてそこに現れているいろんな要素を結び付けながら想像に耽っていると、ホントにいい時間を過ごしているな、という充実した気持ちに。


丸テーブルの席が並ぶ壁に展示されている作品。
うねる波のなかにさまざまなものが現れています。
見つけて嬉しかったのが、画面右下のマグカップとそこから沸き上がる湯気。その側には本。スターバックスで観ているというのもあって、過ごしている時間の贅沢さを実感します。


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壁沿いにソファが設置された壁には2点、並んで展示されています。
画面いっぱいに現れる鯨のスケールの大きさ、画面傍に佇む女神のたおやかな表情。
「白鯨」を僕は読んではいないのですが、イメージは広がっていきます。


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1階でコーヒーを注文して席につき、アートを眺めながらいただく幸せ。
ギャラリーがたくさんある銀座のスタバで。

サイトでは、この展示に合わせて切り絵アートタンブラープレゼントの応募が行われています。

銀座でちょっとひと休み、と思ったら、ぜひ。

安岡亜蘭展 -Fantasia-
四季彩舎
東京都中央区京橋2-11-9 西堀11番地ビル2F
5/7(月)~5/16(水)日休
11:00~18:30
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宿る生命。


個展としては松屋以来、四季彩舎ではおよそ1年少しぶりの安岡亜蘭さんの展覧会です。


これまで拝見してきた安岡さんの作品は、さまざまな動物の姿、表情、仕草を幾何学的なパターンに嵌め込んだような、独特のかわいらしさとかっこよさとが詰まっていてイマジネーションもすこぶる刺激してくれる感じでしたが、今回はそこにさらに、画面に登場する動物たちに、

「何を見てるんだろう・・・」
「何を考えているんだろう・・・」

というふうに、今まで以上に自然に意思を汲み取ろうとしていて、それが新鮮に感じられます。
もちろんこれまでの最高にかっこいいデフォルメも随所に折り込みながら、ストーリーも画面から伝わってきます。


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安岡亜蘭001


水色、赤、黄色...キャッチーな色彩が、木製パネルの上に広がっています。しかも薄塗りで、パネルの木目も活かされていて、それがまたユニークな世界を演出する要素のひとつになっています。
アクリル板やネジなどのマテリアルが使用された作品では、それらが絶妙のアクセントになっていて、画面の中の世界との距離感をさらに面白いものにしているように感じられます。


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今回の個展でもっとも大きな作品。
広い画面に広がる黒、そこに姿を現す猫の鮮やかなイエロー、そして、何物かに向けられる鋭い眼光。
こんなにキャッチーな「闇」には、そうそうお目にかかれないのでは...と、新鮮なインパクトが痛快!


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これまでに制作された、和紙に出力された作品も出展されています。
シャープな線と味わい深い和紙の質感とのコントラストは、いつ拝見しても面白いです。


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何かを見つめる哺乳類の動物たち、水の中を動く金魚、虚空を羽ばたく蝶。
そこから馳せるイメージは自然に膨らんでいって、それがまた楽しかったり。。。
今、いちばんかっこいい動物画のような気がします・・・!


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依田梓展
GALLERY b.TOKYO
東京都中央区京橋3-5-4 第一吉井ビルB1F
5/7(月)~5/12(土)
11:00~19:00(金:~21:00、最終日:~17:00)
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ユニークな「温度」。


今年の始めに展覧会が催された第11回のリキテックスビエンナーレでもひときわ印象に残り、昨年度の五美大展でも個性的な色彩感が目を引いた、依田梓さんの個展に行ってきました。


独特なバランスの色彩が広がった作品が溢れています。
紫や青といったいわゆる「寒色」と、クリーム色とで描き出されるどこかの光景。
どちらかがもう一方をつつみこむようでもあり、またはお互いに広がり合うようでもあり。
ヘンな例えになってしまいますが、シュークリームとかき氷とが同時に並べられたような感じで、そこにひろがる景色から伝わってくる温度のイメージが、涼しくて暖かくて、といった具合に...面白いんです。
また、ドットで表現されている鹿の姿、ていねいに描き上げられた葉のシルエットなどがもたらす情報の豊かさ、幅広さも楽しいです。


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依田梓01


入口すぐに展示されている小品、そして、大きな画面の大作。
せめぎあうというよりもじゃれあうふたつの色彩が醸し出す世界に触れ、これまで浮かぶことがなかったイメージが湧いてきます。


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依田梓06


今回の個展では、他の色彩構成の作品も出展されています。
あたらしく描いたという作品は、3つの円錐を染める赤さえも涼しげな印象です。先の例えの延長でいうと、赤いシロップがかかったかき氷といったところです。涼しい赤のインパクト。


依田梓07


また、以前のおおきな作品、そして水彩のドローイングも個性的な色彩バランスに溢れています。


依田梓09

依田梓08


今回出展された作品のユニークな色彩感を観ると、寒色とクリーム色とのコントラストがこれからどんなふうに展開していくか楽しみだったり、そしてまた新たな色彩のバランスを見せてくれるような気がして、それがどんなイメージを喚起させてくれるか興味津々です。


依田梓04

田中恵美 -Surface-
Gallery Jin
東京都台東区谷中2-5-22 山岡ビル1F
5/4(金)~5/13(日)月火休
12:00~19:00(最終日:~17:00)
田中恵美5/3DM.jpg


木版であらわす、淡々として豊かな「水」の陰影。


昨年の佐藤美術館での奨学生展でも、木版で描き出される味わい深い透明感がひときわ印象に残っていた田中恵美さんの、Gallery Jinでの個展です。

その展覧会では油彩、岩彩といった強い色調の作品に囲まれていたこともあり、それがその瑞々しさが引き出されていた感じでしたが、個展では田中さんが描き出す風合いに包み込まれるような感じで、ホントに気持ちがいいんです。

木版を「彫る」部分と「彫らない」部分。
ひとつの作品に複数の版が用いられるのだそうですが、それぞれがうまくその光景、水面に浮かぶ陰影を美しく、静謐に描き出しています。

さらに、水面に映る樹木の枝も、そのシルエットを陽射しを浴びて揺らめく水の表情でていねいに描かれていて、さわさわと葉を揺らして風を奏でるような、そんなやさしい音が聴こえてくるかのよう。


田中恵美02

田中恵美01


メインのスペースに並ぶ大きな作品からは、その画面の広さを考えると心から感心してしまうほどに、隅々までていねいに水面に浮かぶ陰影が現されています。
墨の深みのある黒による木版の渋さ、味わい深さに加え、プレス機を使って刷られることで、彫りのひとつひとつがくっきりと現れることで、描き出されるひとつひとつがよりシャープに表現されているような感じがします。


田中恵美04

田中恵美05


額装されないパネルの作品も。
連綿と伝わる木版画のスタンダードな風合いに加え、画面がぴんと張られることでよりシャープに、反射する光の様子がより鮮明に伝わってきます。


田中恵美06


小品もよい感じです。
大作のダイナミックさとはまた違って、掌に乗るおおきさにかわいく収められた光景に、自然と慈しむ感情が沸き起こります。


田中恵美09 田中恵美08


あらためて、モノクロームの表現の深み、そして、木版によって作り上げられる世界の大きさを実感します。
実際の光景は豊かな色彩に溢れているはず、しかし、田中さんが木版で描いた光景は、そこにある色彩だけで、ほかに何も入らないと思えるくらいに充分に、鮮やかで、現実にも並ぶほどの豊かさ、奥深さがもたらされています。


田中恵美03

オオモリイクエ ―舟―
アートスペース羅針盤
東京都中央区京橋3-5-3 京栄ビル2F
5/7(月)~5/12(土)
11:00~19:00(最終日:~17:00)
オオモリイクエ5/7DM.jpg


目を見張るほどに、細かいドットで作り上げられるキュートなモノクロームの世界。
そして、ふわりとやさしく心を包むパステル画。

ふたつのスタイルでそれぞれの世界が繰り広げられている、オオモリイクエさんの個展です。


まずは、ペン画に目が向かいます。
ふわりと広がる陰影が、スムーズなグラデーションが、ペンによるドットで描かれています。


オオモリイクエ02

オオモリイクエ01


ぱっと観ると「銅版画?」と見紛うほどに、精微な作品です。
しかし、至近で観てみると、紙のうえに乗るドットのひとつひとつに「滲み」があって、手描きであることの存在の力強さをさりげなくアピールしているように感じられます。


オオモリイクエ04

オオモリイクエ03


そして、何よりかわいい!
キャッチーな笑顔を浮かべた妖精のようなキャラクターが、白い紙の上に現れておてんばな、やんちゃな仕草を見せてくれているようで、その徹底されたミニマムな描き込みとは裏腹に、なんともかわいい世界が繰り広げられています。


オオモリイクエ07 オオモリイクエ05

オオモリイクエ08


入口手前の壁では、カラフルなパステル画が。
スピード感溢れる細かいペン画とのギャップも愉快な、の~んびりとした雰囲気を醸し出す愛らしいキャラクターの豊かな表情がほっこりと楽しい作品が並びます。


オオモリイクエ09 オオモリイクエ11

オオモリイクエ10


ふたつの異なる雰囲気がひとりのアーティストから生み出されていることも面白くて、さらにキラキラと動き回っているようなモノクロームの世界をゆったりとしたパステル画の世界がやさしく見守っているような、そんなことを思い浮かべさせてくれる構成も楽しい展覧会です。


オオモリイクエ06

菅原多佳子展
@Gallery銀座フォレスト
東京都中央区銀座1-9-8 奥野ビル507
5/7(月)~5/12(土)
12:30~19:00(最終日:~17:30)
菅原多佳子5/7DM.jpg

やわらかく積み上げられた、セピア色の未来。


昨年に続いて開催されている菅原多佳子さんのGallery銀座フォレストでの個展です。
2006年のシェル美術賞展でもいちばん最後に展示されていたのも印象的だったアーティスト。

ひとり掛けのソファ、クッション...
スパゲティ、シューズ...

ベッドルームで綴られる日々、そこでうまれるサイドストーリーをそれぞれの画面に映し出されたような。
そして、そこに現れる時間のイメージは、薄い記憶を重ねて見据える未来のような...。


菅原多佳子003


やさしいセピア色は、眺めているとその意識をやわらかく包み込んでくれて、そこに収められる物語へと誘ってくれるような感じです。
昨年の展示では、もっとフェミニンなモチーフが取り上げられていて、そこで繰り広げられていたストーリーには筋書きとしての「強さ」が感じられ、それはそれで印象も深く残るものであったのですが、それを踏まえて今回の個展を拝見していることもあって、よりひとつひとつの画面のなかの場面にイメージが広がり、そしてその場面を想像で繋げていく面白さもあるような気がします。


菅原多佳子005 菅原多佳子006

菅原多佳子002


なかには女性の姿の一部分が現れている作品も。
この空間に広がる物語に、ふくらみを持たせてくれます。


菅原多佳子004


このちいさなギャラリーの「小部屋感」も、菅原さんの世界に一役買っているように思えます。
未来の記憶に触れられるような、いつまでも心の奥に残る素敵な雰囲気です。


菅原多佳子001

大和田良 "Strings of Life"
B GALLERY
東京都新宿区新宿3-32-6 BEAMS JAPAN 6F
4/19(木)~5/15(火)
11:00~20:00
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本城直季さんもメンバーに列ねる写真家集団「StairAUG」ののひとり、大和田良さんの個展です。

ギャラリーいっぱいに、爽やかな色彩が広がっています。
モチーフはさまざま、そしてそのひとつひとつから広がるイメージも、霞がかるような遠い記憶を呼び起こさせるようなものであったり、未来的な想像が加速するようなものであったりとさまざまです。


大和田良01


「花」を撮影したものは、有機的なフォルムのしなやかさ、可憐さが、むしろそのかたちの幾何学的な美しさが引き出され、先鋭的、未来的な感触が押し出されているように感じられます。


大和田良04 大和田良03

大和田良05


風景、光景を撮った作品も、独特の風合いです。
綴られる記憶の1ページのようで、たったひとつの場面が提示されているだけなのに、そこへと至る時間の経過、そこから始まっていくもの...一瞬を切り取るというよりもむしろ、長いスパンを感じさせてくれるような...。
そこに加えて、色合いが実に爽やかなのも、澄んだ空気を吸ったみたいな気持ちよさが感じられます。


大和田良06 大和田良09

大和田良11


出展されている作品は、どこかしら加工がなされているそうです。
分からない程度のものも多いですが、その「加工」が大胆になされている作品の中では、万華鏡的なアプローチの作品が面白いです。
スクエアの画面でのグラフィカルなものもクールでかっこいい!
そしていちばん印象的なのが、敢えてその万華鏡の中心を外した桜の作品。ぱっと観るとそういう加工が取り込まれていることが分からないのですが、気付いた瞬間に見えてくるパターンの面白さは痛快です。


大和田良07

大和田良10

ギャラリーの真ん中に吊るされた棚。そこに置かれる、大和田さんの作品がプリトされたシャツ。
そのポップな仕上がり、シャツなどにプリントされてもそのキャッチーさが活きます。


大和田良08


清々しい色が、アクリルにマウントされ、その透明感が最大限に活かされるかたちでの提示もステキです。
爽快な気分が心を満たす展覧会です。


大和田良02

☆菅原多佳子展
@Gallery銀座フォレスト
東京都中央区銀座1-9-8 奥野ビル507
5/7(月)~5/12(土)
12:30~19:00(最終日:~17:30)
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昨年に続いて、そして昨年のシェル美術賞でいちばん最後に展示されていた菅原多佳子さんの個展。
霞み、埋もれた記憶を辿るような、淡いベージュの色彩で描かれるソファやシューズ...。
滋味に溢れた素敵な作品です。


☆依田梓展
GALLERY b.TOKYO
東京都中央区京橋3-5-4 第一吉井ビルB1F
5/7(月)~5/12(土)
11:00~19:00(金:~21:00、最終日:~17:00)
依田梓 5/7DM.jpg

2月にスパイラルガーデンで開催されたリキテックスビエンナーレで、そしてその後の五美大展でもひときわ
印象深い色彩。
甘いクリーム色と寒色とで奏でられる独特の世界がユニークな、依田梓さんの個展です。


☆オオモリイクエ ―舟―
アートスペース羅針盤
東京都中央区京橋3-5-3 京栄ビル2F
5/7(月)~5/12(土)
11:00~19:00(最終日:~17:00)
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オオモリイクエさんのペン画とパステル画。
ふわりとやさしい表情が溢れるパステル画に癒され、細微なドットだけで作り上げられるペン画には思わず画面に近付き、身を乗り出して見入ってしまいます。


☆安岡亜蘭展 -Fantasia-
四季彩舎
東京都中央区京橋2-11-9 西堀11番地ビル2F
5/7(月)~5/16(水)日休
11:00~18:30
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「封筒の中のギャラリー vol.2」でフィーチャーさせていただいた、安岡亜蘭さんの個展です。
これまでの、幾何学的なかたちに織り込まれる動物のデフォルメされたデザイン的な面白さから、描かれる動物の心に問いかけたくなるようなウォームな雰囲気へ。
いとおしい世界が並んでいます。


・絵巻物展
gallery d.g/画廊はね
東京都中央区新川2-7-4 矢島ビル1&2F
5/7(月)~5/12(土)
12:00~20:00(最終日:~16:30)
絵巻物展パンフ.jpg

たくさんの日本画のアーティストの絵巻物を揃えたユニークな展覧会です。
既知の作家も多く参加していて、そのクリエイションが「絵巻」といういつもと違う画面に収められて、感心したり驚いたり、と新鮮な楽しさに溢れています。

かわいい骸骨の絵でおなじみの山科理絵さんは、今回ははじめて線の構成でユーモラスな世界を描いています。
しおらしく咲く桜に戯れるカエルの骸骨。横長の画面に流れる場面の流れも楽しいです。

絵巻 山科理絵03 絵巻 山科理絵02

絵巻 山科理絵01

坂本藍子さんの作品は、一目観てその鮮やかな青の清々しさが気持ちよく、そこに舞う蝶がまた美しいアクセントとなっています。

絵巻 坂本藍子03 絵巻 坂本藍子02

絵巻 坂本藍子01

《5/3》
ケレン - 主張する色彩 -
東京藝術大学美術館陳列館
東京都台東区上野公園11
4/19(木)~5/3(木)
9:30~17:00
ケレン4/19DM.jpg

特徴的な塗装が施された作品がピックアップされた展覧会。
既知のアーティストの作品も多数出品されていて、観ていて感慨深くもあり、新しい発見もあり。

特に印象に残ったのは、まず大沢拓也さんの平面作品3点。
襖を再利用して用い、シンプルな色彩構成でシルエットが重なるようにして描き出されるアーバンな作品、クールな渋さに満ちていて、とにかくかっこいいです。

昨年のC-DEPOTでも拝見した吉野貴将さんの立体作品、未来的な出で立ちで、表面の漆が徹底的に磨き込まれたうえに、前回の展示では分からなかった(もしかしたら新しく施されたのかも)線があり、さらに未来的な風合いを鮮烈に醸し出していました。

古川弓子さんのカラフルな樹脂が重なる打ち出の小槌と、渋い輝きを放つ草履。それぞれが現実から遠く離れた雰囲気を充満させているように感じられます。

昨年のGALLERY 360°でのグループショーでもフィーチャーされていた保井智貴さんの女性の立像も。ていねいな作り込みは既知の作品であってもやはりさまざまな発見が見つかります。

つい先日まで東京画廊のグループ展に、ゆっくりと動く能面の映像インスタレーションを展示されていた尾崎真悟さんの、その展示でも窓のところにあった光を透過する作品が。見上げるような位置に広がる輪のかさなり、外側から観ても美しかったです。

ebc オープンアトリエvol.3 「corona」
@ebcアトリエ
神奈川県川崎市麻生区高石1-11-1-1F
5/3(木)~5/6(日)
12:00~20:00

新しいアーティストも加わって、さらに賑やかになったebc
半年に一度のオープンアトリエ、今回もさまざまなスタイルのユニークなクリエイションが溢れていて楽しい企画でした。
加えて、思わず乗ってしまった面白い試みも!

《5/5》
☆STARBUCKS COFFEE Ginza Marronnier-dori ART EXHIBITION MOBY DICK
スターバックスコーヒー 銀座マロニエ通り店
東京都中央区銀座3-7-3 銀座オーミビル
4/27(金)~5/29(火)
7:00~22:00
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おいしいコーヒーをいただきながら、ここでしか観られないアートを楽しめる贅沢。
山本理子さんによる、白鯨をモチーフにしたスケールの大きな切り絵が展示されています。

・滝沢達史展「むこうへ」
Gallery≠Gallery
東京都中央区新川1-3-23 八重洲優和ビル2F
4/28(土)~5/10(木)
12:00~19:00(最終日:~17:00)
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あいかわらず、贅沢な空間の使い方がなされています。
・・・でも今回はそれがかなり究極的。
空間にたったひとつのオブジェが宙を浮くように展示されていて、それを視界に捉えた瞬間、スペースに侵入するのがためらわれるほどに完成された空間となっています。


滝沢達史02 滝沢達史03

滝沢達史01

☆田中恵美 -Surface-
Gallery Jin
東京都台東区谷中2-5-22 山岡ビル1F
5/4(金)~5/13(日)月火休
12:00~19:00(最終日:~17:00)
田中恵美5/3DM.jpg

なんとも瑞々しい木版画。
佐藤美術館での奨学生の展示ではじめて拝見して、そのときもさざ波に現れる細かな水の模様の美しさが
画面いっぱいにていねいに表現されていて印象に残っていたのですが、今回はその作品が溢れていてなんとも心地よい空間です。

☆大谷有花展 -picnic-
GALLERY MoMo
東京都港区六本木6-2-6 サンビル第3 2F
5/5(土)~6/2(土)日月休
12:00~19:00
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5月のGALLERY MoMoは大谷有花さん。
今回は、敢えて新しい世界へと踏み込んだような、これまで提示されてきたものとは違う世界が広がっていて。

ダチョウからFLOWERシリーズまで 福井江太郎
新宿高島屋 10階美術画廊
東京都渋谷区千駄ヶ谷5-24-2
5/3(木)~5/15(火)
10:00~20:00(5/3、5/5、5/6、5/12:~20:30、5/4:~15:30、最終日~16:00)
福井江太郎5/3DM.jpg


ひとりのアーティストが作り上げ、積み上げてきた作品群の圧倒的なスケールと、それを受け止める空間のポテンシャル。
このふたつの要素がこれ以上ないかたちで現れた、ホントに素晴らしい展覧会です。


先日オープンしたばかりの新宿タカシマヤの美術画廊で始まった 福井江太郎さんの個展に、前回の大森暁生さんの展覧会に続いて行ってきました。

もう、改めて言葉で言い表わす必要はないような気がするほどに、圧倒的なスケールで繰り広げられる福井さんの絵画世界がこのシックでモダンな空間を占めています。

なにより嬉しいのは、過去に発表された大作があらためて出展されていること。
昨年、一昨年に開催されている東邦アート での展覧会で発表された(一昨年については僕の記憶が曖昧で、おそらく、なのですが)大作がふたたび、しかも同時に出品されていて、それぞれのコーナーで圧倒的な存在感を放ち、力強くそれぞれの世界へと心を誘ってくれます。

まず、昨年の展覧会でも感動した、一面に金箔が貼り巡らされた画面に咲く花菖蒲。
この作品を、ある程度の距離を置いて、全体を俯瞰、藍色の色彩の飛沫の中に現れる菖蒲の花の鋭いフォルムの連なりと一望できる幸せ。
そして、その美しい空間を、まるですらりと裂くように、画面を縦に走る線が現す茎と葉。のケレン味のなさ。
眼前に広がる圧倒的な世界に、ただ立ち尽くします。


福井江太郎003 福井江太郎002

福井江太郎001


そして、他の作品におけるこの花菖蒲の展開も見応え充分です。
ちいさなパネルの作品をひとつの壁にまとめて展示したインスタレーションも。
これらひとつひとつの美しさを堪能するのももちろんよくて、さらに、先の大作とイメージの中で呼応させ、あの広々とした景色の一部を違う角度で眺めたら見える光景、と思うとまたこの世界に奥行きが与えられます。


福井江太郎005

福井江太郎004


花菖蒲のひとつ前の「BROKEN FLOWER」、百合のシリーズも、また違うインパクトに溢れています。
縦に聳える3つの画面。そこに、黒と金とがぶわっと広がり、その痕跡が尋常でない熱さをイメージさせてくれます。
画面いっぱいに描き出された百合の可憐なフォルムと、単純にその大きさから、そして力強い黒の色彩が生み出すダイナミズムに呆然としてしまいます。


福井江太郎007

福井江太郎006


こちらも、額装された作品のなかでの展開が面白いです。
主に、和紙のくすんだ味わい深い白、金、そして黒によって描き出されるなか、朱などの別の色がひとつだけ潜み込んでいて、たったそれだけの手数が劇的なほどに違うイメージを創出させてくれます。


福井江太郎008 福井江太郎009


そして、おなじみダチョウのシリーズも。
空間の各所に配置されているダチョウの卵は、この展覧会の小気味よいアクセント。


福井江太郎012


画面の中でのもりもりとした胴体部分の重厚な存在感。
そこからひょろりと伸びる首、そしてその先の独特の愛嬌を持った頭部。
無論そこは動物園とかじゃなくて、なんとなくダチョウしか存在しないサバンナかどこかをイメージさせ、その乾いた空気とともに、現実と乖離した世界の存在を意識させてくれるような気がします。


福井江太郎014 福井江太郎013


また、絵画の中で自由を得て、ダチョウを構成する身体のパーツが独立してモチーフとなった作品のユーモラスな味わいも堪らないです。
首だけが枝のように伸びていたり、画面を横切っていたり、揺らぐように、舞うように、漂うように...留まるところを知らないイマジネーションの奥深さにも驚嘆した次第です。


福井江太郎010

福井江太郎011


福井さんの作品というとダチョウであったり、菖蒲や百合といった「BROKEN FLOWER」のシリーズであったりと、取り上げるモチーフがそのままテーマとなり、シリーズとなっていて、その展開がたいへん特徴的だと思うのです。
そして、それぞれのモチーフが福井さんのイマジネーションのフィルターを通過して画面の中でさらに自由に動き、たいへん動的なイメージを醸し出すだけではなく、未来的な想像も惹起してくれるのが本当に興味深く感じられます。

とにかくぜひ、この空間でさまざまなイメージをインスパイアされてほしいと思うのです。

山本修路「松 From lammfromm」
GALLERY at lammfromm
東京都渋谷区上原1-1-21 山口ビル1F
4/28(土)~5/29(火)
月~金:12:00~20:00/土:11:00~20:00/日祝:11:00~19:00
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GALLERY at lammfrommで観る松。


キッチュな松でおなじみの山本修路さんの展覧会に行ってきました。
この展示のことを知った瞬間、一気に期待が膨らんでしまったわけですが、ホントに見事に山本さんの世界が作り上げられています。

まず、ドローイングがいちばん手前に展示されています。
この風味...たまらないです。
ほのぼのとした「和」の風景。
近付いてみると実に細やかな描き込みによって岩肌や松の幹が味わい深い陰影が施され、そこにふわりと広がる緑の爽やかさに触れ、目が喜んでいるのを実感します。
画面に現れるサインも含め、実に日本的なモチーフなのですが、それでも「今」、そして未来の雰囲気を滲ませているのも不思議で興味深いです。


山本修路01

この他にも、ドローイングはファイルの中にたくさん収められていて、こちらも必見です。


続いて立体の作品。
今回はこの空間でどんな展開をしてくるかな、と楽しみだったのですが、「そうきたか!」と思わず唸ってしまう展示法で。

それぞれ1点もののFRPの作品はまさに山本さんの真骨頂。
ぐりぐり、ごつごつとした岩肌や松の幹の力強さ、そしてユーモラスな雰囲気に溢れた松の葉。
このふたつの質感によって作り上げられるフューチャリスティックな松。しっかりと和の風合いも醸し出しつつ、おかしみと、それにに加えアバンギャルドな雰囲気も感じられます。


山本修路03 山本修路04

山本修路02


立体の中で、さまざまなスケールを駆使して作り上げられる未知の光景。
今回は岩肌や松の幹の彩色に油絵の具を採用されたとこのとで、それがさらに深みをもたらし、立体的であるがゆえに生み出される独特の陰影とあわせて、そこに現れる複雑な色の重なり、ミニマムな視点で眺めるとぐんぐんとその世界に呑み込まれてしまうような、そういった、全体から伝わる斬新な和の面白さとはまた違うコンテンポラリーな魅力にも溢れています。


山本修路06


いちばん奥にある作品の全景のインパクトも強烈!


山本修路07

この他、ショップスペースにも実にかわいらしい松が展示されています。
そのショップスペースには現代アート界隈ではもう充分におなじみのカラフルなクリエイションが溢れていますが、れらと山本さんの作品群とのコントラストも実に楽しいです!

伊藤存展覧会『NEW TOWNのスペース』
リトルモア地下
東京都渋谷区千駄ヶ谷3-56-6 B1F
4/28(土)~5/27(日)月休(4/30開廊、5/1休)
12:00~19:00
入場料:\200
伊藤存4/28DM.jpg

このアーティストの「底」はどこに。。。

リトルモア地下で開催中の伊藤存さんの展覧会に行ってきました。

賑やかな原宿の竹下通りからほんの数分歩いた(僕の場合自転車移動になるわけですが)場所にあるリトルモア地下。
文字通り地下へ続く階段を降り、扉を開けて中に入ると、伊藤さんの手による作品、クリエイションがぎっしりと詰まっています。

僕は伊藤さんの作品を拝見するのは今回が初めてで、思い浮かんだイメージをそのまま画面に現していったような印象を受けます。
たまたま近くにあったような紙に描かれたエスキースであったり大きな画面に施された刺繍であったり、果ては台の上にさまざまなものを配置したインスタレーションであったりといった具合に、とにかくその場で、その瞬間に浮かんだイメージに対するリアクション、行動そのものが伊藤さんにとってのアートなのかな、と感じた次第です。


なかでもこの空間に数点展示されている刺繍の作品は結構なインパクトで、その大きさとさまざまな色が登場する画面とに、自然と意識が引き寄せられていきます。

しかし、僕がどれほどよく眺めても一向にそこに縫い上げられているものが何かに見えてくることはなく。
各所に貼られている、そのとき浮かんだイメージを描き留めたエスキースを元にしているような箇所は画面のそこここに伺えるのですが、しかしその関連性というか、「なぜそこにそれがあるんだろう」という謎が浮かんでくるんです。


伊藤存04

伊藤存03


エスキース(のようなもの、なのかもしれません)は結構な数が展示されています。
細かい線がちいさな画面のなかで増殖したような風合いのものが多くて、その複雑さによって自然と、じっくりとそれぞれの画面、そしてその一角と対峙してしまいます。

なかには、ていねいに素描されたものもあったりして、それが伊藤さんに対する興味をより大きなものへと広げてくれるような感じがします。


伊藤存02

伊藤存01


一方、床に置かれた2台の台の上で展開されている、いろんなものを置いたインスタレーションも。


伊藤存05


正直な感想として、僕が苦手な構成の展示なのですが、それでもずっとそれぞれの作品を眺めていて、おそらく「これまでの軌跡」を踏まえた上での「今」がこの展覧会の肝というか、伊藤さんが現したいところなのかな、と感じ、その「今」をさらに踏まえてこのクリエイションの「これから」に思いを馳せるとやはりそこには「もしかしたらとんでもないものを見せてくれるかも知れない」という期待感が沸き上がってくるんです。

この展示全体から感じる曖昧さのなかで、その随所に発見される刺激はやはりあって、それはまず量的なインパクトともそうですし、「うわ、すごい!」と唸る細かさ、そしてなにより、分からないからといって切り捨てられない何かが空間に広がっているんです。

残念ながら伊藤さんとはお目にかかれず、おそらくご本人とお話しするとそこクリエイションの深みもまずだろうな、と感じるのですが、いずれにしても、この展示を観た上で機会があればもう一回足を運んでそのときにまた新しい発見があればいいし、次の伊藤さんの展開がどんな刺激を含んでいるか、楽しみだったりします。

Secrets of Silence 静寂の秘密
Gallery銀座一丁目
東京都中央区銀座1-9-8奥野ビル4F
4/30(月)~5/6(日)
12:00~19:00(最終日:~17:00)
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世代が異なる3人のモノクロームの作品を制作されるアーティストがピックアップされた展覧会です。
それぞれが、単にモノクロームであるということに留まらず、独特の個性を発揮していて見応えもあり、統一された色彩が奏でるハーモニーも心地よく響きます。

その中でも、折りに触れて拝見している安冨洋貴さんの鉛筆画は、目にするたびに「鉛筆」という素材のポテンシャルの大きさに驚かされ、その静謐感、透明感に魅入られます。


雨に濡れるビニール傘。
雨粒とともに降り注ぐ闇の静けさ。そして、そこに射し込む光。
日常に潜む非日常的なワンシーンをさらりと取り上げた感じで、そこには人は登場しないものの、そこを通っていった人々の気配、残り香も伝わってくるような気がします。


安冨洋貴01

安冨洋貴02


そして、さらに傘さえも消え、地面に落ちる雨粒が水たまりに生み出す水面の揺らぎを描いた作品群も秀逸です。
そこにはホントに何もない、ただ水しか描かれていない...はずなのに、その表情の豊かさ、時間の過ぎ方がゆっくりと感じられるほどに意識もその絵の中に沈んでいくかのような、そんな風合いがゆるやかに画面から広がっています。


安冨洋貴05

安冨洋貴03


そういった中で、花を描いた小品も。
モノクロームであるからこそ引き出される美しさ、可憐さ。
透明感あふれる瑞々しさは、忘れ難い記憶として心に残ります。


安冨洋貴04

八島正明さんの作品は、なんといってもそのマチエル、画面表面の質感が印象的です。
ふたつの色調で表現されたシルエット、その背景となる、薄いグレーと白とが砂嵐のように広がり、独特の静謐感と渋味を漂わせ、思いのほか軽やかな世界を作り上げています。


八島正明01

八島正明02

片山高行さんの作品は、油絵の具で力強く、他の二人と比べても圧倒的にはっきりとしたトーンで描き出されています。


片山高行01

小さなスペースのなかで、ひとことでモノクロームといってもこれほど豊かな世界がそれぞれに広がっていることに、あらためて嬉しい喜びがふつふつと湧いてくる、素敵な展覧会です。

早川知加子展
OギャラリーUP・S
東京都中央区銀座1-4-9 第一田村ビル3F
4/30(月)~5/6(日)
12:00~20:00(日:11:00~15:00)
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昨年のGALLERY MoMoでの二人展も面白かった早川知加子さんの、移転したてのOギャラリーUP・Sでの個展に行ってきました。


何度拝見しても、ユニークな木版画です。
それに加えて、今回はタブローの作品も多く出展されています。

木版に彫られ、摺られたと思うと信じられないほどに細い線、手描きだからこその自由度がある線。
木版の淡い色彩の広がり、手描きのくっきりとしたケレン味のない色。

さまざまなグラデーションが織り成す、不思議なかわいさを持った作品が、ずらりと並んでいます。


早川知加子003 早川知加子004 早川知加子002

早川知加子001


早川さんの作品を観るにつけ感じる、余白の心地よさ。
和紙の穏やかな質感に、ある作品ではちょこんと実に小さいものが現れ、ある作品ではノイジーな線がくしゃくしゃと広がっていて。
ちょっぴりキッチュでユニークな世界がそれぞれの画面で展開されています。


早川知加子007 早川知加子005

早川知加子006


パネル以外の作品も数点展示されています。
パネルのぴんしゃんと張った紙の画面のすっきりとした感触もきりりとしていいのですが、それとは違い、ふわりと凹凸が現れているドローイング、そしてちっちゃなものを使って作られたコラージュの作品のかわいらしさにも魅力を感じます。


早川知加子008 早川知加子009


なかにはパネルの側面にも絵が展開している作品も。
早川さんならではの奇妙なかわいさは、抽象的でありながら生命感にあふれていて、有機的な風合いを発散しているように感じられるのがホントに不思議です。
そして、その不思議な姿をした生命体はすごく愛嬌があって、小ささと相まってすごくかわいらしく思えてきます。


メインが木版画ということもあって小さな作品での展開が中心ですが、もし機会があれば大きな画面の作品も拝見してみたいです。


早川知加子010

小林努展
SOL
東京都中央区銀座6-10-10 第二蒲田ビルB1F
4/30(月)~5/5(土)
11:00~19:00(最終日:~17:00)
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迫力の奥行き。


日本画の小林努さんの展覧会です。
昨年開催されたグループショーでのモノクロームの大作が印象に残っていて、以来他のグループ展などでも拝見してきて、今回ようやく初めて個展で拝見することができました。


まず、ギャラリーの奥の壁に展示された今回の展覧会のなかでもっとも大きな作品に圧倒されます。
手前のぐんと迫るような臨場感、そこから遠くへと連なるビル群。
ほぼモノクロームの線でで作り上げられたスクエアな線がが折り重なり、アバンギャルドな風合いも醸し出しています。


小林努02 小林努03

小林努01


斜めに広がる高層ビル群の光景が作り上げる奥行きの迫力。
モノクロと赤青との作品が並ぶ一角、そのコントラストも印象的です。


小林努07


どちらかというと、距離を置いて画面全体を視界に収めた状態で俯瞰するほうが、より、その臨場感が伝わってくるような感じする作品が多いのですが、1点、それを許さない作品が。
無論、小林さんらしい矩形が重なるビルの群れも描かれているのですが、その他にも画面の上のほうに異様に細かい描き込みがなされていて、思わず至近でじっくりと眺めてしまいます。
凝縮された線に意識が呑み込まれ、さらに全体の迫力に広大なイメージが湧き、と、ひとつの作品にさまざmなかたちでイマジネーションが刺激されます。


小林努06 小林努05

小林努04


「現場」感。
何かをコンストラクトしている場所が放つエネルギー。
それを収めた作品に囲まれ、その迫力に圧倒される展覧会です。


小林努08

倉重迅「His Shadow Enwraps Me」
ミヅマ・アクション
東京都目黒区上目黒1-3-9 藤屋ビル2F
4/25(水)~5/26(土)日月祝休
11:00~19:00
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額に汗を浮かべ、一心不乱に集中するこのクールな眼鏡の男は、いったい何を。

倉重迅01


ミヅマ・アクションでの倉重迅さんの展覧会へ行ってきました。


階段を昇り切って辿り着く入口すぐの通路にまず1台のモニターが。
妙に仰々しい言葉が習字で書かれた小さなゲートを、模型の電車がどんどんと通過していく映像が延々と続きます。


倉重迅14 倉重迅15 倉重迅13

この連続、特にゲートを通過する瞬間、何が書かれているか認識した刹那に訪れる、カメラがそれにぶつかって起こる映像のノイズに意識が引き寄せられ、淡々としていながら妙に大げさなシュールな内容にしばらく画面の前に立ったまま...内心で爆笑してました。


・・・しばらくすると、音声のノイズが気になってきます。明らかにモニターのスピーカーからではないノイズ。

振り返って見上げると...

倉重迅11


ちょw

生かよ!!!Σ( ̄口 ̄;)
生放送かよ!!!Σ( ̄口 ̄;)

通路のスペースの天井に近い壁にぐるりと接地された鉄道模型の線路。そこを「シャー」と音立てながら走る電車。

いや、もう、ツボ直撃。大笑い。これでもう倉重さんの世界に完全にロックされてしまいました。


倉重迅12

倉重迅10


5階のメインスペースには、映像を中心にさまざまなスタイルのクリエイションが展示されています。

カウンター側の大きめのモニター。ヘッドホンからは、走っている女性の荒い呼吸が流れ、暗い地下を動き回る安定しない映像が映し出されます。そして、刹那的に現れる文字。
激しくスリリングでハードボイルド、そしてアバンギャルドな世界が、淡々と、しかしアグレッシブに展開していきます。
かっこいいんです。


倉重迅03


ほぼその向かい。
天井からぶら下がるスプーン。
それに向けられる3台のちいさなモニターには、目がいっちゃってる人たちがちょうどそのスプーンのほうへ何やら念を送っているような映像。ときおり「ハッ」「ヤーッ」みたいな奇声が飛び交っています。
このシュールな光景もかなり面白くて、敢えて真剣に対峙するのもまた一興です。


倉重迅04


キャンバスに描かれた油彩の作品も。
ビルディングの窓、あるいはいにしえの「ブロック崩し」を思わせる作品ですが、宇宙へ発信されるメッセージという壮大なモチーフを取り上げたものだそう、
倉重さんのクリエイションとしては「やってみました」的とのことで、空間全体のインスタレーションに絶妙のアクセントとなっています。


倉重迅07

倉重迅06


唐突に床に置かれた虎の剥製。


倉重迅08


その見開かれた獲物を狙うような目に「おぉ...」と思うのも束の間、全体を眺めると...


倉重迅09


ゴルフコースかよ!!!Σ( ̄口 ̄;)

・・・楽しい---(゜∀゜)---!!!
なんかもう、いつの間にか「何でも来い!」って感じで半ばヤケ的ににそのとんでもないクリエイションを受け止め続けていく自分が。

今回のメインの映像作品。
プロジェクターで正面の壁に投影されています。
ひたすら真剣な目で何かに没頭する男。
「カシャカシャ」とプラスチックがぶつかって起こるノイズが映像に伴って流れ、それが緊迫感をさらに掻き立てているように感じられます。


倉重迅02


どこか狭い空間に閉じこもったこの男の顔のアップが続き、「一体何をやっているのだろう...」という素朴な疑問が浮かぶのですが、手元、あるいはこの男の全身が映し出された瞬間、


!!!!!!!Σ( ̄口 ̄;)


となること必至。


それぞれの作品のシュールさはどこまでも痛快で、映像自体のクールさ、かっこよさとのギャップが堪らないクリエイション。
そのユニークな作品を次々と堪能していく、至高のインスタレーションです。
そして、作品の説明が掲載されたプリントを読むと、それぞれの作品にしっかりとしたイメージのバックボーンがあって、確信レベルの高さにも感嘆。それがクオリティの高さに反映されているように感じられます。

驚きに満ちたショーです!

おかげさまで、このブログを始めて昨日でまる1年が過ぎ、本日から2年目に入りました。

この1年、ご協力いただいたアーティストの皆様、ギャラリーの皆様、そしておつき合いいただいた皆様に、心より感謝申し上げます。

それにしても、1年も経つとさすがによくやってきたなぁ、と。
個人で書いたギャラリーベースのアートの展覧会のレビュー、質はともかく、数はおそらく世界一なんじゃないかなぁ...。

無意識に頑張っちゃうように楽しんでいきますので、これからもどうかよろしくお願いいたします。


今日から始まる1年も、すばらしいクリエイションに出会えますように。

あと、変な場所で自転車がパンクしませんように。

☆Secrets of Silence 静寂の秘密
Gallery銀座一丁目
東京都中央区銀座1-9-8奥野ビル4F
4/30(月)~5/6(日)
12:00~19:00(最終日:~17:00)
静寂の秘密DM.jpg

モノクロームの世界を展開する、世代の違う3人のアーティストがピックアップされたグループショーです。
なかでも、安冨洋貴さんの水の透明感を鉛筆で再現した、まさに静寂の世界がすばらしいです。

・第一回三人展「道」
純画廊
東京都中央区銀座1-9-8 奥野ビル2F
4/24(火)~4/30(月)
12:00~19:00(最終日:~17:00)
「道」DM.jpg

女性のアーティスト3人のグループ展。
野沢夕記さんの作品は、白の画面の上に幾何学的なデザインが立体的な盛り上げを伴って描き出されていて、その無機的なのになんともやさしい雰囲気が面白いです。

野沢夕記01

モノクロで、画面のなかにユーモラスなモチーフが標本のように収められてどこかコミカルな橋本佳苗さんの作品。

橋本佳苗01

水口かよこさんは、木版画らしく若干トーンが抑えられたやわらかな色彩が心地よいです。
複数版を用い、瑞々しいグラデーションが作り上げられています。

水口かよこ01

そして、ユニークだったのが、その木版画に和紙のコラージュが施された作品。
写真だと分かりにくいのですが、和紙1枚分の立体感が木版画に新鮮な質感をもたらしています。また、葉脈の部分は鋏でカットされ、葉全体は手でちぎられているために、ほぐれた和紙の繊維がふわりとした感じが作品をより味わい深いものに押し上げているように感じられました。

水口かよこ03

水口かよこ02

・「‐日記‐」展 小川奈々誉
Gallery Q
東京都中央区銀座1-15-7 マック銀座ビル2F
4/30(月)~5/5(土)
11:00~19:00(最終日:~17:00)
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一昨年、昨年に続いて同じGallery Qで開催されている小川奈々誉さんの個展。
ベージュに乗る岩絵の具特有の粒子や箔が乗り、空間がいかにも小川さんらしい個性的な彩りに溢れています
作品は、これまでの壁での展開からさらに立体的に。
壁にはスクエアの作品群が並びます。独特の渋く軽やかな色彩のハーモニーを味わえます。

小川奈々誉 004 小川奈々誉 003

その彩色された和紙をカットし、組み上げることで立体と姿を変えた作品が、空間に溢れています。
床置きであったり、天井から吊るされていたり。
このやわらかい色彩のなかに意識が身体ごと入ってしまったような、不思議な心地よさがもたらされます。

小川奈々誉 002

小川奈々誉 001

☆小林努展
SOL
東京都中央区銀座6-10-10 第二蒲田ビルB1F
4/30(月)~5/5(土)
11:00~19:00(最終日:~17:00)
小林努4/30DM.jpg

図形的な構図を駆使して作り上げられる奥行きが独特の日本画です。
矩形で描き出されるビルディングがどこまでも続く光景が醸し出すアバンギャルドさには、独特の迫力があります。

☆早川知加子展
OギャラリーUP・S
東京都中央区銀座1-4-9 第一田村ビル3F
4/30(月)~5/6(日)
12:00~20:00(日:11:00~15:00)
早川知加子4/30DM.jpg

昨年の個展とGALLERY MoMoでの二人展が印象的だった早川さん。
今回の展示では手描きの作品が多めで、描かれる奇妙なキュートさを持った世界がさらにユニークなものへと広がっています。

・Allmage Les jeune展 ―日本画―
K's Gallery
東京都中央区銀座1-5-1 第3太陽ビル6F
4/27(金)~5/9(水)5/3~5/6休
12:00~19:00(土日:11:30~17:30)
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ちいさなスペースにコンパクトにまとめられた抽象の日本画。
なかでも折りに触れて拝見している渡邊史さんと早川剛さんが印象的でした。

渡邊さんの「水」の世界。水面に浮かぶさざ波のようなラインが緩やかな動きを生み出しています。

渡邊史 01 渡邊史 02

早川さんの作品からは、相変わらずの「熱」を感じます。
小品がずらりと並べられた一角。いつになくアグレッシブな風景を思い起こさせる作品群が並ぶ様は圧巻です。月を描いたような作品のダイナミックな静謐感アクセントとなっています。

早川剛 01 早川剛 02

1点だけ出展されていた大きな作品。
板の木目が生々しく残る画面の表面一面に広がる力強い赤。そこに散らばる黒の飛沫。相変わらずの高揚感に満ちあふれています。

早川剛 04

早川剛 03

☆伊藤存展覧会『NEW TOWNのスペース』
リトルモア地下
東京都渋谷区千駄ヶ谷3-56-6 B1F
4/28(土)~5/27(日)月休(4/30開廊、5/1休)
12:00~19:00
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大きなパネルの刺繍作品、多数のドローイング、台の上の配置によるインスタレーション、そして映像と、さまざまなスタイルの作品が出展されています。
捕らえ所のなさに戸惑いますが、逆にその「なんだろう・・・?」という素朴な疑問がキッチュな世界へと意識を導いてくれるような感じです。