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幕内政治が覗いたおすすめアートイベント情報
2007年12月アーカイブ

毎年年末恒例のお節作りもさすがに何年もやってるせいかあっさりと5品(鮭と鰊の昆布巻、紅白なます、田作り、栗きんとん、黒豆)をほぼ前夜に作り終え、迎えた大晦日。

思い返すと今年もそれなりにいろいろとあったなぁ、と。
自転車事故に遭って左手の手のひらの中指を骨折し、病院に行ってレントゲン撮って包帯巻いてもらって帰宅して包帯とったらトムとジェリーのジェリーにいたずらされたトムの手みたいにパンパンに腫れ上がっていて痛いの忘れて思わず笑ったり、その自転車もしばらくして後輪のスポークが根こそぎ折れるという聞いたことも想像したこともない最期を迎えたり、と、それなりの災難を乗り越えつつ、月刊ギャラリーの展覧会案内を担当させていただくことになったり封筒の中のギャラリーの第3弾として企画したあるがせいじさんのマルチプル「ひらき」がレントゲンヴェルゲさん他のご尽力のおかげで多くの方々に行き届くまでになったりと、アートシーンの中でも観るだけでなく、このブログも含めて「伝える」という立ち位置でそれなりに何かができたのかな、とも思えて、さらにそういったさまざまなことを通じて2007年もホントにたくさんの素晴らしい出会いに恵まれて。

いやぁ、今年も楽しかったです。
そんな2007年のアート巡りを振り返って。

2007年の大晦日の夜、この時点で2007年に観た展覧会で印象に残った10展を敢えてピックアップするとしたらこんな感じです。


政田武史 -New Paintings review
WAKO WORKS OF ART
東京都新宿区西新宿3-18-2-101
9/15(土)~10/13(土)日月祝休
11:00~19:00
政田武史9/15DM.jpg


大畑伸太郎 個展 ひかり review
YUKARI ART CONTEMPORARY
東京都目黒区鷹番2-5-2 市川ヴィラ1階
10/25(木)~12/15(土)日月休(火水:事前予約制)
12:00~20:00
大畑伸太郎10/25DM.jpg


野口里佳「マラブ・太陽」 review
ギャラリー小柳
東京都中央区銀座1-7-5 小柳ビル8階
10/27(土)~11/30(金)日月祝休
11:00~19:00
野口里佳10/27パンフ.jpg


青山悟「Crowing in the Studio」review
ミヅマアートギャラリー
東京都目黒区上目黒1-3-9 藤屋ビル2F
10/17(水)~11/17(土)日月祝休
11:00~19:00
青山悟10/17DM.jpg


佐伯洋江展
TAKA ISHII GALLERY
東京都江東区清澄1-3-2-5F
12/22(土)~1/26(土)日月祝・12/29~1/7休
12:00~19:00
佐伯洋江 071222.jpg


小谷元彦「SP2 New Born」review
山本現代
東京都新宿区西五軒町3-7 ミナト第3ビル4F
6/30(土)~7/25(水)日月祝休
12:00~19:00
NEW BORN01.jpg

NEW BORN02.jpg


内海聖史展 review
GALERIE ANDO
東京都渋谷区松濤1-26-23
7/10(火)~7/28(土)日月休
11:30~19:00
内海聖史7_10DM.jpg


田代裕基 個展「HARMONY」review
ギャラリーエス
東京都渋谷区神宮前5-46-13 ツインエスビル
9/20(木)~10/7(日)月休
11:00~19:00
ギャラリーエス パンフ.jpg


「25×4=□」展 尾崎真悟・大平龍一・柴田鑑三・飯田竜太 review
東京画廊
東京都中央区銀座8-10-5-7F
4/4(水)~4/28(土)日月祝休
11:00~19:00(土:~17:00)
25×44/4DM.jpg


Eternal Spring アダム・ブース 日本画展 永遠の春 review
Gallery ef
東京都台東区雷門2-19-18
3/16(金)~4/15(日)火休
12:00~21:00
アダム・ブースef.jpg


2007年は、キャンバスの作品の勢いに蹂躙された印象が強いです。
油彩、アクリルともに、もっともスタンダードなスタイルで、自身のクリエイティビティに対して素直なリアクションをぶつけたような痛快なものから、独特の手法や精緻な具象表現を織りまぜながら、さまざまなオリジナリティが再現されていて、見応えがある展覧会がホントに多かったです。それこそ、これだけで10個以上選べるくらい。
選にはなかでも印象が強かった政田武史さんと大畑伸太郎さんの個展を挙げました。それぞれ個展で拝見したのは初めてで、もう「あなたがこれから作るものはすべて好きです!」と断言できるほどに惹かれた次第です。

一方で、日本画、それも岩絵の具の絵画は強く迫るものが少なかった気がします。
アダム・ブースさんのGallery efでの個展は、その空間の特徴と相まって、インスタレーションとしても極上でした。
印象に残った日本画の展覧会を思い返すと、和紙であったり、あるいは墨であったりと、岩絵の具以外の素材の魅力が追求されているものが多かったり、岩絵の具そのものの美しさを特徴的な画題をセレクトすることでこれまでにないかたちで引き出したものが目に留まりました。
もともと日本画は大好きですし、岩絵の具の美しさや膠の盛り上げなどの工芸的な素晴らしさには抗い難い魅力を感じるので、新鮮なクリエイションとの出会いを期待したと思っています。

キャンバスの作品とともに、木彫でインパクトがあるものが多かった印象もあります。
田代裕基さんの巨大なニワトリの作品が発するダイナミズムはホントに凄かったですし、信じられないくらいに緻密に再現された大平龍一さんの畳は、同時期にヴァイスフェルトで開催された展覧会での段ボールとともに、木彫であることに気付いた瞬間の衝撃は忘れ難いです。

アーティスティックな写真の展覧会も多く拝見しました。
暗い空間にトリミングされた照明が当てられた写真がていねいに配された野口里佳さんの個展は、野口さんの魅力にあらためて気付かされただけでなく、時間の流れをももたらされた構成にぐっと引き込まれました。

もともと好きな緻密なクリエイション、やはりそれぞれの展覧会で見入ってしまいます。
フューチャリスティックなグラフィカルイメージを立体で表現した小谷元彦さんのオブジェ群には心底参りました。
また、つい先日始まったばかりの佐伯洋江さんの個展も、目の醒めるような鋭さをたたえた緻密な鉛筆画は圧巻です。佐伯さんは目黒区美術館での展覧会も印象的でした。

そして、青山悟さんと内海聖史さんの展覧会は、大きな期待をもって拝見したものの、その期待が素晴らしいほうへと大きく裏切られました。分かっていても、その素晴らしさに感服した次第です。
内海さんは、東京で開催されたふたつの展覧会のどちらも相当な見応えで、しかもそのふたつの個展が比較的短いインターバルで行われ、資生堂ギャラリーで体感した壮大な余韻が残った状態で、ギャラリエ・アンドウでの個展を観ることができたのは貴重な体験でした。四国での展覧会も観たかったのですが...。
青山さんは、究極的な刺繍のスキルを駆使し、それぞれの作品の相変わらずのハイパークオリティな見応えを提供するに留まらず、実にエンターテイメントに富んだ構成で目一杯楽しませてくれました。


上に挙げた展覧会以外にも、コメントしたい展覧会はいっぱいあるのですが、断腸の思いで選ばせていただいた次第です。アーティストの名前だけでも挙げようと思ったのですが、それでも相当に膨大な数になってしまうので...根性なくてすみません...。

ざっと自分のブログを見返してみると、今年に限ったことではないですが、そのときの感動が蘇ってきます。
とにかく全部、面白かった!


この1年も、ホントにたくさんの方にお世話になりました。
この場を借りて、お礼申し上げる次第です。
そして、このブログをご覧いただいている皆様にも感謝です。
今後もよろしくお願いいたします。


ありがとう、2007年。


さあ来い、2008年。

TWS-EMERGING 089 メルヘンじゃいられない こんどうさちほ
TOKYO WONDER SITE本郷
東京都文京区本郷2-4-16-2F
12/22(土)~1/20(日)月(祝日の場合開館、翌火休)・12/29~1/3休
11:00~19:00
こんどうさちほ071222DM2.jpg こんどうさちほ071222DM1.jpg

TWS-EMERGING 089 Sachiho Kondo exhibition
TOKYO WONDER SITE Hongo
2-4-16-2FHongo,Bunkyo-ku,Tokyo
12/22(Sat)-1/20(Sun) closed on Monday and 12/29~1/3 (If Monday is a national holiday,the following day will be closed instead.)
11:00-19:00
Google Translate(to English)

モノクロームで繰り広げられるシュールでキュートな世界。

TWS本郷でのこんどうさちほさんの個展です。
着せ替え人形あり、顔だけが抜けた作品在あり、と、作品の中に取り込まれるとなんとも不思議な雰囲気が感じられる作品も出品されていて、妙に気になり始めるところから。。。


こんどうさちほ01


入口すぐのところの壁に設置された棚の上で、鉄道模型を使った小さなジオラマが展示されています。
肝心なところに芝が生えた化粧用具、そこに経つ人々の姿が何ともシュールで。この人形たちの視界では、何と世界の狭いことかと小一時間(笑)。


こんどうさちほ12 こんどうさちほ11

こんどうさちほ13

平面作品は、和紙に墨や顔料、ペンを用い、さまざまな黒のコントラストと絶妙の空間の活かし方によってユニークな世界がツ生み出されています。


こんどうさちほ04

思わず「平面って凄いな」と思ってしまった作品。
なんとも派手なドラゴンに追い詰められたお姫さま。
断崖を背に、巨大な剣を振りかざし、対面するドラゴンといざ戦わんとする勇敢な姿。

しかし、このシチュエーションに至る過程を考えるとどこまでも笑いが込み上げてきます。
どう考えてもお姫さまが追い詰められているのですが、

その剣も持って逃げてきたのかよ!Σ( ̄口 ̄;)
その剣、片手で持てる太さじゃないだろ!Σ( ̄口 ̄;)
そのな重たそうなもの持ってたら崖崩れるわ!Σ( ̄口 ̄;)

と再現なく湧いてくるツッコミ。
素材が醸し出す渋さとのギャップも独特なユーモラスさを放っています。


こんどうさちほ06 こんどうさちほ07

こんどうさちほ05

たいへんていねいに人物の姿が描かれているのですが、多くの作品で顔のパーツが省略されていて、匿名性が強調されているのも興味深いです。
モノクロームというより、描かれるそのものの色が「黒」であることを印象づけるような感触も面白いです。


こんどうさちほ10 こんどうさちほ09

こんどうさちほ08

そして、強烈なインパクトを充満させているのが、正面奥の壁で展開されている無数のパンツ。
描きも描いたり、となかば呆れるような感じで感心しつつ、しげしげと見るのも気が引ける一角でして(汗)。
これがまたディテールも細かかったりするものだから。。。


こんどうさちほ03

取り上げるテーマの大胆さ、画面構成の大胆さ。
和紙の渋味と墨や顔料の深み。
さまざまな要素がそのよさを引き出され、なおかつ和の感性と洋の感性、その両方のバランスも絶妙で。
さらに独特の空間性やユーモアも織り込まれていて、それぞれの画面で繰り広げられる物語や時間にまで奥行きを与えているように感じられます。

いくつかの素材が取り入れられているとはいえ、「黒」というひとつの色で描かれることにより、グラフィカルに仕上げられていることで、それがポップさ、キャッチーさを紡ぎだしているところも見る側にとって分かりやすくて嬉しく感じられます。
もちろん、展示空間にもたらされる統一感も素晴らしいです。

いろんな題材の作品をたくさん観てみたいと思わせてくれるクリエイションです。


こんどうさちほ02

椛田有理 空の反復
ART TRACE GALLERY
東京都墨田区緑2-13-19 秋山ビル1F
12/1(土)~12/26(水)
11:00~19:00(金:~21:00)
蒲田有理071201DM.jpg

Yuri Kabata -Empty reception-
ART TRACE GALLERY
2-13-19-1F,Midori,Sumida-ku,Tokyo
12/1(Sat)-12/26(Wed)
11:00-19:00(Friday:-21:00)
<Google Translate(to English)


白と黒。
ふたつのトーンがせめぎあう。


ART TRACE GALLERYでの椛田有理さんの個展です。


椛田有理02

白に黒。
あるいは黒に白。
下地となる色の上にもうひとつの色が侵食するように広がっていき、細やかな抽象のバランスが世界地図のようなスケールの大きなイメージが発せられています。

ゆったりとした大きなホワイトキューブに、横長の画面の作品がバランスよく配置され、壁の白との調和もユニークな感触を生み出していました。


椛田有理04 椛田有理05

椛田有理03

小品での展開も魅力的です。


椛田有理07

椛田有理06

入口から続く壁と、左手に設けられたコンパクトな空間に小品がまとめて展示されていました。
パネルの作品は、その厚みがそのまま3次元的なものとして活かされ、パネルのサイドへも侵食する黒、あるいは白が醸し出すクールな風合いに惹かれます。


椛田有理09 椛田有理08

椛田有理10

もうひと種類、鉄のプレートに描かれた作品も。
こちらは薄い板がそのまま壁にマウントされ、小さな作品ながらものとしての重量感も感じさせてくれて、エネルギーが凝縮した感触が印象的です。


椛田有理13 椛田有理12

椛田有理11

色と黒だけを用いて制作される抽象世界でありながら、その色のバランスなどで時に青っぽいグレーも登場したりと、思いのほか豊かな色彩感ももたらしています。
その感触は、実にクールです。
また、時おり水墨画的な渋味も感じられるのがまた興味深いです。

シンプルな画風だからこそ、追究し甲斐があるような印象も受けた次第です。
意図的にコントロールされない平面的なアプローチによって偶発的に生み出される奥行きや立体感が、さまざまなイマジネーションの喚起を促します。

あらゆるサイズの画面で展開されるモノクロームの世界。
どういう方向へと進むのか、楽しみです。


椛田有理01

五月女哲平 Teppei Soutome -それでも世界は美しい-
青山|目黒
東京都目黒区上目黒2-30-6
11/19(月)~12/15(土)日祝休
11:00~19:00
五月女哲平071119DM.jpg

Teppei Soutome "The world is stil beautiful"
AOYAMA|MEGURO
2-30-6,Kami-meguro,Meguro-ku,Tokyo
11/19(Mon)-12/15(Sat) closed on Sunday and national holiday
11:00-19:00
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CHASE!

五月女哲平15

会期最終日に滑り込みで観ることができた、青山|目黒での五月女哲平さんの個展です。
ペインティング、写真、多様なメディアによるインスタレーションと、実に豊かな幅の広さと懐の深さでユニークかつユーモラスな展開が随所に見受けられ、観る側の意識を右へ左へと揺さぶるクリエイションが凝縮していました。


通り沿いの全面ガラス張りのウィンドウ越しにも「あれ?」と興味をそそられるペインティング。
入口からすぐの壁にまず3点。スクエアの大画面に描かれ、ワンポイント的な構成がおおらかな空間を無切り出しているペインティング。
これがホントにイイ味を醸し出しています。

支持体の地の色がそのまま活かされる中に、ちょこんと、しかし緻密に描かれるドラゴン。
鮮やかな赤色を纏うドラゴンの背中には、続く作品にも登場するキャラクターが乗っています。
左上にその姿を覗かせる太陽も、なんだかかわいくて。


五月女哲平03 五月女哲平02

五月女哲平01


それぞれの画面が独立しているようにも、ひとつのストーリーのようにも思える展開がまた楽しいです。
結構大きな画面の作品ですが、それ以上のスケールの大きさが伝わってきます。


五月女哲平04

その向かいに展示されていた、宇宙を思わせる作品。
黒の背景に、カラフルな色彩のドットがどこまでも続くような奥行きとダイナミックな空間性・時間性を発しているように感じられます。
違うシチュエーションでは意見する機会があったらまた異なる印象を受けそうな。


五月女哲平05

いちばん奥、一人掛けのイスの上に掛けられた作品もまた楽しいです。
ホント、「たったこれだけかよ!Σ( ̄口 ̄;)」って感じの情報量なのですが、それがいい!
この空間性が放つユーモアが堪らないのです。


五月女哲平13 五月女哲平14

五月女哲平12

さまざまなインスタレーション的な作品もユニーク極まりなく。
メッセージが繰り返し流れる電飾。


五月女哲平06


壁沿いの隙き間で展開される緑化計画。


五月女哲平07

写真の作品は、プレートにマウントされてずらりと並べられ、そのカラフルな感触が楽しい雰囲気を生み出していました。
展示を拝見してからずいぶんと時間が経ってしまったので記憶が曖昧なところもあるのですが、ギャラリーの青山さんから伺ったところでは、遊園地の中のさまざまな光景を切り取ったものだったかと。
ヴァーチャルなムードを演出する場所で散見されるカラフルな景色がこういうふうにカットされ、再構築されると、現実感とフューチャリスティックな雰囲気とが混ざりあい、不思議な感覚が沸き上がってきます。


五月女哲平08 五月女哲平10 五月女哲平11

五月女哲平09


他に、キャンディをモチーフにした展開もあったり。

・・・おっと。


冒頭のカーチェイス、続行中。
先ほどより少し離れて俯瞰すると、ハイウェイらしき場所をルーフを開けたセダンが先行し、それをパトカーが追う展開。


五月女哲平16

一体何所かと。


けっこう話題になった作品だそうで、ご存じの方も多いようなのですが...




五月女哲平17

ルームランナーか!Σ( ̄口 ̄;)


参った!
これにはやられました(汗)。

磁石をうまいこと使った作品。
スイッチを入れるとちゃんと2台のミニカーの車輪も回る。

眺める光景はまるで超アナログなアニメーション。
動画的。「画」じゃないけど、動画を楽しむ感覚に限りなく近い印象を受けた次第です。


いろんな作品がパッケージされた展示を拝見して、ペインティングにおける絶妙で大胆な空間の活かし方は、さまざまなインスタレーションでの展開から生み出されているのかも、などと想像したり。。。


いや、もっと早く見に行っておけばよかった、と少々後悔しつつも、観ることができたことを嬉しく思っています。
今後の展開も楽しみです!

神戸智行展
ギャラリー広田美術
東京都中央区銀座7-3-15 ぜん屋ビル1階
12/12(水)~12/22(土)日休
11:00~19:00
神戸智行071212DM.jpg

Tomoyuk Kanbe exhbition
Gallery Hirota Bijutu
7-3-151F,Ginza,Chuo-ku,Tokyo
12/12(Wed)-12/22(Sat) closed on Sunday
11:00-19:00
Google Translate(to English)

繊細の極地。

昨年に続いてギャラリー広田美術で開催された神戸智行さんの個展です。
昨年は大きな会場で、屏風の大作が中心の展覧会も行われ、それは僕は見逃してしまったのですが、その制作と展示とがひとつの転機となったような印象を受けます。

すらりとしなやかな稜線と淡い色彩とが描き出す軽やかで瑞々しい風景。
前回の個展では、画面の前面に風景が描かれた作品が多く出展されていましたが、今回の個展ではそこに食う感性がもたらされ、清らかな緊張感がもたらされているような印象を強く受けます。


神戸智行002

繊維のひとつひとつが分かるほどに薄い和紙、その裏側に貼られた銀箔。
和紙の隙き間から箔の輝きがふわりと広がります。
そこに描かれる枝葉の影。淡い緑色が実に鮮やかで、映る影の中に、さらに泳ぐ魚の姿が描き出されています。

緑の濃淡によって織り成される深み、魚影がもたらす時間的な奥行き、そして美しい余白が大胆に持ち込まれることによって生み出された空間性。
どれもが「これしかない」というバランスで一体となり、実に滋味に溢れ、穏やかな緊張をやわらかく放っているように感じられます。


神戸智行007 神戸智行006

神戸智行005

神戸さんの作品を拝見していると、その風景、そこに在る自然への敬意が感じ取れるような気がします。

自然の素朴さ、生命の持つ鋭い感覚などが、緻密な筆致とていねいな描写とによって再現されていて、そこに描かれた風景の絵だけで充分に、純粋な感動が得られるような印象を受けます。


神戸智行001

時にユーモラスに切り取られた風景も。
自然が見せてくれるさまざまな表情のなかから「これ」というところを引き上げる神戸さんのセンスにもあらためて脱帽です。


神戸智行004

他に、神戸さんの名刺代わりと言える、大きな画面で展開されている沢の絵なども展示されていました。

その作品を眺めているだけで、「他になにもいらない」と思わせてくれる作品に出会えるのはホントに嬉しいです。
日本画が「日本画」と呼ばれる前から積み上げてきたいわゆる「わび、さび」といった情緒的な要素が、実に現代的に表現されているような感触です。

素材の美しさも独特の感性で引き出された、軽やかで繊細な日本画。

次の展開もホントに楽しみです。


神戸智行003

《12/20》
佐々木加奈子 Walking in the jungle
MA2 GALLERY
東京都渋谷区恵比寿3-3-8
12/20(木)~1/31(木)日月祝・12/27~1/7休
12:00~19:00
佐々木加奈子071220DM.jpg

今年のVOCA展にも作品が出品されていた佐々木加奈子さんの写真展。
重厚なテーマと、ユニークなスタンスでのセルフ・ポートレート的表現などで繰り広げられる世界が深く印象に残ります。


《12/22》
シナプス40%OFF 打越月見・岡本東子 二人展
@Gallery銀座フォレスト
東京都中央区銀座1-9-8 奥野ビル5F
12/17(月)~12/22(土)
12:30~19:00(最終日:~17:00)
シナプス40%071217DM.jpg

日本画のアーティストの二人、打越月見さんと岡本東子さんとがそれぞれのコーナーで同じテーマを据え、想像で描くというユニークな企画です。


シナプス40%01


打越さんは昨年の個展での印象とは打って変わり、ユーモラスな風合いの作品が揃っていたのが印象的です。
線描の精度の緻密さが、キャッチーな感触をぐんと引き立てています。


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シナプス40%04


岡本さんの作品は、静謐感が漂うていねいな写実描写に惹かれます。
落ち着いた渋めの色調による統一感により、小さい画面からも深遠な雰囲気が漂うような感じです。


シナプス40%05

シナプス40%03


お互いの個性が引き立てあいつつ、シンプルな構成でその違いもしっかりと提示されて、楽しい展覧会でした。
お互いのポートレートを描いた「他画像」というのもあったり。
来年はそれぞれの個展も企画されているようなので、楽しみです。


シナプス40%02

西川芳孝展
アートスペース羅針盤
東京都中央区京橋3-5-3 京栄ビル2F
12/17(月)~12/22(土)
11:00~19:00(最終日:~17:00)
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折りに触れて拝見している西川芳孝さんの都内では今年2回目の個展です。
事前にどういう感じになるかを西川さんより伺っていたのですが、壁中にびっしりとおそらく墨で妖しい線が敷き詰められた紙が貼られ、圧巻の世界が作り上げられていました。

その過剰さ、クレイジーな印象を漢字で「阿呆」と表現したくなるような展覧会。
ここまでやり切ったことで、次に出てくる作品がどういうものになるかたいへん興味深いです。


西川芳孝102 西川芳孝103 西川芳孝104

西川芳孝101

TWS-EMERGING 089 メルヘンじゃいられない こんどうさちほ展
TOKYO WONDER SITE本郷
東京都文京区本郷2-4-16-2F
12/22(土)~1/20(日)月(祝日の場合開館、翌火休)・12/29~1/3休
11:00~19:00
こんどうさちほ071222DM2.jpg こんどうさちほ071222DM1.jpg

紙にモノクロームで展開されるキュートでシュールでユーモラスな世界。
壁中に飾られるパンツの絵には後ずさりしてしまいますが(笑)。

TWS-EMERGING 090 タニケニタ ショートストーリーズ
TOKYO WONDER SITE本郷
東京都文京区本郷2-4-16-3F
12/22(土)~1/20(日)月(祝日の場合開館、翌火休)・12/29~1/3休
11:00~19:00

キャンバスの上をボールペンがぐりぐりと走りまくったような絵。
ぼやけたシルエットの中にもたらされる濃淡が、そのモチーフの輪郭を妙な感じに現していて、なんとも不思議な魅力を放っています。


タニケニタ03 タニケニタ01

タニケニタ02


ふたつある展示スペースの奥のほうで展開されているプリントの作品も面白いです。
一昔前の「念写」を思い起こさせるぼやけた感じが、独特の妖しさとともに、斬新な感触も発しています。
向かいのモニターに上映されていた、おそらくこれらの作品に文字の羅列を絡めた映像作品もたいへん興味深いです。


タニケニタ05 タニケニタ06 タニケニタ07

タニケニタ04


プリミティブな画風に不思議と引き込まれ、不思議な魅力が感じられます。


タニケニタ08

佐伯洋江展
TAKA ISHII GALLERY
東京都江東区清澄1-3-2-5F
12/22(土)~1/26(土)日月祝・12/29~1/7休
12:00~19:00
佐伯洋江071222DM.jpg

全てを観てしまうのがもったいない...
目黒区美術館での鉛筆画のアーティストによるグループショーでもひときわ印象に残った佐伯洋江さんの個展です。

《12/23》
この日は美術館を一気に観て回りました。
それぞれ見どころがあって面白くて。

目黒の新進作家 -七人の作家、7つの表現
目黒区美術館
東京都目黒区目黒2-4-36
12/4(火)~1/13(日)月休(12/24開館、12/25、12/28~1/4休)
10:00~18:00
目黒の新進作家パンフ.jpg


ピピロッティ・リスト からから
原美術館
東京都品川区北品川4-7-25
11/17(土)~2/11(月)月休(祝日の月曜日は開館)12/25~1/4、1/15休
11:00~17:00(水:~20:00)
ピピロッティ・リストDM.jpg


日本の新進作家vol.6 スティル/アライヴ
東京都写真美術館 2階展示室
東京都目黒区三田1-13-3 恵比寿ガーデンプレイス内
12/22(土)~2/20(水)月(祝日の場合開館、翌日休)・1/1休
10:00~18:00 (木金:~20:00、12/28:~18:00、1/2~1/4:11:00~)
スティル|アライヴパン.jpg


文学の触覚
東京都写真美術館 B1F展示室
東京都目黒区三田1-13-3 恵比寿ガーデンプレイス内
12/15(土)~2/20(水)月(祝日の場合開館、翌日休)・1/1休
10:00~18:00 (木金:~20:00、12/28:~18:00、1/2~1/4:11:00~)
文学の触覚パンフ.jpg

《12/24》
椛田有理 空の反復
ART TRACE GALLERY
東京都墨田区緑2-13-19 秋山ビル1F
12/1(土)~12/26(水)
11:00~19:00(金:~21:00)
蒲田有理071201DM.jpg

白と黒とのせめぎ合いが生み出す空間性。
滲むように、あるいは飛び散るように画面に乗る黒、あるいは白が、スケールの大きなイメージを喚起させてくれます。

麻生知子 個展 -としわすれ-
Gallery Uehara
東京都渋谷区上原1-21-11 BIT代々木上原II1F
12/12(水)~12/18(火)
11:00~19:00(最終日:~17:00)
麻生知子071212DM.jpg

Tomoko Aso exhibition
Gallery Uehara
1-21-11-1F,Uwhara,Shibuya-ku,Tokyo
12/12(Wed)-12/18(Tue)
11:00-19:00(last day:-17:00)
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緩いぃぃ~。
温いぃぃ~。

Gallery Ueharaでの麻生知子さんの個展を観てきました。

TWS本郷での個展ではじめて拝見したときは、その独特すぎる色彩とモチーフの切り取り方、角度の捉え方、そしてなにより温い雰囲気に逆に度胆を抜かされ、この人はこれからどうなっていくんだろうと期待というよりむしろ心配って感じで。。。
で、それからしばらく間をおいて開催されたGallery Jinでの個展で拝見したとき

変わっとらんじゃないかぁぁ!Σ( ̄口 ̄;)

と、こんだけ緩いのに芯は強いのか、と、よく分かりませんけど、ていうかこのスタイルで

精度が上がっとるじゃないかぁぁ;`;:゙;`(;゚;ж;゚; )

って感じで思わず笑ってしまったわけでして。
もうそうなるとコリャ楽しむしかないでしょと、以降、シェル美術賞だったり先日のTHE SIXだったりと、作品を拝見するたびにほんわかとした雰囲気に和ませられて。


麻生知子003

今回はタイトル通り、年末の風物詩が主題となった作品が多く出展されていました。
クリスマスとか、大晦日とか、小忙しいこの季節のそこを取り上げますか、と、イイ感じのツッコミどころが満載で。

一瞬、「なんだろコレ」と思うわけです。
しかし、気付くと「なんだソレ!」と嬉しくなると同時に、膝の力が一気に抜ける脱力感がまた堪らなかったり。
下の同じようなモチーフが並んだ2点の作品など、入口のガラス扉越しに目に入ってきた瞬間は「少し違う作品を描くようになられたのかな」と思ったのですが、右がチキン丸焼き中の電子レンジ、左が紅白歌合戦放映中のテレビだそうで、「相変わらずじゃないかぁぁ」と期待に違わぬ緩さに一安心(笑)。


麻生知子005 麻生知子004

麻生知子001

お風呂がモチーフとなった作品。
浮かぶ柚とか、掃除中とか。。。
よく見ると本物の絆創膏が画面に貼られていたりして、妙なところで芸が細かかったりするのもツボです。


麻生知子008

麻生知子002

食品がモチーフとなった作品は、麻生さんの真骨頂。
七輪の網を真上から捉えて不思議な光景を生み出したり、一瞬どこかの冬の風景が描かれているのかと思いきや、実はケーキに乗る小さなチョコレートのお家やミニチュアのもみの木が生クリームの絞りに囲まれているののアップだったり、または闇夜に浮かぶ梅の花かと思わせといて、お節の重箱の蓋だったり。

いい加減にしろ!Σ( ̄口 ̄;)

とツッコミの勢いも加速。


麻生知子010 麻生知子007

麻生知子009

淀んだような茶系の色彩といい、描かれるモチーフのもわっとしたフォルムといい、麻生さんの作品における独特のつかみどころのなさが、「としわすれ」という忙しくもどこかほっこりとしたムードのなかで炸裂しています。
もしかしかたら、濃い茶色で描かれる人のシルエットなどから、何故か覚えている曖昧な記憶を思わせるような感じがして、それが年末のその年を振り返る気持ちとオーバーラップするのも、今回の展覧会の雰囲気を盛り上げていたのかも、と思ったり。。。

決して「巧さ」は感じさせない作風ですが、そこに充満するユーモアは格別。
そこからにじみ出る味わいは、親しみに溢れているような印象を受けます。

これからどうなるんだろう、という好奇心は今も持っていますが、作品と出会うその都度に楽しませてくれるような気がします。


麻生知子006

彫刻の本能 vol.3 伊藤一洋/木下好美/高梨裕理/戸塚憲太郎
hpgrp GALLERY 東京
東京都渋谷区神宮前5-2-11 H.P.DECO 3F
12/13(木)~1/14(月)12/31~1/2休
11:00~20:00(12/30:~18:00)
彫刻の本能071213DM.jpg

THE INSTINCT OF SCULPTURE Vol.3 KAZUHIRO ITO/YOSHIMI KISITA/YUURI TAKANASHI/KENTARO TOTSUKA
hpgrp GALLERY TOKYO
5-2-11-3F,Jingumae,Shibuya-ku,Tokyo
12/13(Thu)-1/14(Mon) closed on 12/31-1/2
11:00-20:00(12/30:-18:00)
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4名の立体のアーティストがパッケージされたグループショーです。
しかも、それぞれが異なる手法、素材を用いて、独特の世界を繰り広げています。


ショップの階段を登り切るまえに目に飛び込んでくるのが、高梨裕理さんの大きな作品。
巨大なお椀のような形状に、木片が編むようにつなぎ合わせられています。
底の部分の穴とおおらかな曲面が動的なイメージを喚起させてくれて、底の部分へと吸い込まれる、あるいは底から発せられるような印象を受けます。


高梨裕理hpgrp02 高梨裕理hpgrp03

高梨裕理hpgrp01


もう1点の有機的なフォルムの作品も見応えがあります。
脚部を除いて1本の木から彫り出され、その姿は実に有機的。
網目の部分は内側が空洞になっていて、それが余計に奇妙な感覚を醸し出しています。


高梨裕理hpgrp06 高梨裕理hpgrp05

高梨裕理hpgrp04

木下好美さんの作品は、塑像です。
焼かない土の作品。
手で形成された感触が、硬化した後もよりリアルに残っているように感じられます。
表面のざらつきも独特の深みを感じさせてくれます。


木下好美hpgrp05


王冠とベールとをモチーフにした作品も印象的です。
ベールの部分の、布のやわらかなラインを表現したなめらかな感触と、王冠の部分での細やかな作り込み。
それらが、誰かが被っているように作られていて、匿名性と、ストーリーの奥深さを醸し出しています。


木下好美hpgrp04 木下好美hpgrp02 木下好美hpgrp03

木下好美hpgrp01


塑像はアート作品としてお目にかかる機会は少ないと思うのですが、木下さんから伺ったところによると昔の仏像などに多く取り入れられた手法だそうで、そのせいか、だからもっとプリミティブな部分で親しみを感じるのかもしれないです。
靡く布を彷佛させる有機的な動線と、彩色されず素材の色がそのまま表面に出ているしっとりとした感触など、優しい風合いが嬉しい作品です。


木下好美hpgrp06

戸塚憲太郎さんによって形成される立体は、その形からそのまま臓器を連想させます。
床置き、台上、壁掛けで、ギャラリーのコーナー部分で展開され、石膏やセラミックなど、それぞれ異なる素材を用いつつも、色と形がこの一角に統一感をもたらしています。


戸塚憲太郎hpgrp01


つるりとした曲面と、ごりごりとした部分とのコントラストがアバンギャルドな雰囲気を生み出しています。
しかし、白い色彩がその危うさ、妖しさを中和させ、さらに素材の重量感をも解放し、不思議な軽やかさを放っているように思えるのも興味深いです。


戸塚憲太郎hpgrp02


群がるような床と台との作品と較べ、壁に設置された作品は、1体1体の臨場感がよりリアルに迫ります。
素材の艶、重厚な銀色の作品の白いものとはまた異なるテイストの生々しさ、スポットによって壁に写し出される影。それぞれが戸塚さんのクリエイションの有機的な風合いをよりぐんと押し上げているように感じられます。


戸塚憲太郎hpgrp04 戸塚憲太郎hpgrp05 戸塚憲太郎hpgrp06

戸塚憲太郎hpgrp03

ブロンズの伊藤一洋さんの作品は、鋭さをたたえたフォルムが印象的です。
剣の柄を思わせる危うい風合い、ブロンズの金属の輝き。さまざまな要素が一体となり、洗練と重厚とのコントラストによって冷徹とも感じ取れるほどの静謐感を漂わせます。


伊藤一洋hpgrp03

伊藤一洋hpgrp04


金属素材によって鈍い光が放たれつつも、他の3名と同様に、そのフォルムは実に有機的です。
鋭く伸びる部分、ぐしゃりと潰れたような部分。美醜それぞれがひとつの作品に織り込まれ、さらにお互いを引き立てつつ、美しい部分はより洗練された美しさを、潰れたような部分はそれだからこその存在感を放ちます。


伊藤一洋hpgrp02

伊藤一洋hpgrp01

床置きの作品も魅力的です。
壁掛けの作品もそうですが、伊藤さんの作品にはなんともいえぬ危うさと、そこから醸し出される緊張感が静謐な刺激をもたらしてくれます。
それでいて、安定したバランス感。危うさと落ち着きとが渾然一体となって迫ります。


伊藤一洋hpgrp09

先に「剣の柄」と表現しましたが、時おり「骨」に感じられることも。
全てが削がれ、晒されているようなソリッドな感触も。
そして、角度によって無限の表情を見せてくれます。
工芸的なスキルによる緻密な仕上がりも見応えを感じさせる、アバンギャルドな、スキャンダラスな匂いが放たれるクリエイションです。


伊藤一洋hpgrp07 伊藤一洋hpgrp08 伊藤一洋hpgrp06

伊藤一洋hpgrp05

これだけバリエーションに富んでいながらも、「有機的」という共通のイメージが、空間に筋の通ったイメージをもたらしているような気がします。
床の木目、白い壁、コンクリートが剥き出しの天井と、空間自体が持つコントラストもパッケージされた作品群に豊かな表情をもたらしているかのようです。

さまざまな角度から眺めることでたくさんの発見を見出せる展覧会です。

風間サチコ展 満鉄人 VS プリズン・ス・ガモー
無人島プロダクション
東京都杉並区高円寺南3-58-15 平間ビル3F
12/13(木)~1/26(土)木金土のみ(月~水は要予約)日祝・12/29~1/9休
11:00~19:00
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Sachiko Kazama exhibition "Mantetsujin VS Prison Su-Gamo"
MUJIN-TO production
3-58-15-3F,Koenji-minami,Suginami-ku,Tokyo
12/13(Thu)-1/26(Sat) Thu-Sun only (Mon-Wed:appointment only) closed on Sunday,national holiday and 12/29-1/9
11:00-19:00
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天を突く超弩級の迫力。

無人島プロダクションでの風間サチコさんの新作展です。

前回の個展の際にも年末に新作展が開かれることを伺っていて楽しみだったのですが。
高円寺の線路沿い、いかにも中央線沿線らしい「いなたい」雰囲気が充満した一角にあるちいさなスペース、無人島プロダクションへ伺い、窓から中の様子が目に入ってきた瞬間


どーん!


風間サチコ002


でけぇなおい!Σ( ̄口 ̄;)


でけぇ木版画だなおい!Σ( ̄口 ̄;)

それより「どーん」て何ね「どーん」てΣ( ̄口 ̄;)


もとい。

ダイナミックな木版画2点とドローイング、アニメーション作品が出品されています。

今回の展覧会のテーマを凝縮させた、一昔前の昭和初期の香りが漂うポスター風の作品。
こちらももちろん木版画。


風間サチコ008


絵柄の独特の躍動感といい、ユーモラスな書体の文字のといい、採用された紙の色といい、イイ味わいです。
風間さんの個性がパッケージされているような感触も嬉しくなってきます。
この作品、いちばん奥に展示されているのですが、手前の大作を目にした後で拝見すると、かわいくデフォルメされたそれぞれのキャラクターの佇まいにも妙にそそられたり。


鉛筆による緻密なドローイング、書での楷書の深み。
味わいの異なるモノクロームの作品が、空間にもたらすアクセントも絶妙。


風間サチコ010


風間さんが初めて手掛けるアニメーションも上映されています。
うねうねと浮かぶ題字に始まり、もわもわとして微妙につかみどころがなさそうで、しかしそこにけっこうな鋭さで、皮肉めいたメッセージのようなのものも込められているような感じがまた。


風間サチコ009

圧巻の木版画2点。
展示タイトルにもあるふたつのキャラクター、「満鉄人」と「プリズン・ス・ガモー」とが画面いっぱいに描き出されています。

入口正面の「満鉄人」。
バックに聳える汐留・新橋の風景。新しい日本テレビのビルの先進性が印象的なフォルムや新橋駅前の商業ビル群の看板などの陰影、さらには有り得ない方向から一直線に突っ込んできている「ひかり号」の曲面などの表現の緻密さに感服。
ビルの窓など、異なる形状もしっかりと描き分けられていることへの驚きは、尋常ではなく。。。木版画、すなわち凸版画、木版を彫って残した部分が画面に写し出されるわけで、つまりはビルの窓のひとつひとつはその枠の部分が版に残されているということで。ガラス窓の光る部分が白く抜けていて、そこをを彫り抜き細い枠の部分を残すというスキルの高度さと、その作業をこの画面の広さだけを貫徹するだけのモチベーションを保てる持久力にも感嘆してしまいます。

そういった光景をバックに、正面から大胆に描かれた「満鉄人」。
機関車の前面がそのまま頭部となり、機関部分、動力部分が左足側面に付いている、この細やかなディテールにも思わずニンマリ。
絶妙な陰影によって表現された、ボディの黒光りにも呑まれます。


風間サチコ007

風間サチコ006

かたや、「プリズン・ス・ガモー」。
太平洋戦争のA級戦犯が拘置されたという巣鴨拘置所がそのまま名前になったキャラクターは、その拘置所の跡地に建てられた池袋サンシャイン60に登場。
下方から見上げるような構図が、ただでさえ大きい画面にさらに巨大な迫力をもたらしています。
「罪」の文字が正面に刻まれる深い編み笠を頭部に据え、これまたよくぞ彫り上げたとあっぱれな仕上がりの格子状のボディが放つ力強さ、躍動感、重量感はただ、凄い、のひとこと。
さらに、ここから始まる破天荒な展開を予言するような闇夜の雲の蠢きや、ス・ガモーの左手から逃れようとする軍用ヘリのリアルなフォルムなど、男の子心もおおいに煽られます。


風間サチコ005 風間サチコ003 風間サチコ004

風間サチコ001

これらの作品の力強さに、感性が蹂躙されていく痛快さが堪らないです。

今回取り上げられたテーマの詳細については、ギャラリーに設置されているレジュメや無人島プロダクションのサイト内の紹介文をチェックしていただくとして、日本の近代史から引用した重厚な主題をモチーフに、ふたつのキャラクターやそれらが登場する場所に投影させ、ダイナミックかつキャッチーに、コミカルに表現し切っています。

歴史が持つ「暗さ」が、木版画のモノクロームによってさらに臨場感を伴って迫るような感触も印象的です。
また、直接画面に行為の痕跡が投げ込まれていくペインティングではなく、構図・下絵を作るまでを「創る」行為だとしたら、作品になるまでに「反転させる」「彫る」「摺る」という純粋な「作業」が作品が完成するまでの時間の多くを占める木版画という手法で表現されることが、歴史のテーマの重々しさからの程よい距離を生み出し、観るものに(想像ですが、おそらく作り手である風間さんにとっても)冷静な考察をもたらすような印象も受けた次第です。


・・・と、四の五の書きましたが、やはり風間さんの作品の迫力はぜひ「生」で、敢えてこのちょっと窮屈な空間で、臨場感たっぷりに、浴びるように体感してほしいです。

大塚泰子 新作展 空の彫刻
KENJI TAKI GALLERY/東京
東京都新宿区西新宿3-18-2-102
12/1(土)~12/26(水)日月祝休
12:00~19:00
大塚泰子071201DM.jpg

Yasuko Otsuka Sclupture of the Sky
KENJI TAKI GALLERY/Tokyo
3-18-2-102,Nishi-shinjuku,Shinjuku-ku,Tokyo
12/1(Sat)-12/26(Wed) closed on Sunday,Monday and national holiday
12:00-19:00
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どこまでもシンプルに提示される色彩、かたち。
そこから得られる無限のイマジネーション。

KENJI TAKI GALLERY/東京での大塚泰子さんの個展です。

展示空間に触れた刹那、呆然としてしまうほどに、敢えて表現すると「何もしないことを目指した」ような作品が並んでいます。
2色に塗り分けられた角材、パネル。
全面が白く塗られたキャンバスの作品。
細長いガラス片らしきもの。

しかし、それぞれの作品に添えられたタイトルが、イマジネーションを触発する触媒となって、思いっきり膝を叩いて納得してしまったり、壮大なイメージに思いを馳せたり。。。


ギャラリースペースに床置きされた、鮮やかな青色と茶色のツートーンに塗り分けられた角材、パネルの作品。
割合でいうと、ボトムの部分が僅かに茶色で、そこから上は全面が、青。

この展覧会に冠されたタイトル。「空の彫刻」。
「空」というかたちのないものをかたちにしようとしたとき...。
色が象徴するものを活かす...この場合だと、空の色と土の色をそれぞれの色彩に象徴させることで、何の変哲もないはずの角材やパネルがいくつものステージを突き抜けて壮大なイマジネーションの源泉となり得ていることに感動を覚えると同時に、そこに込められているユーモラスなアプローチがまた嬉しかったり。

大空がこのなかにパッケージされている、そういうスケールの大きなイメージが堪らない作品群です。

また、ガラス張りの壁に並んだカラフルな作品群にも惹かれます。
こちらは、上と下がちょうど半分で描き割けられているツートーン仕様で、やはり上は空の色、下は陸の色を表現しているように感じられます。
グレーや黒の空が、曇天、夜をイメージさせてくれたり、さまざまな色で塗られた陸の様子が、街並や海辺などを連想させてくれたり。それらがていねいに並んでいるのも、時間や経過や過ぎ行く日々の記録のようにも思えてきます。


このシリーズでは、もっとも印象的なのが、事務所へと続く一角に設置された台の上に置かれた、手のひらに乗るほど、片手で包めそうなほどにに小さな作品。

・・・手のひらに乗る、大空。
かわいいのに、大きい。
小さいことが、実際の空の大きさとのギャップをより大きなものへと押し上げていて、ホントにただの小さな角材、木片を塗っただけのもののはずなのに、そこに壮大なエネルギーが凝縮されているようなイメージが湧いてきて、大いに心を揺さぶられるのです。

壁に展示された平面の作品。
こちらも、むしろ過剰なほどにシンプルな絵画です。
さまざまな方形のキャンバスの表面のみが、真っ白に彩色されたものを中心に、指先ほどの大きさのものがいくつかちょこんと並び、カラフルに塗り分けられたもの、チョコレート色のもの。

最後のチョコレート色のものは、入口すぐのところに展示されているのですが、大きさがまさに板チョコ。
たしかタイトルも「チョコレート」だったと記憶しているのですが...。
要するに、モチーフそのものの大きさのキャンバスに、そのサイズのを描いた作品のようで。

それが分かると、この一角が面白くて堪らない!
「そういうことか!」と単調な画面におおいに納得。
描くモチーフに対する感情を過度に排除したようなアプローチと、そこに生み出されるシュールなユーモアに喝采。
こういったアプローチへと至る過程もたいへん興味があるところです。


他、ガラスの作品や、事務所に展示されたグリーンが用いられた作品など、ユニークなイマジネーションが投影されたものが溢れています。


おそらく、大塚さんの作品から何かを得るためにはある程度の現代アートに対する「慣れ」のようなものが必要な気はします。
作品そのものからのヒントは究極的に排除されているように感じられる、というのもあります。
しかし、やはりここにはこれでしか表現し得ないイメージがふんだんに存在していると思うのと、「面白い!」と思った瞬間に、ここまでのイメージの道程の紆余曲折も思い浮かんでくるのです。

「堪らない人には堪らない」インスタレーションが繰り広げられています。

富樫智子展 色彩の軌跡 vol.3 PARADOXICAL AMBER
art gallery closet
東京都港区西麻布2-11-10 霞町ビル3F
12/11(火)~ 12/25(火)水休(日:要予約)
12:00~18:30(土祝:11:00~)
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Tomoko Togashi exhibition trace of colour vol.3 PARADOXICAL AMBER
art gallery closet
2-11-10-3F,Nishi-azabu,Minato-ku,Tokyo
12/11(Tue)-12/25(Tue) closed on Wediesday (Sunday:appointment only)
12:00-18:30(Saturday and national holiday:11:00-)
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偶然が生み出す、色彩のミニマムな重なり。

art gallery closetでの富樫智子さんの個展に行ってきました。
もう、こういうのは一も二もなく好きなのです。
至近でじっくりと観ていったときに無限に見つかる発見。
うねるような色彩が放つ妖しげなリズム。


富樫智子10

富樫さんの作品に用いられるのは、ペンキだそう。
絵画に用いるには特殊な絵の具、もとい塗料の質感が、それぞれの作品に特徴的な重厚感を与えているように感じられます。

黒や深い赤など、濃い色彩が多く取り入れられていることも、さらにその世界の深遠さを強めてます。
それらの色彩が絡み、複雑な模様を作り上げ、画面上で渾然一体となって迫ります。
いわゆる大作は出品されていないものの、ひとつひとつの画面における情報量の多さは尋常でないのです。


富樫智子06 富樫智子05

富樫智子04

白を使った作品も見応え充分です。
広がる白の色面を侵食する黒、さらにそこに重なっていく、質感の異なる白。
画面に登場する色同士のせめぎ合いがアグレッシブな雰囲気を充満させ、超動的な感触により、観るもののイマジネーションの爆発を引き起こすかのようなエネルギーを、そのなかに内包しているように思えます。
ひとつの画面のなかにもたらされる、複雑と平坦のギャップもかっこいいんです。


富樫智子03 富樫智子02

富樫智子01

ギャラリーの入口左手の一角には、小品が凝縮して展示されています。
それぞれ異なる空間バランスからバリエーション豊かな印象を受けると同時に、全ての作品を見渡しても登場する色彩が限られていることによって統一感がもたらされています。
また、伺った時間帯が遅かったこともあり、抑えられた照明によって深い渋味や妖しげな風合いもさらに臨場感を伴って迫ってくる印象を受けた次第で。


富樫智子13 富樫智子14

富樫智子12

art gallery closetは今回はじめて伺ったのですが、外苑西通り沿いがカーブする部分と小道との角にあるビルの3階ということもあり、複雑なかたちの空間で、さらにソファなどのインテリアが配置されています。
そういった空間のなかでそのポテンシャルが引き出された富樫さんの作品群。
ソファの背もたれの上の壁で展開されるインスタレーション、絵のなかに凝縮されたミニマムに世界が組になり、さらにソファがある空間が醸し出す落ち着きと相まって、ユニークな味わいが滲み出ているように思えます。
陽が高い時間帯だと自然光も射し込んでくる空間なので、そのときにはまったく違う表情を見せてくれるのだろうな、と想像したり。


富樫智子09 富樫智子08

富樫智子07

独特な雰囲気のなかで繰り広げられるアーバンでミニマムな世界。
空間全体のゆるやかさと作品から放たれるアバンギャルドな緊張感とのコントラスト。
そこから沸き上がるイメージを、ゆったりと味わいたい展覧会です。


富樫智子11

《12/11》
富樫智子展 色彩の軌跡 vol.3 PARADOXICAL AMBER
art gallery closet
東京都港区西麻布2-11-10 霞町ビル3F
12/11(火)~ 12/25(火)水休(日:要予約)
12:00~18:30(土祝:11:00~)
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ペンキを用いてつくり出される、複雑で有機的な画面。
呑み込まれるような力強い深みが放たれています。

《12/13》
風間サチコ展 満鉄人 VS プリズン・ス・ガモー
無人島プロダクション
東京都杉並区高円寺南3-58-15 平間ビル3F
12/13(木)~1/26(土)木金土のみ(月火水は要予約)日祝・12/29~1/9休
11:00~19:00
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圧巻!
いなたい雰囲気が漂う高円寺の片隅の小さなスペースに登場したディープインパクト。

《12/14》
大塚泰子 新作展 空の彫刻
KENJI TAKI GALLERY/東京
東京都新宿区西新宿3-18-2-102
12/1(土)~12/26(水)日月祝休
12:00~19:00
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究極的にシンプルに制作された作品群から、尋常でない壮大さをもつイメージの刺激を受けます。
事務所に通ずるコーナーに置かれたちいさな作品がもう堪らないのです。

WAKO WORKS OF ART:15 Years Part ll
WAKO WORKS OF ART
東京都新宿区西新宿3-18-2-101
12/7(金)~1/19(土)日月祝・12/28~1/7休
11:00~19:00
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メインスペースに海外のアーティスト作品、サブスペースに日本人若手作家のペインティングが展示されています。

サブスペースの出品作家は、先日まで個展が開催されていてた政田武史さんと、石井友人さん。
政田さんの作品にたいしては、もう完全降伏。恐ろしささえ覚えるほどに鋭い視線を向けるワニの頭部、異文化の一場面など、前回の個展に続いてグロテスクなモチーフが取り上げられているのですが、細かい色面の重なりと鮮やかな色彩のコントラストがクールに響いて、画面の大きさ以上の圧倒的なスケールのイメージがもたらされるような。堪らないです。
政田さんのエッジの利いた画面と空間を共有する石井友人さんの世界は、逆に、ぼやけた色彩の重なりが不思議な雰囲気を放ち、曖昧な感触に包まれるような。霞がかかったようにも、細かいノイズが凝縮されているようにも思えます。今回は1点のみの出品ですが、もっといろいろと拝見してみたいです。

彫刻の本能 vol.3 伊藤一洋/木下好美/高梨裕理/戸塚憲太郎
hpgrp GALLERY 東京
東京都渋谷区神宮前5-2-11 H.P.DECO 3F
12/13(木)~1/14(月)12/31~1/2休
11:00~20:00(12/30:~18:00)
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ブロンズ、セラミック、木彫、塑像と、4者4様の手法と個性がひとつの空間にパッケージされ、さまざまな表情がもたらされています。
それぞれの素材が醸し出す有機的な質感も味わい深いです。

《12/15》
画廊企画 篠原愛
Gallery Q
東京都中央区銀座1-14-12 楠本第17ビル3F
12/10(月)~12/15(土)
11:00~19:00(最終日:~17:00)
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今年の5月の個展も印象深かった篠原愛さん。
移転したGallery Qで開催された今年2回目の個展に行ってきました。

細やかなペン画、油彩の作品のエスキース的な作品も織りまぜつつ、精緻で細微な線で複雑に、独特のシュールな世界が描き上げられています。


篠原愛003 篠原愛004

篠原愛005


油彩の作品は3点出品され、写実的な表現により、グロテスクなモチーフを織りまぜながら、危うい世界が展開されています。
前回の個展からわずか半年ですが、さらに凄みを増したような印象を受けました。


篠原愛001

篠原愛002

神戸智行展
ギャラリー広田美術
東京都中央区銀座7-3-15 ぜん屋ビル1階
12/12(水)~12/22(土)日休
11:00~19:00
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軽やかで爽やかに、瑞々しい風景を描く印象の、神戸智行さん。
今回はそれに更に、深い空間性がもたらされたアプローチの作品も出品され、小さな空間に豊かなバリエーションがもたらされています。

松井冬子/Narcissus
成山画廊
東京都千代田区九段南2-2-8 松岡九段ビル205号
12/15(土)~2/23(土)日祝・12/25~1/10休(水曜日:アポイントメントオンリー)
13:00~19:00
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出品作品数は5点ほどと少ないものの、それぞれの作品から妖しく放たれる高貴さは、やはり別格に感じられます。
そして、実際に作品を対峙し、心を打たれ、引き込まれて。

末宗美香子作品展 I CATCH SIGHT OF THE PRINCESS ―私は王女をちらりと見た―
SPICA art
東京都港区南青山4-6-5
12/13(木)~12/25(火)水休
13:00~19:00
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今年初め頃の個展に続いて開催されている末宗美香子さんの個展です。
白い背景に、ポージングをきめるさまざまな衣装を纏った人々の作品が並んでいますが、デザインからアートへとより近付いたかのような風合いが印象的です。
カラフルな感触はもちろん、敢えて曖昧に色がキャンバスに重ねられるような仕上がりが、独特のポップなイメージを発しています。


末宗美香子102 末宗美香子104 末宗美香子103

末宗美香子101

五月女哲平 Teppei Soutome -それでも世界は美しい-
青山|目黒
東京都目黒区上目黒2-30-6
11/19(月)~12/15(土)日祝休
11:00~19:00
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もっと早いうちに観に行けばよかった...。
ペインティング、写真、インスタレーションと、さまざまなメディアを跨いでユニークでユーモラスなクリエイションが繰り広げられていて。
なかでも大胆な空間性と緻密な構図によるペインティングと、「チキンレース」が最高で。

《12/16》
公開制作40 大巻伸嗣 ECHO - white void
府中市美術館公開制作室
東京都府中市浅間町1-3
12/1(土)~3/2(日)月・12/29~1/3休(祝日の場合開館、翌日休)
10:00~17:00
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2007年、日本で唯一観られる大巻伸嗣さんの新作です。
公開制作、加えて公共の場所での展開ということもあり、会期中に行われるパフォーマンスを交えてつくり出される世界。

展示場所に行くと、大きなキューブが1個、鎮座しています。
もともと透明のパネルに囲まれたキューブで、土曜日に行われたパフォーマンスでこのなかに大巻さんが入り、白の絵の具をぶちまけていってこういうふうになったとのこと。

大巻さんにもお目にかかれて、いろいろとお話も伺えたのですが、今回も出発点となるコンセプトが興味深く、そこからどこへ帰結するのか未知であるところもまた同様に興味がそそられます。

次回の公開制作・パフォーマンスは、年明け最初の土日、1/5、1/6で、ぜひそのときも足を運びたいと思います。


大巻伸嗣@府中

タムラサトル展 -POINT OF CONTACT 2
プラザ・ギャラリー
東京都調布市仙川町1-24-1
11/17(土)~12/25(火)水休
10:00~18:30
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Takuro Someya Contemporary Artでの個展が衝撃的だったタムラサトルさんの個展。
前回の展示のときは10メートルほどの長い距離で展開された「接点」が、今回は1メートル弱とコンパクトに設定。
木目調の床に合わせ、木の台の上に置かれて、ナチュラルな風合いと機能美とのコントラストが独特の味わいを醸し出しています。


タムラサトル202


ライトは壁にランダムに設置。ガラス張りの空間なので、外から眺めても、接点の具合によって点滅するたくさんのランプの様子に臨場感が伴います。


タムラサトル201


ドローイングも数点展示。
アイデアの源泉にちかいところに触れられる嬉しさも。


タムラサトル203

Konishishunya Christmas Exhibition
Bunkamura Gallery+
東京都渋谷区道玄坂2-24-1
12/12(水)~12/25(火)
10:00~19:30
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Bunkamura Galleryの外の壁での展開です。
今回は、壁に赤系統のカラフルなリボンが吊り下げられて、その上からリボンをまさにその場所に釣り下げていく女の子たちの作業の様子がオーバーダブよろしく投影されている映像インスタレーション。
黒い服を纏った女の子たちの姿と、ここ横切る人々の影とが自然に重なりあい、注視するとなんとも不思議な空間が紡がれています。

麻生知子 個展 -としわすれ-
Gallery Uehara
東京都渋谷区上原1-21-11 BIT代々木上原II1F
12/12(水)~12/18(火)
11:00~19:00(最終日:~17:00)
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なんかもう・・・堪らんのです。
このユーモア、脱力感には心底脱帽、身近な風景の「そこをそう切り取るか!」という衝撃に溢れた展覧会で。

小西紀行「人間の家」
ARATANIURANO
東京都中央区新富2-2-5 新富二丁目ビル3A
12/8(土)~1/26 (土)日月祝・12/23~1/7休
11:00~19:00
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Hiroyuki Konishi "House of Human"
ARATANIURANO
2-2-5-3A,Shintomi,Chuo-ku,Tokyo
12/8(Sat)-1/26(Sat) closed on Sunday,Monday,national holiday and 12/23-1/7
11:00-19:00
Google Translate(to English)

曖昧が確信へと変わる場所。

ARATANIURANOでの小西紀行さんの個展です。
小西さんの作品は、今年の武蔵野美術大学の学内で開催された修了制作展で拝見しています。
広いキャンパスを歩き回っての鑑賞なのでじっくりとその空間で味わうことは叶わなかったのですが、好みや興味以前に、気になる、忘れられないクリエイションだなぁ、ということを思ったのが記憶に残っています。


それから一通りの季節を過ごし、あらためて小西さんの作品と、しかもじっくりと対峙する機会を得た次第。
・・・さまざまなイマジネーションの刺激を受けることができる空間。


まず、その「色」に、一気に意識が引き込まれます。
重たい黒。
さまざまな色が混ざり、濁って、危うさを醸し出す白やピンク。
顔のパーツの存在をシンプルに、単調に表現する赤のドット。
小西さんの手によってキャンバスの上にもたらされる全ての色彩が、小西さんの専売特許と表現したくなるほど。まるでピアノから新たな音色がもたらされたかのように、個性的に響いているように感じられます。

そして何より、描かれる人々の表情、仕草。
妖しげに紡がれ、繰り出される色の流れ、絵の具の流れによって、実に曖昧なフォルムで描かれていながらも、その姿は画面全体から溢れる空想的で深遠な風合いからは意外なほどに写実的に表現されていて、そのギャップがまたユニークな雰囲気をつくり出しているようにも思えます。
加えて、その仕草、直下の作品だと「お馬さんごっこ」に興ずる親子の姿が、子どもの頃の記憶を呼び起こさせてくれるようなやさしさに満ちているのも印象的です。

リアルと抽象の境に横たわり、双方から伝わるイメージが交錯、合流して独特の深みを醸し出している、そんな印象です。

小西裕行04 小西裕行03 小西裕行02

小西裕行01

揺らめくような色の流れと赤いドットで描かれる人の顔は、匿名性を放つだけでなく、少なくともその表情からは年齢の差異を消失させているのも、たいへん興味深いです。
不思議な愛嬌を伴って、素朴にこちらを見つめる顔。絵のなかの人々から「ことば」は僕には聴こえてこないのですが、その純粋な表情が素朴な感情を現す音となって心のなかに響くような。

また、小西さんの作品にはいわゆる「背景」がないように感じられるのも、印象的です。
至近で眺めると、人のフォルムとそれを包みこむ色彩との境目、または素肌と服との境などが曖昧で、独特の色味が沈み込むような深い艶かしさが滲み出ているよう。揺らぐ色の存在が抽象的な世界を作り上げ、さまざまなイメージを喚起させてくれます。

もしかしたら、夜空に浮かぶ雲が形づくるような...。
または、水面の揺らめきが偶然生み出したような...。

無論、そこに描かれている人々の姿はしっかりと認識できるのですが、それすらもしかしたら偶然の産物のようにも思えて。そういう想像が浮かんできたのもまたも面白く感じられます。


小西裕行07 小西裕行08 小西裕行06

小西裕行05

画面に描かれるものが、感覚的にすべて確信できているような強さ。
絵の具のムラであったり、スクラッチであったり、打たれる点であったり。
さまざまな要素に、言葉にならない「意味」があるようにも思えてきます。


小西裕行09

メインスペースには大作が中心の展示。
サブスペースと事務所には、小品が展示されていて、こちらもたいへん印象的です。
画面の小ささからか、小西さんが描く人の「かわいさ」が引き立てられているかのよう。
よりカラフルな色使いなものや、ユーモラスなアプローチ、遊び心も作品によっては織り込まれていたりして楽しいんです。


小西裕行11

小西裕行12


作品をそれぞれチェックし、ファイルを拝見したら予想通り全ての作品が「untitled」。
強い色彩が凝縮するような強さと、揺れる色彩の崩れそうな危うさと。
小西さんが描いた作品の世界に接していると、言葉にならないイメージが膨らみます。
じっくりと対峙したい世界です。


同時開催されていた清澄のMAGIC ROOM?での旧作の展示も拝見し、黒の空間に展示された小西さんの作品は、独特の深みがさらに強調されたような風合いが印象的でした。


小西裕行10

―絵のある部屋― 福井直子展
INAXギャラリー ギャラリー2
東京都中央区京橋3-6-18 INAX:GINZA 2F
12/3(月)~12/26(水)日祝休
10:00~18:00
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Naoko Fukui exhibition
INAX Gallery Gallery2
3-6-18-2F,Kyobashi,Chuo-ku,Tokyo
12/3(Mon)-12/26(Wed) closed on Sunday and natinoal holiday
10:00-18:00
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嬉しい展覧会!
なんてダイナミック!
なんて大胆!

福井直子さんの個展です。
先日のFARMでの大槻透さんとの二人展も楽しかったのが記憶に残っているところで、今回の展覧会。
単に平面作品を展示するだけではなく、大胆にインスタレーションを行って、ユニークなシチュエーションが作り上げられています。

何せ、入ってすぐからもういきなり目に飛び込んでくる世界が。


福井直子012


コミカルな線と楽しげな色調に整えられた壁面。
洋風建築の趣を大胆に引用しつつも、ユーモラスな色彩感が、アニメっぽい雰囲気を演出して、楽しさを引き出しています。
そこに展示された絵もまた、福井さん独特の「おかしみ」というか、色や線、かたちが放つキャッチーな感覚が立体的に浮かび上がるかのよう。

一般的な考えとして、平面作品が観るものに非現実的なイメージを呼び起こすスイッチの役目を果たしているとしたら、そのスイッチをもっとスムーズに機能させてくれているような雰囲気がとにかく楽しいです。


さまざまなインスタレーションが繰り広げられています。
おっとりとした雰囲気、膝の高さの台は実際に座って大丈夫で、その世界のなかにさらに入っていけるようなインタラクティブな要素も盛り込まれています。


福井直子003 福井直子004

福井直子001


そして、無論、飾られる絵もステキです。
ほぼモノトーンで統一され、さまざまな模様が施された一角に、鮮やかな色彩が実に映えます。
こういうふうに展示されると「絵のなかの絵」のようなイメージも湧いてきて、不思議な感じも。


福井直子002

シンプルに絵だけが展示されているのも、イイ感じです。
まあるくデフォルメされ、楽しげな風合いを醸し出すシルエット、遊び心がふんだんに盛り込まれたような色合い、独特の臨場感。
ところどころに取り込まれるビーズがコラージュされ、色彩的にも、絵的にもかわいくてポップなアクセントをもたらしています。


福井直子006 福井直子007

福井直子005

さらにデフォルメされた窓の絵もいいんです。
手前のカーテンや窓などのフォルムが立ち上げられるように描かれ、遠くに見える風景が実に細やかに絵が描かれているうえに、実に深遠で清廉なグラデーションで描かれる空の美しさも印象に残ります。


福井直子010 福井直子011

福井直子009

他にもさまざまなシチュエーション、縮尺の作品がそこかしこに。
1点1点それぞれのシーンを眺めていると、ほっとするような、和める雰囲気を嗅ぎとったり、音も鳴り響いて賑やかなイメージに包まれたり。あるいは懐かしいような遠い記憶が蘇ってきたりと、さまざまな想像が脳裏を往来します。
そしてなにより、線と色面との大胆な組み合わせが放つコントラストがから、わくわくするような楽しさを感じるんです。


福井直子014

福井直子013

で、なんといっても圧巻が、展示室のなかに建っている小屋。
六角形のかたちをし、開いた穴からなかへと入って、木々のシルエットがくり抜かれたグリーンのプラスチック段ボールから届く光を浴びつつそこに飾られている絵や内装を味わったり、外側に描かれたさまざまなもの、飾られた絵やアイテムを見つけたりして。
壁に描かれた戸棚に置かれたモビルスーツのシルエットには異様に反応してしまった次第。そのあたりの引用も楽しいです。


福井直子016 福井直子017 福井直子018

福井直子015

自身が描いた作品を飾るにふさわしい場所も自身で作り上げる。
もしくは、自身が作り上げた空間に飾って合う作品を描く。
おそらく福井さんはそのどちらも並行して行うアーティストだと見受けるのですが、そのふたつの手段がうまく機能して、ホントにいい、楽しい空間が作り上げれられています。

展示空間全体の雰囲気とそれぞれの作品からにじみ出る独特の味わいと。
たくさんの方々に、福井さんが織り成す独特のユーモアと深みを浴びるように感じてほしいです。


福井直子008

ロッカクアヤコ
Galerie Teo
東京都品川区東五反田2-5-15-3F
12/11(火)~ 12/28(金)日月祝休
12:00~19:00
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Ayako Rokkaku exhibition
Galerie Teo
2-5-15-3F,Higashi-gotanda.Shinagawa-ku,Tokyo
12/11(Tue)-12/28(Fri) closed on Sunday,Mondayu and national holiday
12:00-19:00
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鮮やかな彩りで繰り広げられるキュートでポジティブでポップな世界。

Galerie Teoでのロッカクアヤコさんの個展、いつもの3階のフロアと階下の2階とに、ホントにたくさんの絵が展示され、見応え充分どころか、あまりの出品数に嬉しい悲鳴が心のなかで轟く贅沢で痛快な展覧会です。

さまざまなサイズの画面のなかに登場する女の子。
大きな目を見開いて前を向いて闊歩していたり、目を閉じて思いに耽っているようだったり、あるいは過ぎる時間の心地よさに心を委ねているようにも感じられたり...ひとつひとつの画面に浮かぶ表情が実に豊かでおおらかで、弾けるような色彩の元気な感じと、どこかほっとするような心地よさとが溢れています。


ロッカクアヤコ18 ロッカクアヤコ12

ロッカクアヤコ26

ロッカクさんは、ところどころでオイルバーを使って線を取り込むこともあるのですが、概ね筆を使わずに手で、というプリミティブな手法で作品を描きます。
自由で気ままな色使いと溢れるイマジネーションに対する素直なリアクションとでつくり出される活発な世界は、観ていてこちらのポジティブな感情をぐんぐんと膨らませてくれます。

それでさらに、その手法のプリミティブさが生み出す偶然性も見逃せない魅力です。
至近で眺めて、そこに描かれている絵が何であるか認識できない距離まで近付いて、絵の具の重なりを観てみると、軽やかな色彩でホントに豊かな世界が繰り広げられていて、ワクワクしてきます。
もっともキュートな抽象、そういう表現がしっくりくるような。

こんな発見がひとつの画面にも無数にあって、さらに出品作品数が尋常でないものだから、観る側からするとホント大変です(笑)!


ロッカクアヤコ17 ロッカクアヤコ16 ロッカクアヤコ15

ロッカクアヤコ14

さまざまな背景も魅力です。
主に白をバックにした作品が多く、その清々しい感じがまた気持ちいいのですが、ところどころに配置される濃い赤や黄色の背景の作品が、展示空間全体にアクセントをもたらしているだけでなく、それぞれの絵か浮かび上がってくるストーリーの彩りをも豊かにしてくれます。


ロッカクアヤコ27 ロッカクアヤコ24

ロッカクアヤコ28

3階は壁に直接掛けられ、2階はレールに吊るされて作品が展示されています。
一部作品を除いて、すべてが真っ白の額に収められ、それがまた清々しく、それぞれの絵のポジティブな雰囲気を引き立てています。


ロッカクアヤコ10 ロッカクアヤコ05 ロッカクアヤコ04 ロッカクアヤコ09

ロッカクアヤコ08

段ボールが支持体の作品も。
他に、パズルピースのドローイング作品なども出品されています。


ロッカクアヤコ07

ロッカクアヤコ11

ロッカクさんの作品のなかで、暖色系の色彩に惹かれます。
僕がアートをチェックするきっかけになったアーティストのひとりの作品のなかでもっとも印象に残っているのが、ちょうどロッカクさんと同じようにアクリル絵の具で女の子の絵を描いた作品で。
4年ほど前だと思うのですが、あらためてその頃持った感覚を思い起こさせてくれるようで、すごく懐かしいというか、もちろん、スタンスもコンセプトもきっと異なるとは思うのですが、僕自身のルーツを再認識させてくれたのが嬉しくて。


ロッカクアヤコ03

今回の個展では、ロッカクさんの真骨頂でもあるライブペインティングも開催されました。
レセプションと、本会期が始まって最初の2日間。
のびのびと、ぐんぐんと大きな画面が彩られていったような絵。床に散らばる絵の具のチューブやバケツ、オイルバーなどの道具も含めて、その光景がホント楽しそう。

残念ながら描いている最中は観られなかったのですが、そこで描かれた臨場感はぐんぐんと伝わります。
大きな画面におおらかな筆致(といっても手で描いているのですが...)。頼もしささえ感じます。


ロッカクアヤコ22

ホントにイマジネーションに溢れて、さらに膨らんでいくのを肌で感じられます。
3階と4階の床の色の違いで異なる雰囲気を味わえたり、ライブペインティングの作品が置かれた部屋に展示されている額装された作品の、支持体の引用が面白すぎる大胆な作品など、たっぷりと楽しませてくれます。

寒さが増す季節に心をあったかくしてくれる、いろんな意味で嬉しい展覧会です。


ロッカクアヤコ30

高桑康二郎展 -カナタへ。そして、Believing is seeing!-
GALLERY MoMo
東京都港区六本木6-2-6 サンビル第3 2F
12/4(火)~ 12/22(土)日月祝休
12:00~19:00
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Kojiro Takakuwa "To Kanata and Believing is seeing!"
GALLERY MoMo
6-2-6-2F,Roppongi,Minato-ku,Tokyo
12/4(Sat)-12/22(Sat) closed on Sunday,Monday and national holiday
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リアルなシーンの重なりが醸し出す、ヴァーチャルなポップ感。


高桑康二郎さんの個展です。
高桑さんの作品は、昨年と一昨年のシェル美術賞で拝見して、明るいんだけど怪しいというか、なんとんも不思議な感じがする世界が妙に印象に残っています。

ひとつの画面。
まず、身近さを感じるどこかの風景。
そのなかに、水中の人の姿と、ミリタリーのアイコンとが同時に登場する世界が、さまざまなサイズで展開されています。


高桑康二郎03 高桑康二郎01

高桑康二郎04

描かれる風景は、日本と、現在高桑さんがお住まいのパナマの風景がモチーフとなっているそう。
そこにあるいろんな建物、道路、あるいは木々、そこを通る人々、全てがていねいに描き出され、加えて明るい色彩によってカラッと乾いた雰囲気から心地よさを感じます。

一見するとよい季節の身近な光景なのですが、そこに例によって水面に顔を出す泳ぐ人の姿や、爆弾、戦闘機などの軍事的なモチーフが妙に自然に組み込まれています。
自然なのに、そこからはすっと簡単には言葉に表現できないような違和感も。
画面の中央の大きな木をバックに、落下する爆弾の存在感が、遠目に拝見していてもけっこうなインパクトを放ち、そこかしこにいる水着の女性の姿は顔が描かれないために匿名性が強調されているように思えます。

こういった違和感が、実にポップに展開されている違和感が痛快にも感じられるから、また不思議です。


高桑康二郎20 高桑康二郎19 高桑康二郎18

高桑康二郎17

都市の風景を描いた作品。
こちらは建築物の幾何学的な、現代的な姿が、重なるふたつのモチーフとのコントラストをより強めているように感じられます。
道路を進む戦艦、低空で飛ぶ戦闘機。ていねいに描かれるこれらのモチーフのかっこよさにも惹かれたり。
大胆な縮尺の差異が、軍艦や戦闘機そのものよりもその模型を連想させるのも、ポップな風合いを醸し出す要素なのかも、と思ったりもします。
さらに、水着の人々が水面に顔を出したまま、道路を歩くような感じに描かれているのもなんだかシュールで。
透明のアクリル板により、画面からはみ出る雲も気になります。


高桑康二郎16 高桑康二郎15 高桑康二郎14

高桑康二郎13

カウンターの隣の壁には小品とユニークなアプローチの作品が凝縮して展示されていています。
こちらの一角はパナマの風景がモチーフとなっている作品が集められているようで、より乾いた、中米の爽やかな空気が鮮やかな空の青から伝わってきます。


高桑康二郎05

高桑康二郎06


面白いのが、壁に棚状に水平に設置され、そこにフィルムが貼られたアクリルの仕切り板が取り付けられた作品。
手前に水中の絵、奥に公園の絵が描かれ、アクリル板のなかで手前と奥のふたつの絵が重なってひとつの世界を作り上げています。


高桑康二郎10 高桑康二郎11

高桑康二郎07

カウンターに展示されている、モチーフが異なる作品も印象に残ります。
メインスペースに展示された作品に登場する水面から顔を出した人の姿が大きな画面に描かれているもの。


高桑康二郎12

なぜ、こういうユニークな世界を描くのだろう、と、シェル美術賞展で高桑さんの作品を拝見してから感じていたのですが、高桑さんといろいろとお話を伺えて、納得することが大いにありました。

今回は事情によって出展されなかったのですが、大きく描かれた水中の作品も制作されていて、その作品では、展示された空間に顔を水面に出し匿名性を強く放つ人物が大きく描かれた水中の風景が眼前にダイナミックに提示することで、展示空間にいながら水中にいるようなヴァーチャルなイメージも鑑賞者に提供したい、という意図があるそう。そのリアルとヴァーチャルとの関係を、近作では風景に水中の人々を描くことで表現しているとのことです。

また、飛ぶ戦闘機、進む軍艦、落下する爆弾は、戦争と平和とが同時に進行している時間性を表現していて、ひとつの画面に織り込むことで時間的な立体感を立ち上げています。


さまざまな要素が盛り込まれていながらも、高桑さんが描く作品の大きな魅力はやはり、鮮やかな色彩とていねいな描写とによる「ポップさ」のような気がします。
描かれる全ての要素とその違和感のユーモラスな風合いが、すべて「分かりやすく」伝わってくるんです。

今回は出品が見送られた大作も、ぜひ拝見したいです。


高桑康二郎02

宮本裕美展
Gallery Jin Projects/JinJin
東京都台東区谷中2-5-22 山岡ビル1F
12/8 (土)~12/22(土)
月火休 12:00~19:00(最終日:~17:00)
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Yumi Miyamoto exhibition
Gallery Jin Projects/JinJin
2-5-22-1F,Yanaka,Taito-ku,Tokyo
12/8 (Sat)-12/22(Sat) closed on Monday and Tuesday
12:00-19:00(last day:-17:00)
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繊細な、儚げなピンク色の重なり。

昨年、ヴァイスフェルトで開催された「RX-CUBE CUBIC」にもフィーチャーされた宮本裕美さんの個展です。
ヴァイスフェルトでは、レース模様が重なるように、緻密に描かれるリトグラフ作品の出品でしたが、今回の個展ではドローイング作品も合わせて展示、それぞれ異なるテイストで、爽やかさ、清らかさを伴った独特の奥行きある世界が展開されています。


リトグラフの作品。
ひとつひとつのテクスチャーが重ねられ、緩やかな風にもなびくような印象のやわらかい風合いが再現されています。


宮本裕美001

宮本裕美002

綴られるレース模様は、実に薄い3次元に封じ込められたような印象を覚えます。
しかし、その薄さ、繊細さからは壊れそうなものに対する緊張感は感じられず、むしろ優しい風合いが感じられるような気がします。
さらに、レースの折り重なりによってつくり出される「かたち」からは、画面に乗る絵はフラットな印象であるのに、それを纏う人の姿も浮かんでくるのが不思議です。


宮本裕美005

宮本裕美004

ドローイング作品は、リトグラフの「版」の作品よりも強めの色合いで描き出されます。
支持体も、紙、パネルに目の細かいキャンバスが張られたものとあり、それぞれが素材の違いからも異なるテイストを醸し出しています。

リトグラフ、平版は版に直に描いたものがそのままプリントされる手法で、他の版の手法と比べても描き手の作業の跡がより画面に投影されるのですが、ドローイングとなるとさらに作業と画面との「距離」は縮まって、より臨場感溢れる作品に仕上がっているような印象を覚えます。
特に、宮本さんの場合、それがより顕著に感じられます。

版を介さない、描くことへのリアクションがそのまま画面に反映される自由度。
自由だからこその危うさ。版作品と比較すると、どうしても現れてしまう「粗さ」。
色合いこそ濃いめに展開されて這いるこも含め、ほぼ同様のモチーフでありつつ、さまざまな要素が画面にスリルを、緊張感をもたらしているように感じられます。


宮本裕美007

宮本裕美006

小さな部屋には「紙にドローイング」の作品が。
色数も増え、宮本さんご自身のイマジネーションへの冒険的なアプローチが感じられます。


宮本裕美008

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カウンターがあるスペースにも小品が展示されています。
リトグラフの平面に収められた感触と比べ、画面から立ち上がるようなレース模様に、繊細だからこそ放たれる独特の強さが感じられます。


宮本裕美010

宮本裕美011

リトグラフ、ドローイング、どちらの作品からも、宮本さんの「色彩」が広がっています。
また、それぞれの画面における空間性、余白とモチーフとのバランスのよさ、収まりのよさも印象に残ります。

敢えてリクエストするとしたら、余白なしの、びっしりとレース模様が画面全体を覆う作品を拝見してみたいなぁ、と。リトグラフでもドローイングでも、宮本さんが紡ぎ出すレース模様だけでうねるような奥行きが感じられる作品が出てきたら、どういうふうにイマジネーションが刺激されるだろう、と、想像すると、ワクワクしてくるんです。


宮本裕美003

《12/4》
高桑康二郎展 -カナタへ。そして、Believing is seeing!-
GALLERY MoMo
東京都港区六本木6-2-6 サンビル第3 2F
12/4(火)~ 12/22(土)日月祝休
12:00~19:00
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シェル美術賞で拝見して、描かれているユニークな世界が印象に残っていたアーティスト。
大作から小品まで、面白いアプローチの作品もあります。
リアルとバーチャルのバランスにより、個性的な世界が作り上げられています。

《12/6》
杉本博司 漏光
ギャラリー小柳
東京都中央区銀座1-7-5 小柳ビル8階
12/6(木)~1/12(土)日月祝・12/28~1/7休
11:00~19:00

「THEATER」のシリーズが中心に展示されています。

見事な装飾が施された館内の内装が、スクリーンの明かりによって照らし出され、絶妙な陰影がもたらされ、艶かしささえ感じられるほどの臨場感で画面に収められています。
スクリーンが映し出されている場所は、その画面にぽっかりと開いた方形の穴のようにそのかたちを晒していて、回りの有機的なかたちとの鮮烈なコントラストを醸し出しています。

トリミングされた照明、されrていない照明、それぞれが作品の深みを引き出し、広い空間に大判の作品がたった4点のみの展示ながら、深遠な雰囲気がひろがります。

伺った日はオープニングレセプションの最中で、多くの方がいらっしゃってたのですが、劇場をを撮影した作品のせいか、談笑する人、鑑賞する人越しに眺める作品も快く感じられたのも印象的で。


これらの作品に囲まれて、音楽を聴いてみたい衝動が湧いてきます。
この場で演奏される音楽が...それが音楽として機能していたら、どんなに難解、複雑な音楽でも面白く響くような気がします。

《12/8》
金丸悠児展 -Animalia-
@ギャラリー・しらみず美術
東京都中央区銀座5-3-12 壹番館ビルディング4F
12/1(土)~12/11(火)日休
12:00~18:30(最終日:~17:00)
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もう何度も拝見している金丸悠児さんの展覧会。
ユニークな作り込みと独特の味わいを伴ったかわいさをもつ動物たちの作品、目にするとやはりいいなぁ、と思ってしまいます。


金丸悠児206

金丸悠児205


今回は違う素材を用いた作品が出品されていました。
ちいさなボール紙に描かれた動物たち。すっきりとしたアクリルケースの額に収められ、整然と並べて展示されていて、画面は違ってもいかにも金丸さんらしい色使いと表情の作品から新鮮な味わいが滲み出ていました。


金丸悠児203 金丸悠児204

金丸悠児202


今年、おぶせミュージアムで開催された芸大デザイン科修了作家の展覧会に出品された大作も再び登場。
大画面で描かれたときの迫力と、やっぱりそれでも失われないキュートな表情が堪らないです。


金丸悠児201

―絵のある部屋― 福井直子展
INAXギャラリー ギャラリー2
東京都中央区京橋3-6-18 INAX:GINZA 2F
12/3(月)~12/26(水)日祝休
10:00~18:00
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これは面白い!
FARMでの大槻透さんとのコラボレーションも楽しかった福井直子さんの、今回は個展。
あたらしいINAXギャラリーの空間にキュートなインスタレーションが展開され、フィクショナルな演出の中に福井さんのペインティングが配置され、太い線が描き出すコミカルで楽しげな雰囲気と、それらによってていねいなグラデーションで表現される景色が引き立てられている世界がとにかく楽しいです。

齊藤瑠里展 a drama
ギャラリー山口B1F
東京都中央区京橋3-5-3 京栄ビルB1F
12/3(月)~12/8(土)
11:00~19:00(最終日:~17:00)
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昨年の移転する前のOギャラリーでの個展も印象に残っている齊藤瑠里さんの、今回はギャラリー山口の地下のコンパクトなスペースでの個展。
今回出品された作品では、背景に花のモチーフが敷き詰められ、リズミカルな空間の中に、どこか憂いを帯びたような独特な表情を浮かべる人物が描かれていて、これまでとはまた異なる味わいが感じられます。


齊藤瑠里003 齊藤瑠里002 齊藤瑠里004

齊藤瑠里001


手のひらに乗るサイズのちいさな作品がつらつらと並ぶ一角や、小品群も、独特の空間性がもたらされています。


齊藤瑠里008 齊藤瑠里009


正面の壁に展示された大作は、見応え充分。
鮮やかな赤の背景にびっしりと配置された薔薇の花のフォルム。ひとつひとつ異なるかたちやそのうちのいくつかに施された黄色い彩色が、おおらかなうねりを生み出し、そこにひとり佇むワンピース姿の女性の浮遊するような姿が不思議な雰囲気を放っていました。


齊藤瑠里007 齊藤瑠里006

齊藤瑠里005

小西紀行「人間の家」
ARATANIURANO
東京都中央区新富2-2-5 新富二丁目ビル3A
12/8(土)~1/26 (土)日月祝休
11:00~19:00
小西紀行071208DM.jpg

画面を這う絵の具の流れが生み出す動的な感触、それによって描かれる人物の肖像、姿。
そして、つぶらな赤い瞳。
武蔵野美術大学での修了展示でも強く印象に残っている小西紀行さんの個展。抗い難い味わいを放つ世界に、一気に引き込まれていきます。

ヤン=バン・オースト Jan Van Oost - il songo di Dante/ダンテの眠り -
nca|nichido contemporary art
東京都中央区八丁堀4-3-3 ダヴィンチ京橋B1
12/7(金)~1/26(土)日月祝休
11:00~19:00
Jan Van Oost 071207DM.jpg

観念的な、それぞれに込められたメッセージやコンセプトに深い奥行きを感じさせるさまざまな作品が並ぶ展覧会です。

特に印象に残るのが、大きな画面で展開されるモノクロームのドローイング。
衝動と、クールネスとを同時に感じさせてくれます。とにかくかっこいい。
分厚い画集に収められたドローイングも見応えがあります。


Van Oost 01


割れた鏡など、作品に大胆に取り込まれるさまざまな素材が、アバンギャルドな雰囲気を強烈に発散させています。


Van Oost 03


一瞬ぎょっと度胆を抜かされるような作品もあり。
それぞれの作品との対峙に時間をかけて、そこから静かに沸き立つイメージをじっくりと噛み締めたい展覧会です。


Van Oost 02

加藤怜子 個展 -THERAPY-
Gallery空
東京都台東区東上野3-9-7
12/3(月)~12/10(月)
11:00~19:00(最終日:~17:00)
加藤怜子071203DM.jpg

昨年以来の加藤怜子さんの個展です。
加藤さんというと艶かしい「手」が織り成す妖しげな世界を思い浮かべるのですが、今回はその手のモチーフが封印され、緻密な線描による花のフォルムが重なる作品が。
大胆な箔の使用と、鮮烈さと渋さとを感じさせる色彩とにより、やはり独特な世界が描き出されています。


加藤怜子003 加藤怜子004

加藤怜子002


細かい花がびっしりと描かれ、幽玄に揺らぐ空間が描かれている大きな作品も印象的。
くっきりとした線がポップな風合いを醸し出しているのもユニークに感じられ、色調とのギャップも面白いです。


加藤怜子001

宮本裕美展
Gallery Jin Projects/JinJin
東京都台東区谷中2-5-22 山岡ビル1F" target="_blank">
12/8(土)~12/22(土)
月火休 12:00~19:00(最終日:~17:00)
宮本裕美071208DM.jpg

昨年のヴァイスフェルトでの女性アーティスト3名をフィーチャーした展覧会にもクレジットされていた宮本裕美さんの、今回は個展。
儚げな雰囲気を醸し出すピンクの色彩が繊細に広がります。
リトグラフ、ペインティングの作品が出品されています。

Rie Fu「Art of Music」
CALM & PUNK GALLERY
東京都港区西麻布1-15-15 浅井ビル1F
12/5(水)~12/11(火)
12:00~20:00(初日:~16:00)
Rie Fu 071205DM.jpg

昨年ラジオで流れてきた、穏やかな声で紡がれるシンプルな曲を聴いて、以来ずっと心の端に置いてあるミュージシャン、Rie Fuさんの、絵画の個展。

気になるミュージシャンの展覧会、楽曲のオーソドックスなイメージとも通じるような、油絵の具のインパクトなども随所に活かされた真っ当なコンテンポラリーアートが展開されています。
展示された作品に統一感こそないものの、ひとつひとつの画面に収まった世界はそのまま音楽制作にもフィードバックされているのだろうな、と思うと、いろいろと伝わるものも。。。

で、会場で最新アルバム「Tobira Album」も購入。
美しいメロディにシンプルに乗る言葉も心地よい、素敵な楽曲が並んでいて、ここ数日リピートで10回以上聴いてます。

ロッカクアヤコ
Galerie Teo
東京都品川区東五反田2-5-15-3F
12/11(火)~ 12/28(金)日月祝休
12:00~19:00
ロッカクアヤコ071211DM.jpg

筆ではなく手で、活発な色彩で描かれる女の子。
元気に満ちあふれた空間が広がっています。
階下のフロアも合わせて実にたくさんの作品が出品され、さらにライブペインティングも行われていて、見応え充分、ロッカクアヤコさんのポップな世界がダイナミックに展開されています。

PANTA RHEI‐全ては、流れ、全ては、変わる‐溝口達也展
clementsalon*workshop
東京都港区南青山4-26-16-B1
12/2(日)~12/27(木)火休
11:30~20:00(日祝:10:30~18:00)
溝口達也071202DM.jpg

PANTA RHEI Tatsuya Mizoguchi exhibition
clementsalon*workshop
4-26-16-B1,Minami-aoyama,Minato-ku,Tokyo
12/2(Sun)-12/27(Thu) closed on Tuesday
11:30-20:00(Sunday and national holiday:10:30-18:00)
Google Translate(to English)                    

重厚な版の存在感。

clementsalon*workshopでの溝口達也さんの個展です。

薄暗い空間に、版画と、それに用いられた版とが対になって展示されています。


溝口達也01


版のユニークさ、圧巻の重厚感に呑まれます。
大判の鉄板に施されるプレート。それらの配列で、コンビナートの風景が再現されています。
ピックアップされるモチーフの雰囲気をぐんと引き出す素材の質感。鉄筋に乗せられて展示されているのも、素材感をさらに全面に押し出しているように感じられます。


溝口達也02

溝口達也03


この版により刷られたものを写真製版し、アクリルのカバーが被せられた作品がいっしょに展示されています。
荒れた画面や版の凹凸よって生み出される陰影により、独特の深みが放たれています。


溝口達也04

その隣には、航空写真のような視点で捉えられた、コンビナートを一望する画が。
溝口さんの版の手法だとより平面的なモチーフがあっているような印象で、思えば地図や航空写真は究極的な平面画像なので、手法のユニークさがさらに際立ち、臨場感がよりリアルに伝わって、見応え充分。迫力やスケール感も一段と増しているように感じられます。


溝口達也08 溝口達也06 溝口達也07

溝口達也05


無論、版の存在感も力強いです。
プレートやネジが無機的に配置されて生み出されるコンビナートの俯瞰風景。
存在の冷静さ、重厚さ、迫力が静かに沸き上がります。


溝口達也10 溝口達也11 溝口達也12

溝口達也09

鉄ではなく、パセリをびっしりと配置した作品も。
版と版画とが隣り合わせで展示されています。
木々が並んでいるようにも、あるいは海岸線を俯瞰しているようにも見える、不思議な作品です。


溝口達也17

溝口達也16

プレートにネジがびっしりと配置された作品も。
こちらは写真製版ではなく、直に刷られた版が展示されています。
普通よりも段差が大きい版によって生み出されるインクの滲みに、いつも拝見している版画と格別に異なる「行為の痕跡」の力強さが滲み出ているようで、また、実に無機的な色合いも独特の深みを放っているように感じられます。


溝口達也15


版は、剥き出しのコンクリートの床に直に置かれています。
大小のネジの頭の無骨さが際立ち、素材感にまず意識が奪われますが、これもよく拝見すると、ちょうどこの場所がある界隈の地図が描かれていて、それが分かってからは、それぞれの場所を確認する面白さにしばらく浸った次第。。。


溝口達也14

溝口達也13

素材が素材だけに、制作する行為そのものへの想像も膨らみます。
また、最初の水平視点で描き出されたコンビナートの作品からも、本来奥行きがあるものを平面に押し込むような強引さもむしろ魅力に感じられます。

この作品でしか味わえない雰囲気が、空間に満ちていたのが心に残ります。

筒井伸輔展
MIZUMA ART GALLERY
東京都目黒区上目黒1-3-9 藤屋ビル2F
11/28(水)~12/22(土)日月祝休
11:00~19:00
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Shinsuke Tsutsui exhibition
MIZUMA ART GALLERY
1-3-9-2F,Kami-meguro,Meguro-ku,Tokyo
11/28(Wed)-12/22(Sat) closed on Sunday,Monday and national holiday
11:00-19:00
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観れば観るほどに、増える新たな発見。
時間が経てば経つほどに、膨らむさまざまなイメージ。

MIZUMA ART GALLERYでの、およそ2年ぶりとなる筒井伸輔さんの個展です。

筒井さんの作品の行程は、言葉だけで伺うと実に複雑に感じられます。
顕微鏡拡大された虫の甲殻が生み出す図形的な構成を各色に分割し、ひとつひとつ蜜蝋を用いてピース化、それらをパズルのように繋げる、という複雑で超個性的な行程は、ぜひその制作過程を映像で拝見したい、という好奇心が湧いてきます。

この独特の行程で作り上げられる質感、色彩も、無論、相応のオリジナリティを放っています。
筒井さんの作品からしか味わえない感覚、湧いてこないイメージに溢れています。

拡大された昆虫のフォルムを描いていながらも、一見するとこれは抽象的な風合いが感じられます。
筒井さんの作品を拝見するのは前回の個展以来2度目なのですが、その際も絵の基が昆虫を伺ってようやく「なるほど、そういえば...」と感じたことを覚えています。
筒井さんにナゼに昆虫なのか、と伺ってみたのですが、平面的なモチーフを求められたとのこと。確かに、描かれるモチーフには、意図的というか、むしろ敢えて奥行きを出さないことに腐心しているような印象も感じられます。

しかし。


その究極的に平面的な主題だからこそ、パネルに定着する蜜蝋の、目測でおよそ2mmほどの厚みの物質的な奥行きが、至近で眺めるとミニマムな「奥行き」を、より新鮮な臨場感を伴って発せられているように思えます。

とにかく、素材の美しさにぐんぐんと惹かれていくんです。


ギャラリーに入って正面、今回出品された中でもっとも大きな画面の作品。
ブラッドオレンジを思わせる独特の色身の中に、さまざまな色が混ざり込み、溶け合うようにして、揺らめくような光景が眼前を覆います。


筒井伸輔03 筒井伸輔02 筒井伸輔04 筒井伸輔05


蜜蝋の独特の光沢、白濁感。
素材の個性が全面に表出し、絵の具とは圧倒的に異なる感触が、新鮮で不思議なイメージを喚起させてくれます。
至近で眺めて隣り合う色の響きを感じたり、俯瞰して全体の彩りが醸し出す雰囲気にイマジネーションを委ねたり。
行程を想像すると無機的な印象が浮かぶのですが、実際に作品を拝見すると、色調や素材の感覚から、実に有機的な感触を覚えます。


筒井伸輔01


作品を側面から見ると、蜜蝋の厚みが実感できます。
この厚みが絶妙の透過性が生み出し、物質的な奥行きによってさらにユニークな世界に押し上げているように思えます。


筒井伸輔06

比較的小さな作品が並ぶ一角がまた、素晴らしい!

前回の個展では渋めの色調でほぼ全ての作品が紡がれていた印象があったので、今回のこれらの作品群のカラフルさがたいへん新鮮に感じられます。
蜜蝋の奥にちりばめられた繊維がさらに絶妙なアクセントとなっています。


筒井伸輔12

筒井伸輔11


作品によっては、独特な「和」の風味を放つ作品も。
言うまでもなくそこまでは小さくないのですが、花札を連想させるパネルのかたちと、渋めの色彩が織り成す調和が、モチーフが昆虫であることを忘れさせて、絵巻の一部のような世界観を連想した次第です。


筒井伸輔09 筒井伸輔10

筒井伸輔08

奥のコーナーには、さらに小さなサイズの作品と、昆虫を描いたドローイングが展示されています。
コンパクトな画面の作品も、大画面の壮大な感触とはまた違った味わいがあって。


筒井伸輔13

筒井伸輔14

この展示は白い壁に直に作品が掛けられているのですが、それがさまざまなシチュエーションでの筒井さんの作品の表情を連想させてくれます。
ここで展示されることで、独特の色彩感が画面から立ち上がるように引き出され、フレッシュな美しさをより鮮烈に演出しているのですが、例えば、大理石の建造物のなかで、または木造の寺など、長い時間が積み上げられた空間に配されたらどんなふうに響くだろう、とか、いろんなイメージが湧いてきます。

その場所の空気などで、きっとさまざまなイメージを喚起してくれそうな作品群。
じっくりと時間をかけてた堪能したいクリエイションです。


筒井伸輔07

THE SIX
横浜赤レンガ倉庫1号館2F
神奈川県横浜市中区新港1-1-1
11/29(木)~12/2(日)
11:00~20:00(最終日:~16:00)
THE SIX 07パンフ.jpg THE SIX 07 DM.jpg

THE SIX
YOKOHAMA RED BRICK WAREHOUSE 1st pavilion 2F
1-1-1l,Shinko,Naka-ku,Yokohama-shi,Kanagawa-ken
11/29(Thu)-12/2(Sun)
11:00-20:00(last day:-16:00)
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いろんな意味で、面白くて楽しみな企画!


東京藝術大学、多摩美術大学、武蔵野美術大学、東京造形大学、東京工芸大学、横浜美術短期大学の6つの尾大で開催された学園祭で面白い展示をピックアップし、パッケージした展覧会。

学祭は芸大のしか行けなかったので、この企画は観られなかった大学の学祭での展示のいくつかをチェックできるありがたさはもちろん、キャンパスではなくちゃんとした展示空間で再び展示されることで作品群も園面白さがぐんと引き出されて、実際に芸大で観ているかも知れない作品もここで再び拝見してその魅力を改めて発見することができたり、と、いろんな意味で嬉しい展覧会です。

加えて、学生による運営というのもまた興味深かったり。
「面白いものを作る」ことが大事なのは当然として、「面白いものを面白いと思ってもらう」こともそれと同じくらい大事で、それをこういったかたちで経験することにも好感が持てます。
実際、初日も最終日も人に溢れ、フレッシュなクリエイションがさらに多くの方の目に触れる機会となったのも、喜ばしいです。


もとい。
四の五の言わずに展示のレビュー。
オープニングに足を運び、最終日にあらためて伺ったのですが、最終日の終了時間を勘違いしていたために少々バタバタしてしまったのですが、特に印象深かったものを。


まず、うんばさんのケレン味のない平面作品にぐっと惹かれました。
キャッチーな色使いがとにかく気持ちいい!


THE SIX07 うんば

小林裕子さんのインスタレーション。
小林さんは以前から存じ上げていて、芸大の学祭でも作品を探したのですが見つけることができず(音楽学部のエリアで展示されていたそう...)、ここでチェックできるのがホントにありがたい。。。
ファイルを拝見するとさまざまなメディアを用いたインスタレーションを展開されるようなのですが、こちらでは透過性のある紙を使って作られた切り紙をガラス窓に貼る、というもの。
福井利佐さんに通ずるような、妖しげな流線のカットが施された切り紙が、窓から溢れるように設置されていて、神々しい爽やかさを放っていました。
自然光がそのまま作品の表情に変化をもたらし、明るい時間のフレッシュさと、夜、照明に照らされたときの深遠さと、どちらも味わい深くて印象に残ります。


THE SIX07 小林裕子02

THE SIX07 小林裕子01

古川あいかさんの連作は圧巻です。
一週間のベッドの様子を描き、それを並べた展示。
サイズはもちろん、ていねいな陰影がモノクロームの色使いで施されていて、独特の深みがもたらされています。


THE SIX07 古川あいか

杉本泰三さんの銅版画も見応えがあります。
緻密に描き上げられる森の中を思わせる風景。


THE SIX07 杉本泰三

折りに触れて拝見していて、今年のシェル美術賞にも入選されていた麻生知子さん。
この緩い色調のインパクトは相変わらず。
シンプルでユーモラスなモチーフがシュールに描かれています。


THE SIX07 麻生知子

斎藤哲也さんの一連の作品、強烈な凄みを放っています。
人体に緻密に描き上げられた黒のレリーフ。ボディ部分はもちろん、作品によっては顔に描かれているものもあって、異様なエネルギーが充満していました。


THE SIX07 斎藤哲也

ぜんこくずかん制作委員会の圧巻のインスタレーション。
目測でほぼ4畳半くらい(ってかなりいい加減ですけど...)のスペースに繰り広げられるジオラマ。
そのそこかしこに、いろんなキャラクターやアクセントがちりばめられています。


THE SIX07 ぜんこくずかん

アニメーションで特に印象に残ったのが、一瀬皓コさんの一連の作品。
ほのぼのとしたかわいらしい絵で綴られるお誕生日の作品とか、場面のひとつひとつやすべてさらっていくようなダイナミックなオチなど、シュールな展開にとにかく引き寄せられ、、ツッコミどころも満載で笑みが最初から最後まで持続する面白さ。


THE SIX07 一瀬皓コ

最後の展示室では、カアロフィヴェバロパツアーなるインタラクティブなインスタレーションが繰り広げられていました。
ヨーロッパ旅行で出会い、意気投合したアーティストがそれぞれのメディアの作品をパッケージしたインスタレーションで、置き石を伝いながら作品に近付いて観ていく行為が楽しくて。


THE SIX07 カアロフィヴェバロパ2

THE SIX07 カアロフィヴェバロパ1

他にも、先鋭的なグラフィックアートが展開されていたTYMOTE、溢れるイマジネーションを無理矢理詰め込んだようなエネルギッシュさに満ちたハイブリッド研究所の一角、虫本文さんの味わい深い立体作品などなど。。。

これからもぜひ続けていってほしい企画です。
これが認知されていって、学生の制作へのモチベーションを膨らませるひとつになれば素晴らしいなぁ、と。

大橋博「image of inlet」
WADA FINE ARTS
東京都中央区築地3-2-5 第2平和田ビル
11/27(火)~12/14(金)日月祝休
11:00~19:00
大橋博071127DM.jpg

Hiroshi Ohashi "image of inlet"
WADA FINE ARTS
3-2-5,Tsukiji,Chuo-ku,Tokyo
11/27(Tue)-12/14(Fri) closed on Sunday,Monday and national holiday
11:00-19:00
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良い塩梅に毒味が効いた、 シュールなメルヘンワールド。


WADA FINE ARTSでの大橋博さんの個展です。
大橋さんの展示は、WADA FINE ARTSが今の場所に移る前、ギャラリーイセヨシ時代に拝見していて、実物大のFRP製の人形が床にびっしりと配置され、すべてがマリオネットよろしく紐で天井から吊られた状態で床に立っていて、その紐を引っ張るとガシャガシャと動く、という強烈なユーモアを伴ったインスタレーションが記憶に強く焼き付いているのですが、今回はFRPの原型でもある木彫の作品をメインに、床に座る子どもと白鳥がコンパクトなギャラリーに配置された不思議な雰囲気を発するインスタレーションが繰り広げられています。


車座になって首をぐんともたれる鳥を囲む子どもたち。
スカートの裾に縫い付けられた赤い鈴が真っ白の布に映え、その鮮やかさがキュートなアクセントとなっています。
指先、爪先までていねいに再現され、かわいらしい姿で床に据わった大きなおめめ、ニヒルに浮かぶ笑みがまたけっこうなインパクト。白の清潔な雰囲気とのギャップを強く感じます。また、囲まれた水鳥の薄いようなグレーもこのインスタレーションに映え、その仕草や目も神々しく感じられます。

1体だけ服を着させられていないのですが、これがオリジナルの木彫。コピーに囲まれていながらも、はやり格別な存在感が感じられるから、やっぱり不思議です。


大橋博02 大橋博04

大橋博03


一角には上半身だけコピーされたFRPの作品も。


大橋博01

奥の壁に設置された台には、白鳥が横たわった木彫作品が。
これがまた、凄い存在感、神々しさを放っています。

緻密に彫り上げられた羽、そこに渋めの陰影と赤いビーズが施された白鳥。
長い首を台上にもたれさせ、ほんの僅かに小首をかしげるその仕草はユーモラスでもあり、同時に憂いや儚さなどが思い浮かんで、この一角が放つイメージの奥行きに引き込まれてしまいます。


大橋博07 大橋博06

大橋博05

白鳥と子どもによる、仄かに広がるファンタジックな雰囲気。そしてむしろ、強烈に充満する何かに対してのアンチテーゼ、メッセージ性のインパクト。
楽しい方向、それとは逆に童話に必ず盛り込まれる怪しいイメージ、そのどちらへも想像が広がっていきます。
1体1体の存在感が凝縮して迫るインスタレーションです。

・・・と、床面ばかりに気を取られていると。


!Σ( ̄口 ̄;)


大橋博09


怖いだろコレ!!!Σ( ̄口 ̄;)


普通怖いだろってコレ!!!Σ( ̄口 ̄;)


壁に浮かぶ頭部半分。
お下げ髪を這わせ、「重力なんぞ関係ないぞぇ」(「ぞぇ」て)と言わんばかりに、鋭くニヒルな笑みを浮かべて見下ろす顔。

いや、もう、これを見つけた瞬間のギョッとした感覚と言ったら。
お下げ髪のシャープなフォルムといい、とにかくこの空間に凄まじ過ぎるアクセントを放っています。

一度気付くとこの存在から逃れられないほど。


大橋博08

大橋博10

やっぱ怖いよコレ!!!Σ( ̄口 ̄;)


もし僕が子どもの頃にこれを観たらケッコウなトラウマになった気がします...(冷や汗)。


も、もとい。


さらにさらに、空間全体の配置から溢れるストーリー。
相当にイマジネーションを刺激する、深いインスタレーションです。

《11/23》
シェル美術賞展2007
ヒルサイドフォーラム
東京都渋谷区猿楽町18-8 ヒルサイドテラスF棟
11/21(水)~12/2(日)
10:00~19:00
シェル2007パンフ.jpg

今年で4年続けて拝見するシェル美術賞。
未知のクリエイションの発見と、既知のアーティストの力作との出逢いが嬉しいのですが、4回目とあって、いつもよりも更に既知のアーティストの作品が印象に残りました。

油彩で日本的なモチーフを描くスタイルに興味があるのですが、昨年拝見して以来気になっている上原雅美さんの作品も、今年も強いインパクトを感じました。油絵の具の魅力と力強さとがちょっと違うかたちで押し出されていて、スクエアのパネルに大胆に描かれた世界に今後の可能性を大きく感じます。もっとも個展を拝見したい作家の一人です。

驚いたのが、龍口経太さんの作品。そのクオリティの高さは以前からよく存じ上げているのですが、まさかシェルで観られるとは...!大胆な筆致の油彩の作品が大勢を占める中で、研ぎ澄まされた日本画のスキルで表現されるメイドの姿の昇り立つような静謐感が際立ちます。

淵沢照晃さんのペン画の登場にも意表を突かれました。ギャラリーエスでの個展で拝見して、緻密さに加え、押し寄せるノイズの連続を想像させる展開のかっこよさに惹かれたのですが、出展作品のなかで小さいめながら、思わず至近でじっくりと観てしまうほどの精緻さがよりユニークに感じられました。

杉田陽平さんのオリジナリティ溢れる世界もさらに力強く発展したのも印象的です。絵の具の塊が重なり、全てを呑み込んでしまいそうなほどの圧巻の色彩のうねりは凄まじいです。

福島淑子さんのグランプリ受賞も嬉しいです。独特の人物の表情と仕草からにじみ出る曖昧な時間、深みと奥行きを感じさせる黒の背景など、その世界がさらに深みを増したような印象です。

他、依田梓さん、麻生知子さん、mayuさんの作品も、続けて拝見している作家の今をチェックできて嬉しかったです。

《11/24》
池田光弘 宙を繋ぐ
SHUGOARTS
東京都江東区清澄1-3-2-5F
11/10(土)~12/08(土)日月祝休
12:00~19:00
池田光弘071110DM.jpg

VOCAで拝見して強く印象に残っている池田光弘さんの個展。
VOCAでは迫るような奥行き感とダークな色調、恐ろしささえ思い浮かぶほどに鋭いフォルムなどで繰り広げられる有機的な世界に惹かれたのですが、今回の個展では、色調こそクールな作品が並びますが、むしろ穏やかで静謐な雰囲気が印象的です。
細かい煉瓦などの緻密な描き込みや、幾何学的なイメージも浮かぶほどに、まるで計算されたように再現される遠近感。僕が持っていたイメージと異なる世界が繰り広げられていますが、その無機的とも思えるほどの整然とした雰囲気に、池田さんのクリエイションの深さを感じます。

《11/28》
'07年末チャリティー企画 290人のクリエイターによるオリジナルカップ&ソーサー展 お茶にしませんか?
ガーディアン・ガーデン
東京都中央区銀座7-3-5 リクルートGINZAビルB1F
11/26(月)~12/22(土)日休
11:00~19:00
お茶にしませんかパンフ.jpg

これは面白い!楽しい!
クリエイションギャラリーG8と同時開催のこの企画、こちらではこれまで「ひとつぼ展」で紹介されたたくさんのアーティストの絵柄が施されたコーヒーカップがずらりと並んでいます。
イラストレーターやペインターの作品が異なる支持体に描かれている空間性の面白さはもちろん、他のメディアのアーティストのカップを観て「・・・こう来たかぁ!」と思いっきり唸らされるものも。
ノーエディションで販売もされているので、じっくりと選びたいです。

筒井伸輔展
MIZUMA ART GALLERY
東京都目黒区上目黒1-3-9 藤屋ビル2F
11/28(水)~12/22(土)日月祝休
11:00~19:00
筒井伸輔071128DM.jpg

蜜蝋を用い、ユニークなプロセスを経て作り上げられる独特の世界。
筒井さんの作品を拝見するのは、前回個展以来たいへん久し振りですが、今回は色彩のバリエーションが増し、さらにその世界に大きな広がりがもたらされています。
時間をかけてじっくりと観て、たくさんの発見をしたい展覧会です。

《11/29》
THE SIX
横浜赤レンガ倉庫1号館2F
神奈川県横浜市中区新港1-1-1
11/29(木)~12/2(日)
11:00~20:00(最終日:~16:00)
THE SIX 07パンフ.jpg THE SIX 07 DM.jpg

思わず唸る好企画。
6つの美大で開催された学園祭で行われた面白い展示をピックアップし、パッケージした展示です。
学園祭は芸大のしか観られなかったので、こういうかたちで再び紹介されるのもたいへんありがたい!

《11/30》
高山恒展[ 肉覚 ]
The Artcomplex Center of Tokyo 2F ACT4
東京都新宿区大京町12-9
11/26(月)~12/1(土)
11:00~20:00
高山恒071126DM.jpg

ジェッソが敷かれたパネルの白の上に緻密に描かれる鉛筆画。
モチーフがグロテスクで重たいのですが、それでも思わずじっくりと見入ってしまうほどの陰影の深みと細やかさは強く印象に残ります。


高山恒02 高山恒01

高山恒04

もっと他の展開をぜひ拝見したいアーティストです。

大橋博「image of inlet」
WADA FINE ARTS
東京都中央区築地3-2-5 第2平和田ビル
11/27(火)~12/14(金)日月祝休
11:00~19:00
大橋博071127DM.jpg

木彫とFRPの作品を配置し、なんとも不思議な味わいを放つインスタレーションが繰り広げられています。
子どものあの表情、白鳥のゆったりとしたユーモラスな姿、そして気付くと頭から離れない強烈なアクセント。

《12/1》
アニマル・コレクション
不忍画廊
東京都中央区八重洲1-5-3 不二ビル1F
11/19(月)~12/1(土)日休
11:00~18:00(土:~17:00)
アニマルコレクションDM.jpg

不忍画廊のコレクション展的な展覧会ですが、そのなかに新しいアーティスト、柳ヨシカズさんがピックアップされていたのが印象的です。
シンメトリーで展開される動物の絵。やさしいグラデーションを伴った色彩の背景に、ていねいに描かれる動物の姿が美しいです。


柳ヨシカズ03 柳ヨシカズ01

柳ヨシカズ02

《12/2》
横浜美術館ボランティアが出逢った「若きアーティスト」展 日根野裕美 冨谷悦子 松宮硝子
横浜美術館アートギャラリー1
神奈川県横浜市西区みなとみらい3-4-1
11/3(土)~12/2(日)木休
10:00~18:00(金:~20:00)
若きアーティスト展2.jpg 若きアーティスト展1.jpg

3名の女性アーティストがピックアップされた企画。
それぞれ、異なる場所で拝見しているアーティストなので、この組み合わせにも面白さを感じます。

日根野裕美さんの日本画とペン画。やさしく穏やかに、時おり爽やかに広がる色彩と細やかに描き込まれる草花や飾りのなかに佇む女の子の姿。これまで比較的メインストリームな企画で紹介されることが多かった日根野さんの作品が、現代アートの先端を行く他の二人といっしょの空間に収められ、いつもと違う魅力も感じられました。

冨谷悦子さんの銅版画はやはり圧巻です。
現在開催中の六本木クロッシングにフィーチャーされているのも印象的ですが、凝縮された線で繰り広げられる魑魅魍魎の世界に、究極の緻密を思い起こさせてくれます。その一方で、柱に展示されていたペインティングの作品2点がユニークなギャップをもたらしていたのも興味深いです。

一度拝見したら忘れられない松宮硝子さんのガラスの作品。松宮さんの作品もこれまで何度か拝見していて、今回出品されている作品のいくつかは既知のものでしたが、今回の展示がいちばんよかったような気がします。先鋭的な可憐さ、危うさと儚げな風合い。有機的なフォルムを覆う尖ったガラスの針が放つ緊張感、ガラスという透過性のある素材が醸し出す氷のような繊細なイメージ。さまざまな要素が静かな空間と照明とによって引き出され、ぐんとリアルに迫るインスタレーションが繰り広げられていました。

ANTA RHEI‐全ては、流れ、全ては、変わる‐溝口達也展
clementsalon*workshop
東京都港区南青山4-26-16-B1
12/2(日)~12/27(木)火休
11:30~20:00(日祝:~10:30~18:00)
溝口達也071202DM.jpg

鉄の版によって表現される力強い風景。
街並みや製鉄所を俯瞰したものや、水平な視点によコンビナートのフォルムなど、重厚な展開がなされています。ユニークな手法も印象的です。

薄久保香“Wandering season”
TARO NASU
東京都港区六本木6-8-14-2F
11/24(土)~12/22(土)日月祝休
11:00~19:00
薄久保香071124.jpg

Kaoru Usukubo "Wandering season"
TARO NASU
6-8-14-2F,Roppongi,Minato-ku,Tokyo
11/24(Sat)-12/22(Sat) closed on Sunday Monday and national holiday
11:00-19:00
Google Translate(to English)


繊細に、おおらかに紡がれる、淡く仄かなファンタジー。


TARO NASUでの薄久保香さんの個展です。

薄久保さんの作品は、今年のART AWARD TOKYOに出品されていた、大きな画面に清々しさと渋さとをたたえた色調で描き上げられた子どもの鷹匠(という表現でいいと思うのですが...)の作品がたいへん印象に残っています。
ふわっと眼前に広がる光景の鮮やかさ。かつ、ていねいに写実的に描かれていながら、仄かに揺らぐフォルムのやわらかい風合いが、記憶と未来とを同時に織り上げていくような独特の時間の流れが連想された次第で。

今回の個展では大作を中心に、独特の雰囲気がそれぞれの画面からやわらかな色彩が発せられ、それらが展示された空間全体に満ち広がって、やさしく包み込まれるような...清々しさと心地よさ、さらにそこからさまざまな想いも溢れる、素敵な世界が繰り広げられています。

それぞれの作品の独特なシチュエーションが、想像を膨らませてくれます。
奇妙なフォルムの両開きの扉。その有機的なかたちが放つ妖しげな感触、そこに映り込んでいるのか、扉の枠の中の茶色の中にさまざまなシルエットが浮かび上がっているような...もしかしたら錯覚かも知れないのですが、僕はそこに映り込む風景に太古の世界を思い浮かべます。
ノブに手をかけてしゃがみ込む少年の後ろ姿。現代的な服を纏っていて、それが妖しげな扉が醸し出す時間のイメージとの間にギャップを生み出しているのもたいへん興味深く、それがさらに大きな想像を喚起するような気がします。


薄久保香01

薄久保さんの作品をじっくりと眺めていると、さまざまな表情がそこかしこに織り込まれていることに気付かされます。
緻密なグラデーションで施された陰影。写真家と見紛うほどの精度で描き上げられる少年の素肌、髪の毛。。。
それはもしかしかたらそこに存在しない...虚像かも知れない。そんなイメージが浮かぶ、消え入りそうなほどに甘く、曖昧な色彩同士の境目。
往年の印象派の風合いを仄かに感じさせてくれる、遠くに広がる暖かで穏やかな草原の緑。

こういった異なるテクスチャーがまったくナチュラルに重なり、ある部分は立ち上がり、またある部分は淡く広がりながら、響きあって、独特の不思議な世界が作り上げられているのもたいへん印象的です。


薄久保香06 薄久保香05 薄久保香04 薄久保香03

薄久保香02

薄久保さんの作品には、ペーパーワークス、紙の立体のオブジェが多く登場します。
それらは、(ご本人から伺ったのではないのですが)ご自分で作り、それをモチーフにして描いているのだそう。
風景とペーパーワークのオブジェとがひとつの画面で、ユニークな縮尺で重ねて描かれたとき、ますますユニークな世界が生み出されます。


薄久保香07


そのペーパーワークのオブジェが大きくフォーカスれた作品、この鮮やかさも素晴らしいです。
実際のものは、もっと紙の質感が感じられたりするのだろうなぁ、と思い浮かべるのですが、紙のエッジの鋭さオブジェそのもののシュールな風合いが、こうやって画面の中に収められ、独特のタッチで描かれることで消え失せて、繊細で優雅で、仄かな華やかさもふっと画面から広がっているように思えます。
ここでしか味わえないような洗練さえ感じさせてくれるファンタジー。


薄久保香08

登場する少年、子供達は一様に表情が隠され、匿名性が仄かに漂います。
そういったところからも、さまざまな想像、登場する彼や彼女への感情移入や俯瞰といった異なるアプローチを可能にさせてくれているような気がします。

薄久保さんの作品に囲まれて、過去の記憶が立ち上がってきたり、あるいは知らない世界、未来へと思いを馳せたり、と、いろんな印象が心の中に去来するなかで、もうひとつ感じることがあります。
キャンバスに油彩、という、過去から連綿と続き、ある種やリ尽くされた感もある手法によって描かれた作品でありながら、大きな意味ですごく「新しいなぁ...」と思ったんです。

あらゆるクリエイションにおいて、「新しい」ものはない、と常々思っているので(「誰もやっていない」ことが「新しい」わけではないと確信しています)、「斬新」とか「未来的」とは違った視点で、また「鮮度」という意味ともちょっと違う、「新しい」という感触が僕にとって嬉しいです。

このテイストの作品をこれから先も続けて拝見していったとして、そのときそのときで常に「新しい」と思わせてくれるような期待感がある、といった感じなのかも知れません。

今後もチェックし続けていきたいクリエイションです。


薄久保香09

内なる領域 / Inner realm
東京画廊
東京都中央区銀座8-10-5 第4秀和ビル7F
11/21(水)~12/8(土)日月祝休
11:00~19:00(土:~17:00)
内なる領域071121DM.jpg

Inner realm
Tokyo Gallery
8-10-5-7F,Ginza,Chuo-ku,Tokyo
11/21(Wed)-12/8(Sat) closed on Sunday,Monday and national holiday
11:00-19:00(Sat:-17:00)
Google Translate(to English)

フレッシュな4つの個性がピックアップされた展覧会です。
男性と女性も二人ずつ、ペインターとユニークなメディアを用いたアーティストも二人ずつ。さらにいうと、落ち着いたトーンとカラフルなものと分けても、ちょうど二人ずつ。いろんな視点からもバランスが取れていて、しかもそれぞれがのびのびと、かつ緻密に個性を発揮して、お互いが響き合っているように感じられるのも嬉しい企画です。


まず、平良美樹さんの実に渋い雰囲気を充満させる作品が目に留まります。


Inner realm平良美樹01


深みある茶色に染められた布。
そこにびっしりと書き記される文字、文章の羅列。
人のかたちをして、それがさらに神妙な風合いも感じさせてくれます。


Inner realm平良美樹05 Inner realm平良美樹06 Inner realm平良美樹07

Inner realm平良美樹04


書き込まれた文章は、昔話だそう。
それぞれ物語が綴られて、それを纏う人形は、その物語に登場するキャラクターのようにも、あるいは物語全体から浮かび上がってくる像のようにも思えてきます。

ちいさな作品群は、そのひとつひとつのユーモラスなかたちかが不思議な愛くるしさを漂わせているのも印象的です。


Inner realm平良美樹02


北京のスペースで開催された展覧会では全長2メートルほどにも及ぶダイナミックな作品も出品されたとのこと。
こちらに展示されている作品も、大きな作品のほうは大小の文字が現れ、梵時のようでもあり、そこから独特のうねりのようなものも感じられるので、さらに大きな作品となると更に凄みのようなものも感じられるのかな、と。機会があればぜひ拝見したいなぁ...などと思っていると。

!Σ( ̄口 ̄;)

Inner realm平良美樹03


思わず


ひとりでそっち行っちゃイケマセン!!!Σ(゜□゜)


と叱ってしまいそうな、なんかもう、お転婆な楽しい展開も。

奥の一角には、こんどうひさしさんのユニークな作品が並んでいます。
透明アクリルのパネルに開けられた無数の穴を、刺繍糸がびっしりと網のように配され、いろんなモチーフが描かれています。


Inner realmこんどうひさし03 Inner realmこんどうひさし02

Inner realmこんどうひさし01


糸を使った作品となると、もともとある糸の色でグラデーションが作られているのですが、その辺りの緻密さも見事です。
加えて、糸の始まりと終わりが少し眺めただけでは判別できないほどにていねいな仕上がりも印象的、加えてアクリルパネルが用いられているうえに天井から吊るされて展示されているので、表裏の両面どちらから観てもしっかりと「絵」になっているのも面白いです。
工芸的な緻密さによるインパクトと、提示されたユニークな手法が放つ可能性に、今後の展開に期待が膨らみます。

支持体がアクリル板なのでいろいろと難しいところはあると思われるのですが、大きな画面での展開も観てみたいです。


Inner realmこんどうひさし04 Inner realmこんどうひさし05

Inner realmこんどうひさし06

田中慶子さんの作品には、太った人がいっぱい登場し、コミカルな仕草でユーモラスな場面が展開されています。


Inner realm田中慶子02


太った人と、無彩色と渋いベージュによるモノトーン的な色彩感とが醸し出す重鈍な雰囲気。
まずその独特の味わいに惹かれ、そこからだんだんと描かれているひとりひとりの姿の表情の豊かさと、それらが繋がって作り上げられるその場面の雰囲気、キッチュな感触が、じわじわと面白味に変わっていきます。
最初の静かな印象から、おおらかな動きに満ちた世界へとイメージが変化し膨らんでいったのも印象的です。


Inner realm田中慶子04 Inner realm田中慶子06 Inner realm田中慶子05

Inner realm田中慶子03


今年の初めのART@AGNESの東京画廊のゲストルームで、天井近くの壁に1列に並んだ10点ほどの小さな作品が印象に残っていたのですが、その作者が田中さん。
大きな画面の作品のダイナミックさも面白いですが、コンパクトな作品でのシンプルな展開も楽しいです。
あらためて、「いっぱい観たい!いろいろ観たい!」と思わせてくれます。


Inner realm田中慶子01

荒木省三さんの作品は、キュートでクールなキャラクターが登場し、それぞれの作品で刹那的な雰囲気を放つストーリーが展開されています。


Inner realm荒木省三01


からりと乾いた風が吹きすさぶような。
現代的なアプローチが織り込まれていてそれがキャッチーな風合いももたらしていて、すっとスムーズに絵の世界に入っていける面白さに満ちています。


Inner realm荒木省三03

尖った髪型や張った肩、ぐんとボディから伸びる手足。それらのシルエットが、子どもの頃によく読んだマンガの主人公たちにも通ずる勇敢なイメージを感じさせてくれます。
シンプルな色彩で描き上げられる空やその場所の空気が、それぞれの場面の鮮烈な雰囲気をさらに演出しているようにも思えてきます。

かっこよくて、清々しく、痛快なムードが、気分を高揚させてくれるクリエイションです。


Inner realm荒木省三02

Inner realm荒木省三04

それぞれのソロの展開、あるいは他のクリエイションとの組み合わせによる展開など、いろんな期待も湧いてくる、見応えのある展覧会です。

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writer name:幕内政治
birth:1971/6/17
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