トップページ > 触れるTOP > ex-chamber museum | 幕内政治が覗いたおすすめアートイベント情報  > 2007年10月アーカイブ

幕内政治が覗いたおすすめアートイベント情報
2007年10月アーカイブ

村上弘人 個展 ザ・リズム
Galerie Sho Contemporary Art
東京都中央区日本橋3-2-9 三晶ビル B1F
10/18(木)~11/17(土)日祝休
11:00~19:00(土:~17:00)
村上弘人10/18DM.jpg

Hiroto Murakami The Rhythm
Galerie Sho Contemporary Art
3-2-9-B1F,Nihonbashi,Chuo-ku,Tokyo
10/18(Thu)-11/17(Sat) closed on Sunday and national holiday
11:00-19:00(Sat:-17:00)
Google Translate(to English)

Galerie Sho Contemporary Artで開催されている村上弘人さんの個展です。
今、季節は秋が深まっていますが、春の彩りに溢れる明るくて暖かい色が広がって、キュートな世界が繰り広げられています。


そして、その色彩感に展示タイトルの「リズム」という言葉がさらにイメージに彩りを添えてくれます。
厚めの枠に張られたキャンバスに描かれた作品。側面にも描かれ、単に平面作品としてだけではなく、立体的なものとしての存在感も感じられるのも印象的です。
また、作品はそれぞれの表面に透明なニスのようなものが施され、艶やかに仕上げられています。それが明るい色彩に瑞々しさをもたらしているのもいい感じです。


メインスペース、入口を通って左手の一角には、ひとつの画面にひとつの種類の花がびっしりと並んで描かれています。


村上弘人03 村上弘人02

村上弘人01


初日に拝見したときには、軽やかな色彩により、ナイフで描かれた花のシルエットの重なりで、ハッピーな子どもっぽさを感じたのですが、こちらの一角に描かれた花はそれぞれ彼岸花、サルビア、紫陽花とその花の種類もしっかりと分かるほどにていねいに再現され、画面の中に緻密なリズムが構築されているような印象で、明るい色彩のキャッチーさと複雑でミニマムなパターンとのコントラストにより、かっこよく感じられます。


村上弘人05

村上弘人04

その向かいには、ナイフによる花がカラフルに描かれた作品が。
画面いっぱいに広がる花畑のイメージ。イージーなフォルムによる子どもっぽさ。
空から降るような風合いや、なかにはまるで回転しているかのような花の姿など、思いのほか動的なイメージがあって、ユニークでポジティブな雰囲気を感じさせてくれます。


村上弘人07

村上弘人08

奥の小さなスペースへと続くところには、さらにシンプルな構図の作品が展示されています。
空の明るい青と菜の花畑を思わせる鮮やかな黄色とで大胆に大きく分けられた画面。作品により、絵の具の盛り上がりで花弁のひとつひとつの存在を匂わせるものや、フラットな色面でさらに遠い大きな風景を思わせるものも。


村上弘人12

その一角を通過するとさらにシンプルな風景を描いた大きな作品が目に飛び込んできます。
作品のなかに登場する色も3つ、さらにおおらかな風合いを醸し出しています。
手前の細やかなパルスが奏でる複雑なリズムから、マレットでタムを叩いてその残響で組み上げる緩やかなリズムへ。。。


村上弘人10 村上弘人11

村上弘人09

ひとつの統一感の中で、いろんな構図の作品がていねいにインスタレーションされ、それぞれのコーナーから思い浮かぶイメージを、さらにそこから沸き上がるさまざまなリズムを楽しめる展示です。


村上弘人06

《10/23》
曽谷朝絵 プリズム
西村画廊
東京都中央区日本橋2-10-8 日本橋日光ビル3F
10/23(火)~11/17(土)日月祝休(10/29開廊)
10:30~18:30
曽谷朝絵10/23DM.jpg

明るく暖かみのある鮮やかな色彩によって、光を受ける水面のゆらぎや風景などが描かれています。
漆喰を思わせるざらついた下地が細やかな陰影をもたらしているようで、ていねいな描き込みとあわせて豊かなイメージを与えてくれるような印象です。

・・・ただ、樋口佳絵さんや町田久美さんのようなサディスティックなテンション感を持つクリエイションを紹介する西村画廊での展示というのがなんとなく馴染めず...。

ギャラリーを後にして、激しいタッチの作品を無性に観たくなったのが印象的でした。

《10/25》
大畑伸太郎 個展 ひかり
YUKARI ART CONTEMPORARY
東京都目黒区鷹番2-5-2 市川ヴィラ1階
10/25(木)~12/15(土)日月休(火水:事前予約制)
12:00~20:00
大畑伸太郎10/25DM.jpg

大好きです!
満を持してスペースを立ち上げたYUKARI ART CONTEMPORARYのオープニングにふさわしい、自然にその世界に入り込んでいける素敵な世界が広がっています。

《10/27》
WORM HOLE episode 9 赤羽史亮/星野武彦
magical,ARTROOM
東京都港区六本木6-8-14
10/20(土)~11/17(土)日月祝休
11:00~19:00
WORM HOLE10/20DM1.jpg WORM HOLE10/20DM2.jpg

個性的なクリエイションを二人ずつ紹介しているシリーズの第9弾。今回は男性のペインターがフィーチャ-されています。

1階の道路に面したいつもの空間では、赤羽史亮さんのすべてを呑み込むような暗く重い世界が。
画面に大胆に、盛られるように乗る黒い絵の具。その素材の力強さによって、作品と対峙し挑もうとするまでもなく、あっさりとその深みに嵌まっていくような印象です。
描く痕跡が全面に残るマチエルから白髪一雄らの時代の面影も感じるのですが、そういったある種分かりやすい手法を取り入れつつ、それによってしっかりと「何か」が描かれ、手法と世界とが合致してなんとも見応えのある展示となっています。この重々しさに呑まれるような感覚は痛快です。

星野武彦さんの作品は4階に展示されています。
赤羽さんの世界から一転して、イージーなタッチで描かれるキュートでメロウな世界がやわらかく空間に滲んでいます。
有機的なフォルムで描かれる人のシルエット。明るめの色彩と相まって、ふわふわとした感覚が伝わり、いとおしく感じられます。

岩尾恵都子展
GALLERY MoMo
東京都港区六本木6-2-6 サンビル第3 2F
9/29(土)~10/27(土)日月祝休
12:00~19:00
岩尾恵都子9/29DM.jpg

ギャルリー東京ユマニテなどでこれまでは意見したことがある岩尾恵都子さん。
これまでは、繊細でなめらかなグラデーションで独特の広がりがもたらされているドリーミーな世界の印象が強かったのですが、今回は流れるような線の重なりでの展開が印象的です。
おおらかな曲線の重なりによって、画面にもたらされる空間的なイメージ。そこに「ぽん」とかわいらしく乗る車や女の子を描いたワンポイントのモチーフが、軽やかな雰囲気を引き立て、楽しいイメージが浮かんできます。


岩尾恵都子06 岩尾恵都子05

岩尾恵都子04


赤や黄色などを織りまぜつつ、画面を覆う濃いグリーンと淡いグリーンのコントラストも心地よいです。
断崖や樹木が独特の奥行きで描かれていて、そのダイナミックさも痛快です。


岩尾恵都子02

岩尾恵都子03


1点のみ展示されていた水色の作品もいい感じです。
水色の光にのなかに佇む赤い服の女の子、シンプルでなんとも可愛げで。こちらのシリーズもいろいろと拝見したいです。


岩尾恵都子01

古田ゆかり展
ギャラリー戸村
東京都中央区京橋2-8-10 丸茶ビルB1
10/15(月)~10/27(土)日祝休
11:00~19:00(土:~17:00)
古田ゆかり10/15DM.jpg

宇宙、あるいは夜の空を思わせる、深みのある世界。
日本画特有のマッドなマチエルで、壮大な光景が描き上げられています。
見上げた空ではなく、むしろ天空から見下ろした空を思わせるのも興味深いです。


古田ゆかり03 古田ゆかり04

古田ゆかり02


正面に展示された大作の迫力も強く印象に残ります。
岩絵の具の渋味溢れる質感が、深遠さをさらに演出しているような感じです。


古田ゆかり01

長沢郁美展 Shelter
藍画廊
東京都中央区京橋3-3-8 新京橋ビル1F
10/22(月)~10/27(土)
11:30~19:00(最終日:~18:00)
長沢郁美10/22DM.jpg


コミカルな顔立ちのキャラクターが繰り広げるファニーな世界。
ぱっと明るい色調も印象的なクリエイション。


長沢郁美01


柄がプリントされた和紙が支持体の作品もあり、その模様が背景となってどこかユーモラスな人々の姿を引き立てているのも楽しいです。


長沢郁美03 長沢郁美04

長沢郁美02


小品から大作まで、それぞれのサイズで繰り広げられている世界が面白いです。
少し前に開催された青山のカフェでの展示を見逃していたので、今回チェックできて嬉しかったのと同時に、カフェスペースで観られたらまた違う面白さも感じられたかも、とあらためて後悔も湧いてきた次第...。


長沢郁美05

野口里佳「マラブ・太陽」
ギャラリー小柳
東京都中央区銀座1-7-5 小柳ビル8階
10/27(土)~11/30(金)日月祝休
11:00~19:00
野口里佳10/27パンフ.jpg

時間の感覚がなくなります。
それどころか、身体を置いて魂だけで対峙しているかのような錯覚すら覚えます。
じっくりと浸っていたい、至高の空間です。

小西真奈展「どこでもない場所」
ARATANIURANO
東京都中央区新富2-2-5 新富二丁目ビル3A
10/27(土)~12/01 (土)日月祝休
11:00~19:00
小西真奈2007DM.jpg

小西さんの作品はこれまでも折りに触れて拝見し、特に昨年のVOCA展以降の作品に感じるおおらかさが気持ちよくて、今回の展示も楽しみだったのですが、これまで以上にさらに描く世界のバリエーションも広がり、表情も豊かに感じられて、ただ作品の前に立つだけで心地よいのが強く印象に残ります。
同時開催の第一生命ギャラリーでの展示ももうすぐ始まり、そちらでの展示とあわせてじっくりと楽しみたいです。

LUST 海老原靖
WADA FINE ARTS
東京都中央区築地3-2-5 第2平和田ビル
10/23(火)~11/16(金)日月祝休
11:00~19:00
海老原靖10/23DM.jpg

多くのシリーズを展開し、それぞれで個性的な世界、風合いを繰り広げる海老原靖さん。
今回の個展では、やさしげに広がる白を背景に、繊細な線と淡い色調とで表現されるプリミティブでフェティッシュな世界が印象的な「LUST」のシリーズの作品が出展されています。


海老原靖104


緻密な線で描き上げられる髪の毛がつくり出すうねりと奥行き、時に鋭く、時に甘い視線、頬や耳にぽっと灯り、人の温もりをイメージさせるほんのりとした赤。
それらが一体となり、さまざまな要素が絡んでこちらのイメージが囚わるような錯覚を覚えます。


海老原靖103 海老原靖102

海老原靖101


どこか爽やかささえも感じさせる、独特な幽玄さも印象的です。
これまでひとつの展示でひとつのシリーズという展示を拝見しているのですが、機会があれば、同時に海老原さんの世界を堪能してみたいような気がします。


海老原靖106

海老原靖105

山下美幸 個展「リリパット・フォー・ミー」
BOICE PLANNING
神奈川県相模原市相原5-12-47
10/27(土)~11/25(日)土日祝のみ
13:00~20:00(初日:13:00~)
山下美幸10/27パンフ.jpg

一度、こういった展示法で観てみたかった...!
描かれる世界とともに、そのインスタレーションも実にユニーク、この空間ならでは。
BOICE PLANNINGのアーティストの紅一点、先に開催された「机上位」での女性らしい繊細さが印象に残っている山下美幸さんの個展です。

《10/28》
OPEN STUDIO[O*S 3.0]
OPEN STUDIO[O*S 3.0]
東京都小平市小川町1-2410
10/26(金)、27(土)、28(日)、11/2(金)、3(土)、4(日)
12:00~20:00
O*S3.0 10/26DM.jpg

武蔵野美術大学に近いアトリエが公開されるということで、行ってきました。
制作現場に伺うのは好きで、制作途中の作品を眺められたり、新たなクリエイションが見つけられたり、いろんな発見もあって楽しいのですが、今回もいろいろとその続きが楽しみな作品と出会えて満足!

藤田達樹さんのソーセージの写真。けっこうグロテスクにその姿を晒していて、かなりのインパクト。
ソーセージが藤田さんの作品とのことで、ほかにどんなけったいな作品を作るのか興味深いです。

来年早々に個展を控える渡辺泰子さんは、映像作品のマケットなどの展示。そのマケット自体がかわいらしいのと、そこから生み出されるものにもすごく楽しみになってきます。スペイシーな小品のインスタレーションもかっこいいです。

11月にASK?での個展が開催される和泉賢太郎さん。緻密な線描に施される色彩。その個展で出展される作品の制作途中のものを拝見したのですが、もうすでに充分な見応えのものとなっていて、それぞれの完成が楽しみで。

同じ部屋のうらうららさんの作品群の奇妙な魅力も印象的。

平岡正さんの木彫。電動ドリルで彫り上げられ、アバンギャルドな質感に仕上げられようとしているクラゲの作品も、完成が楽しみ。

ebcオープンアトリエ -Room-
ebcアトリエ
神奈川県川崎市麻生区高石1-11-1-1F
10/26(金)~10/28(日)
12:00~20:00(10/28:14:30~20:00)
ebc10/26DM.jpg

今回は、ライブアトリエが開催され、たくさんの方が集まり、女性ボーカルとキーボードとによるライブやケルト音楽の演奏、井上禎幸さんのアニメーション上映などで盛り上がり、実に楽しい心地よい夜が繰り広げられました。
深海武範さんの相変わらずのユーモラスな世界に感じる可能性、鑑賞者とのつながりを意識した金丸遥さんや山内唯志さんの展開など、個々のクリエイションも興味深いものも多く、いろんなかたちの楽しみを堪能した次第です。

川田英二 個展
AIN SOPH DISPATCH
愛知県名古屋市西区那古野2-16-10
10/13(土)~11/12(月)土日月のみ
13:00~21:00
川田英二10/13DM.jpg

Eiji Kawada solo exhibition
AIN SOPH DISPATCH
2-16-10,Nagono,Nishi-ku,Nagoya-shi,Aichi-ken
10/13(Sat)-11/12(Mon) only Saturday,Sunday and Monday
13:00-21:00
Google Translate(to English)

ふわりと広がるグリーンの心地よい濃さ。

AIN SOPH DISPATCHでの川田英二さんの個展です。

名古屋に行く前にいろいろとチェックしていてサイトを見つけたAIN SOPH DISPATCH。
洋服屋さんの奥のお家がギャラリーとなっていて、1階と2階とに展示スペースがあります。
1階は普段使いの部屋をそのままで、いつもの空間と近い雰囲気で作品を展示しているそう。


靴を脱いで、1階の展示を観た痕、2階へ。
こちらは展示を意識したスペースとなっていて、ホワイトキューブに川田さんの作品がインスタレーション去れています。

いろんな大きさ、かたちのパネルに張り込まれた紙の作品。
そのひとつひとつが、紙の白を背景に鮮やかでしっとりとした深い緑が乗って独特の奥行きを醸し出しています。
緑の色面のエッジが、ふわりとぼやけているところもあればくっきりとしているところもあったり。。。

パネル作品は、石をモチーフに描かれた銅版画を張ったもの。
確かに、手描きでは出し得ない、いかにも銅版画らしいしっとりとした風合いが感じられます。


川田英二02

川田英二01

作品によってはかわいらしい大きさのものや妙に長いのがユーモラスに感じられるものなどざまざま。
それら1点1点にゆったりとした壁面が与えられ、小さな画面であってもまるで遠い山のシルエットを思わせるような壮大なイメージも喚起させてくれます。


川田英二03 川田英二04

川田英二06

1点だけ展示されていた立体の作品。
全体が銅版画と同じ緑で彩色れていて、それぞれの作品に収められたシルエットのイメージをさらに具体的なものに押し上げてくれます。
また、表面の凹凸によって、深い緑にさらに醸し出される陰影や、適度な大きさなど、妙に味わい深いのも印象的です。


川田英二07

銅版の大きさとパネルのサイズとをあわせることで、画面の表面のエッジが揃い、パネルの立体的な感触が強く伝わって、そこに描かれる雰囲気と共に、その「もの」としての大きさも独特の味わいを放っています。

1階には版画をそのままシンプルに額装したものもあり、こちらはまた違ったテイストが滲み出ているような印象です。

ひとつの主題の作品で揃えた空間に広がるシンプルさも深く心に残ります。


川田英二05

森北伸 Nowhere man
白土舎
愛知県名古屋市中区錦1-20-12 伏見ビル地階
10/20(土)~11/17(土)日月祝休
11:00~19:00
森北伸10/20DM.jpg

Shin Morikita Nowhere man
Hakutosha
1-20-12-B1F,Nishiki,Naka-ku,Nagoya-shi,Aichi-ken
10/20(Sat)-11/17(Sat) closed on Sunday,Monday and national holiday
11:00-19:00
Google Translate(to English)


有機的な線、滋味溢れる色彩感で繰り広げられる知的なクリエイション。

ART@AGNESなどで知っていて、いつか伺いたいと思っていた白土舎での森北伸さんの個展です。

ほぼ事前の知識がないまま、ただこの日から始まるという情報だけで伺ったのですが、知的で渋味に溢れ、深い世界に一気に、しずかに引き込まれました。

作品ごとに繰り広げられるさまざまな世界。
一人の小説家の短編集を読むような感じ、それぞれの物語は違っていて、収録されるいろんな話を読んで一冊の本を読破した印象と近いような。。。
その風合いからひとりの人間が制作した統一感がしっかりと感じられて、なおかつそのユニークな統一感の中でさまざまな世界が繰り広げられているのがとにかく面白いんです。


森北伸08

この展覧会でいちばん大きな作品。
画面が広いだけあって、さまざまなモチーフが描き込まれています。
古い手描きの図を読み解くのに似たスリリングな感じや、大きな物語のさまざまな場面をひとつの画面に紡いでいったような壮大なイメージが、画面から緩やかに、しかしゆったりとした奥行きを感じさせながら伝わってきます。
描かれるさまざまなものをじっくりと眺めてそこから思い浮かぶ物語に思いを馳せたり、至る所に鉛筆でくしゃくしゃと記されたものからなにか言葉を読み取ろうとしてみたり...時間をかければかけるほど、懐の深い世界で応えてくれます。


森北伸04 森北伸03 森北伸02

森北伸01


そして、この作品の中に、登場人物が一人。
ギャラリーの方に教えていただいたのですが、それを見つけてさらに面白さが増して、広い画面で繰り広げられる物語がひとつに収束していく感覚を覚えた次第。


森北伸06

森北伸05

知的でユーモラスな風合いが、それぞれの画面から溢れています。
独特の渋い色彩と鉛筆による複雑で有機的な線が、仕上げに画面に施されているニスのようなものに封じ込められ、それが絵の中の世界をさらにフィクショナルなものへと仕立てているような感じがして興味深いです。


森北伸09 森北伸11 森北伸14

森北伸10

立体の作品もユニークです。
ギャラリーの一角、重ねられた箱の中にさまざまな素材で作られたもので繰り広げられているキュートでファニーなインスタレーション。それぞれのキューブの中には異なる色合い、異なる物語が。遊び心もふんだんに感じられて楽しいです。


森北伸12 森北伸13

1点だけ出品されている磁器のオブジェも面白い!
なめらかなフォルムでやさしさを感じる立像。
表面の焼物独特の質感も、味わい深さをさらに押し出してくれています。


森北伸15


で、まるで抜け殻がフードを被っているようになっている頭部、「顔は?」と思うわけですが・・・

森北伸16


素朴さが堪らなくて、思わず笑みがこぼれます。


黒いシルエットだけで描かれる人物が織り成すさまざまな世界に浸りながら、じっくりと心に沸き上がってくるストーリーを味わう、有機的で知的な刺激をいっぱい受けた展覧会です。

残念ながら森北さんとはお目にかかれなかったのですが、いろんなお話を伺えるともしかしたらもっとそれぞれの作品から醸し出されるストーリーに深みや奥行きがさらに増すような気がしています。
白土舎は来年のART@AGNESにも参加されるようなので、今から楽しみです!


森北伸07

南条嘉毅展 土世界 -The world of the soil-
COEXIST
東京都港区赤坂3-8-8-2F
10/18(木)~11/1(木)日休
11:00~19:00
南条嘉毅10/18DM.jpg

Yoshitake Nanjo exhitbiion -The world of the soil-
COEXIST
3-8-8-2F,Akasaka,Minato-ku,Tokyo
10/18(Thu)-11/1(Thu) closed on Sunday
11:00-19:00
Google Translate(to English)

その土地の空気をユニークなアプローチで提示する、南条嘉毅さんの個展です。
今回は、すこし前に制作された作品と、新作のドローイング、そしてインスタレーションが展示されています。

キャンバスの作品。
今回出展されているのは、モノトーンで描かれたものが中心。
昨年末に拝見したギャラリーエスでの個展での作品のベースにあるコンセプトが、今回の展覧会に出展されている作品に凝縮されています。

それぞれの作品の画面に乗る色は、そこに描かれた風景の場所から採取した土を定着させているもの。
独特の質感を持ち、背景の支持体の色に引き立てられて実に深みのある味わい深い色を発しています。

こういったユニークなプロセスとアプローチで描かれた風景は、さまざまな縮尺により、実にていねいに、精緻にそのシルエットが再現されています。
このシンプルさが、純粋にかっこいいです。その場所の住所が淡々と綴られた作品のタイトルもまた、情報としてただ存在するものを提示していて、そういった淡々とした姿勢にも強さを感じます。


複数のパネルによる組作品。
ひとつひとつに描かれるさまざまな光景、見上げたような遠い街並を思わせるものもあれば、足元の何気ないモチーフがピックアップされていたり。この構成のユニークさにも惹かれます。


南条嘉毅011 南条嘉毅009 南条嘉毅010

南条嘉毅008

他、同様にシンプルな構成の作品が並びます。
その場所がその場所であることが分かる最低限の要素のみをピックアップして描かれるシャープなシルエットが放つグラフィカルな感覚と、それが土であることの生々しさとのギャップも面白いです。


南条嘉毅014 南条嘉毅013 南条嘉毅012

南条嘉毅015

ドローイングの作品は、ギャラリースペースのガラスの壁面にインスタレーションされています。
この構成がまた、かっこいいんです。

1点1点の精密さ。線によって再現されるさまざまな風景や場面のシルエット。


南条嘉毅006


これらが大胆に重ねられ、パネルの作品以上にバリエーションに富んだ縮尺や場所などがひとつの塊となって迫ってきます。
ひとつひとつの紙に描かれているモチーフを堪能しても楽しめ、同時に全体による立体的な構成が構築する未来的な感触も興味深いです。


南条嘉毅004 南条嘉毅005

南条嘉毅007


モニターで上映されている映像。これがまた面白い!

一見、街を淡々と撮っただけの映像かと。
何でまたここにわざわざモニターで映してんのかな、と。


南条嘉毅002


これ、ある日の赤坂の映像なのですが...


・・・・。


ん~?

画面の左端のほう。よく見ると...


南条嘉毅003

南条さんが!Σ( ̄口 ̄;)


気付くと箒を掃いてる南条さんがいつの間にやら画面に登場。
箒を掃いてることは掃いてるのですが、赤坂の街を清掃しているわけではなく(いやもちろん掃いたぶんだけ綺麗になっているわけですから南条さんエライ)、赤坂の土を採取している最中。

歩道橋を箒と共にだんだんと下ってくるバージョンなど、いくつかのシチュエーションが収録されていて、笑えます。


で、採取した土はというと...

南条嘉毅001


しっかり再び赤坂の地に帰還。
ギャラリースペースの一角に敷かれ、南条さんらしいインスタレーションが展開されています。
初日はもっときれいな方形を保っていたのですが、数日を経てそこを通過した人々によりいい感じに荒れていて。
それにしても、よくもまあアスファルトだらけの赤坂でこれだけの土を採取できたなぁ、と。

身近にあるものを使うアーティストはけっこういて、例えば淀川テクニックの大胆さなど、それぞれにユニークなイマジネーションを発揮していて面白いのですが、南条さんのアプローチはそういった中でも異質で、作品に活かす精度の高さでは群を抜いているように感じられます。

初夏に開催された個展に伺えなかったのが今でも残念に思っているのですが、今後の展開がすごく楽しみです。


南条嘉毅016

鬼頭健吾 新作展 Luminary
KENJI TAKI GALLERY
愛知県名古屋市中区栄3-20-25
9/29(土)~11/10(土)日月祝休
11:00~13:00、14:00~18:00
鬼頭健吾9/29DM.jpg

Kengo Kito Luminary
KENJI TAKI GALLERY
3-20-25,Sakae,Naka-ku,Nagoya-shi,Aichi-ken
9/29(Sat)-11/10(Sat) closed on Sunday,Monday and National holiday
11:00-13:00,14:00-18:00
Google Translate(to English)

和み系前衛アート。


鬼頭健吾さんの個展に行ってきました。
KENJI TAKI GALLERYは、いつも初台のスペースでの展覧会を楽しみまていただいているのですが、いつか伺いたいと思っていた名古屋のギャラリーへ念願叶って伺えた次第。

1階で開催されている村岡三郎展の無彩色で展開される重厚で深遠、静謐な空間を抜け、階段で2階のスペースへと上がっていくと、薄暗いなかになにやら「サワサワサワ...」という音が。


うわぁ...>(・。・)...


回転する5つの床置きの風車。
4つの羽にはラメラメのテープによる装飾が施され、風車の中央部には瘤のように盛り上がる4つの電球。そのまわりに球体のビーズがぎゅっと詰まって配されています。


鬼頭健吾02


それぞれ異なる色、光を放ちながら、ふわふわと羽を回転させ、なんともファンタジックな空間を演出しています。

これまでトーキョーワンダーサイト渋谷やギャラリー小柳で拝見した、フラフープなどを使って空間全体をカラフルに染めあげるインスタレーションとは随分と異なる趣ながら、やはり鬼頭さんらしさ、至近で(といっても風車が回っているので近付ける距離は限界があるわけですが...)それぞれの風車を眺めたときのグロテスクな容貌によってユニークなテイストはしっかりと提示、発散しているように感じられるのもたいへん興味深いです。

つかみどころのない不思議な感覚に軽く襲われながら、でも椅子に腰かけてぼーっと眺めているといつまでも過ごしていられるこの心地よさは一体何、と。
名古屋市街をぐるぐると歩いてその疲れもあってか、ずいぶんと長いことこの空間いっぱいに広がる緩い雰囲気に浸っていました。


鬼頭健吾01

・・・この空間の奥、白幕をくぐると、平面の作品が展示されています。
細かい金色のラメが画面いっぱいにまぶされ、そこにくねくねと毛糸のような線が走ります。


鬼頭健吾08 鬼頭健吾09

鬼頭健吾07

今回の個展に出品された平面作品も、これまで拝見してきたものとは異なるテイスト。
しかし、うねる線や素材感などは鬼頭さんならでは。

さまざまなサイズのスクエアの画面で展開されるユニークな色彩感。至近で観ると金の粒子の凝縮した感じが醸し出すアグレッシブなパルス、複雑に重なり、絡み合う線による混沌とした動的な感覚により、イマジネーションを激しく、同時に緩く刺激します。

一転、距離をおいてみると、今度は画面全体から放たれるダイナミズムがぐんと迫ります。
極めて平面的であり、同時にたくさんの曲線によって独特の奥行きも演出されていたり。さらに、至近で観たときの線ひとつひとつの色のエッジが曖昧になって背景の金に溶け込み、新しい色が提示されているような印象も受けます。


鬼頭健吾05 鬼頭健吾04

鬼頭健吾03

ふたつの空間で繰り広げられる鬼頭さんのユニークなアプローチが堪能できます。
さまざまなスケールの感覚で、イマジネーションを揺さぶられて、「やられた~」っていう後味の心地よさ、痛快さも印象に残る展覧会です。


鬼頭健吾06

J.P.ホル『FORGOTTEN』
GALLERY ef
東京都台東区雷門2-19-18
10/19(金)~11/4(日)火休
12:00~21:00
J.P.HOL 10/19DM.jpg

J.P.Hol "FORGOTTEN"
GALLERY ef
2-19-18,Kaminarimon,Taito-ku,Tokyo
10/19(Fri)-11/4(Sun) closed on Tuesday
12:00~21:00
Google Translate(to English)


イタリア在住のオランダ人アーティスト、J.P.ホルさんの個展です。
GALLERY efの心地よい落ち着きに満ちた静謐な空間で、1階はインスタレーション、2階では映像作品が展示されています。


事前のインフォメーションなどを拝見していて、今回の展覧会はずいぶんかわいいものになるのかなぁ、と予想していたのですが、実際に拝見するとむしろ大人の雰囲気が充満しているように感じられます。
もっというと、アバンギャルド。
この感覚は、ふと耳に届くトイミュージックは軽やかに心地よく感じられて和めるけど、そのミュージシャンの音楽をアルバム1枚分まるまる対峙したらかなり難解なイメージが膨らんで嵌まった、というのに似ています。


1階のスペース。
足を踏み入れた瞬間に、シュールな緊張感が迫ります。


J.P.ホル04


頭部のみがかわいらしいキャラクタリスティックな動物の顔に変えられた剥製によるインスタレーション。
華やかな羽を纏う鳥たちの美しい姿と頭部とのギャップは相当にシュールです。そのギャップを、射すようなスポットがぐんと引き立てています。

空間の中央に凛とした姿の雉。
ほか、巣を作るように壁のそこかしこに集まっています。
イージーな風合いと、剥製による究極のリアリティ。
さらには、これらがもともと生きていたことを実感させることも、この空間に広がるアバンギャルドな雰囲気に拍車を掛けているよう思えます。

いつも使う「かわいい」では表現できない感覚です。


J.P.ホル05 J.P.ホル03 J.P.ホル02

J.P.ホル01

2階の映像インスタレーション。
こちらでは、モニター3台で、それぞれ異なる映像が同時に上映されています。
最初は同じ映像が時間をずらして流れているのかなと思いきや、それぞれに異なるタイトルも付けられていて、曖昧ですが主役も違ったり、いなかったり...。


J.P.ホル09 J.P.ホル07 J.P.ホル08


さまざまな素材=で作られたキャラクターが登場するアニメーション。
ヨーロッパの街並を思わせる風景や暖炉のある部屋の内装など、和の空間とのギャップも映像作品のキャッチーな感触を引き立てます。


J.P.ホル11 J.P.ホル10


それぞれの作品の時間ほぼ同じ長さだと思われますが(数分です)、それぞれの画面に目をやりながら眺めていると、ひとつの作品にタイトルが現れているときに別の画面では物語が展開中というのが続くこともあり、エンドレスな物語が延々と綴られていくような錯覚を覚えます。
さらに、それぞれの作品の物語の時間の経過もよく思い返すとけっこう差があったりするのも、ここで体感する時間の歪みに影響しているかもしれないです。


J.P.ホル06


他、カフェスペースの壁面やショーケース、2階の壁の棚などにも作品が展示されています。
確かにアバンギャルドな印象を受けたのですが、同時にやっぱりほっこりと和める、後味も心地よい展覧会です。
ギャラリーに置かれている資料の中のホルさんへのインタビューも面白くて、読むとこちらのインスタレーションに込められたメッセージやイメージをより実感できるような気がします。

PASSION FLOWER 福井江太郎展 SERIES FLOWER Vol.3
東邦アート
東京都中央区銀座8-9-13 銀座オリエントビル2階
10/15(月)~10/27(土)日休
11:00~19:00(最終日:~17:00)
福井江太郎10/15DM.jpg

PASSION FLOWER Kotaro Fukui exhibition SERIES FLOWER Vol.3
Toho Art
8-9-13-2F,Ginza,Chuo-ku,Tokyo
10/15(Mon)-10/27(Sat) closed on Sunday
11:00-19:00(last day:-17:00)
Google Translate(to English)


花のかたちを借りて表現される、壮大な世界。。。

東邦アートでの福井江太郎さんの個展です。
一昨年から3年連続で企画された「花」のシリーズの最終章。画面いっぱいに花弁を広げ、圧倒的な存在感を力強く放つ花の姿がダイナミックに描かれた作品が、薄暗い照明の中に浮かび上がる空間。


福井江太郎101

作品の中に登場する色の数は、絵の具の単位で勘定すると極めてシンプルです。
おそらくひとつの作品について、ふたつ、おおくて3つの色の数。
背景となる支持体の色も含めても3つ、あるいは4つ。。。

しかし、そのシンプルな色彩で繰り広げられる世界は実に壮大です。
たおやかに、おおらかに描き出される花弁の曲線のなめらかさ、花の中央部の細やかな描写。
すべてをコントロールできない、衝動的、情動的な何かを激しく画面に叩き付けるように繰り出される色彩の飛沫。
この相反する風合いによって生み出されるコントラストが、花の絵を花のイメージだけに留めさせず、そこに込められた宇宙の壮大さを、そして凝縮されるエネルギーの力強さを感じさせてくれます。


福井江太郎106 福井江太郎105

福井江太郎104


また、今回の作品に用いられた「黒」の美しさも印象的です。
照明を受けて輝く細かな粒子が混ぜ込まれた墨。その濃淡によって絶妙に描き上げられるグラデーションの深み。
濃く重なる部分では、粒子の輝きがその黒の色面にどこまでも遠くへと続いていくような深遠さを発し、薄く染まる箇所は儚げに果てなく広がるようなイメージが思い浮かんできます。


福井江太郎102

「花」のシリーズの最初の破壊的な風合い。画面に盛り上がる黒の塊が重々しく放つアグレッシブな力強さ、激しい熱さ。
昨年の、豪勢に張り巡らされた金箔を背景に可憐に咲き乱れる花菖蒲。遠い時代へとおおらかに馳せる思い。連綿と続く時間の壮大さ。

そして今回のダイナミックに描かれる花。画面から溢れる迫力と、どこまでも広がる、広がり続ける宇宙。

もちろん、それぞれが福井さんにとっての「名刺代わり」とも言えるオリジナリティ溢れるモチーフとなっていますが、そこに表現される大きな世界観に、あらためて圧倒された次第です。

これまでと同様に、「現在」を実感し、同時にさまざまな時間、空間へとイメージを広げながら味わいたい世界です。


福井江太郎103

志水児王:graph
SOL
東京都中央区銀座6-10-10 第二蒲田ビルB1F
10/15(月)~10/27(土)日休
11:00~19:00(最終日:~17:00)
志水児王10/15DM.jpg

Jio Shimizu : graph
SOL
6-10-10-B1F,Ginza,Chuo-ku,Tokyo
10/15(Mon)-10/27(Sat) closed on Sunday
11:00-19:00(last day: -17:00)
Google Translate(to English)

心地よい難解さ。

考え抜かれたアイデアによってさまざまな美しい残像を導くアーティスト、志水児王さんの個展です。
今回は、これまでと異なり、静止画中心の作品が展示されています。


志水児王004


詳細はギャラリーの事務所入口脇のキャプションにあるのですが、今回出展された作品はそのひとつひとつに緻密なコンセプトがあります。
緻密なのですが、大胆。
「こうすればどうなるか」ということを提示するために実際に行う作業の痕跡が、それぞれの作品から強く滲み出ているように思われ、そこに凄みを感じます。


ギャラリー入口左手の一角に展示された作品。
そのなかでメインの作品は、一見すると、表面に妙に見覚えのある艶を伴った深いブラウンの画面にランダムに大小の穴が散らばっています。
ランダムなはずなのですが、整然とした点の配列。


志水児王002


この画面、カセットテープのテープ部分のシート状態のものだそう。
「こういう形でも存在するのか...」という、よく考えればあり得るのですがこれまで思いもしなかった素材にまず驚いた次第。
そして、そこに並ぶ点の配列は、1冊の洋書のペーパーバックがもたらすルールに則っています。


志水児王001


このペーパーバックのすべてのページに存在するピリオドをページに並ぶ位置に忠実に1枚1枚のシートに転写し、それを重ねたのが先のブラウンの画面の作品。
同じ位置に重なるドットが多いところほど、その穴が深くなっているというもの。
さらに、録音テープのシートを用いることで、音声を連想させ、ドットがある部分では音声が途切れることを暗示した作品とのことです。

乱暴でない知的な行為の痕跡に、深く感じ入ります。


志水児王003

夜の闇の中に浮かび上がるさまざまなグラフィカルな残像を捉えた写真作品。
こちらはいかにも志水さんらしい、フュ=チャリスティックな雰囲気に満ちあふれています。
薄らと見受けられる光の像の背景の木陰のシルエットなどが醸し出すリアルな感覚にして静謐な闇の広がりと、光の残像が発する動的なイメージとのギャップに、一体どんなプロセスを経たのだろう、と。


志水児王006


キャプションによると、発光する振り子を真下から撮影した作品だそう。
驚きなのが、ここに並ぶ作品すべてが1回のスイングを捉えたもの、ということ。
ファインダーを開きっぱなしで撮影されることで、これほど鮮やかな像が浮かび上がるとは、と。


志水児王005

中央の台上に立てて置かれたレコード盤。
ここにはある周波数の音が刻まれているようで、そのサウンドをグラフィックに提示したのが奥のグリーンの光が波打つ先鋭な雰囲気が鮮烈に漂う作品の基になっています。


志水児王007

振り子の残像にしろ、音声にしろ、志水さんの写真では極めてシンプルな形での提示となっていますが、普段の生活の中にさまざまな「動き」や「音」に囲まれていることを考えると、その分だけのもっと複雑な美しい軌跡に囲まれているのか、ということに思いを馳せるとなんだか頭が冴えてくるような錯覚に陥ります。

さらに、志水さんの作品は実に未来的な雰囲気に溢れているのですが、その手法が思いのほかシンプルであるのも興味深いです。肝の部分が相当にアナログだったり。
志水さんのクリエイションが一堂に会する機会があればなぁ...。

《10/17》
塩田千春
KENJI TAKI GALLERY/TOKYO
東京都新宿区西新宿3-18-2-102
10/17(水)~11/24(土)日月祝休
12:00~19:00
塩田千春10/17DM.jpg

神奈川県民ホールギャラリーとの大規模な個展と会期をあわせて始まった塩田千春さんの個展です。
小品、ドローイング、写真作品と、コンパクトに塩田さんの世界を凝縮して味わえます。
スケールの大きなインスタレーションの基になっていると考えると、ところどころ作品によっては刺繍が施されているドローイングの世界はたいへん興味深いです。


YJP 1 今、絵画を描くということ 草川誠/佐貫巧/高倉吉規
gallery ART ANLIMITED
東京都港区南青山1-26-4 六本木ダイヤビル3F
10/17(水)~11/3(土)日火祝休
13:00~19:00
YJP1草川誠DM.jpg YJP1佐貫巧DM.jpg YJP1高倉吉幾DM.jpg

若手の3名のアーティストをピックアップしたグループショーです。
心臓をモチーフにした作品の草川誠さん、TWS本郷での個展も印象的だった佐貫巧さん、有機的な色の重なりで独特の世界を生み出す高倉吉規さん、奇妙さとライトか感覚とが同居するユニークな空間が作り上げられています。


青山悟「Crowing in the Studio」
ミヅマアートギャラリー
東京都目黒区上目黒1-3-9 藤屋ビル2F
10/17(水)~11/17(土)日月祝休
11:00~19:00
青山悟10/17DM.jpg

この秋、東京のアートシーンが届ける素敵なギフト。
最高です!


Kurage展
happa
東京都目黒区上目黒2-30-6
10/13(土)~10/27(土)日祝休
17:00~22:00

青山|目黒が共同で入るスペースで開催されている展示。
遅い時間の開場なのですが、通りに面するガラス張りの壁面からフューチャリスティックな神秘性を感じさせるインスタレーションが観られます。


Kurage01 Kurage04

Kurage02


スキーマ建築計画の畠中啓祐さんによる光ファイバーを用いた妖艶な曲線を描く照明と、BOICE PLANNINGの佐藤純也さんのペインティングなどが、薄暗い空間に展示。
光ファイバーの中に灯る光の粒子の仄かなきらめきが、佐藤さんのシンプルな構図の中に織り込まれる遊び心を照らし、緩やかな緊張感に包まれます。


Kurage03


《10/18》
南条嘉毅展 土世界 -The world of the soil-
COEXIST
東京都港区赤坂3-8-8-2F
10/18(木)~11/1(木)日休
11:00~19:00
南条嘉毅10/18DM.jpg

画面上に土の粉末を乗せ、その土地の臨場感を物質的にも提示する南条嘉毅さんの、ギャラリーエスで開催されて以来の個展です。
今回はさらにシンプルな色彩感で、白い画面に建築物のシルエットが幾何学的に描かれているものなどに加え、ドローイングも多数出品されています。
そして、モニター上映されている映像が面白い!


波濤の會
銀座松坂屋別館4階 美術画廊
東京都中央区銀座6-10-1
10/17(水)~10/23(火)
10:30~19:30(木金土:~20:00、最終日:~16:00)
波濤の會10/17DM.jpg

芸大デザイン科を修了、あるいは現在籍を置く若手のアーティストのグループ展です。
もうすでにおなじみのアーティストの今を実感できるありがたさ、嬉しさに加え、新しい個性が加わっていくのも楽しみな企画。

昨年度の芸大の卒業制作も印象的だった川勝綾さんの作品。フラットな黒の背景に、さまざまなサイズの白とグレーのドットによって描き出される動物のシルエット。無彩色の深みとキャッチーな表現方法、そして何より実にリアルな動物の姿が面白い作品です。

荒木知子さんは、下地に描かれた色彩の上から背景となる色を重ねることで、緩やかなグラデーションを持つ花のシルエットを描き出した作品。アプローチのユニークさに今後の可能性を強く感じます。

昨年は意見してもっとも印象的だった岡田直樹さん。細やかに彩色され、細密な色彩の重なりで描き出される女性の表情や女の子の顔。しばらく浸っていたい色合いに今回も惹き付けられます。


村上弘人 個展
Galerie Sho Contemporary Art
東京都中央区日本橋3-2-9 三晶ビル B1F
10/18(木)~11/17(土)日祝休
11:00~19:00(土:~17:00)
村上弘人10/18DM.jpg

キュートにデフォルメされ、明るい色彩が鮮やかな作品が空間を囲みます。
そして、例えば花畑の花のひとつひとつが矩形に描き出されることで、画面から溢れるリズムも印象的です。


季大純展
BASE GALLERY
東京都中央区日本橋茅場町1-1-6 小浦第一ビル1F
10/18(木)~11/16(金)日祝休
11:00~19:00
季大純10/18DM.jpg

奇妙なかわいさの毛虫から肖像画など、さまざまな手法の作品が揃います。
なかでも印象的なのが、入口を入って左手に展示されている黒の大作。
無彩色のダークな世界の中に現れるさまざまなものが、クールな世界を鮮烈に演出しています。


J.P.ホル『FORGOTTEN』
GALLERY ef
東京都台東区雷門2-19-18
10/19(金)~11/4(日)火休
12:00~21:00
J.P.HOL 10/19DM.jpg

もっと子どもっぽい、キュートなインスタレーションをイメージしていたのですが、足元を掬われてしまいました(汗)。
1階の剥製によるインスタレーション、2階の3つのモニターによる映像作品。さまざまなメッセージが伝わる世界が繰り広げられています。


《10/19》
市川裕司展
コバヤシ画廊
東京都中央区銀座3-8-12 ヤマトビル B1
10/15(月)~10/20(土)
11:30~19:00(最終日:~17:00)
市川裕司10/15DM.jpg

敢えて言うと日本画のカテゴリーに所属していながら、過剰に立体的な作品を制作し、独特のスタンスで存在をアピールする市川裕司さん。
今回もメインスペースに1点の巨大な作品のみが展示された、スケールの大きなインスタレーションを繰り広げていました。
それで、今回印象的だったのが、これまでは自身で加工していた骨組みやアクリル板のカットをこの作品では外注で行ったそうで、やはりその部分の精度が格段に上がり、市川さんが持つ世界の鋭さやダークさがより先鋭的に表現され、前衛度が増したように感じられたこと。
表面を這う白や、内側に広がる布の黒がその有機的な感触をさらに全面に押し出して力強く存在していました。


市川裕司0702 市川裕司0703 市川裕司0704

市川裕司0701


城戸悠巳子展 ~夢闇彩色~
麻布アートサロン
東京都港区麻布十番1-5-10
10/19(金)~12/20(木)日月祝休
11:00~19:00
城戸悠巳子10/19DM.jpg

歪んだような景色や人間の表情など、ドリーミーな風合いに仕上げられた世界を描き出す城戸悠巳子さんの個展。
それぞれに独立した世界を画面から発散させ、バリエーションに富むと同時に城戸さんの個性もしっかりと発揮されているのも印象的です。


木村了子 2days solo exhibition Prince come true
@ギャラリーエス
東京都渋谷区神宮前5-46-13 ツインエスビル1F
10/19(金)13:00~20:00、10/20(土)11:00~16:00
木村了子10/19DM.jpg

油画出身ながら、日本画の画材を用いてエキゾチックな世界を描く木村了子さんの屏風作品が、先日クローズしたギャラリーエスで2日間だけ登場。
屏風いっぱいに張り巡らされた金箔のインパクトがまずすごい!
そこに登場する王子様たちの仕草や表情からも、西洋的な衣服を纏っていながら、ジャパネスクを強烈に発散させているように感じられるのが不思議です。
そこかしこに描かれる木々や花、動物たちのリアルさも白眉。

油絵をなさっていたアーティストが表現する日本的な世界はおおらかな大胆さが痛快で、すごく面白いです。


木村了子004 木村了子006 木村了子007

木村了子002 木村了子003 木村了子005

木村了子001


《10/20》
川田英二 個展
AIN SOPH DISPATCH
愛知県名古屋市西区那古野2-16-10
10/13(土)~11/12(月)土日月のみ
13:00~21:00
川田英二10/13DM.jpg

白地に深い発色で現れるグリーン。
銅版画による作品で、パネルに張り込むユニークな提示方法と、石をモチーフにした、顔料と紙のふたつの色による素朴な画面構成が印象的です。


森北伸 Nowhere man
白土舎
愛知県名古屋市中区錦1-20-12 伏見ビル地階
10/20(土)~11/17(土)日月祝休
11:00~19:00
森北伸10/20DM.jpg

鉛筆でくしゃくしゃと描かれ、文字列を連想させる線の凝縮。
細身の人のシルエットが織り成す仕草。
つやつやに磨き上げられた画面の奥に繰り広げられるさまざまな場面が面白く、加えて渋い色調も印象に残ります。
平面作品以外も面白い!


サイクルとリサイクル Cycle and Recycle めぐりめぐる形のイメージ
愛知県美術館
愛知県名古屋市東区東桜1-13-2
9/7(金)~11/4(日)
10:00~18:00(金:~20:00)
サイクルとリサイクル.jpg

国内外のアーティストの展示がそれぞれの展示室で個展形式で展開する企画展。
展示タイトルにあるように、それぞれの世界に輪廻転生を現す「サイクル」と再利用を示す「リサイクル」の要素が織り込まれています。

ギャヤリエ・アンドウでの個展で拝見している篠原武史さんの作品。なめらかなフォルムと美しい仕上げによって繰り広げられる世界。壮大な広がりと、篠原さんの人柄とがそれぞれの作品と食う官途から沸き上がってくるように感じられ、深いやさしさに包まれたような印象が心地よいです。

竹村京さんの展示室には、主に手描きの上に刺繍が施された布が被さった大きな作品が、壊れたカップなどを白い布で包んだ作品とあわせて展示されています。
若干暗めの照明で、タカイシイギャラリーでの個展のときよりもぐっと深遠な世界が広がっています。

大巻伸嗣さんは、資生堂ギャラリーなどで展示された、床に岩絵の具の顔料で型を使って描いた花が広がるインスタレーション。これがすごく気持ちいい...。
天井に薄い白幕が張られ、軽い圧迫感を伴った空間となっていて、それがすでにたくさんの人によって踏まれ、そのフォルムをほぼ失い、鮮やかな色彩が滲む床面の浮遊感がより実感できて、しばらく佇んでいたくなるような心地よさに包まれます。

他、鷲見麿さんの圧巻の筆致、スパイラルホールで拝見した手塚愛子さんの大作との再会、床面に置かれた赤い表紙の本が「あかんべぇ」をしている舌のようで面白いピーター・ヴュートリヒのインスタレーションなど、ユニークな構成の空間を楽しんだ次第です。


AI OHKAWARA SOLO EXHIBITION
NODA CONTEMPORARY
愛知県名古屋市中区栄3-32-9
10/5(金)~10/25(木)月祝休
11:00~19:00
大河原愛10/5DM.jpg

これまでも都内での展示でたびたびチェックしている大河原愛さんの、中京地区でのはじめての個展。
これまで繰り広げられてきた大河原さんのさまざまな世界が一堂に会し、独特のムードで充満しています。


大河原愛@NODA01 大河原愛@NODA05

大河原愛@NODA06


大作を中心にずらりと並び、空間を囲みます。
ピンクのタイツ生地を取り込んだ小品のお洒落なアバンギャルドさも印象的。


大河原愛@NODA03

大河原愛@NODA02


自分の色彩感、自分のモチーフ、そういったものをしっかりと手にしたアーティストというイメージがある大河原さん。
カラフルな色彩と鈍い色彩とがひとつの画面で強烈なギャップを生み出し、シャープなセクシーさとアバンギャルドさとが力強く共存する世界がこれからどう展開していくかも楽しみです。


大河原愛@NODA04

鬼頭健吾 新作展 Luminary
KENJI TAKI GALLERY
愛知県名古屋市中区栄3-20-25
9/29(土)~11/10(土)日月祝休
11:00~13:00、14:00~18:00
鬼頭健吾9/29DM.jpg

和み系前衛アート。
ふたつの空間に区切られ、手前では煌めくインスタレーションが、奥のスペースでは平面の作品がそれぞれ展示され、インスタレーションでは一瞬「え?」と思わせながらも実に鬼頭さんらしい世界が繰り広げられています。

第81回企画 日本画滅亡論
中京大学アートギャラリー C・スクエア
愛知県名古屋市昭和区八事本町101-2 中京大学センタービル1階
9/18(火)~10/20(土)日祝休
9:00~17:00
日本画滅亡論DM.jpg

参加アーティストのクレジットを拝見してどうしても観ておきたかった展覧会。
幅広い世代のユニークなクリエイションが、日本画を「滅亡」させるのとは反対にぐんとその表現の世界を押し広げているような印象を強く覚えた次第。

ちいさなスペースにぎゅっと詰め込まれた力作群。
まず、三瀬夏之介さんの、いつになく具体的なモチーフをあからさまに登場させてポップに描き上げられた混沌が眼前に登場し、その痛快さに心が弾みます。
山本太郎さんの金屏風に咲く朝顔。ブロック塀の上の黄緑色のフェンスに這う蔦。シチュエーションのリアリズムが山本さんならではで、思わず笑みがこぼれる世界。
山口晃さんの作品は問答無用のかっこよさ。俯瞰したときの日本画的なクールネス、そこかしこに忍び込むメカニカルなモチーフが発する未来的な感覚とのギャップが堪らない!

ギャラリー山口とギャラリー58でそれぞれ個展を拝見してダイナミックな構成が強く印象に残っていた二人のアーティスト、木島孝文さんと佐藤裕一郎さんの作品は、外の会場に展示。
木島さんからも、個展の際に「名古屋ではこの作品が立てて展示されます」と伺っていたので楽しみだったのですが、やはり圧巻!
縦長で明るい中で拝見すると、そこに描かれている竜の姿がぐんと迫って感じられ、観に来てよかったなぁ、と。
佐藤裕一郎さんの作品も、うねるような画面が俯瞰できてよかったです。

しかし...


日本画滅亡論01


orz

ちょうどイベントの開催準備中で至近で見上げることは叶わず...。

藤城ゆう子展
GALLERYゆう
岐阜県大垣市丸の内1-34
10/20(土)~10/27(土)
12:00~18:00(最終日:~17:00)
藤城ゆう子10/20DM.jpg

画面を覆い尽くす細密なパターン。
もともと銅版画をなさっていた藤城さんの、銅版画とペン画が展示されています。
ちいさな画面のなかにびっしりと凝縮された緻密な線が織り成すミニマムなリズムはどこか軽やか。そして、手描きだからこそのぎりぎりの歪みが、若干離れて眺めたときにおおらかな波をつくり出しているのも印象的です。

以前から存じ上げていて、伺ってみたいと思っていたGALLERYゆう、遅い時間になってしまい、わざわざお待ちいただいて恐縮、そして感謝です。
(写真がうまく取れておらずたいへん申し訳ないのですが、少しでも藤城さんの細やかなクリエイションを実感していただければ幸いです)


藤城ゆう子02

藤城ゆう子01

河田政樹 観光
GALLERY CAPTION
岐阜県岐阜市玉姓町3-12 伊藤倉庫
9/15(土)~10/20(土)日月休
12:00~18:30
河田政樹9/15DM.jpg

月刊ギャラリーの展覧会案内でも紹介して、足を運んでおきたかったGALLERY CAPTION。河田政樹さんの個展の最終日ということもあり、閉廊時間を過ぎていたのですが、ご厚意でお待ちいただいて、行ってきました。

ずいぶん遅い時間に伺ってしまったのですが、時間の感覚が一瞬なくなってしまうような、眩しい陽射しが溢れる明るい空間が作り上げられているのがまず印象的です。


河田政樹04


床に置かれたたくさんの鉢植えの植物、鬱蒼とした森もしくは植物園(どちらか分からないのですが...)を撮影した写真、植物の柄がプリントされた布をパネルに張り、ペインティングが施された作品など。


河田政樹05 河田政樹01

河田政樹02


それぞれがランダムに展示され、ギャラリーの床のナチュラルな木目と照明の明るさとで、まるで早朝のような気持ちいい雰囲気が広がっています。


河田政樹08 河田政樹06

河田政樹07


そういった作品の中に1点、駅のホームに佇む女性の写真が紛れ込んで展示されていたのが深く印象に残ります。
この作品だけ違うシチュエーションなのに、実に自然に溶け込んでいて。


河田政樹03


河田さんは文庫本など他にもユニークな作品があるようなので、またいろいろと拝見したいです。

《10/21》
「沈黙から」塩田千春
神奈川県民ホールギャラリー
神奈川県横浜市中区山下町3-1
10/19(金)~11/17(土)
10:00~18:00
塩田千春10/19パンフ.jpg

圧巻のインスタレーション。
写真作品でのオカルトチックな雰囲気が、実際の空間のなかに入ると実に美しく感じられます。

三宅砂織 CONSTELLATION
Yuka Sasahara Gallery
東京都新宿区西五軒町3-7 高橋工芸社ビル3F
10/13(土)~11/17(土)日月祝休
11:00~19:00
三宅砂織10/13DM.jpg

Saori Miyake CONSTELLATION
Yuka Sasahara Gallery
3-7-3F,Nishi-gokencho,Shinjuku-ku,Tokyo
10/13(Sat)-11/17(Sat) closed on Sunday,Monday and national holiday
11:00-19:00
Google Translate(to English)

シャープでスウィートなファンタジー。

Yuka Sasahara Galleryでの三宅砂織さんの個展です。
それぞれがたいへんユニークなメディアを取り入れ、幅広い手法によって表現されるファンタジックな光景、場面。展覧会タイトルの「CONSTELLATION」を調べると、「星座」が第一義にあり、続いておそらくそこから派生した「きらびやかな群れ」というような意味が出てきます。まさにタイトル通りのクリエイティビティ。


まず、アルミニウムのプレートを支持体としたドローイング。


三宅砂織01


表面がざらりとした感触、そこに白の絵の具で細かく、メリーゴーランドのシルエットが描き出されています。
つや消しのシルバーとホワイトで、物質的な感触も強く全面に押し出しつつ、さらに垂れる絵の具の痕もそのままに。。。
かわいらしく、凛としたモチーフを取り上げていながら...というより、そういったモチーフを虎解ているからこそ、よりアバンギャルドな雰囲気が充満しています。


三宅砂織04 三宅砂織05 三宅砂織03

三宅砂織02

さまざまなスタイルのドローイングも、ユーモアが不和エリと織り込まれている感じが面白いです。
銅板のオブジェとあわせて展示された作品。ふわりとした彩色と、銅板の物質的な生々しさとのコントラストが鮮烈で、独特の深みが感じられます。


三宅砂織10 三宅砂織09 三宅砂織11

三宅砂織08

この他にも、エスキースっぽい作品や、デュマスを思わせる深い色彩で描き出される世界など。


三宅砂織06

三宅砂織07

さまざまな作品の中で、いちばん印象的なのが、フォトグラム作品。
どういう行程を経て制作されるか分からないのですが、モノクロームの画面に広がる大小のドットとまるで何かの液体が流れた痕のようなグラデーションとによって、煌めくような透明感と神々しさが溢れる豊かなで深遠な世界が広がっています。
ひとつひとつのドットが、オーロラのように波打つ背景が、画面上に現われるさまざまなものを描き出す線が、天体の光のように輝き、画面に浮かび上がっています。
これほどまでにきらびやかな風合いを感じさせるモノクロームの世界は他にないかも...というイメージさえ持った次第です。


三宅砂織14 三宅砂織15

三宅砂織13

もともとは版画をなさっていた三宅さん。女の子らしい爛漫な雰囲気が、版画制作で育まれたイマジネーションによってたいへん個性的な世界が作り上げられているような印象を受けます。
また新たな手法を手に去れるかも知れないですし、ここに提示された手法を更に押し進められるかも知れない...そういうことを考えると、今後の展開もたいへん楽しみになってきます。


三宅砂織12

泉東臣展
ギャラリー・ショアウッド
東京都港区南青山3-9-5
10/9(火)~11/1(木)日祝休
11:00~18:00
泉東臣10/9DM.jpg

Haruomi Izumi Exhobition
Gallery Shorewood
3-9-5,Minami-aoyama,Minato-ku,.Tokyo
10/9(Tue)-11/1(Thu) closed on Sunday and national holiday
11:00-18:00
Google Translate(to English)

響きあうふたつの世界。

泉東臣さんの個展です。
泉さんというと、過剰なほどに立体的に作り込まれた画面で描き出される渋い表情の花などの作品が印象的ですが、今回は名刺代わりといってもいい立体的な作品に加え、敢えてその質感を封印し、フラットな画面の作品も多く出品されていて、異なるふたつの質感の作品が展示されています。


泉東臣002

平面的な作品は、本格の香りが鮮烈に漂います。
ほんの僅かに画面浮かび上がる蓮やすすきの姿。心に沈むような深い色調で、さりげない風合いと落ち着いていて豊かな表情が実にていねいに再現され、さまざまな景色の中の植物の姿が見せる仄かで刹那的な輝きが静かに広がります。


泉東臣003

泉東臣004

今回の個展では、これまで泉さんの作品には多用されなかった明るい色彩が登場しているのも印象的です。
茶系の渋味溢れる色彩が多かったのですが、ケレン味なく澄み広がる深い青であったり、ぽっと灯るようなかわいらしい赤であったり、それぞれの色が持つ個性を引出し、それによって作品の中の世界の豊かさが引出されているような感じです。

ころころと咲き誇る梅の花のかわいらしさ。渋味と共に、どこかユーモラスな表情もたたえています。


泉東臣009

泉東臣008

もちろん、立体的なマチエルの作品の重厚感、存在感はやはり格別です。
木、あるいは石を彫り込んだかのような独特の質感を伴った背景に、小さな草花が可憐な姿を現します。


泉東臣007 泉東臣006

泉東臣005

そして、今回は屏風の大作も出品されていて、壮大な景色が描き上げられています。
月が浮かぶ深い青の背景。そのまま明け方の空の深い色を思わせ、そこに生える松林の臨場感に圧倒されます。
さわさわと松の葉が風に吹かれて擦れる音が聴こえてきそうな...。


泉東臣001


平面的な作品については、膠などを使って立体的な要素を入れるとその工芸的な部分が全面に出て、純粋な「絵画」としての部分が隠されてちまうことがあるように感じられることもあるのですが、それを敢えて封じ、隠せない状況で「勝負」しているような力強さ、凛としたスタンスが強く感じられます。
一方で、やろうと思えばここまでやれる、と高らかにアピールするかのような立体的名作品と。

ふたつの表現によって、泉さんが繰り出す風景。ぜひ直にご覧いただきたい世界です。

ムラタ有子 新作絵画展
GALLERY SIDE2
東京都港区東麻布2-6-5
10/12(金)~11/15(木)日月祝休
11:00~19:00

Yuko Murata New Works
GALLERY SIDE2
2-6-5,Higashi-azabu,Minato-ku,Tokyo
10/12(Fri)-11/15(Thu) closed on Sunday,Monday and national holiday
11:00-19:00
Google Translate(to English)


GALLERY SIDE2でのムラタ有子さんの個展です。

今年開催されたムラタさんの展覧会はどちらも印象的。
ポーラミュージアムアネックスでの二人展、暗めの照明のなか、スポットが当たって壁にムラタさんの世界が灯されたような渋さと静謐感。
IIDギャラリーでの個展は床に敷き詰めれた芝の緑の鮮やかさとのコントラストによって醸し出される爽快な広がり。

それぞれ、特別な構成の展示でムラタさんの作品の面白さ、素晴らしさを引き出していたのですが、そのふたつを経て今回開催される、ギャラリーでの展覧会では、すべて新作によるオーソドックスな展示が繰り広げられています。

しかし、前のふたつの展覧会で得たムラタさんが描く世界へのイメージの豊かな広がりもあり、シンプルな構成でありながら、そこからさらに深くいろんなイメージを得られる、素敵な展覧会となっているように感じられます。

・・・と、いろいろと宣ってみましたが、もう、単純に楽しいんです~!

まず、今回あらたに登場したシリーズ。
下の画像の右、三色に染まる背景に広がる素朴な枝振り。


ムラタ有子@SIDE2 04


特にこのシリーズに命名はされていないようですが、3点、今回出品されています。
これが・・・もう堪らんのです。

最初は同じ場所の違う時間を描いたのかな、と思ったのですが。。。
自分の想像を確かめるべく、作品のタイトルを確認。

!Σ( ̄口 ̄;)


敢えてここでは書きませんが...


なんだこの説得力はぁぁぁ!!!Σ( ̄口 ̄;)

そう提示されるとそう見えるこの面白さ、思わず感涙してしまいそうなほどに激しく納得した次第。
・・・というか、僕のユーモアのツボ直撃のプレゼンテーションなのです。最高。

もとい。
これまでムラタさんの作品に登場しなかった鮮やかな色彩のコントラスト、色と色とが接する部分の緩やかでなめらかなグラデーション。
このシンプルさはムラタさんの新たな真骨頂。こちらの展開が今後もすごく楽しみです。


シリーズではないのですが、こちらの作品もムラタさんのあらたな一面を見せてくれています。
月へと続く階段。
たったふたつの色彩で、ちいさな画面の中で繰り広げられる、渋くて壮大な世界。
離れて眺めると、遠くに灯る月の光の独特のかわいらしさがなんともいい感じ。素朴で、楽しげで。


ムラタ有子@SIDE2 02

ムラタ有子@SIDE2 01


至近で眺めると、板に直接絵の具が乗ることで得られる斑が織り成すマチエルに、光を受けてもたらされる絵の具の油分の輝きと細やかな影とが現れ、その「もの」としての美しさがぐんと伝わってきます。


ムラタ有子@SIDE2 03

おなじみの動物のシリーズも相変わらずユーモラスな仕草と表情で佇んでいます。


ムラタ有子@SIDE2 06


そこに見受けられるさまざまなツッコミどころ。
つぶらな目で何見てんだろ、とか、

なんでグーなんだよ!Σ( ̄口 ̄;)

とか。
そういうところも楽しいんです。


ムラタ有子@SIDE2 08 ムラタ有子@SIDE2 07 ムラタ有子@SIDE2 09

ムラタ有子@SIDE2 05

事務所のスペースには紙に油彩の小品が数点展示されています。
こちらは窮策も含まれているとのことですが、いちばん手前に展示された風景の新作が、また素敵で。
ぺたぺたと描かれる原風景に浮かぶ銀の月。
こんなにかわいらしくて壮大な世界って、そんなにないような気がします。


ムラタ有子@SIDE2 10

2種類用意された2008年のカレンダーもキュートです。
こうやってプリントされると、独特の表情の動物たちのかわいらしさが引き出されます。


ムラタ有子@SIDE2 11

素直な色彩で描き出される素朴さ。
キャンバスなどでなく、パネルに直接描かれることで引き出される油絵の具の美しさ。
キュートでキャッチーでポップで、それでいて仄かに広がる純粋な淋しさや孤独。
そして、なにより、何故か思い浮かぶとてつもない強さ。

この孤高の存在感、ぜひ直に作品と対峙して感じ取ってほしいです。

第4回 REUNITED展
横浜市民ギャラリーあざみ野
神奈川県横浜市青葉区あざみ野南1-17-3 アートフォーラムあざみ野内
10/14(日)~10/21(日)
10:00~19:00(初日:13:00~、最終日:~16:00)
Reunited展10/14パンフ.jpg

REUNITED vol.4
Yokohama Civic Gallery Azamino
1-17-3,Azamino-minami,Aoba-ku,Yokohama-shi,Kanagawa-ken
10/14(Sun)-10/21(Sun)
10:00-19:00(opening:13:00-,last day:-16:00)
Google Translate(to English)

現代の油画のアーティストをピックアップし、今年で4回目となる企画。

僕のイメージでは、油彩画はおそらく技法としては100年くらい前にやり尽くされていると思っていて、だからこそ今の油彩は技法的な「どう描くか」よりも「何を描くか」というテーマが大事になっている気がしています。
そういったなかで、今回の企画は具象抽象程よいバランスで取り混ぜられ、さまざまな個性が揃えられて、見応えもあります。
加えて、抽象画は言うに及ばず具象表現も幅広く、リアルタイムの油絵の懐の深さも実感した次第。

佐藤美術館で開催されていたころに出展された作品が印象に残っている伊東明日香さん。
これまで拝見してきた作品はコンセプチュアルなものが多かったのですが、今回出品された作品はシンプルには花が描かれた作品。
画面を覆う強めの発色の背景に、花弁の可憐な表情がていねいに再現され、それらが持つ色彩の艶やかさや仄かな風合いなどがぐんと引き立てられているような印象です。、さまざまなイメージを喚起する表情豊かな色彩感に清々しさも覚えます。


Reunited伊東明日香02

Reunited伊東明日香01

昨年のOギャラリーの個展もたいへん印象的だった今村綾さん。
その個展では夜をイメージさせる暗く澄み切った色彩の中に浮かび上がるさまざまな色彩の光の表情が鮮やかに表現されていましたが、今回は広い画面に風景全体の像が今村さんらしい光のグラデーションによって立ち上がり、フューチャリスティックな感触が鮮烈に放たれています。


Reunited今村綾02

Reunited今村綾01

石井弘和さんの作品はユーモアが緩~く滲み出ていて楽しいです。
明瞭すぎて意味不明(てオイ)な歌詞が画面中央に書きなぐられる作品があるかと思えば、その一部が鳴り響くように画面を横切っているものなど、シュールなシーンがユーモラスな姿のキャラクターによって繰り広げられています。
そして、大きな青の中に溶け込んでいくそのキャラクターが何故か清らかに感じられるのも不思議だったり。


Reunited石井弘和02

Reunited石井弘和01

石黒元嗣さんの作品は、並ぶ3面の画面がひとつの色彩で塗り上げられています。
自らが表現したいものに対する迷いが強く感じられる作品ではありますが、こういった作品の面白さを引き出す横浜市民ギャラリーあざみ野の広い床面によって、ぐんと離れて眺めたときに鮮やかな淡い青の鮮やかさが印象に残ります。
以前の作品にはダイナミックな画面にさまざまな色彩のグラデーションが現れていて、この続きがどういう方向へ向かっていくか興味深いです。


Reunited石黒元嗣01

具象画の杉山優子さん。
一貫して寂れた風景を取り上げているようで、鈍い空の表情や錆びて独特の味わいを醸し出す鉄扉の風合いなどがキャンバス上に臨場感たっぷりに再現されています。


Reunited杉山優子01

山本誠さんの作品も以前の同企画で拝見していて、そのときは徹底した具象表現の力強さが印象に残っているのですが、今回は真っ白の画面の作品が出展されていて驚いた次第。
画面の中に施される凹凸感、油画としては敢えて過剰と思える立体的な表現が、その白によって引き立てられているように感じられます。かなり実験的でもあり、ここからコンテンポラリーへと傾倒していくのか、この風合いで具象表現に強く訴える作風を確立していくか、たいへん興味深いです。


Reunited山本誠04 Reunited山本誠05

Reunited山本誠03


強い発色の小品も展示されています。
アボカドの表面のゴツゴツとした感じ、壁の風合いがリアルに再現されているところなどが印象的です。


Reunited山本誠01

Reunited山本誠02

西川克己さんの作品は実にオーソドックス。
律儀さが心地よい風景画です。
構図の正直さと言うか、古めかしい建築物や自然の光景がもっとも真っ当な姿で描き出され、連綿と続くメインストリームの力強さややさしさを強く感じます。


Reunited西川克己02

Reunited西川克己01

このほか、もうすぐWada Fine Artでの個展が始まる海老原靖さんのおなじみのシリーズや、湯浅加奈子さんのキュートな世界、武井誠さんの独特のマチエルを持つ風景画など、それぞれが油彩で追求する世界をじっくりと堪能できた次第です。
それぞれの今後の展開も楽しみです。


Reunited 01

秋葉シスイ 個展
フタバ画廊
東京都中央区銀座1-5-6 福神ビルB1F
10/15(月)~10/21(日)
11:00~19:00(最終日:~16:00)
秋葉シスイ10/15DM.jpg

Shisui Akiba exhibition
Futaba Gallery
フタバ画廊
1-5-6-B1F,Ginza,Chuo-ku,Tokyo
10/15(Mon)-10/21(Sun)
11:00-19:00(last day:-16:00)
Google Translate(to English)

眼前に広がるフレッシュな静謐感

フタバ画廊での秋葉シスイ さんの個展です。


ギャラリーに一歩踏み入っただけで、どこまでも遠くへと続いていく...ずっと向こうに空と平原とが真直ぐに接して、その境界は曖昧にぼやけている...ぱっと直感的に、しかし静かに、穏やかに孤独な景色の広がりが迫ってきます。


秋葉シスイ04


DMに使用された作品、いちばん広い壁面に、まるであつらえたかのような大きさの大画面で、その臨場感にいきなりこの空間の印象を素敵なほうへと持っていかれてしまいます。


すべての作品は、ほぼ同じ構成で展開しています。
ぼやけた地平線で接する大地と空。
そこにひとり佇む人の姿。
ただ呆然と、前方を向く人の佇まいからはさまざまなイメージが思い浮かべられます。


秋葉シスイ02


ギャラリースペースに展示された作品群は、多くが大地を描く深い緑の濃厚さが醸し出す重厚感に、それぞれ雲が重なるように湧いている空もあれば、真っ白に迫る空、地面の緑と呼応するように重い色に染まる空など、さまざまな表情で現されています。
その空の色彩が、佇む人の心のイメージにさまざまな作用をもたらし、空間にしっかりと筋の通った統一感を発しつつ、いろんな場面を提示しているような感じがするのも興味深いです。


カウンター脇にはひときわ明るい色彩の作品が。
登場する人の数も3人、人々のつながりは何故か僕は感じないのですが、それでも仄かに滲み渡る幸福感というか、ふわりと軽やかな感触が印象的です。


秋葉シスイ03

いちばん奥の壁に展示された作品のみ、誰も登場していない...
この1点が、この空間のなかで紡がれる物語にぐんと奥行きを、深みをもたらしているように思えます。


秋葉シスイ01

ふわりと滲むようなフォルム、シルエット。
統一感のある色調、重い色彩が多く使われていながら、その鮮やかさ、清々しさに惹かれます。

何より、画面の大きさに関らず・・・無論、大きな画面の作品から感じる臨場感は格別ではありますが...伝わってくる画面のなかの広がりは感動的です。

瞬間的に「・・・ああ、いいなぁ...」と爽やかな高揚感に包まれた次第です。


秋葉シスイ05

秋葉シスイ06

NEXT DOOR Vol.4
T&G ARTS
東京都港区六本木5-9-20
10/11(木)~10/25(木)日月休
11:00~19:00
NEXT DOOR vol.4 DM.jpg

NEXT DOOR Vol.4
@T&G ARTS
5-9-20,Roppongi,Minato-ku,Tokyo
10/11(Thu)-10/25(Thu) closed on Sunday and Monday
11:00-19:00
Google Translate(to English)

若手アーティストを紹介する企画も今回で第4弾。
男性のみだった前回とは打って変わり、1階のギャラリースペースが男性アーティスト、バーエリアと2階が女性といった具合に構成され、さらに5名すべてが異なるメディアというバリエーションに富んだ展覧会が繰り広げられています。

加えて、それぞれのクリエイションが放つ「一撃」も鮮烈。第一印象で惹き付けられるインパクトを持つ作品が多く出展されているのも印象的です。

影島晋平さんのペインティング。
一部にコラージュを取り入れ、アングラ感を充満させる景色が広がります。
画面の表面に施されたニスか何かの仕上げも、その鈍い透明感が逆にダークさを演出しているように感じられます。


NEXT DOOR vol.4影島晋平02 NEXT DOOR vol.4影島晋平03

NEXT DOOR vol.4影島晋平01

今年のワンダーシードやトーキョーワンダーウォールでも作品を拝見して印象に残っているシムラユウスケさんの写真。
一本筋の通ったクールネスが、連作で構成された展示から鮮烈に放たれます。


NEXT DOOR vol.4シムラユウスケ02


まず、よくぞ、この構図に気付いたなぁ、と感嘆。
駅のホームの縁と、そこにかかるひさしの縁とをほぼ縦に一直線で繋げ、それで画面を鮮やかにふたつに分断。加えて、夜に撮影されることでホームの明かりによって上と下とのひさしが影になり、明るく照らされる側と闇をたたえる側とに隔てられ、あたかもふたつの景色をひとつの画面に収めたかのような構図になっているのはホントに面白いです。
さらに、ひさしとホームとの中間には向こうから迫る列車が灯すヘッドライトの光が仄かに灯っているのも構図的にアクセントをもたらし、作品のユニークさを引き立てています。


NEXT DOOR vol.4シムラユウスケ01


分断の構図以外にも、向側のホームを正面から捉えたもの、走り迫る、あるいは走り去る列車の姿をスピード感たっぷりに撮影したものも。

さまざまな大きさのパネルで展開する作品群、これらは1本のフィルムで撮影されたものとのこと。しかも、ほんの20分程度で撮り切ったそう。
そういう時間的な要素からも臨場感が伝わり、ハードボイルドでスリリングなシーンが繰り広げられ、それぞれの画面を1対1で対峙しても、全体を俯瞰しても、そのクールな世界に浸れます。


NEXT DOOR vol.4シムラユウスケ03

バーカウンターから2階へと続く空間には、SAWAKOさんの立体作品などが展示されています。
こちらでは、何といっても、異様に巨大なピストルのオブジェがぎょっとするほどのインパクトがすごい。
両手でもかかえられないほどの巨大なところもなんともすごいのですが、なのにほんのりピンク色だったりしてかわいらしい雰囲気もあって。

しかし、銃口を覗くと唐突にあらわれる目玉。ぎょっとします。
リボルバーにも丸めた紙が詰め込まれていたり。
いろんなアクセントが施されたオブジェ、抜群の存在感です。


NEXT DOOR vol.4SAWAKO03 NEXT DOOR vol.4SAWAKO02

NEXT DOOR vol.4SAWAKO01


このほか、おそらくSAVAKOさんの名刺代わりの赤いキャラクターや、吹き抜けの部分に掛かるタペストリーも結構なインパクトを放っています。


NEXT DOOR vol.4SAWAKO05 NEXT DOOR vol.4SAWAKO04

SAVAKOさんの賑やかなオブジェが存在感を醸し出す2階の廊下部分に展示された1点のタブロー。


NEXT DOOR vol.4松山晃子09


何気ない女性の一場面がていねいに描写され、ひとつひとつの要素が写実的に表現されているにも関らず、なぜかフィクショナルな雰囲気を充満させる作品。背景に広がる優しいピンク色も不思議な風合いを醸し出しています。

こちらは松山晃子さんの作品。
展示スペースへと入っていくと、大胆なコラージュ作品が溢れています。
ファッショナブルなモチーフがふんだんに取り込まれ、それでいてダイナミックな構図で面白い宇宙を作り上げています。
キャンバスを黒く塗られた背景に、大胆にさまざまな画像が配され、ところどころにペインティングが施されるだけでなく、眼球に刺繍が入るなどの細やかさも。


NEXT DOOR vol.4松山晃子05 NEXT DOOR vol.4松山晃子02 NEXT DOOR vol.4松山晃子03 NEXT DOOR vol.4松山晃子04

NEXT DOOR vol.4松山晃子01


コラージュというとどうしてもそのイージーな質感が伝わってしまうために、しっかりと対峙することができないものが多い気がするのですが、松山さんの作品も第一印象こそ「コラージュかぁ」といった感じでしたが、じっくりと観てコラージュが持つ物質的な部分が意識から消えたときに気付くスケールの大きさや大胆さ、構図の面白さがぐんと迫り、さらに各所に配されるユニークなアクセントなども面白く感じられてきて、かなりこの世界に入り込んでしまった次第です。
そこから、どうしてもコラージュだと現れてしまう、印刷物をカットしたときに残ってしまう縁の部分などの本来意図しない要素がまたアクセントとなって興味深く感じられたり...。


NEXT DOOR vol.4松山晃子07 NEXT DOOR vol.4松山晃子06

NEXT DOOR vol.4松山晃子08


コラージュの精度とは、ということもいろいろと考えたりします。
ミヅマ・アクションで拝見したGino Rubertさんのような埋め込む方法も面白いですし、その辺りが突き詰められた作品も拝見したい気がします。

しかし、松山さんの今回の展示では、コラージュした構図を基にしたタブローが1点出品されていて、これがまたいいんです。
描写の精度が、コラージュの純粋な構図の部分の面白さを引き出して、お洒落かつシュールな風合いを醸し出し、すべてが描かれている強みに加え、彩りに独特の渋さも感じられます。

もっといろいろと観てみたいと感じさせるクリエイションです。


NEXT DOOR vol.4松山晃子10

礒邊美香さんは、フェミニンな空気を充満させるインスタレーションを展開します。
首がもがれ、そこに花が挿された人形の隊列。
画鋲が内側外側にびっしりと付き、ショッキングピンクに染め上げられ、キュートさとアバンギャルドさが鮮烈なハイヒール。

インパクトが強烈な作品群の中で、1枚だけひっそりと展示された写真作品のおだやかさも強く印象に残っています。


NEXT DOOR vol.4礒邊美香01 NEXT DOOR vol.4礒邊美香02

NEXT DOOR vol.4礒邊美香03

こちらの企画は次の第5弾でひと段落だそう。
次もどんなクリエイションが繰り出されてくるか、楽しみです。


シムラユウスケ06.JPG

《10/11》
NEXT DOOR Vol.4
T&G ARTS
東京都港区六本木5-9-20
10/11(木)~10/25(木)日月休
11:00~19:00
NEXT DOOR vol.4 DM.jpg

若手アーティストを紹介するショーケースの第4弾。
今回は、それぞれのクリエイションの「一撃必殺」的な作品もあったりして、これまでの3回と変わらぬ興味深い内容です。

《10/12》
ムラタ有子 新作絵画展
GALLERY SIDE2
東京都港区東麻布2-6-5
10/12(金)~11/15(木)日月祝休
11:00~19:00

ムラタ有子さんの、ポーラミュージアムアネックス、IIDギャラリーに続く今年3回目の展覧会、出品される作品が新作です。
もう、たまらない・・・!
なぜか説得力があるユーモア、絵の具の質感が醸し出すやわらかさ、今回新たに現れたシリーズからこれまでのムラタさんの世界を踏襲するものなど、1点1点が独立したユニークな世界を持ちながら、やはりムラタさんらしい統一感があって、観ていていろんなイメージが思い浮かぶ素敵な展覧会です。

《10/13》
高木智広 戯画展 ヒトが演じる動物園
なびす画廊
東京都中央区銀座1-5-2 ギンザファーストビル3F
10/8(月)~10/13(土)
11:30~19:00(最終日:~17:00)
高木智広10/8DM.jpg

緻密な描き込みで繰り広げられるシュールな世界。
さまざまなサイズの画面の作品が揃い、いろんな動物の身体に入り込み、顔だけを出した人がそれぞれの作品の中に登場します。
人物の顔の輪郭から、吉田戦車のマンガからコミカルな部分を抜き、シュールな部分、毒の要素のみが現れたようなイメージを思い浮かべます。


高木智広04 高木智広03 高木智広02

高木智広01


鯨の骨を纏う人々を描いた作品が特に印象に残っています。
圧巻の画力が骨やエンジンなどの表現にいかんなく発揮され、アバンギャルドな重厚さがかっこよさにダイレクトに影響を及ぼしている風合いで、この展開をもっとたくさん観てみたいと思った次第です。


高木智広05 高木智広07

高木智広06

瀧下和之 個展 The 屏風展。
ギャラリー和田
東京都中央区銀座1-8-8 三神ALビル
10/10(水)~10/19(金)日休
11:00~18:30
瀧下和之10/10DM.jpg

おなじみの「鬼ヶ島」のシリーズのユーモラスな風合い、竜虎、風神雷神の勇ましさ。
横長のパネルの連作に加え、タイトル通り屏風の作品も出品され、さまざまなかたちで瀧下さんのオリジナリティ溢れる世界が繰り広げられています。
そして、瀧下さんの「黄金の左手」があらたに繰り出すシリーズ作品も必見。ほのぼのとした彩りで描かれるなんともキュートでユーモラスな「ウサギとカメ」。堪りません~!

福本双紅展 ―透明なものへ―
INAXギャラリー ギャラリー2
東京都中央区京橋3-6-18 INAX:GINZA 2F
10/1(月)~10/29(月)日祝休
10:00~18:00
福本双紅10/1DM.jpg

改装され2階へと移ったINAXギャラリー、これまでとは異なりぱっと明るい印象を受ける空間で、実に深みのあるインスタレーションが展開されています。
表面の僅かな凹凸が生み出す影が美しいさまざまな形の白い陶と、陶器の皿の中や壺型の陶を天井から吊るすなど、さまざまな手段で至る所に張られたワイヤーが見せる線のクールさ。有機的なものと幾何学的なものとが独特のコントラストを生み出して、軽やかで奥深い静謐感が広がっています。

アトリエオモヤ
time A ギャラリー
東京都千代田区外神田4-14-1 UDXビル2Fデッキ
10/3(水)~10/15(月)火休
11:00~19:00
アトリエオモヤ10/3DM.jpg

ユニークなアーティストが揃うクリエイティブ集団、アトリエオモヤの展覧会。
鈴木太朗さん、小松宏誠さん、臼井英之さん、竹澤葵さん、佐野絢子さん、石渡愛子さんの作品がそれぞれ展示され、グラフィカルなメディアアート、テクノロジーアートに留まらず、タブローや漆芸作品などもあり、たいへん幅の広い作品が一堂に集められ、オモヤの懐の深さをあらためて実感。
ずらりと並ぶ細い管をポワポワと昇る泡が外のネオンの光を受けて輝き、先に羽が付いた針がコミカルに時を刻み、白い羽が浮かんで中空で漂い、パネルの中をゆらゆらと青い光がたゆたう...それぞれがいろんな表情を見せてくれて、たくさんの方が見入っていたのも印象的でした。


アトリエオモヤ03 アトリエオモヤ02 アトリエオモヤ01

アトリエオモヤ06 アトリエオモヤ07 アトリエオモヤ05

アトリエオモヤ04

三宅砂織 CONSTELLATION
Yuka Sasahara Gallery
東京都新宿区西五軒町3-7 高橋工芸社ビル3F
10/13(土)~11/17(土)日月祝休
11:00~19:00
三宅砂織10/13DM.jpg

アルミのパネルに描かれた作品や写真など、さまざまなアプローチの作品が集まり、素材のアバンギャルドさと描かれる世界のメルヘンチックな風合いとが独特の雰囲気を発する、興味深いクリエイション。

《10/14》
北浦亮子 銅版画展 HOME
@ギャラリー太田町
神奈川県横浜市太田町3-35-2 県公社ビル1F
10/14(日)~10/20(土)
11:00~19:00
北浦亮子10/14DM.jpg

昨年に続いて開催されている北浦亮子さんの個展です。
モノクロームの世界、北浦さんらしいやわらかで緩やかな線で描き上げられる人々の優しい表情を眺めているだけでなんだか和めます。
今回は神々しさが若干抑えられた感じで、そのぶん身近な風合いが感じられたのも印象的です。

第4回 REUNITED展
横浜市民ギャラリーあざみ野
神奈川県横浜市青葉区あざみ野南1-17-3 アートフォーラムあざみ野内
10/14(日)~10/21(日)
10:00~19:00(初日:13:00~、最終日:~16:00)
Reunited展10/14パンフ.jpg

油画の可能性を、具象、抽象取り揃えて提示する興味深い展覧会。
佐藤美術館で開催された第1回と第2回は伺ったのですが、場所が横浜市民ギャラリーあざみ野に移ってからは今回が初めて。
広々とした空間、ナチュラルな木の床によって明るい空間が作り上げられ、清々しさが広がる中でたくさんのクリエイションを堪能できます。
20日土曜日はアーティストトークも行われます。

《10/15》
AfterMath No.5 Increment -増殖-
ギャラリーコンプレックス ACT1
東京都新宿区大京町12-9
10/15(月)~10/27(土)日休
11:00~19:00
Increment 10/15パンフ.jpg

この夏から同会場で開催されている連続企画の第5弾。
今回は4名のさまざまメディアのアーティストが揃い、それぞれがそのユニークさを発揮しています。

先日開催されたギャラリーエスでの「眼差しと好奇心」の第2弾でもフィーチャーされていた野田仁美さんのモノクロームの作品群が入口に展示され、いきなりダークな世界へと誘われます。
タブロー1点と、リトグラフの作品。描かれる女の子や花などは実に精緻で、油断するとぐんぐんと意識が呑み込まれそうなるような錯覚をお覚えそうなほどに過剰とも言えるほどの深さを持った圧倒的な世界が深々と広がっています。


AfterMath No.5野田仁美02 AfterMath No.5野田仁美01

AfterMath No.5野田仁美03


続いて唐突に視界に飛び込んでくるのは

AfterMath No.5湯月洋志04


ちくわか!Σ( ̄口 ̄;)


ナゼにちくわ(汗)
しかもちゃんとオブジェの体を成しているし(汗)

こちらは湯月洋志さんの作品。
とにかくアプローチがキッチュ。パンフレットを見るとこのちくわはどうやら大量生産されている模様。

おい。


そして何やら黒い塊が額の中に収まって「ナンダコレ」と思って近付くと


AfterMath No.5湯月洋志02

AfterMath No.5湯月洋志01


お好み焼きかよ!Σ( ̄口 ̄;)

しかも妙にリアルだし。
おなかが空くではないか。

卑しい性格が現れて「求める味覚がお好み焼き」モードに突入しかけたそのとき、ありがたいことに隣にはレシピが。


AfterMath No.5湯月洋志03


どうやらこのオブジェの作り方らしいorz

いやはや、やられました。

もとい。
その隣には吉田宣代さんのタブローが。
佐藤美術館でも作品を拝見しているのですが、細かい色面でカラフルに描かれる羊などの絵は、そのていねいな仕上がりと鮮やかな風合いとによって独特なリアリティを醸し出していて、見入ってしまいます。


AfterMath No.5吉田宣代02 AfterMath No.5吉田宣代03

AfterMath No.5吉田宣代01


最後は重弘弥生さんの作品、こちらもたいへんユニーク。
透明アクリル板にシルクスクリーン、そしておそらく2層以上重ねられています。
花をモチーフにした、鮮やかな色彩とグラフィカルな風合いが、アプローチのユニークさをさらに引き出しているように感じられます。


AfterMath No.5重弘弥生02

AfterMath No.5重弘弥生01


それぞれの作品は色調に統一感がもたらされているのもいい感じです。
また、スポットの明かりを受けて額の奥にシルエットが映っているのがアクセントとなっています。


AfterMath No.5重弘弥生05 AfterMath No.5重弘弥生03

AfterMath No.5重弘弥生04

秋葉シスイ 個展
フタバ画廊
東京都中央区銀座1-5-6 福神ビルB1F
10/15(月)~10/21(日)
11:00~19:00(最終日:~16:00)
秋葉シスイ10/15DM.jpg

なんていうか...ギャラリーにほんの少し足を踏み入れただけで、ちょっと観ただけでも充分に「いい!素敵!」と満足してしまうほどの初々しさと軽やかさ、そして絵の世界の独特の深みと広がりが心を打ちます。

佐藤裕一郎展
Galery 58
東京都中央区銀座4-4-13 琉映ビル4F
10/15(月)~10/20(土)
12:00~19:00(最終日:~17:00)
佐藤裕一郎10/15DM.jpg

現在、愛知で開催中の「日本画滅亡論」にも参加されている佐藤裕一郎さんの個展です。
とにかく渋い。。。
深い茶色に染め上げられた半紙と墨の黒とで、小品、大作が展示され、圧巻の空間を作り上げています。


佐藤裕一郎05 佐藤裕一郎04


壁を覆う大画面によって、深み溢れる色彩に包まれた空間。
実に渋い雰囲気が広がります。


佐藤裕一郎02 佐藤裕一郎03

佐藤裕一郎01

志水児王:graph
SOL
東京都中央区銀座6-10-10 第二蒲田ビルB1F
10/15(月)~10/27(土)日休
11:00~19:00(最終日:~17:00)
志水児王10/15DM.jpg

志水児王さん、今回の展覧会は写真などの「動かない」作品の展覧会。
しかし、それぞれの作品に込められたアプローチのユニークさはやはり面白い!
難解といえば難解なのですが、分かるとすごく興味深く感じられる世界観。

PASSION FLOWER 福井江太郎展 SERIES FLOWER Vol.3
東邦アート
東京都中央区銀座8-9-13 銀座オリエントビル2階
10/15(月)~10/27(土)日休
11:00~19:00(最終日:~17:00)
福井江太郎10/15DM.jpg

福井江太郎さんの「花」のシリーズの第3弾にして最終章。
ダチョウもそうなのですが、花の姿を借りて表現される世界の壮大さは今回も無論健在です。
画面いっぱいにダイナミックに描かれる花が提示する「宇宙」。木炭の粒子が混ぜられた墨が生み出すグラデーションの美しさも印象に残ります。

あるがせいじ 新作展
ヴァイスフェルト
東京都港区六本木6-8-14 コンプレックス北館3F
10/5(金)~10/27(土)日月祝休
11:00~19:00
あるがせいじ10/5DM.jpg

Seiji Aruga New Works
weissfeld
6-8-14-3F,Roppongi,Minato-ku,Tokyo
10/5(Fri)-10/27(Sat) closed on Sunday,Monday and national holiday
11:00-19:00
Google Translate(to English)

レントゲンヴェルゲが掲げる「超絶技巧」の究極。


あるがせいじさんの個展、まさに圧巻のクリエイションが繰り広げられています。

身近な素材である紙に膨大な時間を費やして緻密なカットが施され、それを何層にも重ねることで構築される平面的・立体的にグラフィカルな世界。フューチャリスティックな雰囲気を鮮烈に放って、ただただその世界に圧倒されるばかりです。


あるがせいじ04

今回の個展に出展された作品は5点。
これまで拝見したあるがさんの作品では、かなり大きなサイズのものが出展されていることに大きなインパクトを受けます。小さな画面の中に凝縮されたミニマムな宇宙が繰り広げる、意識がゼロの極限へと向かう最小、極小のイメージも魅力ですが、今回の大きな作品からはむしろ壮大なほうへとイマジネーションが刺激され、フューチャリスティックなイメージが留まるところなく広がっていきます。

一方で、オープニングの時にたまたまご一緒した方とお話ししていて、その方が仰ってなるほどと感じたのですが、意外にもアジア的な雰囲気が広がっているんです。
九龍城にも通ずる混沌。広い画面に詰め込まれる無数のスクエアの穴がアジアの喧噪を連想させる...そういう視点に気付かされると、これまで思いも浮かばなかったような新鮮なイメージがあるがさんの作品から感じられて興味深いです。


あるがせいじ06

また、今回の展覧会に出品された作品で印象的なのが、「重ねる」というアプローチより、「組む」アプローチが多用されているというところ。
結局封筒にならなかった「封筒の中のギャラリー」の第3弾でクリエイションを提供していただいたのですが、その際、「こういう感じに立ち上がるようにしたいんです」とあるがさんに初めて見せていただいた試作品がまさに立体的なもので、そのユニークなアプローチに大いに唸ったのですが、今回の作品の立体感、髪が垂直に接している部分や折り曲げられて斜めに並ぶ部分など、今回の展覧会で「ここかぁ!」と納得した次第です。
ただ、あるがさんに伺うと今回のアプローチについては特別な意識はお持ちではないようで、これまで通り、こういう感じのものを作りたいという衝動からつくり出されたものだそう。

あるがせいじ05

作品を拝見すると、これほどまでに作り手に対するリスペクトが自然と、しかも強く心に浮かんできます。
作品数は5点でも、施されたスクエアのカットの数は当然尋常ではない数で、それも緻密に配置され、すべてハンドカットで繰り出されていることを思うと、それだけで感動します。
これらの作品と対峙する「現在」の位置から、「未来」へと突き広がるイメージと「過去」へのリスペクトとが同時に得られる希有なクリエイションだと思います。


あるがせいじ02

ホワイトキューブのなかに、白い額、白いマット紙。
紙にプリントされた幾何学的なシルエットと、作品に当たるスポットが生み出す本物の影。そのコントラストがまた、独特の深みをもたらします。

ぜひ、実際にそれぞれの作品と対峙して、そのスケールの大きさに直に触れ、イマジネーションを喚起してほしいです。


あるがせいじ03

SHANGRI-LA CHANDELIER シャングリラ・シャンデリア
ア-トコンプレックス・ホールギャラリー
東京都新宿区大京町12-9-B1F
10/1(月)~10/27(土)日休
11:00~19:00(最終日:~17:00)
SHANGRI-LA CHANDELIERパンフ.jpg

SHANGRI-LA CHANDELIER
Artcomplex Hall Gallery
12-9-B1F,Daikyo-cho,Shinjuku-ku,Tokyo
10/1(Mon)-10/27(Sat) closed on Sunday
11:00-19:00(Last day:-17:00)
Google Translate(to English)

関西の男性アーティスト6名がピックアップされたグループショーです。
それぞれの個性が充分発揮され、見応えもあり、たいへん興味深い内容です。

で、個人的には、2004年のシェル美術賞展で拝見して以来ずっと観たいと思っていた藤井俊治さんの参加が何より嬉しい!
そして、名前を知るアーティストがひとりいることをきっかけに出会えた未知の5人のクリエイションも面白く、この出会いにも感謝です。


ア-トコンプレックス・ホールギャラリーはアートコンプレックス・センターの地下で、新宿の奥まった細い路地沿いにある建物の地下とは思えないほどの広さにまず驚きます。
知り合いから小学校を改装してアートスペースができるという話を耳にしていたのですが、おそらくここなのだろうな、と。
ひとりひとりのアーティストに与えられたスペースもゆったりと余裕があり、それぞれが伸び伸びと作品を展示しているのも嬉しいんです。

衣川泰典さんの作品は、ちょっと長い壁2面と半分とをダイナミックに占領し、黒い背景にさまざまな場面が描かれ、力強いカオスが充満しています。
サッカーの場面であったり、シュールなモチーフに変容した人物が描かれていたり、あらゆるモチーフがさまざまな縮尺で登場し、それぞれが独立した、関連をあまり感じないモチーフが怒涛の展開で連なっていて、とにかくその大胆さに圧倒されます。


SC衣川泰典06 SC衣川泰典04 SC衣川泰典02 SC衣川泰典03 SC衣川泰典05

SC衣川泰典01

衣川さんの黒の世界に続いて、北野裕之さんの繊細さを感じる白の作品が、残り半分の壁と、ふたつの広い空間を繋ぐ通路のような細長い場所に展示されています。
桜を撮影した、桜の儚さや繊細さがさまざまな白のグラデーションで繰り広げられた作品が並んでいるのですが、至近で眺めてみると、その桜の写真の上から白の水彩絵の具でオーバーダブが施されています。
写真の白と、絵の具の白によって、フィクションとリアルのギャップが微妙な差を伴って提示され、ユニークな世界が画面の中に収まっています。


SC北野裕之04 SC北野裕之03 SC北野裕之05

SC北野裕之02


その水彩絵の具で上から描かれた作品を更に写真に収め、大きく引き伸ばした作品も。
こちらは、描き痕が画面上に残っていないこともあり、さらに現実の風景と非現実のものとの差が消え、不思議な繊細さと深遠さとを放っています。ユニークな行程によって織り成される雰囲気が心に優しく広がります。


SC北野裕之01

藤井俊治さんといえば、サーモグラフィが見せる色調を取り入れたものや光景。
シェル美術賞では白い背景の真ん中にサーモグラフィで情報化されたような何かが浮かんでいるという、独特のかっこよさを持つ世界が繰り広げられていたのですが、今回の展示では画面全面がサーモグラフィ風に構成され、鮮やかな色調が鮮烈に放たれています。


SC藤井俊治06


僕らがサーモグラフィの画像を見て知っているからおそらく藤井さんが繰り広げる世界の変換に大きな障害がもたらされないからか、藤井差が描く色彩によって抽象化されたさまざまな風景がキャッチーに感じられ、脳裏に浮かぶ抽象的な感覚と具体的なイメージとのバランスが絶妙です。
実際のサーモグラフィが提示する色彩をそのまま描いてはいないそうで、それもオリジナリティを構成する比較的大事な要素になっているのかな、とも思えます。


SC藤井俊治04 SC藤井俊治02 SC藤井俊治03

SC藤井俊治01


赤、黄色、緑、青など、さまざまな色彩がそのインパクトをそのままに画面に広がってさまざまなものの形を提示、しかしお互いの色彩の強さによってそれぞれの色が抑えられることはなく、ひとつひとつはその色彩が持つ美しさを力強く発散しながら、実にポジティブな雰囲気が作り上げられています。


SC藤井俊治05

馬場晋作さんは、支持体がユニークです。
この重厚さ。圧巻です。


SC馬場晋作05


前に存在するものすべてを映し込んでしまうほどに研摩されたステンレスの板に油彩で描かれたさまざまな未チーフ。おおよそ、ひとつの画面にひとつのものが描かれ、映るこの空間の景色が背景となって深みも感じられる興味深い景色が広がります。
加えて、描かれる静物の表情、例えばユリの花の凛とした感じやシャンデリアの絢爛さなどもていねいに再現されて、見どころも多いです。


SC馬場晋作03 SC馬場晋作04

SC馬場晋作02


ステンレス以外の作品も。こちらはステンレスではないぶん、素材の軽さが印象的です。

SC馬場晋作01


写実的な表現のリアルさと描かれるシチュエーションのユニークさが独特の世界を醸し出しています。


SC馬場晋作06

岡田裕樹さんの作品はシルクスクリーンで制作されています。
何層も重ねて刷られ、厚みを増した画面の中に広がる鮮やかな色彩。
ちりちりと深くて穏やかな黒のなかに浮かぶ優しい赤と白が現すシャンデリアのシルエット。すっと心に沈み込むような収まりのよさが醸し出す心地よさが印象的です。
また、画面のコーナーが丸まっているのも興味深いです。先日、ケンジタキギャラリーで個展を開催された小柳裕さんの作品もそうでしたが、ブラウン管をイメージさせる丸い角の長方形が、どこかレイドバックした雰囲気を感じさせるのもまた違う興味をそそります。


SC岡田裕樹02 SC岡田裕樹03

SC岡田裕樹01


とにかく背景の黒が効いています。
画面を拝見すると、黒の方が厚く浮かび上がっているのですが、奥の色彩の繊細な鮮やかなもしっかりと引き立てていて、独特の美しさが感じられます。


SC岡田裕樹04


この画像では伝わりにくいですが、シルバーの画面に浮かび上がるシルエットの深みも独特です。


SC岡田裕樹06

SC岡田裕樹05


床置きされた円形のパネルの作品もかっこいい。。。
鮮烈な赤紫に染まる円。そこに浮かぶ髑髏。深いイメージを喚起させてくれる作品です。


SC岡田裕樹08

SC岡田裕樹07

いちばん奥まって薄暗くなったスペースでは、大崎のぶゆきさんのさまざまな形体の作品が。
まず目に飛び込んでくるのは、インスタレーション。
手前の柱の影にある溶けて歪んだような鉛筆のオブジェといい、真ん中のテーブル上に広がるお皿が割れて荒れた光景といい、本来の形が溶けてフォルムを失ってしまう過程が放つエネルギーが強烈に感じられます。


SC大崎のぶゆき01

SC大崎のぶゆき02


タブローも面白いです。
小さい画面に灯るように描かれる人物や静物。かわいらしさと同時に、薄暗い空間にあるせいか、それぞれの画面の世界はシュールにも感じられます。


SC大崎のぶゆき04 SC大崎のぶゆき05

SC大崎のぶゆき03


いちばん奥のスペースには、向い合せでふたつの映像作品が上映されています。
水に浮かぶジェルのようなものによるドットで描かれた、西洋の神話を思わせる絵。
これが揺らぎ、滲み、そのフォルムをあっさりと放棄して抽象的なものへと変容していきます。


SC大崎のぶゆき07

SC大崎のぶゆき06

関西のアーティスト独特のおおらかさやユニークさが痛快なクリエイションが広々とした空間に溢れています。
アート複合施設ということもあり、階上にも展示スペースがあって、さまざまなクリエイションがチェックできるのもありがたいです。

祝迫義郎展 ~幻想の化身~
新宿高島屋10階美術画廊
東京都渋谷区千駄ヶ谷5-24-2
10/3(水)~10/16(火)
10:00~20:00(土:~20:30、最終日:~16:00)
祝迫義郎10/3DM.jpg

Yoshiro Iwaisako Exhibition
Shinjuku Takashimaya 10F Art Gallery
5-24-2,Sendagaya,Shibuya-ku,Tokyo
10/3(Wed)-10/16(Tue)
10:00-20:00(Sat:-20:30,Last day:-16:00)
Google Translate(to English)


彫金作家、祝迫義郎さんの展覧会です。


祝迫義郎@新宿高島屋24


これまで、小さなスペースでの展示を拝見してきたのですが、今回は新宿高島屋10階美術画廊という、天井も高く床面積も広いスペース。
どうなるんだろう、といろいろと想像していたのですが、過去のものから新作までが一堂に会し、、祝迫さんの作品の面白さ、なにより仕事も細やかさがしっかりと伝わるていねいな展示が行われています。

まず嬉しいのが、入口沿いの壁に展示されている七宝の作品。
河豚やら熱帯魚やら烏賊やら、さまざまな海の生物の姿を象った作品で、その表面に鮮やかに七宝でさまざまな模様、柄、紋様が施され、さまざまな色彩や質感が織り成す鮮やかさ、艶やかさに見愡れます。
「ひょっとこ」とか提灯とか、純日本風のユーモラスなフォルムのモチーフが見事に再現されているのにも唸らされます。


祝迫義郎@新宿高島屋05 祝迫義郎@新宿高島屋03

祝迫義郎@新宿高島屋04 祝迫義郎@新宿高島屋06 祝迫義郎@新宿高島屋02

祝迫義郎@新宿高島屋01

小さな彫金のオブジェはそれぞれ台の上に展示され、台ごとにスポットの明かりが降り注がれます。
擬人化されたさまざまなモチーフに作り込まれるなんとも味わい深くユーモラスな表情。
加えてメカニカルな部分の細やかさにも、顔を近付けて見入ってしまう次第。
動きを感じさせる構成も楽しさをさらに演出しています。


祝迫義郎@新宿高島屋09 祝迫義郎@新宿高島屋08


右からと左からとでは表情がまったく変わっちゃうカエル。
纏うのは蛇柄のガウン。この辺りのユーモアの織り込み方も祝迫さんならでは。


祝迫義郎@新宿高島屋12 祝迫義郎@新宿高島屋11


「吹き出し」を使って何をしゃべってるか描き足したくなるようなコミカルさと、それぞれの作品に込められる皮肉だったり風刺にもなかなか考えさせられたり。


祝迫義郎@新宿高島屋10


これまで拝見することがなかった祝迫さんの新展開。
すっと真直ぐに立つ棒。そこに螺旋上に整然と無機的な形のパーツが回り、上へと向かうほどに植物の葉のようなフォルムへと変化し、その頂上には白い花が咲いてます。
下の方は虫に食われたかのような感じに仕上がっていたり。


祝迫義郎@新宿高島屋15 祝迫義郎@新宿高島屋14

祝迫義郎@新宿高島屋13

祝迫さんの真骨頂のひとつ、甲殻類の生物をモチーフにした作品。
彫金の仕上がりの面白さをぐんと引き出すモチーフで、ひとつひとつのパーツが組み上がって形成されるヤドカリは単純にかっこよく、そのリアルさがひときわ興味を惹きます。


祝迫義郎@新宿高島屋18


写真では確認するのが難しいですが、砂浜を模した台座に施されたサインも。


祝迫義郎@新宿高島屋17


ジオラマ風に仕立てられ、空間の隅で力強くその存在を誇示しています。


祝迫義郎@新宿高島屋16

そのヤドカリのシリーズのブロンズ作品も。
イセザキモール・コイチでの個展では3点のみの出品だったこのシリーズも今回はぐんとバリエーションが増えています。
壁掛けの作品と置く作品と。
それぞれにユーモアを感じ、かなり楽しめる一角です。


祝迫義郎@新宿高島屋20 祝迫義郎@新宿高島屋21

祝迫義郎@新宿高島屋22 祝迫義郎@新宿高島屋23

祝迫義郎@新宿高島屋19


ダーク色調の床、グレーの壁、暗めの空間に祝迫さんのさまざまな作品は見事に映え、1点1点が充満、発散させるかっこよさやシュールさがよりリアルに伝わってきます。
精密な作り込みなど、見どころもふんだんに込められて、じっくりと楽しめる圧巻の展覧会です。


祝迫義郎@新宿高島屋25

Han Yajuan 個展 Travel Alone
東京画廊
東京都中央区銀座8-10-5 第4秀和ビル7F
10/3(水)~10/27(土)日月祝休
11:00~19:00(土:~17:00)
Han Yajuan 10/3DM.jpg

Han Yajuan "Travel Alone"
Tokyo Gallery
8-10-5-7F,Ginza,Chuo-ku,Tokyo
10/3(Wed)-10/27(Sat) closed on Sunday,Monday and national holiday
11:00-19:00(Sat:-17:00)
Google Translate(to English)

キュートな女の子たちとアイテムで魅せるリアルタイム。

東京画廊でのHan Yajuanさんの個展です。
Han Yajuanさんは北京の若い女性アーティストで、今回の個展にあわせて来日なさった際、オープニング前日の展示を終えて、展覧会初日のデイタイムは渋谷の109とかいろいろと観て回ったそう。

そんな今を謳歌する女の子が描く世界。
作品の中には、ファッションブランドのロゴやiPodなどのアイテムを織りまぜながら、あたまをおっきく描かれ、目蓋にぽってりとひかれたアイシャドウはカラフルで鮮やか、洗練されたファッションを身に纏う女の子たちが元気な姿を振りまいています。

それはもう、観ていて痛快!
むろん、かわいいワケですが、オトナなムードというか、「仕事ができる女性」的な雰囲気もけっこう発散させていて、それがまた魅力的に映ります。

大きな画面に膨らむように描かれた女の子たち。飛び散るアイテムが画面から溢れ出す勢いをさらに演出しているような感じで楽しいです。

Han Yajuan 02 Han Yajuan 03 Han Yajuan 04

Han Yajuan 01

キャラクターチックというか、アニメーション的というか、デフォルメされた体つきの女の子が描かれているのですが、さらりと精度の高い写実表現も織りまぜられていて目を引きます。
頭に乗るユリの花の艶やかさは、このポップな雰囲気の中でたいへんユニークなアクセントとなっているように思えるんです。
このあたりにもHan Yajuanさんの「ただ者ではない」感が鮮烈に発せられています。


Han Yajuan 06 Han Yajuan 07

Han Yajuan 05

もうひとつ、それぞれの作品を観て気付くのが、すべての作品に登場している雌牛。
つぶらな瞳とか、丸まるとした体とか、コレがまたかわいいんですよホントに。
これは、Han Yajuanによると「女性」を現すアイコンとして登場させているそう。女の子よりさらにキャラクター度が高いこの雌牛が、ポップな風合いはもちろん、女の子たちの凛とした姿が放つ強さに女性的なやわらかさをもたらしているようで、そこで保たれるメッセージ性がHan Yajuanさんの作品に深みをもたらしています。


Han Yajuan 09

Han Yajuan 08

奥の引っ込んだスペースには暗幕が張られ、中では映像作品が上映されています。
暗幕の方からいうと右上と左下、敢えて壁と天井、あるいは壁と床が接する部分に投影され、映し出される映像により臨場感をもたらしています。


Han Yajuan 13 Han Yajuan 12

Han Yajuan 11


「シャリーン」という音とともに、小爆発で散らばるファッションブランドのロゴやら21世紀を象徴するアイテムやら。そこにはなぜか女の子も。キラキラとした感触が印象に残ります。


Han Yajuan 17 Han Yajuan 16 Han Yajuan 15

Han Yajuan 14


戻って、ペインティングの作品のお話。
基本的にオイルオンキャンバスなのですが、ラメがまぶされていたり、ところどころのマチエルが立体的に作り込まれていたりと、登場するモチーフと同じくさまざまなアクセントが施されていて、それらがちゃんとひとつの世界、場面のなかに溶け込んでいるのにも唸らされます。過剰でいて、シンプルでいるという...。

絵の中の女の子を通じてさまざまな場所へとHan Yajuanさん自身が伸び伸びと旅しているかのようで、それもまたすごく楽しそうに感じられて。。。
加えて、やっぱり感じる大陸的なおおらかさも気持ちいい。。。

描き手の好きなもの、楽しいことがそのまま画面から伝わってくるようで、それがそのままエンターテイメントになっていて、とにかく楽しい空間が作り上げられています。


Han Yajuan 10

谷川夏樹
ギャラリー新居 東京店
東京都中央区銀座6-4-7 いらか銀座ビル5F
10/1(月)~10/20(土)日祝休
11:00~19:00(土:~18:00)
谷川夏樹10/1DM.jpg

Natsuki Tanigawa Exhibition
Gallery Nii TOKYO
6-4-7-5F,Ginza,Chuo-ku,Tokyo
10/1(Mon)-10/20(Sat) closed on Sunday and national holiday
11:00-19:00(Sat:-18:00)
Google Translate(to English)

爽快な景色。心地よい景色。

谷川夏樹さんの個展です。
今年のBunkamura Art Showでもひときわそのポップな風合いを発散させていた谷川さんが描く世界の主役は、「コンテナくん」と呼ばれるキャラクター。繰り広げる物語は「EARTH CONTAINER」。

・・・丸くて愛嬌のある顔が付いたコンテナなわけですが、これがまたホントにかわいい~!
谷川さんの絵の中に必ず登場するコンテナくん。たまに有り得ないシチュエーションで登場して、


何でそんなところにいるんだよ!Σ( ̄口 ̄;)


・・・と観るものの度胆を抜いちゃったりしますが、多くはトラックに牽引されて、あるいは列車に運ばれながらさまざまな景色の中をおおらかに走ってたり、街中などに置かれて人々と戯れていたりと、まるで壮大なロードムービーのいろんなエピソードを収めているかのような素敵な景色がさまざまなサイズの画面に描かれていて楽しいです。


また、谷川さんのキャンバスの作品におけるタッチも心地よさを演出しています。
イラストのように軽やかに広がる油絵の具の色彩。油彩特有のの重たさは一切なくて、描かれるシーンの心地よい風や空気を捕らえるような爽やかで温かみのある筆の運びが、アットホームな風合いを感じさせてくれます。

緑が心地よく広がるスクエアの大きな作品。
木々の濃い緑と草原の薄い緑のコントラストが爽快な風景。


谷川夏樹01


・・・で、コンテナくんは手前の線路を悠々と走っています。
小さく描かれたコンテナくんがこの風景の広々とした感じをさらにおおらかに伝えてくれます。


谷川夏樹02

エッフェル塔の落下してたり(笑)、街の中で人々と交流していたり、水平線が眼前に広がる道路を疾走していたり。
楽しそうな場面がいっぱい。


谷川夏樹04 谷川夏樹05

谷川夏樹03

で、ミニチュアのコンテナくんも、ちゃんといます。
ギャラリーでは、Bunkamura Art Showのイベントの一環で行われた、本物のコンテナに描かれたコンテナくんが都内を走る様子などを収めた映像も小さなモニターで観ることが出来ます。


谷川夏樹07

ペン画のドローイングも数点展示され、またファイルでも観られるのですが、こちらもまたいい感じです。
コンテナくんのシリーズとは離れているようですが、さらりと流れる線で描かれたさまざまなモチーフの軽やかさが素敵です。


谷川夏樹08

谷川夏樹09

挑むように対峙するコンテンポラリーアートも好きですが、コンテナくんみたいにただただ眺めていて気持ちがいい作品もいいんです。
この優しいタッチでアニメーションなんかがあったら観てみたいなぁ、とか、もっと大きな画面で観てみない、とか、いろんな想像も膨らみます。


谷川夏樹06

《10/3》
臼井良平展 Sunday Remains
無人島プロダクション
東京都杉並区高円寺南3-58-15 平間ビル3F
10/3(水)~11/2(金)日祝休(月~水は要予約)
11:00~19:00
臼井良平10/3DM.jpg

小さな空間に展示された写真やインスタレーション。
ひとつひとつに込められたユーモアは痛快で、同時に和みの感覚も提供してくれます。

DMにも使用された、ちいさな馬の置き物が古めかしい目覚まし時計や今はもう見ない形のビンなどといっしょにテーブルに置かれた写真がいい。ホントにいい。レイドバックした雰囲気、それぞれのアイテムが醸し出す深み、そこに淀む緩やかな時間の流れの感覚。いつまでも眺めていたくなる、さりげない風景が作り上げられているんです。

中央にこつんと置かれた台座上の前方後円墳型フェルトが放つゆるゆるのインパクトも堪らない。
出土された土器のシルエットが象られ、ひとつの画面に収められて、それが何故か繰り出す実に深みのある奥行きにも心の中で爆笑。何故か爆笑。

そして、コレはもう「百聞は一見に如かず」度が軽くマックスを超えちゃってる作品なのですが、大理石の作品がまた強烈すぎて、半月板割っちゃう勢いで膝をバンバン叩きたくなるほどのユーモアに感動です。

祝迫義郎展 ~幻想の化身~
新宿高島屋10階美術画廊
東京都渋谷区千駄ヶ谷5-24-2
10/3(水)~10/16(火)
10:00~20:00(土:~20:30)
祝迫義郎10/3DM.jpg

あの深みのある空間に、祝迫さんの社会への風刺をユーモラスに込めた彫金のオブジェがずらりと配置され、実に楽しい空間が作り上げられています。
七宝の魚の作品も登場。祝迫さんのこれまでのクリエイションが一堂に会して、見応え充分の展示が繰り広げられています。

Han Yajuan 個展 Travel Alone
東京画廊
東京都中央区銀座8-10-5 第4秀和ビル7F
10/3(水)~10/27(土)日月祝休
11:00~19:00(土:~17:00)
Han Yajuan 10/3DM.jpg

ファッションブランドのロゴや現代のアイコンとも言えるさまざまなアイテムを織り込んで、アニメチックな女の子と雌牛とが繰り広げるキュートな世界。随所に見受けられる画力の高さにも思わず感嘆の、楽しいクリエイションが空間に溢れています。

《10/5》
TOKYO WONDER WALL 2007 増子博子個展
東京都庁第一本庁舎3階南側空中歩廊
東京都新宿区西新宿2-8-1
10/5(金)~10/29(月)土日祝休
9:00~17:30
増子博子10/5DM.jpg

土日祝日に入れない空間なのでなかなか観られないのですが、今回初めて都庁の空中歩廊でのTOKYO WONDER WALLに行ってきました。

増子博子さんの個展です。
キャンバスの作品と紙の作品。それぞれ大きな画面に繰り広げられる緻密な世界。
「盆栽」という和のクリエイションをモチーフに、サンフラワーが目一杯花を広げている部分や蛇の皮膚のように実に精緻なパルスが凝縮している部分など、さまざまな表情でうねる盆栽の松の幹や針葉の様子が描き出されていて、見応え充分。

少し離れて眺めたときのダイナミックなうねり、堂々とした佇まいの迫力。
至近で凝視したときに際限なく見つかっていくさまざまなパターン。
ペン画ならではの面白さが凝縮している作品が、柱に挟まれて奥まって分割された壁に1点ずつ展示され、それぞれの世界にぐんと浸れる展覧会となっています。

佐伯洋江さんや池田学さんの作品がツボに嵌まる方は、きっとお好きだと思います。

あるがせいじ 新作展
ヴァイスフェルト
東京都港区六本木6-8-14 コンプレックス北館3F
10/5(金)~10/27(土)日月祝休
11:00~19:00
あるがせいじ10/5DM.jpg

圧巻です。
ギャラリーの展示されたたった5点のスクエアの作品の中に詰め込まれる無数のスクエア。
精緻なカットが施された紙が重ねられて構築する過剰に幾何学的な宇宙にただただ圧倒されっぱなしの至高の展覧会です。

《10/6》
第16回 奨学生美術展
佐藤美術館
東京都新宿区大京町31-10
10/3(水)~11/18(日)月休(10/8は開館、10/9休)
10:00~17:00(金:~19:00)
第16回奨学生パンフ.jpg

こういったかたちで同じ世代のさまざまなジャンルの作品が揃い、ひとつの空間で楽しめるのはたいへん面白いです。

いつになく淡い色調が清々しい四宮義俊さん、独特の緑が醸し出す深みに酔いしれられる荒木享子さん、異様なまでに精緻な描き込みで繰り広げる圧巻の世界がすごい狩野宏明さん、並ぶふたつの画面の作品から洗練された日本画の空気を放つ永井健志さん、不思議なテクスチャーの謎めいた雰囲気が興味深い三島祥さんなど、それぞれが大作を出品していてその個性を堪能できるのも嬉しいです。

で、いちばんインパクトがあるのはやはり鈴木雅明さんの油彩の作品。
Bunkamura Galleryでの個展も印象的だったのですが、その風合いの作品が1点出品されていて、どちらかというとオーソドックスなスタイルの作品が並ぶ中にひときわコンテンポラリーな空気を発しています。

もうひとり、松井冬子さんの作品も。
昨年出品され、佐藤美術館に買い上げられて再び出展されたのですが、今回はあらためてていねいな額装が施され、ピンと張られた絹本の画面がより洗練された風合いを醸し出し、松井さんの妖しい雰囲気を演出しています。

《10/8》
TAKAO FUJIOKA JAZZ ART EXHIBITION
JAZZ BAR & GALLERY COOL TRAIN
東京都港区六本木7-7-4
10/3(水)~10/15(月)火休
10:30~17:00
TAKAO FUJIOKA10/3DM.jpg

かっこいい!
それぞれの画面から軽やかに、そして渋く繰り出されるジャズメンの佇まい。


TAKAO FUJIOKA 01


一見、イラスト風の線画なのですが、線の部分が残されるようなカットが入っていて、その奥から英字新聞が顔を覗かせています。
この文字の並びがまた、ジャズのクールさを演出していて、さらにかっこよく感じられます。


TAKAO FUJIOKA 04 TAKAO FUJIOKA 03

TAKAO FUJIOKA 02


何より嬉しいのが、作品によってそこに描かれているミュージシャンが誰か分かること。
ジャズのアイコンと化したジャズジャイアンツの仕草がうまく表現されているのも、ジャズファンとして嬉しさが倍増します。
夜はジャズのライブハウスになるこの空間にぴったりの展覧会です。


TAKAO FUJIOKA 05

瀧谷美香展
ギャラリー椿GT2
東京都中央区京橋3-3-10 第1下村ビル1F
10/8(月)~10/13(土)
11:00~18:30(最終日:~17:00)
瀧谷美香10/8DM.jpg

DMを拝見してぜひ観てみたかった瀧谷美香さんの作品。
抽象的な色彩の広がり、あるいは空気の中の水分によってシャープにぼやけた風景のシルエットが印象的な油彩の作品が並びます。


瀧谷美香02

瀧谷美香03


1点だけ、テイストがまったく異なる作品が、
細かいチップがこびり着き、ひび割れたような風合いに仕上がる、この展示の中でその濃い色調が強烈なインパクトとなっている作品。至近で観るとかなりの迫力です。


瀧谷美香05

瀧谷美香04


独特の光の表現や、絵の中に広がる静けさが心に染み入ります。
個性的な「青」も印象的です。


瀧谷美香01

ジャン・ピエール レイノー展
Galerie Teo
東京都品川区東五反田2-5-15-3F
10/9(火)~12/7(金)日月祝休
11:00~19:00
Jean-Pierre Raynaud DM.jpg

原美術館の3階の常設室、タイル貼りの部屋の作者の個展です。
主にタイル、旗、植木鉢を使ってさまざまな世界をクリエイトしているジャン=ピエール・レイノーさん、今回の個展では植木鉢がズラリと並びます。
蛍光色に染まる鉢が並ぶインスタレーションの鮮やかさ、金色やトリコロールに彩色されたもの、そして日本の国旗を模したものなど、重量感や大きさに込められたコンセプトの興味深く感じられます。

《10/9》
泉東臣展
ギャラリー・ショアウッド
東京都港区南青山3-9-5
10/9(火)~11/1(木)日祝休
11:00~18:00
泉東臣10/9DM.jpg

重厚な立体感を伴った渋味溢れる作品の印象が強い泉東臣さんの個展。
今回は、初めてとなる屏風作品を含む、比較的フラットな作品も多く展示され、泉さんの懐の大きさを感じられる展覧会となっています。これまで伺えなかった色調や質感も新鮮です。

TWS-Emerging 083 森裕子展 “モリノシズク”
トーキョーワンダーサイト本郷
東京都文京区本郷2-4-16-3F
9/29(土)~10/21(日)月休
11:00~19:00
森裕子9/29DM.jpg

TWS-Emerging 083 Yuko Mori
Tokyo Wonder Site Hongo
2-4-16-3F,Hongo,Bunkyo-ku,.Tokyo
9/29(Sat)-10/21(Sun) closed on Monday(10/8 is open,.closed on 10/9)
11:00-19:00
Google Translate(to English)

心地よい軽さ。

森裕子さんの個展です。
今年のワンダーシードなどでも作品を拝見しているはずらしいのですが、恥ずかしながら記憶になく...。
しかし、あらためて今回の個展で森さんが描いた作品だけに囲まれた空間を体感して、森さんのユニークさを改めて実感できた次第。

淡い色調は、他の多くのアーティストの濃いキャラクターに囲まれるとちょっと不利なのかも、と。
というか、その状況で気付けない僕もまだまだ、ということなのですが....

もとい。


展示室に入ると、ふわっと膨らんだような淡い色彩で描かれたファンタジックな世界に包まれます。
そして、DMでは気付かなかったのですが、実際の画面サイズで作品を拝見して、絵の中に横たわる女性がナチュラルに風景の中に大胆に織り込まれているのに気付いたり。
あたたかみ溢れる色彩の中に、意外とアクロバティックな要素が入り込んでいたりして、そのギャップがほのぼのとした痛快さをもたらしているような気がして面白いんです。


森裕子01 森裕子04

森裕子02

入口すぐのところに展示されていたケーキの作品。
画面に織りまぜられたレース模様の適度なこまやかさや、いちばん奥のパープルのやわらかな広がり、ケーキの上に乗るいちごのような赤や、その下の台のところの樹木のような緑など、ひとつひとつの色面やモチーフがが心地よいアクセントとなってひとつのやわらかい世界を作り上げています。


森裕子06 森裕子07

森裕子05

用いられる色のほっこりとした風合いと、その色の組み合わせも楽しい世界が繰り広げられます。


森裕子03

パーテーションをくぐっ奥のもうひとつの展示室。
こちらのブースではまず女性の顔を描いた作品が並ぶ一角に引き寄せられます。
少し前の時代のハリウッドの映画に登場するような髪型、仕草。ふっくらとした輪郭の女性が優しく目を伏せたりこちらに視線を送っていたりとさまざまな表情で描かれています。
その女性の顔を囲む優しい色彩とまろやかなフォルムの花も温かみに溢れて和める世界が広がります。


森裕子09 森裕子10

森裕子08

手前の部屋の続きを思わせる作品も展示されています。
小品で拝見する森さんの世界も、画面から滲み出るかわいらしさが画面が小さいことでより強く感じられます。


森裕子13

森裕子11

コンテンポラリーアートを総じて述べたときに、その魅力のひとつはそれぞれのクリエイションの中に収められる「毒」だと、いろんな作品を拝見するたびにその思いを強くするのですが、森さんの場合、むしろ「甘さ」が魅力に思えます。
もちろん、絵の中にヌードの女性が織り込まれていたりと「毒」の要素もあるのですが、むしろ彩りのキュートさ、モチーフのフォルムのやわらかさや軽さに心地よさを覚える...それが単純に気持ちいいです。


森裕子12

TWS-Emerging 081 吉岡雅哉展 コンビニ畑とテレビっ子
トーキョーワンダーサイト本郷
東京都文京区本郷2-4-16-2F
9/29(土)~10/21(日)月休
11:00~19:00
吉岡雅哉9/29DM.jpg

TWS-Emerging 081 Masaya Yoshioka
Tokyo Wonder Site Hongo
2-4-16-2F,Hongo,Bunkyo-ku,.Tokyo
9/29(Sat)-10/21(Sun) closed on Monday(10/8 is open,.closed on 10/9)
11:00-19:00
Google Translate(to English)

はげしく苦笑い。もしくは大笑い。

昨年のシェル美術賞や今年のトーキョーワンダーウォールで、真っ黒の背景のシュールな作品が強烈に印象に残っている吉岡雅哉さんの個展です。
入口すぐの小部屋のイラスト、メインルームは明るい時間の絵と暗い、黒い絵とに分けられ、およそ3つのパターンの作品がそれぞれのコーナーで展示されています。


まず、小さな部屋に整然と並べて展示されたイラスト群。
これが、けっこうツボで(笑)。
コンビニの入口を描いた」イラストがずらりとならんでいて、よくよく観てみるといろんなコンビニが描かれています。
で、笑えるのが入口にぶら下げられた看板の言葉。
「絶対そんなこと書いてねぇ」と思わず突っ込みたくなるセンテンスが満載だったりして、いちいち笑えます。
それでもって、あっけらかんとしたタッチでユーモラスに描かれているコンビニの情景にさりげなく首吊ってる人とかがいたりして、それもユーモラスに思えてくるから怖い(汗)。


吉岡雅哉04 吉岡雅哉02 吉岡雅哉03

吉岡雅哉01

メインの展示室、まずは明るい時間帯の絵。
晴れた空。看板の鮮やかな彩り、店の前に咲く桜。お客さんが入りやすいように気持ちがいい色彩が積極的に取り入れられた店舗の前に、裸の人がいるという、かなりシュールなシーン。
コンビニの店舗がけっこうていねいに、しかもほのぼのとした感じもよく表現されて描かれているものだから、この裸の人たちの「ヤな感じ」がすごく強烈に押し出されているような感じ。

・・・「タダでは終わらない」という吉岡さんのプライドが感じられます。


吉岡雅哉06 吉岡雅哉07

吉岡雅哉05

黒い作品は、吉岡さんの真骨頂(のような気がします)。
そのまま夜の闇を思わせる黒が、絵の中の妖しい雰囲気をさらに強烈に演出します。
無論、それぞれの絵の中で繰り広げられているシーンの奇妙さ、シュールさもより深みを増しています。ダイレクトに心の奥に手を突っ込んでくるような異様な存在感。
夜のコンビニに足を運ぶ孤独、電気を消した部屋で妖しいビデオだかテレビだかを観る孤独、ネガティブな要素が遠慮会釈なく大胆に描かれていて、その大胆さに感服。


吉岡雅哉09

吉岡雅哉08

描かれるシーンの大胆さ、あからさまな孤独を表現する不敵な感じもユニークですが、なによりこの「黒」がいいんです。
個性的な「黒」にまた出会えたことの嬉しさ。
絵のネガティブな印象の強さに負けないどころか、むしろその鮮やかさを自ら引き立てているかのような深みに強く惹かれます。


吉岡雅哉10

TWS-Emerging 082 笹井信吾 ぼくの街からあたしの街へ
トーキョーワンダーサイト本郷
東京都文京区本郷2-4-16-1F
9/29(土)~10/21(日)月休(10/8開館、10/9休)
11:00~19:00
笹井信吾9/29DM2.jpg 笹井信吾9/29DM.jpg

TWS-Emerging 082 Shingo Sasai
Tokyo Wonder Site Hongo
2-4-16-1F,Hongo,Bunkyo-ku,.Tokyo
9/29(Sat)-10/21(Sun) closed on Monday(10/8 is open,.closed on 10/9)
11:00-19:00
Google Translate(to English)


シュールなキュートさ。
キュートなシュールさ。


今年のワンダーシードで印象に残っているアーティストのひとり、笹井信吾さんの展覧会です。
さまざまなサイズの作品が並び、それぞれに登場するイージーなキャラクターが繰り広げる世界から、さまざまなイメージが思い浮かんできます。

それにしても、何という味わい。
すらすらと描かれたようないわゆる「ヘタウマ」な人物が醸し出すやんちゃさ、儚げな風合い、何も考えてないような素朴さ。
「なんでそこに...」「何をやっとる...」とツッコミも入れたくなるようなのも多々いる気もしますが、そういう連想もまたかわいさに拍車を掛けます。

シンプルに描かれていても充分に豊かな表情が感じられ、それが作品の世界に時間のイメージをもたらしてくれるような感じです。


笹井信吾11 笹井信吾09 笹井信吾10

笹井信吾08

ちょうど入口と対角の壁の一角。
こちらには馬が登場する作品が並んで展示されていました。
ふわふわとした淡い色調のなかに登場する馬、その馬に跨がって乗り。こちらに微妙な笑みを浮かべる人。
「楽しそうだなチクショウ」ってな気持ちも起こらなくもないですが(笑)、シュールな印象も結構するのになんだか可笑しみが込み上げてきて和めていいんです。


笹井信吾06 笹井信吾07

笹井信吾05

入口すぐの一角に集められたスケッチや、各所に配された小品もいい感じ。
紙に描かれているのはラフな感覚がより身近に伝わってきます。
小さいパネルの画面の作品でも、多彩な表情は失われることはなく。


笹井信吾02 笹井信吾04

笹井信吾03

シニカルな雰囲気もたまらない作品。
バスルームや海岸など、ちょっぴりコミカルな雰囲気も漂わせつつ、実は意外ときっちり描き上げられていたり。そこにひとりぽつんと人が登場しただけで、ぐんと絵の世界の雰囲気が笹井さんらしく彩られます。
無邪気さが楽しくて、素朴さに仄かな憂いを感じ、笑顔にほのぼのと癒され、漂う脆さに緊張する...独特の世界が描き上げられています。


笹井信吾01 笹井信吾13

笹井信吾12

笹井さんの絵の中にさりげなく、しかししっかりと忍び込んでいる、僕にとってもうれしいコラボレーションの作品も。
ギャラリーエスでの個展などで印象に残っている畑中宝子さんの儚げな雰囲気が充満した中に、いたずらっぽく笹井さんのキャラクターが描き加えられている作品。
畑中さんのふわふわとした風合いで描かれる大人びた雰囲気と、笹井さんの子どもっぽさとのギャップがホントに面白い!
ほのぼのわくわくとした高揚感が沸き上がってきます。


笹井信吾16 笹井信吾17 笹井信吾15

笹井信吾14

五感×LIFE
リビングデザインセンターOZONE 3F OZONEプラザ
東京都新宿区西新宿3-7-1 新宿パークタワー
9/27(木)~10/9(火)水休
10:30~19:00(10/2~10/5:10:00~)
五感×LIFEパンフ.jpg

5 SENSES and LIFE
Living Design Center OZONE 3F OZONE PLAZA
3-7-1,Nishi-shinjuku,Shinjuku-ku,Tokyo
9/27(Thu)-10/9(Tue) closed on Wednesday
10:30-19:00(10/2-10/5:10:00-)
Google Translate(to English)


西新宿のビル街、甲州街道沿いにある新宿パークタワー内、リビングデザインセンターOZONEの3階の大きな吹き抜けのスペースで開催されている、ダイナミックなインスタレーション。
日々の生活のさまざまな要素を、ひとりひとつずつ、6組のアーティストが取り上げていて、構成もたいへん興味深い展示です。
そのなかに、よく知るアーティストがクレジットされているのがまた嬉しい!


まず、雨宮庸介さんの「Dining」。
おなじみのりんごのインスタレーション。ナチュラルな木目が爽やかな長テーブルに配される17個のりんご。一見しただけではまったくの本物と信じて疑わないほどの精度で制作されたものも、溶けて歪んだもの、いろんなフォルムのりんごがお皿などといっしょに絶妙の位置に配置されています。
昨年のYUKA SASAHARA GALLERYでの閉じた空間でのインスタレーションの印象が強いこともあり、今回はどんなアプローチだろうと楽しみだったのですが、テーブルの上に作り上げられている世界は今回も実に奥深い...。
立つ位置によって思い浮かぶストーリーも変化し、いろんなイマジネーションを喚起してくれます。

・・・そういえば、前回のBOICE PLANNINGでの展示は「机上位」だったなぁ、などと思い返したり。
そのなかで雨宮さんだけがキャンバスに描いたテーブルの作品を出していて、そのひねり具合も面白かったのですが、今回は「机上位」の別バージョンだと考えるとまた興味深いです。


OZONE雨宮庸介01

OZONE雨宮庸介02

TRIONSITEのインタラクティブなメディアアート作品による「Cooking」。
見るからに面白そうな映像が待ち構えています。


OZONE TRIONSITE01


・・・で、その側には台上のモニターと、説明書き。


OZONE TRIONSITE02


この傍の画面に手をかざすと目玉焼きができあがっていくのですが、いろいろバリエーションがあるようで。
ちなみに僕はちゃんと作れました(と思う)(そう信じたい)(ちょっと心配)(いやかなり)(そういえばできあがる瞬間にえらくモクモクと何かが湧いてたが)(・・・蒸気だよな)(・・・煙ってことないよな)(・・・。)(...orz)。

水戸芸術館での展覧会も開催中のひびのこづえさんは、「Dreaming」。
高い天井を活かして、内側が透けて見える大きなテントが黒のスポンジの上に被さっています。
グリーン、水色、黄色の色彩が奏でる清々しさ。
展示では中には入れないようなのですが、実際に中に入ったときの想像なども楽しい、涼しげでダイナミックなインスタレーションです。


OZONE ひびのこづえ01

OZONE ひびのこづえ02

安藤健浩さんが演出するのは「Relaxing」。
ひびのさんと同じく高い天井を活かして、モノクロームのフェルトなどが連なって壁を伝って垂れ下がっていて、階段と踊り場の部分にもフェルト・ユニットが敷き詰められ、そのフワフワとやわらかい質感のイメージが、暗めの照明のやわらかさと相まって、緩やかな雰囲気を生み出しています。
見上げたときの壮観さも気持ちいい。。。


OZONE安藤健浩01

OZONE安藤健浩02

アトリエオモヤのインスタレーションは、踊り場のいちばん奥の角に設置されています。
彼ららしい大掛かりな装置を配して表現するのは「Bathing」。

小松宏誠さんのおなじみの透明の筒のなかに浮き上がる羽の作品。
今回はボディが黒、羽が赤。赤い羽は灯る炎のようなイメージを想像させてくれます。プログラムによって整然と、羽が現れたり隠れたりを繰り返します。


OZONEアトリエオモヤ02

OZONEアトリエオモヤ03

鈴木太朗さんの水のインスタレーション。こちらもプログラムによって、水が入った細いチューブの列のなかに気泡が現れていろんな模様を生み出していきます。
大理石の床とのコントラストも美しく、細いチューブが並び、青い光で浮かび上がる様子のシャープさがより全面に押し出され、洗練された雰囲気を醸し出しています。


OZONEアトリエオモヤ01

尼子靖さんの「Flame」。
東京ガスが主催する展覧会らしく、青く染められた葉脈がガスの炎を思わせる作品がさまざまなところに配置され、その繊細さと仄かな優しい色合いとが目に心地よく広がります。
フリスビー型の台に立てられた葉脈。この円盤はゆるゆると回転します。その動きに伴い、葉脈もふわふわと揺れ、軽やかな風合いが印象に残ります。


OZONE尼子靖03 OZONE尼子靖02

OZONE尼子靖04

実に幅広いクリエイションがピックアップされ、それぞれが個性を発揮してそれがお互いの面白さを引き立てあい、空間を歩いて脳裏に浮かぶいろんなイメージを楽しめる展覧会です。


OZONE尼子靖01

月刊ギャラリー10月号の「Exhibition Spot 10月の展覧会案内」を担当いたしました。

《9/27》
五感×LIFE
リビングデザインセンターOZONE 3F OZONEプラザ
東京都新宿区西新宿3-7-1 新宿パークタワー
9/27(木)~10/9(火)水休
10:30~19:00(10/2~10/5:10:00~)
五感×LIFEパンフ.jpg

TRIONSITEひびのこづえさん、アトリエオモヤ安藤健浩さん、尼子靖さん、雨宮庸介さんの6組のさまざまなクリエイタ-が繰り広げるダイナミックなインスタレーション、見応え充分!
それぞれが「Cooking」「Bathing」などの「暮らし」と関連づけ、さまざまなアプローチもたいへん興味深いです。

《9/28》
永井健志・松下雅寿 二人展
紫鴻画廊
東京都中央区日本橋3-6-9 箔屋町ビル4F
9/26(水)~10/4(木)日休
11:00~18:00

二人の日本画家による展覧会です。永井さん、松下さんの作品の素晴らしさは言うまでもなく、このお二人の画風によるコントラストもたいへん印象的です。

松下雅寿さん。
「黙」「薫」「熟」など、「よつてん」の文字を充てたくなる、モノクロームの朴訥として深み、そして力強さが印象的な風景が描かれています。
初めて拝見したときは剛胆な印象を受けたのですが、大胆な色の配置の中に実にていねいに、こまやかにさまざまなものが再現されていて、そのさりげなさにさらに惹かれた次第です。
松下さんが描き出す光景に触れた後、そのイメージを目を閉じてしっかりと思い返したくなるような...静けさが心の中に広がり、沈み込むような落ち着きをもたらしてくれます。


松下雅寿02

松下雅寿01


一方、永井健志さんの作品は、「燦」「煌」「爛」いう「ひへん」の文字が浮かんできます。
主題の鋭いフォルムのケレン味のなさ、艶やかな色調と背景のグラデーションの美しさ。
日本画としての渋さを醸し出しつつも、繊細な表現に強靱さを感じさせ、それらが神々しく輝いているように思えます。
日々目にするものが放つさりげない美しさを引き出し、その美の強さにこちらもビンと背筋がのび、心地用意緊張が静謐の中にもたらされるような感じです。


永井健志01

永井健志02


お互いがお互いの素晴らしさを引き出していて、至高の空間を作り上げています。

Kun bu lei
ZEIT-FOTO SALON
東京都中央区京橋1-10-5 松本ビル4F
9/28(金)~10/27(土)日月祝休
10:30~18:30(土:~17:30)
Ku bu lei 9/28DM.jpg

中国のアーティストの個展です。
無彩色の暗い背景に浮かび上がる遠い風景の仄かなフォルムが美しく、そこに登場する赤い旗をはためかせる人々に、作家のアイデンティティを強く感じます。
入口すぐの作品を除き、おもにふたつのシリーズで展開する、かの地の表情。
個性的なキャラクターの表情の強烈さと合わせて、いろんなイメージが脳裏をよぎります。

《9/29》
山本桂輔「豊壌」
TOMIO KOYAMA GALLERY
東京都江東区清澄1-3-2-7F
9/29(土)~10/20(土)日月祝休
12:00~19:00
山本桂輔9/29DM.jpg

痛快きわまりない、ポジティブな雰囲気が気持ちいい展覧会です。
それぞれの作品の色の強さ、作品によっては筆の流れが透明な層の感触をもたらしていたり、さまざまな色やその絵の中に登場するいろんな形が放つ自由さなど、さまざまな要素が痛快!
そして、中央にどんと鎮座する木彫がまた凄い存在感。
「豊壌」という展覧会タイトルが、温かみ溢れるイメージにさらに拍車をかけます。
ポジティブなイメージがいっぱいに広がっていて、このクリエイションを体感できたことが素直に嬉しい!

《9/30》
TWS-Emerging 082 笹井信吾 ぼくの街からあたしの街へ
トーキョーワンダーサイト本郷
東京都文京区本郷2-4-16-1F
9/29(土)~10/21(日)月休
11:00~19:00
笹井信吾9/29DM2.jpg 笹井信吾9/29DM.jpg

ワンダーシードで印象に残っている笹井信吾さんの個展。
独特のシュールさを持つキャラクターのかわいさがなんともいい感じ。
そのキャラクターが画面の中で自由に遊んでいたり佇んでいたり、いろんな仕草もまた楽しいです。

TWS-Emerging 082 森裕子展 “モリノシズク”
トーキョーワンダーサイト本郷
東京都文京区本郷2-4-16-3F
9/29(土)~10/21(日)月休
11:00~19:00
森裕子9/29DM.jpg

やわらかな色彩で繰り広げられる世界。
その軽さと淡い色調に、温かみや緩やかさを感じます。
そして、さりげなく潜む人物のモチーフが印象的です。

TWS-Emerging 081 吉岡雅哉展 コンビニ畑とテレビっ子
トーキョーワンダーサイト本郷
東京都文京区本郷2-4-16-2F
9/29(土)~10/21(日)月休
11:00~19:00
吉岡雅哉9/29DM.jpg

昨年のシェル美術賞展で、黒い画面の作品がひときわ強いインパクトを放っていた吉岡雅哉さん。
イラスト、黒の作品、明るい時間帯の作品と、三つのスタイルの作品が出展され、それぞれのなかにシュールなモチーフが描き込まれていて強烈です。

第4回 金丸悠児 絵画展
池袋東武6F1番地美術画廊
東京都豊島区西池袋1-1-25
9/27(木)~10/3(水)
10:00~20:00(最終日:~16:30)
金丸悠児9/27DM.jpg

やっぱりいいなぁ、とあらためて、心に温かい気持ちが広がります。
金丸さんが描く動物たちの独特のかわいさ、最近は、鳥や哺乳類の動物たちもおなじみとなり、味わい深いです。
飛行船や街並みのモチーフの作品のなんともいえない楽しさも堪能できました。

《10/1》
SHANGRI-LA CHANDELIER シャングリラ・シャンデリア
ア-トコンプレックス・ホールギャラリー
東京都新宿区大京町12-9-B1F
10/1(月)~10/27(土)日休
11:00~19:00(最終日:~17:00)
SHANGRI-LA CHANDELIERパンフ.jpg

大崎のぶゆきさん、岡田裕樹さん、北野裕之さん、衣川泰典さん、馬場晋作さん、藤井俊治さんの関西の6名のアーティストがパッケージされた見応え充分の展覧会です。
ア-トコンプレックスセンターの地下、広々としたスペースに、それぞれのアーティストが本領を発揮しています。
土曜日にアーティストトークが開催されます。

MIX 三人展
ア-トコンプレックス・センター
東京都新宿区大京町12-9-2F
10/1(月)~10/6(土)
11:00~20:00
MIX三人展10/1DM.jpg

3つのキュートなクリエイションがパッケージされた展覧会。
グループ展ですが、それぞれの個展がひとつの空間で行われているような印象で、お得感も嬉しいです。


入口すぐの小松義幸さんの絵画。もっさりと歪んだ顔のキャラクターがなんともいえないシュールさを醸し出し、もしかしたらそこに込められているかも知れない何らかへのアンチテーゼが感じられるような気がして痛快だったり。


MIX 小松義幸02 MIX 小松義幸03

MIX 小松義幸01


パズルのような構成がかわいくて楽しいいづみるさん。
グラフィカルな背景やモチーフと、そこに登場するキャラクターが織り成す世界の明るさが気持ちいいです。


MIXいづみる03 MIXいづみる01

MIXいづみる02


Kozueさんの作品は、透明感溢れる青や赤の鮮やかさの中に、実に精緻に咲き乱れる花の姿が描き込まれていて、軽やかで深い世界に惹かれます。


MIX Kozue03 MIX Kozue01

MIX Kozue02

大谷有花展 -picnic picnic-
第一生命南ギャラリー
東京都千代田区有楽町1-13-1 DNタワー21 第一生命本館1F
10/1(月)~10/26(金)土日祝休
12:00~18:00
大谷有花10/1DM.jpg

春のGALLERY MoMoでの展覧会に続いて、ピクニックのシリーズが出展されています。
しかも、今回は同じ大きさの作品が並び、これまで大谷さんの展覧会では取り入れられたことがない「サイズの統一」が、たいへんユニークな世界を作り上げています。
2面組による大きな画面、そのほぼ中央に描かれる樹木。この構図を基本に繰り広げられる豊かなバリエーションが楽しく、大谷さんにとってもおそらく新鮮な、白が薄く被さるキミドリをメインに、画面の半分が赤く染まって爽快なものや、構図が崩れてまったく違う世界がもたらされているものなど、それぞれが微妙に、あるいは大胆に異なる世界を築き上げていています。
そして、その作品のそこかしこに姿を見せる鳥のかわいさといったら・・・!

谷川夏樹
ギャラリー新居 東京店
東京都中央区銀座6-4-7 いらか銀座ビル5F
10/1(月)~10/20(土)日祝休
11:00~19:00(土:~18:00)
谷川夏樹10/1DM.jpg

今年の夏のBunkamura Art Showで拝見した谷川夏樹さんの個展です。
ギャラリー新居の落ち着いた空間に、眺めていて飽きない分かりやすくて優しく穏やかな風景が広がっています。
「楽しそうだなぁ」が「楽しいなぁ」に変わっていく痛快さ。

《10/2》
野津晋也「途草」
MUSEE F
東京都渋谷区神宮前4-17-3 アーク・アトリウムB02
10/1(月)~10/6(土)
12:00~19:00(最終日:~18:00)
野津晋也10/1DM.jpg

ペンによる精緻な絵に引き込まれます。
特に、正面の壁に展示されている2段重ね、複数のパネルによる作品。いろんなモチーフが歪み、大胆な縮尺で、なんとも奇妙な世界が描き出されていて圧巻です。

玉野大介
maru gallery
東京都港区海岸3-7-18-902
9/22(土)~10/20(土)日月祝休
12:00~18:00
玉野大介9/22DM.jpg

Daisuke Tamano Exhibition
maru gallery
3-7-18-902,Kaigan,Minato-ku,Tokyo
9/22(Sat)-10/20(Sat) closed on Sunday,Monday and national holiday
12:00-18:00
Google Translate(to English)

予想外の静けさ。


maru galleryでの玉野大介さんの個展です。

maru galleryは初めて伺ったのですが、ビルの9階、コンクリートの壁、高い天井と、なかなかお目にかかれない素敵な空間。
そこに、同じサイズのキャンバスに描かれた玉野さんの作品が2段、シンプルに並んで展示されています。
2段重ねて並んでも、ゆったりとそれを受け止められる天井の高さが印象的です。


玉野大介02


玉野さんの作品は、展覧会が始まる前にサイトで拝見していて、濃い雰囲気を想像していたのですが、実際に拝見するとたいへん静かな印象を受けます。
画面に登場するたくさんの大人、子ども。ひとりひとりが浮かべる、考え込むでも思い悩むでもなく何かをただ「思う」ような静かな表情が、絵の中に取り込まれているさまざまな要素、シュールさやユーモア、アバンギャルドさを包んで、どこか懐かしいような、遠い記憶を辿って得られるような光景へと仕立てているように感じられます。


玉野大介03 玉野大介07 玉野大介04

玉野大介05


しかし、静かな雰囲気とはいえ、そのなかに織り込まれる鋭さや危なさはやはり相当なアクセントとなっています。
むしろ淡々とそういった先鋭的なモチーフが静かに絵の中に収められていることのコントラストとギャップが玉のさんがここでつくり出している世界を独特なものにしているような印象です。


玉野大介06


独特な色調による深み、親しみあるモチーフ。
絵の中で展開されてれる不思議なストーリー。
そのまま絵本の挿絵にしても大丈夫なように感じられるほどの穏やかな風合い、そこに隠される静かな狂気。
コミカルさやシュールさが突き抜け切れていないもどかしさ、しかしそれが醸し出すやさしさ。

さまざまなイメージが往来する、それでいて統一感が充分に感じられる、ホントに不思議な世界です。


玉野大介01

増田佳江 wrap and woof
ギャラリー小柳
東京都中央区銀座1-7-5-8F
9/18(火)~10/19(金)日月祝休
11:00~19:00
増田佳江9/18DM.jpg

Kae Masuda wrap and woof
Gallery Koyanagi
1-7-5-8F,Ginza,Chuo-ku,Tokyo
9/18(Tue)-10/19(Fri) closed on Sunday,Monday and national holiday
11:00-19:00
Google Translate(to English)

心地よい浮遊感。
楽しい彩り。

ギャラリー小柳での増田佳江さんの個展に行ってきました。
広い空間、大作、小品とサイズに関らずそれぞれの作品に充分なスペースが与えられ、そこに描かれるさまざまな景色や場面によって心に浮かぶイメージの広がりも豊かに広がっていきます。

見渡して増田さんが描き出す世界へ浮かんだのは、「多彩だなぁ...」というイメージ。
捕らえ所のない...という言葉だとちょっとニュアンス的に強い感じがして微妙に違っちゃうんですが...、ひとつひとつの作品は登場人物も場所も時代も違う物語の一場面のような印象。
・・・ただ、あらためて思い返し、考えてみると、切り取られた場面(といっても、切り取られているのは「瞬間」ではなく、実に緩やかでゆったりとした時間の流れを大きく捉えているような感じなのです...)の前後のずっと、ずーっと先、あるいは前にもしかしたら交差しているかも知れない、もしくは時間とはまた別の概念で繋がっているのかも知れない...そういうことも心をよぎってきます。


あたたかな色彩で描かれたパレード。
小さな画面ながら、ここへと至る時間の流れ、その先ヘと向かっていくイメージが、灯る明かりの温もりの感触とともに自然と浮かんできます。


増田佳江02

増田佳江01

描かれているモチーフだけではなく、マチエルの差も興味深く感じられます。
フラットに、素直にモチーフを描かれた作品もあれば、絵の具が大胆に画面に乗り、至近で観ると絵の具の「素材」としての存在感を強烈に放つ作品も。

爽やかな薄い水色を背景に、まるで花が咲き乱れるように...その強い、しかし目には見えないエネルギーを捉えようとするように、画面にカラフルな色彩が踊ります。遠目で眺めたときの軽やかさと、至近での激しさとのギャップが印象的です。


増田佳江04

増田佳江03

曖昧なモチーフもあれば、具体的に描き込まれているものも。
この作品、小さいのですが、絵の中に登場するザリガニ(だったかなぁ...タイトルにあるのですが失念してしまいました)がかわいらしくうごめいているのが楽しいです。


増田佳江07

背景の薄紫と、そこにアグレッシブな場面が描かれた小品。


増田佳江06

個人的にいちばん印象に残ったのがこちらの大きな作品です。
ぼやけたフォルムが重なり、繋がり、綴られて、お家のかたちになっているのですが、そのなかにワクワクするような既視感がたくさん織り込まれていて、いろんなイメージが脳裏をよぎっていきます。右下の赤と白とのチェックはクロアチアの国旗を思い出させ、それがサッカーのワールドカップで目にしたクロアチア代表のユニフォームを連想させて...というのはずいぶんと特殊なイメージの喚起のさせられ方ではありますが、ほかにもさまざまな要素が滲むように混じっていて、全体を目にしたときの仄かに賑やかな感じと、薄めの色調の儚げな感触などがなんとも心地よかったり...。


増田佳江05

やさしい、かわいい色調で繰り出される奥行き感の豊かさと独特の広がりも面白く感じます。
もし、それぞれの作品のために空間がインスタレーションされたらまた楽しいだろうなぁ...なんて想像も膨らむ、あったかい気持ちにさせてくれるクリエイションです。