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幕内政治が覗いたおすすめアートイベント情報
2008年12月アーカイブ

2008年を振り返ってみて、1年の長さ、というより、特に年の後半、終盤あたりから1週間がすごく早く感じられ、気付けば年の瀬、そんな感じで。

いや、今年は楽しすぎました。

このブロを始めて約2年半、たった今、今年書いてきたものをざっと振り返ってみてあらためてその分量に我ながら驚かされると同時に、これだけたくさんの方々と関わってきたことがとても感慨深いのですが、その冒頭にも書いた今年の後半、終盤にかけて、僕自身が「できること」が格段に広がったなぁ、と、またまたあらためて思う次第です。

@GALLERY TAGBOAT内に展覧会レコメンドの連載「ex-chamber museum」を、そして携帯のアートコンテンツ「CA[m]」へも速報性重視のレビューとあわせて随時お薦めアート巡りコースを紹介していく連載「ex-chamber mobile "up-and coming”」を書いていたり、また今月25日に発売されたアートコレクター2月号にも細密画の特集記事を寄稿させていただいたりと、あれだけ国語嫌い、とりわけ作文嫌いだった僕が一体どうしちゃったのだろうという具合に文章に関わる機会が増え、不思議なものだなぁと思ったり、そして何より自分的にエポックだったのが、自称「ブロガー枠(笑)」でウルトラに参加させていただいたことでして。

アート巡りと称して今年ホントにいろんなところに足を運んで、たくさんの人と出会い、作品や空間に接することができたことで、楽しかったなぁ、と。

で、とりあえずお約束な感じで2008年印象に残った展示を挙げてみよう、と。

まず、今年はダイナミックなスケール感と緻密なテクスチャーとが共存するインスタレーションに多く出会えた年でもあったと思います。

review:BLACK,WHITE & GRAY《2/8、2/15、2/16》

MA2 GALLERY

東京都渋谷区恵比寿3-3-8

2/8(金)~3/8(土)日月祝休

12:00~19:00

BLACK,WHITE&GRAY0802008.jpg

review:名和晃平展 TORSO《2/9》

ノマル・プロジェクトスペース キューブ&ロフト

大阪府大阪市城東区永田3-5-22

2/9(土)~3/8(土)日祝休

11:00~19:00(土:13:00~)

名和晃平080209.jpg

review:SHINCHIKA-シンチカ《3/15、3/22》

SHINCHIKA-シンチカ

OTA FINE ARTS

東京都中央区勝どき2-8-19-4B

3/15(土)~4/19(土)日月祝休

11:00~19:00

シンチカ080315.jpg

review:西嶋雄志彫刻展 -存在の気配-《7/3、7/12》

Gallery ef

東京都台東区雷門2-19-18

7/4(金)~7/21(月)火休

12:00~21:00

西嶋雄志080704.jpg

review:塩保朋子「Cutting Insights」《8/29、9/6》

SCAI THE BATHHOUSE

東京都台東区谷中6-1-23 柏湯跡

8/29(金)~9/27(土)日月祝休

12:00~19:00

塩保朋子080829.jpg

展示空間が持つ個性とアーティストのクリエイティビティとが響き合い、素晴らしい空間を構築していました。山本基さんの緻密な塩の世界、名和さんの弩迫力、シンチカのフレッシュで無垢な遊び心、西嶋雄志さんの神々しさ、塩保朋子さんの繊細な影、部分で魅せ、全体で迫るコントラストが堪らなかったです。

ペインティングでは、圧倒的にこの3つ。

review:五木田智央《4/5、4/19、4/26》

Taka Ishii Gallery

東京都江東区清澄1-3-2-5F

4/1(火)~4/26(土)日月祝休

12:00~19:00

五木田智央080401.jpg

review:大城カズ Untitled Recordings《6/27、7/3》

CLEAR GALLERY

東京都渋谷区渋谷4-2-5 Place Aoyama

6/27(金)~8/2(土)日月祝休

11:00~19:00

大城カズ080627.jpg

review:小村希史 絵画・素描《11/25、11/29》

MUSEUM at TAMADA PROJECTS

東京都中央区月島1-14-7 旭倉庫2F

11/25(火)~12/20(土)日月休

12:00~19:00

小村希史081125.jpg

もちろん他にも素晴らしいペインティングの展覧会はたくさんあり、挙げるとホントにきりがないのですが、とにかくこの3名の個展は強烈でした。

モノクロームだけでさまざまなうねりとアバンギャルドな響きを生み出す五木田智央さん、小村希史さんはオイルペオンティングを観る喜びを実感できるほどの凄まじい筆致が印象的で。そして大城カズさんの尋常でない精度の再現性を誇る作品群は、オンキャンバスであることへの驚きが何度拝見しても沸き起こってきたのです。

平面作品としてはちょっとアクロバティックですが、こちらも忘れ難い展示でした。

review:姉川たく vol.2 you重力ベイビー「ボくぷまれたよ」《11/2》

GALLERY ef

東京都台東区雷門2-19-18

10/31(金)~11/30(日)火休

12:00~21:00

姉川たく081031.jpg

およそ2ヶ月続けて、ふたつの展覧会を開催された姉川たくさん、その後半の展覧会。前半の展示と、そのさらに前にNANZUKAUNDERGROUNDで開催された個展のほぼ集大成的な構成で、しかもちいさな画面にさまざまな刺繍が施され、それらに囲まれ何とも言えない高揚感に満たされました。この展覧会に結局一度しか足を運べなかったことが悔やまれます。

2008年はこの二人の僕が尊敬して止まないアーティストにとってエポックな年になったのでは、と思います。

review:TEAM13 雨宮庸介 ムチウチニューロン《6/29、7/6、7/20》

トーキョーワンダーサイト渋谷

東京都渋谷区神南1-19-8

6/28(土)~8/31(日)月休(月曜日が祝日の場合開廊、翌日休)

11:00~19:00

雨宮・竹村080628.jpg

review:四位置 内海聖史《8/24》

藝術倉庫

栃木県那須群那須町高久丙3227-1

8/2(土)~8/24(日)

11:00~18:00

内海聖史080802.jpg

この二人の名前をホントに多く目にし、たくさんの展示、作品を拝見したと思うのです。

で、2008年は内海さんがこれまで発表された大作がほぼすべて登場しているような気がします。上記の展覧会で4つの大作が展示されたのをはじめ、東京都現代美術館と静岡県立美術館でも過去の作品が登場、敢えて「三千世界」をサイズ可変の作品として捉えるとしたら、最新の「十方視野」まで含めて9点の作品を観ることができたのは貴重だったと。

一方、雨宮さんは2ヶ月に及ぶインスタレーションを敢行、それが雨宮さんのキャリアでものすごく大きなものになるだろうと思うのです。おそらくこれから行うすべてのパフォーマンスやインスタレーションが、すべて今年の夏の時間に帰結していくかのようなイメージがあり、実際に赤坂でのインスタレーションを拝見したときも、そして現時点では未見ながら府中市美術館での展示もおそらく、今年のTWSを基点に鑑賞し、していくような気がします。

抽象表現にあれほどまでの確信をもたらし、具体的なイメージを惹起させる内海さんと、想像するに手探りで自らの想像の世界を突き進み、具体的な情報から抽象的な世界を紡いでいく雨宮さん、それぞれの今後の展開がいっそう楽しみです。

個人的には、山口英紀さんとこの距離で関われたことも大きかった、と。

review:山口英紀展《1/17》

新生堂

東京都港区南青山5-4-30

1/16(水)~1/26(土)日休

11:00~18:00(最終日:~17:00)

山口英紀080116.jpg

初めてお会いして2年、今年の初めの山口さんの個展で拝見した作品群の、水墨のイメージを覆す細密の精度への驚きと、それに続いて制作された作品群のさらに高まる緻密さ。その驚きを然るべきかたちで紹介できたことも嬉しかったです。

他、今年印象的な動きとしては、なんといっても「THE ECHO」の開催に心躍らされ、そこから沸き起こるうごめきへ期待が今でも高まっています。あれだけのアーティストが一堂に介して行われたグループショー、ぜひとも継続してほしい企画です。いろんな動きがここを軸に広がり、生まれていくと面白い、と思っています。

また、それこそ雨後の筍のごとく開催されたアートフェアでは、横浜での住宅展示場でのフェアがダントツで面白かったです。2日だけの開催というのがなんとも残念で、こちらもぜひ、できればもう少し余裕のあるかたちで続けて開催してほしいと願います。

で、特に順位をつけないかたちで紹介させていただいたのですが、いちばん印象に残っているのをひとつ、迷わずこの展覧会を挙げます。

review:大畑伸太郎 個展「さよなら三角」《10/2、10/4》

YUKARI ART CONTEMPORARY

東京都目黒区鷹番2-5-2 市川ヴィラ1階

10/2(木)~10/25(土)日月火休

11:00~19:00(土:~20:00、最終日:~17:00)

大畑伸太郎081002.jpg

展覧会が始まって、初日に伺い、ギャラリーに入る前にあと1ヶ月でこの展示が終わってしまうことに淋しさを覚えてしまったほど。それくらいの期待と高揚をもって望んだ展示の素晴らしさは、言葉では伝えようのないくらいにステキなイメージをもたらしてくれました。

展覧会には都合3回足を運びました。

会期中のレビューではご紹介できなかった、奥のスペースでのインスタレーションを、今年の最後に。

これが紹介できることがホントに嬉しいです。

大畑伸太郎 202

この空間に入る刹那、誰もが息を呑んだと思います。

それくらいの臨場感。あの絵の中のやさしく繊細な世界が3次元に変換されていて、一瞬で心がつかまれます。

暗い空間に、わずかな光が灯ります。

紫陽花がひっそりと咲く公園かどこか...ブランコに座って携帯の画面を見つめる女の子。何気ない光景がここまで美しく感じられることに、感嘆させられます。その高貴な感じからは、アンタッチャブルな雰囲気さえも伝わってきます。

独特の色使いが奏でる淡く儚げな時間のイメージの感触。女の子の手足、表情のていねいな作り込み。手前のスペースの明るい空間とのコントラストは、作品の精度のシャープさをも際立たせていて、観れば観るほどに溜息が漏れ、油断すると涙腺も緩みそうになるくらいに感動的なインスタレーションでした。

大畑伸太郎 201

今年はたくさんのアートに触れただけでなく、久々にCDも結構買って聴いたし、あと本もたくさん読みました。

音楽はさかいゆうのファンクネスに、コトリンゴのふわりとした声とメロディに心を躍らせ、本は伊坂幸太郎、西加奈子、瀬尾まいこ、円城塔、桜庭一樹、近藤史恵などなどを読みあさりました。

そして、あらたに城福監督を迎えたFC東京の躍進にも楽しませてもらいました。

いろいろと楽しかったです、2008年。

たくさんの方々とお会いし、お話しし、何かをやった年でもあります。

すべての方々に感謝いたしいます、皆様のおかげです!

ありがとう、2008年。

おせちも作って準備万端、さあこい、2009年。

《12/23》

「今・日・界・線」

GALLERY KINGYO SD602

東京都文京区千駄木2-49-10

12/16(火)~12/25(木)月休

12:00~19:00(最終日:~17:00)

小市亮二081216.jpg 三木サチコ081216.jpg 吉雄介081216.jpg

小市亮二さん、三木サチコさん、吉雄介さんの3名の立体作家がクレジットされたグループショー。それぞれの際立つ個性が絶妙なバランスを保ち、さまざまな味わいが溢れる空間が作り上げられていました。

CASHIでの個展も面白かった三木さんは変わらぬ溶けるようなフォルムの造形を提示、小市さんはドローイングとセラミックの立体とを組み合わせてそれぞれの作品の奥行きを生み出しているのが大変興味深かったです。

そして吉さんの作品は、おそらくトタンを使用し幾何学的なフォルムの造形が繰り出され、もう二人の有機的な造形にアクセントをもたらしていました。

キリク展「生殖」

Gallery空

東京都台東区東上野3-9-7

12/17(水)~12/22(月)

11:00~19:00

キリク081217.jpg

伺ったら会期が終わっていて、しかしちょうどこれから搬出というタイミングだったこともあり、ありがたいことに拝見することができました。

造花やドライフラワーを用い、平面作品に大胆な立体感をもたらしたものや不覚妖しい世界観を奏でるインスタレーションが繰り出されていて、その独特の鋭さと妖婉さとを持ち合わせる雰囲気も強く印象に残り、同時にインスタレーションの説明というかたちで出品されていた半立体作品のコミカルな風合いも面白く感じられた次第です。このキャッチーな半立体の展開も期待したいです。

福井直子 個展「海賊」

galeria de muerte

東京都台東区東上野3-32-1-3F

11/28(金)~12/29(月)水木休

13:00~19:00

福井直子081128.jpg

やっぱり面白い!

今までからちょっと広くなったgaleria de muerteの展示スペース、そこに雰囲気を構築するモチーフがふんだんに織り込まれた壁面が配され、そこに楽しい世界がキャッチーに描かれるペインティングが飾られて。

作品の中に投入されるビーズなどが醸し出す遊び心も健在、帆船をモチーフにクリスタルがまぶされた立体作品やアクセサリー的な小品も織り交ぜ、めくるめく世界が繰り広げられていたのがとにかく痛快でした。

三賢 大森暁生 瀧下和之 平林貴宏

GALLERY小暮

東京都千代田区神田神保町2-14-19

12/16(火)~12/26(金)日休

11:00~19:00

三賢081216.jpg

渋いセレクションによる展覧会。

神田の裏通りの小さなスペースに、3名のクリエイションが展示されていました。

大森暁生さんの木彫作品は2点、布をモチーフに独特の浮遊感と重厚さを奏でるものと、レンズのエッジにまとわりつく蛇、それぞれが独特の雰囲気を醸し出していました。

瀧下さんは、おなじみの桃太郎シリーズ、小さな作品に鬼が相変わらずのやんちゃ振りを発揮しているのですが、敢えてそこに磨りガラス的なアクリルがかぶせられていたのがユニークに感じられた次第。

平林さんはシンプルに女性を描いた作品、これまで拝見してきた鋭いおどろおどろしさが抑えられ、美しさ、洗練された風合いが放たれていたのが印象的です。

THE SIX 2008

ヒルサイドフォーラム

東京都渋谷区猿楽町18-8 ヒルサイドテラスF棟

12/23(火)~12/28(日)

10:00~19:00

THE SIX 081224.jpg

昨年に続いて開催のTHE SIX、参加大学が一気に増え、よりダイナミックにフレッシュなクリエイションに触れられるのが嬉しい!

さまざまな作品が揃った中で、特に印象に残っているのが、まず川田知志さん。

今回が初めての平面での展開とのことで、幾何学的なかたちがいくつも織り込まれたグラフィカルな構成と、それが創り出す奥行き、そして複雑な縮尺感がイメージとアイデアをどんどんともたらしてくれるような感触です。

そして、絵の具を塗った痕跡、色斑などはこういう作風にはノイズに映るところが、逆に味わい深さに転換しているように感じられたのも興味深いです。

もっと閉じた空間で体感したいクリエイションです。

川田知志04 川田知志03 川田知志02

川田知志01

鶴井美和さんのペインティング、抽象と具象の織り混ざる感触は、とにかく見応えがあります。

鶴井美和01

ヴィヴィッドな抽象性、絵の具の質感がダイナミックなうねりを画面にもたらし、それが抅井さんの描く世界に迫力をもたらしています。

そこに、あたかもそんな混沌からぬるりと現れるように、この作品では鯉の姿が描かれ、抽象の情景にストーリー性がもたらされ、イメージも一気に具体化されていくような感じで。

色彩の硬質な感触も面白いです。

鶴井美和05 鶴井美和04 鶴井美和03

鶴井美和02

《12/27》

あるがせいじ展

巷房・1

東京都中央区銀座1-9-8 奥野ビル3F

12/22(月)~12/27(土)

12:00~19:00(最終日:~17:00)

あるがせいじ081222.jpg

コンパクトなサイズに、いつもの緻密な世界が収められていて、そのひとつひとつをじっくりと、正面から、左右から、そして下からと眺めて、幾何学的な構成の中に潜む無数の表情を目にしてもう堪らない!そんな感触で。

昨年の個展で発表された窓のひさし風の構成のものから、おなじみの何層にも重なる正方形の穴が深い奥行きを奏でるもの、そしてビルのようなアプローチなど、さまざまなアイデアが卓越したスキルで構築されていて、小さいながらも見応え充分の作品群です。

1週間というのはもったいない、もっとたくさんの方々に見ていただきたいと、いつもながらに思わせられるクリエイションです。

あるがせいじ002.JPG

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via art 2008

銀座シンワアートミュージアム

東京都中央区銀座7-4-12

12/23(金)~12/27(土)

10:00~18:00(12/25:~19:00)

via art 2008.jpg

こちらも昨年に引き続いて開催の企画。

さまざまなフレッシュなクリエイションが並ぶのはTHE SIXと変わらず、既知、未知の個性ともどもいろいろな発見があって楽しかったです。

《12/28》

代官山、恵比寿界隈をまわり、そのあと横浜へ。

大さん橋で開催の「まちフェス」というイベントに出品されている山口英紀さんの作品を観に行ってきた次第で。

渋谷の展覧会で渋谷を描いた山口さん、横浜だともちろん横浜、夜景に滲む光の表情を紙本水墨で描き上げている作品で、その見応えは充分。

照明の関係で和紙の繊維が立ち上がり、緻密な描き込みが見えにくかったのが残念だったのですが、敢えて離れて眺めたとき、散らばる金銀の箔が高貴な空気感を奏で、また違う面白さが放たれていて驚かされた次第です。

山口英紀20

そのあとさらに、BOICE PLANNINGの忘年会、もといVOUNENKAIへ。

楽しかったー!

橋本遥展 乾漆造形展/Event Horizon 2

和田画廊

東京都中央区八重洲2-9-8 近和ビル302

12/11(木)~12/20(土)

13:00~19:00(最終日:~17:00)

橋本遥081211.jpg

Haruka Hashimoto "Event Horizon 2"

Wada Art Gallery

2-9-8-302,Yaesu,Chuo-ku,Toyo

12/11(Thu)-12/20(Sat)

13:00-19:00(last day:-17:00)

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先日拝見した保井智貴さんの作品への驚きも記憶に新しいなかで、さらに漆芸の懐の深さと可能性を提示してくれた展覧会。

和田画廊での橋本遥さんの個展に行ってきました。

保井さんの漆の作品が、仕草だけでなく表情なども含めて「静」を淡々と無機的に紡いでいるのだとしたら、橋本さんのそれは、もっと妖艶で、有機的なクールさが印象的です。

漆らしい深い色調で緻密に作り込まれる頭像。頭髪の鈍い金色の重厚感、胸部の艶やかな漆黒、顔の艶が消された黒。それぞれの色彩の深みや味わいが精緻な立体の表面で組み合わさり、照明によって紡ぎ出される影とでこの壁面空間を支配します。

全体に充満する高貴さと、醒めた感触とが重なって、独特な臨場感を漂わせています。

橋本遥02 橋本遥03 橋本遥04

橋本遥01

リアルな彩色の作品も。

追求されるリアリティ、作りたいイメージと作品の距離感がどれだけ詰められるか、そこに挑むかのような印象が迫ります。

色彩が肌の色や髪の色などをありのままに再現していることでフューチャリスティックな雰囲気は抑えめに感じられるのですが、一方で造形自体の臨場感に感心させられます。

橋本遥06

橋本遥05

もっとも驚かされたのが、艶かしい女性の立像。

それはもう圧倒的な存在感です。

橋本遥08

造形のひとつひとつに説得力と臨場感が満ちあふれています。

タイトスカートに施されるシャープな柄、頭髪のカールの妖しさ。さらにはジャケットの襟元や裾の鋭さ、指先の爪の緻密な再現性など、見所も多く、さらに角度を微妙に変えるだけで豊かに表情を変化させるフェイス部分も、ていねいに美しく作られています。

そしてただその美しさに魅せられるだけではなく、その妖艶で洗練された出で立ちからいろんなイメージや物語も思い浮かんできます。

橋本遥12 橋本遥10 橋本遥13 橋本遥11

橋本遥09

漆芸作家とお話しすると必ず「もっとできる」という話が出てきます。

漆の素材的特徴である「艶(つや)」、それへのこだわりにはいつも感服させられるのですが、やはり橋本さんもそういう思いはあるようで、これだけの精度の仕上がりをして、さらに高度なレベルがあるというところに、こちらも高揚させられるんです。

充分に素晴らしいクオリティなので、もっとたくさんの作品を観たい、スケールの大きなインスタレーションを体感したい、そういう想いが盛り上がると同時に、そういう精度へのとどまらないこだわりを持つアーティストが満足するレベルというのも拝見したいとも思うのです。

まだ見ぬ漆の世界。これからの展開が楽しみです!

橋本遥07

羽毛田優子展

第一生命南ギャラリー

東京都千代田区有楽町1-13-1

11/14(金)~12/15(月)土日祝休

12:00~18:00

羽毛田優子081114.jpg

Yuko Haketa exhibition

Dai-ichi Life South Gallery

1-13-1,Yurakucho,Chiyoda-ku,Tokyo

11/14(Fri)-12/15(Mon) closed on Saturday,Sunday and national holiday

12:00-18:00

Google Translate(to English)

降り注ぐ光。

第一生命南ギャラリーでの羽毛田優子さんの個展です。

染織特有の繊細な仕上がりによって織り成されるおおらかで深遠な情景。

「塗る」ではなく「染める」、この感触が、しんしんとした静けさを穏やかに、そして透明感とともに奏でます。

羽毛田優子15

大きな画面の作品がずらりと並ぶ空間。

それぞれの前に立つと、上方から流れる淡い黒の波が、そしてそこに浮かぶ無数の球体が、縦の動線をダイナミックに導き出して、沸き立ち浮かぶような不思議な感触を思い起こさせてくれます。

羽毛田優子10 羽毛田優子09 羽毛田優子08

羽毛田優子07

横長の作品も、黒い染料がたゆたうような滲みを紡ぎ出し、おおらかなスケール感が創出されています。

部分ごとのダイナミックなうねりを想像させる繊細なグラデーション。濃淡がスピード感を放ち、その連続に圧倒され、さらにそれらが構築する複雑な奥行き感のアバンギャルドさに煽られるんです。

そして、支持体と染料とのフラットさ、素材の繊細な美しさにもおおいに惹かれます。

羽毛田優子05 羽毛田優子04 羽毛田優子03 羽毛田優子02

羽毛田優子01

VOCA展に出品された作品も登場していました。

色彩のインパクトがいっそう目を引きます、

画面にもたらされる縦の動線は他の作品と同様ながら、色彩が挿入されていることもあり、より具体的なイメージを伴った新鮮で深遠な迫力が伝わってきます。

羽毛田優子13 羽毛田優子12 羽毛田優子14

羽毛田優子11

染織のアプローチのユニークさとその可能性をあらためて実感させられた次第です。

使う生地や染料でさまざまな質感を生み出すことができ、またこれまで緻密な柄や模様が施されたテキスタイル作品なども拝見してきたなかで、今回拝見した羽毛田さんの抽象性は大変新鮮に感じられた次第です。

たとえば小さな作品だとどんなふうに凝縮されるのだろうとか、もっといろいろな世界を観てみたくなるクリエイションです。

羽毛田優子06

日韓若手作家交流展 Asian Young Artists -Her Stories-

クムサンギャラリー東京

東京都中央区東日本橋3-5-5 矢部ビル1F

12/5(金)~12/26(金)日祝休

11:00~19:00

クムサン081205.jpg

Asian Young Artists -Her Stories-

Keumsan Gallery tokyo

3-5-5-1F,Higashi-nihonbashi,Chuo-ku,Tokyo

12/5(Fri)-12/26(Fri) closed on Sunday and natinoal holiday

11:00-19:00

Google Translate(to English)

4名の女性アーティストがフィーチャーされたグループショー、これが良かったんです!

まず、韓国のアーティストから。

Jang Aromiさんの作品は、緻密なコラージュによって実に幻想的でユーモアもふんだんに挿入された世界が生み出されています。

本物が複雑な縮尺感とデフォルメで組み上げられ、奇妙なファンタジーが展開されていて、何とも言えない艶かしさを感じつつも、そのコミカルなシュールさに思わず笑みもこぼれてしまいます。

Jang Aromi 01

食物を用いているのも面白さを加速させてくれているような気がします。

色調を整えて、ていねいに構築される風景。それが何か分かるだけあり、しかも親しみがある素材なので、いっそうそのシチュエーション自体の面白さが押し上げられています。

このマンガ的な感触に、なんとも不思議な幸福感にも満ちた世界のイメージを覚えます。

Jang Aromi 02

Park Armさんの作品はグラフィカルな面白さが満ちています。

シャープなモチーフがふわふわとした背景に浮かんで、フューチャリスティックな物語性をユーモラスに奏でます。

Park Arm 06 Park Arm 05 Park Arm 04

Park Arm 03

イラスト的な軽やかさ、ライトタッチのテクスチャーが、おおらかな空間性によって絶妙なダイナミズムを紡ぎ出し、緻密さと大胆さとが共存する、ユニークな奥行きを持つ世界がもたらされているように感じられます。

Park Arm 01

Park Arm 02

日本人のアーティストは、2名ともペインティング。

みずたにまやこさんの作品群は、幻想的な色調で綴られる淡く繊細な空気感が満ちた静謐な情景、そこにさまざまな要素が収められ、不思議なシチュエーションが描き上げられています。

みずたにまやこ02 みずたにまやこ03

みずたにまやこ01

深い色彩と淡い色彩とによって織り成される儚げな奥行き感。

微妙な陰影で紡がれる滲んだ光の表情とぼやけたシルエットが、その世界の曖昧さを加速させているような印象です。

さらに緻密な線描も施され、いろんな景色が重なって、それもこの物語性に深みをもたらしているように感じられます。

みずたにまやこ05 みずたにまやこ07 みずたにまやこ06

みずたにまやこ04

今回の展示で出展されたもっとも大きな作品に描き上げられた世界は、実に深遠です。

具体的なさまざまなモチーフが豊かな縮尺感で挿入されるだけでなく、それぞれの配置に有機性と無機的な質感をもたらしながら、ひとつの時間の流れに収まらない複雑な関係性を生み出しています。

赤いランドセルの女の子二人は白い光の方向へと歩みを進め、その奥に弱々しくその存在を奏でる遊具や路面の丸い落書きが危うい雰囲気を醸し出しているように感じられます。それを囲む花や蝶、標本のように並んだ黄金虫、さらには上靴などが、シュールさを加速させていくんです。

幻想と現実との境界を思わせる独特な雰囲気が画面を覆い、すうっと沈み行かせるような深遠さを漂わせながら、その意識が沈み行く過程にフラッシュバックのように唐突に、しかも意味、関係性が分からなく、だからこそ無意識的に深い関係性を感じてしまうモチーフが現れ、それらがこの世界の奥へと彷徨わせるんです。

みずたにまやこ12 みずたにまやこ09 みずたにまやこ10 みずたにまやこ11

みずたにまやこ08

吉澤知美さんが描く世界の幻想には、実に大人びた、そして危うい雰囲気が漂っているように感じられます。

渋く、仄かに枯れた風合いを漂わせるセピア調の色彩に染まる画面、形崩れしそうなケーキ、その上に乗る苺の不揃いなリアリティと、クリームは布のかたちへと変化を遂げていくような不思議な感触。そこから抜き出る腕と脚。ぱっと観て気付かないくらいに自然な感触が逆に不自然で、それがこの世界のシュールさを押し上げているように思えます。

よくよく観ていると、横から見ているのか、上から俯瞰しているのか、それすら曖昧で、イメージの混乱がもたらされるんです。

吉澤知美03 吉澤知美01 吉澤知美02

吉澤知美04

おおらかで大胆な空間性も独特の味わいを醸し出しています。

ゆったりとした時間が漂い流れていくような、落ち着いた静けさがその世界に横たわっているような印象です。

吉澤知美07

吉澤知美06

ひとつひとつのモチーフのていねいな表現、そのしっとりとした色調とによる何とも言えない艶かしさにも惹かれます。

それによって、それぞれの関係性にも深みがもたらされ、さまざまなイメージをじっくりと喚起するような感触で、観終わってからの残像感にも深い味わいを感じます。

吉澤知美05

国本泰英 個展

Gallery Fukuda

11/28(金)~12/19(金)日休

大阪府大阪市北区西天満2-6-8 堂ビル1F

10:00~18:30(土:~17:00)

国本泰英081129.jpg

Yasuhide Kuhimoto solo exhibition

Gallery Fukuda

11/28(Fri)-12/19(Fri) closed on Sunday

2-6-8-1F,Nishi-tenma,Kita-ku,Osaka-shi,Osaka-fu

10:00-18:30(Sat:-17:00)

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絶妙な「層」のグラデーションで奏でられる、キャッチーな人物風景。

Gallery Fukudaでの国本泰英さんの個展に行ってきました。

国本さんの作品は、今年のTOKYO WONDER WALLとAzabu Art Salon Tokyoでのグループショー、そしてGEISAI#11で拝見していて、巧みなグラデーションとフラットな色使いによるポップな世界観が印象的で、今回まとめて作品を見られたのが大変嬉しくて。

日々の堅い一場面も国本さんのフィルターとスキルを通過してくると、こんなにも痛快な場面になって現れるんです!

国本泰英004

絶妙な陰影、そして空間性。

距離を置いて眺めるとぼやけたような感じに見えるのが、至近だとくっきりとした色の階層が繰り広げられているのがホントに面白いです。

これまで拝見することがもっとも多かった、お馴染みの水着の子どもたちのシリーズ。まっさらな背景に奥行きを感じるのが痛快です。

国本泰英003 国本泰英002

国本泰英016

多数の人が描かれる作品は、色の塊が繰り広げられ、それが紡ぎ出す緻密な奥行きにじんわりと驚かされます。ぱっと観たときにすぐに想像できる風景のイメージ。実はいくつかの色の重なりでしかないのに、ここまで臨場感がもたらされていることに感嘆させられるんです。

国本泰英014 国本泰英013 国本泰英012

国本泰英011

力士のシリーズも単純に面白い!

国本泰英009 国本泰英010

国本泰英017

四つに組む姿や化粧回しの立体感など、緻密な再現性におおいにそそられる一方、部屋での稽古か土俵上での儀式か、4人の力士が手を挙げている姿は実に滑稽で、この面白みがまた堪らなかったり・・・!

国本泰英024 国本泰英023

国本泰英022

一転して、スキーヤーがモチーフとなった作品も。

国本泰英001

板やストック、ゴーグルなど、シャープなシルエットの再現性に国本さんのスタイルのユニークさが冴えを見せます。

色彩のシンプルさが匿名性を押し出しているような感じがするのも、そのシチュエーションのリアリズムがドライに伝わってくることに貢献しているように感じられます。

国本泰英007 国本泰英006 国本泰英008

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奥の部屋に展示されていた小品群も面白いです。

駆ける男の子のシルエットがずらりと並び、その連続性が構成的な面白さを醸し出しているような印象です。

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国本泰英018

1点だけ、人を描いていない作品も出品され、こちらの方向性も期待が増します。

国本泰英015

グラデーションの表し方、それをしっかりと伝える色面のシャープさ。背景のフラットさも、そのシャープさを加速させています。

そして、空間性と構図的なものがもたらすリズムも実に面白いです。

あらゆる要素に緻密さを感じ、しかもその緻密さは堅苦しくなく、エンターテイメント性に富んだ世界が生み出されています。

もっと大胆な構図やモチーフのチョイスなど、どんな展開がこれから繰り広げられていくか、想像するのも楽しいです!

肥沼義幸「Inland War」

ART TRACE GALLERY

東京都墨田区緑2-13-19 秋山ビル1F

11/28(金)~12/23(火)水木休

12:00~19:00(金:~21:00)

肥沼義幸081128.jpg

Yoshiyuki Koinuma "Inside War"

ART TRACE GALLERY

2-13-19-1F,Midori,Sumida-ku,Tokyo

11/28(Fri)-12/23(Tue) closed on Wednesday and Thursday

11:00-19:00(Friday:-21:00)

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ART TRACE GALLERYでの肥沼義幸さんの個展です。

肥沼さんの作品はGALLERY TERRA TOKYOでの個展で拝見していて、そのときの深い透明感を持つ青で、かつ重厚に画面に乗る絵の具の質感によって力強く描き上げられる幽玄な世界観のインパクトは強烈に残っているのですが、それから約半年と比較的早い間隔で開催された今回の個展では、木炭を用いたモノクロームの作品と、おおらかな空間性が印象的な油彩の作品とによって構成され、肥沼さんのクリエイティビティと表現の奥深さに感じ入った次第です。

まず、肥沼さんの色、といってもいい独特の味わいを持つ青の油彩の小品に出迎えられます。

豊かな青のグラデーション、とそこに絶妙の表情をもたらす赤や黄色が、神々しさを奏でているように感じられます。

肥沼義幸001

ずらりと並ぶ木炭のドローイング群。

肥沼さんが表現する世界のダークサイドを引き出したかのような、重く深い臨場感がそれぞれの作品から溢れているように感じられます。

肥沼義幸004

描かれる人々の目、それが持つ異様なまでの力強さに圧倒されます。

ぼやっとした曖昧な表情、こちらを威嚇するかのような好奇に満ちた視線。どろんとしたような感じやあからさまに剥いた感触など、さまざまな思いをダイレクトに感じさせてくれます。

その強烈さにさらに深みをもたらす仕草やモチーフ群、それらのおどろおどろしいウェットな雰囲気も、木炭という素材が持つ乾いた質感が緩和しているような感じがするのも興味深いです。

肥沼義幸006 肥沼義幸002 肥沼義幸005

肥沼義幸003

油彩の作品は、いっそうの神々しさが伝わってきます。

肥沼義幸007

金色の頭髪、達観したかのような視線。

清らかささえ感じられる美しい表情が、ふわりと浮遊するような空気感と、揺らめくような透明感とを伴って独創的な神々しい世界観を加速させているように感じられます。

肥沼義幸010 肥沼義幸009 肥沼義幸011

肥沼義幸008

それぞれの作品が持つ物語性はバリエーションに富んでいて、そしてなお統一感もしっかりと感じられます。

前回の個展で発表された作品と比較すると作品の中に登場する要素の数による情報量はずいぶんと押さえ込まれていますが、それが、それぞれの作品に登場する人の存在感を際立たせ、もっと内面的な、それも負の感情だけでない、さまざまな思いを伝えているように感じられたのも心に残ります。

この個性的な筆致と独自の世界観、これからどういうふうに広がり、深まっていくか興味深いです。

肥沼義幸012

鈴木雅明展 -Untitled 2008-

BUNKAMURA GALLERY

東京都渋谷区道玄坂2-24-1

11/19(水)~11/26(水)

10:00~19:30

鈴木雅明081119.jpg

Masaaki Suzuki -Untitled 2008-

Bunkamura Gallery

2-24-1,Dogenzaka,Shibuya-ku,Tokyo

11/19(Wed)-11/26(Wed)

10:00-19:30

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より大人びて...。

BUNKAMURA GALLERYでの鈴木雅明さんの個展です。

昨年に続いての同会場での個展でしたが、1年を経て、作風にこそ大きな変化はないものの、その光景から醸し出される雰囲気がずいぶんアダルトな風味を伴って感じられたのが強く印象に残っています。

鈴木雅明014

さらにくっきりと描かれる夜の都市の表情。

建物などのフォルムはていねいに再現され、それが、鈴木さんの作品のもっとも特徴的なポイントである光が空気に滲む様子にさらに繊細で朧げな臨場感をもたらしているように感じられます。

さまざまな色彩で描かれるネオンや照明の光は独特のグラデーションを持ち、その鮮やかな色彩が、未来的な幻想世界を綴っているようにも思えてきます。

鈴木雅明012 鈴木雅明010 鈴木雅明011

鈴木雅明009

より大人びて感じられるのは、「もの」の表情と「ひかり」の表情が緻密に描き分けられていることと、色彩のチョイスの大胆さがいくぶんか押さえられ、それが現実との距離を近づけているような風合いが理由のような気がします。

もっとダイナミックな色彩に酔って表現されていた光の色彩は、かつては闇から幻想へと引き込むようなある種の強引さを秘めていたような印象もあるのですが、今回はもっと自然に、儚げに、幻想の情景へとイメージを広げ、誘ってくれるような感触なんです。

作品によって統一感ある色調のものもあり、それがシンプルにアダルトさを醸し出しています。

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鈴木雅明007

人が登場する作品の、それこそその光景に人がいる、残り香のようなものを直接的に感じる作品が放つ濃密な物語性も大変興味深いですが、その一方で、人が描かれない作品の味わいもまた堪らなかったり。。。

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鈴木雅明005

そこにある、目に入るさまざまなもののかたちが独特の筆致によって滲み、何とも言えない深みが奏でられていて、現実と未来との中間の景色を眺めているかのような不思議な錯覚も静かに、緩やかに心にもたらされます。

人が登場しないからこそ、そこから心に綴られていく物語にもいっそうの自由度が与えられているような感触も嬉しいです。

鈴木雅明001 鈴木雅明002

鈴木雅明013

今回の個展には出品されなかったのですが、ファイルに収められていた画像の中に、鈴木さんの作品としては実験的に、明るい時間帯の作品があり、これが実に新鮮で。

夜の闇から広がっていく色彩の力強さとは異なる世界観があって、その方向性での展開も大変興味深いです。

鈴木雅明003

室井公美子展

GALLERY MoMo Roppongi

東京都港区六本木6-2-6 サンビル第3 2F

12/2(火)~12/20(土)日月祝休

12:00~19:00

室井公美子081202.jpg

Kumiko MUROI exhibition

GALLERY MoMo Roppongi

6-2-6-2F,Roppongi,Minato-ku,Tokyo

12:00-19:00

12/2(Tue)-12/20(Sat) closed on Sunday,Monday and national holiday

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室井公美子展

Gallery惺

東京都武蔵野市御殿山1-2-6 ビューキャニオン吉祥寺御殿山B1F

12/6(土)~12/28(日)火水休

11:00~19:00(最終日:~17:00)

室井公美子081206.jpg

Kumiko MUROI exhibition

Gallery SATORU

1-2-6-B1F,Gotenyama,Musashino-shi,Tokyo

12/6(Sat)-12/28(Sun) closed on Tuesday and Wednesday

11:00-19:00(last day:-17:00)

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伸びやかに広がる創造性。

GALLERY MoMo RoppongiGallery惺で同時開催の室井公美子さんの個展に行ってきました。

まず、六本木のほうから。

こちらには、前回拝見した室井さんの抽象世界のスタイルをベースに、おおらかな広がりと遊び心を感じさせてくれる作品がずらりと並んでいました。

室井公美子001

刷毛と筆を駆使して描き上げられる、ソリッドなダイナミズム。

滲むように、そして層のように重なる色彩のグラデーションが、透明感を紡ぎ出し、幻想的な世界を構築しているように感じられます。

描く痕跡による絵の具の物質感によって、調和と衝突が放たれるように思えるもの興味深いです。

室井公美子009 室井公美子007 室井公美子008

室井公美子006

大胆な絵の具の盛り上がりが画面空間にユニークなアクセントをもたらしている作品も。

痕跡のインパクトも加速し、強烈なダイナミズムをもたらしているようにも思えてきます。抽象の世界に、具体的な要素が入り込むことで、その世界への入り口がもたらされているような印象です。重々しい色彩も軽やかに展開しているように伝わってきます。

室井公美子005 室井公美子003 室井公美子004

室井公美子002

比較的薄塗りの作品もあり、画面の絵の具の盛り上がりの作品とともに実験的な要素を感じ、それらの根本に「迷い」よりも「おおらかさ」が伝わってくるような感触が、何とも心地よく感じられます。

室井公美子011 室井公美子010

室井公美子012

若干の間を置いて吉祥寺へも。

こちらはさらに実験的、というか、試すこと自体への面白さ、いろんなことをやってみたいという想像の広がりがより鮮やかな臨場を伴って感じられる作品が並んでいるように感じます。

これまでの過程を前提とし、ある「安定」に若干の重きを置いた六本木の展示と比較しても、思い切りの良い作風が並んでいるように思えたのも痛快です。

室井公美子101

六本木とは異なる透明感が画面から放たれています。

これまでの作風が霞みかがっていて、そこから光を見いだしたかのような世界が六本木に出品されていた作品群だとしたら、こちらではもっとダイナミックに、騒然として密度の濃い透明、そういう強さを感じるんです。

画面に叩き付けられる色彩の痛快さ、それらの重なりがもたらすスケール感、観ていて何か煽られるような力が伝わってきます。

室井公美子103 室井公美子106

室井公美子104

配色もより思い切りが出てきたように感じられて、そこに、前回の個展で重々しく伝わった「迷い」と折り合いを付けたような感触が感じられたのも大変興味深いです。

縦の画面を横に、逆さにして、画面を垂れる絵の具の痕にさえ、ユーモラスな、コミカルな要素を感じてしまいます。

室井公美子105

総じて「抽象表現」は難しいと思います。

すごく雑な例えで恐縮なのですが、床に置いたキャンバスにペンキが入った缶を倒してそのまま乾かしたら、それだけでおそらく「それっぽい」世界は出来上がってしまうと思うのです。それくらい、客観的な視点で「いいかげん」な表現だと思うんです。

しかしだからこそ、アーティスト自身の、作品とオーディエンスそれぞれに対する「折り合い」が大事になってくると常々感じています。

その「折り合い」「達観」の一端を、今回の室井さんは掴んだのかな、そう感じさせてくれます。

高橋涼子個展 ―REAL WORLD―

studioJ

大阪府大阪市西区新町3-14-8

12/6(土)~12/27(土)日月休

13:00~19:00

高橋涼子081206.jpg

Ryoko Takahashi solo exhibition -REAL WORLD-

studioJ

3-14-8,Shinmachi,Nishi-ku,.Osaka-shi,Osaka-fu

12/6(Sat)-12/27(Sat) closed on Sunday and Monday

13:00-19:00

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妖しく魅了するイントロダクション。。。

高橋涼子18

studioJでの高橋涼子さんの個展です。

冒頭の白いクッションピローに施された黒い「I love you」の3ワード。

これがご自身の頭髪を縫って紡がれた刺繍なのだそう。

頭髪を素材とした作品を制作される高橋さん。

その究極的にフェミニンな感触を放つ素材が用いられた作品は、観る前はもっと妖しく濃密な感じを予想していたのですが、無論そういった感触はありつつも、予想外にユーモラスな面もおおいに伝わってきて、大変興味深く感じられた次第。

高橋涼子17

さまざまなインスタレーション的な作品が最初のコーナーに展示され、それらの風合いを目にして、続いてこのような髪の毛の作品を制作する基となったドローイング作品へ。

こちらは髪の毛は素材としては用いられてはいないのですが、モチーフとして織り込まれています。

高橋涼子03 高橋涼子02

高橋涼子01

白く塗られたゴージャスな額に、黒のドローイングが映えます。

ふわっと滲む部分、そしてすらすらと流れを思わせる部分。さらに緻密に紡がれゆく線が、平面だからこその深みをもたらしているように感じられます。さまざまなイメージが、それこそイメージによって脳内に紡ぎ上げられていて、生々しさが押さえられているからこそ想像が膨らんでいくんです。

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高橋涼子04

キャンドルスタンドに灯る、髪の球体。

相当なインパクトです。髪の毛のつややかさが妖しさを放つ一方で、なんとも滑稽なかたちにも感じられ、面白さと深遠さとがフリギなバランスで迫ってきます。

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天井から吊るされるシャンデリアは圧巻。

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球体の艶やかさ、編み上げられる髪の毛が垂れ、ゴージャスに飾り立てられています。

数珠のような玉の連なりなど、引き寄せられる作り込みも印象的です。

光と黒髪のコントラストが奏でる美しさにも心打たれると同時に、それでもはやりそこにほんのりと漂う「こんなの作っちゃった」的なユーモアも不思議と心にあたたかさをもたらしてくれます。

高橋涼子08

高橋涼子09

黒髪の球体を画面に凝縮した作品になると、僕にはもはやギャグ的に映ります。

この過剰さがかえって面白さを加速させているように感じられるんです。

おそらくもっとストイックに制作された作品かと思うのですが、そのことが反転してくるというか...。無論、作品の精度の説得力は相当なもので、だからこそ、安心して(というのも変で恐縮ですが...)、そこに潜む面白みが立ち上がってくるように感じられるんです。

高橋涼子11

高橋涼子10

髪を細かく刻んで粉末状にし、それを定着させた作品も、紋様の見事さ、映り込む陰影の鮮やかさなど、さまざまな美しさで魅了してきます。

高橋涼子14 高橋涼子13

高橋涼子12

髪の毛のフェミニズムがもっとも強く感じられたのが、アクセサリーの作品。

ただ作品としてだけでなく、実際に身につけるものであるということを考えると、相当に妖しい雰囲気、さらに危うささえも伝わってくるように感じられます。

高橋涼子16

高橋涼子15

空間全体に響き渡る静謐な美しさも強く印象に残ります。全体からは放たれ、深遠さが空間を満たしているような。

髪の毛の漆黒や壁面、床に映る影などが紡ぎ出す3次元的な濃淡の艶やかさも、繊細に伝わってきた次第です。

高橋涼子21

素材のアクロバティックさに収まることなく、しっかりと自身の世界観が構築されていて、そこに潜む可憐さとユーモアとのバランスがとにかく興味深く、例えばもっと閉じた空間でのインスタレーションはどういう雰囲気だろうとか、これからどんな展開が繰り広げられるかも楽しみです。

Kodama Gallery Collection ignore your perspective 6

Kodama Gallery|Kyoto

京都府京都市南区東九条柳下町67-2

12/6(土)~12/27(土)日月祝休

11:00~19:00

児玉京都081206.jpg

Kodama Gallery Collection ignore your perspective 6

Kodama Gallery | Kyoto

67-2,Yanagi-shitamachi,Higashi-kujo,Minami-ku,Kyoto-fu,Kyoto-shi

12/6(Sat)-12/27(Sat) closed on Sunday,Monday and national holiday

11:00-19:00

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空間が持つ壮大なポテンシャルと、それによって引き出されるフレッシュなクリエイション!

児玉画廊が開催する、若手作家を紹介する企画の6回目、京都に居を移して始めて開催される今回のグループショーに行ってきました。

アグレッシブでシャープなダンスビートが響く中、まず、今年東京での個展でプラダンによるインスタレーションを繰り広げた半田真規さんのインスタレーションがお出迎え。

円柱のコンクリートブロックに何やら落書きらしきものが施され、積み上げられています。

半田真規06

今回のグループショーでは参加アーティストの平面展開の作品が中心に展示されていて、半田さんはドローイング的な作品。

4枚の紙に即興的なアイデアやイメージが、独特な空間性を保ちながら描かれています。

それだけを見ると弱々しく薄い線、しかしその朧げな風合いを醸し出す画面はひりひりとしたユーモアとエキゾチシズムがシャープに放たれているような印象を受けます。この続きが見たい、どんな感じに発展していくのか、この絵の雰囲気が平面で膨らみ広がるのか、それともまたアクロバティックな素材を使って3次元に変換されていくのか、ワクワクしてくるんです。

半田真規04 半田真規03 半田真規02 半田真規05

半田真規01

松嶋由香利さんの作品、半田さんの作品から一転して黒い画面が並びます。

整然と連なる6つの正方形の黒、そこに緻密な鉛筆画が繰り広げられています。照明の光を受けて、ダークな輝きを放ちます。

描かれるモチーフも実に興味深く、隙間なく配されるそれぞれの画面は接する部分で直接的な関連はなさそうなのですが、濃密なエキゾチシズムが凝縮されたような世界観は、黒に黒で描かれてなかなか見えにくい中から、気付く瞬間にぐわっと迫り来るような感じで、圧倒される刹那が連続します。ひとつひとつのスケール感と緻密さが見応え充分です。

松嶋由香利02 松嶋由香利04 松嶋由香利05 松嶋由香利06

松嶋由香利01

大阪と東京での個展も印象的だった坂川守さん、東京で発表されたものの延長的な作品が2点並べて出展されています。

とにかくこのケレン味のない鮮やかな色彩感がまず気持ちいい!

そして、ぽわんぽわんとした有機的なモチーフのかわいらしさと鋭いグラデーション、そこに垂れる絵の具の痕跡もそのまま残され、コントロールされる部分とそうでない部分のギャップが、色彩以上のヴィヴィッドネスを構築しているように感じられます。

坂川守03 坂川守02 坂川守04

坂川守01

隣り合うクリエイションのコントラストが激しい並びは続きます、阿波野由紀夫さんのおそらく木炭で描き殴られたような、ダイナミックな作品群。

阿波野由紀夫02 阿波野由紀夫03

阿波野由紀夫01

「描き殴る」と書いてしまいましたけど、それくらいのインパクトが強烈に迫ります。

独特の深みと重厚さ、素材の荒れた感触が観る者の感性を力づくで引き込んでいくかのようです。

しかし、そこに収められる緻密な紋様、パターンには、一転して静謐な知性を感じます。暴力的なダイナミズムと朴訥とした感触が滲ませる説得力、不思議な世界観が満ちています。

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阿波野由紀夫04

分厚いパーテーションの前に垂れ下がる緻密な切り紙のタペストリー、鷹取雅一さんのインスタレーションです。

植物、草の茎や葉をモチーフに描かれたドローイングに沿って切り抜かれた紙、このサイズでやり切られていることで、強烈なインパクトを空間にもたらしています。

鷹取雅一04 鷹取雅一02

鷹取雅一01

ギリギリで繋がっているモチーフ群、至近で眺めてその脆さ、儚さが心にも視覚的にも迫ります。

そして、パーテーションに投影される影も見事の一言です。

鷹取雅一03

安藤みちこさんの壁面のインスタレーションも圧巻です。

無数のドローイングの塊。鉛筆を逆手で握って紙に立て、ガリガリと擦り付けたようなざっくりとしたものから、何やら抽象的な、しかしかたちとして具体的なモチーフなんかもあったりして。

1枚1枚に無数の可能性が潜んでいるような感じがして、こちらも今後の展開が興味深いです。

安藤みちこ02 安藤みちこ05 安藤みちこ04 安藤みちこ03

安藤みちこ01

田中秀和さんのウォールペインティング。

とにかく大阪での個展で発表されたキャンバスの作品群が素晴らしく、先日開催された横浜の住宅展示場でのアートフェアでもふたたびそのアンダーグラウンドな雰囲気を充満させるアバンギャルドな抽象世界に出会えて嬉しく思っていたところなのですが、今回は神戸でのグループショーでも展開されたクリエイションとほぼ同じく、ソリッドな色彩とフォルムを壁面に繰り出し、ダイナミックな抽象空間が構築されています。

矩形と色面とが独特な奥行きを生み出し、鋭角に向かい合う壁面に、複雑な次元性を奏でているような感じが面白いです。

田中秀和003 田中秀和002 田中秀和004

田中秀和001

西光祐輔さん、今回の唯一の写真作品。

おそらく雨粒の水滴だと思うのですが、それによって現れる光る丸が画面に重なり、フューチャリスティックな風合いと透明感を醸し出しているように思えます。

並ぶ画面を伝っていって思い浮かぶ時間性、物語性も興味深いです。

西光祐輔02 西光祐輔03

西光祐輔01

そして、2階にはTorbjorn Rodlandさんの映像が上映されています。

空間に鳴り響くハウスビートのソリッドなグルーヴもここから鳴らされています。

ソリッドなリズムに合わせて、木漏れ日が爽やかな木々の新緑が風に揺れる様子や人の仕草などが繰り返され、視覚的にも強烈なリズムが提示されています。

Torbjorn Rodland 01

個展で拝見しているアーティストもいますが、その方々も含め、これからどういう展開が繰り広げられるか、ソロでの展示もぜひ拝見したくなるクリエイションを堪能できた次第で。

巨大な空間が導き出す可能性、東京と京都のふたつの空間でこれからどんなクリエイティビティが爆発するか、ますます楽しみです!

長谷川冬香展「キラり」

YOKOI FINE ART

東京都港区東麻布1-4-3 木内第二ビル6F

12/13(土)~12/27(土)日祝休

11:00~19:00

長谷川冬香081213.jpg

Fuyuka Hasegawa "Kirari"

YOKOI FINE ART

1-4-3-6F,Higashi-azabu,Minato-ku,Tokyo

12/13(Sat)-12/27(Sat) closed on Sunday and natinoal holiday

11:00-19:00

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乾いた艶かしさ。

YOKOI FINE ARTでの長谷川冬香さんの個展です。

一昨年拝見した個展では、全体を覆う淡いピンクの色調と、ベッドルームやバスルームなどの現実空間を背景に、ていねいなグラデーションで描かれた布団の膨らみや床に雑然と置かれたウィッグが放つ妖しい雰囲気が、シュールな物語性を奏でていたのが強く印象に残っているのですが、今回の個展でまず感じたのが、思いのほかドライな世界だなぁ、と。

長谷川冬香006

モチーフは主にウィッグ、女性の頭髪で、前回の世界観でもっとも大きなインパクトを放っていた要素がピックアップされた構成で、描くモチーフがしぼられただけ、そのモチーフに注がれるエネルギー、コンセントレーションがより増したように感じられます。

色彩もピンクのみではなく、パープルやブルーなども織り込みつつ、しかし全体の淡い感触、ぎりぎりの脆さ、薄く儚い風合いが鮮烈でシャープな印象をもたらしているのは変わらぬ長谷川さんらしいスタイルを思い起こさせます。

しかし、モチーフの本来持ちうるフェミニズム、その妖艶な印象とは裏腹に、実にドライな感触が強く感じられるんです。

長谷川冬香005

1本1本の髪の毛さえも緻密な筆遣いで再現され、その描写の密度に引き込まれます。

そこにさまざまなアクセサリーが施され、さらに絵の具の飛沫が大胆に飛び散って、それらが画面をヴィヴィッドに彩っています。

伸びる毛先の曲線、髪の毛の塊を縫うように複雑な動線を辿るリボン、遊び心に満ちたアクセサリー、さまざまな要素が渾然となり、独特の混沌を導き出しているように感じられます。

そして、この過剰にフェミニズムが強調された情景からは、私小説を読むような好奇心が煽るというより、・・・こんな例えで申し訳ないのですが・・・理科の教科書に載っていたナフタレンの昇華の様子を捉えた写真を見たときに感じた驚き、そちらに近い印象を受けるんです。

長谷川冬香002 長谷川冬香004 長谷川冬香003

長谷川冬香001

緻密な描き込み、無数の飛沫のドット、モチーフの「もの」としての迫力が、これまでの長谷川さんの世界観にシャープな閃光を走らせているような、何とも言えない驚きが伝わってきます。

そして、背景を色彩のみに絞ったことで、構図や遊びの要素もより大胆に展開することができているような感じで、状況のシュールさがよりヴィヴィッドに伝わるような印象も受けます。

こちらの菊をモチーフに加えた作品の刺激は相当なものです。全体の淡い、浮遊感さえ漂う色彩と、どっしりとした重力感とが独特の迫力を醸し出していて、そのもののインパクトだけで充分に魅せられます。

長谷川冬香011 長谷川冬香009 長谷川冬香010

長谷川冬香008

今回の個展では、さらにその先の展開を思わせる作品も数点展示されています。

シュールな情景に、頭髪とさらにもういくつかの人のパーツがモチーフとして加えられることで、さらに深い物語性が放たれているように感じられます。

長谷川冬香012

そして、水彩のドローイングがずらりと並べられた壁面も壮観です。

さまざまなモチーフが描かれ、実験的な感じのものからイメージを構築する過程を思い起こさせるものまでが並べられています。

1点1点の作品としての完成度に感嘆しつつ、同時に実に貴重なドキュメントを覗かせてもらっているような、スリリングな印象も受けるんです。

長谷川冬香013

今回の作品を拝見して、長谷川さんの紡ぎ出す世界の幅広さ、ヴァラエティの豊かさにあらためて気付かされたような気がします。

立体的な世界観からどんな切り口がもたらされるか、今後の展開も実に楽しみです。

長谷川冬香007

塩川彩生「鏡の中の影」

KIDO Press,Inc

東京都江東区清澄1-3-2-6F

11/29(土)~12/27(土)日月祝休

12:00~19:00

塩川彩生081129.jpg

Ayao Shiokawa "Shadow in mirror"

KIDO Press,Inc

1-3-2-6F,Kiyosumi,Koto-ku,Tokyo

11/29(Sat)-12/27(Sat) closed on Sunday,Monday and national holiday

12:00-19:00

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独特のテクスチャーが奏でる曖昧な味わい深さ。

KIDO Press,Incでの塩川彩生さんの個展です。

これまでも塩川さんの作品は拝見していて、木版画特有の朴訥とした風合いが印象深いのですが、今回の個展で発表されてる作品は、木版表現を巧みに織り交ぜながら、そこにドローイングやコラージュ的な要素も加え、その独特な世界観にさらに深みをもたらしいているように感じられます。

塩川彩生002

ひとつの画面にいろんなマチエルが収められています。

木版の彫りが醸し出すくっきりとした白抜けの線、筆による滲み。人影や表情など、それぞれのストロークによって描かれるモチーフは一様に甘いフォルムで、それが曖昧な雰囲気を醸し出しています。

塩川彩生001

毒等の奥行き感が印象的です。

3次元的というよりむしろいくつかの層が重なって紡がれる奥行き、そういう感じです。

それぞれのモチーフがそれぞれの奥行き的な距離感を保ちながら、それぞれの「層」で朴訥と、淡々と、滋味に満ちる風合いを奏で、その滲む雰囲気が表面上で重なることで、なんとも淡くあたたかな深みが奏でられているような。。。

塩川彩生006 塩川彩生004 塩川彩生005

塩川彩生003

おそらくドローイング、まるく切られた紙にほんのりと浮かぶ上がる表情が不思議な雰囲気をもたらす一角も。

塩川彩生008

曖昧なフォルムで紡がれる人々のシルエットや表情が、心の中のやわらかくてナイーブな部分を描き洗わしたような世界を思い浮かべさせてくれます。

いわゆる技巧的な意味ではない、心に浮かぶ伝えたい想いをそのかたちのまま、プリミティブなままに伝えることにおける「巧みさ」がじんわりと伝わってきます。技巧で詰め切れないぶん、もどかしさも溢れていていて、それもまた独特な味わいを紡いでいます。こうでないと、この手法でないと表現できない世界観だと思うんです。

支持体の和紙の質感や、それを穏やかに染める絵の具、顔料のほんのりとした風合い。微妙なグラデーションで綴られる儚げな世界に、やさしい気持ちが心に満ち、広がっていくんです。

塩川彩生007

debut! ver.HIROKO NEMOTO 根本寛子個展

谷門美術

東京都港区北青山3-3-7 第一青山ビル1F

12/5(金)~12/26(金)日月休

13:00~19:00

根本寛子081205.jpg

debut! ver.HIROKO NEMOTO

TANIKADO ARTS

3-3-7-1F,Kita-aoyama,Minato-ku,Tokyo

12/5(Fri)12/26-(Sat) closed on Sunday and Monday

13:00-19:00

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シュールさが満ちる、大人びたファンタジー。

谷門美術での根本寛子さんの個展です。

小さな空間にインスタレーションされたさまざまなサイズの作品。そのひとつひとつに、ゴシック的とも言えるほどに重厚な、そして鋭い危うさに満ちた世界が繰り広げられています。

根本寛子06

キャンバスに描かれる額が醸し出す不思議な距離感。描かれる額に治められる絵としての世界、そして額の絵の中のの世界と、2層で紡がれる

パラレルストーリーが分厚い幻想性を組み上げているように感じられます。

そのふたつの幻想はそれぞれが独特な雰囲気で、さらに深い関係性をも醸し出していて、イマジネーションを刺激してきます。

ひとつひとつのモチーフのていねいな描写がその世界観に説得力をもたらし、額の内側から現れる指のグロテスクさや下方から伸びる手の先に灯るマッチの炎が奏でる妖し過ぎる雰囲気、絵の中で描かれる舟の上に淡々と漂う仄悲しさ...いろんなイメージが混ざり合って、しかしすべての要素は違和感なく関係し合い、独創的な物語を奏でているように感じられます。

根本寛子03 根本寛子04 根本寛子05 根本寛子02

根本寛子01

ダークな色調の中にサディスティックな色彩がケレン味なく投入される作品のダイレクトなインパクトも鮮烈です。

深緑の壁の部屋。そこに掛けられる2点の額画のなかの世界が静かに放つ鋭い危うさ。右側の女性が持つピストルと、その視線の冷徹さは、画面のサイズからしてもそれほどの大きさではないのにも関わらず、見逃すことの出来ない凄まじいアクセントをもたらしています。

そしてこのひんやりとした静謐の中に爆発的な動きのイメージをもたらすのが、やはりベッドの上の雄ライオンの頭部。緻密な筆致で描き込まれるたてがみと怒りに満ちた鋭い視線、吠える口の中に光る牙が尋常でない迫力を放ち、さらにその首の周りに渦巻く炎にも飛び散る血にも連想される過剰に鮮やかな赤が全体の静けさとヴィヴィッドなギャップを繰り出していて、力強く観る者の意識を引き込んでいきます。

根本寛子11 根本寛子09 根本寛子10

根本寛子08

天井近くに展示された作品が空間にもたらすアクセントも、大人びたユーモアを放っています。

この位置から何を見つめ、見下ろしているのか、想像も膨らみます。

根本寛子12

相当にサディスティックでアバンギャルドな要素が溢れていて、それでも全体を覆うファンタジックな風合いが印象的です。

すべての描写におけるていねいさ、それが醸し出す地に足のついた説得力。ほどよいユーモアがそこかしこに潜まされているのも、根本さんが繰り出す世界に独特な深みをもたらし、現代アートの面白さとしての「毒」を繊細な感性で生み出しているように思えます。

見応えのある作品群、深い刺激をもたらすストーリー性が印象に残ります。

根本寛子07

福島沙由美展

Gallery Q

東京都中央区銀座1-14-12 楠本第17ビル3F

12/15(月)~ 12/26(金)日休

11:00~19:00(最終日:~17:00)

福島沙由美081215.jpg

Sayumi Fukushima exhibition

Gallery Q

東京都中央区銀座1-14-12-3F,Ginza,Chuo-ku,Tokyo

12/15(Mon)-12/26(Fri) closed on Sunday

11:30-19:00(last day:-17:00)

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透明感と歪みがもたらす、妖しく有機的な世界観。

Gallery Qでの福島沙由美さんの個展です。

清らかさを奏でる美しい色彩でていねいに紡がれる情景。瑞々しさと妖しげな風合いを醸し出しながら、独特な雰囲気を生み出しています。

福島沙由美01

画面に大きき描き出される水滴を思い起こさせる大きな球体、そしてその水滴に映り込む景色の緻密さとのコントラストが、ここに流れる時間のイメージに深みをもたらしているように感じられます。

青の濃淡導き出す深遠さと爽やかな静謐感。そこに存在する光の鋭い表情もていねいに画面に再現され、さまざまなスピードが子の画面の世界のなかに走り、横切っていくかのようなイメージも沸き起こってきます。ここに流れる物語の、言葉に表現できない抽象性がとにかく格好良く感じられるんです。

福島沙由美05 福島沙由美04 福島沙由美03

福島沙由美02

それぞれの作品が「何色の作品」と表現でき得るほどに、ひとつひとつの作品の色彩的な統一感があるのも印象的です。

青の作品の瑞々しさも素晴らしい一方、赤い作品は、そこに暖色が潜在的に持つ温度感により、また独特の印象をもたらしてくれます。

水滴の中に映り込む情景の歪みがもたらす妖しさ、その水滴の表面の光の屈折が放つ危うさ。それら全体を染め上げる赤は、穏やかな温かみとともに、なにか激しい情動の前触れを予兆させるエネルギーを秘めているような感触も脳裏に浮かんできます。

福島沙由美09 福島沙由美10 福島沙由美11

福島沙由美08

今回展示されている作品に一貫して感じる透明感は、それぞれの色彩の感触を伴ってバラエティに富んだ雰囲気を醸し出しつつ、空間全体にある種の爽やかな風合いをもたらし、その心地よさで満たされているように感じられます。

歪みや屈折が奏でる妖しさ、描くイメージに対する再現性の緻密さ、それらが絶妙のバランスでひとつの世界を奏で、水滴の儚げな風合いと、儚いからこそ放たれる、その世界の強さが深遠さを醸し出しているような気がするんです。

福島沙由美06

福島沙由美12

大作から小品まで、さまざまなサイズの作品が並び、それぞれが独特な瑞々しさをたたえる透明感と有機的な妖しさを放っています。

宇宙を連想させるおおらかさと、細胞や分子のレベルのミニマムさ、ふたつの縮尺感の共存も、豊かな奥深さをもたらしています。

色彩の鮮やかさや丁寧な筆致、そして描かれる情景の美しさだけでも充分に見応えがあり、そこから奏でられる雰囲気がさまざまなイメージを惹起させてくれます。

この不思議な世界から醸し出されるゆったりとした、そして複雑な時間の流れに心を委ね、じっくりと味わいたいクリエイションです。

福島沙由美07

宮澤男爵・古林希望 消息/coming and going

東京画廊

東京都中央区銀座8-10-5-7F

12/3(水)~ 12/24(水)日月祝休

11:00~19:00(土:~17:00)

宮澤・古林081203.jpg

Danshaku MIYAZAWA/Nozomi KOBAYASHI coming and going

Tokyo Gallery

8-10-5-7F,Ginza,Chuo-ku,Tokyo

12/3(Wed)-12/24(Sat) closed on Sunday,Monday and national holiday

11:00-19:00(Sat:-17:00)

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二人のフレッシュなアーティストがフィーチャーされた展覧会です。

これがホントに面白い!

古林希望さんの鉛筆の作品、ふわふわと浮遊するような繊細な模様が描かれます。

まるで水墨の滲みのような精妙なグラデーション。そのすべてが実に細やかな鉛筆のストロークによって紡がれていて、思わず身を乗り出して見入ってしまいます。

そしてひとつの丸い「滲み」が連なっておおらかなコスモスを画面に描き出します。ミニマムな世界観と豊かなスケール感、どちらへもイメー時が膨らんでいく、ユニークな情景が綴られています。

古林希望07 古林希望06 古林希望05 古林希望04

古林希望03

額に収められた作品も、豊かな味わいは変わることなく。

全体の構図での、余白とモチーフとの関係性もそのひとつひとつが楽しくて、いっそうの広がりを感じさせてくれます。

古林希望01 古林希望02 古林希望20

古林希望19

今回の展覧会で面白いのが、テーブルが設置され、そこにずらりと作品が並べられているんです。

水平に置かれた作品を、上から俯瞰するかたちで眺めるのが実に新鮮で。

古林希望11

古林さんの鉛筆の作品のユニークなところは、そのモチーフの繊細さもさることながら、支持体として用いている紙もその味わいを高めているところのように思えます。

ふわふわとした、スエードの生地を連想させる表面加工がなされた紙、この微妙な質感が、滲みのような風合いに臨場感をもたらしています。

古林希望10

古林希望09

そういう支持体なのでよくよく眺めると、細かな糸くずが付着しやすいのですが、敢えてそれすら鉛筆で描いていたりする遊び心も痛快です。

さすがにそれは写真には収めることができず歯痒いですが、至近で眺めたときに気付くユーモアが、古林さんが紡ぎ出す世界にさまざまな方向への深みをもたらしているような気がします。

古林希望13

古林希望12

奥の一角に設置されたテーブルには、咲く桜の仄かな風合いを思い起こさせる繊細なピンクが目にやさしい、心地よい彩りも施された小品が散らばっています。

古林希望14

実験的なアプローチながら、鉛筆画のふくよかな風合いと、ふわりと染める艶やかで儚げな色彩とが重なることで、実に味わい深い、ついつち目尻が下がるような愛おしい世界が広がっています。

さらに実に緻密な白の顔料の盛り上がりも作品によっては描き加えられていて、このサイズながらさまざまな質感が相まって、いつまでも眺めていたい世界が紡ぎ出されています。

古林希望17 古林希望15 古林希望18

古林希望16

宮澤男爵さんの作品は、消え入りそうなストロークによって紡がれる人物像が描かれ、その儚げな世界観に心が引き込まれていきます。

ひとつの画面にひとつの色彩、中には鉛筆の作品もあったりとさまざまな素材が使用されていますが、それぞれに味わいがあって、バリエーションの豊かさと統一感とが同時に感じられる個性です。

宮澤男爵11 宮澤男爵10

宮澤男爵12

宮澤さんの作品も、一部テーブルに並べられています。

まるでそこにあるフォルムを手さぐりで探り出していくような過程を思い起こさせるほどに、画面に漂う線は脆く儚げな風合いで。

しかし、目などは強く引き出され、余白からギリギリに浮かび上がっている全体のフォルムに強烈なアクセントとなって観る者に迫ります。

宮澤男爵02

宮澤男爵03

そのギリギリな感触は、鉛筆の作品になるとさらに繊細さを加速させます。

線の細さ、一度のストロークで掬い取れるかたちが筆と比べて少ないこともあり、吹けば飛んで消えてしまいそうな微妙さが逆に強さとなっているように思えます。

宮澤男爵06 宮澤男爵05

宮澤男爵04

シミのような丸で綴られる作品も。

かたちの連続が奏でる繊細なリズムも印象的です。

それぞれに無垢な風合いが紡ぎ出されているのも印象的です。

宮澤男爵09 宮澤男爵08

宮澤男爵07

それぞれ異なる風合いの個性ながら、お互いの世界観を引き立たせています。

漂うような線の緻密さ、繊細さが心を打ち、掴まれるんです。

これからもじっくりと接していきたいクリエイションです。

《12/15》

橋本遥展「イベントホライズン」

和田画廊

東京都中央区八重洲2-9-8 近和ビル302

12/11(木)~12/20(土)

13:00~19:00(最終日:~17:00)

橋本遥081211.jpg

驚くほどに再現性の高い漆芸作品。

その美しさは強く心に響きます。

色香を鮮烈に放つ女性の肢体のしなやかさ、奥深い表情。4点の出品ながら、充分な見応えで。

千田哲也 個展

GALLERY b.TOKYO

東京都中央区京橋3-5-4 第1吉井ビルB1

12/15(月)~ 12/20(土)

11:00~19:00(金:~21:00、最終日:~17:00)

千田哲也081215.jpg

見応えのあるアバンギャルドな世界が繰り出されます。

千田哲也01

モノクロームの作品、こちらは余白とのコントラストもユニークで、よりグラフィティ的な感触、インスピレーションに対してそれをどんどん投入していくような感覚が痛快です。

千田哲也09

千田哲也10

背景の黒の深さがいっそうのダークさを醸し出している作品。

シュールなシチュエーションが、さらに強力な世界観を導き出しているように感じられます。

千田哲也07 千田哲也06 千田哲也08

千田哲也05

そして、荒れる背景の作品がとにかくかっこいいんです。

ダウンタウンの路地の壁面の質感にも通ずる剥落を起こしたような凹凸感。それをバックに描かれる人物、頭部の仮面の形状が放つダークネス、なのに仕草の日常的な感触、それらのギャップがハードボイルドな雰囲気を立ちのぼらせて言うように感じられます。

千田哲也02 千田哲也03

千田哲也04

もっと大きな画面で、複雑なストーリー性も持つ作品も観てみたいです。

福島沙由美展

Gallery Q

東京都中央区銀座1-14-12 楠本第17ビル3F

12/15(月)~ 12/26(金)日休

11:00~19:00(最終日:~17:00)

福島沙由美081215.jpg

独特の透明感に引き込まれます。

緻密に表現される艶やかさ、鮮やかな色彩が醸し出すフレッシュな感触など、さまざまな要素が相まって、虚像と現実とのギリギリの世界が描き上げられているような印象です。

《12/17》

Artistic Christmas vol.2

新宿高島屋10階美術画廊

東京都渋谷区千駄ヶ谷5-24-2

12/17(水)~12/23(火)

10:00~20:00(土:~20:30、最終日:~16:00)

ArtisticChristmas081217.jpg

15名の若手・中堅のアーティストのクリスマスをテーマにした作品が集められた展覧会、既知、未知のアーティストがたくさんいて、楽しい構成です。

まず印象的なのが、ウィンドウに飾られている林茂樹さんのセラミックの作品。

これがセラミック!という驚きに溢れます。それほどの精度!

ひとつの作品にたくさんの部品が焼き上げられ、それを組み上げて制作される、宇宙服を纏う赤ちゃん。

つややかな表面の仕上がりの美しさも印象的です。もっといろいろ観てみたい!

林茂樹03

林茂樹01

祝迫義郎さんの作品も相変わらずのユーモアが楽しいです。

モチーフのデフォルメの大胆さと、作り込まれるところへの徹底振り。重厚感とコミカルさとが共存する感じが痛快です。

祝迫義郎202

祝迫義郎203

田嶋徹さんの水彩画。この精度への驚きも相当なもので。

描かれるモチーフの「かたち」を描くのではなく、そこにある陰影、光の表情をていねいに引き上げ、画面に緻密に紡いでいったかのような感触。余白とのバランスも、作品の深みをより大きなものへと押し上げているように感じられます。

田嶋徹02

田嶋徹01

《12/18》

伊藤一洋 個展「The baby can dance,phantom cry」

hpgrp GALLERY 東京

東京都渋谷区神宮前5-2-11 H.P.DECO 3F

11/26(水)~1/5(月)

11:00~20:00

伊藤一洋081126.jpg

沈み込むような、深い揺らめきに満ちる空間。

伊藤さんのブロンズの彫刻が、木調の床と白の壁面に映え、豊かな物語性を淡々と奏でています。

じっくりと体感したい空間です。

《12/20》

いしばしゆうこ展 きららの丘

Azabu Art Salon Tokyo

東京都港区麻布十番1-5-10

12/19(金)~12/28(日)

12:00~19:00

いしばしゆうこ081219.jpg

湿原を捉えた映像をコラージュし、ステンドグラス風に仕上げた映像作品。

緩やかに変化する情景と、その部分のなかでの風のそよぎが、その情景に不思議な風合いをもたらしているように感じられます。

橋本舞 metal casting展 ~undercurtent~

Azabu Art Salon Tokyo

東京都港区麻布十番1-5-10

12/19(金)~12/28(日)

12:00~19:00

橋本瞳081219.jpg

蓮の葉を模したような作品が特に印象に残ります。

一見すると木彫、と思ってしまうような独特な味わいを醸し出す風合い、脆さと強さとが絶妙なバランスで存在する繊細なフォルムに見入ってしまいます。

Peter McDonald New Paintings and Prints

GALLERY SIDE2

東京都港区東麻布2-6-5

12/13(土)~1/24(土)日月祝・12/25~1/5休

11:00~19:00

Peter McDonald 081213.jpg

面白い!

鮮やかでキャッチーな色彩感、空間性や色彩のコントラストなど、随所に実験的な要素も盛り込みつつ、徹底したエンターテイメント性にも満ちているように感じられます。

大胆なアプローチからも自信が溢れているように思えて痛快、気持ちのいいクリエイションです。

長谷川冬香展「キラり」

YOKOI FINE ART

東京都港区東麻布1-4-3 木内第二ビル6F

12/13(土)~12/27(土)日祝休

11:00~19:00

長谷川冬香081213.jpg

vision'sで拝見した個展でのあのフェミミズムから変化し、ずいぶんドライな印象を受けたことに驚かされました。しかし変わらぬ色彩の儚げな魅力は相変わらずで、そこにさらに迷いのなさにも通ずる強さも加わったような感じが印象的です。緻密な髪の毛の表現、細かな色彩の飛沫が醸し出す妖しさ、さまざまな要素が独特な世界を創り出しています。

山本彩展 ―憧憬・ドローイング―

INAXギャラリー

東京都中央区京橋3-6-18 INAX:GINZA 2F

12/1(月)~12/25(木)日祝休

10:00~18:00

山本彩081201.jpg

透明な壁面やパネルに施される、ジェルのようなものによる繊細なペインティング。

透明な色が重なって、微睡むような不思議な風合いを奏でます。

今回は色のついたインスタレーションで、ぜひ単色の、そして黒の展開も観てみたいです。

束芋「ハウス」

ギャラリー小柳

東京都中央区銀座1-7-5 小柳ビル8階

12/20(土)~2/14(土)日月祝・12/28~1/7休

11:00~19:00

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重厚な空間に展示される、ゴージャスに額装された原画群、そして映像作品の強烈な展開。

いつもより大人びた、そしていつもよりファンシー、しかし相変わらずのグロテスクさもしっかりと懐に忍ばされ、束芋さんの世界が炸裂しています。

小沢さかえ個展「宇宙の色彩学」

mori yu gallery TOKYO

東京都新宿区西五軒町3-7 ミナト第3ビル4F

12/20(土)~1/31(土)日月祝・12/28~1/6休

12:00~19:00

小沢さかえ081220.jpg

この色彩に囲まれることが嬉しいです。

独特な色使い、不思議な空気感が満ち、現実的で幻想的な世界が壁いっぱいに飾られた作品から放たれています。

降る雪に馳せるわくわくとした感覚にも似た、何とも言えない想いが溢れてきます。

吉岡千尋/和田典子

Yuka Sasahara Gallery

東京都新宿区西五軒町3-7 ミナト第3ビル4F

12/20(土)~1/31(土)日月祝休

11:00~19:00

吉岡・和田081220.jpg

ふたりのフレッシュな個性がパッケージされています。

吉岡千尋さん、寒冷紗に白亜地を重ね、本来見えない下地の要素を前面に押し出した作品の独特な深み、ペインティングの曖昧と具象のコントラストの不思議さなど、いろんなイメージが浮かんできます。

和田典子さんは、今年の秋に名古屋でのグループショーで拝見したペインティングの世界がひき続いて展開されています。カラフルで、独特の渋さを伴う世界。緩やかな時間が流れるような感触が、ゆったりと不思議な想いを導き出してくれます。

《12/21》

琴恵「落月 -弐-」

The Artcomplex Center of Tokyo ACT2

東京都新宿区大京町12-9

12/16(火)~12/21(日)

11:00~20:00(最終日:~18:00)

切り絵とペンによる線画の展開が面白いです!

琴恵04

1本1本の線はほぼ交わることなくくるりと舞い、おおらかで緻密に鳥や鯉などのフォルムを描き出します。

密度で生み出す模様は実にダイナミックです。

琴恵03 琴恵02

琴恵01

12の季節を円環で構成した作品は圧巻で、いつまでも眺めていられるほどに興味がそそられます。

黒地に映える金色の線。大きく施される切り絵は、ひとつの円を描き出し、この世界にひとつのつながりをもたらしています。ひとつひとつの描かれる鳥の姿もじっくりと観れば観るほどに、その見事さに感嘆させられます。

琴恵07 琴恵06 琴恵09

琴恵05

着物に描かれる孔雀も艶やかです。

ぜひ大きな作品、もっと複雑な構成の展開も観てみたいです。

琴恵10

Mix Up!! KOSHIKI ART PROJECT 相川啓太 天野亨彦 大久保具視 狩野仁美 小西美紀子 ハラミコ 平嶺林太郎

TURNER GALLERY 21

東京都豊島区南長崎6-1-3-3F

12/7(日)~ 12/21(日)

13:00~19:00

KOSHIKI ART PROJECTに参加したアーティストから7名がピックアップされたグループショーです。

さまざまなクリエイションが集められ、そのバリエーションの多さがまず嬉しい!

magical,ARTROOMでの個展に出品された立体を壊したインスタレーションが強烈なインパクトを誘う天野亨彦さん、虚空に浮かぶ透明のキューブと映像で不思議なシチュエーションを構築する狩野仁美さん、海岸に打ち上げられたロープの破片を紡いで深い時間性を提示するハラミコさん、エンブレムを象った映像の中にさまざまな映像を折り重ねて来模様なコントラストを生み出す平嶺林太郎さん、画面に大胆な立体性を施してアグレッシブに平面世界を展開する大久保具視さんほか、それぞれの個性が思いっきり発揮されていたのも嬉しく感じられた次第です。

今回参加されているアーティストはもちろん皆さんお若くて、だからこそそれぞれの作品に迷いや甘さも感じられましたが、それでもこうやって表に出てくる、しっかりと自身のクリエイションを発表する、世に問うてきていることへの敬意も心に浮かびます。ここで提示されたクリエイションの伸びしろに潜む大きな可能性が、これからどんな風に現れるかホントに楽しみです!

ハラミコ01 狩野仁美001 平嶺林太郎01

小西美紀子01 天野亨彦01 相川啓太01

大久保具視01

《12/12》

コンテンポラリーアートフェア ~シブヤスタイル~

シブヤ西武B館8階 美術画廊

東京都渋谷区宇田川町21-1

12/9(火)~ 12/21(日)

10:00~21:00

シブヤスタイル081209.jpg

40名以上の若手アーティストがフィーチャーされた、見応え充分の展覧会です。

神田サオリさんの作品。その妖婉さが前面に押し出されていて、その魅力にやさしく引き込まれます。

神田サオリ405

緻密な線は画面を舞い踊り、天真爛漫な世界を描き出しているような印象を覚えます。

咲く花の花弁の仄かで繊細な感触、同時に力強さも伝わり、その中に艶やかな仕草の女性達の群れが独創的な世界を豊かな奥行きとともに奏でています。

神田サオリ401 神田サオリ402 神田サオリ403

神田サオリ404

太湯雅晴さんの作品、圧巻です!

分厚いパネルに隙間なく貼られる金箔のゴージャス感、そこにプリントされる自画像の緻密さ。尋常でない説得力が力強く滲み出ているように感じられます。

太湯雅晴102 太湯雅晴103

太湯雅晴101

山口英紀さんは1点だけ小品を出展。

今回は紙本で、相変わらすの繊細な筆致で渋谷の風景が描かれ、たったこれだけの大きさでも充分にじっくりと魅入ってしまいます。そこに秘められたさまざまなアクセントにも説得力がもたらされているように感じられるんです。

山口英紀301

名古屋剛志展 ―変遷―

アートガイア・ミュージアム東京

東京都品川区上大崎3-1-4 RE-KONW目黒4F

12/10(水)~12/23(火)火休(12/23開廊)

11:00~19:00

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もうずいぶんと長きに渡って拝見している、名古屋剛志さん。

今回の個展では、これまで発表されてきたエポックな作品が中心に出品されていて、それらを一堂に拝見し、感慨深いものも心によぎります。

GEISAI#11のブースに出品されたこれからの展開を思わせるユニークな作風へと連なる世界は見応えが合って、その一方で日本画家としての繊細な仕事にあらためて触れられるのも貴重だなぁ、と。

これからの展開がいっそう楽しみに感じられます!

[My Heart And The Real World]星野武彦

magical,ARTROOM

東京都渋谷区恵比寿1-18-4 NADiff A/P/A/R/T 3F

12/12(金)~1/18(日)12/29~1/4休

12:00~20:00

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THE ECHOでもその浮遊するような色彩感が心地よい世界を紡ぎ出していた星野武彦さんの個展です。

やわらかな色彩で描かれる、爽やかなメロウネス。時折強いかたちを織り込みながら、繊細な空間がもたらされているように感じます。今回も心地よいです。

[HEART STATION]竹内翔

magical,ARTROOM

東京都渋谷区恵比寿1-18-4 NADiff A/P/A/R/T 3F

12/12(金)~1/18(日)12/29~1/4休

12:00~20:00

竹内翔081212.jpg

大胆な色調で繰り広げられるポップな世界観と、そこに潜む孤独さやほの淋しい感触。

大人の落ち着きと、子どもらしい弱さとが共存しているような繊細な雰囲気が、独特な筆致で紡がれています。

Girl's Zone 04 苅谷昌江 井上恵子

ART JAM CONTEMPORARY

東京都渋谷区恵比寿1-18-4 NADiff A/P/A/R/T 2F

12/12(金)~1/18(日)月(祝日を除く)、12/29~1/5、1/13休

12:00~20:00

二人の女性アーティストがフィーチャーされたお馴染みの企画、今回もユニークな個性がパッケージされています。

複雑な展開を加速させる井上恵子さんの作品群、さまざまな筆致を繰り出して豊かな世界を奏でる苅谷昌江さん、この二人のコントラストも楽しいです。

SELECTED POINT OF VIEW 08

ギャラリーPOINT

東京都渋谷区恵比寿西1-4-7

12/12(金)~12/28(日)

12:00~20:00

ギャラリーPOINTにゆかりの深いアーティストの作品がパッケージされ、見応え充分!

コンテンポラリーアートのど真ん中からカルチャー方面へと広がりを見せる感触、ヴィヴィッドな個性が詰め込まれていて、さまざまな発見が強烈なインパクトとともに現れています。

《12/13》

国本泰英 個展

Gallery Fukuda

11/28(金)~12/19(金)日休

大阪府大阪市北区西天満2-6-8 堂ビル1F

10:00~18:30(土:~17:00)

国本泰英081129.jpg

Azabu Art Salon TokyoでのグループショーやGEISAIなどで拝見し、印象に残っている国本泰英さんの個展。

精緻な階調によるグラデーションで描かれるさまざまな人々のシルエット。これまでよく拝見してきた水泳着の子供たちをモチーフにした作品から、スキーヤーや力士を描いたものなども登場、ベージュ系の一色で施される下地の背景にさまざまな奥行きをもたらしています。

添野郁「白昼夢」

帝塚山画廊

大阪府大阪市住吉区帝塚山東1-3-34 PLOTビル1・2F

11/28(金)~12/20(土)日月休

11:00~19:00

添野郁081128.jpg

直前に伺ったGallery Fukudaに展示されていた作品も素晴らしくて、そして何よりサイトに掲載されていた作品画像にそそられて、路面電車に揺られて行ってきました。

しかし・・・

「誠に申し訳ございませんが

 都合により本日お休み頂きます」

orz...

ガラス張りの入り口の扉からなんとか中の様子は観られたのですが、近くで拝見したかった...。

しかし、モノトーンで緻密に組み上げられる風景と、余白との大胆なバランス感、そして同じサイズの画面をずらりと並べ、時間性や空間性にも厚みを持たせた構成など、次の機会にはぜひしっかりと拝見したいと思わせてくれるクリエイションです。

高橋涼子個展 ―REAL WORLD―

studioJ

大阪府大阪市西区新町3-14-8

12/6(土)~12/27(土)日月休

13:00~19:00

高橋涼子081206.jpg

本物の人の髪の毛を用いた作品がずらりと並びます。

拝見する前はもっと妖しい雰囲気、強烈なフェミニズムが空間に充満しているような予想をしていたのですが、もちろんそういう妖婉さは持ちつつも、その一方で予想外にもユーモラスな感触が伝わってきて、大変興味深く感じた次第です。

小橋陽介

Gallery Den

大阪府大阪市西区京町堀1-13-2 藤原ビル5F

12/1(月)~12/20(土)日休

12:00~19:00(土:~18:00)

小橋陽介081208.jpg

今度は大阪!(≧∇≦)ノ゛

両国の個展のダイナミックなスケールによるインパクトも覚めやらぬ間に開催された小橋陽介さんの個展、やっぱり面白い!

両国ではあの新しい空間のおおらかさに呼応したような、大きな自画像の展開が印象深いですが、こちらでは一つの画面に自画像を無数に登場させた強烈なユーモアに満ちた作品が発表、とにかく楽しいんです!

小橋陽介505 小橋陽介503 小橋陽介506 小橋陽介504

小橋陽介501

相変わらずの思い切りの良い鮮やかな色彩感、そこに繰り出される無数の自画像。

遊び心に満ちた、もとい遊び心しかないんじゃないか、と思ってしまうほどに痛快な世界が展開されています。

小橋陽介509 小橋陽介512 小橋陽介510 小橋陽介511

小橋陽介508

ポジティブな雰囲気に溢れ、それが空間を満たします。

一気にアがる感覚、膨らむ高揚感。叫び出したくなるようなおおらかさがとにかく気持ちいいです。

小橋陽介514 小橋陽介515 小橋陽介507

小橋陽介513

クロージング 松井沙都子

58 Gallery Den

大阪府大阪市西区京町堀1-13-2 藤原ビル5F

12/1(月)~12/20(土)日休

12:00~19:00(土:~18:00)

松井沙都子081201.jpg

京都の石田大成社での展示も印象的だった松井沙都子さん、今回はペインティングが中心の展覧会。

複雑にうねり、交錯するさまざまな女性の手、その豊かな表情。あっさりとしたシンプルな線で描かれ、淡い風合いを繊細に漂わせながら、軽やかさと妖しさが混在する不思議な世界が綴られています。

松井沙都子02 松井沙都子03 松井沙都子04

松井沙都子01

パネル以外の作品も。

線の面白さがシンプルに提示され、さらに実験的な要素も感じられます。

松井沙都子09

松井沙都子07

そこに描かれている人の姿や人数など、辿れない感じが実に不思議な印象をもたらします。

軽やかなフェミニズムを奏でながら、独特な切り口で紡がれる物語性。始まりも終わりも曖昧なまま、ただ何とも言えない印象を残していくような独特な味わいです。

松井沙都子06 松井沙都子08

松井沙都子05

矢部奈桜子 新作個展

GALLERY ZERO

大阪府大阪市西区京町堀1-17-8-4F

12/8(月)~12/27(土)日祝休

12:00~19:00(土:~17:00)

矢部奈桜子081208.jpg

先に開催されたグループ展でも印象に残っている矢部奈桜子さん。今回は個展で、この日に伺った時点では大作と小品の2点の出品ながら、見応えは充分で、さらに増す密度が観るものの意識を引き込みます。

まず大作から。樹木の表皮をモチーフに描かれたという作品なのですが、教えていただかないと気付かないほどに抽象性が全面に押し出されているような印象を受けます。しかしその微妙な凹凸感がしっかりと描き上げられ、さらに微妙な光の表情を輝く色彩の無数のうねりによってていねいに、そして大胆に紡ぎ上げて構築される世界は独特の雰囲気に満ちていて、新鮮な感動を呼び起こしてくれます。

矢部奈桜子003 矢部奈桜子002 矢部奈桜子004 矢部奈桜子005

矢部奈桜子001

小品も豊かな魅力に満ちています。

有機的なモチーフを取り上げていながら、実にフューチャリスティックな混沌がシャープに描き上げられているのが印象的です。

矢部奈桜子006

矢部奈桜子007

Kodama Gallery Collection "ignore your perspective 6"

Kodama Gallery|Kyoto

京都府京都市南区東九条柳下町67-2

12/6(土)~12/27(土)日月祝休

11:00~19:00

児玉京都081206.jpg

ワクワクが止まらない!

留まらない想像性を受け止めるこの新しい空間で、ビビッドな個性がダイナミックに発揮され、そのスケール感に圧倒的されるのが痛快です。

無尽蔵に輩出される豊かなクリリティビティ、否が応でも高揚させられるのです。

桑原正彦展「窓」

TOMIO KOYAMA GALLERY/KYOTO

京都府京都市下京区西側町483(西洞院通六条下ル)

11/20(木)~12/27(土)日月祝休

12:00~19:00

桑原正彦081120.jpg

淡い色で綴られるファンタジックな世界。ふわふわと浮遊感を漂わせる曖昧な筆使いが、繊細なメロウネスを生み出しているように感じられます。

新しいスペースの明るく爽やかな雰囲気に合い、清々しい風合いがより心地よく伝わってきます。

法貴信也展

TAKA ISHII GALLERY KYOTO

京都府京都市下京区西側町483(西洞院通六条下ル)

11/20(木)~12/27(土)日月祝休

12:00~19:00

法貴信也081120.jpg

円形や縦長、横長の画面に舞い、おおらかな弧や鋭角のヘアピンカーブを展開する線の世界。無機的と有機的とを行き交い、シャープなダイナミズムと奥行きが生み出されています。

前田吉彦個展「セツとマツ。」

mori yu gallery kyoto

京都府京都市左京区聖護院蓮華蔵町4-19

12/13(土)~2/1(日)月火祝・12/28~1/6休

12:00~19:00

前田吉彦081213.jpg

東京のスペースでのグループ展で拝見し、提示される世界観の強烈なインパクトが強く印象に残っている前田吉彦さんの個展です。

前田吉彦02

謎解きのような不思議な雰囲気をたたえた作品がずらりと並びます。

スパゲッティを束にして立てて、あるいは毛糸を麺に見立てたような感じに盛って、それだけだとなんとも不釣り合いなケースに収まっているのに、

何だこの説得力はぁぁ!!!Σ( ̄口 ̄;)

前田吉彦01

前田吉彦06

圧巻は、櫛。

でけぇ!Σ( ̄口 ̄;)

無駄にでけぇ!Σ( ̄口 ̄;)

そんな心の叫びが一気に沸き起こります。

前田吉彦03 前田吉彦04

しかもふたつに分かれ、その内側には何故かパン粉がびっしりと。

前田吉彦05

良い意味で、激しく下らない!と思ってしまうのです(≧∇≦)ノ゛

しかし、その下らなさがこの精度で再現されていることへのリスペクトはとどまるところを知らず...。それ故に立ち上がる圧巻の世界観。

このギャラリーでのパッケージも面白いですが、敢えて美術館で観てみたいです。そういった、その意味をじっくりと探るための然るべきシチュエーションで展示されてほしいクリエイションです。

《12/14》

さて、大山崎 ~山口晃展~

アサヒビール大山崎山荘美術館

京都府乙訓郡大山崎町銭原5-3

12/11(木)~3/8(日)月(祝日の場合開館、翌火曜休)・12/26~1/2休

10:00~17:00

山口晃081211.jpg

さて、大山崎。

今回の関西遠征も禁断の宿泊コース発動で、とった宿も京都、まさにタイトル通りの気分で、日曜日の朝一番に足を運んだ次第で。

夜中に降ったらしい雨に濡れた、ちいさな紅葉がほろほろと彩る路面を踏みつつ、「まだ登んの?」ってくらいに、でも程々に続く急勾配を辿って、小山の頂きに建つクラシカルな佇まいの洋館へ。

いつもと圧倒的に違うシチュエーションで観る、いつもの山口さんの世界。

随所に大山崎のエピソードが挿入された絵がそこここに落とし込まれ、古めかしい雰囲気の空間と絶妙な調和を紡ぎ出し、そこからあのユーモアがのんびり呑気に和やかな笑みをもたらし、メカニカルな格好良さがビュッと好奇心を刺激してきます。

そういったなかで痛快なインパクトを受けたのが、イーゼルに掛けられて展示されている「チェンバロを弾く高山右近」。溢れ放たれる鮮やかな色彩のダイナミズムと、それを背景に、清廉と絢爛がそれぞれ極端に引き出され、さらなアクロバティックなデフォルメが施されるたチェンバロ。しつそれを弾く右近の艶やかな表情と、さ

まざまな見所がふんだんに重ねられていて、一瞬を爆発寸前まで膨らませたかのようなシーンが現れています。また、僕が伺った時間にも山口さんがいらっしゃって加筆されていて、もしかしたら今後もさらに手が加えられるかも知れない、という未完の感触も魅力の大きな要素のようにも思えます。

で、あと、「沢蟹」と「軽鴨」にも脱帽。答えは決まっているのにそれでも

いいのか!Σ( ̄口 ̄;)

それでいいのか!Σ( ̄口 ̄;)

・・・!

いい!(≧∇≦)ノ゛

となるのです。

瞼をつたう 田中真吾

shin-bi

京都市下京区烏丸通四条下ル水銀屋町620COCON烏丸3F

12/3(水)~ 12/17(水)

11:00~21:00

田中真吾081203.jpg

先月のstudio Jでのグループ展での作品も印象に残っている田中真吾さん。

今回は写真の展示で、燃える炎のシルエットがモノクロームで収められた写真が独特な深みを奏でていました。

水面かどこかへの映り込みなのか、シンメトリーに展開される炎の姿の艶やかな美しさ、そして構図の美しさが印象的です。

風景ルルル -わたしのソトガワとのかかわり方-

静岡県立美術館

静岡市駿河区谷田53-2

11/3(月)~12/21(日)月休(月曜祝日の場合開館、翌火休)

10:00~17:30

風景ルルル081103.jpg

2008年の内海聖史さんはここ、ということで、行ってきました。

美術館のロビーに展示された内海さんの2点の大作との再会に、まず心が震えます。

それぞれ2006年の水戸アートワークスギャラリー、2007年初めの資生堂ギャラリーで、その空間で発表されることを踏まえて製作された作品で、それらが違う場所にインスタレーションされ、空間に響く感触に新鮮さを覚えます。

さらにみあげる位置に展示された後者の壮大感。あのときの感動が蘇ると同時に、そのさいずを余裕で受け止めるロビーのゆったりと当初は床置きで展示された前者は、そのときの状況を体感していることもあり、広い壁面が下になったようなイメージが湧いてきます。

8名のアーティストがフィーチャーされるなか、まず高木紗恵子さんの作品が。画面の真上、上方の側面目がけてスポットが投射されているような大胆なライティングが、画面に施される樹脂の盛り上がりやクリスタル、さらにキャンバスの緩みが画面に影を映し、その世界観の幻想性に深い臨場感がもたらされているように感じられま

す。作品によって異なる色彩感や縮尺のイメージが、バリエーションに富んだ空間を創造しています。

高木さんのある意味過剰な世界観に囲まれ、照屋勇賢さんの紙袋の作品、さらに、大きい透明な器に鮮やかn地層のような模様と風景とが作り込まれたデザートの作品。照屋さんの作品は目にするたびにわくわくした気持ちになります。紙袋も覗き込んだときの嬉しさはやはり堪らなかったり、デザートも圧倒されつつ「おいしそう」と思ってしまったり。

柳澤顕さんの空間も強く印象に残ります。

モノクロームで全体が整えられて、渦巻く空間、そういうイメー時を呼び起こすかのようなダイナミックなペインティングと直に壁面に描かれたもの、さらにひとつの壁面前面を覆うプリントと、シンプルな空間ながらも圧倒的な構成が迫ります。舞う線のダイナミズム、無数に散らばるドットのリズム感、ところどころに織り込まれる具象的な景色のシルエットと、複雑な縮尺感によっておおらかな世界が繰り広げられていました。

事前に若干のヒントはご本人からいただいてはいたのですが、内海聖史さんの空間、そこに踏み込む直前に高揚と緊張が心の中に走ります。

ガラス張りのショーケースが3つの面を囲む空間、そのなかに、3段ずつずらりと並ぶ、無数のドットの世界。

すべていつもの方形のパネルでありながら、そのドットで組み上げられる構図はもちろん、キャンバスの大きさと厚みも同じものが存在しないという、これまでとはまた異なる複雑な要素が織り込まれ、その光景にまずただ圧倒されます。

全体を俯瞰して複雑に存在するコントラストに無数の発見を見いだし、視線がキャッチした興味を追ってその作品へと近づいてさらにそこに描かれる空間に想像を膨らませ、また再び引いて俯瞰して...とひたすら心ゆくまでその世界に浸れたのがホントに嬉しく思えた次第で。

お馴染みの色調のものもあれば、敢えて激しく異なる色彩をぶつけたかのような斬新さを感じさせるもの、余白との関係性もさまざまなものがあったりと、とにかく見応え充分な作品群、インスタレーションでした。

佐々木加奈子さんの作品も印象に残ります。

写真群は個展で拝見したものも多く、その物語性との対峙からは心に静けさがもたらされ、奥の暗室で展示された映像作品の奥深いメッセージ性にも心が動かされます。ただ単に逆回しの映像なのですが、線路に落ちているものが再び手に戻ってくる様子、そして随所に心臓がモチーフとなったふわふわとした赤い玉もポンと浮かび上がって手元に戻っていくのが、大事なものを取り戻していくようなポジティブなイメージをもたらしてくれたような気がします。

鈴木理策さんの深まる季節の表情を繊細に捉えた写真も、SCAI THE BATHHOUSEでの個展も印象的だったBrian Alfredさんのシャープなペインティングと緻密なペーパーコラージュも、小西真奈さんのおおらかな風景も、それぞれに豊かな世界観を奏でていてとにかく嬉しかったです。 

そしてもうひとつ嬉しかったのが・・・

図録にこのブログと僕の名前が載ってるのー!!!!!!!(≧∇≦)ノ゛

杉田陽平展「プラトニック・ペインティング」

GALLERY MoMo Ryogoku

東京都墨田区亀沢1-7-15

11/29(土)~12/20(土)日月祝休

11:00~19:00

杉田陽平081129.jpg

Yohei SUGITA platnic painting

GALLERY MoMo Ryogoku

1-7-15

11/29(土)-12/20(土) closed on Sunda,Monday and national holiday

11:00-19:00

Google Translate(to English)

さらに増すスケール感。

加速する混沌感。

GALLERY MoMo Ryogokuでの杉田陽平さんの個展です。

この秋に新しくオープンした両国のGALLERY MoMo、この空間が持つ豊かな奥行きと空間性は、アーティストの想像力をかき立てて止まないのが実に力強く伝わります。

今回の杉田さんの個展ももちろん、いつになく伸びやかにその大胆なテクスチャーで展開する世界に、より壮大なを覚えます。

杉田陽平401

空間に映えるヴィヴィッドなマチエル、そして色彩感。

油絵の具のプレートを重ねて構築する世界のダイナミズム、その「もの」としての重量感に加え、描かれるモチーフが奏でる物語性もよりおおらかで深く、スケールも大きくなっているような印象です。

帆船を描いた作品、過剰なまでにアバンギャルドな筆致が荒れ狂う波、嵐を思い起こさせ、しかしその暴れる時間性さえも押さえ込んでしまうかのような重厚な存在感が伝わってきます。鮮烈な色彩と盛り上げられる絵の具の臨場感、至近で眺めたときに止めどなく見つかるミニマムな色彩の重なりと紋様のアバンギャルドさに半ば呆然となりながらそのかっこよさ、凄まじく複雑なパルスが鳴り響くような感覚に浸りつつ、その一方でこの空間の豊かな奥行きに任せ、充分な距離を置いて眺めると、逆にぐんと迫るストーリー的なボリューム感にも圧倒されます。

杉田陽平403 杉田陽平404 杉田陽平406 杉田陽平405

杉田陽平402

奥の空間にも大作が続きます。

無数の混沌が一つの画面にさまざまなかたちで入り込み、さらに複雑な展開を発見できるのも、杉田さんの作品の面白い重要なポイントのように思えます。

杉田陽平408

絵の具のプレートのひとつひとつが持つ動線、ある方向への絵の具の流れからも、作品それぞれのなかに流れ行く時間のスピードへの想いも喚起させられます。

徹底した謎めきがひとつの画面のあらゆるところに見受けられるような気がします。一目見ただけではおそらくきキャッチすることの出来ない深遠さ。無論、最初に目にしたときの色彩の美しさや直に接したときに感じられる迫力への感嘆を持ちつつ、ある種の幻想世界を想像させるような感触も興味深いです

杉田陽平410 杉田陽平411 杉田陽平412 杉田陽平413

杉田陽平409

随所に遊び心というか、実験的な要素も感じます。

このオリジナリティ溢れる手法は、すべてが斬新で、そしてその斬新なタッチを時を経るごとにコントロール可能な範囲を広げていっているように感じられるのも大変興味深いです。

今回も充分なくらいに興味深く大迫力の世界を拝見することができたと思いますが、さらにダイナミックな世界をこれから先に見せてくれるような期待も高まります。

杉田陽平407

Galerie Sho Projects SOMETHING SWEET 東美貴子 クララ・デジレ 伊東明日香 大槻素子

Galerie Sho Contemporary Art

東京都中央区日本橋3-2-9 三晶ビル B1F

11/25(火)~12/20(土)日祝休

11:00~19:00(土:~17:00)

Something Sweet 081125.jpg

Galerie Sho Projects SOMETHING SWEET Mikiko AZUMA,Clala DESIRE,Asuka ITO,Motoko OTSUKI

Galerie Sho Contemporary Art

3-2-9-B1F,Nihonbashi,Chuo-ku,Tokyo

11/25(Tue)-12/20(Sat) closed on Sunday and national holiday

11:00-19:00(Sat:-17:00)

Google Translate(to English)

4名の女性アーティストによるキュートなクリエイションがパッケージされた展覧会です。

まず入り口の階段を下り切った一角に4名の小品がずらりと並んでお出迎え。

このコントラストが嬉しくなってきます。

SOMETHING SWEET 01

まず、フランス人アーティストのクララ・デジレさんのコーナーから。

グラフィティ的なのびのびとしたポップなアバンギャルドワールドがそれぞれの画面でホットに繰り広げられています。

センテンスもたくさん織り込み、キャッチーなキャラクターも大胆に投入して、アンダーグラウンドカルチャーの匂いが画面に充満し、そこから放たれているような痛快な印象です。

Clala DESIRE 02 Clala DESIRE 07

Clala DESIRE 01

容赦のない感じがとにかく楽しい!

ヴィヴィッドな色の取り合わせと、思いついたら即描く、そういうアクションの早さも感じさせてくれる、弾けるようなダイナミズムが、高揚感をもたらしてくれます。

その一方で、そこに潜むどこか醒めた感触や、現実世界への痛烈な批判性なども滲んでいるように感じられるのも興味深いです。

そういう部分に、日本と欧州のアイデンティティの差異を感じます。言葉や生活感などの違いでキャッチもおそらくあると思う傍ら、だからこそ面白く感じられる部分もきっとあるような気もして、またあらためていろいろ探る機会があれば、と思う次第で。

Clala DESIRE 05 Clala DESIRE 06 Clala DESIRE 04

Clala DESIRE 03

伊東明日香さんの描くファンタジー。

アダルトな雰囲気も充満し、明るく艶やかな色調が、軽やかなエロティシズムとともに独特な臨場感を醸し出しています。

女の子の弾けるような笑顔がまぶしい!

伊東明日香006

精緻な筆遣いによって描かれるモチーフは、そのひとつひとつが緻密に再現され、その緻密さが作品の世界のリアリズムを加速させているように感じられます。

幻想的な世界が映像的な描写で提示されることへの驚嘆。現実世界へ深く入り込むような鋭さを秘め、観る者に迫ってくるかのような不思議な迫力を伴っています。

伊東明日香005 伊東明日香004 伊東明日香003

伊東明日香002

バラの花を描いた作品は、描写の精度の鋭さがひときわ強く迫ります。

美しい陰影と鮮やかな色調、この瑞々しさに触れ、フレッシュな気持ちがすっと沸き起こります。

伊東明日香007

伊東明日香001

先の2名のアーティストが、それぞれ質感こそ異なるものの、それぞれ力強いフォルムを描き切っているのに対し、東美貴子さんと大槻素子さんは曖昧さ、甘さが大きな魅力となって迫ります。

東美貴子さんのふわふわとした世界。

シンプルな色使いが描かれるモチーフの抽象性に手触り、肌触りのやわらかなイメージをもたらし、何とも居心地の良い空間性を演出しているかのように思えます。

東美貴子002

色彩だけでなく、構図のシンプルさもよい感じです。

クリームが溶け崩れるかのような風合いの白の微妙なグラデーションが、緩やかな奥行きを奏で、空間性をより大胆なものへと押し上げています。背景の淡いベージュも、ほの淋しさを醸し出しつつ、なんとも和やかな印象です。

東美貴子004 東美貴子005

東美貴子003

描くモチーフは、先に抽象的と紹介したもの、そのフォルムが甘く描かれることでそういうふうな印象を受けるのだなぁ、と、他の作品を拝見してあらためて思ったり。

皿の上の食べ残しを描いた作品の、たったこれだけの要素が奏でる物語性にも心が惹かれたり。ドローイング作品も含め。絵の中のさまざまな要素がやさしい風合いを緩やかに感じさせてくれます。

東美貴子001

東美貴子006

最後の一角、通路と奥のちいさな空間には、大槻素子さんのメロウな作品が並びます。

通路の壁面にずらりと並ぶ、イチゴと(おそらく)ろうそくの赤が背景の黒とケーキ本体の白に映える作品群。

いろんな角度から眺めてみて、そのケーキが見せる表情にもそれぞれに異なる味わいが滲んで、そのかわいらしくて甘い雰囲気に心が揺らぎます。

大槻素子002 大槻素子003 大槻素子004 大槻素子005

大槻素子001

奥のスペースにはそのケーキnズームアップを描いたような作品も。

赤の甘さがより鮮烈に、そして艶やかに迫ります。

大槻素子006

相変わらずおいしそうな絵でございます(笑)。

描かれるモチーフに対して心躍る感覚だけでなく、絵の具の質感や画面を這う筆の痕跡など、絵と「もの」としての要素へもぽわんとおいしいものを思い浮かべるときに心に満ちる幸せと似た感覚が伝わり、満たされるんです。

大槻素子008 大槻素子009

大槻素子007

フレッシュな個性、それもみんなキュートな世界観を持っていて、その競演が実に楽しかったです。

ほっこりとしたやわらかいものに包まれたような気分。またそれぞれのソロの展開も、そしてより広がりを持った世界への期待も高まります。

大槻素子010

Curriculum Vitae 2008 平川恒太 勝正光 大江慶之 清水智裕 高津戸優子 山城えりか

WADA FINE ARTS

東京都中央区築地3-2-5 第2平和田ビル

12/2(火)~12/20(土)日月祝休

11:00~19:00

Curricaulum Vitae081202.jpg

Curriculum Vitae 2008 KotaHIRAKAWA,Masamitsu KATSU,Yoshiyuki OE,Tomohiro SHIMIZU,Yuko TAKATUDO,Erika YAMASHIRO

WADA FINE ARTS

3-2-5,Tsukiji,Chuo-ku,Tokyo

12/2(Tue)-12/20(Sat) closed on Sunday,Monday and national holiday

11:00-19:00

Google Translate(to English)

6つのフレッシュなクリエイションがパッケージされたグループショーです。

まず、入り口正面のカウンターから生える1本の腕。

紙飛行機を手にもって構える様子が爽やかに感じられます。

これが、大江慶之さんの作品。こんな洒落たイントロダクションから続いて、小さな空間にぎゅっと詰め込まれたユニークな個性が姿を現していきます。

大江慶之01

大江慶之02

その大江さんの作品、今回の展覧会で唯一の立体的な作品で、その臨場感が空間にユーモラスなアクセントをもたらしています。

白い画面から覗かせる腕と脚。ちょこなんとした様子が愛おしく、シチュエーションのシュールさとは裏腹に、楽しげな風合い、清々しさも感じられます。

大江慶之03

大江慶之04

そしてテーブルに乗った作品も、アバンギャルドさと瑞々しさとが共存したような、不思議な雰囲気を奏でています。

無数の花に埋まる子ども。ふわりと浮かぶような様子が醸し出す神々しさ、そこを飛ぶハエがダークサイドな雰囲気を発し、さらに子どもの手足のリアリティがぐんと臨場感を立ち上げているように感じられます。

「奏でている」と書いて、実際この作品、ハエを支えるワイヤーの根本がオルゴールになっていたり、そういう遊び心も和ませてくれます。

大江慶之06 大江慶之07 大江慶之08

大江慶之05

清水智裕さん、TWS本郷やexhibit Live & Morisの個展で拝見して印象に残っているのですが、今回は一つの画面での展開に実にダイナミックな膨らみがもたらされていて、痛快です。

ギリギリの薄い感情を浮かべる、白い肌の色の人物が醸し出す過剰に冷静な風合い。画面の中央にそびえるベージュの柱を渦の中心にして舞うさまざまな色彩のアグレッシブな感触。相反する要素がひとつの画面に収められ、鋭いシュールネスが満ちているように感じられます。

清水智裕002 清水智裕003 清水智裕004 清水智裕005

清水智裕001

平川恒太さんの作品からも、自身の世界をぐんぐんと押し広げている感触が力強く、そして深く伝わってきます。

画面の不思議な色調とそこに描かれるたくさんのちいさなキャラクターがまるで初期のロールプレイングゲームの画面を思い起こさせ、そういう遊び心がポップなリズムを奏でます。

そしてそのひとつひとつ、ひとりひとりが手に持つ武器が、このドリーミーな世界に狂気を持ち込んでいるように感じられ、薄氷の厚さで表裏一体にポップとアバンギャルドとが共存しているような展開が興味深いです。

平川恒太002 平川恒太003 平川恒太004 平川恒太005

平川恒太001

山城えりか さんが描く艶やかな世界。

優雅さと妖しさ、アダルトなファンタジック。独特な世界観が楽しい、そして危うさをも秘めたような雰囲気を醸し出しています。

パステル調の落ち着いた色合いも、その場面に和やかさをもたらしているように感じられます。

ていねいな筆致で描かれるさまざまなアクセントも目に届くたびに嬉しくなるんです。

山城えりか102 山城えりか105 山城えりか104 山城えりか103

山城えりか101

高津戸優子さんの大きな作品は、大胆な色使いがとにかく楽しい!

ころころと描き込まれる有機的なモチーフ、そこに浮かぶたくさんのあったかい表情が、キュートな雰囲気を紡ぎ上げているように感じられます。

背景の黒がそれぞれの色彩の温もりを画面から立ち上げているように感じられるのも印象的です。ドローイングで拝見するイージーなスタイルの心地よさとも通じながら、そこにさらに厚みが加わったような感じで、見応えも充分です。

高津戸優子002 高津戸優子003 高津戸優子004

高津戸優子001

勝正光さんの真っ黒の作品が観られるのも嬉しいです。

クラシックな雰囲気を重厚に奏でる乗用車の正面が、鉛筆により、凄まじい筆圧を感じさせる力強い筆致で描き上げられています。

微妙なグラデーションがその艶やかさを感じさせ、画面全面を覆うどこまでも硬質な黒が独特な深みを醸し出しています。

勝正光04 勝正光03 勝正光02

勝正光01

それぞれの個性の強烈さが頼もしく、またお互いの個性も際立たせているように感じられるのも楽しいです。

玉井健司「重力亀」

ZENSHI

東京都江東区清澄1-3-2-6F

11/18(火)~12/20(土)日月祝休

12:00~19:00

Kenji Tamai "Gravity Tortoise"

ZENSHI

1-3-2-6F,Kiyosumi,Koto-ku,Tokyo

11/18(Tue)-12/20(Sat) closed on Sunday,Monday and national holiday

12:00-19:00

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色彩と素材の質感が立ち上がる、ヴィヴィッドなインスタレーション!

ZENSHIでの玉井健司さんの個展です。

今回は初の絵画作品による個展ということで、いろいろと思い描いていたのですが、いきなりその想像がぶっ飛ばされ、度肝を抜く密度の濃い空間に圧倒されます。絵画の展覧会、という概念も一瞬で吹き飛びます。

なんていうか、要素を詰め込むことに対して容赦のない感じ、ケレン味のなさがどうしようもなく痛快に伝わってきます。

玉井健司02 玉井健司03

玉井健司01

そんな、空間ごとヴィヴィッドに作り込まれたなかに配されるペインティング群は、絵の具など素材の質感があからさまと言えるほどに提示され、そこに投入される偶然性が生み出す抽象的な面白さ、さらに描くなどの行為をダイレクトに感じさせるポイントがそこかしこに織り込まれ、色彩だけでなく、質感のヴィヴィッドさ力強く感じられます。

ステンシルと思われる手法で施される蝶のシルエットの具体性と、白地に鮮やかに浮かび上がる赤と黒の顔料の危うい艶かしさが、うねるような世界を構築しているように思えます。

玉井健司05 玉井健司06 玉井健司07 玉井健司08

玉井健司04

用いられる支持体も実にユニークです。

ドアや家具の一部など、そもそも別の目的で作られた、ただ平面性は持ち合わせている、そういう感触が、色彩の織り成すめくるめく未知的な世界観と大きなギャップを生み出し、おおらかなユーモア性も感じさせてくれます。

なんていうか、この、色彩の抽象性がかっこいいのに、

ドアかよ!Σ( ̄口 ̄;)

的な「呆れる」感覚が楽しくてしょうがないんです。

玉井健司10

玉井健司11

色彩の組み合わせの大胆さも痛快です。

混ざる無彩色の絵の具が紡ぐミニマムな混沌が画面の上下に塊となって存在し、それを繋ぐ赤の線の鋭さ、シャープさが、壮大な空間性をもたらしているように思えます。

赤のラインを縫うように走る黒の線がそこにユーモアを加えている感触もまた、楽しさを押し上げています。

玉井健司15 玉井健司14 玉井健司13

玉井健司12

玉井さんの作品は、過去にはレントゲンでの個展で拝見した写真が強く印象に残っています。

大胆な構図で切り取られる瞬間の、神々しさとユーモアとがそれぞれ100%の割合で入ったかのような、独特の迫力と深遠さが満ちた世界。そこから考えると今回の展開は思いもよらないダイナミックな方向へと突き進んでいるなぁ、と思わずにはいられないのですが、眼前にある「もの」の質感、本質的な部分を抽出するような展開に通じる部分を感じたりもします。

そしてそこに織り込まれるさまざまなエッセンスが、いろんなイメージをもたらしてくれます。

凄まじくダイナミックなうねりを持つ世界にどっぷりと浸れ、無数の発見も楽しい、アッパーで深遠さも満ちる空間です。

玉井健司09

森淳一 minawa

void+

東京都港区南青山3-16-14-1F

11/22(土)~12/20(土)日月祝休

14:00~19:00(土:12:00~)

森淳一081122.jpg

Junichi Mori "minawa"

void+

3-16-14-1F,Minami-aoyama,Minato-ku,Tokyo

11/22(Sat)-12/20(Sat) closed on Sunday,Monday and national holiday

14:00-19:00(Sat:12:00-17:00)

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細密の彫刻の到達点。

void+での森淳一さんの個展です。

昨年の日本橋高島屋での個展も素晴らしかった森さん、今回も信じられないほどの緻密さをたたえた彫刻作品が出品されていて、驚きと嬉しさが心に溢れます。

コンパクトなメインスペース、まず床置きの台の上のショーケースに展示された薄い作品。

森淳一001

ここまで彫り残せるものなのか、と...。

信じられないほどに精緻に削り込まれたちいさな輪が泡立つように連なり、渦を巻き、舞うようにして...。

さまざまな動きのイメージに溢れる繊細な世界に息を呑み、ただただその雰囲気に入り込んでいきます。

森淳一003

中央部のひなぎくの花のような紋様、先がカールされ、細かく渦を巻いている大きな弧が幾重にも重なって、清らかさ、神々しさを奏でます。

床と水平に広がるこの作品、DMに採用されているのはこのシルエットの一部らしいのですが、そのかたちのグラフィカルなかたちだけでも充分に面白みを感じるのに、それが「描かれた」ものではなく、木彫作品であることがホントに感動的です。

木のしなやかさ、艶やかさ。最初に目にした瞬間の驚きはいつまでも持続し、観れば観るほどに深まる世界観とともに、時間を忘れてそこにあるすべてを見届けたいような衝動が静かに沸き起こります。

森淳一005

森淳一007

額装され、壁面に飾られた作品も、実に深い物語性を滲ませています。

台上の作品を同様に、細やかなリングが連なり、その中央にわずかに開く左目を思わせる穴が。

今回の新作は、水や泡をモチーフとした緻密な作品を制作するきっかけとなったレオナルド・ダ・ヴィンチのデッサン画をモチーフとされているそうで、そのコンセプトが持つ時代的な深遠さ、その頃の未知の感触が妖しいイメージへと昇華され、作品に挿入されているような印象が伝わります。

彫刻としての信じられない緻密さに加え、そこに収められた謎めきがそこから汲み取れる物語性にさらなる深遠さをもたらしているようにも思えます。

森淳一010 森淳一009

森淳一008

ミーティングルームにも1点出品されています。

広い空間、壁面をたったひとつの小品が支配しているかのような印象、それほどの説得力に満ちています。

森淳一011

脊髄から伸びる肋骨を思い起こさせる作品。昨年の個展でも拝見しいている作風です。

このちいさな立体物のすべての尖端に、スリリングな感触が凝縮され、ミステリアスなクールさと造形の時空的な深みとが伝わってきます。

そのかたちの美しさをそのままに映し出すシルエットもまた深みと繊細さに溢れ、眺めているだけで充分に豊かな刺激を受け、さらにさまざまな物語も脳裏に静かに漂ってくるのです。

森淳一013

森淳一012

それぞれの空間の、インスタレーションとしての完成度も素晴らしいです。

そこにいること、その空気に包まれることへの感動は、作品を目にしたときに溢れ続ける感嘆とともに、静かな高揚感となって心に響きます。

そして、これを具現化されたアーティストへの敬意も止めどなく湧いてくるんです。

ぜひ、この究極の木彫世界に直に触れ、心から驚き、じっくりと感動を味わってほしい展覧会です。

森淳一002

《12/5》

debut! ver.HIROKO NEMOTO 根本寛子個展

谷門美術

東京都港区北青山3-3-7 第一青山ビル1F

12/5(金)~12/26(金)日月休

13:00~19:00

根本寛子081205.jpg

深い色彩と鮮烈な臨場感をかもし出すリアルな描写で、危うさが充満する場面が描き上げられています。

小さな空間にそのスリリングさが響き、怖さとシュールなユーモアが独特なバランスで共存していて、毒味を持つメルヘンワールドが重厚に、かつポップに展開されています。

見応えのあるペインティングです。

世界の終り the end of the world 林勇気

IID GALLERY

東京都世田谷区池尻2-4-5 IID 世田谷ものづくり学校1F

12/5(金)~1/18(日)月(祝日の場合開廊、翌日休)・12/27~1/5 休

11:00~19:00

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なんともキュートな映像作品です。

ただただ無機的に繋がる通路と部屋とを通り過ぎるのですが、ところどころのディテールがユーモアをリズミカルに奏で、思わず時間を忘れて見入ってしまいます。

Neasden Control Centre「TAKE AWAY」

CALM & PUNK GALLERY

東京都港区西麻布1-15-15 浅井ビル1F

12/1(月)~12/14(日)11:00~19:00

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リアルタイムのUKアンダーグラウンドカルチャーに触れられるのが嬉しいです!

ファンキーで、ソリッドなグラフィカルワールドが繰り広げられ、壁面のほぼすべてを覆うペインティングやグラフィティがクールな殺伐感とホットでエネルギッシュな雰囲気を充満させています。

Curriculum Vitae 2008 平川恒太 勝正光 大江慶之 清水智裕 高津戸優子 山城えりか

WADA FINE ARTS

東京都中央区築地3-2-5 第2平和田ビル

12/2(火)~12/20(土)日月祝休

11:00~19:00

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これまでも各所で拝見しているフレッシュなクリエイション6名がパッケージされた興味深いグループショーです。

5名の平面のアーティストの渾身の作品に触れられることへの嬉しさもさることながら、大江慶之さんのユーモアとシュールさに溢れる立体作品が見られるもの楽しい!

悠久斎「わたしのために」

CASHI゜

東京都中央区日本橋馬喰町2-5-18-1F

12/5(金)~12/27(土)日月祝休

11:00~19:00

悠久斎081205.jpg

どこだよここはぁっ!Σ( ̄口 ̄;)

と刹那、叫んでしまいたくなるほどの凄まじいボリューム。

動物をモチーフに、ヴィヴィッドな色彩と造形が空間を埋め尽くします。

まず目に飛び込むのが大きな着ぐるみ群。これらはホントに実際に着られるようで、そういうサイズが放つ臨場感もインパクト充分です。

悠久斎02 悠久斎03 悠久斎01

悠久斎04

さらには、壁面を覆い尽くすドローイング群にも唖然とさせられます。

あたかも絵日記を思わせる軽やかさ、それぞれの画面いっぱいにズームアップされた動物の顔や頭部、溢れる色彩の濃厚さと楽しさ、そしてわずかに捕らえ所の無さが心に響きます。

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悠久斎06

痛快なまでのおおらかさと、そこにほのかに潜む内省的な風合いが印象的です。

悠久斎09

カンノサカン spread

ラディウム-レントゲンヴェルケ

東京都中央区日本橋馬喰町2-5-17

12/5(金)~12/27(土)日月祝休

11:00~19:00

カンノサカン081205.jpg

琳派の宴が続く。。。

昨年の「黒」に続き、今回は「金色」。

有機的なかたちの連なりが奏でるミニマムな世界観にさらに深い奥行きがもたらされたような印象で、じっくりと時間を忘れてその空間性に入り込んでみたい衝動に駆られます。

《12/6》

和泉賢太郎展 -integration-

art space kimura ASK?

東京都中央区京橋3-6-5 木邑ビル2F

12/1(月)~12/13(土)日祝休

11:30~19:00(最終日:~17:00)

和泉賢太郎081201.jpg

昨年に続いて開催の和泉賢太郎さんの個展、前回の空間と余白を活かした構成から、今回はさまざまな植物のズームアップをモチーフに、複雑なアクロバティックな諧調の解釈によりダイナミックなうねりを画面の中にもたらしています。

和泉賢太郎002 和泉賢太郎003 和泉賢太郎004 和泉賢太郎005

和泉賢太郎001

過度にアクロバティックなズームアップの作品は、それが何であるかに気付いた瞬間の膝を打つ感じも痛快で。

さまざまなモチーフの曲面はしっかりと再現されていて、それがもたらす動線にも引き込まれます。

和泉賢太郎007

和泉賢太郎006

緻密な構成は相変わらずの精度です。

シャープな色彩感、絶妙な色のチョイスが生み出すユニークなリアリティ。これからの展開も楽しみです!

和泉賢太郎008

小林美樹 ひとりのときは何を想う

文京アート

東京都中央区八重洲2-11-7 ます美ビル2F

12/6(土)~ 12/20(土)日祝休

11:00~18:30

小林美樹081206.jpg

今年の武蔵野美術大学の卒業・修了制作の学内展で拝見し、印象に残っている小林美樹さんの個展。

ユーモラスな人々の姿や仕草、無彩色をベースに仄かな赤みや青みがその幅を広げる独特の色調。

個性的な要素に満ちた世界は、じんわりと心に響いてきます。

日韓若手作家交流展 Asian Young Artists -Her Stories-

クムサンギャラリー東京

東京都中央区東日本橋3-5-5 矢部ビル1F

12/5(金)~12/26(金)日祝休

11:00~19:00

クムサン081205.jpg

面白い!

日本と韓国の若手アーティストのが2名ずつフィーチャーされ、それぞれがユニークな世界を展開しています。

日本勢の精緻な表現による奥ゆかしさと奥深さを奏でる繊細な世界と、韓国勢のシャープでソリッドなポップさ、そのコントラストも鮮やかです。

亀井徹展

成山画廊

東京都千代田区九段南2-2-8 松岡九段ビル205号

12/1(月)~12/20(土)水日祝休

13:00~19:00

亀井徹081201.jpg

深い世界が淡々と、そして濃密に綴られています。

ダークな色調と艶やかな表面の仕上がりがクラシカルな響きを重厚に奏で、精緻な描写で織り込まれていくさまざまな非現実的な要素が深遠な物語性を展開していくかのようです。

じっくりと眺めて、対峙する時間にしっかりと応えてくれる、貴重な心地よさに満ちた、まさに「絵画」です。

茂木雅代ディレクション「Wall Swap」黒田潔 中西宗平

GALLERY SIDE2

東京都港区東麻布2-6-5

11/22(土)~12/6(土)日月祝休

11:00~19:00

インテリアスタイリストの茂木雅代さんのディレクションで、建築家の中西宗平さんとアーティストの黒田潔さんがコラボレート、ユニークな空間がGALLERY SIDE2のなかに現れました。

入り口すぐにいきなり扉が。

茂木黒田中西06

そこかしこにキュートなアクセントが織り込まれています。

素材のやわらかさを表すかのような淡いパステル調の色彩、そこにさまざまなかたちで黒田さんのクリエイションが入り込み、鋭さがもたらされているように感じられます。

茂木黒田中西05 茂木黒田中西02 茂木黒田中西04

茂木黒田中西01

その黒田さんのクリエイションが前面に出た一角、モノクロームで描き出されるさまざまなモチーフのシルエットが、アーバンな有機的世界を構築していて、シャープな艶かしさとクールさは相変わらずのかっこよさです。

茂木黒田中西08

茂木黒田中西07

何とも楽しい光景でした。

ある部屋の楽しい部分が切り取られて再現されたような感触が楽しい展覧会だったような気がします。

茂木黒田中西03

もうひとつ、入り口に置かれたcookie boyさんのお家もいい感じで。

cookie boy 01

吉田朗 個展「仏間でクリスマス」

YUKARI ART CONTEMPORARY

東京都目黒区鷹番2-5-2 市川ヴィラ1階

12/6(土)~1/24(土)日月火・12/21~1/6休

11:00~19:00(最終日:~17:00)

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二つの空間でそれぞれ展開される世界は実にシンプル、立体作品が奏でる臨場感がおのおのの空間を満たし、緻密な構成とていねいな仕上がりが、コミカルさを説得力で覆い尽くしているかのようです。

立体作品ならではのさまざまな角度からの光景が無数の魅力となって、見応えのあるインスタレーションが繰り広げられています。

《12/7》

溝口達也 GAIA -刻まれた時-

switch point

東京都国分寺市本町4-12-4 1F

12/4(木)~12/14(日)水休

11:30~18:30

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昨年の個展も印象的だった溝口達也さん、ほぼ1年振りに開催されている個展では、ひとつの版である街の地図の変化を綴った構成で展開されています。

溝口達也004

どん、とギャラリーの中央に置かれた鉄の版。

屋外に置かれ、自然に錆を湧かせていて、その素材、もとい物体の臨場感を強く放っています。

溝口達也006

溝口達也005

その版で摺られた作品は、最初は線の数が少ないところから始まっていきます。

溝口達也001

そこからこの街が区画整理され、道路が増えるにつれて画面の密度も重厚に。

溝口達也002

溝口達也003

行為の提示として分かりやすく、面白い構成が印象的です。

色調のチョイスも合っていて、提示された行為に説得力をもたらしているように思えます。

ある視点からの版表現の可能性を広げているように感じられるのも興味深く、ここからの展開の広がりも楽しみです。

室井公美子展

Gallery惺

東京都武蔵野市御殿山1-2-6 ビューキャニオン吉祥寺御殿山B1F

12/6(土)~12/28(日)火水休

11:00~19:00(最終日:~17:00)

室井公美子081206.jpg

六本木と同時開催の室井さんの個展、こちらではさらに実験的というか、新鮮なアプローチや色彩感、テクスチャーの作品が並んでいます。

衝動や好奇心に対するストレートな表現がさらに感じられるのも興味深いです。

《12/10》

飯田竜太「ewiges equivalent ―永遠なる同等物―」

TSCA KASHIWA

千葉県柏市若葉町3-3

11/8(土)~12/13(土)日月祝休

12:00~19:00

飯田竜太081108.jpg

紙や本のカットでお馴染みの飯田さんのTSCAで初めての個展。

飯田さんは空間を活かした展覧会が多い印象があるのですが、今回も例に漏れずというか、このおおらかな空間にさまざまなかたちで自身のクリエイションを落とし込んでいて、その構成力は見事の一言に付きます。

大胆と緻密が絡み合う、圧巻のインスタレーションです。

北川瑶子 on the spoon

GALLERY TERRA TOKYO

東京都港区麻布台2-3-5 NOAビル1F

11/29(土)~12/22(月)日祝休

10:00~19:00

北川瑶子081129.jpg

Yoko KITAGAWA on the spoon

GALLERY TERRA TOKYO

2-3-5-1F,Azabudai,Minato-ku,Tokyo

11/29(Sat)-12/22(Mon) closed on Sunday and national holiday

10:00-19:00

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深い艶やかさに満ちる、大人びたメルヘン。

今年のART AWARD TOKYOで印象に残った北川瑶子さんの、GALLERY TERRA TOKYOでの個展です。

北川さんが紡ぎ出す世界と言えば、画面全体を染める深い赤が思い浮かびます。

入り口をくぐってすぐ、その赤の小品が出迎えてくれます。

艶やかさとマッドさ、どこまでも続く深みをたたえる濃密な赤とかわいらしいほんのりとしたピンク、それぞれに個性を感じる色調やテクスチャーが、北川さんの独創的な世界を構築し、ひとつの統一感に貫かれているように感じられるのですが、そのイントロにふさわしい小品が、ここから続く世界の気配を絶妙に滲ませています。

北川瑶子14

しかし、続く作品で色彩感にわずかに変化がもたらされます。

その質感はそのままに、薄い紫が画面全体を覆う大作。色調こそ異なるものの、世界観はやはりこれまでの、そしてこれからの流れに収められているような風合いです。スプーンの上に座る白いドレスの女の子、よくよく考えると相当にシュールなシチュエーションですが、不安定な違和感は伝わってこなくて、ナチュラルな不思議さが漂っているよう感じられます。

北川瑶子13

一つの空間の片方の壁面の連なりで、複雑なかたちをしていながらも洗練された動線を生み出しているこのスペースで、そこから現在の北川さんの真骨頂とでも呼ぶべき赤の世界が続いていきます。

女の子やテーブル、その上に置かれる食器やグラス。さらに、この空間に降るように画面を漂うレースの模様の細やかさ、がっしりと張るチェーン、女の子を囲む枠。いくつかのキーとなるモチーフが織り込まれ、緻密な描写も駆使されて、ほのかにメランコリックな情景が繊細に綴られていきます。

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要素が減り、シンプルな構成の作品。

色彩から滲む艶やかな深みが、この場面の奥行きをよりいっそう深くさせているように思えます。

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スポットが当たるような構図で、黒の楕円の枠に囲まれる赤、そこに横たわる鮮やかな赤のドレスの女の子。徹底される冷静なリアリズムは、この情景に深い説得力と妖し気な色香をもたらしているように感じられます。

抱えるお菓子の甘いイメージが背中合わせに危うさを感じさせ、女の子の虚ろな表情にも惹かれます。

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北川瑶子09

子どもの無垢さと大人っぽさとがぎりぎりでせめぎあうような場面の連なりは、沈み込むような静謐感を繊細に紡ぎ出しているように感じられます。

淡々とした風合い、憂いを帯びた色彩が醸し出す妖しさ。

・・・さまざまなイメージがよぎります。

リアリティとシュールさが絶妙な塩梅で共存した世界、じわりと心に響きます。

北川瑶子02

須藤由希子 鉢植え展

TAKE NINAGAWA

東京都港区東麻布2-12-4 信栄ビル1F

11/1(土)~12/20(土)日月祝休

11:00~19:00

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Yukiko Suto Potted Plants Exhibition

TAKE NINAGAWA

2-12-4-1F,Higashi-azabu,Minato-ku,Tokyo

11/1(Sat)-12/20(Sat) closed on Sunday,Monday and national holiday

11:00-19:00

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描く風景への律儀さが発するズレの面白さ。

TAKE NINAGAWAでの須藤由希子さんの個展です。

これまでも、東京オペラシティアートギャラリーでのproject Nや東京ワンダーサイト渋谷での「東京画」などで作品を拝見していて、鉛筆による緻密な風景の再現性に説得力を感じていたのですが、今回の個展では、ほぼモノクロームで再現される風景の硬質にも思える印象、そしてそこに見え隠れするさまざまなズレにたいして、あらためて興味深く感じられます。

額装された作品、ブロック塀がそのまま描かれ、それが力強い説得力をもたらしているように感じられます。

真っすぐなせんが真っすぐに描かれている様子、そのものが持つかたちをそのままに描かれている感触に、違和感が潜んでいるような印象を受けます。

須藤由希子01

正面の壁面に展示された、今回もっとも大きな画面の作品。

第一印象の徹底して追求されているリアリズムへの感嘆から、だんだんとそこかしこからその存在を響かせるズレに興味が向かいます。

要素のひとつひとつ、ずらりと並ぶ鉢植えとそこに植わる植物の葉や花のかたちのシャープな再現性、アンテナや給湯器、洗濯物のフォルムの硬質な感触など、部分を切り取るとしっかりとそれぞれのかたちが捉えられている様子が伝わります。

その一方で、消しゴムで一旦消されて再び描かれた痕跡などが醸し出す臨場感、さらにはいくつかの要素を繋ぐ大きな要素、樋や屋根などが微妙にずれて感じられたり、右上の家屋のならびに違和感を感じたり、この徹底した現実性に無数のズレが潜んでいるように感じられるのがとにかく深く印象に残るんです。

須藤由希子04 須藤由希子03 須藤由希子05

須藤由希子06 須藤由希子08 須藤由希子07

須藤由希子02

線の密度が放つ濃淡こそあっても、グラデーションによる陰影がないのも、あらためて考えるとそれが須藤さんの世界に独特の奥行きを与えている世に思えてきて、面白く感じられます。

だからこそ、線のコミカルさ、ころころとした曲線はもちろん、スパッと走る直線でさえも、キュートにダンスしているような感触が際立って伝わるような気もします。

須藤由希子10

鉛筆の作品はもっと細密な再現性、圧倒的なリアリティを展開するアーティストはもちろんいて、その力強い説得力ももちろん好きなのですが、リアリティは追求されていても、その1点のみに落とし込んでいない、律儀さがもたらすズレや違和感が須藤さんが構築する世界に独特な深みをもたらしているような印象をあらためて受けた次第です。

気配も消され、線のみで繰り広げられる世界観。止まった時間のイメージは、別の角度からの時間性も漂わせるように感じられます。

わずかに持ち込まれる色のインパクトは、そのアクセントだけでなく仄かな淡い風合いさえも強められます。

コミカルさと生真面目さとが背中合わせの世界、ここからどう広がっていくかも楽しみです!

須藤由希子09

松本尚「うずまき」

SCAI X SCAI

東京都港区六本木6-8-14 Patata六本木203

11/21(金)~12/20(土)木金土のみ

12:00~19:00

松本尚081121.jpg

Nao Matsumoto "eddy"

SCAI X SCAI

6-8-14-203,Roppongi,Minato-ku,Tokyo

11/21(Fri)-12/20(土) Thursday,Friday and Saturday only

12:00-19:00

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独特のやさしい風合いで奏でられる、ふくよかな物語性。

SCAI X SCAIでの松本尚さんの個展です。

いきなり変な例え方で恐縮なのですが、柔軟剤のCMで女の子が「おろしたて見たいー」と言いながら頬を押し当てるあのふっくらとしたタオル、そういう感じが空間や作品から伝わります(、ってホントすみませんこんな表現で・・・)。

やさしい肌触り(だから何度も・・・)を思い起こさせるふんわりとしたテクスチャー、透明感とは違う、いくつもの情景が重なって見える緩やかな厚みが、ゆったりとした物語性を連想させ、心を和ませてくれます。

ドアを開けてすぐ、まず鉛筆のドローイング作品が出迎えてくれます。

いくつもの要素がひとつの画面に収められているもの、ひとつのモチーフのみのもの、それぞれモノクロームの展開であることが、描かれるモチーフひとつひとつに小さな臨場感をもたらしているように感じられます。ていねいな描写も印象的です。

松本尚18

松本尚17

入り口から続く壁面は、その一面が青のプリントで覆われています。

先のドローイングを版とし、繊細な情景が淡い青で繰り返し綴られ、そこにさらにさまざまなドローイングが掲示されています。

松本尚12

鉛筆の絵が、壁面の青に映えます。

それぞれが穂のかな風合いを穏やかに奏で、やさしい印象が緩やかに漂い、空間を包むような感触です。

ドローイングもさまざまな空間性や濃淡が織り成されていて、ここでアイデアが試され、ひとつの世界へと紡ぎ上げられているような委員賞も伝わってきて、興味深く感じられます。

松本尚15 松本尚16 松本尚14

松本尚13

そして、3点のパネルの大作が並びます。

色鉛筆や水彩絵の具によって、壁の青に通ずる淡く繊細な色が重ねられ、不思議な物語の一場面が大きな画面に描き上げられています。

いくつもの情景の重なり、大胆なのですが自然に織り込まれる豊かな縮尺感。そこにあるすべての景色が同じ距離にあるような臨場感が、心地よい感触でもたらされ、そのさまざまな色の重なりが浮遊感に満ちたやさしいコントラストを生み出しているように感じられます。

全体を覆う緑に覗く赤や、その上に重なるような黄色、そしてそういった色彩の奥に浮かぶ上がるような女性の姿など、繊細で朧げな雰囲気がやさしく心を包み、癒してくれます。

松本尚04 松本尚02 松本尚03 松本尚05

松本尚01

ある物語をひとつの画面のなかに凝縮させているというより、その物語を、時間の流れに垂直にではなく、斜めに切り取ってその断面に見えた情景が綴られているような印象です。

いくつもの場面がひとつの画面に同居しているようで、それぞれは繋がっているにも関わっていないようにも思えるのですが、いっしょにそこにあることへの違和感を感じないのも面白いです。むしろ絶妙なギャップが心地よいアクセントとなっているようにも感じられます。

松本尚11 松本尚08 松本尚10 松本尚09

松本尚07

油彩やアクリルのペインティングとはひと味違う、やさしい感触が印象に残ります。

独特のマチエルで綴られる世界観。強さで圧倒しない、温かくやわらかく包み込まれてじんわりと、その情景に誘われていくような。。。

夜、歩く早さの旅物語を読んでいるかのような、ゆったりとした気分に満たされる、心地よい空間です。

松本尚06

竹川宣彰

OTA FINE ARTS

東京都中央区勝どき2-8-19-4B

11/22(土)~1/17(土)日月祝休

11:00~19:00

竹川宣彰081122.jpg

Nobuaki Takekawa

OTA FINE ARTS

2-8-19-4B,Kachidoki,Chuo-ku,Tokyo

11/22(Sat)-1/17(Sat) closed on Sunday,Monday and national holiday

11:00-19:00

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溢れるダイナミズム、積み上げられる分厚い時空。

OTA FINE ARTSでの竹川宣彰さんの個展です。

エレベーターの扉が開いた瞬間に誘われる、壮大な世界。

ほぼ無彩色の光景が現れ、一気に圧倒させられるんです。

まるで外にいるかのような錯覚さえ浮かぶインスタレーション、しかしまず、そんななかに現実感を引き戻すかのように置かれるマップケースが静かにたたずんでいて、それが静かなユーモアをもたらしています。

竹川宣彰17

しかし、このマップケースの引き出しに収められた作品がまた見応えがあるんです。

白、黒、グレーに塗り分けられた砂利で再現されたさまざまな模様。淡々と、そして仄かなコミカルさも添えられたような風合いで、いろんな情景が繰り広げられています。ひとつひとつの引き出しを手前に引いて眺めていくのは実に楽しくて、それぞれの光景に、そして行為に心が踊ります。

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ギャラリー床面のほぼ半分に敷き詰められた砂利にも、おおらかな紋様が施されています。

その真ん中に設置された桟橋と置き石とが、この空間をよりダイレクトに体感することを可能にしてくれていて、それも嬉しいです。

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波打つような模様が広がる床面の砂利に直立するシギの木像...の首に嵌められた海岸線。

東アジアの地図の海岸線が2層に重ねられ、それが首側のほうで広げられています。

ふたつの海岸線がひとつのケースのなかで重ねて収められることで、次官の螺旋を昇っていくような感覚が生み出されています。

ある場所から出発して帰ってくると、戻ってきた場所こそ同じでも時間が違うことで完全に元の場所には戻り得ない、そして行って戻る間にさまざまなものに関わることでその人も違っている...時間を旅する、そういうイメージを表す作品とのことで、造形のユニークさもさることながら、分かるモチーフがそのままのかたちで持ち込まれるからこそ、その伝えたい部分が際立って感じられます。

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そして、今回の展覧会の最大の見所のひとつ、正面の壁面の両端に達する、サイズもスケール感も壮大なモザイク画。

先に紹介したマップケースの作品もそうなのですが、アサリの貝殻に刻まれる輪紋と呼ばれる模様をモチーフに、それらが偶然に生み出した風景を連想させるものを、マップケースや床面のはそれぞれひとつの貝からであるところを、こちらの作品では複数組み合わせて構築されているのだそう。

いくつもの光景や場面がひとつの画面に連なる様子は絵巻さながらのダイナミクスを力強く漲らせ、またそのひとつひとつが貝殻という、それはそれで小さな中に分厚い時間の凝縮を思い起こさせるものであることが、ここから放たれる時空のイメージをさらに重厚なものへと押し上げてくれているように感じられます。

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振り向くと、実にカラフルな色彩に溢れる水平のラインが印象的なペインティング群が。

モノクロームの世界が一気に広がり、華やかさもそこに加わっていきます。

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それぞれの作品には、膨大な時間が凝縮されています。

水平に走るひとつの色彩が一代を表しているようで、その計算で層の数を辿るとここに途方もない時代が収められていることに、あらためて圧倒させられます。

また、最上部が現代を表し、そこへ向かうにつれて時代をさかのぼっていく、その間に挿入されていくモチーフのひとつひとつが醸し出すユーモアも楽しく、また縄文時代とか江戸時代とかの知識を引き出すアプローチも妙に説得力があってまた面白みを加速させているように思えます。

そして随所に挿入されるセミのモチーフと無数に整然と並ぶセミの幼虫がアクセントやリズム感を生み出し、キャッチーな世界へと押し上げているように考えられるのも興味深いです。

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ペインティングで1点、毛色の異なる作品も登場しています。

整然と波の模様が綴られ連なって、その線の濃淡が不思議な立体感を醸し出しているように感じられます。

ここからの展開も楽しみですが、セミのペインティングとアサリのインスタレーションを繋ぐようなイメージももたらされているように感じられ、また違うアプローチから空間に奥行きをもたらしているのも面白いです。

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全体に満ちるダイナミックな作品やインスタレーションに混じって、ちいさな遊び心もそこかしこに。

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初めのほうで、外で観ているかのような錯覚と触れましたが、むしろホントに外で、日差しの下で観てみたいと思わせてくれる世界観です。

さまざまなクリエイティビティが時間軸、空間軸に置ける多方向のベクトルを生み出し、関わりあいながら、観る、体感することへの充実感を心から味わえる展覧会です。

嬉しいことに、会期も延長されました。

またぜひ足を運んで、その爽やかで奥深い臨場感に触れたいと思います。

竹川宣彰22

小村希史 絵画・素描

MUSEUM at TAMADA PROJECTS

東京都中央区月島1-14-7 旭倉庫2F

11/25(火)~12/20(土)日月休

12:00~19:00

小村希史081125.jpg

Marefumi Komura Paitings and Drawings

MUSEUM at TAMADA PROJECTS

1-14-7-2F,Tsukishima,Chuo-ku,Tokyo

11/25(Tue)-12/20(Sat) closed on Monday

12:00-19:00

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油絵を観る、接する充実感。

MUSEUM at TAMADA PROJECTSでの小村希史さんの個展です。

この空間が持つ動線や豊かな空間性が充分に活かされ、小村さんの圧倒的なエネルギーを持つ世界が凄まじい重厚感を伴って迫ります。

イントロダクションから圧倒されます。

背景の黒のグラデーションが放つ、あらゆるものを呑み込み、そして跳ね返すような感触。そこに、アバンギャルドな筆致で画面いっぱいにダイナミックに描かれる男性の肖像。堂々とそびえるような大作の出迎えに、その世界の塚ら強さを分かっていてもなお、度肝を抜かされ、この先に続く世界への期待が高まります。

小村希史001

いくつかに分かれる展示室、その導入位置に歩みを進めた刹那、目に飛び込む展示風景が素晴らしく、その度に足を止め、息を呑み、あたかもそこから先の世界へ踏み込む覚悟を確認するかのように、そこからの光景にしばし見入ってしまいます。

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その、髑髏を描いた作品。

小村さんのアグレッシブな筆致の凄みが際立ち、その臨場感が力強く伝わります。

まるで支持体に絵の具で描くかたちを削り出し、彫り込むようなざっくりとした痕跡。一転して骸骨の目の部分のフラットな黒の色面の深遠さも強いインパクトを放ちます。

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さて、とこの空間へと入ると右手、二人の人間が並ぶ大作に、三たび圧倒させられます。

爛れるような肌の表現が放つ尋常でないアバンギャルドさ。これだけくっきりと意志を持つ、何かを抉り出すかのような筆の運びの痕跡と大胆なケレン味ない描き振りに、にぐいぐいと視線が引き寄せられます。

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この展示室には油彩の他にもさまざまなメディアの作品が並んでいます。

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ドローイングとカセットの一角。

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小村さん自ら編集されたというミックステープの1点1点に貼られるドローイングも壮観です。

オープニングでも配布されたのですが、どれにしようかホントに迷った次第。

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ドローイング群も実に深く、また油彩の重厚感とは違う、遊び心もふんだんに収められた世界が繰り広げられます。

続く展示室とともに額装された作品が展示されているのですが、描くだけではなく、切って貼るなどの要素も盛り込み、ひとつのモチーフで凄まじく深い世界を構築する油彩の作品群の世界観とは異なる、いくつかの情報が一つの画面でかかわり合って独特な物語性をそれぞれが醸し出しています。

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いちばん奥の展示室には、油彩の作品がずらりと並び、いっそうの壮観さで満たされています。

比較的天井も高く、ゆったりとした容積を誇るこの空間で、敢えて全体的に低く作品を展示することで、空間の重心も低く感じられ、それが小村さんが築く世界の重厚さに更なる臨場感をもたらしているように感じられます。

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人物の肖像を大きな画面いっぱいに捉え、大胆な配色と筆使いとで描ききる作品には、ここでもただ圧倒させられます。

全体が醸し出す異様な力強さと説得力、濃密で壮大な瞬間がそこに凝縮されているかのような、尋常でないエネルギーが充満しています。

そして、至近で眺めたとき、各部分の抽象性も魅入られます。アバンギャルドな色彩の混沌がそこかしこに存在し、視界だけでなく時空さえもその力で歪ませる、そういったダイナミズムも伴っているように思えます。

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肖像以外のモチーフも実に魅力的です。

大胆なマチエルの臨場感、画面から立ち上がる絵の具の力強さは、小さな画面であっても見応えがあるんです。

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相当に広い空間での個展でありながら、そのスペースに一歩も譲らない自信に満ちた創造性が伝わるのも痛快です。

また、しっかりと考え抜かれた展示構成も、これだけの濃密な筆致の作品が比較的数多く出展されていながらも、むしろスマートささえ感じられるほどに見事に空間に収められていることへも感嘆が沸き起こります。

小村さんのこのサディスティックとも呼べるようなアバンギャルドな世界、作品の前に立ち、対峙するだけでこちらにもエネルギーが満ちていきます。

珠玉の展覧会です、ぜひこの空間で、直に凄まじい、熱いエネルギーとシャープで冷徹な視線も横たわるようなダイナミズムを体感してほしいです。

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“白”展 The White 大西伸明 セルジオ・カラトローニ 樋口明宏 彦坂敏昭 ローラ・ランカスター

MA2 GALLERY

東京都渋谷区恵比寿3-3-8

11/21(金)~12/20(土)日月祝休

12:00~19:00

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The White Nobuaki Onishi/Sergio Calatroni/Akihiko Higuchi/Toshiaki Hikosaka/Laura Lancaster

MA2 GALLERY

3-3-8,Ebisu,Shibuya-ku,Tokyo

11/21(Fri)-12/20(Sat) closed on Sunday,Monday and national holiday

12:00-19:00 (apponintment:19:00-20:00)

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「白」をテーマに据え、5名のアーティストをフィーチャーした展覧会です。

今年のMA2 GALLERYでは、珠玉のセレクションによるグループショーが数多く企画され、その度に素晴らしい空間を紡ぎ上げてきたと思っているのですが、今回の展覧会も、心地よい静けさが穏やかに横たわるインスタレーションが作られています。

入り口正面の広い壁面にまず、セルジオ・カラトローニさんのインスタレーションが。

壁面に無数に浮かぶ凸面。これが本物の繭だそうで、その白さはひとつひとつがわずかにさまざまな色味を帯びていて、それへの気付きに嬉しさを覚えると同時に、その壁面の上方の窓から射す陽光が流星の軌跡のような影を生み出し、ふわふわとした浮遊感と鋭い動線とが伝わってきます。

Sergio Calatroni 03 Sergio Calatroni 04 Sergio Calatroni 02

Sergio Calatroni 01

ローラ・ランカスターさんの絵画も、テーマの「白」が意識されたような作品です。

おそらく木炭で描かれたドローイング。すべてが繊細な陰影で紡がれていて、そのしっとりとした静けさが印象的です。

Laura Lancaster 01

大きな作品での、さらに微妙な濃淡で描かれる情景にも惹かれます。

絵の中の世界へと導かれるスピードの緩やかさ、だんだんとそこに描かれているものが分かっていくその早さで、ゆっくり気持ちが入っていくんです。

Laura Lancaster 04 Laura Lancaster 03

Laura Lancaster 02

以前からしっかりと拝見したいと思っていた大西伸明さんの作品群。

1階のスペースには、繊細な風合いを奏でるレースのドレスが展示されています。

メッシュ地にシルクスクリーンプリントで施され、絶妙に儚さが滲む、その存在感。美しい造形への感動もさることながら、これが版を使った作品、複製が可能であることが、時間の流れが横方向の動きであるとすると、縦のボリューム、現実の時間と平行に流れ行く、現実から見て「虚の時間」の存在の想像も促してくるかのようです。

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大西伸明01

この空間で彦坂敏昭さんの作品が観られるのも嬉しい限りで。

写真、銅版、鉛筆など、さまざまな素材や手法を巧みに組み上げて創り出す複雑な景色。緻密に展開される無機的な世界観が、硬質な静謐を伴って迫ります。

1階に展示されたモノクロームの作品の、門扉のアコーディオンのかたちのシルエットや、壁面の微妙な紋様などが本来の存在から変遷を経て再構築され、そのかたちや質感からシャープな本質を導き出し、パースさえも一度壊され再生されることで無機質感が強調されたかのような感触が表われ、それが醸し出すクールさがとにかくかっこいいんです。

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彦坂敏昭01

2階へと続く階段の手前の壁面に、樋口明宏さんの手による動物の作品が。

樋口明宏01

剥製の中身となる部分を抜き出し、そこに衣装を着させることで、そのものの存在を変化させたような風合いから、そのものの意味から生命観に至るまで、さまざまなイメージがもたらされます。

樋口明宏03

樋口明宏02

階段を上る途中にももう1頭、衣装も身体も白く、それが危うささえはらんだ無垢さを醸し出しているように思えます。

樋口明宏04

大西さんのレースの作品も。

淡く映し出される陰影も実に美しく、静かな感触が印象的です。

大西伸明13

大西伸明12

樋口さんの額装作品。

標本のように収められた2匹の蛾。その羽に模様が描き出されています。

蛾のもつ妖し気な存在感に重なる緻密な柄。このふたつの美しさが高貴な風合いを繊細に奏でます。

樋口明宏06

樋口明宏05

彦坂さんの新作は、これまでの展開に新しいアプローチがもたらされています。

これまでの手法に加え、スプレーによる色面が加わり、その色の強さとかたちとしての曖昧さが、これまでの硬質な展開から異なる方向へのベクトルを生み出しているように思えます。

シリーズに「手探り」という言葉も用いて、ある視点からコンセプチュアルなアプローチを繰り広げてきた彦坂さんの、さらに緻密に探っていくと同時に、探らざるを得ない部分を敢えて投入することで、描き出す景色に複雑な奥行き感をもたらそうとしている、そういう印象が大変興味深く、今後の展開がホントに楽しみです。

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彦坂敏昭06

2階のガラス張りの壁面の一角に、大西さんのインスタレーションが静かに佇んでいます。

大西伸明11

繰り返されるかたち。

失われる色。

すべて現実の時間の流れのなかで創り出されているクリエイションでありながら、順行逆行織り交ぜてのさまざまな方向性が、レースの作品と同様に深いイメージをもたらしてくれます。

大西伸明06

大西伸明05

高度な再現性がもたらす、現実と非現実との曖昧さがそのふたつの差異をぎりぎりまで詰め、さらにその深遠さを加速させます。

それぞれ、空間に占める体積は実に小さなものであるのですが、それでも充分に空間を支配し、清らかさ、爽やかさも醸し出します。

再現されるモチーフも、骨や角などの有機的な、生命の残り香を感じさせるもので、それが、消え行く存在感、その儚さをさらに不思議なものへと昇華させているようにも思えてきます。

素材自体の、長期的な視点における脆さも加わり、いろんあ思いが交錯、錯綜していくような...。

大西伸明07 大西伸明09

大西伸明08

白、という、その言葉だけでも充分にさまざまなイメージが浮かぶ色彩から、実に幅広い世界が繰り広げられ、それらが繊細に響きあって、豊かな空間がフェき上がっているように感じられます。それぞれのアプローチのユニークさ、どうやって自身のクリエイションに「白」を組み込み、そこに臨場感をもたらすか、そういうポイントもいろんあ思いが涌いてきて、その深遠さに想像を委ねるのも実に心地よいです。

彦坂敏昭10

Bunkamura Art Show 2008 Fear to Familier:恐れから親しみへ」表恒匡 永岡大輔 中山玲佳 柳ヨシカズ 吉沢美沙 渡辺紗知子

BUNKAMURA GALLERY

東京都渋谷区道玄坂2-24-1

11/29(土)~12/8(月)

10:00~19:30

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Bunkamura Art Show 2008 Fear to Familier Nobutata OMOTE Daisuke NAGAOKA Reika NAKAYAMA Yoshikazu YANAGI Misa YOSHIZAWA Sachiko WATANABE

Bunkamura Gallery

2-24-1,Dogenzaka,Shibuya-ku,Tokyo

11/29(Sat)-12/8(Mon)

10:00-19:30

Google Translate(to English)

これまで夏に開催されてきたBUNKAMURA ART SHOW、今年は年の瀬のこの季節の開催で、6名のアーティストがフィーチャーされ、バリエーションに富んだ構成が楽しい展覧会になっています!

まず、モリユウギャラリー東京での個展も印象的だった中山玲佳さんの大作がお出迎え。

モノクロの木の実のシルエットと、ダイナミックに絵の具が垂れヴィヴィッドな配色が強烈に広がるのを背景に、またこちらもモノクロで描かれたヤギ。もう1点同じサイズの作品が並び、いきなりたった2点で壁面をほぼ埋め尽くす濃密な展開に気持ちが高揚します。

中山玲佳006

小品(あくまで比較的に、ですけど)も見応えがあります。

ヴィヴィッドな色彩とモノクロとが奏でるギャップ、さらには画面から盛り上がる絵の具の質感も、力強い臨場感をもたらします。

中山玲佳005

抽象と具象とのバランス感覚、むしろギャップを前面に押し出したかのような大胆な構成が、中山さんが繰り広げる世界の大きな、痛快な魅力です。

そこにさらにもたらされるさまざまな質感、ユニークなマチエルが、ものとしての迫力と壮大なスケール感を醸し出してくれます。

中山玲佳002 中山玲佳003 中山玲佳004

中山玲佳001

表恒匡さん、今回唯一の写真作品。

闇の浮かぶ光が艶やかに画面に納められ、フューチャリスティックな感触が漂います。

表恒匡01

大判の作品は、展示方法もユニークです。

敢えて画面をたわませて展示し、画面にもたらされる立体的な歪みがそこに映し出される世界に幻想的な歪みをもたらし、同時に映り込みも奇妙な要素となって、不思議な臨場感を構築しているように感じられます。

表恒匡02

大きな画面、その広さから考えると実に狭いスペースに凝縮される夜の都市の表情。

クールなかっこよさが冷静な静謐とともに鮮烈に放たれ、シャープにイマジネーションが刺激されます。

表恒匡04

表恒匡03

柳ヨシカズさんのペインティング、お馴染みのシンメトリーの構成にさらに磨きがかかり、今回は人形をモチーフに、もともと左右対称に作られたものを「敢えて」左右対称に描くというのが、そのアプローチのユニークさをより鮮烈に際立たせているように感じられます。

柳ヨシカズ102

光を反転させたような色彩の作品が強烈なインパクトを放ちます。

シンメトリーの基軸をわずかに顔の中心から外し、奇妙に頭部が描き出されていて、そのシュールな感触が奇妙な雰囲気をシャープに奏でているような。

柳ヨシカズ103

同じ構図の色違いの作品も、その再現性の精度の凄みがシュールさを醸し出してきます。

ひとつひとつは一見自然で、シンメトリーだからこその違和感を感じないのですが、それらが左右の対称性だけでなく、さらにほぼ完璧に複製されていることにさまざまな感嘆が沸き起こって来るんです。

柳ヨシカズ101

大阪MEMとCASOでの展示が印象的だった渡辺紗知子さん、東京で観られるのが嬉しい!

渡辺紗知子101

一つの画面で繰り広げられるさまざまな場面性。

最初に紹介した中山さんのそれとは違う質感の、抽象と具象の同居。同じモチーフの繰り返しが発するリズムに面食らい、そこかしこに潜むさまざまなキャラクターのアクセントも絵の世界に具象性を持ち込むことが、ペインティングの勢いを感じさせる、衝動に任せた大胆な筆致にひとつの説得力を生み出しているように思えます。

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渡辺紗知子102

大作と小品、それぞれが持つ物語性の不思議さ、ぎりぎりの捕らえ所の無さも大きな魅力です。

細かい描き込みとダイナミックな筆致とが絡み合って、紡ぎ出される歪む時空。編み上げられたある瞬間を1本の糸にほどいて、そこからまた再び紡ぎ出したかのような、不思議な心地よさがあって、ユニークなイメージを感じさせてくれる歪みが大変興味深いです。

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ほっこりとした吉沢美沙さんの世界も楽しいです。

ヴィヴィッドな、鮮烈な色彩やインパクトが溢れる今回のセレクションの中で、ふわっとした色彩がぽんぽんと灯る、ほっとする一角が広がっています。

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吉沢美沙01

軽快なリズム感が楽しい作品が並んでいます。

紙におおらかな空間性で描かれるさまざまなシーン。ころころと奏でられる物語性にも和まされます。

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吉沢美沙05

穏やかな色使いや細かい描き込み、作品によってところどころに織り込まれる、別の紙に描かれたものを切ったり貼ったりという遊び心もまた嬉しかったり。水彩絵の具の滲みのやわらかさも、穏やかな色調も、あたたかい印象を紡ぎ出してくれます。

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吉沢美沙08

お馴染み、永岡大輔さんの作品群、圧巻の細密の筆致です。

モノクロームの幻想世界が相変わらずのダイナミクスを伴って迫ります。

永岡大輔201

永岡大輔202

奥のパーテーションに展示された作品は、永岡さんのユニークさをより際立たせて表してるような印象です。

緻密な具象表現と、有機的な抽象のモチーフ、さらにキャラクタリスティックな要素も織り交ぜられた魑魅魍魎とした世界。描く、切るといったさまざまな行程が経られ、また紙がそのまま飾られていることの脆さと、そこに収められている世界の分厚さとのギャップも興味深い展開をもたらしています。

永岡大輔204 永岡大輔205 永岡大輔206

永岡大輔203

また、永岡さんの映像作品も外の壁面に上映されています。

これをギャラリーの中から眺めるのがまた面白くて。観ているのに観られているシチュエーションが創り出されています。

実にユニークな個性がパッケージされています。見応え充分の、新鮮な発見にも満ちた展覧会です!

阿部未奈子展

BASE GALLERY

東京都中央区日本橋茅場町1-1-6 小浦第一ビル1F

11/20(木)~12/20(土)日祝休

11:00~19:00

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Minako Abe exhibition

BASE GALLERY

1-1-6-1F,Nihonbashi-kayambacho,Chuo-ku,TYokyo

11/20(Thu)-2/20(Sat) closed on Sunday and national holiday

11:00-19:00

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オーバードーズな感覚の痛快さ。

BASE GALLERYでの阿部未奈子さんの個展です。

前回の個展、レントゲンヴェルケでのグループショーなどで作品を拝見してきて、マスキングを駆使して構築されるマチエルのシャープさと、ヴィヴィッドな色彩感、そして何より、パソコン上で写真にエフェクトをかけて画面の一部にズレを生み出し、ユニークな諧調の解釈とで描き出される風景のソリッドさが鋭く鮮烈なインパクトをその都度もたらしてくれたのですが、今回は歪んだ部分とそうでない部分とのギャップがさらに加速し、まさにオーバードーズな感触が画面から強く放たれているように感じられます。

鮮やかな緑や青で描かれた雄大な景色。

ずっと遠くに横たわる地平線のおおらかさ、ゆったりと流れる河、茶色い屋根の街並み、そういった具体的なモチーフがリアルに再現される一方、そこを力強く浸食していく歪みが縮尺の解釈へも影響を及ぼし、何かさらに大きいものが加重をかけてきているかのような、抵抗不可な力の存在が思い浮かんできます。絵だけでなく、ここに流れる時間もダイナミックに歪まされているような感触に圧倒されるんです。

阿部未奈子110 阿部未奈子108 阿部未奈子109 阿部未奈子107

阿部未奈子106

いっそう大胆になっていく歪みは、さらにその光景の原型が失われる寸前へと押し進められます。

両サイドの水平に流れる色面の重なりの整然とした構造、逆におそらく元は木々のシルエットだったものに加えられる歪みが、そのフォルムがまだ残っているのにより混沌とした印象を受けるのも面白いです。

阿部未奈子101

さらに歪みが加速。

ここまで原形をとどめないものになってもなお、風景の感触が醸し出されているのも興味深いです。

歪む部分のコントロールされた色彩にも興味が強く引き寄せられます。

ギリギリ細く繋がる色面さえも、おおらかに広がる部分といっさい変わらぬ質感で彩色されていて、その硬質な感触、ソリッドさにも魅入られます。

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阿部未奈子102

今回の個展でもっとも新しくでいた作品。

抽象性が高まり、歪みが幾重にもかけられたかのような感じで、もはやそれが何であるか分からないくらいの世界観。

ひとつの時間の流れに乗っていては観ることの出来ない、凄まじく異次元な風合いが放つ静謐。緑が極端に減り、青もそれが持つ空や海といった自然物を連想させる要素がほぼ失せて、むしろ自然界に存在しない青の印象が強まって感じられます。また、黒の分量が多くなっているのもこの世界の掴みきれない感触を加速させているように思え、それがまたかっこいいんです。

阿部未奈子111

そういった加速する歪みの展開の一方で、エフェクティブな歪みがいっさい登場しない作品も。

野原の夕景を思わせる、その光景。配色もナチュラルで、穏やかさがやさしく広がっているようにも思える一方で、他の作品の歪みとそうでない部分の鮮烈なギャップを体感していると、逆にこの光景に危うさを感じてしまうのも興味深いです。

事実、この作品はいくつかの風景をコラージュして構成しているそうで、そういった情報を伺うと妙に納得したり。

阿部未奈子114 阿部未奈子115

阿部未奈子113

作品ひとつひとつ、もっというとすべての部分から、作り手のストイックさが伝わってきます。

ひとつのルールを粛々とこなすことで完成された...そう思わせてくれる力強い世界。無機的な色使いやマチエルも、あたかもパソコン上でフェーダーをコントロールして製作したかのようなグラフィカルな雰囲気を充満させて迫るのですが、それがキャンバスに描かれたペインティングであること、目にしているものがすべて実にアナログな過程を経て作り上げられたことであるというのが、大きな魅力でもあり、圧倒的な迫力を生み出しているように思えます。

どのペインターもそうですが、特に阿部さんの作品は直に観て、それがペインティングであることの喜びが大きいです。

実際にこの大きな画面と対峙し、ソリッドに歪まされる感覚を体感してほしいです。

阿部未奈子112

《11/28》

Bunkamura Art Show 2008 Fear to Familier:恐れから親しみへ」表恒匡 永岡大輔 中山玲佳 柳ヨシカズ 吉沢美沙 渡辺紗知子

BUNKAMURA GALLERY

東京都渋谷区道玄坂2-24-1

11/29(土)~12/8(月)

10:00~19:30

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これまで夏に開催されていたBUNKAMURA ART SHOW、今年はこの季節に開催。しかも今回はクレジットされたアーティスト全員が基本的に平面で、それぞれ個性が発揮され、見応えのある構成となっています。

中山玲佳さんの大作に出迎えられ、表恒匡さんのフューチャリスティックな写真作品、渡辺紗知子さんのエキゾチックさが溌剌とした筆致のなかに入り込むペインティング。柳ヨシカズさんのシンメトリー世界はより精度を増し、ほっこりとした世界が紡がれる吉沢美沙さんのやさしい色彩の作品、そしてお馴染みの永岡大輔さんの作品が、外の壁に上映されている映像作品とともに、永岡さんらしいクリエイションがずらりと並びます。

横浜アート&ホームコレクション

横浜ホームコレクション

神奈川県横浜市西区みなとみらい3-3

11/28(金)~11/29(土)

11:00~20:00

横浜A&H 081128.jpg

ああ!

たった!

たった2日だけの展示企画にぃ!

なんでそんなに気合い入れてんだよぉぉ!Σ( ̄口 ̄;)

金曜日の夜7時15分に到着して観始めて、ぜんぜん時間が足りないのorz

入るシショールームごとにまるでトラップのように足を止めざるを得ない空間があるしorz

ステキな作品と空間に出会う度に、口では怒りながら目尻を下げていた僕ですが何か。

何かぁぁっ!

ジャンボスズキさんのおおらかな世界が壁を占めるTSCA×三井ホーム(第一)、階段を上っていちばん奥のベッドルームに突如現れる下出和美さんの大作とベッドの間接照明に照らされる小品がかわいくてかわいくてのヴォイス・ギャラリーpfs/w×住友林業(第一)、秋山幸さんのドローイングのふわふわとした色の滲みが妖しくてまたかわいいmagical,ARTROOM×東急ホームズ、支持体にしろアクリルのボードを採用、水滴のようなかたちが綴る世界がいっそうのおおらかさと奥行き感をもたらしていた飯塚菜菜さんの作品がもうたまらなかった谷門美術×三井ホーム(第二)、田中秀和さんの作品が、田中さんの作品が、田中さんの作品があるぅぅぅ!池谷保さんの小品もあるぅぅぅ冨谷悦子さんも田中圭介さんも小林香織さんもあるぅぅぅすてきぃぃぃの児玉画廊|東京/山本現代×住友林業(第二)、和室の花澤武夫さんのペインティングと牛島孝さんの日本画とのコンボに感涙、階段にちょこんと置かれた古川弓子さんのちいさな世界にまた感涙のGALLERY SIDE2×旭化成ヘーベルハウス、暗いベッドルームにほんのりシャープに浮かび上がる山口理一さんの硬質なヌード写真がまた空間に合っていての東京画廊+BTAP×住友林業(ツーバイフォー)を観たところで制限時間オーバー orz

というわけで今年いちばん面白かったアートフェアでした。

以前から住宅展示場でアートフェアをやったら面白いとは思っていましたが、こんなに面白いとはぁぁぁ!

日曜日はショールーム自体を観に来るお客さんが多いとのことで金土のみの開催となったようなのですが、何とかもう少し怪奇眺めで来年以降もお願いしたいです何卒何卒。

小西紀行展「千年生きる」

横浜美術館 カフェ小倉山

神奈川県横浜市西区みなとみらい3-4-1

11/8(土)~ 1/25(日)木休(12/25開館)

11:00~18:00

小西紀行081118.jpg

赤い点で描かれるつぶらな瞳を持った人の肖像。多くの作品において黒を基調とした背景が醸し出すアバンギャルドな世界観もさらに深みが重なって感じられます。

スペースのいろんな場所、位置に展示され、見つける楽しさもあったり。

小西さんが描く世界の魅力が相変わらずの深みを放っていて、嬉しくなります。

《11/29》

山岡夏子展 Landscape[re]

ギャラリーなつかb.p

東京都中央区銀座5-8-17 GINZA PLAZA58 8F

11/24(月)~11/29(土)11:30~18:30(最終日:~17:30)

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近代高層建築の壁面を連想させる無機的なリズムに満ちた銅版画が面白い山岡夏子さん。

昨年は大作と小品を並べたオーソドックスな展開でしたが、今回は空間性が活かされ、キューブ状のパネルにマウントされた銅版画群がコンパクトな空間を覆い、さらに硬質なリズムが紡がれていました。

山岡夏子002 山岡夏子004

山岡夏子003

通路側の壁面1カ所に少しサイズが違う作品のエリアもユニークなアクセントに。

山岡夏子005

ひとつひとつのかわいらしい感触と、全体の壮観なインパクトが印象深かったです。

山岡夏子001

永井健志×松下雅寿 Vol.2

紫鴻画廊

東京都中央区日本橋3-6-9 箔屋町ビル4F

11/27(木)~12/10(水)日休

11:00~18:00

ふたりの日本画家をフィーチャーした展覧会、昨年と同じ組合せで今年も。

それぞれ数点ずつの出品ですが、その描かれる世界観に充分に魅せられます。

松下雅寿さん。

岩場のごつごつとした感触や滝の飛沫といった、荒々しい情景を重厚な静謐感とともに描き上げ、その力強さに深い感動がもたらされます。

そのなかで、その重厚感から解き放たれたような、神々しい浮遊感に満ちた作品もあり、腕を組んで黙考するような世界から目を開け、先に広がる世界を見上げるような新鮮な展開に新たな魅力が感じられます。

永井健志さんもその鮮やかな色彩に磨きがかかります。

鋼のような鋭さをたたえた稜線の、放たれる光の軌跡のような魅力が立ちのぼる絢爛を思わせてくれます。時折見せる、陰るような渋い表情も静かな美しさを奏でているようで印象的です。

千葉正也 新作展「三ツ境」

SHUGOARTS

東京都江東区清澄1-3-2-5F

11/29(土)~12/20(土)日月祝休

12:00~19:00

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そういう風になっているのか、という感心と、実際の作品が放つ明るい色彩感にも魅せられます。

さまざまな風景をバックに、手前に置かれる有機的なかたちの白の粘土の塊が描かれるというキッチュなシチュエーションは、予想以上に自然な説得力に満ちているように感じられるのも実に新鮮です。

そしてそこから奏でられる物語にもゆっくりと心を委ねてみたいです。

増井淑乃

TKG Contemporary

東京都江東区清澄1-3-2-6F

11/29(土)~12/20(土)日月祝休

12:00~19:00

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画面に緻密に施される無数の点。それによって繰り出される緻密な陰影と奥行き感が、不思議な深みをもたらします。

さらにそこに登場する動物たちの姿や仕草が、ファンタジックな世界を奏でているような感触も印象的です。

細密のかわいらしさ、じっくりと眺めて伝わる軽快で同時に深遠なリズムが嬉しいです。

玉井健司「重力亀」

ZENSHI

東京都江東区清澄1-3-2-6F

11/18(火)~12/20(土)日月祝休

12:00~19:00

なんかもうすごいことになっててびっくり!

支持体を選ばない、というか

それってあんた!Σ( ̄口 ̄;)

と思わずにはいられないようなものまで用いたペインティングが、絵の具の質感を強烈に放ち、大胆すぎるインスタレーションとともに凄まじくヴィヴィッドな空間を構築しています。

塩川彩生「鏡の中の影」

KIDO Press,Inc

東京都江東区清澄1-3-2-6F

11/29(土)~12/27(土)日月祝休

12:00~19:00

塩川彩生081129.jpg

ふわふわと曖昧な色の広がりはそのままに、滲んでぼやけたところやくっきりとしたかたちがコントラストをもたらし、さらに深みのある世界が生み出されています。

醸し出される物語性のゆったりとしたやさしい感じが心に穏やかに響きます。

- a scale - 篠原奈美子 個展

SAKURA GALLERY

東京都江東区常盤2-10-10

11/25(火)~ 12/7(日)月休

12:00~19:00(最終日:~17:00)

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!Σ( ̄口 ̄;)

壁にワニが!Σ( ̄口 ̄;)

篠原奈美子01

と相当なインパクトを放つインスタレーションが面白い!

FRPのオブジェでダイナミックな造形を生み出す篠原奈美子さん。

壁を這う双頭の蛇のオブジェもかっこいい!

篠原奈美子02

篠原奈美子03

そして、DMにも採用されているずんぐりとしたアルマジロらしき動物のオブジェの存在感も強烈です。

大胆な造形と緻密な作り込みが大kな見応えとユーモラスな面白みを生み出しています。

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篠原奈美子07

肥沼義幸「Inland War」

ART TRACE GALLERY

東京都墨田区緑2-13-19 秋山ビル1F

11/28(金)~12/23(火)水木休

12:00~19:00(金:~21:00)

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おそらく木炭で描かれたモノクロームの作品と、Gallery Terra Tokyoでの個展でのあの透明感溢れる深い色彩の世界とが隣り合って、広い空間を満たします。

揺らぐような空気感も印象的です。

杉田陽平展「プラトニック・ペインティング」

GALLERY MoMo Ryogoku

東京都墨田区亀沢1-7-15

11/29(土)~12/20(土)日月祝休

11:00~19:00

杉田陽平081129.jpg

独創的な手法の可能性をどんどんと進化、深化させる杉田さん。

今回も、分厚い密度の色彩の重なりが放つヴィヴィッドな抽象性と、全体に描き上げられるダイナミックな世界の面白さが満ちていて、それがこの広い空間で観られることがまた嬉しく感じられます。

山本藍子展 piggy

マキイマサルファインアーツ

東京都台東区浅草橋1-7-7

11/29(土)~12/11(木)金休

11:00~19:00(最終日:~17:00)

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空間全体を覆うピンク色、そこに走る無数の白い線。

豚がキュートに描かれ、大作が壁面にすらりと並び、オブジェも含めて圧倒的な世界が繰り広げられています。

やわらかで繊細な色彩とそこで展開されるどこかサディスティックな風合いも印象的です。

Galerie Sho Projects SOMETHING SWEET 東美貴子 クララ・デジレ 伊東明日香 大槻素子

Galerie Sho Contemporary Art

東京都中央区日本橋3-2-9 三晶ビル B1F

11/25(火)~12/20(土)日祝休

11:00~19:00(土:~17:00)

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ポップでキュートな世界がめくるめく展開される空間・・・!

くっきりと描くクララ・デジレさんと伊藤明日香さん、滲むフォルムで甘く描く大槻素子さんと東美貴子さん、それぞれの味わいが絶妙なコントラストを生み出し、さまざまなかわいらしさがそこかしこから満ち出しています。

北川瑶子 on the spoon

GALLERY TERRA TOKYO

東京都港区麻布台2-3-5 NOAビル1F

11/29(土)~12/22(月)日祝休

10:00~19:00

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透明感を滲ませた深い赤が醸し出す妖し気なファンタジー。

精緻な描写でじっくりと繰り広げられる物語性が、さまざまなイメージをもたらしてくれます。

統一感とそのなかの絶妙なバリエーションが、巧みな展開を生み出しているように感じられ、深く印象に残ります。

《12/2》

桑名紗衣子 個展「Some floats」

Azabu Art Salon Tokyo

東京都港区麻布十番1-5-10

11/26(水)~12/2(火)

11:30~18:30

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ユニークな陶芸です。

まず、いきなりどんと置かれた抽象的な造形に驚かされます。

だんだんとそれが、椅子とテーブルをエアキャップで包んだものだと分かり、さらにそこかしこに猫のプリントがあったりして、擬態的なイメージと不思議な感触とが広がっていきます。

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桑名紗衣子01

壁掛けの小品も楽しいです。

セラミックの西洋的な手法の中に引用されるジャポネスク。

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精緻な作り込みと焼き物としての味わい、そしてユーモアが独特の雰囲気を紡ぎ出しています。

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室井公美子展

GALLERY MoMo Roppongi

東京都港区六本木6-2-6 サンビル第3 2F

12/2(火)~12/20(土)日月祝休

12:00~19:00

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ぎゅっと絵の具の盛り上がりが発する凝縮感と、おおらかに広がる色彩とのギャップがさらに際立ち、そのコントラストが深いダイナミズムを刻む抽象世界。

前回の個展からさらに、描きたい、見せたい景色に確信がもたらされてるようない印象を受けます。

吉祥寺で同時開催される個展とあわせて、じっくりと対峙したいです。

SHADOWY TALE 唐木優 千ヶ崎慶一 寺島茜 平川恒太 伏黒歩

ギャラリーニモード

東京都渋谷区神宮前5-23-3

12/2(火)~12/14(日)月休

12:00~19:00

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フレッシュな個性が5つ並び、楽しい空間が創り出さされています。

やさしい風景の広がりが心地よい寺島茜さん、有機的でリズミックなアプローチが冴える平川恒太さんほか、それぞれに面白みや味わいを充満させています。

《12/3》

小原祐介展

GALLERY SHOREWOOD

東京都港区南青山3-9-5

11/17(月)~12/11(木)日祝休

11:00~18:00

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これまでグループ展などで拝見してきた小原さんの個展。

日本画家らしいていねいで精緻な表現がさらに冴えます。

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小原さんというと「朱の使い手」というイメージを持っているのですが、その巧みさにも拍車がかかり、大胆な空間性とともに、実に奥深い、そして味わい深い世界が繰り広げられています。

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宮澤男爵・古林希望 消息/coming and going

東京画廊

東京都中央区銀座8-10-5-7F

12/3(水)~ 12/24(水)日月祝休

11:00~19:00(土:~17:00)

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これは好き!

緻密な点描で、ちょっとたとえが良くないですがカビのようなふわりとした繊細な広がりが楽しい古林希望さんの鉛筆の作品、有機的な線の流れによって人の姿を浮かび上がらせるように描く宮澤男爵さん、それぞれの作品が壁だけでなく設置された台の上にもずらりと並んで展示され、それぞれの個性をじっくりと堪能できます。

池谷保「入れかわる」

児玉画廊|東京

東京都港区白金3-1-15-1F

11/12(水)~12/20(土)日月祝休

11:00~19:00

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Tamotsu Ikeya "Shifting"

Kodama Gallery Tokyo

3-1-15-1F,Shirokane,Minato-ku,Tokyo

11/12(Sat)-12/20(Sat) closed on sunday,Monday and national holiday

11:00-19:00

Google Translate(to English)

絵の具の臨場感が奏でる、めくるめく面白さ・・・!

児玉画廊|東京での池谷保さんの個展です。

入り口カウンターすぐに展示されたドローイングがちょこんとお出迎え。

この軽さにだまされそうになるのですが...。

池谷保05

カウンター向かいの応接スペースに展示された大作から強烈な臨場感を発せられ、力強い、そしてキャッチーな臨場感が迫ります。

渦を巻く激しい立体感、ところどころにもたらされるシミ、一面に広がるピンクベージュ、それが何かに見えるから、ということではなく、シンプルに「もの」としての説得力に感嘆させられます。

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池谷保01

メインスペースに入ると、ヴィヴィッドな色彩が溢れ返っていて、その状況が高揚感を煽ります。

グラフィカルなコントロールがなされた作品、波打つような有機的なかたちの模様がポップな動きのイメージをもたらします。

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一転して、衝動をそのまま画面に叩き付けたようなアバンギャルドな世界が構築されている作品のサディスティックさも印象的です。

カラフルな色彩がふんだんに用いられることで、アガる感触のスピード感も凄みをもって放たれます。

重なる無数の色が複雑な立体感、奥行き感を生み出し、ぐんぐんと想像が引っ張り出されるような感じも痛快です。

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池谷保18

最大サイズの大作の迫力もすごい!

「いったいどういうことになっているんだ!」と叫びたくなるくらいの激しさが画面上に繰り広げられています。

色彩のアグレッシブな広がりや飛沫が無限の展開性を解き放ち、圧倒的な臨場感が伝わります。

そして、至近で眺めたときに、画面から無数に生える、バラの刺のような絵の具の盛り上がりにも魅入られます。びっしりと画面を覆う鋭い先端、それらが醸し出す繊細さ、危うさも、この世界の鮮烈なアクセントとなって迫ります。

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ケレン味ない色彩感覚が生み出すリズミカルさがとにかく気持ちいいです。

隣同士の色がお互いが放つ強さ、淡さ、可憐さで、ぶつかり合い、響きあい、さまざまなコントラストやギャップを放ち、その無数の組み合わせがアッパーな雰囲気を盛り上げていきます。

池谷保22

池谷保17

一方、シンプルな色彩構成の作品のスマートさ、そして、それだからこそ際立つ画面の立体感も見応えがあります。

にゅるにゅると、まるで粘土をこねて細長くしたような油絵の具の造形、その紐状の立体物が画面を、それも表面だけでなく側面までもをぐるりと覆って、全体で「もの」としての質感をぐんと立ち上がらせる感触も、一度はまるとこの魅力から抜け出せないほどの力を感じます。

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抽象世界が抽象世界として面白い、なかなかこうい感動は得難く、そえゆえに池谷さんが繰り出してきたヴィヴィッドで艶かしくて、キュートでアグレッシブな世界におおいにはまり込んだ次第です。

このダイナミズムのポップな痛快さがとにかく堪らないです!

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城戸悠巳子 個展“ビ・ビ・ビ”

YOKOI FINE ART

東京都港区東麻布1-4-3 木内第二ビル6F

11/22(土)~12/6(土)日祝休

11:00~19:00

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Yukiko Kido "bi bi bi"

YOKOI FINE ART

1-4-3-6F,Higashi-azabu,Minato-ku,Tokyo

11/22(Sat)-12/6(Sat) closed on Sunday and natinoal holiday

11:00-19:00

Google Translate(to English)

リアリティ、歪み、ユーモアが築き上げるメロウネス。

YOKOI FINE ARTでの城戸悠巳子さんの個展です。

ギャラリーに入ってまず左手の夕景を思わせる作品に心が向かいます。

今回の展示の中でもひときわ暗めの色彩感で描かれた作品。具体的にというよりむしろ感覚的に、つまり少なくとも僕の記憶の引き出しからの確信はもたらされない、曖昧ながらもここが何所だか分かる、そう思わせてくれるだけの充分な臨場感を持って静かに迫るような印象です。

駅のホームを過ぎ行く電車の車窓が滲む残層のように描かれ、それが時間の流れとしての臨場感を生み出しつつ、その奥の上方へと時空がひゅうっと引き込まれていくような歪みが・・・この情景が日本だったとして・・・この過ぎ行く車両の進行方向が本来であれば画面右へと向かっていくところがむしろ逆のベクトルへ、時空のズレへと引き寄せられていくようにも想像され、それが実に不思議な、曖昧さが養分を吸収してその曖昧のかたちを具体化、顕著にさせていったようなイメージを惹起させてくれるような気がします。

城戸悠巳子004 城戸悠巳子002 城戸悠巳子003

城戸悠巳子001

入り口正面の、今回もっとも大きな作品。

オーソドックスな遊園地のワンシーン。しかしこの縮尺にして、さまざまな要素のフォーカスのされ具合に微妙なズレがあるように感じられ、全体的に絶妙にぼやけた風合いの中にさまざまな質感が隣り合って、それが複雑で、それでいて甘いコントラストを生み出しているように感じられます。

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並ぶ作品、それぞれが、ナチュラルさと違和感との同居に戸惑わされ、だんだんと見つかっていく現実とのズレ、そしてそのさまざまな質感のユーモアに心が引き込まれていきます。

観覧車に座る女の子。もちろんそれが「そういう絵」という第一印象なのですが、膝に置く手の上に浮かぶレインドロップとしてはずいぶんと大きな水滴のようなものや、観覧車のフレームの歪みなど、ワケが分からないディテールが見れば見るほどに積み上げられていって、一見自然に見えるさまざまな要素へ疑いの目が向かい、むしろその発見への期待が静かな高揚感をもたらしてくれるんです。

その過程を生み出すのも、この絶妙な筆致があってこそ、ように思えます。

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ショートケーキのズームアップ。

トッピングのベリーから溶け出す赤の妖し気な感触。実にリアルに描かれているはずなのですが、普通なら「おいしそう」というイメージが浮かびそうなところが、なぜかその妖しさが奏でるストーリー性に心が傾いていきます。いったいどんな物語が、人の思いがこの場面を通り過ぎていったのだろう、と...。

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女性の胸元を描いた作品、こちらのディテールも実に見応えがあります。

城戸さんの作品としては極度にシャープに描かれた部分、胸元に流れる髪の毛や金のネックレスなどと、ぼやけてそのフォルムも微妙に曖昧に表現された他の要素とのコントラスト。ほどよく距離を置いて眺めてみると、写真と見紛うほどのリアリティがそこにあるのですが、近づくとさまざまなギャップが、深い謎めきをもたらしてくれるんです。全体を覆うベルベットのような筆致の感触と、その風合いを消すことなく艶やかにコーティングされた仕上がりがまた、作品の「もの」としての精度への思いにも奥行きを生み出しているように思えます。

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DMにも採用された作品が、ユーモアの極みを大胆に表出しています。

「ビビビ」と交わされる視線が

そっちとか!Σ( ̄口 ̄;)

・・・・・

新郎の立場は!Σ( ̄口 ̄;)

といった具合でして、ひとりの小説家の掌編小説集のなかに収められた、極端に「笑い」を追求されたような一遍のように強いインパクトで、でもディテールの味わいはやはり独特...そういう印象が伝わります。

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昨年の個展で拝見したときの新鮮さに、技術的、物語的、いろんな意味での「巧みさ」が加えられ、さまざまなテクスチャーでいっそう豊かなシチュエーションが綴られているように感じられます。

その一遍一遍に触れ、じっくりとそこから始まる不思議なストーリーに心をゆだねたい、時間をかけて味わいたい世界です。

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幻日の箱 大島梢 野田幸江

IID GALLERY

東京都世田谷区池尻2-4-5 IID 世田谷ものづくり学校1F

11/18(火)~11/30(日)月休(祝日の場合開廊、翌日休)

11:00~19:00

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"Parhelion Box" Kozue Oshima Yukie Noda

IID GALLERY

2-4-5-1F,Ikejiri,Setagaya-ku,Tokyo

11/18(Tue)-11/30(Sun) cloesd on Monday

11:00-19:00

Google Translate(to English)

響きあう、ふたつの細密の世界。

IID GALLERYでの、大島梢さんと野田幸江さんの作品展です。

まず、一頭の牛がお出迎え。おそらく丸の内カウパレードで発表された作品かと。

大島さんの手による尋常でない密度の柄がびっしりと施され、牛の立体的な凹凸が平面で拝見するときとは異なるうねりを生み出していて、見応え充分。

その力強さをたたえた佇まいも、緻密な混沌に深遠さをもたらしているように感じられます。

大島梢202 大島梢203 大島梢204

大島梢201

今回の展覧会はNPO団体CATのコレクションからの出品。大島さんが上の牛の立体1点と平面作品、そして野田さんは大作1点の展示構成で、それぞれの味わいでダイナミックな物語性が展開された作品がひとつの空間で響きあい、またお互いの作風のコントラストも際立って感じられました。

その野田さんの作品、渋い褐色を背景に、無数の場面が鉛筆で描かれていて、とにかくその情報量の多さに圧倒されるtぽ同時に、それらひとつひとつの深いストーリー性、さらには隣り合い、または離れた物語が想像の中で繋がりあって、絵巻のような壮大な展開が紡がれていきます。

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ある場所、もちろんそれは知らないのだけど、具体的にそこを思い浮かべられるようなところもあれば、そこに引力があるかのような凄まじい濃密さで鑑賞者の視線を引き込むような場所もあったり。

天地の感覚が失せ、重力さえも抗えないうような密度が醸し出す異様な妖しさ。その線の風合いは実に繊細で儚げながら、気が遠くなるような深みがじわりとにじり寄り、伝わってきます。

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野田幸江13

シュールな映画を観ているかのような錯覚も沸き起こります。

大胆な縮尺の解釈を持ち込んで描かれるさまざまな情景は、捉えられない時の流れのイメージを醸し出しどんな展開を経てこの場面へと辿り着き、これからどうなっていくのかも分からない、これまでの概念では把握しきれない質感に満ちています。

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画面の奥へ、ずっと遠くへと繋がっているような奥行き感。

たたでさえ大きな画面であるのに、描かれる場面の多くは壮大なスケール感を放っていて、整理しきれない情報の量に呆然としてしまいます。

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この作品、ろうそくを灯し、その仄かな灯りで画面を照らしながら描かれたのだそう。

ところどころに蝋が画面に付着していたりもしていて、実に妖し気な行程を辿った様子が深い臨場感とともに迫ります。

そういったこともあってなのか、作品を眺めていて、もちろん全体の荘厳さにも圧倒されながら、じっくりと至近で眺め始めると次々に表われる無数の場面が大まかな完結を持って感じられるんです。

背景の褐色の微妙なグラデーションにレイヤー状に重ねられる光景は実に朧げで、ふっとした気の動きで儚く消えてしまいそうな繊細さも漂わせています。曖昧で、神々しくて...何千年、何万年も経て紡がれ続けてきた、ある記憶をパノラマのように描き出したかのような...。

この深みにこういったかたちで体感できたことは大変貴重のように思えます。

野田幸江01

野田さんのどこまでも妖しく、深い世界観から一転、大島さんの平面作品群からは、未来的な明るさを思わせるシャープでフレッシュな雰囲気がほとばしります。

大島梢210

筆での細密表現にも、そしてダイナミックな縮尺感を大胆に織り込む構成にもさらに磨きがかかります。

さまざまな瞬間をひとつの画面に組み上げたような世界。鮮やかな色彩で描かれる蝶や花、植物などの生物からは生命の感触に溢れ、そこにモクモクと湧く雲や怒濤の動的イメージを放つ滝が煽り、尋常でないエネルギーを封じ込めたような感触は何とも痛快です。

そこにさらに飛ぶ鳩の群れなどのイメージ的なものも織り込まれているのも印象的で、深みがさらにおおらかに加速します。

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それぞれに細密の味わいが素晴らしいクリエイションながら、伝わる感覚の差異は大きく、そのギャップも印象的です。

腕を組み、顎に手を当てながらそこに描かれる深遠さに心をゆだねる野田さんの世界。

気が遠くなるほどの緻密な描き込みでありながら、情動的、刹那的な感触を鋭く放つ大島さんの世界。

それぞれに強烈なインパクトをもたらしてくれます。今後の展開も楽しみです!