トップページ > 触れるTOP > ex-chamber museum | 幕内政治が覗いたおすすめアートイベント情報  > 2008年9月アーカイブ

幕内政治が覗いたおすすめアートイベント情報
2008年9月アーカイブ

dot in LA PENSEE

LA PENSEE VERT

愛知県名古屋市中区栄3-23-20

9/16(火)~9/21(日)

13:00~19:00

dot 080916.jpg

dot in LA PENSEE

LA PENSEE VERT

愛知県名古屋市中区栄3-23-20,Sakae,Naka-ku,Nagoya-shi,Aichi-ken

9/16(Tue)-9/21(Sun)

13:00-19:00

Google Translate(to English)

アトリエを共有するアーティストにより、改装中の店舗ビル全体を使ってその個性を思いっきり発揮させた、楽しい展覧会です。

さまざまなメディアのクエイリションがぎゅうぎゅうに詰め込まれたような感じ、やりたい放題な感じが痛快で痛快で。

5階、門内幸恵さんのペインティング。

コンクリートむき出しの機械室みたいな殺風景な空間に、ぶわっと広がるような、濃厚な色彩で描き上げられたドリーミーな世界。展示空間とのギャップも不思議な雰囲気を演出していて、画面からはユーモアと軽やかさも滲みます。

門内幸恵02 門内幸恵03

門内幸恵01

そして、奥。

目かよ!Σ( ̄口 ̄;)

縦に並べられた画面、そこになんだかもう尋常でないくらいに奇妙なエネルギーを秘めたような感触で、これもまた濃密な世界観を放っていました。

門内幸恵04

門内幸恵05

4階の平面作品、斉藤公平さんの、描いている最中の空気を切りながら動く腕の音が聴こえてきそうなスピード感と臨場感が凄まじいインパクトを放っています。

支持体に黒で描かれている作品ですが、印象として闇からそのフォルムを引きずり出してきたかのような迫力に満ちています。で、取り上げるモチーフ自体のユーモアと重厚感とが重なるような感触もインパクト大、です。

斉藤公平02

斉藤公平01

3階の百合草尚子さん、一転してキュートななかにシュールな雰囲気がふわっと入り込んだような、不思議な世界。

百合草尚子02

登場する動物の無垢な風合い、彩色の軽やかさなどが奏でる儚げな弱々しい雰囲気が印象に残ります。

ふわふわとしていて、どこか捕らえ所がなくて...蜃気楼のような曖昧さと、だからこそこちらの意識が前のめりになってしまうような、本能的なものを刺激されてしまうような魅力が漂っているような感じです。

百合草尚子03

百合草尚子01

同じく展示されていたモビールなども、かわいらしい雰囲気をほのかに演出します。

百合草尚子04

典子さんの空間。

典子さんの作品は、ギャラリー小柳でのグループショーで拝見したことがあり、そのときに出品されていたカラフルなクリームのようなもので彩られ、アバンギャルドさとキュートさとが重なりあってその存在を強烈に放っていたケッタイなベッドのインパクトが忘れられないのですが、今回はインスタレーションとペインティングが発表されていて、また違うかたちでその個性が発揮されていたのが嬉しくて。

まず、さまざまな色彩の糸が降り注ぐように絡まるインスタレーションが目に飛び込んできます。

この色彩感が堪らない・・・!

典子01

最近取り組まれているというペインティング作品、これがまたいいんです。

全体を覆う渋い色調、モチーフとなる場所はベッドルーム。

ひとつの色調に統一した雰囲気を醸し出すなか、カラフルな色彩がリボンとなってそこにあるものを覆っていくような、不思議な奇妙さがふくふくと滲んでくるような。

そして、ベッドの上にこんもりと膨らむその色彩のシーツのなかに感じる人の気配が、さらに独特な世界観を奏でています。

典子03 典子04 典子05

典子02

色彩のリボンの無秩序な感じが面白味を際立たせているように感じられます。

リアルに描くこととは異なる味わい、このシチュエーションに流れる雰囲気に臨場感がもたらされているような気がしてきます。

典子07

ペインティングを中心に紹介したのですが、インスタレーションもインパクトがあるものが多く展示されていました。

ジェット達さんの床に整然と敷き詰められたオブジェ群、美容院の鏡面にびっしりと施された幾何学的な展開が面白かった岡本健児さん、風船がファンで舞い、こどもも楽しい空間を作り上げていた板谷奈津さん、淡々として理知的な味わいが滲んでいたような印象の大須賀信一さんの作品、階段の踊り場で「あれ?」と思わせられる泉孝昭さんらしいユーモアに満ちた展開など、それぞれユニークさが際立って感じられた次第。

それぞれのクリエイションにまた出会えるのが楽しみです。

典子06

新美泰史展 ボクんちのねこ

Gallery HAM

愛知県名古屋市千種区内山2-8-22

9/20(土)~10/18(土)日月祝休

13:00~20:00

新美泰史080920.jpg

Takashi Niimi exhibition

Gallery HAM

2-8-22,Uchiyama,Chikusa-ku,Nagoya-shi,Aichi-ken

9/20(Sat)-10/18(Sat) closed on Sunday,Monday and national holiday

13:00-20:00

Google Translate(to English)

ねこ、というキーワードに翻弄されまくりなんですけど!

Gallery HAMでの新美泰史さんの個展です。

今回初めて伺ったGallery HAM

以前から知っていて、なかなか展覧会期中に名古屋に行くことが少なく、ようやく今回念願が叶ったかたちなのですが、まず、グレーの板の壁面に感激!

ホワイトキューブももちろん好きなのですが、こういったひと味違う空間に出会えるのはホントに嬉しい限り、しかも僕にとって遠方である名古屋、足を運んだ甲斐があったなぁ、と。

また、現在の東京のギャラリーでいうとMISAKO & ROSENの空間と同じようにギャラリー内に階段があって、落とし込まれた床面が、空間全体に大きなアクセントをもたらしているのも楽しいのです。

で、新美さんの作品。

ウェブで今回の展覧会のDMを拝見していて、「かわいい系?」みたいな予想をしていたのですが、ギャラリーに入った瞬間、「あれ、どんなイメージだったかな?」と思い出せなくなるくらいに、テイストの異なる作品が展示されています。

まず小品がお出迎え。赤と白のコントラストも鮮やかです。

新美泰史01

ほぼすべての作品に描かれている、太い黒の線のモチーフ。

指人形の猫を思わせる全体のかたちと、ソリッドな線が放つフューチャリスティックなリズム感。

鮮やかな赤を地に黒の線、というシンプルな色彩構成で繰り広げられる世界は、シャープさとポップさとのバランスがお見事、といった感じで、楽しいイメージがどんどんと湧いてきます。

くるくる踊るような雰囲気が堪らないんです!

新美泰史05 新美泰史04 新美泰史03

新美泰史02

この作品とほとんど、というかほぼ同じ構図で背景が白の作品も展示されています。

ちょうどはす向かいの位置にあるので、どこかに違いがあるのでは、と何度も振り返りながら確かめ、構図は完全に同じで、筆痕に微妙な差が見受けられるのみ。じっくりとその驚きを確認するような感じです。

あるパターンで繰り広げられる、さまざまな展開。

これがとにかく興味深いです。

太い線が鋭く折れ、多数の鋭角をもつひとつのモチーフがリズミカルに重ねられて、ジャリジャリとしてアバンギャルドで、それでいてポップさも持っている不思議な味わいのペインティング。脳内でこの図形をほぐしてみようと試みてみたり、対峙していてさまざまな取り組みあいが創出されていきます。

新美泰史08 新美泰史07

新美泰史06

そして、入口のパターンのサイズ違い。

大きくなっただけでこの迫力!そしてさらに迫る色彩の痛快さ!

パターンの発展性の深みが強烈に感じられ、かたちの同一性の奇妙さと、部分的に異なるディテールがまた違う不思議な感触を醸し出していたり。

新美泰史09

階段で堀のように落とし込まれた空間では、また異なるテイストの作品が並んでいます。

表面に滲むように広がる乳白色、半透明の白。その奥にわらわらと展開しているモチーフの複雑さ。

新美泰史15

新美泰史16

同一空間でくっきりとした線の展開も目にしていることもあり、この乳白色の奥で複雑に組み上がっている黒の線も、おそらく何らかのパターンの繰り返しが行われているのかな、と想像が膨らんだり...。

ひとつの層の向こう側でその存在感を曖昧にさせているものの、その線はシャープな雰囲気を放ち、しかしそれらが多く集まることで有機的な雰囲気も伝わってきます。

新美泰史13 新美泰史12 新美泰史14

新美泰史11

ふたつのテイストで繰り広げられるユニークな展開。

それらによって惹起されるイメージはそうとうにユニークで、無機と有機、図形的と漫画的、それぞれ相反する要素をイマジネーションが往来します。

くっきりとした彩色の痛快さ、そこで繰り広げられる展開のユーモア。

オープニングということで新美さんもいらっしゃっていて、僕が伺ったところでは今回発表された作品のモチーフは猫とはあまり関係がなさそうで...。

タイトルとDMの画像、そして展示されている作品のアバンギャルドさをたたえた風合いのギャップに翻弄され、それがまた痛快な奥行きを放っているような印象の展覧会です。

新美泰史10

田中麻記子展「wink」

GALLERY M

愛知県日進市岩崎町根裏24-2

9/7(日)~10/5(日)月火休

13:00~19:00

田中麻記子080907.jpg

Makiko Tanaka "wink"

GALLERY M

24-2,Neura,Iwasaki-cho,NIsshin-shi,Aichi-ken

9/7(Sun)-10/5(Sun) closed on Monday and Tuesday

13:00-19:00

Google Translate(to English)

さらに妖艶に微睡みゆく世界。

GALLERY Mでの田中麻記子さんの個展に行ってきました。

以前からGALLERY Mは存じ上げていて、いつかぜひ伺いたいと思いつつも名古屋都心部から離れていてなかなか伺えずにいたのですが、今回は先にhpgrp東京での個展が素晴らしかった田中さんということもあり、なんとしても拝見したいと思って伺った次第。

名古屋中心部からの距離的なイメージでいうと、BOICE PLANNINGに近いような印象でした。

分かる方には分かるかな、と。

で、今回の田中さんの個展。前回に引き続き、油彩の作品を中心に展示されています。

しかし、もっとも異なるのは、今回はホワイトキューブである、というところで、前回の個展では床面の木の板の色彩が醸し出す雰囲気が作品の世界観を引き立てていたように感じられたのですが、さて今回のシチュエーションではどういうふうに響くのだろう、と興味津々で。

田中麻記子202

前回の個展からそれほどの時間が経っていないのにも関らず、田中さんが油彩で、さまざまな色彩を用いて繰り広げる世界には、さらなる広がりがもたらされているように感じられます。

ヴィヴィッドな色彩で織り成される、うねるような気の流れを思い起こさせる展開。

登場するさまざまな人たちの仕草は妖婉さをぐんと増し、この独創的な世界にさらに強い臨場感がもたらされているように思えます。

田中麻記子206 田中麻記子205 田中麻記子204

田中麻記子203

横長の大作の迫力も印象的です。

そのかたちがもたらす絵巻的な展開、さまざまな場面が連なっていき、時間的なイメージをさらに厚く、深くしているように感じられます。

田中麻記子209 田中麻記子208 田中麻記子211 田中麻記子210

田中麻記子207

ひとつのおおきな画面にさまざまなシーンが凝縮されるのが田中さんの作風の個性的なところの一つですが、全体でひとつの光景と捉えられる作品もあり、それによるひと味違うダイナミズムも面白いです。

画面の隅々まで広がり満たされる水の渦。輪となる波は光の屈折でさまざまな色彩の表情で魅せ、そこで戯れる人の妖婉さに、渦の真ん中に浮かぶ大根とか「何で?」みたいなものが織り込まれるユーモアが、作品の世界をひときわユニークなものへと仕立て上げているような印象です。

田中麻記子215 田中麻記子213 田中麻記子214

田中麻記子212

コーナー部分に展示、展開されている作品も面白い!

田中麻記子216

ちいさなキャンバスを列ねて繰り広げられているパノラマのような世界。

横に細長く展開されることで、物語性がぐんと立ち上がってきます。

また、他の大作と比較しても圧倒的に圧縮された画面なために、ある部分のシーンがより力強い臨場感を伴って迫るような感触もあって興味深いです。

田中麻記子218 田中麻記子217

田中麻記子219

油彩の前の鉛筆画や銅版画も数点展示され、濃厚な色彩が満ちる空間に爽やかなアクセントをもたらして育れているように感じられます。

田中麻記子220

ホワイトキューブで観る田中さんの油彩作品。

作風の進化、深化も強烈に印象に残るのですが、そのヴィヴィッドで濃厚な色彩が本来持つ強さが空間に引き立てられていたような印象も持った次第。

hpgrp東京では、空間全体がこの世界にいるかのような雰囲気があったのですが、こちらでは画面がそのまま「窓」となり、この優雅で妖艶な世界への入り口となっている、そこからそちらの世界を覗いているような感触です。

田中麻記子201

篠塚聖哉展「包む森」

ANDO GALLERY

東京都江東区平野3-3-6

9/2(火)~10/25(土)日月祝休

11:00~19:00

篠塚聖哉080902.jpg

Seiya Shinotsuka exhibition

ANDO GALLERY

3-3-6,Hirano,Koto-ku,Tokyo

9/2(Tue)-10/25(Sat) closed on Sunday,Monday and national holiday

11:00-19:00

Google Translate(to English)

さらに深まる、荘厳な世界観。

ANDO GALLERYでの篠塚聖哉さんの個展です。

篠塚さんといえば、印象深いのは東京都現代美術館で開催された、日本画をテーマに取り上げたMOTアニュアル2006への参加で、広い展示室に整然と展示された、指で描かれ、プリミティブな雰囲気も重厚に立ちのぼる壮大な風景を連想させる抽象的な作品群で、その後のフタバ画廊での個展でも変わらぬスタイルで繰り広げられている変わらぬ力強さは強烈に記憶に残っているのですが、それからおよそ2年、長い沈黙を破るかのように始まった今回の個展では一転、キャンバスを支持体に採用した大作6点が、尋常でない迫力と壮大なスケール感で迫り、静かに圧倒してきます。

篠塚聖哉002

これまでの展開で培われた独創的な色調。

濃く、深く、重い色彩感で構築される光景が放つ重量感。

変わらぬプリミティブさも、その迫力を後押しし、観るものの前へと立ち上がり、同時にどこまでも遠くへと続いていくような奥行き感も醸し出しているように感じられ、作品の前に立ちすくみ、意識がぐんぐんと呑まれていくような錯覚を覚えます。

篠塚聖哉007 篠塚聖哉005 篠塚聖哉006

篠塚聖哉004

画面全体を覆うダークな背景が、それぞれの画面に閃光のように広がり放たれる鮮やかな色彩や、何かを連想させるかたちを描き出す、背景とのコントラストも微妙なほどに深い色、そして壮大な光景を脳裏に沸き起こさせてくれる微妙なグラデーションなどのさまざまな表現を引き立ててるように感じられます。

3面の壁面で2点ずつの大作が展示され、残る1面ではこれまでの指で描かれ天地がトリミングされた作品も発表されています。

トリミングされることで逆にイメージの広がりに拍車をかける風景、そこに今回の大作に触れることで感じえた新たな体験も加わり、いままで以上に壮大なスケールが伝わってきます。

篠塚聖哉009

篠塚聖哉010

もともとが壮大なスケール感を放つ作風であるところに、さらにキャンバスによる大作での展開。

作品のサイズが大きくなったというシンプルな要素も、篠塚さんによって生み出される荘厳な世界観をさらに眞円なものへと加速させているように感じられます。

最初に目にした時の驚きと、それがすぐ感動へと変わっていくことの嬉しさ。

展示されている作品それぞれが異なる縮尺感をもたらしてくれているのも、イマジネーションの刺激をもたらしてくれる大きな要因となっているようにも思えます。

何より、オンキャンバス、という今もっとも勢いのあるスタイルで展開されていることがたいへん興味深く、しかしそのスタイルが持つ勢いのみに頼るのではなく、本来作風が持つ力強さがより臨場感を伴って迫るように感じられることに、大きな感動がもたらされるような印象です。

篠塚聖哉001

ex-chamber_memo_top.jpg

@GALLERY TAGBOATで、展覧会レコメンドを中心としたウィークリー連載「ex-chamber memo」が始まりました。

こちらのブログ「ex-chamber museum」とあわせてご覧いただければ幸いです。

伴美里 展覧会 beautiful scapes

ギャラリーPOINT

東京都渋谷区恵比寿西1-4-7

9/14(日)~9/28(日)

12:00~20:00

Misato Ban exhibition "beautiful scapes"

GALLERY POINT

1-4-7,Ebisu-nishi,ShIbuya-ku,Tokyo

9/14(Sun)-9/28(Sun)

12:00-20:00

Google Translate(to English)

わきおこる、やわらかな謎めき。。。

ギャラリーPOINTでの伴美里さんの個展です。

ギャラリーに入って、実にしっとりと自然な雰囲気の作品に囲まれ、その淡々とした感触に、どうしてこういう作品を描くのだろう、という思いが浮かんでくるんです。

ギャラリーの壁面に静かに並ぶ、女性のポートレイト。

楕円の画面に、なんともナチュラルな表情でこちらを向いて、落ち着いた佇まいで。

伴美里04 伴美里02 伴美里03

伴美里01

展示されている作品はすべて、楕円の画面に描かれています。

方形のシャープに区切られた感触でも、真円の外側へと膨張し広がるような雰囲気とも異なる、穏やかな広がりのイメージをもたらしてくれるこのかたちが、作品の自然な雰囲気を演出しているように感じられます。

描かれるシーンはさまざまで、多くの作品が屋外ですが、室内の作品も。危うげな雰囲気がほのかに感じられて、独特な臨場感が伝わってきます。

伴美里12 伴美里11 伴美里13

伴美里10

奥の壁面に直に描かれる風景。グラフィカルな展開が実に鮮やかで、淡い色彩で紡がれる花や木々のシルエットが、ほっとするようなやわらかな雰囲気を奏でます。

おおらかな遠近感も、浮遊するようなイメージをもたらしてくれます。

伴美里17 伴美里16 伴美里15

伴美里14

今回の伴さんの展覧会の作品に一貫するテーマは、友人を描いていることだそうです。

その友人とともに、散歩コースをいっしょに歩いたりなどして、そのときに大げさな言葉になってしまいますがその「取材」を通じて得たイメージを描いた作品群が展示されています。

描かれている伴さんの友人の方々の表情が一様にやわらかいのが、描き手である伴さんとの良い関係性を伝え、それがほのぼのゆったりとした雰囲気を思い起こさせてくれます。

人物描写の素朴さ、そして背景では部分的に抽象性が立ち上がるように感じられ、それらがもたらすギャップもたいへん興味深いです。

もっとも、今回の個展に展示されているような、どちらかというと具象的な風合いの作品を制作されるのは伴さんにとってもチャレンジングなことだったようで。

本来の、というともしかしたら語弊がありそうなのですが、これまでの伴さんの作風に近そうな風合いの作品。入口近くに展示されている小品で、おそらく女性の胴体の部分が描かれ、顔の部分をフレームから外していることで放たれる匿名性が、妖しげな雰囲気を感じさせてくれています。

伴美里06

もう1点の、緑の低い草花の上に立つ足を描いた作品も、今回の展示のなかで強いアクセントとなっています。

もしかしたら、というかおそらく描き手である伴さんにはこの足が誰の足か分かっているような気がするのですが、いち鑑賞者としては、ここに切り取られた時間や空間が謎めきを放っているように感じられます。

伴美里08

伴美里07

過去の作品は伴さんのサイトでチェックできて、それらを拝見すると確かに、今回の作風がこれまでの展開から大きく逸れているように感じられます。

もちろん、筆跡や色彩感などにおける、ひとりのアーティストの作品として通じる部分もあり、それがやはり現実感が作品の大きな要素となっている今回の作品のコンセプトのユニークさを際立たせているように思えます。

繰り返しになるのですが、描かれる女性たちのやわらかい表情や静かな佇まいが醸し出すやさしさや滋味があたたかく感じられます。

敢えて、「普遍」の方へと振れたコンセプト。その作品の雰囲気の穏やかさ。あたたかくも、これまでの展開によって得られた感性が随所に織り込まれることで漂う現代美術的な風合いが相まって、具体的な言葉で表すのは難しいのですが、ここで繰り広げられている独特な世界観にふっと心が落とし込まれ、その収まりの良さが何とも心地よく感じられます。

今後の展開もたいへん興味深いです。

伴美里09

伊藤雅恵 個展

NODA CONTEMPORARY

愛知県名古屋市中区栄3-32-9

9/4(木)~9/27(土)日祝休

11:00~19:00

伊藤雅恵080904.jpg

Masae Ito exhibition

NODA CONTEMPORARY

3-32-9,Sakae,Naka-ku,Nagoya-shi,Aichi-ken

9/4(Thu)-9/27(Sat) closed on Sunday and national holiday

11:00-19:00

Google Translate(to English)

噎せ返るような、色彩の臨場感。

NODA CONTEMPORARYでの伊藤雅恵さんの個展です。

今年のVOCA展と鎌倉画廊でのグループ展で作品を拝見し、筆致としては特別なことをやっているわけではない、実に原始的な筆の運びによって描き出される色彩の重なりは、シンプルなアプローチだからこそ引き出される力強さが鮮烈に現れ、イマジネーションをぐんと膨らませてくれるような印象です。

伊藤雅恵001

膨らみ広がっていく色彩、そして、画面に閃光をもたらすような刹那的な筆跡。

画面を彩る色彩のひとつひとつが持つ本来の力が高い純度で引き出されたような感じで、それぞれ素晴らしくフレッシュで、煌々とした艶やかさを放ち、エネルギッシュに他の色彩とかかわり合って、刹那的な美しさを奏でます。

尋常でない力強さを放つ赤、目にした瞬間にそれが咲き誇る花の姿に変わって、その瞬間の美と、瞬間だからこそ放出されるエネルギーのようなものの存在が臨場感たっぷりに伝わってくるような感じです。

伊藤雅恵002

空を思わせる青、そして木々の新緑を思い起こさせる緑。

さらには咲く花の、その瞬間の美を謳歌するかのようなおおらかさを感じさせてくれる、勢いに満ちた白。

この爽快感に満ちあふれた光景を眺めていると、ポジティブなイメージがぐんぐんと心のなかに育ち、膨らんでいきます。

伊藤雅恵003

至近で眺めた時に立ち上がってくる抽象性と、距離をおいて作品全体を俯瞰した時に惹起される鮮やかな景色のイメージ、そのギャップもたいへん興味深く感じられます。

画面に対して振り降ろされるような筆のストロークの痕の生々しさが放つ力強い存在感は、俯瞰した時のポジティブな臨場感とはまた違うエネルギーに満ち、意識が更に、ぐんと画面のミニマムな響きに引き寄せられていきます。

伊藤雅恵004

伊藤雅恵006

高揚の絶頂に沸き起こるエネルギーというか、絵のなかに収められたさまざまな要素が外側へと向かうあらゆるベクトルに作用し、鑑賞者の感性を元気な方向へと煽るような感触がとにかく清々しく、かつ痛快です。

どこまでも続く、生命のエネルギーの爆発の連鎖。そういった鮮烈なダイナミズムがさまざまなサイズの画面から発せられているような印象です。

伊藤雅恵005

《9/19》

Ryuro Fukuda What Have We Found

void+

東京都港区南青山3-16-14-1F

9/20(土)~10/18(土)日月祝休

14:00~19:00(土:12:00~17:00)

福田龍郎080920.jpg

突き抜けるょうな青空の壮大な景色をバックに飛ぶ気球やパラシュート、青い海に浮かぶ島にアクロバティックな位置や場所に建設されたプール。ふたつの空間にそれぞれ展示された写真作品のスケールの大きさに、凄まじい爽快感が情感を満たします。

それにしても・・!

《9/20》

岐阜おおがきビエンナーレ2008 木本圭子展

GALLERYゆう

岐阜県大垣市丸の内1-34

9/19(金)~9/28(日)

12:00~18:00(最終日:~17:00)

木本圭子080919.jpg

現在、ICCでも作品を観ることができる木本圭子さんの個展。

入り口からの自然光が暗幕で遮られた暗い空間に、光る粒子が画面に散らばり、そのすべては計算されたかのように理知的で、なんともフューチャリスティックな世界が作られています。特に映像作品は光の粒子群が画面内を飛散し、渦やラインを成し、ソリッドでシャープな景色が現れては消えを繰り返す様子は圧巻で、一度目にすると食い入るようにして見入ってしまいます。

田中麻記子展「wink」

GALLERY M

愛知県日進市岩崎町根裏24-2

9/7(日)~10/5(日)月火休

13:00~19:00

田中麻記子080907.jpg

hpgrp東京での個展で発表された油彩の作品が素晴らしかった田中麻記子さん、今回はほぼホワイトキューブの広い空間での展示で、こういうシチュエーションではどう響くか興味津々だったのですが、さらに濃密になったような微睡みの世界観が鮮やかに伝わってきて、その進化のスピードにも呆然とさせられた次第。力強さと独創的な荘厳な感触が印象に残ります。

新美泰史展

Gallery HAM

愛知県名古屋市千種区内山2-8-22

9/20(土)~10/18(土)日月祝休

13:00~20:00

新美泰史080920.jpg

展覧会のタイトルと、DMの画像にすっかりだまされた、もとい、展示されている作品の小気味良い展開の楽しさが痛快です。

ふたつのテイストの作品がそれぞれで独創的な世界を築いていて、ある決まりごとのようなものの存在も感じると同時に、逆に相当にフリーに、感性に任せた感じで描き上げられているようにも思えたり。

伊藤雅恵 個展

NODA CONTEMPORARY

愛知県名古屋市中区栄3-32-9

9/4(木)~9/27(土)日祝休

11:00~19:00

伊藤雅恵080904.jpg

今年のVOCA展と鎌倉画廊でのグループ展で拝見した作品が印象深い伊藤雅恵さんの個展です。

情動的な筆致で繰り広げられる、花の咲く瞬間のエネルギーを現したかのょうなアグレッシブな風合いが、どこまでも壮大に膨らんでいきます。

吉本作次展

KENJI TAKI GALLERY

愛知県名古屋市中区栄3-20-25

9/29(土)~10/4(土)日月祝休

11:00~13:00、14:00~18:00

吉本作次080906.jpg

面白い!

画面全体を覆うセピア色。そこに描かれるかわいらしい人々、建物、遠くまで続く景色。

そして、夕焼け空に浮かぶ雲、さらにはダイナミックな気流を思い起こさせるおおらかでなうねり。

優しくて懐かしいょうな感じと、圧倒してくるような迫力の同居に、完成が大胆に刺激されます。

キャンバスの大作数点をはじめ、さまざまな作風、大きさの作品が展示され、バラエティに富んだ構成も楽しい展覧会です!

dot in LA PENSEE

LA PENSEE VERT

愛知県名古屋市中区栄3-23-20

9/16(火)~9/21(日)

13:00~19:00

dot 080916.jpg

総勢10名のさまざまなメディアのアーティストが揃い、全館改装前の商用ビルで行われたグループショー。ギャラリー小柳でのグループ展で拝見したけったいなベッドの作品のインパクトがわすれられない典子さんや、TARO NASUが六本木にあった頃に開催された個展が面白く、ECHO展にも名を連ねる泉さんら、ユニークなクリエイションがそれはもうやりたい放題な感じで痛快!

観ることができてホントに嬉しかった展覧会です。

阿部大介展

AIN SOPH DISPATCH

愛知県名古屋市西区那古野2-16-10

9/20(土)~10/4(土)木休

13:00~21:00

阿部大介080920.jpg

板に顔料を擦り込み、その上から接着剤を塗布して剥がし、それをさらに紙に定着させる、というユニークな行程を経て制作された作品群。顔をモチーフにしていて、木目の質感と、素材が紙に定着する際にできるズレなどが不思議なテイストを発しています。

阿部大介01

ひときわ大きな紙に定着させた作品は、サイズの大きさがそのまま迫力となって、素材の不安定さが醸し出す何ともいえない感触を際立たせているように感じられます。

阿部大介03 阿部大介04 阿部大介05

阿部大介02

石油製品を過熱し溶かした立体物も、アバンギャルドな雰囲気を強烈に立ちのぼらせています。

阿部大介06

もともと版画をなさっていて、その感覚が現在の作品にも活かされ、独自の版表現の延長としての接着剤を用いた作品や、素材の分解がそのまま再構築へと向かっている過程が面白い立体作品と、アプローチのユニークさがたいへん興味深いです。

《9/23》

下地貴之展

ギャラリーツープラス

東京都中央区銀座1-14-15 白井ビル2F/3F

9/22(月)~9/27(土)

12:00~19:00(最終日:~17:00)

下地貴之080922.jpg

2階が色鉛筆などによるドローイング、3階には2点のペインティングが向かい合って展示されているのですが、その3階の2点が良い!写実としての隙の無さと、そのスキルをもって描かれる人物の表情のシュールさが、深くて鈍い笑いを誘います。

柳井信乃展「記憶と記録」

Gallery Q

東京都中央区銀座1-14-12 楠本第17ビル3F

9/22(月)~9/27(土)

11:00~19:00(最終日:~17:00)

柳井信乃080922.jpg

トーキョーワンダーウォールで拝見して印象に残っている、一度目にしたら忘れられない、ビーズと細いワイヤーで作られたキュートなアリが画面を這う作品。

虫のグロテスクな感じはあまりなく、むしろアクセサリーのような軽みが独特な可愛らしさを奏でているように感じられます。

伴美里 展覧会 beautiful scapes

ギャラリーPOINT

東京都渋谷区恵比寿西1-4-7

9/14(日)~9/28(日)

12:00~20:00

ギャラリーに入ってまず、「なぜこういう絵を描くのだろう」という思いが湧いてきます。

描き手と描かれる人、そのあたたかな関係も滲んでくるような、それでいてそのシーンから漂う仄かな妖しさ、さまざまなことが関わりあって、何とも不思議な雰囲気をかもし出しています。

栗原森元「ラッキーハムレット」

magical,ARTROOM

東京都渋谷区恵比寿1-18-4 NADiff A/P/A/R/T 3F

9/23(火)~10/26(日)

12:00~20:00

栗原森元080923.jpg

久々にmagicalで炸裂する、やっちゃった系インスタレーション!

いちいちツッコミどころがあって、だんだんいろんなことがどーでもよくなってくるという。

そんななかで、ペインティングの興味深さなど、独特な感触が立ち上がってきます。

天野亮彦 <understanding>

magical,ARTROOM

東京都渋谷区恵比寿1-18-4 NADiff A/P/A/R/T 3F

9/23(火)~10/26(日)

12:00~20:00

天野亨彦080923.jpg

でけぇ!Σ( ̄口 ̄;)

そして、ちゃんと繋がってる!

《9/24》

矢津吉隆「Holy and Commom」

TSCA KASHIWA

千葉県柏市若葉町3-3

9/20(土)~10/25(土)日月祝休

12:00~19:00

矢津吉隆080920.jpg

鮮やかで美しい残像を発しながら、回転する光。

それぞれのコーナーで統一感をもたらして展示されているさまざまな作品群は、フューチャリスティックなテイストを放ちます。

そこに潜むユーモラスな風合いや突き抜けるような神々しさが、鮮烈なインパクトをもたらしてくれます。

大田高充 point of contact

PANTALOON

大阪府大阪市北区中津3-17-14

9/6(土)~9/28(日)月火休

12:00~19:00(水木:18:00~22:00)

大田高充080906.jpg

Takamitsu Ohta exhibition "point of contact"

PANTALOON

3-17-14,Nakatsu,Kita-ku.Osaka-shi,Osaka-fu

9/6(Sat)-9/28(Sun) closed on Monday and Tuesday

12:00-19:00(Wedinesday and Thursday:18:00-22:00)

Google Translate(to English)

淡々と存在しているものが醸し出す、心地よさ。

大田高充さんのPANTALOONでの個展です。

入った瞬間から相当に謎めいた雰囲気に引き寄せられて、意識が緩やかにその不思議な世界へと導かれていきます。

・・・といっても、そのシチュエーションの不可解さといったら...。

フロアの中央に置かれた大きめのフラスコ、そこに注がれるたくさんのホース。

目にした瞬間、「これは、いったい、何?」という驚きが、ぽん、と浮かんできます。

大田高充01

すべてのホースはこのフロアのロフト部分から伸び、垂れていて、フラスコに突っ込まれているのとは反対の先は、漏斗が整然と配置されていて。

漏斗のひとつひとつの上に設置されているカップには、氷が。

さらに謎めいた雰囲気を加速させるのが、漏斗とホースを通じてフラスコに注がれる水分が、氷が溶けてできた水ではなくて、氷によって冷やされた金属製のカップに漂着した露の滴、という...。

大田高充02 大田高充06 大田高充05 大田高充03

今回の展示のもっとも大掛かりな部分が提示しているのは、どうしようもなく不器用な「機能」。

それぞれの素材に大きな加工が加えられるわけではなくて、しかし、淡々と提示されるそれぞれの「機能」は静かに空間を支配し、それはそれで独特の美しさで空間を満たしているように感じられて...。

このゆったりとした時間が提示される独創的なインスタレーションで、時おり、このホースのなかを水滴が流れ、ぽたん、とフラスコに落ちる瞬間に巡り合えたりすると、他愛もないことのはずなのに、達成感や神々しいものに触れられたちいさな感動が沸き起こってきたりするんです。

大田高充04

このフロアの隅っこに置かれたグラスへも目が向かいます。

ここにあるものがいちいち、その存在への疑問を抱かせてくれます。

大田高充14

上を見ると・・・

ちょうど真上に設置されている、太い紐先。

そこから水滴が落ちてきて、このグラスに溜まっていく仕組みになっています。

大田高充07

そして、この紐が連なる先は...。

大田高充10

床に置かれる無数のグラス、そこに満ちる水。

置かれるグラスの中の水はすべて紐で繋がっていて、自然現象でその紐を伝って1階のグラスの真上の紐先へと導かれる、という仕組みが組まれているそう。

大田高充09

薄暗い照明の空間に深々とその存在を沈み込ませるグラスの一群、この光景の美しさも強く印象に残ります。例えていうなら、水辺にひしめく蓮のような感じ...。

僕が伺った時間はとうに陽が暮れていて、照明の演出で生み出される雰囲気、深い静けさが広がっていましたが、天窓からの自然光が入った時に見せるこの空間の表情はどんな感じだろう、と思いを馳せるとそれはそれで実に爽やかなのかも、と。

で、この仕掛けも最初の漏斗とフラスコとをホースが繋ぐインスタレーションと関連していて、このグラスの群れから階下のグラスへと1滴1滴注がれていった水が一端冷凍庫で凍らされ、そこで生成された氷をカップに投入...そんなこんなで今度はフラスコに溜まった水がロフトのグラス群の真ん中に置かれている大きな丸底フラスコへと注がれ、それが紐を伝って...といった輪廻が構築さているんです。

なんとまぁ壮大な、というか、手間がかかっていて、静かな驚きがまた心のなかにもたらされます。

シンプルで複雑で、ただ、そこに提示された過程に費やされる時間のイメージが滲ませるおおらかさ、そして淡々とそれぞれの機能を全うする器具たちの究極の機能美、いろんな要素がイマジネーションを刺激してくれます。

もうひとつのインスタレーションは、朽ちたような4本の柱に設置されたファン。

僕が伺った時間では、お休み中というか、回転しておらず。

大田高充13

こちらは、ロフトではないもう一方の階上にあるベランダに設置されたファンが、外風を受けて回転することによって作られる電力によって回る、という装置。

残念ながら無風で1階のファンが回っていなかったのですが、もし回っていたらこの展示のユニークなアクセントとなっていたように想像したり。回っているとその存在に否応なく気付かされるはずなので。。。

大田高充12

大田高充11

それぞれ、取り込まれるアイテムのほぼひとつの機能を組み上げてインスタレーションを構築し、時間的な要素も織り込まれて、淡々と繰り出される「現象の提示」。

強烈に知的な雰囲気も感じる一方で、実にピュアな、プリミティブな感性も爽やかに刺激してくるようなkな事も新鮮です。

ユニークな提示手法によってもたらされる、無機的なはずなのに有機的で、あったかい後味も心地よい展覧会です。

大田高充08

NEXT DOOR vol.7 松岡智美 福島浩二 下田ひかり 久保有美 石橋貴男

T&G ARTS

東京都港区六本木5-9-20

9/4(木)~10/2(木)日月祝休

11:00~19:00

NEXT DOOR 080904.jpg

NEXT DOOR vol.7 Tomomi Matsuoka,Koji Fukushima,Hikari Shimoda,Yumi Kubo,Takao Ishibashi

T&G ARTS

5-9-20,Roppongi,Minato-ku,Tokyo

9/4(Thu)-10/2(Thu) closed on Sunday and Monday

11:00-19:00

Google Translate(to English)

5名のアーティストがフィーチャーされたグループショーです。

入口には、福島浩二さんのペインティングが。

福島浩二01

この企画では毎回そうなのですが、ウィンドウの展示も楽しいんです。

なかでも下田ひかりさんのポスターふうの作品が面白い!

で、その下田さん。

ほんのりサディスティックな雰囲気を漂わせる、イラスト風のテイストの作品が並びます。

下田ひかり04

脆弱さ、それが醸し出す危うさ。

そういったスキャンダラスな魅力が、緻密な描写やグラデーションで描き上げられる、どこか醒めた表情の女の子から鮮烈に放たれているように感じられます。

下田ひかり02 下田ひかり01

下田ひかり03

パネルの作品では、よりアート的な魅力が感じられます。

描かれるモチーフの関係性がシュールさを加速させ、サディスティックな感触に臨場感がもたらされているように思えます。さらに、やはり描かれる要素ひとつひとつの緻密さにも引き寄せられ、なんとも不思議で妖しげな物語性を醸し出しています。

下田ひかり07 下田ひかり06 下田ひかり08

下田ひかり05

福島浩二さんの壁面は一転して無彩色でほぼ統一され、作品全体を貫くソリッドな雰囲気が迫ります。

中央に展示されるカラーチャートの違和感が、そのソリッドな感触をぐんと引き出しているように感じられます。

福島浩二02

黒を背景に描かれる人の半身のシルエット。

そこを殺伐としたテイストで描き殴られるようにして画面を走る線が、顔のパーツを表しています。

グラフィティ的な感触が痛快で、たいへんざっくりとした感触ながらもじっくりと観てしまう説得力に満ちています。

福島浩二07 福島浩二08 福島浩二09

福島浩二06

さまざまなモチーフの作品が揃い、それぞれがユニークな空間性を持って、クールな雰囲気を響かせます。

アバンギャルドな筆致とシャープな描写とにより発せられる独特な感触が印象的です。

福島浩二03

福島浩二05

黒を背景とする作品が並ぶなかで、ゼブラを描いた作品が目を引きます。

精緻な描写によって、白で描かれるゼブラのリアリティ。この1点の精度と説得力とが福島さんのクリエイションに奥行きをもたらし、そのグラフィティ的なテイストがそれだけに留まらず、独特な深みを発してるように感じられるのもたいへん興味深いです。

福島浩二04

バースペースには、昨年のPUNCTUMでの個展も印象に残っている石橋貴男さんのFRP作品が。

壁に並ぶパーツ的なオブジェ、そして、立像。およそ人の形を保ちつつも、そこで展開される色彩とかたちの両面における抽象性が面白いです。

石橋貴男002

石橋貴男001

2階では、その石橋さんのたくさんの作品が床に立っています。

細い足で2足直立しているその姿のシャープな感触。

バリエーションに富んだフォルムや色彩も見応えがあります。

遊び心に満ちたフォルム、立体作品の臨場感、さまざまな要素が痛快に思えてきて、想像もぐんと広がります。

石橋さんはギャラリー山口での個展も直近に控えていて、そちらも楽しみです。

石橋貴男004 石橋貴男005 石橋貴男006

石橋貴男003

松岡智美さんのインスタレーション、さまざまなメディアの作品が空間の一角に配され、それらが醸し出す妖しく危うい雰囲気と、作品に用いられる素材が放つ臨場感が印象的です。

松岡智美01

生々しさが強烈な作品が並ぶなかで、ペインティングがとにかく面白いんです。

抽象性の高いメロウな感触。じっくりと眺めていると、その抽象性のなかから人の顔などが滲んで現れてkるような感触があって、その瞬間の鳥肌が立つようなスリリングなテイストが堪らなく感じられます。

松岡智美04 松岡智美03

松岡智美02

久保有美さん。

まず、正面の壁面に展示された作品の深遠さに惹かれます。

ダークな色調に灯る白い花、そして、軍用ヘリの機影。水中とも夜空とも思える深い紺色の色彩が、ゆるやかで静かな時間のイメージを感じさせてくれます。

久保有美01

長い壁面では、複数のパネルの作品が組み上げられて構築されたインスタレーションが。

繋がっていたり関係性が希薄だったり、隣り合う作品同士がさまざまなキャップやコントラストを醸し出しながら、実にリズミカルな展開がなされています。

久保有美02

久保有美03

風のコンセプト・NEO ABSTRACT21 寺島みどり

ギャラリー風

大阪府大阪市中央区北浜2-1-23 日本文化会館9F

9/3(水)~9/15(月)

11:00~18:00(日祝:~17:00)

寺島みどり080903.jpg

NEO ABSTRACT21 Midori Terashima

Gallery Kaze

2-1-23-9F,Kitaham,Chuo-ku,Osaka-fu,Osaka-shi

9/3(Wed)-9/15(Mon)

11:00-18:00(Sunday and national holiday:-17:00)

Google Translate(to English)

ヴィヴィッドな彩色が放つ力強い抽象世界。

ギャラリー風での寺島みどりさんの個展に行ってきました。

寺島さんの作品は、赤坂のホテルオークラで開催されたアートフェアのギャラリー風のゲストルームで拝見して、小さい作品ながらその力強い存在感に魅入られたのですが、ちょうどのタイミングで開催されていた個展も拝見することができた次第。

ホテルアートフェアでは観ることができなかった大作がずらりと並び、さらに大きな臨場感がもたらされています。

寺島みどり09

ひとつの色彩でケレン味なく鮮やかに染め上げられるフラットな上部と、混沌としたテクスチャーが印象的な下部とに分けられた構図の作品が多く並びます。

ふたつの異なるテイストのシーンがひとつの画面に収められ、それが壮大なスケール感を生み出しているように感じられます。

寺島みどり02 寺島みどり04 寺島みどり03

寺島みどり01

ふたつの部分を隔てる水平のラインが放つ奥行き感が壮大なイメージをもたらしてくれます。

油彩の抽象画らしいダイナミックな筆の運びと、ぱっと明るい色が多く取り入れられた色彩構成ギャップが、アバンギャルドな雰囲気を強烈に放ちます。

寺島みどり13 寺島みどり14 寺島みどり15

寺島みどり12

同様の構図で描かれる比較的小さな作品にも、強い魅力を感じます。

大作のスケール感はそのままに、小さな画面になることで色と色とのせめぎ合いが加速し、密度が増して、さらに複雑な混沌が生み出されているように感じられます。

寺島みどり10 寺島みどり11 寺島みどり16

寺島みどり08

上下の構図の作品だけでなく、もっとアバンギャルドな展開がもたらされた作品も。

混沌としていながらも広い色面からは穏やかさや静けさが感じられる前者の作風から一転、アグレッシブな感触が前面に押し出され、下地に乗る絵の具の飛沫が凄まじいノイズを奏でます。

寺島みどり06

寺島みどり07

サイズがもたらす説得力。それを体感できたのが何より嬉しい限りです。それぞれの色彩が活き、互いのヴィヴィッドさを発揮させるような配色による鮮やかなコントラストも、広々とした爽やかさとどこまでも深いような迫力が同時に感じられ、イマジネーションを刺激してくれます。

そして、それぞれの作品にタイトルが付けられていて、それが想像を押し拡げてくれたのも印象に残ります。

上下の構図の作品から、その境が曖昧になる作品へと提示される世界が広がっているようで、これからどういうふうな光景が提示されるのかも興味が湧いてきます。

寺島みどり05

樫木知子個展 Focal Point series

MEM

大阪府大阪市中央区今橋2-1-1 新井ビル4F

9/5(金)~9/27(土)日月祝休

11:00~18:00

樫木知子080905.jpg

Tomoko Kashiki exhibition "Focal Point series"

MEM

2-1-1-4F,Imabashi,Chuo-ku,Osaka-shi,Osaka-fu

9/5(Fri)-9/27(Sat) closed on Sundey,Monday and nationali holiday

11:00-18:00

Google Translate(to English)

淡い情景のあいまいな惑わし。

MEMでの樫木知子さんの個展です。

昨年のギャラリーなつかでの二人展以来、MEM とCASOの同時開催の展示、そして先に開催されたota fine artsでのグループショーと、それぞれその度に大作数点と相当なボリュームの作品量を拝見していることもあり、 樫木さんの展示を個展で拝見するのが今回が初めてというのが意外に感じられます。

それほどのペースでの制作、展示をこなしてこられた樫木さん。

今回は比較的落ち着いた、それでもその個性が充分に発揮され、独特の古風な雰囲気により臨場感がもたらされたかのような、幻想的な感触が印象に残る作品が多く発表されています。

樫木知子302 樫木知子303 樫木知子304 樫木知子305

樫木知子301

描かれる人物の表情、仕草が醸し出す、どこか朧げで仄かな色香も醸しつつ、緩やかで、なのにどこかその弱さが反転して生み出されるサディスティックな雰囲気なども感じられます。

さまざまな要素が混ざりあい、絡み合って表出する独特の妖しさ、危うさに引き寄せられます。

画面全体が発する雰囲気はどこまでも淡く、ほんのりとした薄いベージュが、もしかしたらうまれる前の記憶を惹起してくれているのかも知れない、なんて錯覚も浮かぶほどのなんとも不思議な懐かしさを感じさせてくれます。

そういった味わい深い幻想的な風合いが漂う画面も、しっかりと眺めるとさまざまな要素が紡がれていることに気付かされます。

巧みな遠近感を取り入れた大胆な構図、緻密な線描。そこから放たれる時間制と空間性の両面における奥行きの豊かさ。

散る花弁の儚さと、一見儚いように見えて、それだからこそ紡がれる濃密な時間の同居。さまざまな想像が過っていきます。

樫木知子308 樫木知子307 樫木知子309

樫木知子306

今回はドローイングの小品も多く出品されています。

樫木知子310

味わい深い人物描写を活かし、遊び心に満ちた作品から、大作へのその時点での想像を書き留めたかのような刹那的なものまで、それぞれが締まっていて、そして淡い、甘いイメージが綴られています。

樫木知子313 樫木知子312

樫木知子311

今回の個展では、先の大阪でのグループショーにも出品された、縦長の画面に幽玄な女性の半身が描かれた作品が入口正面の壁に展示されていて、その収まりの良さには心から感嘆せずにはいられず...。

作品すらこの空間での展示を想定して描かれているわけではない、と思うのですが、それにしてはあまりにも見事な展示が施されています。いつまでも入口に立ち尽くし、ぼぅっと眺めていたくなるような...。

主に人物が登場する作品で、そこにさり気なく織りまぜられる猫などのものがまた、さくひんそれぞれの物語性を不思議な方向へと誘ってくれているような印象も受けます。

色彩感の妙と線描や構図のケレン味のなさ。強くて儚い、懐かしくて新しい、なんとも不思議なイメージを思い起こさせてくれるクリエイションです。

樫木知子314

シロタ画廊

東京都中央区銀座7-10-8

9/8(月)~9/20(土)日祝休

11:00~19:00(最終日:~17:30)

大塩紗永080908.jpg

Sae Oshio exhibition

Gallery Shirota

7-10-8,Ginza,Chuo-ku,Tokyo

9/8(Mon)-9/20(Sat) closed on Sunday

11:00-19:00(last day:-17:30)

Google Translate(to English)

より、深くへ。

シロタ画廊での大塩紗永さんの個展です。

前回の個展から、約1年のヨーロッパ留学を経ての今回の個展、どういう変化や進化が作品に反映されるか楽しみでしたが、これまでの木版凹版を用い、コラージュなども大胆に取り入れる独創的な展開はそのままに、さらに深く、文学的な匂いも漂うような独特な重厚さに満ちていました。

まず、入口付近に展示されたドローイング作品に目が向かいます。

複雑な行程を経て展開される大塩さんの「主」となる作品への想像の道程が垣間見られ、そこはかとなく漂う深みと、浮かぶイメージを描き留めたかのような荒削りさが魅力的に映ります。

大塩紗永012

大塩紗永011

日記のように展開された小品群によるインスタレーションも。作品それぞれにほどこされる日付けを連想させる数字が、画面のなかでひときわ強い、文字特有の存在感を醸し出しています。

おなじみの構成がいつになく軽やかに、やさしい遊び心とともに繰り広げられているような、繊細さと軽みとが奏でる心地よさが印象です。

大塩紗永017 大塩紗永016 大塩紗永014 大塩紗永015

大塩紗永013

今回発表された大作は、純粋な版作品というよりも、よりタブローの要素が強くなった印象です。

自らの手で描かれ、手が加えられている部分がいままで以上に多く、それが作品1点1点の深みへと直結しています。

渡欧前の作品からもそういった傾向は見受けられましたが、いままでの木版画特有の緩やかな風合いが幾分か抑えられ、より深化したような雰囲気を重厚に感じさせてくれるような気がします。

大塩紗永022 大塩紗永019 大塩紗永020 大塩紗永021

大塩紗永018

これまで登場しなかった要素も多く登場しているところも興味深いです。

そしてそれらひとつひとつが何らかのメッセージ性を秘めているようにも感じられます。

より濃厚に、深みを増す色面、唐突に織り込まれ、描かれる風景の縮尺感と物語性にズレをもたらすような窓、くしゃくしゃと挿入される線のノイズなどがイメージのなかで絡み合い、より深くシリアスな世界観を=響かせているように感じられます。

大塩紗永005 大塩紗永004 大塩紗永003 大塩紗永002

大塩紗永001

ダイナミックな大画面の作品に加え、収まりのよいサイズの作品の魅力も印象的です。

それぞれ、画面のサイズごとに織り込まれる要素の数や密度がバランスよく展開され、ときにふわっと広がるような心地よい浮遊感が伝わってきたり、大作に負けないほどの濃密で深い色彩が引力を発しているかのように力強く観るものの興味を引き寄せたり...。

大塩紗永009 大塩紗永008 大塩紗永010

大塩紗永007

すごく変な例えで恐縮ですが、前回までの大塩さんの作品が「直木賞よりの芥川賞」的だとしたら、今回は「ど真ん中の芥川賞」といった感じです。

画面の構成がもたらすシュールさがユーモアに振れず、淡々とシリアスな空気感が緩やかに、静かに画面から発せられているような感触。

目を開けての瞑想...そういう深みが強く印象に残った次第です。

大塩紗永006

渡部裕二展 -VISIONS-

ギャラリー新居 東京店

東京都中央区銀座6-4-7 いらか銀座ビル5F

9/8(月)~9/26(金)日祝休

11:00~19:00(土:~18:00)

渡部裕二080908.jpg

Yuji Watanabe -VISIONS-

Gallery Nii Tokyo

6-4-7-5F,Ginza,Chuo-ku,Tokyo

9/8(Mon)-9/26(Sat) closed on Sunday and national holiday

11:00-19:00(Sat:-18:00)

Google Translate(to English)

鉛筆画の圧巻の写実力と、そこに留まらない創造性の広がりと展開。

ギャラリー新居 東京店での渡部裕二さんの個展です。

まずは、鉛筆画。

とにかくこの描写力に思わず身を乗り出して凝視してしまいます。

渡部裕二10

渡部裕二09

決して大きな画面ではないものの、鬱蒼とした森の様子が静かに、充分な臨場感で伝わってきます。

木々の、枝々1本1本の緻密な描写の説得力が、描かれる画面全体から一切の隙を表さず、どこまでも緻密な密度で展開され、こちらの想像力に応えてくれるような感触です。

渡部裕二08 渡部裕二06

渡部裕二07

女性の肖像も魅力的です。

さり気ない陰影が、描かれるh女性の柔らかな雰囲気を引き出しているように感じられます。

渡部裕二13 渡部裕二12

渡部裕二11

で、鉛筆画だけでも相当なクオリティに圧倒されるのですが、そこからの展開がたいへん興味深く、面白いんです。

鉛筆で描かれた森の情景を透明のシートにプリントし、それを複数、わずかにずらして重ねた作品。今まで味わったことのない新鮮な感触がふっと沸き起こります。

渡部裕二04

鉛筆画でのくっきりとした像が一転し、輪郭が薄らぎ、どこまでも淡く、曖昧な残像となって現された作品。

手法のユニークさもたいへん興味深いのですが、観るものに、そこのみに主眼を置かせることなく、作品が醸し出すやわらかく繊細な感覚に包まれていくような風合いがなんとも心地よく感じられます。

渡部裕二03 渡部裕二02

渡部裕二01

記憶を鑑賞者に想起させる、というコンセプトで生み出されるユニークな手法が、実に味わい深い世界をもたらしてくれているような感触で、さまざまなイメージが浮かんできます。

渡辺さんの過去の作品を資料で拝見すると、映像やインスタレーションなどを多く制作されていて、その展開のユニークさに大きな興味を抱きます。

今回の展覧会で発表されている手法も、渡辺さんのひとつの「過程・経過」に過ぎないことを感じ取りつつ、そこで生み出されるクリエイションのクオリティの高さに感嘆した次第です。

直に目にして感じ取る新鮮なイメージが楽しい、鉛筆画と独創的なメディアの作品の両方に大いに見応えがある展覧会です。

渡部裕二05

鎭目紋子展「さよならと東京」

Galley 58

東京都中央区銀座4-4-13 琉映ビル4F

9/15(月)~9/20(土)

12:00~19:00(最終日:~17:00)

鎭目紋子080915.jpg

Ayako Shizume exhibition "Goodbye,and Tokyo"

Galley 58

4-4-13-4F,Ginza,Chuo-ku,Tokyo

9/15(Mon)-9/20(Sat)

12:00-19:00(lazt day:-17:00)

Google Translate(to English)

緻密な描写と、重なる和紙の滋味。

Galley 58での鎭目紋子さんの個展です。

墨の滲みや重なる和紙が醸し出す曖昧な風合いダークトーンの色彩感。それを背景に、緻密な線描で描き込まれる都市の風景。観るほどに引き込まれていきます。

鎭目紋子10

ひとつのパネルごとにひとつの色彩の統一感がもたらされ、その一方で織り成される複雑な色彩のコントラストに魅入られます。

曇り空の沈んだ感触、あるいは褪せる想い出、そういった感触を思い起こさせる独特な味わいを奏でます。

鎭目紋子05 鎭目紋子03 鎭目紋子02 鎭目紋子04

鎭目紋子01

支持体もユニークです。

パネルに敷き詰められるように貼られる、渋い色彩で染まる薄い和紙。膠で定着させているそう。

描いては和紙を重ねて貼り、を繰り返しながら描かれるとのことで、和紙の重なりが薄い箇所ではパネルの木目も表面に現れて見えるところもあり、それが彩色や和紙の感触と相まって、さらに深い味わいを滲ませます。

鎭目紋子07 鎭目紋子08 鎭目紋子09

鎭目紋子06

何より印象的なのが、細やかな描き込みです。

さまざまな建物がさまざまな縮尺で描き重ねられ、奥へ、遠くへ、地平線のほうに近付くにつれ、線の密度も高まって、都市の混沌と郷愁とが描き表されているようなイメージが思い浮かびます。

微妙な線の凝縮そのものはアグレッシブな力強さを感じさせてくれ、その一方で俯瞰風景として実に淡々とした味わいも印象に残ります。

鎭目紋子16 鎭目紋子15 鎭目紋子14 鎭目紋子13

鎭目紋子12

至近で眺めてじっくりと、その描き込みの緻密さを直に感じ取ってほしい、そして、全体から発せられる独特な渋味、味わいも堪能してほしい作品群です。

鎭目紋子11

南隆雄展

OTA FINE ARTS

東京都中央区勝どき2-8-19-4B

8/30(土)~10/4(土)日月祝休

11:00~19:00

南隆雄080830.jpg

Takao Minami exhibition

OTA FINE ARTS

2-8-19-4B,Kachidoki,Chuo-ku,Tokyo

8/30(Sat)-10/4(Sat) closed on Sunday,Monday and national holiday

11:00-19:00

Google Translate(to English)

フューチャリスティックな色彩感。

連続する、それでも噎せるようなモチーフ。

OTA FINE ARTSでの南隆雄さんの個展です。

ここで観る映像インスタレーションの素晴らしさは、過去の展覧会を拝見していて充分に分かっているのですが、それでもやはり、空間に入った瞬間から体全体で感じる分厚い臨場感と先鋭的な刺激は堪らないものがあります。

まず目に飛び込んでくる、大きく映し出された画面に、刹那、圧倒されます。

南隆雄01

東南アジアの風景を加工、編集した映像作品。右から左へと淡々と流れていきます。

さまざまな要素が、壁面に大きく映し出された映像のなかに現れては消え、牛を曳く農民の様子や沖を進む舟の列など、遠くの情景を思い起こさせるものが空間的、時間的な奥行きを生み出します。

南隆雄13 南隆雄22 南隆雄17

南隆雄16

遠い風景や場面が続くなかに、ときに大胆なまでに大きな風景が迫ります。

いきなり現れる壮大な光景、あるいはほぼ実物大といっていいサイズにまで大きく映し出される人のシルエットなどが、遠くへと向かってどこか懐かしいような、切ないような、そういう感じの淡い心情が蹂躙され、唐突にもたらされる視点の変化に呆然としてしまいます。

南隆雄11 南隆雄12 南隆雄14

南隆雄15

さまざまな要素が現れ、過ぎ行くなかで、それがなんであるか分かるものも多く存在する一方、おそらく何かの自然現象ではあるのだろうな、という連想はするものの、実に抽象性の高い要素も現れます。それが、この映像のサイバーな感触、ネガとポジとを反転させ、それをヴィヴィッドな光のラインや滲みで再現されることで発せられる未来的な雰囲気を加速させてくれます。

南隆雄04 南隆雄05 南隆雄06

南隆雄07 南隆雄09 南隆雄08

崖のダイナミックさ、稲妻のように白く煌めかせる、おそらく柳かなにかの木のシルエット、空を走り横切っていく雲。

そういった大きなもののあいだにすっと射し込むように登場する遠い船影や、赤く輝く牛などが、熱を帯びたアクセントとなって迫り、そのひとつひとつの登場に凝視が促され、意識が呑み込まれていきます。

映像を前にし、ゆったりと進む時間を身体で感じるなかで、さまざまな刺激を受け、その土地の湿った暑い空気が伝わり噎せるような思いが脳裏に浮かび纏いつく感触と鋭い光の交錯や重なりが放つ不ューチャリスティックさとのギャップにおおいに感性を揺さぶられ、どんどんとこの世界観に意識が沈み込んでいきます。

南隆雄03

後方の壁面に映し出される映像は、上下に伸びる鋭角の放射状の光の線の束がくるくると旋回するもの。

シャープさが際立ち、南さんのイマジネーションのある一面が鋭く引き出されたかのような感触が印象的です。

南隆雄18

もう1点は、その構造も謎めいています。

床に置かれたモニターに映し出されているのは、硝子の板を這う爬虫類を下から捉えたような映像のコマ送り。

そしてモニターの側に置かれる、監視カメラがウィンウィンと機械的なノイズを奏でながらそのレンズを動かし続けています。

監視カメラが捉えた光を思わせるものがモニターにも映し出されています。

機械の意識と生命の無意識との関係性など、さまざまなイメージが過ります。

南隆雄20 南隆雄21

南隆雄19

3点の映像作品によって構築されたインスタレーションは、それぞれが闇を裂くようなシャープな雰囲気を放っていて、独創的で深遠な刺激が空間を満たしているように感じられます。

時間の流れを壮大に、ゆるやかに感じさせてくれる大きく映し出された至高の映像コラージュ、徹底して無用な要素が削がれ、ソリッドに展開するミニマムな映像作品、そして機器の生々しさが前面に押し出されたような作品。この関係性も興味深く、ひとつの作品に大きく感性を傾けつつ、他の作品の存在も意識の片隅に置きながら、じっくりと対峙し、イマジネーションの静かな高揚を感じたい展覧会です。

南隆雄02

《9/12》

古賀充 Driftwood Diosaurs

IID GALLERY

東京都世田谷区池尻2-4-5 IID 世田谷ものづくり学校1F

9/12(金)~9/28(日)月休

11:00~19:00

古賀充080912.jpg

河原の石を削り出して作るキュートな一輪挿しなどのオブジェや落ち葉をカットした作品など、ちいさな作品を多く発表されている古賀充さんの個展。

DMを拝見し、これまで拝見してきた作品を踏まえてどんな展示なのか想像していたのですが、思いっきり裏切られてしまいました(≧∇≦)ノ゛

整然と並ぶ、モノクロームの写真。

そのひとつひとつに収められているのは、恐竜の骨組み...のように配置された流木。

ぱっと観た瞬間にイメージするものから、そこにあるそのものがだんだんと分かってくるにつれて、今回の作品に込められているユーモアやスケール感、さらに実際はどうなんだ、ということへと考えが至った時から始まっていく驚きの連続、展示空間の淡々とした雰囲気とは裏腹に、イメージも現実も、実にダイナミックなことが行われ、起きていることがとにかく痛快です。

感心と感嘆が押し寄せる、実にユーモラスで、アナログで体力勝負なアプローチが結局のところおおいに斬新に感じさせてくれる展覧会です。

実際に足を運んでいただいて、それぞれの風景の中で起こったことに思いを馳せ、驚いてほしい!

The Echo from Japan:Exhibition of Japanese Next Art

ZAIM

神奈川県横浜市中区日本大通34

9/13(土)~10/5(日)

11:00~19:00

THE ECHO 080913.jpg

もう、この展覧会があることを考えるだけで暑い夏を乗り切れた、と個人的に言い切れる展覧会です。

最初にこの企画を知ったのが、山口智子さんの個展でのトークショーで、山口さんの個展の次の展示、というかたちで紹介され、その時点では勝手に「6人くらいかな...」なんて思っていて、続いてTWS渋谷で竹村京さんとお会いした際に、竹村さんもこの企画に参加されることを伺い、「山口さんと竹村さん...!」と、興味は深まる一方。

そして、ギャラリー小柳で開催されたグループショーで青山悟さんとの雑談の中でこの企画の話題になり、いただいた名刺サイズのDMに掲載されている参加アーティストの面々を見て

!!!!!!!Σ( ̄口 ̄;)

何この日本代表(しかもコインブラのじゃなくてオシムジャパン)!!!Σ( ̄口 ̄;)

と驚愕。高まる期待。

展示が始まる前に参加されるアーティストにこの企画のことを伺うと、皆が皆、この企画に参加することを誇りに思っているように感じられたのが強く印象に残ります。

プレビューに伺って一通り拝見し、充実の面子による充実の展示を体感して、参加アーティストの誰もが「ただ創っているわけではない」というアーティストとしてのプライドを鮮烈に放っているように感じた次第。

2度3度と足を運び、日本のアートの今をしっかりと感じ取りたいと思っています。

《9/13》

P&E Bグループ(立体・平面・映像・インスタレーション)岡本華代子 加藤亮 金澤麻由子 笹埜能史 塩谷良太 田島悠史 林美貴子 平川祐樹 西山裕希子 マイケル J. ミグリアーチ 村上郁 山本正大

ARTCOURT Gallery

大阪府大阪市北区天満橋1-8-5 OAPアートコート1F

9/4(木)~9/13(土)月休

11:00~19:00(日、最終日:~17:00)

P&E080821.jpg

さまざまなメディアの作品が広くてアクロバティックな空間に詰め込まれたグループショー、その中で強く印象に残ったのが、西山裕希子さんの鏡や写真か何かに描かれ、しっとりと謎めく物語性を紡ぎ出している作品と、金澤麻由子さんのさまざまな羊の絵が延々と続いていく、こちらも深い謎めきを醸し出していたアニメーション。ヴィヴィッドな個性が集う中で、ひときわその静けさが心に響くように感じられました。

大阪なのでなかなか難しいのですが、Aグループの絵画の展示も観たかったです...。

中岡真珠美展

Oギャラリーeyes

大阪府大阪市北区西天満4-10-18 石之ビル3F

9/1(月)~9/13(土)日休

11:00~19:00(土:~17:00)

東京、第一生命ギャラリーを会期をあわせて開催された、中岡真珠美さんのOギャラリーeyesでの個展です。

これまで何度も展示を行っていることもあってか、コンパクトな空間の活かし方も実に巧みで、大作と小品をうまく散りばめ、豊かな空間性を生み出していて、なんとも清々しい展開がなされていました。

中岡真珠美008

作品の精度、鮮度は無論、あらためて言うまでもないほどの素晴らしさです。

フレッシュな白の広がりと、ふわりと滲み、あるいは盛り上がる白の立体感を境に色面のエッジを際立たせるさまざまな色彩。そのコントラストがお互いの美しさを引き立てあい、爽快で壮大な空間性を奏でています。

中岡真珠美007 中岡真珠美004 中岡真珠美005 中岡真珠美006

中岡真珠美003

大作のスケール感も気持ちよい一方、小品が空間にもたらすアクセントも決まっています。

さまざまな要素が小さな画面に凝縮された構成が、より強い引力のようなものを放っているように感じられます。

中岡真珠美002

フレッシュな空気感が目から感じられる、爽快きわまりないクリエイションです。

中岡真珠美001

風のコンセプト・NEO ABSTRACT21 寺島みどり

ギャラリー風

大阪府大阪市中央区北浜2-1-23 日本文化会館9F

9/3(水)~9/15(月)

11:00~18:00(日祝:~17:00)

寺島みどり080903.jpg

先日、赤坂のホテルオークラで開催されたアートフェアのギャラリー風のゲストルームで拝見して印象に残った寺島みどりさん。

力強い筆致と大胆な配色により、ぐんぐんとダイナミックに展開していく抽象世界。ヴィヴィッドで、走らせる筆の痕跡のひとつをとっても、創造性が漲っているように感じられる、力強い絵画です。

樫木知子個展 Focal Point series

MEM

大阪府大阪市中央区今橋2-1-1 新井ビル4F

9/5(金)~9/27(土)日月祝休

11:00~18:00

樫木知子080905.jpg

昨年のギャラリーなつかでの二人展から折りに触れて拝見している樫木知子さん、その都度大作の新作が出品されていることもあってそれぞれが相当なボリュームだったこともあり、個展を拝見するのは今回が初めて、というのが意外に感じられます。

ただ、やはりソロになるとアーティストの繊細な個性により臨場感が伴って感じられ、薄いベージュが広がる独特の色彩感に収められる微睡むような雰囲気が、じっくり、じんわりと心に響き満ちていきます。。。

秋山菜摘 -nacci-

CUBIC GALLERY

大阪府大阪市中央区備後町3-1-2 アトラスビル201

9/8(月)~9/20(土)日祝休

12:00~19:00(土:~17:00)

秋山菜摘080908.jpg

思いのほか、濃密な絵の具の質感に魅入られます。

カラフルで強い配色のなかに意識が溶かされるような...。

そして、作品によってはそこからぐんと立ち上がる、線で描かれる足などの身体のパーツ。ポップな色彩感と妖しさとが絡み合い、独創的なキュートさを生み出しているように感じられました。

早川知加子展 "small garden"

studio J

大阪府大阪市西区新町3-14-8

9/13(土)~10/11(土)日月休

13:00~19:00

早川知加子080913.jpg

東京と名古屋で拝見している早川知加子さん、今度は大阪、studio Jでの個展です。

いつものカラフルな色でチリチリと紡がれていく木版とドローイングを組み合わせた作品が多数展示され、そこここで味わい深い壁面構成が繰り広げられています。

早川知加子105

入口正面の壁面、ひとつひひとつ異なる絵柄が描き込まれたちいさな紙片がみっしり整然と配されている様子は圧巻です。

ひとつとして同じもの、同じ構図がなく、目移りしてしまう豊富なバリエーションに下を巻きつつ、それでもぱっと不意に目に飛び込んできたちいさなものにきゅんと引き寄せられたり。

早川知加子102 早川知加子103 早川知加子104

早川知加子101

壁面に設置された長い棚に並ぶ立体作品もかわいいことこの上なく。

平面作品と同様に、きゅっとかわいらしさが詰め込まれたような感触が堪らなく、一方でこちらの展開も作品ひとつひとつの精度がより繊細に高まっているようにも感じられます。

早川知加子108 早川知加子109 早川知加子107

早川知加子106

それぞれの色彩の滲みや広がり、鋭く描かれる弧、あらゆる要素が有機的に絡み合って、独特な世界観が変わりなく生み出され、さらに深度を深めています。

早川知加子111 早川知加子112 早川知加子113

早川知加子110

くらき光と色展 -夕暮れ- 高橋友 矢部奈桜子 山田正亮 ルーシー・リー

GALLERY ZERO

大阪府大阪市西区京町堀1-17-8-4F

9/1(月)~9/13(土)日祝休

12:00~19:00(土:~17:00)

GALLERY ZERO080901.jpg

3つのギャラリー共同で開催された企画展。

GALLERY ZEROでは、すでに名が通る重鎮作家とともに、フレッシュな個性もレコメンドされていました。

高橋友さんの作品、ステンドグラス風の配色がまず印象的です。

盛り上がる黒の色面状の線によって隔てられるヴィヴィッドな色面。それぞれは丸みを帯びてかわいらしさを醸し出す一方、裏腹にグロテスクな風合いも伝わってきます。

高橋友05

大胆な色彩の構成と線のうねりが生み出すダイナミズムは痛快に感じられるほどに魅力的です。

高橋友02 高橋友03 高橋友04

高橋友01

矢部奈桜子さんの作品は、微睡むようにモチーフを描く展開に独特な深みを感じます。

矢部奈桜子01

溶けるフォルムと鈍い彩色とで繰り出される、それが何か認識できるかできないかのギリギリの歪ませ方が、意識を呑み込み、深いイメージの世界へと誘ってくれるような風合いが興味深いです。

矢部奈桜子03 矢部奈桜子04

矢部奈桜子02

ARCA 鈴木崇

THE THIRD GALLERY AYA

大阪府大阪市西区江戸堀1-8-24 若狭ビル2F

9/6(土)~9/27(土)日月休

12:00~19:00(土:~17:00)

鈴木崇080906.jpg

「影」を撮影した写真作品。同一サイズの作品が実に空間に収まりよく配置されています。

それが何であるかは明かされないようで、たたでさえ空気に散ってしまいそうな儚げなフォルムがより曖昧に感じられ、それがなんともいえない心地よさをもたらしてくれます。

鈴木崇01

展示されている作品すべて、画面の中で実に安定した構成、律儀なまでに左右対称で、かつ重力感というか、ストンと収まる感触は実に落ち着き払っているように思えます。

具体的には分からないし、分かるための情報も与えられていないのですが、「感じる」というレベルでは間違いなく「分かる」、心地よいほどに分かるんです。

時間も忘れて眺めていたくなるような...儚げな風合いが不思議な魅力を醸し出しています。

鈴木崇02

大田高充展

PANTALOON

大阪府大阪市北区中津3-17-14

9/6(土)~9/28(日)月火休

12:00~19:00(水木:18:00~22:00)

大田高充080906.jpg

「いる」「いらない」の判別にもたらされる曖昧さ。

「なぜ?」という思いは過り、一方で「なるほど...」と感心したり。

じわりと、何かが伝わる...無駄を排除し、無駄を残す、深い味わいのインスタレーションです。

《9/14》

橋本舞『深く空気を吸い込む』

ギャラリー惺

東京都武蔵野市御殿山1-2-6 ビューキャニオン吉祥寺御殿山B1F

9/13(土)~10/5(日)火水休

11:00~19:00(最終日:~17:00)

橋本舞080913.jpg

淡い味わいが魅力的なペインティングです。

描き切っていない甘い仕上がりが奏でる独特な感触、そこに想像力が掻き立てられてしまいます。

橋本舞01 橋本舞02 橋本舞04

橋本舞03

どこか、という風景のイメージをほんのりと感じさせる抽象的な筆致、作品によってはグラフィカルな展開も織り込まれていたり。

全体的に曖昧な雰囲気を漂わせているなかで、作品の一部に凝縮された濃い要素が点在し、それがアンバランスな魅力を生み出しているようにも感じられます。

橋本舞05

ある「境」、あるいは「際」のイメージを伝えたい、そういう想いが感じ取れるような印象です。

その「際」がもっと追い込まれた時に、どういう鋭い、もしくは危うい世界が紡がれるか、興味が湧いてきます。

この日はこの後GEISAI#11へ。

予想外に広い敷地に圧倒されつつ。

作品や展示を拝見していながら、お目にかかれなかったアーティストの皆さんとご挨拶できたことがまず嬉しかったのと、既知のアーティストが意外な展開を繰り広げていたり、未知のクリエイションも、また続けてみたいものにも出会えたり、満足の一日でございました。

《9/15》

津村陽子

青山|目黒

東京都目黒区上目黒2-30-6

9/12(金)~10/4(土)日祝休

11:00~20:00

津村陽子080913.jpg

一度観て、もう一回観た時に一気に立ち上がってくる奥行きや要素。

抽象性の高い筆跡や配色が、わずかなインターバルを挟んでどんどん組み上がっていくような、なんとも不思議な魅力に満ちたペインティングです。

「何色の絵」という具合に作品ごとに統一される色調も作品の世界に強みをもたらしているように感じられます。

つらつらと並ぶ小品の密度の濃さや大きな画面のスケール感と、至近で観た時に目に入る筆致の現実的な臨場感とのコントラストも心にぐんぐんと響いてきます。

Akasaka Art Flower 2008

赤坂サカスエリアを中心とした赤坂一帯

9/10(水)~10/13(月)

11:00~19:00

AAF08 0809110.jpg

赤坂のいくつかの会場で開催されているアートイベント、なんといっても元料亭の「島崎」(東京都港区赤坂6-13-5)での展示が素晴らしい!

昼間でも薄暗い建物のなかに入り、まずトーチカのヴィヴィッドな映像インスタレーション、空間のイメージとのギャップを体感します。

廊下の奥にある、青山悟さんの作品。パンフレットに掲載されている写真を拝見し、「あれ、今回は違うのかな?」と思わされて、「今回も同じか!Σ( ̄口 ̄;)」と、さらに進化する刺繍の精度と、その進化、深化を促すクリエイティビティの豊かさと奥深さに驚かされた次第。たった2点、しかし充分に凄いです。

倉重光則さんの光のインスタレーションが施された階段を昇り、2階へ。

まず、先日TWS渋谷での長期に渡って行われた個展を終えたばかりの雨宮庸介さんの部屋へ。

・・・渋いです。淡々と紡がれていく時間。よくよく考えると強烈にシュールなシチュエーションなのですが、あまりに自然に空間と一体化している感触は、相当に深いイメージを感じさせてくれます。続いていく感触を思いっきり残して終わったTWS渋谷での展開の一部を抽出したかのような。。。

グラフィカルで、かつ動的な映像という印象が強い志村信裕さん。今回は映像インスタレーションではあるものの、映像自体に大きな動きはなく...きっとないのですが、どこかに動きがあるのでは、と思って映像を凝視した刹那の驚きが堪らない...。

そして、松宮硝子さん。おなじみの、ガラスを用いて生み出される想像上の生物「ドゥークーヒープー」が登場するインスタレーションなのですが、いつもと違う古びた畳の空間での展示で、いつになく妖しげな感触を鮮烈に、深遠に漂わせています。圧巻です。

-interstice- Tojo Shinnosuke Exhibition

GALERIA SOL

東京都中央区銀座6-10-10 第二蒲田ビルB1F

9/15(月)~9/20(土)

11:00~19:00(金:~20:00、最終日:~17:00)

東城信之介080915.jpg

鉄板を錆びさせ=る、という手法で独特な味わいを醸し出す、東城信之介さんの個展です。

錆の渋い色彩感と、金属的な鈍い輝きを放つ部分とで構成される平面からは、和のテイストが感じられ、不思議な感触が伝わります。

東城信之介03 東城信之介01

東城信之介02

ソリッドなモチーフも随所に織りまぜながら、日本的な風合いのかたちが舞い、独創的な和の世界を奏でます。この味わい深さは、素材本来の感触とかけ離れていて、しかしそれでしか表せない雰囲気もあって、実に魅力的です。

東城信之介05 東城信之介06 東城信之介07

東城信之介04

植松知祐展 The Travelers

GALLERY b.TOKYO

東京都中央区京橋3-5-4 第1吉井ビルB1

9/15(月)~9/27(土)日休

11:00~19:00(金:~21:00、最終日:~17:00)

植松知祐080915.jpg

久々の植松知祐さんの個展。

変わらない、どこかほのぼのとして、懐かしさに通ずる心地よさが優しく滲む場面が、そこかしこにふわりと広がっています。

植松知祐001

あたたかい色合いに、心もほのぼのとしてきます。

レイドバックしたような雰囲気が広がるなかで、そこにさり気なくシュールなシチュエーションが織り込まれていたり。

植松知祐004 植松知祐003 植松知祐005

植松知祐002

やわらかい表情の人物やキャラクターに加え、花や鳥を描いた作品も。

ひとつの時代、季節のイメージがつらつらと貫かれて、その統一感も心地よく、安定したものへの安心のようなものが心を満たしてくれます。

植松知祐006

TOKYO EYE 06 浅川和音 飯塚菜菜 鷺克次

大丸東京店10Fアートギャラリー

東京都千代田区丸の内1-9-1

9/10(水)~9/16(火)

10:00~20:00(最終日:~17:00)

TOKYO EYE06 080910.jpg

今回もユニークな個性がレコメンドされたこの企画。

個展も印象的だった飯塚菜菜さんは、紙を支持体に採用した作品が出品され、ユニークな手法によって導き出される色彩がより鮮やかに際立って、ヴィヴィッドなインパクトが痛快です。

浅川和音さんは、ふわりと浮遊するような、やわらかな筆致によって描かれる場面が心地よく、広く壁面を覆った作品で特にその世界観を滲ませていました。

鷺克次さんは、ざっくりとした筆致と彩色の痛快さと、律儀なまでに貫かれるシンメトリーの構図、それが奏でるグラフィカルな面白さが印象に残ります。

Moeglichkeit 伊藤一洋 岩田俊彦 上野佐智子 荻野僚介 渕沢昭晃 双唾冷々 山口幸太郎

ラディウム-レントゲンヴェルケ

東京都中央区日本橋馬喰町2-5-17

9/5(金)~9/27(土)日月祝休

11:00~19:00

メークリヒカイト080905.jpg

Moeglichkeit

Radi-um von Roentgenwerke AG

2-5-17,Nihonbash-bakurocho,Chuo-ku,Tokyo

9/5(Fri)-9/27(Sat) closed on Sunday,Monday and national holiday

11:00-19:00

Google Translate(to English)

比較的幅広い世代から7名のアーティストがピックアップされた展覧会です。

それも、レントゲンのポリシーは強固に貫かれながら、さらにその幅を広げるかのようなアプローチもたいへん興味深いです。

1階、いきなりいつもと違う雰囲気。

山口幸太郎さんのアニメーションが上映されています。

抑えられた照明に、4発のプロジェクターによって映し出される、ある架空のコンビナート。

右から左へと、それぞれの行程に整合性をもたせながらひとつひとつていねいに作られていく製品、それが最後に、

何でそうするのーーーー!!!!Σ( ̄口 ̄;)

と、仰天の展開によるフィニッシュ。しかも数パターン。

要素のひとつひとつのキャッチーな雰囲気や、さまざまな音が重なって奇妙でポップなリズムを奏でているところ等、楽しい要素てんこ盛りの映像インスタレーションです。

山口幸太郎02 山口幸太郎03 山口幸太郎04

山口幸太郎05 山口幸太郎06 山口幸太郎07

山口幸太郎08 山口幸太郎09 山口幸太郎10

山口幸太郎01

レントゲンでは実に珍しい、山口さんのメディアアート的な作品に続いては、今まで慣れ親しんだ感のある、レントゲンならではのチョイスがずらりと並んでいます。

階段部分、hpgrp東京やなびす画廊などでも拝見しておなじみの伊藤一洋さんのオブジェ群。

骨を連想させる有機的なフォルムと鋭くなめらかなブロンズの質感と輝き、それらが混然となり、独創的なイメージの創出をもたらしてくれます。

伊藤一洋102 伊藤一洋103

伊藤一洋101

階段を昇り切った正面は、今回唯一の女性アーティスト、上野早智子さんのペインティングに意表を突かれます。

愚直なまでに画面に盛られた絵の具。それが伝える描き手の行為の痕跡は異様なまでに生々しく、精緻なクリエイションが並ぶ中で異質さを強烈に放っているように感じられます。

画面に叩き付けられたように定着する絵の具の色彩は、独特の陰影感を生み出していて、ミニマムな視点で眺めた時のさまざまな色彩の混ざりあいによるアブストラクトな雰囲気と共に、強烈なインパクトがもたらされています。

上野早智子02

上野早智子01

昨年のギャラリーエス、そして今年春のギャラリーなつかでの個展、さらに昨年のシェル美術賞展で拝見している渕沢照晃さんの参加は個人的にもたいへん嬉しい限りで。

今回発表されている作品は、スクエアのものが2点と少なめですが、それぞれ超緻密なペンの線の凝縮と、余白とのせめぎ合いが醸し出す素スリルは今まで以上に鮮烈で、その線の凝縮も、部分、全体と、さまざまな角度により豊かにイマジネーションを刺激してくれます。

渕沢照晃102 渕沢照晃103

渕沢照晃101

双唾冷々さんこと、笹山直規さんのタブローは実にユニークな味わいを醸し出しています。

構図的には実にシンプルな展開で、しかも淡々、黙々と描かれたような、さまざまな食べ物。

ぱっと観てそれが何の食べ物か分かるほどにていねいな再現性が繰り広げられている...はずなのですが、なんとなく一筋縄では行かない雰囲気と、人の名前が冠されている作品のタイトルが、奇妙な印象を思い起こさせてくれます。

で、コーヒーの作品。至近で眺め、あることに気付いてぎょっとした次第。。。相当に怖い印象がもたらされました。

笹山直規04 笹山直規03 笹山直規02

笹山直規01

今年の春のなびす画廊での個展も印象的だった岩田俊彦さんの作品、テイストこそそのときと大きな変化はないものの、作品の精度が格段に上がった感じで、それがクリエイションのシャープさを凄まじく加速させ、重厚感さえも醸し出しているように感じられます。

岩田俊彦04

分厚いパネルにていねいに塗られる漆。茶色がかった朱と黒という、お互いに引き立てあう落ち着いた配色の妙もさることながら、描かれるモチーフの妖しさと、保持される「和」の感触が、奥深い世界観を醸し出しているように感じられます。

岩田俊彦03 岩田俊彦02

岩田俊彦01

荻野僚介さんは、シャープな構成が痛快です。

図形的なアプローチがフューチャリスティックさを放っていて、彩色の鮮やかさとともにその構図のユニークでシャープなフォルムをヴィヴィッドに立ち上げているように感じられます。

荻野僚介02

荻野僚介01

互いの尖った個性が衝突しあって金属音のノイズを奏でているかのような、鋭いクリエイティビティに満ちています。

それぞれの展開もすごく楽しみです。

山本久美子展

谷門美術

東京都港区北青山3-3-7 第一青山ビル1F

9/5(金)~9/20(土)祝休・日月:要予約

13:00~18:00(最終日:~17:00)

山本久美子080905.jpg

Kumiko Yamamoto exhibition

TANIKADO ARTS

3-3-7-1F,Kita-aoyama,Minato-ku,Tokyo

9/5(Fri)-9/20(Sat) closed on national holiday (Sunday and Monday:appointment only)

13:00-18:00(last day:-17:00)

Google Translate(to English)

ぎゅっと詰まったキュートなアブストラクト。

谷門美術での山本久美子さんの個展です。

重ねた紙を彫刻のように彫り削って作られる小さなオブジェ群。昨年度の東京藝術大学の修了展示と、それに続いて開催されたART AWARD TOKYOで、もっとも印象に残ったアーティストのひとりで、谷門美術の小さなスペースにぴったりのキュートなクリエイション、それらのカラフルな色彩と削り出される表面のアールによって表出するカーブが、なんともかわいいリズムを奏でます。

山本久美子01

抽象的なものから、一目観ただけでそれが何か分かるほどの高い再現性のものまで、さまざまなモチーフの作品が並びます。

それぞれに重ねられる紙は実に鮮やかな色が連なっていて、それらが地図の等高線のように密な距離を保ちながらパラレルのラインですらすらと流れ、時にヘアピンカーブ状にキュッと鋭角な曲線を描いていきます。

山本久美子03

山本久美子02

抽象的なモチーフの自由なイメージも楽しいですが、リアリティを追求された作品の臨場感も相当なもので。

壁に設置された棚にボコッと置かれた手。

手か!Σ( ̄口 ̄;)

と一瞬ギョッっとするわけですが、それでもやわらかく差し出される小さな手のかわいらしい表情と青と白による爽やかな色彩感に不思議な清々しさが伝わってきます。

山本久美子08 山本久美子09

山本久美子07

山本さんのクリエイションの真骨頂、葉っぱのオブジェ。

モチーフの薄ささえも緻密に再現され、表面に現れる重なる紙の色彩が葉っぱのアールが緻密な再現性に説得力をもたらしています。

なにより、実物大で再現されていることが、作品のリアルな臨場感を際立たせているように感じられます。

山本久美子04

その葉っぱがいっぱい集まった一角、なんとも贅沢!

色彩や緻密に現れる線の鮮やかさ、ケレン味のない曲線の曲がり具合、徹底して追求されるリアリティ。

ひとつひとつの要素に感嘆しつつも、なによりキュートさが満ち、膨らんでいるように感じられるのがなんともいえない嬉しさを沸き起こさせてくれます。

山本久美子06

山本久美子05

紙のオブジェに加え、ドローイング作品も数点あわせて展示されています。

迷いはあっても、誇張も媚びはない、等身大のイメージがそれぞれ小さな画面に映し出されていて、リアルなオブジェから感じられる、ふわふわと滲むフィクショナルな味わいに奥行きとヒントをもたらしてくれます。

山本久美子13 山本久美子12

山本久美子14

山本さんの作り手としての誠実さが感じられる作品群です。

キュートなアイデアと、それをアイデアだけに終わらせない突き詰められる再現性。さらに、いかにこのアイデアを楽しく観せることができるかということへの腐心など、いろんな誠意が伝わってくるように思えます。

そして、それが、決してダイナミックではないけれども、小さくてもしっかり驚かされるほどの作品となって現れていることが、とにかく嬉しく感じられます。

ピックアップされるモチーフのユーモラスな感触や、さらに追求されるリアリティ、それらがこれからどのように展開していくか、楽しみです!

山本久美子10

塩保朋子「Cutting Insights」

SCAI THE BATHHOUSE

東京都台東区谷中6-1-23 柏湯跡

8/29(金)~9/27(土)日月祝休

12:00~19:00

塩保朋子080829.jpg

Tomoko Shioyasu "Cutting Insights"

SCAI THE BATHHOUSE

6-1-23,Yanaka,Taito-ku,Tokyo

8/29(Fri)-9/27(Sat) closed on Sunday,Monday and national holiday

12:00-19:00

Google Translate(to English)

紡がれる緻密の蓄積による、信じ難いほどに圧倒的に美しい光景。

SCAI THE BATHHOUSEでの塩保朋子さんの個展です。

塩保さんといえば、今年の春にも大阪のアートコートギャラリーで相当なサイズの大作を発表されていたばかりだったこともあり、僕の予想では今回の個展では比較的コンパクトなサイズの作品が揃うのでは、と想っていたのですが...

いつもより小さく設置されたメインルームへの入口から覗く、薄暗い空間での展示に後ほど息を呑むことに。。。

塩保朋子108

まず、カウンターのあるスペースに展示されている作品に目が奪われます。

プラスチック製の紙を重ね、それをハンダごてで熱を加えることで溶かしながら穴を作り、それを綴っていくことで圧巻の紋様が紡ぎあげられています。

数枚の特殊紙が重ねられた状態で過熱されることでお互いが定着し、部分的に断層が生み出され、それが奇妙な妖しさを醸し出して、目にする無数の穴の集合で迫るダイナミズムと同時に、ひとつの穴のミニマムなテクスチャーにも意識が引き寄せられていきます。

塩保朋子110 塩保朋子111 塩保朋子112

塩保朋子109

この「溶かす」アプローチが進化し、珊瑚を想わせる立体へと行き着いた作品も発表されています。

分厚い特殊紙の層が過熱されることによって塊へとその形状を変化させ、実に独創的な、斬新な「彫刻」作品へと深化しているような感触が新鮮に伝わってきます。

塩保朋子114

塩保朋子113

数点展示されているタブロー作品も、実に魅力的です。

木炭や、特殊な手法によって描き出されるモノクロームのグラデーション。

紙をカットしたり溶かしたりして紡がれていく塩保さんの特殊な手法による平面展開に、それと比較すると「描く」という視点においてオーソドックスな手法で描かれた世界の有機的な風合いを目にすることができ、それが塩保さんのメインの作品群から感じるイメージに奥行きをもたらしてくれるような気がして、ひとりのユニークなアーティストのクリエイティビティの一面を垣間見られる貴重な機会を得られたような印象が嬉しいです。

塩保朋子115

塩保朋子116

そして、いつもより大きな壁で仕切られた奥の展示スペースへ。

足を踏み入れた刹那、言葉を失います。

それほどの圧倒的なスケール感。

さまざまな想いが脳裏を凄まじい勢いで過っていきます。

塩保朋子101

8メートルほどの高い天井から吊り下がる1面のタペストリー。

そこに、わずかな隙も感じさせないほどに施される緻密なカット、その集積。

いったいいくつの穴が開けられているのだろうとか、これを制作するためにどれくらいの時間が費やされたのだろう、さらにはこのサイズの紙の存在へのシンプルな驚きなど、この作品とひとつの空間で対峙する時間が経つに連れてさまざまな驚愕が湧いてきますが、それよりなにより、最初のインパクトの強烈なまでの圧倒的な神々しさに暫し、思考のストップを余儀無くされてしまった次第で。。。

塩保朋子105

この空間のすべての要素が美しいのです。

閉じた空間、入口を除くと、基本的に光は正面から灯される白熱灯のみ。

これがこの広い画面に万遍なく広がり、奥の壁面と床にも鮮やかな影をダイナミックに映し出しています。

塩保朋子103

ひとつの臨界が構築されているというか、照明の前に立つことで影の一部の紋様を消してしまってはいけない、というような理性が心に生まれます。

もちろん、影を通り過ぎるスリルも言葉にできないほどのものだったりするのですが、ただ、この神々しい美しさを穢してはいけないような気持ちが湧いてくるんです。

塩保朋子106

とにかく、すべての要素が壮大です。

理詰めでいろいろと想像を巡らせていき、それに伴ってうまれる「どうなっているんだろう...」という疑問、それは結局のところ、すべてもっともシンプルな理屈で説明されることで、そのひとつひとつに対しても大きな感嘆が心の中に沸き起こっていきます。

・・・観れば観るほどに大きくなっていく感動に、圧倒され続けます。

大阪で拝見した4本のタペストリーが奏でる美しさも強く印象に残っていますが、今観られるということにおいて、この圧倒的なものに接していることへの感動は他に例えようのない壮大なもののように思えます。

この空間で得た感動は、間違いなくずっと心の中に残り続ける。。。

まさに至高の展覧会です。

塩保朋子104

龍口経太展

@銀座スルガ台画廊

東京都中央区銀座6-5-8 トップビル2F

9/8(月)~9/13(土)

11:00~19:00(最終日:~17:30)

龍口経太080907.jpg

Keita Tatsuguchi exhibition

@Suruga-dai Gallery

6-5-8-2F,Ginza,Chuo-ku,Tokyo

9/8(Mon)-9/13(Sat)

11:00-19:00(last day:-17:30)

Google Translate(to English)

現代の至高の美人画と、そして...。

銀座スルガ台画廊での龍口経太さんの個展です。

ずいぶん前から作品を拝見していて、その度に、ある安定した流れを感じる日本画の世界のなかで、我が道を行く唯我独尊の雰囲気に魅入られてしまっているのですが、ひとつの空間での龍口さんの個展を拝見したことがなく、今回その念願が叶った次第。

この独特の色に浸れる静かな幸福感。

すでにおなじみの、メイド服を纏う女の子がモチーフの作品と、過去に描かれた風景画の大作などが展示されています。

どこまでも可憐な、現代の美人画。

すらりと流れる長い髪、繊細で肌理の細かな肌、ふわりと膨らむ服、それぞれが緻密な筆致で描かれ、画面に収められるすべての要素が独創的な深みを醸し出します。

龍口経太008

朧げに広がるダークな雰囲気も印象的です。

描かれるシチュエーションは、時を経るごとに現実から遠のいていき、実に不思議な世界観を奏でているように感じられます。

こちらの作品では、黒い箔のようなものがわずかにちりばめられ、そのひとつひとつが観る者の意識を引き寄せる引力へと転化し、ダークな風合いがさらに深まっていくような印象を覚えます。

たったひとつの静止画から滲み出す物語性もどこまでも魅力的。ただただ、じっとその儚さに満ちた世界に見蕩れてしまいます。

龍口経太007 龍口経太006

龍口経太005

今回の個展で嬉しいのが、風景画の出品です。

さまざまな色彩の顔料を用いた日本画を目にすることが珍しくない中で、敢えて、「日本画」という言葉すらなかった過去から連綿と、現在まで紡がれているように思われるような、どこまでも渋いシンプルな色調で綴られる深遠な光景。

絶妙な濃淡をもたらしながら滲む黒、そこに随所に描き込まれる木々の繊細なシルエット。そして、その山並が水面にぼやけて映り込む、その深い静けさ。静かに満ちる淋しげな感触が堪らないです。

龍口経太004 龍口経太003

龍口経太002

そして、もう1点の風景画。

以前、院展で拝見した作品、これまで僕が観たすべての風景画の中で、もしかしたらもっとも感銘を受けた作品かも知れません。。。

冬を連想させる殺伐とした光景。幹のみを残す1本の樹、鬱蒼と茂る枯れたような雑草。何故ここにあるのかさえ謎めいている、何らかの建物の土台の跡を連想させるコンクリートの塊のようなもの。それらを淡々と、静々と映し込む水面。

すべてが見逃され、忘れ去られていくような、本質的な寂しさを内包していると感じさせてくれる、ここに登場しているすべてのものがかかわり合って、全体を覆う薄く儚げな感触とは裏腹のどこまでも重厚な存在感を構築しているように感じられます。

何もないからこそ、悲しい、寂しい、そういった誰しも避けられない心のやわらかな想いを、そのまま静かに黙って癒してくれるような...。これだけ殺風景でありながら、賑やかな楽しさとは逆のかたちで、やさしさや滋味に満ちた世界が描かれているように感じられます。

龍口経太001

このほか、奥まったところに展示されている小品、特に縦長の浮遊城のようなモチーフを描いた、渋くてメルヘンチックな雰囲気を静かに滲ませる作品なども魅力的です。

それぞれの作品の精度と雰囲気を鑑みて、それぞれに費やされる時間と削られる精神は相当なものだと想われ、それについても大きなリスペクトが心に生まれます。

それでもやはり、ひとりのファンとしてわがままな期待を抱いてしまうもので、これからもさまざまな鋭く繊細な世界をたくさん観せて、もっと魅了してほしいと想い願ってしまうのです。

施井泰平展 'Binoculars'

YUKARI ART CONTEMPORARY

東京都目黒区鷹番2-5-2 市川ヴィラ1階

8/23(土)~9/20(土)日月火休

11:00~19:00(土:~20:00、最終日:~18:00)

施井泰平080823.jpg

'Binoculars' Taihei Shii

YUKARI ART CONTEMPORARY

2-5-2-1F,Takaban,Meguro-ku,Tokyo

8/23(Sat)-9/20(Sat) closed on Sunday and Monday,Tuesday and Wednesday:appointment only

12:00-20:00

Google Translate(to English)

立ち上がる絵画性と、空間への作用の仕方としての可能性。

YUKARI ART CONTEMPORARYでの施井泰平さんの個展です。

施井さんの展示はこれまでも何度か拝見していて、目にするとすぐそれだと分かるキャッチーなスタイルのインスタレーションをその都度体感し、印象に残っています。

文庫本の背表紙を本棚に並んでいるように並べる作品、まず入口の正面に展示されたコンパクトな作品が目に飛び込んできます。

施井泰平06

こういったサイズの作品を拝見すると、あらためて施井さんの作品が「絵画」としても機能していることに興味を覚えます。

オン・キャンバスであることも面白く、それが絵画性を分かりやすく高めているように思えます。

で、YUKARI ARTのふたつの小さな空間で繰り広げられているインスタレーション。

ふたつの空間にポジネガの関係性を持たせ、ユニークな構成となっています。

手前の空間では、まず何より、白い文庫本、しかもすべてが海外の文学の翻訳本の背表紙によって大きな壁面が埋め尽くされているのを目にして圧倒されます。

施井泰平02

統一された色調によるスケール感と、そのなかに現れる紙が焼けて褐色気味になっているものが臨場感をもたらしています。

分量で迫られることの痛快さに満ちていて、その光景に圧倒されることが不思議な気持ちよさをもたらしてくれます。

施井泰平01

施井泰平03

その向かいに配される、額もゴージャスな複数の鏡面。

反転する文字、ひっくり返る空間、それが額装された状態で目に入ってくることを考えてみたきに浮かぶ不思議なイメージ。さまざまな思いが過り、メッセージ性を探る方へと意識が向かっていきます。

施井泰平04

施井泰平05

奥の展示スペースは、一転して暗い照明の中でのインスタレーション。

手前のスペースの鏡面の裏に詰め込まれた藁、こちらではその藁のスペースが広く設定され、空間として、さまざまな関係性がひっくり返っています。

エジソンが作ったもののレプリカという電球が灯り、その下に敷き詰められた藁、そこに置かれる大きな卵と紙。

施井泰平08

施井泰平07

その裏側にはキャンバスにびっしりと背表紙が並べられた作品が展示されています。

いっそうキャンバスの感触が伝わり、また大きさも絵画的だったりして、背表紙によるペインティングの様相がなんだか面白く感じられます。

施井泰平09

今回の施井さんの展示を拝見してもっとも印象に残ったのが、やはり作品の絵画としての、そして空間への機能としての可能性です。

例えば、白い、海外の作家の文庫本の背表紙のみを用いることによって構築される統一感は、色彩のコントロールが可能であることを感じさせてくれたり、また、度々触れていますが、キャンバスに展開されていることで平面作品としての存在感も強く印象に残ります。

また、施井さんから伺ったお話で、日本的なものをテーマにした海外のある店舗で施井さんのクリエイションが採用され、壁面にずらりと文庫本の背表紙のが並んでいる空間が作られるなど、言葉が持つ力を転化されることで生み出される雰囲気にもユニークな可能性を感じます。

正直なところ、現時点ではまだ背表紙を用いるという「手法の提示」に留まっている感は否めない部分もあり、だからこそ今後の展開が楽しみだったりします。

例えば、素材として、紙であっても単に紙ではない「本」の背表紙を用いることへのコンセンサスをいかに、さらにしっかりと得ていくか、ということも重要だと思いますし、それが今以上に充分に得られた時にできることも増えるような気がします。

また、文字が作品に登場する点、敢えて背表紙のみの展開からその手法の選択の枠を広げた時に現れる構成などを考えてみると、さらに可能性が広がっていくと思います。

次、そして次の次と、変化と不変の両面に期待したいクリエイションです。

鈴木まさこ展「美しい世界」

FOIL GALLERY

東京都千代田区東神田1-2-11 アガタ竹澤

9/5(金)~9/21(日)

12:00~19:00(初日、日祝:~18:00)

鈴木まさこ080905.jpg

Masako Suzuki exhibition "beautiful world"

FOIL GALLERY

1-2-11,Higashi-kanda,Chiyoda-ku,Tokyo

9/5(Fri)- 9/21(Sun)

12:00-20:00(opening,Sunday and national holiday:-18:00)

Google Translate(to English)

かわいい線の集積が生み出す、ポップなグロテスク。

FOIL GALLERYでの鈴木まさこさんの個展です。

展示を拝見する前、DMやサイトなどで目にする画像のイメージではもっとイラストっぽいのかな、と想像していたのですが・・・

鈴木まさこ06

余白の活かし方も大胆な、ゼブラを描いた作品のお出迎えを受け、事前の予想は完全に吹っ飛んでしまった次第で。

とにかく、高密度の線の集積によってさまざまな動物などが描かれた作品がずらりと並び、圧倒されます。

鈴木まさこ11

ポジネガの構図が面白い、象の顔を描いた作品。

後ずさりしそうなほどに強烈なインパクトを発する表情にまず圧倒されますが、いざ至近で観てみると、そこに詰め込まれた線の密度と、曼陀羅風の圧巻の展開ながらもそれらが奏でる実に楽しげな感触に目を奪われます。

そして、線の太さや密度で生み出される全体のコントラストの鮮やかさ、巧みさも強く印象に残ります。

鈴木まさこ05 鈴木まさこ04 鈴木まさこ03

鈴木まさこ02

とにかく見事なまでに有機的な展開が繰り広げられています。

余白にくっきりと際立たされる、身体をくしゃくしゃに絡ませた蛇、うねる蛇の身体を辿っていって、いくつか「おや?」と思わせる異なる紋様の展開が見つかったりして、意識を引き込んで離さない凝縮のなかに潜むユーモアもたまらなかったり。

鈴木まさこ08 鈴木まさこ09

鈴木まさこ07

さまざまなモチーフによる気ままな展開がとにかく楽しいです。

もっとも、「気まま」と言ってしまうにはあまりにも作品へ費やされた時間や集中力は相当な大変さを思い起こさせるのですが、現れた線、それらが奏でる紋様のかわいらしさから、圧倒的な密度とは裏腹の軽やかさを感じます。

作品によっては色面が織り込まれ、それが絶妙な味付けとなり、色の強さと線のヴィヴィッドさとがお互いを引き立てあっているように感じられます。

鈴木まさこ13 鈴木まさこ10 鈴木まさこ12

鈴木まさこ01

表面にびっしりと線が施された子供用の椅子。空間にもたらすアクセントとして、鈴木さんのクリエイションが持つ楽しい雰囲気と展開の豊かさをさらに満たしていきます。

鈴木まさこ15 鈴木まさこ16

鈴木まさこ14

そして、圧巻なのが、入口を通ってゼブラの作品を目にし、その直後に自然な流れとして視線を向ける正面の壁面に展示された作品。

緻密なドットと線の集積で描き上げられる象、あの堅い皮膚の質感が伝わるような紋様での展開に目が飛び出るような驚きが瞬間沸き起こり、またまた意識が一気に引き込まれます。

そして何と言っても、鼻から放たれる無数の花の帯。

この過剰なまでに鮮やかな色彩感と高密度の色調展開が、全体を覆うモノクロームの世界観に強烈なアクセントとインパクトをもたらしています。

鈴木まさこ20 鈴木まさこ18 鈴木まさこ19

鈴木まさこ17

大作はキャンバス、小さめの作品は紙が支持体となっていて、それぞれの味わいの見較べも楽しいです。

この細かい作業の集積で生み出されるめくるめく展開、そこに潜むグロテスクな感覚とユーモア。ぜひ実際に作品を前にして、体感してほしいです。

鈴木まさこ22

中岡真珠美展

第一生命南ギャラリー

東京都千代田区有楽町1-13-1

8/28(木)~9/26(金)土日祝休

12:00~18:00

中岡真珠美080828.jpg

Masumi Nakaoka exhibition

Dai-ichi Life South Gallery

1-13-1,Yurakucho,Chiyoda-ku,Tokyo

8/28(Thu)-9/26(Fri) closed on Saturday,Sunday and national holiday

12:00-18:00

Google Translate(to English)

爽快な壮大さに、空間が臨場感をもたらす・・・!

第一生命南ギャラリーでの中岡真珠美さんの個展です。

今年の初めにINAXギャラリーで開催sれた個展での、作品の白のフレッシュさを際立たせる絶妙の照明設定による展示も、中岡さんの作品の色彩の清々しさを引き出していて強く印象に残っているのですが、今回は天井も高い豊かな空間性により、中岡さんが描く世界がダイナミックに壁面に、そして空間に作用し、さらにおおらかな雰囲気が満ちています。

中岡真珠美03 中岡真珠美02

中岡真珠美01

ひとつひとつの壁面の広さが活かされ、ぐんと広がりをもたらす壁面構成が各ポイントで繰り広げられ、今まで以上にダイナミックなスケール感で迫ってくるような印象を受けます。

中岡真珠美05

中岡真珠美04

作風は、銀座のOギャラリーで初めて拝見した時以来のスタイルが貫かれていて、盛り上がる白のフレッシュなイメージ、そこにふわりと重なる淡い色彩の鮮やかさとその滲みが醸し出す心地よい浮遊感、このふたつの色面が奏でる清々しいコントラストに、ダークな色彩によるノイズが画面に小さく現れ、それが絶妙なアクセントとなり、作品が持つ縮尺感のダイナミックさにさらに臨場感をもたらしているように感じられます。

中岡真珠美10 中岡真珠美08 中岡真珠美09 中岡真珠美07

中岡真珠美06

そして、このゆったりとした3次元的に広い空間で拝見していることもあってか、今回発表されている作品はこれまで拝見してきたものと比較しても特に、作品のベクトルが外へ、外へと向かっているような印象を受けます。

比較的大きな作品が揃っていますが、その画面のサイズそのものから感じる広大さに留まらず、さらに大きな光景が脳裏に思い描かれていきます。そこに配色の未来的な風合いが重なって、光景が広がっていくイメージのスピード感にも拍車がかかり、突き抜けるようなシャープでソリッドな爽快感が心に膨らんでいきます。

中岡真珠美15 中岡真珠美13 中岡真珠美16 中岡真珠美14

中岡真珠美12

今回は、大阪のOギャラリーeyesでも13日まで同時に個展が開催されていて、そちらでの構成が同いうふうになっているかも興味津々です。そして、こちらの広い空間での展示を拝見してから大阪でのコンパクトな空間で中岡さんの作品群を観るとどういうイメージが立ち上がってくるかも楽しみです。

中岡真珠美11

横内賢太郎 新作展 Last night

Kenji Taki Gallery/Tokyo

東京都新宿区西新宿3-18-2-102

8/28(木)~9/27(土)日月祝休

12:00~19:00

横内賢太郎080828.jpg

Kentaro Yokouchi exhibition "Last night"

KENJI TAKI GALLERY/Tokyo

3-18-2-102,Nishi-shinjuku,Shinjuku-ku,Tokyo

8/28(Thu)-9/27(Sat) closed on Sunday,Monday and national holiday

12:00-19:00

Google Translate(to English)

変わらない素晴らしさと、変わらないなかで変わっていく素晴らしさと。

Kenji Taki Gallery/Tokyoでの横内賢太郎さんの個展です。

横内さんといえば今年のVOCA展グランプリ受賞の記憶が新しく、それ以来最初の個展ということでどういう展開か楽しみでいたのですが、今までと何ら変わらない一貫したスタイルとテーマとで、淡々と、しかし横内さんにしか表現できない微睡むような世界が織り上げられていて、大いに感動した次第です。

いつものように、サテン地の支持体に広がる、幾重にも滲む色彩。

織り込まれるいくつもの色彩が濃淡を紡ぎながら連なってひとつの流れを生み出す様子は星雲を思わせるような壮大さを醸し出し、その上に、これまで通りに開いた本を透明なメディウムによる線で写実的に描かれ、そのページのたわみが本に掲載されている写真にもたらす歪みや、ある景色が本の大きさや綴じられた部分、掲載され画像のトリミングによって唐突に打ち切られる様子などが、絵画に変換されたときに立ち上がる風景としての感触にある種のサディスティックな曖昧さ感じさせてくれます。

横内賢太郎105 横内賢太郎104 横内賢太郎103 横内賢太郎102

横内賢太郎101

染料によるさまざまな色彩の濃淡が構築するダイナミックな雰囲気が、眺めていてさまざまなイメージをもたらしてくれます。

生地の艶やかな質感、観る角度を変える毎にもたらされる光の反射の加減、深い色調もある位置からは照明の光によって真っ白に消えてしまって見える朧げな風合いなど、さまざまな要素によって紡ぎだされる豊かな表情も印象に残ります。

横内賢太郎107 横内賢太郎108

横内賢太郎106

そして今回の作品を拝見していて感じるのが、メディウムによって描かれる開かれる本のページを描くことで展開される密度の濃密さ。

特に壺や皿の写真が掲載されているページを描いていると思われる作品での、その壺や皿に施される東洋的な絵や装飾の要素の多さ、もともとの密度の濃さがていねいに再現され、それらが作品の画面に応じて大きく描き出されることで、観た時の印象が「本を描いたもの」という事実を越え、そこに描かれている風景のオリエンタルな雰囲気が伝わってきます。

横内賢太郎110 横内賢太郎111 横内賢太郎112 横内賢太郎113

横内賢太郎109

ひとつの作品に注ぎ込まれるアイデアや手法のすべてが独創的な横内さんのクリエイション、あまりに独創的なだけに、おそらくどんな作品が発表されても「横内さんらしいなぁ」という印象を持つと思うのですが、横内さん自信のそのことに対する強固な自覚と自信を今回の個展から感じた次第です。

もちろん、今後異なるコンセプトやアプローチの作品が発表される可能性ももちろんあって、それはそれでぜひ拝見したいと好奇心も膨らみますが、これまで積み上げてきたスタイルを変えず、自らでしか表現できない世界で、そのときの最高のもの、もっとも素晴らしいものが提示されていること、さらに、その変わらないスタイルも確実に進化している過程に接することができていることに大きな感銘を覚えます。

横内賢太郎114

打越月見展

ぎゃらりぃ朋

東京都中央区銀座1-5-1 第三太陽ビル2F

9/5(金)~9/13(土)日休

12:00~19:00

打越月見080908.jpg

昨年の個展や今年開催された二人展で拝見したポップな作風から変わって、やわらかな雰囲気の作品が並びます。

絹本に緻密な線描で描かれた彼岸花。ふわりとほんのり染まる赤と、迷いなくすらりと走る線とが奏でる深みが心に緩やかに広がります。

Re-PRESENTATION vol.1 秋葉シスイ/浅枝木綿子

フタバ画廊

東京都中央区銀座1-5-6 福神ビルB1F

9/8(月)~9/14(日)

11:00~19:00(最終日:~16:00)

秋葉/浅枝080908.jpg

フタバ画廊で個展を行った二人のアーティストがパッケージされた展覧会。二人のアーティストの異なる作風のコントラストが実に面白い空間をつくり出しています。

秋葉シスイさんは個展、ときの忘れものでの展示に引き続き、緩やかなグラデーションがどこまでも遠い奥行きをシャープに奏で、そこに佇む横向きの人の人影が独特の物語性を醸し出す作品が発表されています。

秋葉シスイ001

わずかに描き加えられた岸を思わせる大きな弧や、敢えて人が描かれないグラデーションのちいさな画面とあわせての壁面構成が、その独特の物語性に深みをもたらしていえ鵜野も興味深いです。

いつまでも眺めていられる緩やかさが心地よいです。

秋葉シスイ002

浅枝木綿子は一転して、細かいドットの凝縮で幾重にも重なる花弁の絢爛さを描き表しています。

至近で眺めたときにぐんと立ち上がる抽象性と、遠くから眺めた時のおおきく描き出された花の臨場感、このコントラストもたいへん面白く感じられます。

浅枝木綿子02 浅枝木綿子01

浅枝木綿子03

米岡響子展

Gallery Q

東京都中央区銀座1-14-12 楠本第17ビル3F

9/8(月)~9/13(土)11:00~19:00(最終日:~17:00)

米岡響子080908.jpg

昨年の個展やグループ展などで拝見していた赤の世界から一転、今回は美しく深い青が印象的です。

深海に射し込む光のように、仄かに底を照らし、その途中に深い煌めきを生むような、なんともいえない深遠さが伝わります。

米岡響子004 米岡響子002 米岡響子003

米岡響子001

大作のおおらかさ、さまざまな小品における淡々とした色彩の広がり。

笹の葉のようなかたちの薄い和紙が貼られた画面の神々しい光を思わせるテクスチャーなども美しいアクセントとなり、ゆったりと心地よい青の広がりに浸れます。

米岡響子006 米岡響子007

米岡響子005

大塩紗永

シロタ画廊

東京都中央区銀座7-10-8

9/8(月)~9/20(土)日祝休

11:00~19:00(最終日:~17:30)

大塩紗永080908.jpg

およそ2年ぶりの大塩紗永さんの個展、前回の発表から海外留学を経て久々の国内での発表で、その変化に感じ入ります。

木版凹版が醸し出す独特の深みが前面に押し出されていた留学前の作風からすると、手描きの部分が増し、文学的な深みに傾いたような風合いが強く印象に残ります。

日記のように描かれたという小品群、ぐんと重厚に迫る大作と、さまざまな刺激をもたらしてくれる奥深い世界が広がっています。

龍口経太展

@銀座スルガ台画廊

東京都中央区銀座6-5-8 トップビル2F

9/8(月)~9/13(土)11:00~19:00(最終日:~17:30)

龍口経太080907.jpg

ずっと個展で拝見したいと思っていた、龍口経太さん。

たった一週間なのがホントにもったいない、深々と沈むような仄暗い雰囲気が静かにこの空間を満たしています。

おなじみのメイドの女の子をどこまでも美しく描いた作品はさらに深遠にダークさを増し、そこに加えて風景を描いた少し前の大作も展示されているのがまた、龍口さんの表現の奥行きの豊かさを感じさせてくれます。

ぜひご覧いただきたい、現代の美人画の究極のひとつです。

渡部裕二展 -VISIONS-

ギャラリー新居 東京店

東京都中央区銀座6-4-7 いらか銀座ビル5F

9/8(月)~9/26(金)日祝休

11:00~19:00(土:~18:00)

渡部裕二080908.jpg

圧巻の描写力が心に響く、風景を細密に描いた鉛筆画と、アクリルのパネルを重ねて用いて、霞むような朧げな風合いを醸し出す作品、それぞれの味わい深さが印象的です。

ひとりのアーティストが繰り広げたとは思えないほど、それぞれ異なるメディアの作品のクオリティの高さに見入ってしまいます。

《9/3》

市川裕司展

コバヤシ画廊

東京都中央区銀座3-8-12 ヤマトビル B1

9/1(月)~9/6(土)

11:30~19:00(最終日:~17:00)

市川裕司080901.jpg

おなじみの、透明アクリルパネルと金属製の枠を使用し、黒のメッシュと白の顔料とで構築される大きな作品が出品され、制作を重ねる毎にその作品の精度が上がり、それが市川さんの作品を目にして得られるイメージの深みへと転化されていきます。今回は立体に加え大きな平面の作品も同空間に展示、インスタレーションとしてもさらに奥行きがもたらされていました。

このサイズがそのまま壮大なイメージへと繋がっていく市川さんのクリエイションを、小さなサイズの作品で表現でも観てみたいです。

石川美奈子展「襞の隙間」

なびす画廊

東京都中央区銀座1-5-2 ギンザファーストビル3F

9/1(月)~9/6(土)

11:30~19:00(最終日:~17:00)

石川美奈子080901.jpg

空間に建つアクリルパネルのボックス。

そこに等高線のように施される緻密な線と、その線で生み出される色面を染める透明のブルーの階調によるグラデーション。

雲をモチーフに構築され、グラフィカルに展開される光景。透明な感触が涼しい心地よさと壮大なスケール感を感じさせてくれます。

石川美奈子02 石川美奈子03

石川美奈子01

この展開による立体感もたいへん面白く感じる一方で、さらにシンプルな平面の展開も拝見したいです。

石川美奈子05 石川美奈子06

石川美奈子04

「ワイはミヅマの岩鬼じゃーい!!」会田誠展

MIZUMA ART GALLERY

東京都目黒区上目黒1-3-9 藤屋ビル2F

9/3(水)~10/4(土)日月祝休

11:00~19:00

会田誠080903.jpg

このクラスのアーティストだとある程度の厳しいことを書いても大丈夫だと思うので、初日に伺った限りの率直な感想を書かせていただくと、昨年に過去の作品を集めた大規模な展示を行っていることに加え、所属するギャラリーでの久々の展示であるにもかかわらず、回顧展みたいな展示構成になってしまっているように思えたのはどうなんだろう、と。

失礼ながら、「知っている人は観なくていい展覧会」という印象を受けた次第です、すみません。。。

《9/4》

NEXT DOOR vol.7 松岡智美 福島浩二 下田ひかり 久保有美 石橋貴男

T&G ARTS

東京都港区六本木5-9-20

9/4(木)~10/2(木)日月祝休

11:00~19:00

NEXT DOOR 080904.jpg

今回は5名のアーティストがフィーチャーされていて、それぞれが与えられた壁面や空間で個性的な展開を繰り広げています。

福島浩二さんのざっくりとしたソリッドなモノクロームのペインティング、下田ひかりさんの過剰なまでにナイーブなこどもの描写、石橋貴男さんのFRPによる立体の混沌とした彩色など、さまざまな新鮮な発見に満ちています。

《9/5》

山本久美子展

谷門美術

東京都港区北青山3-3-7 第一青山ビル1F

9/5(金)~9/20(土)祝休・日月:要予約

13:00~18:00(最終日:~17:00)

山本久美子080905.jpg

昨年度の東京藝術大学の修了制作と、直後のART AWARD TOKYOでもっとも印象に残ったアーティスト、紙の塊を削り出してリアルな造形を生み出す山本久美子さんの個展です。

低い台の上に散らばる葉っぱ。削り出した断面に現れる色彩の鮮やかさに魅入られます。他にもそれぞれの作品にキュートさが凝縮していて、眺めていてワクワクしてきます。

さとうかよ Twin Peaks

HP FRANCE WINDOW GALLERY

東京都千代田区丸の内2-4-1 丸の内ビルディング1F

9/5(金)~11/6(木)

11:00~21:00(日祝:~20:00)

さとうかよ080905.jpg

高い天井、黒い壁面のウィンドウに、さまざまな動物たちの縫いぐるみ。

それぞれ、縫いぐるみとしてのぬくぬくとした感触と、そこから滲む危うさ、脆弱性などが絡み合い、独創的な深み溢れる展開をつくり出しているように感じられます。

そして、随所に織り込まれる細かい表現にもさまざまな想いが過ります。

荻原賢樹展

space355-201

東京都中央区東日本橋3-5-5 矢部ビル2F

9/5(金)~9/27(土)日月祝休

11:00~19:00

荻原賢樹080905.jpg

ペンなどで描かれるモノクロのドローイング風の作品と、大画面のキャンバスの作品とが展示されています。

ドローイング風の作品は、たくさんの要素が無数に画面に投入され、ピコピコとした展開がなんとも不思議なイメージをもたらしてくれます。

荻原賢樹09

画面を這い混沌を生む線が放つ独特なリズム感、画面全体の濃淡など、いろんな見方や伝わるイメージが楽しい作品群です。

荻原賢樹02 荻原賢樹03

荻原賢樹01

一方、大画面のキャンバスの作品は、彩色の力強さに圧倒されます。

荻原賢樹04

広がる大きな色面、さまざまな彩色の混沌、異なる密度が生み出すコントラストが、深い奥行きと壮大なスケール感へと転化して、壮大なイメージを提供してくれます。

荻原賢樹07 荻原賢樹06 荻原賢樹08

荻原賢樹05

鈴木まさこ展「美しい世界」

FOIL GALLERY

東京都千代田区東神田1-2-11 アガタ竹澤

9/5(金)~9/21(日)

12:00~19:00(初日、日祝:~18:00)

鈴木まさこ080905.jpg

拝見する前までは、もっとイラストっぽい感じかな、と予想していたのですが...

尋常でない濃い密度で展開される線、さまざまな模様を紡ぎだし、過剰なまでにグラフィカルな展開が、描かれている動物の皮膚のうごめきをイメージさせ、どこまでも有機的に展開していきます。

圧巻のペン画です。

Moeglichkeit 伊藤一洋 岩田俊彦 上野佐智子 荻野僚介 渕沢昭晃 双唾冷々 山口幸太郎

ラディウム-レントゲンヴェルケ

東京都中央区日本橋馬喰町2-5-17

9/5(金)~9/27(土)日月祝休

11:00~19:00

メークリヒカイト080905.jpg

7名のアーティストをフィーチャーしたグループショーです。

いかにもレントゲン的視点を感じさせるクリエイションがパッケージされ、一方で、ここで観ることで違った見方ができ、他では気付けない魅力に出会えたり。

それぞれのシャープさが際立って感じられ、展示全体が表す方向性の鋭さも印象に残ります。

《9/6》

パラモデル個展「Pなる想い」

MORI YU GALLERY TOKYO

東京都新宿区西五軒町3-7 ミナト第3ビル4F

8/30(土)~10/4(土)日月祝休

12:00~19:00

パラモデル080830.jpg

!Σ( ̄口 ̄;)

パラモデル006

パラモデル005

大崎て!Σ( ̄口 ̄;)

ていうか

どんな間取りだよ!Σ( ̄口 ̄;)

いきなりこんな感じでツッコミどころ満載の展覧会。

いやーもう、適わないですわ、ホント。

ミニカーの幌がどんだけデカいんだよ!とか、寿司かよ!とか、際限なく出てくる出てくるユーモアの数々。

パラモデル004 パラモデル010

パラモデル009

どうしようもなく徹底したどうしようもない遊び心がふんだんに織り込まれる一方で、タブローの面白さも見逃せない!

図形的な奥行きの表現の仕方と、描かれる要素のグラフィカルな写実性、そしてなにより

まな板かよ!Σ( ̄口 ̄;)

という、やっぱり活かされる素材感のユーモラスな味わい。

未来的で日常的。非現実的で馴染み溢れるテイスト。このギャップも痛快です。

パラモデル003 パラモデル002

パラモデル001

Group Show

Yuka Sasahara Gallery

東京都新宿区西五軒町3-7 ミナト第3ビル4F

8/30(土)~9/27(土)日月祝休

11:00~19:00

Yuka Sasahara Gallery所属アーティストの新作がパッケージされた展覧会、原良介さんの壮大なスケール感とビーズの素材のリアリズムとのギャップの面白さ、さらにキュートにさらにサディスティックに突き進み川口奈々子さんの痛快なペインティング、生物のハイブリッドな展開が複雑さを増す加藤千尋さんのタブロー、そして壁面に浮かぶ雨宮庸介さんのクマのかわいらしさといったら!

しつらい/2008 小野友三 田中みぎわ 安藤郁子 藤田匠平 増子博子

Gallery Jin

東京都台東区谷中2-5-22 山岡ビル1F

8/27(水)~9/13(土)月火休

12:00~19:00(最終日:~17:00)

しつらい080827.jpg

さまざまなメディアのアーティスト5名によるグループショー、なかでもやはり、先日の個展が素晴らしかった増子博子さんの作品がとにかく良いんです。

カウンター奥の壁面に展示されたタブローのさらにユニークな展開はもちろん、奥の小さな部屋に展示されたミニ屏風のかわいらしさも印象的です。

松江泰治"Nest"

TARO NASU

東京都千代田区東神田1-2-11

8/29(金)~9/20(土)日月祝休

11:00~19:00

素晴らしいです。

水平線を画面から排除し、不思議な重力感の提示とソリッドな構図の展開がとにかく見応えのある、松江泰治さんの写真群。

大きく引き伸ばされた世界各国のさまざまな風景の圧倒的な荘厳さに加え、さまざまなシーンを拡大し、画素の粗さが絵画性を引き出す作品も面白いです。

篠塚聖哉展「包む森」

ANDO GALLERY

東京都江東区平野3-3-6

9/2(火)~10/25(土)日月祝休

11:00~19:00

篠塚聖哉080902.jpg

篠塚聖哉さんというと、上下がトリミングされた構図と、紙に指で描くペインティングのプリミティブな風合いと壮大な風景のイメージの印象が強いのですが、その先入観をダイナミックに裏切る展覧会です。

空間の大きさと相まって、さらにスケール感を増した篠塚さんの世界。より遠くへと広がり、力強く迫ります。

泉太郎 マジシャンのパン・日食

hiromiyoshii

東京都江東区清澄1-3-2-6F

9/6(土)~9/27(土)日月祝休

12:00~19:00

泉太郎080906.jpg

Gallery Stumpでの個展も面白かった泉太郎さん、今回はhiromiyoshiiでの個展。

そのときに繰り広げられた、カメラとモニターが連なるインスタレーションが今回も作り上げられているのですが、それがとにかくスタイリッシュ!

どうしようもなく散らかった空間の混沌のなんともいえない心地よさがある一方、無数のカメラとモニターを経て最後に奥の壁面に大きく映し出される映像は、何の変哲もないはずなのにずっと観ていられる飽きのこない感じがとにかく不思議で面白い!そしてオシャレな感じがするのもまた痛快です。

仙谷朋子「contact #2」

ZENSHI

東京都江東区清澄1-3-2-6F

9/6(土)~10/4(土)日月祝休

12:00~19:00

深いです。

ふわふわと膨らむオブジェの独特な味わい。床置き、壁面などに展示され、そこに緻密に紡がれた糸が絡んで、空間のおおらかさに作用して不思議な雰囲気が奏でられています。

そして、壁面の意表を突く展開も面白いです。

じんわりと、その魅力に浸りたい展覧会です。

三宅信太郎 "エジプト -文明への道-"

TOMIO KOYAMA GALLERY

東京都江東区清澄1-3-2-7F

9/6(土)~9/27(土)日月祝休

12:00~19:00

三宅信太郎080906左.jpg三宅信太郎080906右.jpg

ぶら下がる電球だけが照らし出す薄暗い空間。

そこにあるペインティング、ドローイング、そして...

いや、もう、凄まじいほどに壮大なスケール感を放つインスタレーション。

三宅信太郎さんらしい、上下に圧縮されたような顔の輪郭のキャラクターが繰り広げる太古のエジプトの世界。コンパクトな展示室でのキャンバスの作品による展開も、そしてメインスペースの圧巻さも、体感するすべての要素が強烈な印象と痛快さをもたらしてくれます。

《9/7》

五月女哲平|箱の中の光について

モンブラン銀座本店

東京都中央区銀座7-9-11 モンブランGINZA Bldg.

8/15(金)~9/14(日)

11:00~20:00

五月女哲平080815.jpg

ウィンドウに大きな立体の作品、店内には1階と2階とを結ぶエスカレーターと3階の壁面にペインティングが展示されています。

いろんなオシャレなアイテムが並ぶこの空間に、五月女さんのユーモラスな空間性とキャッチーな彩色で繰り広げられるユーモラスなペインティングがよく合って、観ていてホントに楽しいです。

ざらりとした粗い目のキャンバス、そこにポンポンとリズミカルに描かれるさまざまな要素。いつもと違うシチュエーションで眺めているちょっとした興奮もあったりして、ワクワクした気持ちが沸き起こってきます。

田崎冬樹展

フタバ画廊

東京都中央区銀座1-5-6 福神ビルB1F

9/1(月)~9/7(日)

11:00~19:00(最終日:~16:00)

田崎冬樹080901.jpg

昨年に続いて開催された田崎冬樹さんの個展、昨年と同様のスタイルで展開される、グラフィカルな風景画です。

どこか郷愁を誘う味わい深い青の鮮やかさ、その奥からわずかに覗かせる赤のあたたかみ、そして落ち着いた白で描かれるシルエット。人口建造物の硬質な形状がほんのりと緩やかに表現されていて、独特の雰囲気が滲みます。

田崎冬樹004 田崎冬樹001 田崎冬樹003

田崎冬樹002

広い壁面に展示された大作の壮大さも強く印象に残ります。

見上げる東京タワーのスケール感、複雑に組み上げられる鉄骨の構造のシャープさが緻密に再現され、そこにこの色彩の味わい深さが重なって、シャープな光景にどこか懐かしい感触が混ざり込んで、なんともいえない気分に満たされます。

田崎冬樹006 田崎冬樹008 田崎冬樹007

田崎冬樹005

GLOW,OVER,MAN 青山裕企 田尾沙織 安中るな

MOTT FACTORY & GALLERY

東京都新宿区住吉町10-10

9/2(火)~9/28(日)月休

13:00~21:00(日:~19:00)

GROW,OVAR,MAN080902.jpg

3名のフォトグラファーによる写真がパッケージされた展覧会。

安中るなさんのグラフィカルで、フューチャリスティックさが鋭い印象をもたらす作品群、先日の個展も印象的だった青山裕企さんの、やはり鮮やかな色彩感とほんのりとしたエロティシズムが堪らないポートレイト、そして田尾沙織さんの清々しい風景を伸びやかに捉えた作品と、それぞれの個性が爽やかに重なり、清々しい気持ちが広がります。

古井智|中村哲也

ギャラリー小柳

東京都中央区銀座1-7-5 小柳ビル8階

8/22(金)~9/20(土)日月祝休

11:00~19:00

Koyanagi 080822.jpg

Satoshi Furui/Teteuya Nakamura

Gallery Koyanagi

1-7-5-8F,Ginza,Chuo-ku,Tokyo

8/22(Fri)-9/20(Sat) closed on Sunday,Monday and national holiday

11:00-19:00

Google Translate(to English)

ギャラリー小柳での、ペインターの古井智さんと立体作家の中村哲也さんによる二人展です。

ふたつの個展が行われている、といった趣の展覧会で、それぞれのコーナーで、その鋭く力強い個性が満ちています。

メインスペース奥で展開されているのが、中村哲也さんのクリエイション。

FRPを用いた先鋭的なフォルムの作品群が展示されていて、フューチャリスティックな雰囲気が充満しています。

まず目に止まるのが、床に置かれた2台のオブジェ。

メタリックな赤と青、それぞれの色彩の深みに魅入られます。

中村哲也12

完全にではないものの、シメントリーの形状で、そのかたちから高速の動線のイメージが思い起こされます。

全体から立ちのぼる無機的な感触、同時に尖端の尖った部分でさえもなめらかで有機的なフォルム。この2つの要素に加え、沈み込むような重厚でシャープな配色と陰影。かっこいいものを目にして興奮する、あの単純で無垢なこどもが持つような好奇心を刺激してくれるような感触が堪らないです。

中村哲也03 中村哲也02

中村哲也05

このフォルムは、中村さんのお話では、遊びのように粘土を手で捻ってつくり出しているそう。ある計算によって導かれたような実に未来的なシャープさが印象的なのとは裏腹な、もっともプリミティブな行程で生み出されていることがたいへん以外に感じられ、それがさらに興味深さを煽ります。

中村哲也06

中村哲也04

壁面には、グラフィカルな構造が面白い作品が3点展示されています。

中村哲也11

スマートなフォルムと、有機的な蠢きを連想させる、奇妙で、しかし塗装のケレン味のない美しさやなめらかな流線系の立体感が、さまざまなイメージを想像させてくれます。

(中村さんからのお話を伺ってすこし時間が経ってしまい、若干の記憶の違いがアルカも知れなくて申し訳ないのですが...)このかたちのアイデアの基はバイクのタンクに施される炎のような紋様をアレンジしているのだそうで、それを伺って、もともと丸みを帯びた表面に描かれているものがこういう平たいかたちへと変型しているというイメージが加わり、最初に目にした時の「外へと広がる」という想像から、「塊から開いていく」という動的な感覚も沸き起こります。その印象は、作品の側面から観た時に気付くこの物体の板状の構造からも思い起こされます。

そして、それぞれのフォルムに潜む何らかの具体的なかたちも、気付くとさらに面白味が増すんです。

中村哲也09 中村哲也08 中村哲也10

中村哲也07

古井智さん、4点のペインティングが展示されています。

巨大な画面に描かれるキノコ雲。

立ちのぼるグレーの臨場感が、画面以上のスケール感で迫ります。

ほぼライフワークと呼べるペースで、これまでも多くのキノコ雲を描いた作品を発表されている古井さんですが、「キノコ雲」という、たいへん重いテーマを取り上げていることに対して、決してキノコ雲の迫力のみに落とし込まず、それが大量破壊兵器であり、その実験の過程で生み出される現象であることをしっかりと提示していることに大きな敬意を抱きます。

今回の展示では、展示される作品の向かいの壁面に核兵器の歴史がずらりと掲示され、描かれているモチーフがキノコ雲であることが、むしろ前面に押し出されています。

人工的に生み出されたダイナミックな現象であるキノコ雲の迫力を描くということに、その主題が持つ大きな社会的問題性に対して、しっかりと折り合いを付けていることに古井さんの画家としての「覚悟」を感じます。

その一方で、比較的大きな画面に鮮やかな色彩が胸を打つ、大きく描かれた花の作品が3点展示され、その花の作品の豊かな写実性が、キノコ雲の作品とは異なる見応えをもたらしています。

キノコ雲と花の作品とが隣り合わせで展示され、その関係性を探るほうへと興味が向かいます。

人工的な現象と自然、生命を破壊するものと小さな生命...さまざまな対比を思い起こさせ、それが展示の奥行きをぐんぐんと押し拡げていきます。

この2つの圧倒的に異なるテイストの作品の関係性について、古井さんとのお話もたいへん興味深く、中でも強く印象に残っているのが、キノコ雲の作品を描いているとどうしても用いる色が限られてくる、そういった中でもっとさまざまな、鮮やかな色も使って描きたい、という画家としてのプリミティブな衝動が、この花の作品に帰結しているという内容で、そのお話を伺ってさらに作品の関係性が深まって感じられた次第です。

古井智01

3点の花の作品の内の1点は、エレベーター扉の正面の遠い壁面に展示されていて、こちらの空間ではキノコ雲の作品を同時に鑑賞しないことで、古井さんの花の作品そのものの力強さ、鮮やかな色彩の溌溂とした風合いをダイレクトに体感することができ、そこで得られるイメージもまた独特な深みを感じさせてくれます。

大久保如彌「どこのこそのここのこはどのこ」

GALLERY MoMo

東京都港区六本木6-2-6 サンビル第3 2F

8/30(土)~9/20(土)日月祝休

12:00~19:00

大久保如彌080830.jpg

Naomi Okubu "DO-KO-NO-KO-SO-NO-KO-KO-NO-KO-WA-DO-NO-KO"

GALLERY MoMo

6-2-6-2F,Roppongi,Minato-ku,Tokyo

8/30(Sat)-9/20(Sat) closed on Sunday,Monday and national holiday

12:00-19:00

Google Translate(to English)

共存する、脆さと強さ。

GALLERY MoMoでの大久保如彌さんの個展です。

色彩やバラエティに富んだテクスチャーが溢れ、遠くから近くから、さまざまな表情が目に飛び込んできます

大久保如彌27

大久保さんというとまず思い浮かべたのが、トーキョーワンダーウォールで拝見した作品。

パターンがプリントされている布地を支持体に使い、その模様にさらに手をかけてアクセントを描き加えたものを背景に、不思議なシチュエーションが作り上げられています。

大久保如彌16

裏切られる空間性。プリントの平面感と描かれる輪になる女の子たちの奥行き感とのせめぎ合いが実にユニークな空間のイメージをもたらしてくれます。

さらに、柄にあわせて精緻に施されるクリスタルのきらめきも、どこか妙な「あざとさ」というか、嘘っぽい雰囲気がリアルな臨場感とともに紡ぎだして、このシチュエーションをさらに不思議な、奇妙なものへと押し上げているように感じられるのも面白く、知らない世界への距離感を縮め、好奇心を掻き立ててくれます。。

大久保如彌20 大久保如彌19 大久保如彌18

大久保如彌17

一方、背景も描かれる作品は、鋭い物語性が観る者の感性を貫いてきます。

池に佇んで泣いている女の子。赤いワンピースがひときわ鮮やかで、全体に広がる清々しい色調の中に映えて、その存在を押し上げているように感じられます。

その女の子を鏡面のように映す池、そこに映っている「虚」の女の子の姿は顔を覆った手を開き、「実」の女の子に向かって手を振ります。それが、脆弱さの中に潜む狂気というか、危うさ、怖さのようなものを醸し出していて、この絵の中の物語性に尋常でないスピード感をもたらしています。

さらに、女の子が描かれる質感の艶やかな仕上がりと、背景のざくっと乗る絵の具の風合いとのコントラストもたいへん見応えがあります。

大久保如彌05 大久保如彌04 大久保如彌03 大久保如彌02

大久保如彌01

メルヘンチックな雰囲気が充満する作品がある一方で、もっと現実感のあるシチュエーションの作品も。

まず斜めに切り取られた構成が感覚的な錯覚を生み、そこで起こっていることに対して焦燥感が引き出されます。

窓から身を乗り出す女の子、その窓の向こうに広がる青の鮮やかな深さが、向こう側の世界のとてつもない広がりを思い起こさせてくれます。それがさらに、部屋の中の雑然とした感じに臨場感ももたらしているように感じられます。

部屋の中のさまざまなもの、ベッドの上に散らかる衣類、猫、壁に飾られる絵画、そこに張り巡らされる糸。それぞれが女の子の内面を代弁しているように思えて、さまざまなイメージが過り、ストーリーがどんどん具体的なかたちを帯びてきます。

大久保如彌12 大久保如彌10 大久保如彌09 大久保如彌08

大久保如彌07

室内を描いた作品も、メルヘンチックなシチュエーションの作品も、そこに登場する女の子の仕草が儚げであって、一方でその芯にある強さも奏でているように感じらます。

そして、それぞれのシチュエーションの「どこか奇妙な感じ」もじわじわと鮮烈な印象となって迫ります。さまざまな筆致によって複雑なテクスチャーを混ぜ込むようにして描かれているものの、尋常でない写実的な表現力により、その不自然さに不自然さを感じないのがまた痛快です。

大久保如彌26 大久保如彌06

大久保如彌14

ほぼすべての作品で貫かれる匿名性も、大久保さんが描く世界の大きなポイントのように思えるのですが、1点、女の子の表情が実にていねいに描き上げられた作品が。

西洋人の女の子がふたり。なんともファンタジックな場所で、まるで映画のワンシーンのようにも感じられ、あるいは印象派以前の写実性を思い起こさせてくれます。

鮮やかな色彩による花の群れ、遠くに見える水辺。その場所の空気感がリアルに伝わるような写実性が、逆に「いったい、ここはどこ?いつ?」と、どこか幸せそうな絵の雰囲気とは裏腹に、さまざまな不可解さもなだれのように過ります。

大久保如彌24 大久保如彌25 大久保如彌22 大久保如彌23

大久保如彌21

描かれる世界の独創性、そこに秘められる、ある世代の女の子が持つ、諸刃の剣のように隣り合わせの脆弱さと強靱さ。

淡く清々しい色彩感が奏でる幸福感と、その絵の中の絵の具の垂れた痕跡などが放つ危うさ。さまざまな要素が絡み合い、実に深い、強い、どうなるんだろうという好奇心を煽るストーリー性を奏でているように感じられるのが強く印象に残ります。

大久保如彌13

イ・ヨンミ個展「The closed garden」

東京画廊

東京都中央区銀座8-10-5-7F

8/26(火)~9/20(土)日月祝休

イ・ヨンミ080826.jpg

11:00~19:00(土:~17:00)

Lee Yeunmi solo exhibition 'The closed garden'

Tokyo Gallery

8-10-5-7F,Ginza,Chuo-ku,Tokyo

8/26(Tue)-9/20(Sat) closed on Sunday,Monday and national holiday

11:00-19:00(Sat:-17:00)

Google Translate(to English)

色彩の爽やかさと描かれるシーンのサディスティックな感触とのギャップの面白さ。

韓国人アーティスト、イ・ヨンミさんの東京画廊での個展です。

いきなりサディスティックな風味が強烈に発せられた作品がお出迎え。

イ・ヨンミ12

実にパワフルな雰囲気を充満させ、ダイナミックにその姿を表す鳥。

何かに対して威嚇する、というよりもむしろ、自分を誇示するかのように両羽を掲げ、嘴と足元を赤く濡らす姿の迫力は強烈なインパクトを放ちます。

その一方で、徹底して淡く爽やかな色調が、やさしい、親しみやすさを感じさせてくれて、作品の世界への距離感を曖昧なものにしているような感じがまた興味深いです。

その奥の壁面では、3点のパネルによる組作品が展示されています。

イ・ヨンミ07

なかなかに興味深いストーリー性が奏でられています。

キャッチーなキャラクターが実に楽しげな仕草で描かれている一方で、作品の随所に散見される人の目許のようなモチーフや、例えば鬱蒼と葉が茂る部分からにゅっと抜き出て口から水を流す人の顔などのシュールな表情と、それに輪をかけてさらにシュールなシチュエーションもかなり印象に残ります。

そしてなにより、鳥。

表情はもちろん、アバンギャルドな柄がもう凄まじい邪な存在感を放っています。

イ・ヨンミ09 イ・ヨンミ10 イ・ヨンミ11

イ・ヨンミ08

上記の作品は少し前のものだそうで、最近の作品となると、ある意味において暴力的な雰囲気が幾分か鎮まり、色彩の爽やかさを増しつつ、世界観の曖昧さがさらに押し進められて、印象としての混沌を生み出してくるような感じがします。

イ・ヨンミ18

淡い青が目にも心にも涼しげに感じられる作品。

余白とモチーフとの関係性も実に安定していて、グラフィカルな視点での違和感がほぼない感じがまず心に清々しさをもたらします。

しかし、そこに描かれているのが蛇であり、奇妙な笑みを浮かべている様子がこの世界観にアクセントをもたらしています。太い身体をうねらせ、そこに生える木々が醸し出す奥行き感がユーモアも奏でているように感じられます。

イ・ヨンミ15 イ・ヨンミ14 イ・ヨンミ16

イ・ヨンミ13

そして、今回の展示でもっとも大きな作品。

さらに巨大な蛇が複数のパネルにわたり、その身体のダイナミズムを重厚に放ちます。

表面の鱗などの部分における、色鉛筆で描き加えられる陰影や線がリアルな臨場感を作り上げているように感じられ、分厚い見応えも生み出しています。同時に色鉛筆の素材ととして扱いやすさや親しみなどもすっと目に届きます。

また、その巨大な蛇の肢体に紛れて例の人の目許もさらりと潜んでいて、作品の物語性に深い奥行きをもたらしているように感じられます。

イ・ヨンミ05 イ・ヨンミ02 イ・ヨンミ04 イ・ヨンミ03

イ・ヨンミ01

ここに登場する多くのキャラクターは、クリスチャンであるイ・ヨンミさんにとって親しみあるものなのだそう。描かれている世界も、想像上の完全な世界、エデンの園で、そういう世界にある「邪」の存在を、蛇や鳥に置き換え、また、登場するさまざまな人々は、そういう世界にも働く人、働かざる人がいる、ということを表しているとのことです。

とはいえ、それが何かに対するアンチテーゼを表現しているということに作品のコンセプトを落とし込むのではなく、自らにとって馴染みのあるモチーフで描くことで整合性を生み出しているような印象を受けました。

絵の中に現れるアバンギャルドさ、それをダイレクトに感じさせず、ポップで軽やかな雰囲気を滲ませる色彩感。そのコントラストが、イマジネーションに不思議な広がりをもたらしてくれます。

イ・ヨンミ06

向山裕展「海水・酸素」

ギャルリー東京ユマニテ

東京都中央区京橋2-8-18 昭和ビルB1F

8/25(月)~9/6(土)日休

10:30~18:30

向山裕080825.jpg

Yutaka Mukoyama exhibition

Galerie Tokyo Humanite

2-8-18-B1F,Kyobashi,Chuo-ku,Tokyo

8/25(Mon)-9/6(Sat) closed on Sunday

10:30-18:30

Google Translate(to English)

ギャラリーに入っていきなり目にする不思議なかたちの魚の絵。

しかもけっこうな大きさの画面。

向山裕07

背鰭のピンク色が妙に食欲をそそる、でもなんだか見かけない魚。

で、向山さんにちょっと聞いてみると、実際もこの大きさだそうで、しかも食べるとあんましおいしくないらしい...。

まずいのか!Σ( ̄口 ̄;)

じゃなくて驚くポイントは

いちおう食えるのか!Σ( ̄口 ̄;)

でもなくて

でけぇ!Σ( ̄口 ̄;)

異様にでけぇ!Σ( ̄口 ̄;)

いやもうお皿に乗っているものだからてっきり。

もとい。

ギャルリー東京ユマニテでの向山裕さんの個展です。

前回こちらで拝見した時は奥のスペースで若手アーティストを紹介する企画のひとりとしてピックアップされた個展で、そのときもひょうきんな構図による魚などの作品が面白かったことが印象に残っているのですが、今回もさまざまな動物、しかも「普通こんなの描く?」って思ってしまうような、なかなかに意外性を思いっきり発揮したようなペインティングがずらりと展示されています。

向山裕05

今回の個展でもっとも大きな作品。

蟹が水晶玉の中に入っているような感じで、そのシチュエーションがさまざまなイメージを呼び起こします。

閉じた空間に収められてしまっている窮屈な印象から、蟹の甲殻類特有のカッコよさを引き出す演出のようにも思えたり...。深遠さと緻密さとが相まって、サイズ以上に重厚な存在感を放っています。

向山裕02 向山裕03 向山裕04

向山裕01

ミジンコを拡大して描いた作品も、微生物のメカニカルな姿が緻密に再現され、そのかっこよさが無性に、「かっこいいものはかっこいい!」という男の子的な感性を煽ります。

向山裕10 向山裕09 向山裕11

向山裕08

真っ黒の背景が、深い海というシチュエーションを思い起こさせてくれます。

そして、それだけでなく、主題のシルエットや色彩感、透明感などをより鮮烈に再現することを助け、同時に深い海の印象や夜のイメージなどが重なり、さまざまな思いを過らせてくれます。

向山裕06

向山裕12

同時に展示されている木彫作品も興味深いです。

彫りのていねいさ、再現性の豊かさなどがその艶やかなフォルムから感じ取ることができて、思わず見入ってしまいます。

向山裕14

向山裕15

徹底して追求されるリアリティと、加えてほぼすべての作品において、主題となるモチーフが画面の中央に描かれ、それが醸し出す豊かな空間性。

甲殻のカッコよさ、軟体動物のおおらかな揺らめき、そういった生物たちのさまざまな仕草がダイナミックに描かれることで、単に動物を描いた作品というだけに留まることがなく、実に深遠な雰囲気を醸し出しているように感じられます。

それぞれの生物たちのフォルムが放つ魅惑的な雰囲気。

シンプルに動物の姿を描いただけに留まらず、そこに漂うある種の緊張感、同時に動物の自然な仕草が織り成すユーモラスな感触も。

かっこよくてかわいい、生物を描いた作品群。緻密な描写力に裏づけされた表現の説得力も強く印象に残る展覧会です。

向山裕13

《8/28》

中岡真珠美展

第一生命南ギャラリー

東京都千代田区有楽町1-13-1

8/28(木)~9/26(水)土日祝休

12:00~18:00

中岡真珠美080828.jpg

INAXギャラリーでの個展からさほど間をおかずに始まった中岡真珠美さんの個展。

その前回の展覧会での空間全体を暗めにし、作品の白を強調した感触の照明演出から、今回は第一生命ギャラリーの天井も高くゆったりしていて整然とした空間での展示で、中岡さんの作品が醸し出す広々とした風景のイメージがよりおおらかに感じられます。

鮮やかな色彩が随所に登場しているのも清々しいです。

横内賢太郎 新作展 Last night

Kenji Taki Gallery/Tokyo

東京都新宿区西新宿3-18-2-102

8/28(木)~9/27(土)日月祝休

12:00~19:00

横内賢太郎080828.jpg

本年のVOCA展でのグランプリ受賞以来、最初の個展です。

横内さんのオリジナリティ溢れる手法と主題の取り上げ方は変わることなく、すなわちこれまで拝見してきて、一目で横内さんと分かるスタイルは当然のように維持されつつ、そこにやはり押し進められる世界観の深みや表現の豊かさにおける進化、発展性などが感じ取れ、もう既に良く知っているはずの横内さんのクリエイションに対して新鮮な感動を覚えます。

《8/29》

塩保朋子「Cutting Insights」

SCAI THE BATHHOUSE

東京都台東区谷中6-1-23 柏湯跡

8/29(金)~9/27(土)日月祝休

12:00~19:00

塩保朋子080829.jpg

凄い。凄すぎる...。

言葉を失うほどの迫力で展開される、塩保朋子さんのペーパーカットの作品。

SCAI THE BATHHOUSEの吹き抜けの天井が高い空間を活かしたインスタレーションは圧巻です。

そして、ハンダを使った作品から木炭のドローイングまで、塩保さんのクリリティビティの幅の広さにも感じ入ります。

《8/30》

船山塁展

GALLERY SHOREWOOD

東京都港区南青山3-9-5

8/25(月)~9/18(木)日祝休

11:00~18:00

舩山塁080825.jpg

同一ながら、日本画家としての「船山塁」さんと、コンテンポラリーな雰囲気が満ちるカタカナ表記の「フナヤマルイ」さんの両面をフィーチャーした展覧会です。

日本画は、深遠で落ち着いた風合いを滲ませる空間を表現する力と、緻密な描写力とが組み合わさり、実に豊かな静動のコントラストを奏でています。

一方、アクリル絵の具などを使い、グラフィカルに展開する作品群は、ポップな感触が印象的です。相当にデジタルな模様風の作品から、画面全体の色彩がぼやけて不思議な空間性を満たす作品まで、さまざまなスタイルの作品が展示され、同一の人物が制作したと考えるといっそう興味深く感じられます。

大久保如彌「どこのこそのここのこはどのこ」

GALLERY MoMo

東京都港区六本木6-2-6 サンビル第3 2F

8/30(土)~9/20(土)日月祝休

12:00~19:00

大久保如彌080830.jpg

昨年の東京都現代美術館でのトーキョーワンダーウォール展で印象に残った大久保如彌さんの個展です。

都現美でも展示された模様が印刷されている布地を支持体にしたスタイルの作風のユーモアとシリアスのバランス感覚、女の子を登場させ、泣かせたり刹那的な衝動を行動に転化させている仕草や表情が、実に豊かな色彩を背景に描かれ、ポップさと脆弱さとが重なりあって豊かなイメージがもたらされます。

松下竜也 CABINET

GALLERY TERRA TOKYO

東京都港区麻布台2-3-5 NOAビル1F

8/27(水)~9/24(水)日祝休

10:00~19:00

松下竜也080827.jpg

画面を覆っているヴィヴィッドなカラーと、その上に浮かび上がる透明な層、そこに広がるコラージュが生み出すベクトル。さまざまな要素にオリジナリティを感じる松下竜也さんの作品群。

松下竜也04

家電やら文房具やら、日常生活でよく目にするさまざまな道具、それらのかたちが持つ「方向」のイメージを活かし、画面の中央に向かったりリズミカルな展開がもたらされるなど、フューチャリスティックでユニークな世界を奏でます。

松下竜也01 松下竜也03

松下竜也02

大きな画面の作品では、その広がりがさらにダイナミックな臨場感を生み出しています。

松下竜也07 松下竜也06 松下竜也08

松下竜也05

中央部の尋常でない引力を錯覚してしまうほどの混沌、その高密度を始まりとし、どんどんと外側へと膨張するような感触。

すべてが一風変わったコラージュで作り上げられているのも面白いです。

松下竜也11 松下竜也10 松下竜也12

松下竜也09

実にポップな混沌が、独創的な時間の経過のイメージを創出させるような感触が印象に残ります。

松下竜也13

Five Risiing Star 2008 櫻井康弘 笛田亜希 宮城澄 山岡紀文 渡邊悠子

galeria grafica bis

東京都中央区銀座6-13-4 銀座S2ビル

8/18(月)~8/30(土)日休

11:00~19:00(最終日:~17:00)

grafica 080818.jpg

2人の男性の木彫作家と3名の女性のペインターとがフィーチャ-された展覧会。

木彫のふたりは、女性の頭部を実になめらかでリアリティに満ちた流線と表面で表現した櫻井康弘さんと、同じく具象表現ながらもぼこっとした味わい深さが印象に残る山岡紀文さんの動物の作品と、それぞれの個性を引き立てあっている感触が印象的です。

笛田亜希さんは、昨年拝見した個展のときの作風から一変し、動物のシルエットが描かれる深い緑と余白の白とが実に深いイメージをもたらしてくれています。岩絵の具を用いて独特な空間性で展開していく宮城澄さん、緩やかに揺らめく淡い色調が面白い渡邊悠子さん、それぞれに今後の展開が楽しみです。

篠原愛

Gallery Q

東京都中央区銀座1-14-12 楠本第17ビル3F

8/25(月)~9/6(土)日休

11:00~19:00(最終日:~17:00)

篠原愛080825.jpg

サディスティックさと脆弱さが隣り合う独特な雰囲気。

点数が少ないながらもさらに進化、深化する空間性や物語性に引き込まれます。

最初の個展から比較的短いスパンでの発表が続いている印象があり、ここ2回の油彩の作品は比較的小さな画面のものに留まっている印象があるので、願わくば、次の展示では最初の個展で発表された時以上の大きな作品を拝見してみたいです。

長谷川彩子 個展 品位のゆくえ

フタバ画廊

東京都中央区銀座1-5-6 福神ビルB1F

8/25(月)~8/31(日)

11:00~19:00(最終日:~16:00)

長谷川彩子080825.jpg

漆芸作家、長谷川彩子さんの個展です。

蜜陀絵と漆で彩色したオブジェとの組み合わせで、実に奥深いユーモアを醸し出す展開がたいへん興味深いです。

長谷川彩子02 長谷川彩子03

長谷川彩子01

奥の絵画のなかの印象的な一部が立体で引き出され、独特な臨場感が生み出されます。

同時に、絵画の絵画としての表現の緻密さ、豊かさにも感じ入ります。

長谷川彩子05

長谷川彩子04

展示された作品は一貫して、徹底してシリアスな雰囲気を醸し出しています。

それが、「笑い」へと直結しないユーモアをより深遠なものへと押し進めているように感じられます。

長谷川彩子10 長谷川彩子09

長谷川彩子08

平面のみの展開でも充分に魅せてくれます。

リアリティを追い求められた緻密な臨場感、漆の色調の独特な深み、さまざまな要素が相まって醸し出される静謐感が落ち着きをもたらしてくれるような感じで心地よいです。

長谷川彩子11

比較的暗めの照明もたいへん効いていたように感じられました。

さらにダイナミックな展開や、立体、平面それぞれの単独の作品もぜひ拝見してみたいです。

長谷川彩子06

井上裕起展「salaMandala/NIPPON-IDEA」

和田画廊

東京都中央区八重洲2-9-8 近和ビル302

8/26(火)~8/31(日)

13:00~19:00(最終日:~17:00)

井上裕起080826.jpg

最近の過去の個展でも一貫してサンショウウオのオブジェを発表してきた井上裕起さん。

今回ももちろんサンショウウオですが、それぞれ木彫や石彫だったのが今回はFRPを採用し、テクニカルな部分はそのままに、大胆な配色、彩色を取り入れてヴィヴィッドでポップな展開がもたらされ、一気に3歩も4歩も進化したような感触が痛快で堪らない作品が展示されていました。

井上裕起310

ギャラリーの空間を支配する大きな作品。

畳の上に2本足で立ち、身体を捻り、ダイナミックな姿を見せるサンショウウオ。

尾の部分の菊の紋様といい、台に施される卍をあしらった模様といい、日本的な要素を大胆に取り込んで、実におおらかにキャッチーさを奏でています。

目のみが大理石で、それが目力を生み出しているように感じられるのも面白いです。

井上裕起302 井上裕起304 井上裕起303

井上裕起301

見得を切るサンショウウオ。

このコミカルな感触が痛快すぎます!

井上裕起308 井上裕起309

井上裕起307

桜吹雪も。

もう何でもアリだな!(≧∇≦)ノ゛

井上裕起306

井上裕起305

自由な表現を手にしたことの嬉しさが伝わってくる、楽しい作品群。

無論、これまでの木彫、石彫とあわせて、さらにどういうふうに進化していくか、期待も膨らみます。

井上裕起313 井上裕起312

井上裕起311

向山裕展「海水・酸素」

ギャルリー東京ユマニテ

東京都中央区京橋2-8-18 昭和ビルB1F

8/25(月)~9/6(土)日休

10:30~18:30

向山裕080825.jpg

前回は同ギャラリーの奥のスペースで若手作家紹介の企画で個展を行った向山裕さんの、満を持してのメインスペースでの個展です。

徹底して追求されるリアリティと、それが逆に作用してコミカルに感じられるの痛快さが独特な面白さを発しています。

大作から小品まで、さまざまな視点において見応え充分の作品群です。

温井裕子 "Characters"

アート★アイガ

東京都中央区八丁堀2-22-9 宮地ビル2F

8/1(金)~9/20(土)日月祝・8/10~8/18休、9/15開廊

12:00~19:00

温井裕子080801.jpg

かわいい!

なんかもう、かわいい!

まるっこいあたま、ほぼ2等身の女の子たち。

さまざまな服を纏い、さまざまな表情を見せてくれています。

温井裕子03 温井裕子02

温井裕子05

1点だけ展示されている立体や小品群も同じく面白い!

女の子らしい独特なかわいらしさを醸し出す色使いもイイ感じです。

温井裕子07

温井裕子04

紙に描かれたいたずら描き風のドローイングもいっぱい。

温井裕子06

実際に作品を拝見し、思いのほか画面に乗る絵の具のモリモリとした感じが放つ迫力も印象的です。

その素材的な臨場感が、単にかわいいだけに終わらせていない感じがするのも興味深いです。

温井裕子01

佐藤令奈 -肌の温度-

Gallery Art Composition

東京都中央区佃1-11-8 ピアウエストスクエア1F

8/29(金)~9/12(金)日休

11:00~18:00

佐藤令奈080829.jpg

大作から小品まで、人の身体のある部分をある角度から大きく描き出した作品がずらりと並んでいます。

特に大きな画面での迫力がとにかく深いインパクトを感じさせてくれます。肌色の色面の中にうっすらと浮かぶ血管を思わせる赤い筋といい、微妙な陰影といい、独創的な深みを醸し出しています。

加えて、下地の感触も面白いです。漆喰のような臨場感が肌色や背景の白に合い、コンセプトからいうとけっこうサディスティックにも感じられる画風に別の入口を生み出しているような感じがして興味深いです。

南隆雄展

OTA FINE ARTS

東京都中央区勝どき2-8-19-4B

8/30(土)~10/4(土)日月祝休

11:00~19:00

南隆雄080830.jpg

OTA FINE ARTSの真骨頂、この空間で行われる映像作家の展覧会が面白くないはずがなく。

六本木にあった頃に開催された個展も面白かった南隆雄さん、映像を加工してフューチャリスティックな要素を織り込み、不思議な時間を生み出しているのですが、今回のメインの作品は東南アジアで撮影されたさまざまなシーンがダイナミックに加工、コラージュされ、実に複雑な展開が繰り広げられています。

高木正勝「イタコ」

山本現代

東京都港区白金3-1-15-3F

8/30(土)~9/27(土)日月祝休

11:00~19:00(金:~20:00)

高木正勝080830.jpg

分厚い印象の映像作品。

とにかく尋常でないクオリティの高さに圧倒され、意識が呑み込まれ、引き寄せられます。

メインスペースで醸成されている映像作品は2種類、それぞれにどこまでも深い世界観を重厚に醸し出しながら、共に流れる音楽がそこで展開される光景の抽象性を加速させると同時に、ある種の分かりやすさ、接しやすさをも提供していうように感じられます。

映像と音、それぞれの美しさが絡み合って生み出される珠玉の数分間。

もし可能であれば、無音で映像のみを観てみたかったり、逆に暗闇で音楽だけに耳を傾けてみたい、そういう衝動も起こります。

《9/2》

平林貴宏

都庁舎と都議会議事堂をつなぐ第一本庁舎3階南側空中歩廊

東京都新宿区西新宿2-8-1

9/2(火)~9/26(金)土日祝休

9:00~17:30

平林貴宏080902.jpg

トーキョーワンダーウォールで強く印象に残った平林貴宏さん。

コンテンポラリーア-ト作品がずらりと展示される中で、実に精度の高い日本画が出品され、その意表を突かれた感じが堪らなかったのを記憶しているのですが、その平林さんの都庁での個展の初日のアーティストトークへ。

今年の都現美での展示に出品されていた作品をはじめ、5点が出品され、それぞれが刹那的で儚げな迫力と濃密な物語性を醸し出しています。

蝶が舞う作品、鳩が佇む作品、それぞれの絵が放つ鋭さ、人物が描かれている作品のサディスティックな静謐感。それぞれの作品が独立した壁面に展示されていて、そのためにひとつひとつの濃厚な雰囲気と、日本画としての描写の精度の鋭さとが立ち上がって迫ります。

@GALLERY TAGBOATの「アートな生活」のコーナーに、現在Galerie Sho Contemporary Artで開催中の「有名な人、有名な写真展」のレビューが掲載されています。

よろしかったらぜひご覧くださいまし。

「ゼロの庭」The Story Box 塋水亜樹 小野瀬裕子 勝本みつる 松原健 安田悠

MA2 Gallery

東京都渋谷区恵比寿3-3-8

8/19(火)~9/20(土)日月祝休

12:00~19:00

ゼロの庭080819.jpg

The Story Box Aki Emizu Yuko Onose Mitsuru Katsumoto Ken Matsubara Yu Yasuda

MA2 Gallery

3-3-8,Ebisu,Shibuya-ku,Tokyo

8/19(Tue)-9/20(Sat) closed on Sunday,Monday and national holiday

12:00-19:00

Google Translate(to English)

ひたすら静かに迫る、印象としてのモノトーンの揺らぎ。

MA2 Galleryでのグループショー。

先に開催されたモノクロームをテーマに取り上げた3人展が、シャープさが発散されるような感触だとすると、今回の展覧会はもっと静かに、知性や揺らめきを足元に満たしながら、淡々と、しかし奥深く展開しているような雰囲気が強く印象に残ります。

特にモノクローム、あるいはモノトーンに統一されているわけではないのですが、まるで止められたかのような、時間的なイメージとしての単調な謎めきと、ほんのりと漂う無垢で脆弱な風合い、それが転じてアバンギャルドな鋭さを刹那的な表情を覗かせるような鋭さとが、それぞれのクリエイションがひとつの空間にパッケージされて綯い交ぜになって迫ってくるような。

1階のギャラリーの重い、しかしその重みが心地よい扉を押し開けてまず目に飛び込んでくる、松原健さんのガラスのオブジェ。中に入っている液体の水面の平らさ、ガラスのかたち、それが8つ集まって円形に吊るされて配置されているインスタレーション。

少し前に制作された作品のようなのですが、京都での写真展で感じた「これはいったい、何?」という知性の側の好奇心を静かに強く刺激してくる感触は、こちらの立体のアプローチでも健在です。

松原健001

松原さんのガラスとともに、塋水亜樹さんの大きなペインティングも最初に目に止まります。

どこか遠い風景を大きく描いたような、ほぼモノトーンの作品。全体の淡々とした雰囲気のなかには、ひとつひとつ紡がれるように無数のドットが描き込まれ、さらに随所にふわりと密度を増していたり、さんかくを描いていたりするのがアクセントとなっていて、全体をかわいらしい柵で取り囲まれた楕円に滲む空虚な物語性に不思議な深みをもたらしています。

そして、確かに柵がつらつらと描かれていて、それがまず目に入った時に感じる平坦さ、平面の感触にある広い風景を俯瞰しているようなイメージをもたらし、さらに不思議な雰囲気を感じさせてくれます。

塋水亜樹205 塋水亜樹204 塋水亜樹202 塋水亜樹203

塋水亜樹201

事務所スペースの小さな棚に置かれた柵と球体のオブジェが、平面作品のイメージをさらに豊かにしてくれるのも興味深いです。

塋水亜樹209

作品は、何度か拝見している勝本みつるさんのオブジェ。

鮮やかな濃いグリーンに染め上げられた兎の毛皮(!)のその鮮やかさと、キャンバスを最下部にして着古した服の布などが挟み込まれ、あるいはガラス板と重ねられて、素材の感触を全面に押し出しながら、松原さんのクールさとは裏腹の生々しい謎めきが深く印象に残ります。

勝本みつる003 勝本みつる002

勝本みつる001

今年に入ってから、都庁とTWS本郷それぞれの個展、さらにはVOCA展への出品など、印象に残る作品や展示の発表が続いている安田悠さんの作品、今回は人が登場しない作品のみが出品されています。

人がいないことで、安田さんの画風が本来持つ抽象性が立ち上がり、迫ってくるような印象。ひとつひとつの色が溶けるような色面のフォルムをつくり出している感じにより強いインパクトと奥深さを感じます。

安田悠303 安田悠302

安田悠301

階段の昇り口のすぐ側に展示されているのが、小野瀬裕子さんの小品。

紐で絵描かれる文字の羅列。カタカナなので音声のイメージが伝わり、同時に危うい雰囲気が深遠に迫ってきます。

小野瀬裕子02

小野瀬裕子01

階段を昇って2階へ。

その正面に、勝本さんの棚のインスタレーション作品が展示され、さらに深遠なイメージの世界へのイントロダクションを、階下直近の小野瀬さんの作品とともに構成しているような感触が印象的です。

勝本みつる004

2階に展示された勝本さんの作品は、手のひらに収まるくらいの小さな棚のオブジェ群です。

1階よりも暗く深い照明の中に、広い壁面に整然と展示された小品群、その謎めいた感触、それぞれの小さなオブジェが放つスリリングな物語性に浸れ、強烈な文学的な香り、淡々としていながら、ナイーブで仄かにサディスティックなストーリーのイメージに心が満たされます。

勝本みつる007 勝本みつる006

勝本みつる005

安田さんのペインティングは、1階で展示されている2点の作品よりもさらに抽象度が増した感じです。

キャンバスに乗る油絵の具の盛り上がりや融解していくような色面の感触など、独創的な筆致の味わいがさらに臨場感を増して迫ります。

この「人が登場しない」作品を拝見し、今後の展開がホントに楽しみです。これまではどちらかというと1点完結で展開されていて、そこに充満する雰囲気の深みが印象的だったのが、もしかしたら空間的な構成により更に深い世界を提示してくれそうで、その可能性に期待が高まります。

安田悠304

松原さんの作品、こちらでもガラスを用いたオブジェなのですが、中に入っている液体が異なります。

松原健004

松原健003

台の上、壁面と1点ずつ展示された作品の中を満たすのは、水銀です。

これほどの多量の水銀を目にする機会などこれまでには有り得なかったので、その危険な重金属液体が放つ鈍い輝きに強烈に意識が引き寄せられます。

それを内包するガラスの形状の強烈な知性も強く印象に残ります。何故そのかたちなのか、という謎めき、それと同時に、感性的でありながらも理知的な説得力が充満しているように感じられ、中の水銀とともにシャープな危うさを発しています。

松原健002

塋水さんの小品のかわいらしさにも魅せられます。

塋水亜樹206

トレーシングペーパーの半透明の支持体の上に小さなドットが描き出す風景。

白い影の儚げな風合いが、観るものの心を掴みます。

支持体と城のドットが醸し出す脆さに対して、そのちいさな世界を守りたい衝動みたいなものがじわりと湧いてくるような印象です。

塋水亜樹208

塋水亜樹207

このフロアでは、小野瀬さんの作品がもっとも強いインパクトを放っています。

まず、階段の上を見上げて目に入る針金のオブジェがそのオリジナリティ溢れる手法で紡ぎ出された世界へと誘ってくれます。

小野瀬裕子03

針金のインスタレーションと、その光景を布地に描いた作品とが一角に詰め込まれて展示されています。

エスキース的な仕上がりが、淡々としていながらもそこに織り込まれる物語性に引き込まれるような作品、細やかな再現性も印象的です。

小野瀬裕子06 小野瀬裕子05

小野瀬裕子04

そして、天井から吊るされて展示されているインスタレーション。

ひとつの街を再現し、そこに街並やら道をイメージさせるものやらがあって、その光景を猫のシルエットがうごめいています。

いくつかある猫のシルエットは実は同じ猫なのだそうで、もともとこの作品は基に映像があり、そのストーリーの中の光景をひとつのインスタレーションに詰め込んだのだそう。

ぐしゃっと表現された部分、逆にていねいに作られる家々と、ひとつの時間の流れの奥行き感がさまざまな要素の仕上がり具合から感じられるのも興味深いです。

小野瀬裕子08 小野瀬裕子09 小野瀬裕子10

小野瀬裕子07

パッケージされた5つの個性はそれぞれにオリジナリティという点で相当に強靱で、しかしお互いの個性への尊重というか、それぞれの領域を侵さないことがしっかりと守られているような感触で、さらにその感触が絶妙な距離感でかかわりを生み出し、独特な雰囲気が作られているような感じが強く印象に残ります。

むしろ何もしてこない、過剰いってもいいくらいの静けさが満ちていて、それに翻弄され、揺さぶられる心地よさ。領域が守られているからこそ、作品ひとつひとつの高密度がイマジネーションを強く刺激してきます。

2つのフロアに貫かれる能密な空虚さ。

文学的な学術書を読み解くときのように、じっくりと対峙したい、至高の雰囲気が紡ぎ上げられた展覧会です。