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幕内政治が覗いたおすすめアートイベント情報
2009年4月アーカイブ

元田久治 個展

Ain Soph Dispatch

愛知県名古屋市西区那古野2-16-10

4/18(土)~5/2(土)木休

13:00~21:00

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Hisaharu Motoda solo exhibition

Ain Soph Dispatch

2-16-10,Nagono,Nishi-ku,Nagoya-shi,Aichi-ken

4/18(Sat)-5/2(Sat) closed on Thursday

13:00-21:00

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さらに洗練される退廃。

Ain Soph Dispatchでの元田久治さんの個展です。

元田さんといえば、さまざまな都市風景や現代建築などを廃虚化させたリトグラフ作品を思い浮かべますが、その後も版画に留まらないさまざまな手法の索引が発表され、その新たな展開に触れるたびにもともとの斬新さに広がりを感じ、嬉しいく思っていたのですが、今回の個展でもバリエーションに富んだ作品が発表され、ちいさなスペースのそこかしこからシャープなインパクトが放たれています。

1階の部屋に展示されている作品群。こちらの空間は敢えて展示向けに改装されておらず、普段の生活空間と近い状況で作品を観ることができて、その雰囲気も逆に新鮮だったりします。

そしてこちらでは、ドローイング、銅版画、リトグラフの小品が並びます。元田さんの作品としては珍しいハエを描いた作品のユーモアとシリアスさとのバランス感、そしてジャーナリスティックな瞬間を捉えたような銅版画作品の凄まじい硬質な雰囲気が強く印象に残ります。

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メインスペースである2階、まず水彩のドローイング作品に目が向かいます。

リトグラフ作品における緻密な再現性と独特の雰囲気が、ちいさな画面に描かれた水彩の作品からも伝わります。

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リトグラフ作品のモノクロームの配色が放つ硬質でストイックな感触も、ダークトーンを基調とし、さまざまな色彩が用いられる水彩の作品にも現れているように感じられます。

それでいて、やはり水彩特有の仄かな滲みが儚げな風合いを醸し出し、描かれる想像上の風景を現実感から遠ざけているようにも思えてくるのが興味深いです。硬質さと脆さとが表裏一体となった世界観が印象的です。

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その水彩のドローイングでも描かれていたのとほぼ同じ情景が、大判のリトグラフでも再現されていて、そのスケール感にも圧倒されます。

ヘンな表現で恐縮ですが、「ほどよく」破壊された建造物のフォルムが放つ退廃感。水面に群れる蓮やゆらりと凪ぐ樹木など、そこに入り込む植物の生命の淡々とした、だからこその力強さも、この情景をより深いものへと押し進めているように思えます。また、水面に映り込む廃墟の揺らぎ、、倒れずに朴訥と立つ電柱などのディテールの細かさにも意識が引き込まれます。

そして、元田さんの作品の大きな特徴だと思うのですが、リトグラフのプリントの粗さや余白の紙の色が俄然立ち上がって迫るように感じられるところなどが、独特の空気感や時空性を生み出しているように思えるのも面白いです。

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ペインティングが観られるのも嬉しい!

「刷る」という客観的な行為が挟まる版画作品に備わる冷静さからある種の解放がなされ、配色に変化を付けて表現されるグラデーションの細やかさ、タッチのバリエーションなど、絵肌から伝わる情報の豊かさが楽しいです。

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徹底して繰り広げられる破壊の情景、そこにはいわゆる衝動的な荒っぽい感情は感じられず、むしろ理性によって緻密に崩されていき、ワビサビの感覚というか、構図的なものから余白の割合なども合わせて絶妙なバランスが保たれているように感じられます。

元田さんの作品に一貫するクールネスは無論健在で、それがさまざまな手法が取り入れられることで広がりを見せているだけでなく、絶妙さに磨きと深みとが加わっているようにも思えてきます。

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龍門藍 個展

イムラアートギャラリー

京都府京都市左京区丸太町通川端東入ル東丸太町31

4/11(土)~5/2(土)日祝休

10:00~18:30

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Ai Ryumon exhibition

imura art gallery

31,Higashi-marutacho,Sakyo-ku,Kyoto-shi,Kyoto-fu

4/11(Sat)-5/2(Sat) closed on Sunda and national holiday

10:00-18:30

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イムラアートギャラリーでの龍門藍さんの個展です。

magical,ARTROOMの六本木時代の2人展など、作品に接する機会はけっこうあって、その都度、モチーフとして大胆に画面に大きく描かれる女性の頭髪の迫力とうねるようなダイナミズムのインパクトに強い印象を感じてきたのですが、今回は観る者の感性を呑み込むような力強さは幾分か抑えられ、「のし紙」ならぬ「のし『髪』」というシリーズでユーモアを織り交ぜて、また違う楽しい味わいが醸し出されているように感じられます。

なによりまず、DMにも採用された作品のサイズに圧倒されます。

こんなに大きかったのか!Σ( ̄口 ̄;)

と、そこに描かれている情景の構成の軽やかな感触とは裏腹に、相当に大きなスケール感とそれが導くおおらかな臨場感とにその世界に一気に入り込んでいきます。

そして、このサイズにあってもかわいらしさは失われることなく、むしろ膨らむ迫力を伴っています。ポニーテールと水引との組み合わせなんてもうお見事というか、構図的に

何この安定感!Σ( ̄口 ̄;)

という塩梅で、その痛快さにもおおいに惹かれた次第で。

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入り口から右手の壁面に並ぶ作品でも遊び心は痛快に発揮されています。

何て言うか、このシュールな状況を想像する楽しさが溢れているような感じが伝わってくるような感じです。

女性の頭髪の、流れる髪の美しさがていねいに表現されていることによって醸し出される臨場感、そして背景に採用された白が水引のピンクとシルバー、そしてポップに描かれる熨斗を引き立てて、楽しい世界が紡がれているように感じられるんです。

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「のし髪」シリーズ以外にもさまざまなユーモラスなモチーフの作品が出展されているのも嬉しいです。

ぱっと観ると

もみの木?(・_・)

みたいな印象なのですが、まあお約束、飾りつけが

ひな祭りか!Σ( ̄口 ̄;)

と。

もとい、淡い水色に映えるもみの木の濃い緑、そしてそこに彩りを添えるお雛様や三人官女、五人囃子、菱餅などなどが楽しい雰囲気を膨らませてくれているように思えて痛快です。

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ギャラリーの随所に展示された小品のポップな風合いも楽しい!

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取り込まれる「和」のエッセンスと、それを表現する大胆で軽やかな色彩感、その絶妙なバランス感も面白さを加速させてくれています。

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調べて知ったのですが、水引の結び方や本数、色などによってそこに込められる願いなどにも微妙に違いがあるようで、それぞれ結び方の違いで描かれる情景の雰囲気も変わって感じられるのも楽しく、また奥深く感じられます。

これからの展開も楽しみです!

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津田久美恵展

TKG Editions Kyoto

京都府京都市下京区西洞院通六条下ル西側町483

3/28(土)~5/2(土)日月祝休

11:00~19:00

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Kumie Tsuda exhibition

TKG Editions Kyoto

483,Nishigawa-cho,Simogyo-ku,Kyoto-shi,Kyoto-fu

3/28(Sat)-5/2(Sat) closed on Sunday,Monday and national holiday

11:00-19:00

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手のぬくもりと透明感と。

TKG Editions Kyotoでの津田久美恵さんの個展です。

とにかくかわいいです。

手びねりで紡がれるかたちの素朴さが心をとらえます。

昨年の清澄での個展や101アートフェアで初めて津田さんのセラミックの作品群をそのインスタレーションを拝見し、爽やかなあたたかみに触れたときの新鮮さは、あらためて拝見しても変わることなく、嬉しさはさらに膨らみます。「京都で焼き物」という「なんとなくいい感じ」な風情もあるのかなぁ、とも思ったり。

まず、実は時計を模してある、ちいさなカップがくるりと円を描いている作品が出迎えてくれます。近くで眺めると文字盤よろしく数字が入っていて、そういうところにも惹かれます。

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正面には謎めく立像が。

釉薬の艶やかさが醸し出す透明感とそこかしこの水色が、この抽象的な立ち姿に愛おしさをもたらしているようにも思えます。

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棚の上に並ぶ小物群。

白い作品が思い浮かぶ津田さんの、黒い色の焼き物があって、それがまたアクセントに感じられます。

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展示スペースは、板の明るくナチュラルな色と、そこかしこに配される丸い電球が、やわらかい明度を生み出していて、そのなかにさまざまな津田さんの焼きものが遊びごころをたくさん織り込んで、随所から笑みが思わずこぼれてしまうような、なんとも和やかなインスタレーションが繰り広げられています。

そもそもいきなりさっそく、

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何やってんのアンタ!Σ( ̄口 ̄;)

という感じの作品が。

壁に突き刺さる上半身。そしてピーンと伸びる両足。

これほどのシュールな状況にしてこの説得力。堪らない!

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お馴染みの多面体が泡のようにくっつき合っているものなどがいろんなところに現れて、ひとつひとつの存在がキュートに響いて空間を不思議な世界へと誘っていきます。

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1点ごとに紡がれている世界もまた、なんとも不思議なイメージをもたらしてくれるような感じです。

奇妙なフォルムでありながら、色合いの軽やかさ、仕上げの透明感などによって、清々しい印象が伝わってきます。さらに、その塊のなかに織り込まれている人の姿やちいさなカップなどがやさしい物語を紡ぐかのような感じもなんとも楽しげです。

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空間に作用する焼き物。

焼き物として、骨董などの、渋く奏でられる滋味にも通じる味わいも仄かに備えていながら、ある情景を思い起こさせる独特のスケール感がイメージを膨らませてくれるんです。理屈では分かり得ない謎めくフォルムも、感覚的に分かるような風合いも楽しくて、表面のいろんな窪みやヒビ、釉薬のグラデーションが生み出す表情のひとつひとつが愛おしく感じられるんです。

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奥の一角から天井を通じて、壁面に広がる多面体のバブルに意図が張り巡らされるインスタレーションも。丸みを帯びてもりもりと膨らむようなフォルムの有機的なイメージとピンと張る糸の緊張感とのコントラストが不思議な世界観を紡ぎだしているように思えます。

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この素朴さが醸し出す軽やかな味わいが堪らないんです。

作品のかたさ、重さの感触はしっかりと伝わってくる一方で、なんともいえない淡い印象、なにか柔らかいものに接しているような和やかな感触が不思議なイメージを惹起してくれるんです。

空間全体が奏でる景色としての楽しげな風合い、そこかしこにリズミカルに放たれる遊び心、さらに純粋さや優しさなど、緩やかなポジティブさに溢れる展覧会です。

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添野郁展

JILL D'ART GALLERY

愛知県名古屋市千種区仲田2-2-6

4/17(金)~5/3(日)

12:00~19:00

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Kaori Soeno exhibition

JILL D'ART GALLERY

2-2-6,Nakata,Chikusa-ku,Nagoya-shi,Aichi-ken

4/17(Fri)-5/3(Sun)

12:00-19:00

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モノクロームで綴られるクールなリズム。

JILL D'ART GALLERYでの添野郁さんの個展です。

この前の日に帝塚山画廊へ伺った際、この始まったばかりの添野さんの個展のことを教えていただき、急遽伺うことにした次第。東京でのグループ展などで作品は拝見していたものの、ソロでの空間をあらためてチェックできたのは嬉しい限りで。

まず、ギャラリーに入って右手の横長の作品に目を奪われます。

ちいさな画面が連なるパノラマ風の展開がお馴染みな印象を持っているのですが、ひとつの画面で展開される情景は圧巻です。

とある場所の人ごみ、人の姿以外の情報はすべて画面より排除されモノトーンの階調による緻密な陰影で描かれる人々の歩く姿が豊かな奥行き感を放ち、またモノクロームの色調がもたらすイメージが、硬質なリズム感も醸し出しているように感じられます。

至近で眺めたときのひとりひとりの描写の高い再現性、そしてそれらの空間的な関係性が面白いんです。

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円形のパネルが採用された作品、実に面白い効果が取り込まれています。

円の縁に沿って描かれる歩く人々は、魚眼レンズから覗いたかのように足下のほうが広がっていて、しかもそれが一周ずらりと繋がっていることもあり、横長のシャープな展開とは一転して、歪みがユニークなインパクトをもたらしているように感じられます。

この構成においてももたらされる空間的な奥行き感。それがさらに、波打つような起伏を生み出しているように思え、円形であることでさらに動的なイメージもよりダイレクトに伝わります。それも、ただ人が通りを歩くというところに留まらず、もっと異なる非現実的な時間の流れが貫かれているような、そんな印象です。

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大きく取られる余白が作品のひとつのユニークさをもたらしていた印象でしたが、今回の個展ではもっと景色全体を緻密に再現咲いた作品も展示されています。

緻密な階調表現がもたらすクールさは、現代建築物などの硬質なモチーフでさらにその質感が発揮されているように思え、より複雑な展開がとにかく面白いです。

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さらにある場面を至近で捉えた作品も。

描くモチーフが画面全体に広がり、スマートでクールにその状況が描写されていますが、図形的な視点で眺めるとその階調表現も混沌を極めます。複雑に、あたかも絡みあうようにしてさまざまなかたちが画面に組み込まれ、それぞれの色面のソリッドさが力強く主張してくるように感じられるところにもおおいに惹かれます。

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複数の画面でのパノラマ風の作品も、壁面のそこかしこに配され、空間全体を取り囲むようにしているのも楽しく感じられます。

ある場所から俯瞰しているかのような演出がもたらされているようで面白いんです。

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それぞれの画面で展開される、現実からピックアップされるモチーフの量のバランス感覚の巧みさ、さらにアクロバティックな遊び心もふんだんに織り込まれ、さまざまなリズムが放たれ、イマジネーションへの刺激を生み出しているように感じられます。

モノクロームでの階調の解釈と表現が一貫し、さらに徹底した緻密な再現性がすべての作品においてなされていて、そのストイックさにも引き込まれます。

ほぼすべての作品に描かれる情景は身近な印象で、そこがどこか分からなくても何となく「知っている」感じがあって、その意識的な距離感を実感するだけに、ここに提示される作品の感触とのギャップが、描かれる世界のかっこよさ、鋭さを加速させているようにも感じられます。

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矢津吉隆と山下耕平による展覧会『ヨルヤマ-Night Watching』

Antenna ASS

京都府京都市西京区川島粟田町18-23

4/11(土)~4/26(日)金土日のみ

12:00~20:00

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Yoshitaka Yazu and Kohei Yamashita "Yoruyama-Night Watching"

Antenna ASS

18-23,Kawashima-awatacho,Nishikyo-ku,Kyoto-shi,Kyoto-fu

4/11(Sat)-4/26(Sun) Friday,Saturday and Sunday only

12:00-20:00

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真昼の暗闇で再現される濃密で深い空間。

Antenna ASSでの矢津吉隆と山下耕平さんとによるプロジェクト的なインスタレーションです。

ANTENNAの元メンバーの矢津さん、個展ははTSCAで拝見していて印象に残っているのですが、そのときに作り上げられた空間も独特の密度を誇っていたので、今回の二人による展覧会も興味津々で。

京都が誇る異能集団『ANTENNA』の本拠でのインスタレーション、語弊を畏れず言い表すと「小屋の2階」的な空間で、すべての窓から光を遮断、まさに真っ暗な空間を物理的に作り上げたなかでの展示ということもあってか、最初にそこに踏み込んだ印象は、

暑ぅ!Σ( ̄口 ̄;)

だったりしたのはご愛嬌。お天気がよいのは素晴らしいことです。

で、その空間に配されたヴィヴィッドで爆発的な作品群、しかしそれらの力を闇が押さえ込み、それが不思議な重みとなるだけでなく、キャッチできる面白味が潜在的な位置に漂っているような感触が印象的です。

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大小のペインティングなどが壁面をびっしりと覆います。

闇に隠され、そこにスポットではなく動画映像によって照らされることで、時折その新体制の高い抽象表現が姿を現します。

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平面作品を担当されているのが矢津さんで、特に正面の壁面に、その広さや鉄筋の位置を前提に設定され、配置された巨大なペインティング群の凄まじくスピード感のある大波くな表現に圧倒されます。

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闇に隠され、全貌がなかなか伝わりづらい、キャッチしにくいことも功を奏してか、宇宙を連想させる情景感にイマジネーションの凄まじい膨張も惹起させられます。

そして、繰り返しになりますが、身体性の高い線の動き、おそらくスプレーによる色彩の飛沫など、ひとつひとつの要素の存在が核融合のような感じにぶつかり合うようにして、凄まじいエネルギーを生み出してるような印象を覚えます。

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空間の中央などに配される立体作品は山下さんによるもの。

さまざまな素材が大胆に採用され、組み上げられることで、ソリッドな風格をたたえ、この「硬さ」が空間にアクセントをもたらしているように感じられます。

また、人のかたちを模した像なども随所に配されて、それがスペシフィックなイメージの刺激も惹起してくれるように思えます。壁面の矢津さんの作品に映り込む影も、シャープなユーモアをもたらしています。

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かぶさる映像も、おそらくタイトルにあるように夜の山での移動の最中に撮影されたものと思われ、草などのシルエットの像が重ねられることで思わぬグラデーションをもたらし、また常に変化する情景にも引き込まれた次第です。

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永岡大輔 個展「RING WONDERING」

hpgrp GALLERY 東京

東京都渋谷区神宮前5-1-15 CHビルB1F

4/3(金)~4/26(日)月休

11:00~20:00

Daisuke Nagaoka "RING WONDERING"

hpgrp GALLERY Tokyo

5-1-15-B1F,Jingumae,Shibuya-ku,Tokyo

4/3(Fri)-4/26(Sun) closed on Monday

11:00-20:00

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集大成と、新展開と。

昨年に引き続いてhpgrp GALLERY 東京で開催の、永岡大輔さんの個展です。

前回登場しなかった映像の新作も発表、加えてパネル作品としてはこれまでで最大のサイズのものも出品され、これまで展開されてきた独特の世界観がひとつの頂きに到達したような印象です。

まず、入り口沿いの壁面の作品。

永岡さんの平面作品というと動物が多く登場するイメージがあるので、この女性とおぼしき人物の像が挿入されていることが新鮮に感じられます。より生々しく情感に入り込んでくる気配感と強烈に妖し気なダイナミズム。謎めくフォルムの有機的なパターンやモチーフが、奇妙さを加速させる一方で、モノトーンのストイックな雰囲気が、ある高揚を押さえ込み、淡々とした時間の経過を思い起こさせるのも興味深いです。

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そして、大作へ。

これまでの平面での展開の集大成的な、独特の厚みを伴うインパクトを感じます。

3点のパネルで組み上げられる景色の不思議な感触。お馴染みの鹿や熊、狼などのモチーフが随所にふんだんに描き込まれ、ファットなたくましい物語性を導き出しているように思えます。そして、樹木を連想させるかたちなどを生み出す濃い黒のうねりの密集、さらには下方の緻密なパターンがひたすら紡がれゆくリフレインの淡い混沌、またなにより動物たちの表情をリアルに描く繊細なストローク、それぞれ異なる筆圧や濃度が強烈なコントラストを縮尺の解釈のズレをもたらして、さらに不思議な奥行き感も構築してるように思えて来ます。

全体を貫くクールな雰囲気も印象的です。淡々とした色彩感が観る者冷静さをもたらしてくれるようにも感じられ、感情的に、ある距離感を保った状態で観られるのも面白いです。

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さらに平面作品で新鮮な深みを感じるのが、さまざまな素材を持ち込み、かつもっと粗い描き後が生々しい雰囲気を放つこちらの作品。

素材の質感を活かした作品はこれまでも発表されていましたが、平面作品におけるストイックな表現から考えると、この作品でのダイレクトなアプローチには新たな展開の広がりを予感させてくれます。

奥に聳える山のスケール感、毛皮を用いて描かれる羽を広げたフクロウ、それぞれの存在に力強さは感じつつも、全体を眺めたときのどこかあっけらかんとした感触、スコンと抜けたような印象が、なんともいえない味わいを醸し出してきます。

なかなか言葉にしてしまうのが難しく抵抗もあるのですが、敢えて表現すると、精度イへのストイックさから自らを解放し、大胆な余白感と安定した構図感との共存を満たさせたこの作品に、むしろその空間的な余白にさまざまなイメージの広がりの伸びしろを感じるんです。

かといってどんどんめくるめく想像の膨張が伝わるのではないのですが、この状況、淡々としてしかし保たれる構図の緊張感、それがもたらすこの情景への説得力、それらと過ごす時間がなんとも気持ちよかったりします。

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映像作品が観られるのは嬉しい!

お馴染みの「描いては消し、描いては消し」を繰り返しながら1枚の画面で繰り広げられるスーパーアナログなアニメーション。およそ3分ほどの映像ですが、眺めていて飽きないんです。とにかく早送りでめまぐるしく綴られていく物語に引き込まれていきます。

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最後に登場する実際の木の景色、また会期中に編集されたのですが、部分的にアップが織り込まれていたりと、さまざまなアクセントが挿入されているのも興味深いです。

イメージのきかっけやクローズアップでさらに絵肌などを生々しく映し出したりすることで、より臨場感が強く押し出されているようにも思えます。

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これまで作品や展示を拝見していても、永岡さんのスタンスの独特さは作風や展開において常々強く感じていたのですが、今回さらにそれが押し進められ、押し拡げられているような印象を覚えた次第です。

斬新なアイデアとのバランス感覚の絶妙さ。

追求されるのは「新しさ」というより「深さ」といった感じがするんです。

だから、独特の距離感の心地よさ、高揚と冷静が巧みに調合された世界観に惹かれるような気がするんです。

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苅谷昌江 個展 Screen

studioJ

大阪府大阪市西区新町3-14-8

3/18(水)~4/25(土)日月火休

13:00~19:00

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Masae Kariya solo exhibition "Screen"

studioJ

3-14-8,Shin-machi,Nishi-ku,Osaka-shi,Osaka-fu

3/18(Wed)-4/25(Sat)closed on Sunday,Monday and national holiday

13:00-19:00

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重厚な雰囲気とユーモラスな世界と。

studioJでの苅谷昌江さんの個展です。

Art Jam Contemporaryでの2人展と今年のVOCA展で拝見したバラエティに富む展開も印象に残っている苅谷さん、今回の個展では、少し前に京都芸術センターでのグループ展で発表された世界観の再現が展開されています。

劇場を舞台に繰り広げられるシュールな場面。

人工的に造られる非現実的な空間と、そこに観客としてやって来ている、というよりまるで住んでるようなさまざまな動物たちが無垢な仕草で佇んでいたり。。。遊び心溢れる展開が繰り広げられていて、なんとも不思議な雰囲気。

まず入り口すぐの両壁面に、黒い額に収められたドローイング的な作品が。

ひとつのシートに1匹の動物。それぞれ、「この動物がそこにいたら確かにそんな感じだろうなぁ」という奇妙な説得力を持つシチュエーションが描かれていて、この奇妙な世界への導入を創り出しているように感じられます。

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続いて、先のグループ展と同様に床にもたらされる鳥の飛影。

これがけっこう効いていて、空間全体の雰囲気をさらに濃密にし、ジャングル感を満たしていっているように感じられます。

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八角形のパネルに描かれるペインティング。

まずその油彩独特の深く艶やかな質感に魅入られます。

そして、また皆さんの姿がかわいいだけでなくて、妙に行儀がいいのが何ともシュールで面白いです。

シートの濃い赤のグラデーションが、この画面全体から放たれる世界観を重厚なものへと押し上げているように感じられ、油彩の力強さを伴いながら、どっしりとした重厚感をもたらしているように思えます。

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そして今回出展されたなかでもっとも大きな作品。

一転して動物たちは登場せず、ただその情景だけが淡々と、しかし濃密に描き上げられています。

椅子が並ぶその正面方向にあるものが鬱蒼としたジャングル、そしてこの空間に天井、屋根がなくて空が広がる、という...。

ひとつ前の作品で動物たちが観ていたのがこの情景なのか、と思うとまたさまざまな想像が脳裏を彩っていくような感じで。ここにいる動物たちは動物園にいて、たまの休み(というとこの時点で非現実的な状況なワケですが)に劇場に集まってジャングルを眺めて昔を懐かしんでいるのかな、とか...。

トリミングされたように描かれる空、ずらりと並ぶ椅子の向こうに広がるジャングルの奥行き感など、なんとも不思議なシチュエーションとその空間的な広がりがその不思議さを加速させてくれるような印象です。

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そして小品、やはり無垢な可愛らしさが。

ペインティングの力強さはこのサイズであっても充分に発揮されていて、見応えの有る雰囲気を放っているように感じられます。

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一貫する濃密な世界観が、強く印象に残ります。

そしてそこに織り込まれるさまざまなユーモアや大胆な色彩のコントラスト、ほぼ無意図にもたらされていると思われる油彩の重厚感など、あらゆる要素が重なり、絡み合って分厚い物語性や空間性を紡いでいるようにも感じられます。

それぞれの画面から伝わる時間のイメージにも惹かれます。

絵画の説得力も心地よいんです。

この続きも何となく楽しみだったりする一方で、また全然違う展開、さらに深い世界観の提示が出てくるかも、という期待も高まります。

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Nam Hyojun ミドルテンション

CASHI

東京都中央区日本橋馬喰町2-5-18-1F

4/10(金)~4/25(土)日月祝休

11:00~19:00

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Nam HyoJun "middle tension"

CASHI

2-5-18-1F,Nihonbashi-bakuro-cho,Chuo-ku,Tokyo

4/10(Fri)-4/25(Sat) closed on Sunday,Monday and national holiday

11:00-19:00

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ファッショナブルにアイデンティティ。

CASHIでのNam Hyojun(ナム・ヒョジュン)さんの個展です。

ナムさんの作品というと、CASHIのオープニング展でのひたすら野菜を食べる映像作品の尖ったシュールさが印象に残っているのですが、今回の個展ではなんとも不思議なバランスの世界感が展開されていて、その軽やかさと深さとのギャップに惑わされます。

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プレスなどを目にすると、ナムさんの、韓国生まれで日本育ち、北朝鮮の教育を受け、現在は中国在住というなんともややこしい経歴に意識が引っ張られます。

どうしても、もっとダイレクトに深くアイデンティティの提示がなされるのかと思いきや、実に軽やかにその世界観が展開されていて逆にあっけにとられてしまった次第。

特に、今回の個展で本格的に発表するのが初めてというペインティングが、実に「真っ当」な仕上がりであることに、なんとも不思議な気持ちと嬉しさが湧いてきます。

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すべてにチマチョゴリやら北朝鮮国旗などのアイコンがダイレクトに描き込まれていて、さらに作品によっては相当にヤバそうなシチュエーションだったりもするのですが、ポップな色彩感と軽やかな再現性によってその世界観がすーっと自然に入り込んで来て、顔のパーツが描かれない匿名性からも難しいテーマ性などを直接的に感じさせない仕上がりなのも興味深いです。

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壁面にずらりと並ぶレインコート、と思いきや、ビニール地のチマチョゴリだったり。

本来はこれを在日の方に着せてのパフォーマンス込みのインスタレーションが前提とされているそうで、無論それが展開されると相当にアバンギャルドにアイデンティティが展示されると思いますが、この状況であればむしろユーモアのほうが立ち上がって来ている印象です。

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DMにも採用されているシリーズ、ファッション誌かなにかの西洋人女性モデルのグラビアにチマチョゴリを描いたという作品で、実際に拝見してなるほどこうなっているのか、と感心しつつ、深い顔立ちの西洋美人がチマチョゴリを纏う様子が実に自然に感じられるのもなんとも痛快だったり。

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個人的には、宗教観やアイデンティティなどの要素が凝縮されたような作品は好きではなくて、そういうことは他所でやってくれという感じなのですが、今回のナムさんの作品群はややこしいアイデンティティの提示が隠されず、しかし軽やかに提示、展開されていて、いわゆる重たい感じがないのがなんとも興味深く感じられた次第です。

観る方々によってどの部分に共感するかは相当に違うような気も無論しますが、ヘンな言い方ですが、この世界観には好感が持てるんです。

もっといろいろと観てみたい、さらに深く抉るような展開や、さらにアイデンティティから解放された作品などもぜひ触れてみたいと思うクリエイションです。

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《4/16》

スズキユウリ Physical Value of Sound

CLEAR GALLERY

東京都渋谷区渋谷4-2-5 Place Aoyama

3/6(金)~5/2(土)日月祝休

11:00~19:00

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ふたたび足を運んできました。

たくさんの人で溢れていたオープニングから一転し、空間とひとりで対峙。

工業製品として追求された機能美の発展が、ルックス的にもユニークでユーモラスな感触を放ちながら、同時に「機能」の発展の面白さにもおおいに惹かれます。

このターンテーブル、置かれるレコードには円形の溝が切ってあって(始まりと終りのない状態、1本に繋がっていない状態)、配されるレコード針が落とされる部分が延々とループで再生されるシステムで、つまり5つの音の重なりが壁際のスピーカーから再生されるのですが、これでユニークな試みをされた方がいらっしゃったとのこと。

盤のわずかな歪みを活かし、凸部で盤に接するようなバランスで針の重りを調整。ループする音ではなく、針が触れる瞬間に音が再生、それがほぼ一定のスピードで発音されることで不思議なグルーブが生み出されたそうで、その瞬間はスリリングだっただろうなぁ、と。

機材を知る人のアプローチはホントに面白く、ひとつのクリエイションが派生してあらたな展開を見せる過程もまたスリリングです。

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針がついたミニカートがレコード盤をカットして作られたコースの上を走り、無邪気なノイズを放ちながら走る様子も痛快です。

そしてなにより、そのかたちと色の可愛らしさに惹かれます。

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さらに、レコードのアクセサリーも。

腕輪のような感じですが、ここに自ら発する言葉を吹き込み、盤に刻むこともできるようになっていて、自らの想いやメッセージを身につけられるアイデアも面白く感じられます。

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アナログへの拘りが提示するメッセージ性にも興味が向かいます。

不器用ながら、デジタルの数値化された情報の危うさからの解放がぬくもりを感じさせてくれます。加えてそういった提起をここまでエンターテイメント性に富んだ手法で繰り広げていることへも大きな共感がもたらされるような気もします。

続く展開も楽しみなクリエイションです。

art-life+ vol.11 梶岡俊幸展『The Birth Canal-未来へのうねり』

スパイラルガーデン

東京都港区南青山5-6-23

4/9(木)~4/26(日)

11:00~20:00

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とにかくその大きさ、スケール感に圧倒されます。

スパイラルの長い壁面の両端を覆うほどの画面、そしてアトリウムでのもはや「壁」とでも呼ぶべき画面。まさに「聳える」という言葉がふさわしい、凄まじほどに圧倒的な存在感で空間を囲んでいます。

至近で眺めたときに、そこに重なるストロークの複雑さにもさらに圧倒された次第。

階段側の比較的ちいさな作品(といってもそこそこ大きいのですが)での、ストロークに変化が付けられた作品の差異も面白いです。

《4/17》

[輝く暗闇]赤羽史亮

magical, ARTROOM

東京都渋谷区恵比寿1-18-4 NADiff A/P/A/R/T 3F

4/17(金)~5/14(木)

12:00~20:00

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これまでのダークな世界観はそのまま保たれ、複雑に情報が注ぎ込まれて深く熱い情景、場面が描き上げられています。

たっぷりとキャンバスに塗布される絵の具の立体感のミニマムな迫力にも強く惹かれるんです。

《4/18》

津田久美恵展

TKG Editions Kyoto

京都府京都市下京区西洞院通六条下ル西側町483

3/28(土)~5/2(土)日月祝休

11:00~19:00

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ああ、かわいい...。

昨年の東京での展示でも不思議な魅力に引き寄せられたのですが、今回はナチュラルな色が溢れる空間、そして丸い電球の黄色い光に照らされることでその独特の味わいにさらに深みと親しみが加わって、独特な世界が広がります。

Tom Friedman "not something else"

Tommio Koyama Gallery Kyoto

京都府京都市下京区西洞院通六条下ル西側町483

3/28(土)~5/2(土)日月祝休

11:00~19:00

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なんだお前はぁ!Σ( ̄口 ̄;)

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なんかすごい造形!

混沌としていて、でもグリーンや赤の素晴らしすぎる発色がポップでキャッチーでヴィヴィッドな雰囲気を放っています。

さまざまなクリエイションが並び、それぞれにユーモアがふんだんに挿入され、膨らむイマジネーションも留まることを知らず、といった感じで。

頭で考える以前に感性にダイレクトに痛快な気分をもたらしてくれるような感触です。

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藤原康博 bedtime stories 2003-2009

MORI YU GALLERY KYOTO

京都府京都市左京区聖護院蓮華蔵町4-19

3/21(土)~4/26(日)月火祝休

12:00~19:00

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深い、です。

寓話や神話を基に制作されるさまざまな作品群。インスタレーション、平面、立体とさまざまな手法と手段で展開され、深遠な世界観が作り上げられているように感じられます。

台上のインスタレーション。木組みの祠、白い地平の立体的なグラデーション、実物大の足のオブジェ、それぞれが関連し合って不思議な説得力を導き出してるように思えます。

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ユーモラスなかたちとユニークな質感が面白い作品。

この表面はすべて白と黒のビーズで覆われていて、至近で眺めたときのインパクトも結構なものです。

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奥のスペースに展示された作品と、それらが奏でる深い空気感も印象的です。

1点完結の作品としての説得力も持ちながら、空間に配される作品を続けて眺めていって、同じモチーフが用いられていることに気付かされます。

それが、イメージを立体的に押し上げてくれるんです。

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龍門藍 個展

イムラアートギャラリー

京都府京都市左京区丸太町通川端東入ル東丸太町31

4/11(土)~5/2(土)日祝休

10:00~18:30

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画面いっぱいに舞う女性の頭髪、その流線のおおらかさと、今回の「のし髪」シリーズのユーモアも楽しい!

構成のポップさがまず楽しく、加えてそこにもたらされる不思議な世界観にも緩やかに呑み込まれていくような感じです。

花岡伸宏個展 「ずれ落ちた左肩は飯に刺さる」

CPG:canary production gallery

京都府京都市上京区西丸太町185 京都二条ハイツ地階

4/10(金)~5/2(土)日月休

13:00~20:00

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「ずれ落ちた左肩は飯に刺さる」 って

ワケ分からんタイトルだな!Σ( ̄口 ̄;)

なんのヒネリもないのな!Σ( ̄口 ̄;)

そのままなのな!Σ( ̄口 ̄;)

今年の岡本太郎賞の衝撃ふたたび。最高です。

冬耳展 -a little distance-

Gallery Den

大阪府大阪市西区京町堀1-13-2 藤原ビル5F

4/13(月)~4/25(土)日休

12:00~19:00(土:~17:00)

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以前から気になっていて、なかなか拝見する機会がなかった冬耳さんの作品。

まずはそのあざやかな色彩のうねりに触れられたのが嬉しいです。

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僕が初めて画像で拝見したときは抽象性が高い世界でしたが、今回の作品はそのヴィヴィッドでエッジの効いた色の重なりのなかに女性の顔などの具体的なモチーフが忍び込んでいて、見つける楽しさにも溢れています。

ひとつひとつの色面のかたちが放つうごめき、うねりのイメージ。それらが凝縮冴えることで生み出されるポップな混沌。斬新なインパクトが痛快なのに加え、画面の仕上がりがていねいなのも印象的です。

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苅谷昌江 個展 Screen

studioJ

大阪府大阪市西区新町3-14-8

3/18(水)~4/25(土)日月火休

13:00~19:00

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Art Jam Contemporaryでの2人展、今年のVOCA展、京都芸術センターでのグループショーと、拝見するたびに独特の世界観が印象に残る苅谷昌江さんの個展。

いろんな動物たちが登場し、ジャングルのような雰囲気をかもしだしながら、しかしシアターの椅子があって不思議な暗さが広がっているという、なんとも奇妙な感触。クラシカルな風合いも印象深い空間です。

住吉明子 ハロー、グッバイ、ハロー - I don't say goodbye -

帝塚山画廊

大阪府大阪市住吉区帝塚山東1-3-34 PLOTビル1・2F

3/27(金)~4/18(土)日月休

11:00~19:00

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最終日に滑り込みで伺うことができたのですが、チェックできてよかった!

さまざまな動物が白い素材で造形され、清々しいかわいさが空間を満たしています。

また、平面作品もステキです。立体同様に背景の白が爽やかに広がって、そこに繊細な線が舞うように描かれ、軽やかな世界が紡がれています。

《4/19》

鈴木宏樹展「あることないこと」

neutron kyoto

京都府京都市中京区三条通烏丸西入ル 文椿ビルヂング2F

4/14(火)~4/26(日)月休(祝日は除く)

11:00~23:00(最終日:~21:00)

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行為の蓄積の説得力。

そこに持ち込まれるユーモアセンス。

少し前に元立誠小学校で開催されたグループ展に出品された、紙にひたすらボールペンでスロトークし続けた作品の雰囲気がけっこう鮮烈だったのですが、今回の作品はさまざまなモチーフのシルエットが切り取られ、干される感じがなんともユーモラスです。

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空間としてのコミカルさから一転、至近で眺めると、ストロークの集積からは狂気性すら感じられるような気がします。

支持体の和紙が一部破れるほどの圧力感、和紙の毛羽立ちなど、ものとしての雰囲気の鮮烈さにイメージも深まっていくような感じです。

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そして、外のショップスペースに展示された作品もなんとも不思議で。

材木に材木を描いてどう見ても材木、という、相当にシュールな感じがなんとも痛快です。

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明るい無常観 -LIGHT TRANSIENCE-

京都芸術センター

京都府京都市中京区室町通蛸薬師下ル山伏山町546-2

4/14(火)~5/10(日)

10:00~20:00

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金子良/のびアニキ淀川テクニックがフィーチャーされた展覧会。

それぞれ映像も織り込んだ展示を繰り広げています。

のびアニキ、岡本太郎賞でのインスタレーションも強烈に印象に残っているのですが、今回もいやはやどうしようもないねぇ、というか、

落としどころはそこか!Σ( ̄口 ̄;)

的な奇天烈感満載。唐草模様の風呂敷包みを背負って交番の前を堂々ドスドスと抜き足差し足のアホアホ感といい、

誰か止めろ!Σ( ̄口 ̄;)

的な感じは強烈です。

一転、淀川テクニックはこれまで通りに捨てられたものを用いての造形。2台の自走二輪とその制作過程を捉えた映像が出展されていたのですが、特にシャチホコをモチーフとしたキックボードの造形は見事。ゴミから作るというストイックさへの興味深さもさらに増します。

桝本佳子個展「壷と皿」

太陽事務human+art

京都府京都市中京区蛸薬師通西洞院東南門不動町165-2

4/9(木)~4/20(月)火水休

12:00~19:00

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ちょっと気になってしまう陶芸作品。焼き物独特の滋味や渋味とユーモアとの塩梅がなんとも絶妙で、ほこほこと和やかで楽しい心地がじんわりと広がるような感じです。

大きなツボ、そこに重なる五重塔。

屋根の造りの見事さに感じ入ります。

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回転する台に設置された、柿と鳥の作品。

造形のリアリティの説得力に加え、磁器の柄が不思議な位置に入るユーモアも面白いです。

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お皿も面白い!絵柄も造形も楽しい!

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矢津吉隆と山下耕平による展覧会『ヨルヤマ-Night Watching』

Antenna ASS

京都府京都市西京区川島粟田町18-23

4/11(土)~4/26(日)金土日のみ

12:00~20:00

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TSCA KASHIWAでの個展も見応えがあった矢津吉隆と、山下耕平さん、この二人が創り出す空間。

矢津さんは主に平面作品を、山下さんは立体作品を空間に持ち込み、さらにそこに映像をかぶせて未知的な世界となっています。

北条貴子 Resonating light part.1 Drawings

sowaka

京都府京都市南区東寺東門前町90 sowakaビル2F

4/3(金)~5/10(日)金土日のみ

12:00~19:00

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水彩絵の具の滲みが奏でる瑞々しい空気感。

広がる緑の生命の感触や、その景色に横たわる気配感などが絶妙な筆致で表現されていて、ゆったりとした爽やかな気分にゆるやかに満たされるような感じです。

1点ごとではなく、展示されたすべてのドローイングを纏めてひとつの作品としていることも、空間の説得力を押し上げているように思えます。

元田久治 個展

Ain Soph Dispatch

愛知県名古屋市西区那古野2-16-10

4/18(土)~5/2(土)木休

13:00~21:00

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今回の個展では、お馴染みのリトグラフ作品に加え、水彩のドローイング、写真製版の銅版画、そしてパネルのペインティングと、実にバリエーションに富んだメディア構成となっていて、それがまず嬉しいです。

そして、相変わらずの破壊っぷりにも痺れます。一貫する硬質なトーンが荒廃した情景にクールさをもたらしいているように感じられます。

添野郁展

JILL D'ART GALLERY

愛知県名古屋市千種区仲田2-2-6

4/17(金)~5/3(日)

12:00~19:00

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帝塚山画廊で情報を得て、急遽伺ってきた展覧会です。

添野さんの作品のかっこよさは体験済みながら、ソロで構成されたときの説得力に、観に来てよかったとあらためて思った次第。

複数のパネルによるパノラマ的な展開はもちろん、横長や円形などアクロバティックなかたちのパネルの作品や、もっと場面に寄った構成のものなど、モノクロームで統一される色調のなかで豊かなバリエーションが繰り広げられていて、見応え充分です。

長塚秀人「純粋風景」

ラディウムーレントゲンヴェルケ

東京都中央区日本橋馬喰町2-5-17

4/3(金)~4/25(土)日月祝休

11:00~19:00

Hideto Nagatsuka "Purified Landscape"

Radi-um von Roentgenwerke AG

2-5-17,Nihonbashi-bakurocho,Chuo-ku,Tokyo

4/3(Fri)-4/25(Sat) closed on Sunday,Monday and national holiday

11:00~19:00

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緻密に組み上げられたサウンドスケープのような...

ラディウムーレントゲンヴェルケでの長塚秀人さんの個展です。

前回の六本木での個展では、ジャーナリスティックな鋭い視点で切り取られるさまざまな景色のひとつひとつが、その場面で起こった事象を引き立てているように感じられたのと同時に、シャープに放たれる色彩、ミニマムな面白さ、偶然性が導き出す抽象的なユニークさも溢れていて、とにかくさまざまなかたちで押し寄せる興味深さに好奇心が大いに刺激されたのですが、今回は、これまでの「過剰なストイックさ」(これが長塚さんの作品を面白くしている大きな要素のひとつだと思っています)が空間的な構成として幾分か抑えられ、タイトルにもあるように、捉えられる景色の「美しさ」を純粋に引き出すことに専念されたような印象を覚える次第です。

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「空」であり、「海」であること、そして、乱暴な表現になってしまいますが、「空だから」「海だから」美しい、そういうピュアな感動が導き出されるような感じがします。

自然がもたらす究極の配色、彩色を、繊細に再現し、おおらかさとこまやかさの共存が、豊かなスケール感のなかに収められていて、清々しい気持ちが自然と膨らんでいきます。

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そして、保たれ続ける景色の匿名性にも惹かれます。

この部分において、過剰なストイックさはいっさい乱れることのない、そのスタンスにも感じ入ります。

展示されているすべての作品についての情報はいっさい明かされていない、単に住所的なものに留まらず、その縮尺についてもインフォメーションは提示されていない,,,このことが想像の膨張の加速を促します。

無論、第一印象のイメージは存在します。しかし、長塚さんが撮影された実際の状況との一致という側面において、そのイメージが正しいか否かは分からない、一旦そう気付くと、感覚がどんどんとずらされていくような感じがして、それもまた面白いんです。

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さまざまな景色が並び、それぞれにしっかりとキャッチとなる部分があるのも興味深いです。

海面にひゅっと飛び出すパイプらしきものであったり、もしくは全体の構成であったりとバラエティに富んでいます。そして、お馴染みのジオラマ風な仕上がりを、敢えて比較的フラットな風景で再現するところなどにもおおいに惹かれます。それがさらに不思議な縮尺感への戸惑いを加速させるんです。

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空間全体に広がるリゾート感覚、その表層的な印象に隠されるストイックなスタンスとジャーナリスティックな視線。

美しいものを美しいと思う感性で得た感動から、そのなかに挿入されるアーティスティックな視点がさまざまなアクセントを放ち、前回と同様にハイクオリティなイマジネーションの刺激を惹起させてくれるんです。

例えるなら、波音や飛行機の音などのおおらかなナチュラルノイズから始まり、絶妙なグラデーションを伴って変化、気付くと電子音のパルスが複雑で緻密な起伏を刻む無機的なサウンドが引き込んでいく、そんなダイナミズムを備えているように思えます。

撮影方法という意味を超えた地点で、「いったいどうなっているんだろう」という想像が膨らみ続ける風景群です。

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夏目麻麦展

ギャラリー椿

東京都中央区京橋3-3-10 第1下村ビル1F

4/4(土)~4/25(土)日祝休

11:00~18:30

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Asagi Natsume exhibition

Gallery Tsubaki

3-3-10-1F,Kyobashi,Chuo-ku,Tokyo

4/4(Sat)-4/25(Sat) closed on Sunday and national holiday

11:00-18:30

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さらに深まり、さらに広がる情景。

ギャラリー椿での夏目麻麦さんの個展です。

前回の個展でもその雰囲気は強く印象に残っているのですが、ポートレイト的な作品で構成された前回から、背景への描き込みが増え、そこから醸し出される幽玄な物語性により具現的なイメージがもたらされているように感じられます。

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艶やかに仕上げられる画面。

朧げに広がり、微睡むように溶け合う色彩の深く重厚で、メロウな感触。

華奢な手足の繊細さと、裏腹に敢えて観る者の感性に強く押し込むような濃厚な色彩で潰される顔の匿名性とが、独特のスリルを感じさせてくれます。

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日常的な光景、そこで織り成される仕草からは、夏目さんの表現によって時間軸とほぼ垂直に沈み込む深い意識の感触を伴います。

知らないひとが過ごした知らない時間、そこへと想像が引き寄せられていくような力強さを持つ世界観。言葉や表情などの具体的なヒントは画面上からはいっさい与えられず、なのにそこに漂う気配や残り香のようなものに自然と、そして必然的に想像が向かわされるんです。

しかし決して断言できるようなものはもたらされない、ただただ、その分厚い雰囲気への説得力に圧倒され、深いイメージに満たされるような感じです。

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重たい色彩によるグラデーションで表現される人物や背景、そして豊かな空間。

ほんのりとレイドバックしたような...しかし、それは「世紀」の単位で過去からのイメージを引き出してきているかのような、とてつもない深遠さ。

この雰囲気が現代に再現されていることへの興味深さにも感じ入ります。

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大作中心の構成ですが、数点展示されている小品であっても、尋常でない濃密さが深い魅力を放ちます。

よりいっそう、深く暗いグラデーションで、気配もよりダークに感じられます。

そして、他の大作における際どいバランスで具現化された背景を観ていることで、この小品のポートレイトから、いったいどんな場面なんだろう、と想像も深まり、広がっていきます。

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絵画を観る充実感が溢れています。

描かれる情景のとてつもない深み、そこから脳裏に想像が浮かび、綴られていく深遠な時間。キャンバスや油絵の具の素材としての強度も含め、この作品群からでしか得られないイメージがそれぞれの場面から豊かに放たれ、空間全体を満たしているように思えます。

クラシカルな雰囲気と現代的な感性との交錯がもたらす、実にユニークな世界観。対峙した時間の分だけ深く厚いイマジネーションの広がりと刺激を与えてくれるような印象です。

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多和田有希「Missing Folklore」

TARO NASU

東京都千代田区東神田1-2-11

4/10(金)~5/9(土)日月祝休

11:00~19:00

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Yuki Tawada "Missing Folklore"

TARO NASU

東京都千代田区東神田1-2-11,Higashi-kanda,Chiyoda-ku,Tokyo

4/10(Fri)-5/9(Sat) closed on Sunday, monday and national holiday

11:00-19:00

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行為の集積。

それそのものの臨場感と、それによって生み出される気配の凄まじさ。

TARO NASUでの多和田有希さんの個展です。

写真に施されスクラッチ。ストロークのひとつひとつにあたかも意思が宿るかのように、ありのままの情景を捉えた画像にさまざまな雰囲気がもたらされていきます。

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都市の夜景を支持体とした作品は、闇に閃光が無数に走り複雑に絡まり、あるいはある「存在」を感じさせてくれるかのような、霧のようにふわりと気配が浮かんで、そのシーンのボリュームを鮮烈なスピード感とともに膨張させているようなイメージを感じさせてくれます。

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もたらされる気配、空気感は圧巻のひとことに尽きます。

離れて眺めたときに伝わる、意思の交錯。支持体となる写真の全体的にダークな色調が、スクラッチによる白の線をいっそうシャープなものへと押し上げ、さらに建造物や道路など、かたちとして硬質で無機的な要素がアナログなストロークで辿られることで、その場面に漂う無数の気配が立ちのぼり、鮮烈なシャーマニズムの創出を思い起こさせる凄まじい情景が描き出されているように思えます。

そこかしこのタワーから天空を突くようなベクトルで放たれる白い閃光、建物の形状に沿って縦横に走る光、さらにはあたかもそこに何かの大きな気配があることを暗示するかのように、無秩序にもたらされる無数のストロークの集積。現在とも未来とも異なる、異次元の情景が提示されているように感じられるんです。

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至近で眺めると一転してその行為の臨場感がぐんと力強く、意識を引き込んでいきます。

ニードルや消しゴムなどで削られ、擦られる画面。俯瞰したときの異空間の印象の凄みとはまた違う種類のインパクト。

今度は作品の「もの」としての存在感に圧倒されます。

ニードルによるスクラッチが重なることでもたらされる画面の荒れ。写真、というか印画紙が「白いものの塊」であることを強く認識させられることに不思議な感情を抱きます。

加えて画面のそこかしこに無数の「折れ」や「たわみ」といったノイズが入り込み、行為の集積の二次的なアクションも、この混沌を加速させているように感じられます。

そして、いくつかの作品が敢えて額に収められずに生のまま壁面に余白を残したまま貼られていることも強烈なインパクトを放ちます。東神田移転後のTARO NASUの展覧会としては、よい意味でもっとも「乱暴」に作られた印象の空間。それが行為の生々しさ、そのアバンギャルドさを立ち上げているようにも思えるんです。

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人が登場する写真を支持体とした作品は、都市の作品でのダイナミックな気配の創出からよりその意図へのイメージが具体的に惹起させられるような感触が印象的です。

すっと走る線が人物にまとわりつき、または外へと放たれるようにもたらされているのはそのままその人物の魂や気配の滲みを思い起こさせ、また細かいドットのようなスクラッチは、逆にそこに漂う無数のちいさな気配の群れにも思えてきます。

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おそらく東京マラソンの一場面だと思うのですが、観客と走者との意識のギャップがストイックな縦のストロークで提示されているような感じがするのが面白いです。

そして並べては展示されていないのですが、おそらく同じ写真のサイズ違いの作品も展示されていて、写真だからサイズの可変性は当然、と一瞬思うものの、それぞれ違う時間でのストロークが施され、異なる絵になっていることに気付かされるのも新鮮なインパクトに感じられます。

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いろいろと書きましたが、何より、作品がかっこいいんです。

巧みな写真の構図、そこにもたらされるさまざまな質感のストローク、それらによって組み上げられるアバンギャルドな混沌。

さらに、それぞれの作品にもたらされている重力感も大変興味深いです。

最初のほうで掲載した夜景の作品は写真の天地が逆さに設置されているのですが、それがまた不思議な重力感を生み出していたり、無数のストロークの集積が気配の高揚を現しているように思える一方で、その風合いが写真に収められた現実風景の重厚感をさらに引き出しているように感じられたり。

さまざまなイメージがもたらされ、焦燥の一歩手前の凄まじい高ぶりが楽しいクリエイションです。

ぜひとも作品を前にして、創出される風景の気配を、そして積み重ねられた行為の痕跡を体感してほしいです。

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前田さつき スペクタクル

YOKOI FINE ART

東京都港区東麻布1-4-3 木内第二ビル6F

4/10(金)~4/18(土)日祝休

11:00~19:00

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Satsuki Maeda  "Spectacle"

YOKOI FINE ART

1-4-3-6F,Higashi-azabu,Minato-ku,Tokyo

4/10(Fri)-4/18(Sat) closed on Sunday and national holiday

11:00-19:00

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従来の「ペン画」の領域のイメージを凌駕する。

先日開催されたアートフェア東京@TOKIAでの発表に引き続いて開催されている、YOKOI FINE ARTでの前田さつきさんの個展です。

その際に展示されていた3点の大作とともにその世界観を補い広げる小品もあわせて展示され、さらに深いイメージを惹起する空間が作り上げられています。

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この大作群にふたたびじっくりと対峙する機会が得られたのは大変貴重で、それが何より嬉しいです。

重厚な額に収められ、ペンで描かれた作品としては、実際のサイズ、そして描かれる場面のスケール感は相当に壮大です。

大振りの刀を振り上げ、都市を破壊する武者。ちぎれる左腕、破裂する左脇腹。全体を俯瞰したときのダイナミックな印象と、生々しい表現も女性的な感性で美しさを伴って描き上げられ、破壊や戦闘が全面に押し出された暴力的なシーンでありながら、澄んだ透明感も伝わってきます。

その全体のインパクトから、近づいて眺めたとき、ペンによる手描きのアミ線ですべてのグラデーションが表現されていることに、分かっていても大いに驚かされ、感嘆させられます。計算された奥行き感の説得力も、モチーフのひとつひとつの臨場感も、ストイックなまでにひとつの手法で紡がれている事実に、感動を伴う深い高揚ももたらされます。

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上の武者の作品と向かい合う位置には、今度は機械的なフォルムの圧倒的な格好良さが好奇心を力強く引き寄せる作品。

斜めに走る地平線の設定が、未来的なモチーフが多く登場し、いわゆる直接的な意志の存在を感じさせない全体的に冷徹さを秘めるような雰囲気に、倒れ込むようなダイナミっくな動きをもたらしているように感じられます。

武者の作品で多く登場する、どこかレトロな戦闘機の機影や窓があるビルディングなど、すでに存在しているもののリフレインが生み出す「記憶の惹起」からも一転し、より無機的なフォルムの建築物、さらに飛行物体と表現したほうがいいような未来型の戦闘機のかたちなどが、想像の膨張と加速ももたらしてくれるように思えます。とにかくいろんなイメージが湧いてくるのが楽しいんです。

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ダイナミックに武闘が繰り広げられる2点の世界観を俯瞰するようにして、もう1点の神々しい雰囲気に満ちる作品が奥の壁面に展示されています。

細かいインクのドットの多様が、幻想的な雰囲気をいっそう深めます。そして、どこまでも美しく描き上げられる女神の姿に、これまで積み上げられ、さらに進化するペン画アーティストとしての本領が、そして女性の感性が遺憾なく発揮されているようにも思えます。

美しいものを美しく描く、というプリミティブなモチベーションが感じられ、抽象的な表現もふんだんに織り込まれながら、浮遊感に満ちる情景がていねいに隙なく紡ぎ上げられていて、やはり無数に繰り出される緻密なストロークの集積に唸りつつ、その雰囲気にやさしく癒されるような気もしてきます。

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3つの大作によって大きく構成される空間の合間に展示される小品が、スピンオフ的にこの世界観に彩りと奥行きを添えていきます。

ひとつのモチーフにスポットを当て、より凝縮された場面がシャープに描かれているような印象です。

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繰り返しになりますが、アートフェアの開けた空間でさまざまな作品に紛れてのなかで展示された作品を、ギャラリーの閉じた空間、作品の雰囲気をさらに深める照明でふたたび観られるのがとにかく嬉しいです。

無論、アートフェアでもその緻密なストロークによって紡ぎ出された作品の圧倒的なインパクトにおおいに引き寄せられ、ペン画が他のヴィヴィッドなクリエイションにまったく引けを取らない様子は実に痛快だったのですが、やはり、この世界観が隅々まで満ちている空間で、あらためて対峙できたことがさらに深い感動をもたらしてくれたような気がしています。

そのぶん会期が短いのですが、ぜひとも多くの方にこの繊細で鮮烈な世界に触れてほしいです。

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田代裕基 個展「MIND TRAVEL」

YUKARI ART CONTEMPORARY

東京都目黒区鷹番2-5-2 市川ヴィラ1階

3/14(土)~4/18(土)日月火休・水:事前予約制

11:00~19:00(最終日:~17:00)

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Yuki Tashiro "MIND TRAVEL"

YUKARI ART CONTEMPORARY

2-5-2-1F,Takaban,Meguro-ku,Tokyo

3/14(Sat)-4/18(Sat) closed on Sunday and Monday,Tuesday and Wednesday:appointment only

11:00-19:00(last day:-17:00)

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YUKARI ART CONTEMPORARYでの田代裕基さんの個展です。

ギャラリーに入ってまず予想外の鳥が姿を現します。

空中にいるのに飛んでないという、なんともシュールなシチュエーションでありながら、その吊られる感じがなんとも説得力があって。

もりもりとりた鶏冠の部分の立体感にもおおいに興味が引き寄せられます。

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今回の個展では、さまざまな姿の鳥が登場しています。

頭部の作り込みの緻密さ、ボディの部分の荒々しい彫り痕の臨場感、独特の色彩感。田代さんらしい仕上がりが醸し出す独特の雰囲気は無論健在で、そこにユーモラスなかたちで表現される鳥たちの姿は奇妙なかわいらしさをたたえているように感じられます。

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花弁のように広がる4枚の「はね」、その真ん中に鎮座するボディの重厚感。さらに頭部の堂々とした表情。この膨らむような丸みの帯び方は以前ギャラリーエスでの個展で拝見した巨大な鳥の木彫作品を彷彿させてくれて、田代さんのクリエイションの真骨頂のひとつように思えます。

鮮やかな赤と白のトーンも、ユーモアを備えた独特の美しさを放っているように感じられます。

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そして、ひときわ神々しい姿の作品が。

タイトルに「ジャズ」という言葉が入っているこの作品がいちばん印象に残っています。

観る角度によって豊かに表情を変えるのは田代さんの木彫作品のたのしいポイントのひとつですが、下から見上げたときの余裕綽々な感じ、同じ目の高さで眺めたときには鋭く見据えるような強さなど、その表情のひとつひとつにさまざまな想いが過ります。

さらに、ぐるりと渦を巻くようにヒネリが入る体の部分、その流れにおおらかな動線をもたらすざっくりとした独特の削り痕、さらに纏う紫基調の配色などの要素がジャズという言葉に重なり、この作品と対峙していると、実際に歌ってい姿を目にしたことはないものの、カーメン・マクレエのあの這うように響く、太くやさしい声が脳裏に蘇ってくるような感じがするんです。

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そして今回は木片を用いた平面作品も多く展示されています。

グラフィカルな構図が田代さんの新たな一面を見せてくれているような感じが嬉しです。

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素材の持つ鋭いベクトル感により、それぞれの作品が動きを持っているように思えます。

何かの意志に導かれて、羽が空間を舞い、ひとつのかたちを現しているようなダイナミズムが伝わってるような気もします。

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何ていうか、パチンと指を鳴らすとあるかたちにするすると変わるのかも、という想像も浮かんできます。

肌合いが木彫作品と響き合い、空間としても深みが加速しているように感じられます。

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今回の個展における、ひとつのテーマに沿ってのさまざまなバリエーションの提示は、これまで導かれてきたのとは異なる展開軸を生み出しているように思えます。

造形、テクスチャー、配色においてそれが田代さんの作品であると分かるインパクトある個性でこれまで漸進してきて、今度はそこに広がりを組み込まれ、さらにダイナミックな方向性が思い起こされるような気がします。

ストイックさも遊び心も満ちるクリエイション、次の展開も楽しみです!

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この期間、というか先々週はアートフェアや岡本太郎展などにも足を運びました。

アートフェアで観ることができて嬉しかったのが、まずアートフェア東京の相模屋美術店のブースで個展形式で発表されていた川内真梨子さんの截金(きりかね)を駆使した曼荼羅風の作品群がひしめく圧倒的な情景。箔で引かれる鋭い線で描かれる模様の深みが印象的です。

丸の内ギャラリーのブースで、個展を拝見し損ねていた田村理恵子さんの写真もよかったです。ストレートフォトとは思えないほどにダイナミックにうごめく水面など、力強い表情と抽象性を持つ情景がモノクロームで引き出されていました。

普段からよく伺うギャラリーがひしめいていた@TOKIAは、まずはやはりYUKARI ART CONTEMPORARYのブースの大畑伸太郎さんの作品。さらに深みを増すポップな世界観。平面と立体でもたらされる空感は、この混沌とした状況でもしっかりと引き込んでくれます。

《4/3》

大石未生展

ギャラリーなつかb.p

東京都中央区銀座5-8-17 GINZA PLAZA58 8F

3/30(月)~4/4(土)

11:30~18:30(最終日:~17:30)

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爽やかでポップな色彩のチョイス、そして場面の解釈のユーモアが痛快なペインティングです。

作品によっては微妙にそこがどこでそれが何であるか分からないような仕上がりのものもあったりして楽しい!

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キレのよい色面のエッジが、柔らかいものも堅いイメージへと変えてしまっていることもあり、それが何か分かる瞬間「なるほどチクショー!!」みたいに納得とやられた感じが同時に伝わるんです。

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井上恵子さんや阿部未奈子さんにも通じる世界観ながら、よりあっさりとした構成でスピード感溢れるシャープさが創出されている感じが印象的です。

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澤井津波展

GALLERY b. TOKYO

東京都中央区京橋3-5-4 第1吉井ビルB1

3/30(月)~4/4(土)

11:00~19:00(金:~21:00、最終日:~17:00)

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アートフェアウィークでそれこそいつも以上にたくさんの作品を拝見したわけですが、そのなかにあってもっともインパクトを感じた作品群、展覧会です。

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混沌としたモノクローム世界。

密集し、凝縮された線、顔料が乾いて縦横に走るヒビ。

複雑なテクスチャーが強烈に深い情景を生み出しています。

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部分的に有機的なモチーフが入り込み、さらに妖しい雰囲気も加速、深化します。

ストイックなモノトーンの配色は、そのモチーフの生々しさを抑えることはなく、しかし冷静にうねるようなダイナミズムを繰り出してきているように感じられます。

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横長のパネルの作品があ4点配された壁面は圧巻でした。

異なるテクスチャー、濃淡のバリエーションによる密度の豊かさ、空間性の面白さなど、どうなっているのだろうと好奇心が尋常でなく煽られます。

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小品においても整理されることがなく、そのコンパクトな画面の中に濃密な混沌が繰り出されているんです。

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増殖するようなイメージも強く残ります。

線のケレン味のなさ、コントラストの面白さなど、深遠で濃厚な刺激に満ちたクリエイションです。

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《4/4》

長塚秀人「純粋風景」

ラディウムーレントゲンヴェルケ

東京都中央区日本橋馬喰町2-5-17

4/3(金)~4/25(土)日月祝休

11:00~19:00

前回の個展では並ぶ写真からジャーナリスティックな視点を感じたのが強く印象に残っていますが、今回は海や空の写真が多く発表されていることもあって、よりおおらかな雰囲気が空間全体に満ち溢れているように感じられ、心地よい高揚に心も満たされます。

そしてそこにやはりそれぞれの場所が持つミニマムな美しさ、素晴らしさを引き出すジャーナリスティックなアプローチも健在です。

《4/5》

夏目麻麦展

ギャラリー椿

東京都中央区京橋3-3-10 第1下村ビル1F

4/4(土)~4/25(土)日祝休

11:00~18:30

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前回の個展も面白かった夏目さん、2年振りの個展です。

前回はシンプルなポートレイト、ほぼ直立の人物画のみによって構成されていましたが、今回はそれぞれの作品に背景も描かれ、場面感がもたらされることとで物語性や時間性もより強く感じられます。

尋常でない気配の深さも無論強く伝わり、じっくりと感じたい世界です。

on her skin 清水朝子展

和田画廊

東京都中央区八重洲2-9-8 近和ビル302

3/16(月)~4/5(日)

13:00~19:00

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高地ボリビアで撮影された写真作品。

1点のみ、天地をひっくり返して展示された作品があったものの、いっさいの加工がなされないストレートな情景を捉えた写真として、その奇跡的な奥行き感に大きな感動を覚えます。

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透明感溢れる空の青、美しい湖面の映り込み。

幻想的でありながら、実にポジティブな風合いも伝わります。

こういう景色が地上にあることが信じられないくらいの景色が引き上げられ、ここに届けられることに大きな感謝の気持ちも沸き起こります。

打ちされない状態で写真が展示されているというところも、その美しさへの自信、そして写真作品の本来のあり方を伝えているように感じられたことも印象に残っています。

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白影 片岡雪子 小川敦生

森岡書店

東京都中央区日本橋茅場町2-17-13 第2井上ビル305

3/30(月)~4/4(土)

13:00~20:00(最終日:~18:30)

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実に魅力的な組み合わせの2人展です。

小川敦生さん、ユニークな支持体にグラインダーで歯車を思わせる複雑な一筆書きのラインを繰り出します。

貝殻の作品は、独特の雰囲気がちいさな「もの」のなかに詰め込まれたような感じがなんともいえない愛おしさをもたらしているように感じられます。

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平置きで並ぶ本の間に置かれるちいさな衝立てのような作品も面白いです。

敢えて外側でなく、重なる面のほうに線が走り、半透明の外側からうっすらとその線の存在が伝わるもどかしさ、側面の透明な部分から見える感じなど、伝えるユニークさも印象的です。

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片岡雪子さんの作品、これまでは黒の作品の印象が強かったこともあり、今回のテーマに沿った白いパネルの作品が醸し出す軽やかな静謐と神々しさは新鮮です。

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黒い作品も出展され、この空間の味わい深い壁面と実に見事な調和をもたらします。

空間に作用する独特な存在感がこれまでとまた異なった感じで伝わり、その淡々としていて滋味溢れる雰囲気に浸り、入り込んだ次第です。

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小谷元彦「SP4 "the specter" in modern sculpture」

山本現代

東京都港区白金3-1-15-3F

4/4(土)~5/2(土)日月祝休

11:00~19:00(金:~20:00)

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圧倒的な造形。

FRPの彫刻作品、実物大に再現される馬に跨がるゾンビの武者の壮絶なアバンギャルド性には畏れすら感じます。

壁面に並ぶ画面もひとつの作品として捉えると出展されている作品は4点、加えて空間への加工はいっさいない、つまり演出が行われない中で作品の強さのみでここまでのインパクトがもたらされていることにあらためて感嘆させられます。

《4/7》

永岡大輔 個展「RING WONDERING」

hpgrp GALLERY 東京

東京都渋谷区神宮前5-1-15 CHビルB1F

4/3(金)~4/26(日)月休

11:00~20:00

大型サイズのパネル作品、そして映像作品も出展され、永岡大輔さんのこの時点での集大成的な亜印象も感じる展覧会です。

絵画作品におけるさらに加速する独創的な物語性と、作品によってはよりプリミティブなアプローチも繰り広げられているものもあり、いろんなイメージが今回ももたらされます。

《4/10》

project N 37 阿部岳史

東京オペラシティアートギャラリー 4Fコリドール

東京都新宿区西新宿3-20-2

4/11(土)~6/28(日)月休(5/4は開館)

11:00~19:00(金土:~20:00)

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面白い!

彩色されたちいさな木片のキューブが画面に整然とした配列で並べられ、さまざまなものや場面、人の姿がシンプルな階調の解釈で描きあげられていています。

何よりそのソフィスティケイトされた感触がいいんです。これだけシンプルに、しかもキューブによってもたらされる色彩のドットには間隔が充分にあるにもかかわらず、それぞれが「分かる!」って感じがホントに楽しい!そして、その余白に映り込むキューブの影も色があるような錯覚がもたらされているのも興味深いです。

立体の作品も面白いです。

Nam Hyojun ミドルテンション

CASHI

東京都中央区日本橋馬喰町2-5-18-1F

2/6(金)~2/28(土)日月祝休

11:00~19:00

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韓国籍を持ち、北朝鮮の教育を受け、日本で育ち、現在は中国在住というややこしい背景を持つNam Hyojunさん。

CASHIのこけら落としのグループ展では映像作品を発表されていて、その相当にシュールなインパクトも印象に残っているのですが、今回の個展では自信が持つ背景やアイデンティティをユーモラスで軽やかに提示している感じが痛快です。

そして、今回初めて発表されるというペインティングが、ペインティングとして実に真っ当なのも興味深く感じられます。

多和田有希「Missing Folklore」

TARO NASU

東京都千代田区東神田1-2-11

4/10(金)~5/9(土)日月祝休

11:00~19:00

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INAXギャラリーでの個展以降にその存在を知ったこともあり、ホントに待ち遠しかった多和田有希さんの個展。

ニードルや消しゴムで無数のスクラッチが施された写真。遠目に眺めたときに伝わる鋭く膨張する気配の鮮烈さとフューチャリスティックな神々しさ、至近で観たときに捉えられるスクラッチの生々しさ、このギャップも面白味を深めます。

敢えてプリントをそのまま壁に配し、行為の痕跡も隠さず提示、東神田移転以降に行われたTARO NASUの展覧会としてはよい意味でもっとも乱暴な雰囲気に溢れます。

《4/11》

樋口明宏/吉賀あさみ“サンクチュアリーへ”

MA2Gallery

東京都渋谷区恵比寿3-3-8

4/10(金)~5/9(土)日月祝休

12:00~19:00

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作品制作のアプローチのユニークさが際立つふたつのクリエイションがパッッケージされた展覧会、いきなり独特の雰囲気につつまれます。

明るい時間に伺い、窓ガラスから空間にもたらされる自然光が作品のもつ独特な気配を隠し、絶妙な雰囲気が広がっているように感じられた次第で。

この時間に空間に振れて得た印象をもって、あらためて遅い時間に行ってみたいと思います。

松村有輝 泥の中の金

TAKE NINAGAWA

東京都港区東麻布2-12-4 信栄ビル1F

4/4(土)~5/2(土)日月祝休

11:00~19:00

アサッテの方向に向かうユーモアと、その表面的なあからさまな感じに隠される面白いアプローチがとにかく痛快です。

入り口から見えるインスタレーションにまず唖然。

外国雑誌のヌードグラビアが丸められて作られた小山、生々しいはずの色彩が奇妙な雰囲気を生み出しています。

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角材を折り、ニスを塗布した作品も、不思議と妙な説得力を放ちます。

そうであることを受け入れさせてくれる感じ、多分に僕自身のこういったクリエイションへの耐性と楽しめるくらいの「慣れ」的なものがあるとは思うのですが、イマジネーションと行為の距離の近さによってもたらされる想像性と偶然性との交錯がなんともいえない面白さをもたらしてくれているように思えます。

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そういったなかで、事故車の破損部分を引き出したかのような作品にもまずは同様な印象を受けつつ、有ることに気付いて相当に驚かされます。

そして、そこから「まさか・・・」という思いがどんどん第一印象に上書きしていくという。。。

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藤田淳/ジョン・トレンブリー

GALLERY SIDE2

東京都港区東麻布2-6-5

3/14(土)~4/11(土)日月祝休

11:00~19:00

藤田淳090314.jpg John Tremblay 090314.jpg

最終日に再び足を運んできました。

グラフィカルなクリエイションの競演、シャープに響き合うふたつの個性。比較的近い距離感が、それぞれの個性の面白さを引き立てているように感じられた次第です。

藤田淳さんのペインティング。

無機と有機とが絶妙に重なる構成が面白く、かっこいいんです。

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うねる曲線にも論理性というか、そうである理由の存在があり、整理された感じがします。

配色の絶妙なバランス感も印象的です。

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大作はストイックです。

とあるシンセサイザーのつまみをモチーフに描かれた作品、徹底してマスキングを用いて描かれていることにより色のエッジの立ち上がりも鋭く、ただひとつのパターンがこれほどの画面全面に展開されていることに圧倒されます。

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一転して、ジョン・トレンブリーさんの作品は有機的な風合いに臨場感を感じます。

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大胆な空間性に加え、ポップなかたちと色彩、さらに構図の大胆さによって視覚的にもたらされるズレや歪みの感覚がなんともユーモラスに思えます。

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小品のドローイングも楽しいです。

図形的なアプローチでありながら、堅い印象よりも遊び心のほうが勝っているように感じられます。

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前田さつき スペクタクル

YOKOI FINE ART

東京都港区東麻布1-4-3 木内第二ビル6F

4/10(金)~4/18(土)日祝休

11:00~19:00

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今年のアートフェア東京のTOKIAでのブースのなかで、ひときわスマートな空間を展開し、多くのギャラリーとは異なるインパクトがあったYOKOI FINE ART、そこで紹介されていた前田さつきさんの作品が今度はギャラリーで展示されています。

そのときに展示されていた作品もさらにゆったりとした空間と壁面とが与えられてじっくりとその絶妙なテクスチャーに触れられることが嬉しく、また小品もあわせて展示されていて、今回前田さんが創り出した世界観により深く接することができるような印象です。

Holly farrell "Home and Sea"

MEGUMI OGITA GALLERY

東京都中央区銀座5-4-14 銀成ビル4F

3/17(火)~4/11(土)日月祝休

12:00~19:00

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実に真っ当な「絵画」を観ることができたなぁ、と充実した気持ちがやさしく心を満たしてくれます。

いわゆる「静物画」で、しかし背景の絶妙な白といい、主題の選定といい、現代的なアプローチが新鮮です。

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画面にもたらされるリズムも楽しいんです。

浮きの転がる感じ、陶器の重力感、毛糸玉のあったかなイメージなど、それぞれのものが持つ雰囲気もていねいに引き出され、軽妙で、かつシンプルな展開が空間的、そして時間的に心地よい奥行きをもたらしているように思えます。

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決して過剰でないリアリズムの追求は、実物を拝見したときに「絵画を観ている嬉しさ」を感じさせてくれます。

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日野田崇展 アレゴリーの暴発

INAXギャラリー

東京都中央区京橋3-6-18 INAX:GINZA 2F

4/1(水)~4/25(土)日祝休

10:00~18:00

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陶器作品ということで、もっとつるりとした表面を連想していたのですが、思いのほかざらついた仕上がりなのにまず驚かされます。

ユニークなのが、インパクトとして陶器に描かれるモチーフの歪みやズレの強烈さがまずぐんと立ち上がって伝わるのですが、その惑わすようなペイントとは裏腹に造形の落ち着いた感じは大変興味深いです。

深海武範展「みるみるあげてみる」

GALLERY MoMo Ryogoku

東京都墨田区亀沢1-7-15

4/11(土)~5/2(土)日月祝休

11:00~19:00

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前回の個展から間隔を置かずに開催されている今回の深海さんの個展、過去に発表されている作品も多く見受けられるなかで、手前の長い壁面で繰り広げられているシリーズものが面白い情景を生み出しています。

手前から並ぶ画面、入り口から遠くへ向かうほどにだんだんと画面も小さくなっていく構成で、そのなかに描かれている、これまで何度かモチーフとして登場したコップの水の屈折によるユーモラスな世界が楽しいです。

ジェラティン

TOMIO KOYAMA GALLERY

東京都江東区清澄1-3-2-7F

4/11(土)~5/16(土)日月祝休

12:00~19:00

なんかすごかった!Σ( ̄口 ̄;)

なんかすごかったぞ!Σ( ̄口 ̄;)

伊藤存「四月パカ」

TAKA ISHII GALLERY

東京都江東区清澄1-3-2-5F

4/11(土)~ 5/16(土)日月祝休

12:00~19:00

ほぼ刺繍の作品で構成されている今回の伊藤存さんの個展。

大判の布に緩い刺繍、描かれるモチーフも分かりそうな要素と惑いそうな要素とが、もしくは細かいステッチによる曲線と、大きなステッチによる直線とが交錯していて、シンプルで複雑な構成を生み出しています。

・・・しかし、どうにも入り込めないのです。

よくよく眺めていて、ある瞬間に感覚的に分かるかもと思う刹那、素材の質感がそのあと一歩の刺激に水を差すような感じがするんです。

田口和奈 そのものがそれそのものとして

ShugoArts

東京都江東区清澄1-3-2-5F

4/11(土)~5/23(土)日月祝休

12:00~19:00

田口和奈090411.jpg

空間に作用するユニークな作品。

豊かな空間で、広がりをもった絵の中の世界がよりダイナミックに、そして逆に陰に入って\行くような静謐をもたらしているように思えます。

久々に星空の作品も発表されているのも嬉しいです。

《買ったCD》

「アルトコロニーの定理」RADWIMPS

Live At Belleville」Arild Andersen

山科理絵展

GALLERY SHOREWOOD

東京都港区南青山3-9-5

3/23(月)~4/16(木)日祝休

11:00~18:00

山科理絵090323.jpg

Rie Yamashina exhibition

GALLERY SHOREWOOD

3-9-5,Minami-aoyama,Minato-ku,Tokyo

3/23(Mon)-4/16(Thu) closed on Sunday and Monday

11:00-18:00

Google Translate(to English)

緻密な描写力で繰り広げられる、ユーモラスで幽玄な情景。

GALLERY SHOREWOODでの山科理絵さんの個展です。

山科さんはこれまで折に触れて拝見していて、こちらのブログでもその紹介の頻度が比較的多い日本画家ですが、確かにそうなのですが、個展で拝見するのが今回が初めて。小さな作品の印象が強いなかで、大きな作品が観られたのがまず嬉しいです。

ひとつひとつの部分が繊細な表現で綴られます。

お馴染みの骸骨、髑髏がモチーフとして多く登場しますが、いわゆるおどろおどろしさが強く前面に押し出されることはなく、落ち着いた静けさがしっとりと広がり、花や花柄、蝶といった美しいかたちの象徴といった印象のモチーフが重なることで、奥ゆかしい幻想性が紡ぎ出されているように感じられます。

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大きな画面の作品では、より大胆な空間性で荘厳な世界が綴られているように感じられます。

丸く、そして赤くその存在を堂々と示す満月。それを背景に、あたかも何かに想いを馳せるかのように、首をあげ、天空を見上げるように佇む鳥の骸骨。そして咲く誇る梅、聞く。全体的なトーンが醸し出す落ち着いた雰囲気により、滋味に溢れ、和の感性もふわりと漂う独創的な情景に緩やかに引き込まれていくかのようです。

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骸骨が登場しない大作も。

おそらく制作された時期は異なるのだと思うのですが、蝶といい、雄鶏といい、咲く花といい、描き上げられるひとつひとつのモチーフのていねいな描写と、連綿と続く日本絵画のわびさびを引き継いでいるように感じられる絶妙な配置が不思議な気配を生み出しているように思えます。

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もちろん小品もすてきです。

日本画の立ち位置を変えずに紡ぎ出されるポップな風合い。

同じサイズに同じ額、そのパターンが並ぶ画面にリズムをもたらしています。小気味よい拍子も聴こえてきそうな感じもほっこりとして楽しげです。

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女の子の作品も、美人画的な艶やかさをうっすらと残しつつ、現代的な情景感が独特の雰囲気をもたらしています。

一連の骸骨の作品の気配感も絶妙に引き継ぎながら、なんともいえない生死観も紡がれているようにも思えて、そこに描かれる女の子の存在にもさまざまなイメージが交錯します。

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日本画の面白い要素のひとつとして、「工芸的」な美しさは確実に存在すると思います。

岩絵の具を膠で溶いて、緻密な盛り上げによって画面にもたらされる立体感。さまざまな現代の日本画作品を拝見すると、その技巧に目を見張らされることはしばしばです。

しかし、そのインパクトはやはり観始めからしばらくの間で、やはり結局は「何が描かれているか」「どんな世界が作られているか」により惹かれるようになった次第で。

僕自身のこの流れのなかで、山科さんが描く作品はその攻撃的な緻密なアプローチにも魅入られ、同時に情景のオリジナリティにもおおいに感じ入る次第です。

「山科さんらしさ」はモチーフの選定と色のチョイスに感じられます。

その個性がこれからどんな情景を紡ぎ出していくかも楽しみです。

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吉田暁子 個展「視/夜 (しや) _意義黎明」

東京画廊+BTAP

東京都中央区銀座8-10-5-7F

3/25(水)~4/18(土)日月祝休

11:00~19:00(土:~17:00)

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Yoshida Gyoko solo show "Seeing in the night:the dawn of meaning"

Tokyo Gallery

8-10-5-7F,Ginza,Chuo-ku,Tokyo

3/25(Wed)-4/18(Sat) closed on Sunday,Monday and national holiday

11:00-19:00(Sat:-17:00)

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深まる独創性、広がるエキゾチシズム。

東京画廊+BTAPでの吉田暁子さんの個展です。

前回の個展から景色が一変したような印象が深遠なインパクトを感じさせてくれます。

同じアーティストが創り出した、生み出した空間としては違和感はなく、むしろ説得力に満ちていますが、空間を構成する作品のサイズやそこに挿入されるアプローチのユニークさの差異などが、「うわっ、変わった!全然違う!」という印象をもたらしてくれているように感じられます。

大作中心の展示、多くの作品にレイヤー的なアプローチが行われています。

黄色い厚手のビニールが画面全面を覆う作品。奥のパネルに直描きの線が導き出す妖し気な世界観。いくつもの気配が折り重なり、ただ調和するのとたいささか異なる不思議な情景が生み出されています。

シャープな描写や顔料の質感など、その風合いが奏でる独特の味わいが、言ってみれば化学物質で覆われていることで不思議な光景となって現れているような印象です。黄色く染まる奥のモチーフを直に観られないことのもどかしさも奇妙な世界観を深めることに貢献しているように思えます。

さらに、黄色いビニールと奥のパネルとの間にもたらされるわずかな空間の存在がそのまま異界の、虚の空間のイメージに転化されるような気がして、スリリングに感じられるんです。

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一転して白が重なる作品。

銀色の絶妙な濃淡が、エキゾチックな雰囲気をゆるやかに、そして繊細な緊張感を奏でています。

半透明の素材が重なることで奥の情景はいっそう曖昧に、幻想的になり、表面に描かれている、気の流れを思い起こさせる豊かな線と奥行きを構築して、なんともいえない神々しい気配が、そして独特な時間の流れが伝わってくるような気がします。

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物質的なレイヤーのアプローチが行われていない作品も。

こちらはひとつひとつのストロークの繊細さ、巧みさが立ち上がり、そのリアルな臨場感が力強さへと押し上げられて、ダイナミックな世界観が展開されているように感じられます。

それぞれのモチーフの具現的な感じと、ここで綴られる物語としての抽象性との絶妙なバランス。燃え盛る炎を思わせるちいさなモチーフはその密度に一色が引き込まれ、パネルの木の質感も生々しく画面に露になるさほどの薄塗りの白のグラデーションで紡がれる情景は、おおらかさが感じ取れて、そのコントラストもイマジネーションに深い刺激をもたらしてくれます。

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前回に続いて出展される屏風の作品。

そのサイズの時点で、この展示の中でもっとも強いインパクトと存在感を放っています。

もともと屏風に描かれていた絵をもとに、炎や煙、妖気を思い起こさせるモチーフを重ねて描き、それが時空を超えるレイヤー的なアプローチのように思えるのが興味深いです。

もっとおとなしいというか、もとからあった絵は淡々としていたと思われるのですが、それが相当にアグレッシブでサディスティックな世界へと転化されていることが、屏風の中で今そうなっている景色とともに、おおいに惹かれます。

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奥まった一角にも面白い作品が展示されています。

薄いメッシュを重ねた作品。画面とメッシュとの距離が遠いこともあり、今回展示された作品の中でももっとも立体的な情景がもたらされているように思えます。

モクモクとした色の重なりがどこかユーモラスで、その動的なイメージはメッシュ地に描かれるモチーフを超えて前面に現れてくるような感触もさらに面白いです。

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この作品、横から眺めたときに、今度はメッシュ地に描かれた部分が驚くほどの立ち上がりを見せます。

そのコントラストにもおおいに魅力を感じます。

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制作、クリエイトすることに対するバイタリティに感嘆させられます。

今回は前回以上にバリエーションに富んだ展開を繰り広げ、それぞれがさまざまな世界観、奥行き感を生み出しながら、それでもすべてが吉田さんが作り出した世界であることへの説得力に満ちているんです。

ひとことで「和」の情景とは言い切れない、独特の、しかもいくつものエッセンスが散らばっていて、無数の発見と驚きと刺激に溢れています。

それぞれの作品とじっくりと対峙したい、してほしい展覧会です。

そして機会があれば、これらの作品を黒い空間でも観てみたい、そういう想いにも駆られます。

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加藤愛「きゅぴんッ展」

ミヅマ・アクション

東京都目黒区上目黒1-3-9 藤屋ビル5F

3/11(水)~4/11(土)日月祝休

11:00~19:00

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Ai Kato "KYUPIN"

MIZUMA ACTION

1-3-9-5F,Kami-meguro,Meguro-ku,Tokyo

3/11 (Wed)-4/11(Sat) closed on Sunday,Monday and national holiday

11:00-19:00

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彡 "/″マ了 勹 ゙/ ョ ・/τ″@力ロ藤愛☆マ├″・/ナ、ナω@イ固展レニ彳テっτ 、キま ι ナニ (>_<)

通足各 レニもイ乍品 カゞ レヽっレよ° レヽ! (>_<)

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カゝゎレヽレヽ孑カゞ笑彦頁τ″レヽゑー⊂思っナニら・・・

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才ッ├セィ@木目言炎ゃっτゑωナニ″っτーーーー!!!!

ナょぜカゝぉτ″ω才寺っτゑι!

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・・・・・○| ̄|_

誰だよ俺(涙)。

探せば便利なツールは見つかるもので、まあ気まぐれでやってみましたけど、

心意気は充分伝わっただろ!Σ( ̄口 ̄;)

どんな心意気だよ!Σ( ̄口 ̄;)

微妙に読めるのが嬉しいような嬉しくないような(汗)。。。

えー。

元に戻ります。

まあ予想はついていたとはいえ、いきなり通路からなんだかもう詰め込んできてます!

なかでもツボに入ったのが勝手に命名「のし紙で遊ぼう!」シリーズ。

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安易だな!Σ( ̄口 ̄;)

確かに「安易」だな!Σ( ̄口 ̄;)

しかしそれがいい!(≧∇≦)ノ゛

メインスペースに入ると、真っピンクな空間ドーン、作品なんやかんやボーン、なんだかもう、

浜崎健立現代美術館かよ!Σ( ̄口 ̄;)

(分かる人にはよくわかる、すごくよく分かる)(と思う)

みたいな内装に唖然、めくるめく加藤愛☆マドンナワールドが展開されていますよまったくもう(汗)。

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なんかもう、

何でもアリだな!Σ( ̄口 ̄;)

文字通り何でもアリだな!Σ( ̄口 ̄;)

って感じの世界が続きます。

絵があって言葉があって、分かりやすくてワケが分からなくてしかし伝わるという。。。

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そして女神降臨。

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射す後光、煙るように沸き立つさまざまな表情の女の子の顔、シュールな神々しさが空間を満たします。

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どっから出てきてるんだよ!Σ( ̄口 ̄;)

後光じゃなくて冷気かよ!Σ( ̄口 ̄;)

いや、暖気か!Σ( ̄口 ̄;)

そんなのどっちでもいい!Σ( ̄口 ̄;)

(「エアコンから出る空気」の総称ってなんですかね、調べたけど分かりませんでしたorz)

・・・・・!

足下のガムテもわざとなのか?!Σ( ̄口 ̄;)

まあ何でもアリです(≧∇≦)ノ゛

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とにかく「思いついたら即行動キュピーン(≧∇≦)ノ゛」みたいな世界観が凝縮されてます!

四の五の言うのはホント意味ない感じでして、ただただこのボリューム感に唖然呆然、というのが正しい接し方かと。

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そしてヒジョーに画期的なことも。

これは相当に面白いです、詳しいことは貼ってある紙を読んでもらうことにして、

いいのか?!Σ( ̄口 ̄;)

ホントにいいのか?!Σ( ̄口 ̄;)

ワーーーーーーーーーーーイ!!!!!(≧∇≦)ノ゛

みたいな感じで初日なんてけっこう多くの人がニッコニコでハサミ片手にチョキチョキやってて、まあかなり乱暴なインタラクティブ的な感じではありますが、これやっちゃうあたりがもう参ったって印象です!

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で、スタッフの方が全力で苦笑しながら

「…次の日来ると展示が変わってるんですよ...orz」

とおっしゃってたのが何より面白かったりして。

まあ、あれです

勝手にしろ!!!Σ( ̄口 ̄;)

で、そして

一生(の0.05パーセントくらいの勢いで)ついていきますキュピーンッ!(≧∇≦)ノ゛

以上、当ブログ史上(どんな「史」だよ)もっともいい加減なレビューを照れ隠し込みでお送りしましたよこの野郎様。

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青山悟「Glitter Pieces #1-22:連鎖/表裏」

MIZUMA ART GALLERY

東京都目黒区上目黒1-3-9 藤屋ビル2F

3/11(水)~4/11(土)日月祝休

11:00~19:00

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Satoru Aoyama "Glitter Pieces #1-22"

MIZUMA ART GALLERY

1-3-9-2F,Kami-meguro,Meguro-ku,Tokyo

3/11(Wed)-4/11(Sat) closed on Sunday,Monday and national holiday

11:00-19:00

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MIZUMA ART GALLERYでの青山悟さんの個展です。

ギャラリーに入った刹那、闇が降り掛かってきます。

そして眼前、昨年の「ECHO」で拝見した、メタリック色の糸を用いた刺繍作品が暗闇に灯るように現れます。

ちいさな作品が、シャープにトリミングされた照明に照らされ、黒と金色とのコントラストが、そして糸の臨場感が、視覚からイマジネーションを刺すような鋭さで迫ってくるような印象です。

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たったひとつのイントロダクションに導かれて歩みを進めると、今度は圧倒的な静謐が迎えてくれます。

黒い台が緻密な計算と繊細な感性のもとに設定されたと思われる位置に配置され、その上に立てて置かれる作品。

黒の影にひとつ、あるいはふたつのメタリック色が用いられ、さまざまな場面が再現されています。

・・・闇のなかに灯るさまざまな色彩の煌めき。ただその美しさに深い感動がもたらされます。

その美しいこととは裏腹に、そこに取り込まれる場面のバリエーションの多さに戸惑いも浮かびます。しかし、闇によってしんしんと満たされる空間的な余白がその混乱の絶妙なバランスを、さらには唐突な関係性に感覚的な説得力をもたらしているように感じられます。

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さらに空間の深いところへ。

振り返って、今度はシルバーと黒の世界、モノクロームの情景に。

入り口側からの光景を正面だとして、その裏側には、取り込まれるモチーフ的に、さらに複雑な混沌が生み出されています。

そこに色彩的な統一感がもたらされることで、光景としての説得力は正面に引けを取らない相当な硬度を保持しているようにも思え、興味深く感じられます。

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さて、面白いのは台の上に立つひとつの作品の表裏の関係性。

これが、1枚の印刷物を再現しているとのこと。

ある日の新聞に掲載された写真を切りぬき、そこにメタリックの刺繍糸で「彩色」して再現したのが正面の画面。

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新聞なので切り抜かれた写真の裏側にも何らかの印刷があるわけで、それを切り抜かれたそのままに再現したのが裏側、ということになっています。

記事や広告など、意図しないかたちで切り抜かれている感じが伝わって、それが実にユーモラスに思えたり、逆にあたかも狙っていたかのように見事な展開も繰り出されていたり。

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このアプローチが深い面白みを生み出します。さまざまな必然と偶然とが入り乱れ、イマジネーションを複雑に刺激してきくるような感じです。

両面に印刷が施されているものを再現するにあたり、ならば両面を再現しなければいけない、という必然性。

正面の画面について、「これを再現しよう」というモチベーションをもたらす感覚的な必然性。

それに伴って決定される裏面の画像の偶然性。

そもそもその画面に出会うという偶然性。など、など、など。。。

無数の郡然と必然の要素が重なりあって生み出されたこの空間に対し、すべて感覚的、論理的に説明できる説得力に溢れているように感じられることが、美しいことへの感動にさらに別の感嘆をもたらしてくれます。思い返すとさらにいろんな想いが膨らみ、加速していくような感じです。

表裏のコントラストは、空間に動的な面白さ、インタラクティブな要素ももたらします。

移動しながら作品を眺め、それぞれの複数の画面の位置と自分の立つ位置との関係性の変化によって、空間に色が灯されていく、あるいは消えていく感じは実にスリリングです。

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奥のスペースへ。

ふたつの空間を繋ぐ位置にも1点、今度はモノクロームの作品が入り口と同様、その動線を灯し、次のインスタレーションへと導くように展示されています。

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こちらの空間では、「ECHO」展のインスタレーションの再構築的な構成が組み上げられています。

ZAIMの空間的な殺伐とした感じが作品の高貴な風合いを逆に引き出していた展開から、今度は空間が作品に調和することでそのポテンシャルを鮮烈に提示しているように感じられます。

ランダムに配される画面のリズム感、照明のトリミングの正確さなど、さまざまな要素に洗練された感性と技術がもたらされて、意識が空感の雰囲気に沈み込んでいくように感じられます。

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青山さんと作品や展示についてお話を伺うたびにキーワードとして印象に残るのが、自らが用いる工業用ミシンを「労働のシンボル」として、また「最初期のテクノロジーの象徴」として捉えている、ということです。

多分に僕の解釈も入りますが、青山さんが提示する世界観は、進化し続けるテクノロジーへのアンチテーゼにも思えたり、またその「労働のシンボル」を用いる、すなわちひとつの「究極の手作業」により、リミットゼロへと向かう可能性の追求がストイックに繰り広げられているように感じられます。

僕を含めた多くの鑑賞者にとって、青山さんが作る作品の「精度」への信頼はもはや揺るぎようがないと考えますし、おそらくその点において青山さん自身もある確信、ある達観はお持ちなのでは、と想像します。だからこそ、創り出す世界には常にギリギリの際どさ、とてつもない密度によるスリルがもたらされているのでは、と、今回もさらに感じた次第です。

そして、想いを巡らすとそれだけで時間を忘れて感動してしまえそうなのですが、同時にただ「美しいもの」を「美しい」と思うシンプルな感性だけで充分に、深い感度が得られることに対しても毎度ながら感嘆させられます。

とにかくたくさんの人にまずはその美しさに触れ、浸ってほしいクリエイションです。

そしてそのなかから、さらに深いイメージを得る人がひとりでも多く現れるとホントに嬉しいです。

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山本桂輔展“起立”

TOMIO KOYAMA GALLERY

東京都江東区清澄1-3-2-7F

3/7(土)~3/28(土)日月祝休

12:00~19:00

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Keisuke Yamamoto "rise"

TOMIO KOYAMA GALLERY

1-3-2-6F,Kiyosumi,Koto-ku,Tokyo

3/7(Sat)-3/28(Sat) closed on Sunday,Monday and national holiday

12:00-19:00

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これはまさに、現代アート讃歌・・・!

TOMIO KOYAMA GALLERYでの山本桂輔さんの個展、実に大きな、ポジティブな感動を呼び起こしてくれた展覧会です。

入り口すぐのカウンター前に展示されたちいさな木彫のオブジェが、この空間のかわいらしいイントロダクションとして佇んでいたのも印象に残っています。

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まず手前のコンパクトな展示室。

入り口から覗くとスパーンと直立する木彫の作品が目に飛び込んできます。

見上げて眺めるのがなんとも痛快で、彫られる模様や彩色のユーモラスな感触など、ほっそりしているのにどこか丸っこい印象で、のんびりとしていそうで倒れない強さも発しているという、なんだか不思議な雰囲気。

プリミティブな造形もハッピーな気持ちを盛り上げてくれます。

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ペインティングもこの空間に2点。

有機的で土着的なモチーフと幾何学的なパターンが重なり合って奏でられる独特のリズム感、内包するエネルギーをこれでもかと言わんばかりに放出する力強い発色。どっしりと画面にへばりつく絵の具の臨場感も加わって、ダイナミックな雰囲気が創出されていて痛快です。展示室の真ん中の木彫作品との位置的な関係性が醸し出す面白さ、計算されたような配置が空間を支配するような雰囲気も印象的です。

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通路部分に展示された小品も面白い!

図形的な奥行き感の演出の切れ味の鋭さと、もりもりと生々しい力強さとで創出される世界観のおおらかさ、そしてその気持ちよさは、このサイズであっても充分に伝わってきます。

同時期にTKG editionsで開催されていた山本さんのドローイングと小品の展示も、やはりポジティブなエネルギーが賑やかに放たれていたのが印象に残っています。

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通路の奥、メインスペースに目を向けると、ちょっと信じられない様相。

「え?」と一瞬、眼前の状況を疑ってしまうほど。

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圧巻、というひとことでは到底片付けられないくらいの迫力が。

とにかく実物のサイズが尋常でないうえに、その造形がもたらすスケール感はさらに大きく、有数のダイナミックな空間の中央に鎮座する巨大な木彫作品を見上げ、心はただただ平伏せるばかり・・・。

言葉をなくすほどに圧倒され尽くした後、今度は凄まじい高揚感が襲ってきます。

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どれだけの自由や開放感、想像力が注ぎ込まれているのだろう...。

ただこれだけのサイズの作品を作る、ということに思いを馳せただけでも、ただ呆然とするだけなくらいの凄みを感じるのですが、ここにつぎ込まれた時間のボリュームはそのまま観る者のイマジネーションの広がりに反映、転化され、尋常でない想像の膨張がもたらされるような気がします。

そこかしこに見受けられるさまざまな表情の純朴さ。彫る、敢えて言い換えると「小さくしいていく」作業の積み重ねによって制作されているはずなのに、浮かぶイメージはもりもりと膨らみ、湧き出てくるかのような感じなのも面白いです。

遊び心もふんだんに練り込まれるようにしてそこかしこに投入され、おおらかなダイナミズムとは裏腹の細かい造形の味わい深さもあったりして、とにかく見応えがあって、さらにいつまでも一緒にいたいようなポジティブなあたたかさも伝わってくるような気がした次第。ああ楽しい・・・!

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さらにこの聳える巨大木彫オブジェを取り囲むペインティングも素晴らしいのです。

強烈な発色と大胆な構図が、木彫の巨大三次元のエネルギーと衝突し、さらに空間をヴィヴィッドにもり立てていくんです。

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ひときわダークな色合いが目を惹く大作。

夜から朝にかけての時間帯を思わせる背景の黒のグラデーションが緩やかな時間の変化を思い起こさせ、そこに佇む塔のようなモチーフの淡々とした存在が濃密な世界観をもたらしているように思えます。

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ふたつのパネルによって構成される作品は、注ぎ込まれる要素のたっぷりとしたボリューム感に加え、構図の面白さが際立って感じられます。

複雑に作り込まれる奥行き感、そこかしこにそれが何か分かるモチーフが多用され、空間としての親近感を感じ取りながら、やはり全面に広がる色の鮮烈で生々しいインパクト、たっぷりと用いられる絵の具の質感と臨場感、さまざまな要素が混在し、その力強さに引き込まれるような印象を覚えると同時に、その情景がさらに広がる、というより膨らみ続けているような、痛快なイメージももたらしてくれるような気がします。

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ペインティングも木彫作品も、とにかく接しているだけで「うわぁぁぁぁぁ!」と快哉をあげたくなるほどにポジティブなエネルギーに満ち溢れているんです。

出展されている作品の数量も相当なもので、そこに費やされた時間も相応に相当なものであるはずで、その相当量はすべてこの展示空間のボリューム感に転化され、ポジティブで明るいイメージがたまらなく「いっぱい!」に溢れている感じに包み込まれて、感化されて、楽しい気持ちもぐんぐんと膨らんでいきます。

こういう突き抜けるほどにポジティブな感動が得られたことが嬉しいです!

思い返すと「起立」という展示タイトルもいい!

一生忘れないポジティブなイメージをくれたことにおおいに感謝しながら、次の展開も期待したいです!

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PICA3 岡田真希人、Hyon Gyon、水田寛、宮本佳美、村上滋郎、sabia(徳山拓一、山口冴子)

ARTCOURT Gallery

大阪府大阪市北区天満橋1-8-5 OAPアートコート1F

3/3(火)~3/19(木)日月祝休

11:00~19:00(土:~17:00)

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PICA3 Makito Okada,Hyoun Gyon,Hiroshi Mizuta,Yosimi Miyamoto,Jiro Murakami,sabia

ARTCOURT Gallery

1-8-5 -1F,Tenmabashi,Kita-ku,Osaka-shi,Osaka-fu

3/3(Tue)-3/19(Thu) closed on Sunday and Monday

11:00-19:00(Sat:-17:00)

Google Translate(to English)

見応えがあったグループショー、ARTCOURT Galleryでの「PICA3」と題された展覧会に行ってきました。

クレジットされているアーティストの名前を見たたででも踵が浮きそうなくらいに興味が湧いてきたのですが、空間のユニークさ、ダイナミズムを活かしたインスタレーションをそれぞれが繰り広げていて、そのエネルギーに圧倒された次第。

まず、sabiaのお二人の作品が静かに出迎えてくれます。シンプルなモチーフとそこに収められるユーモアが、淡々としていながらもその穏やかな風合いに心地よい印象を覚えます。あらためていろいろとは意見してみたいクリエイションです。

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次の空間へと繋がる部分から、村上滋郎さんのインスタレーションが展開されています。

magical,ARTROOMでの展示でその世界のユニークさに触れ、オープンアトリエでのインスタレーションでその世界が持つ懐の深さとユーモアとが強烈なインパクトを放っていたのですが、今回も嬉しいことにやや暴走気味で、無理矢理インタラクティブな要素を持ち込んでいる上に「ほら、入ってよかったでしょ!」と言われて全力で肯定したくなるような痛快な空間が作り上げられていました。

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中に入ると・・・!

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この混沌としたフューチャリスティックな感じがとにかく堪らない!

回転するレコードに作られた情景に入り込むとこういうふうになっているのか!と想像が繋がっていきます。

出口にペインティング、ざっくりとした筆の運びがもたらすアバンギャルドさ、そしてユーモアが楽しいです。

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同じくオープンアトリエで拝見して印象に残っている岡田真希人さんも凄いことやってます。

無数の印刷物が広大な壁に貼られ、それによって描き上げられる勇者か何かのキャラクターのシルエット。手に持つ剣、立ち姿の勇ましさなど、そのスケールに圧倒されつつ、僕ら以降の世代が持つテレビゲームなどで得られる共通認識が、完全に匿名性が保たれているこのキャラクターの存在に違和感を感じないのが、なんだか面白く感じられます。

散らばる紙に紛れ・・・られないのですが、棺桶状のアクリルケースが世界観に深みをもたらしているようにも思えます。

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京都での個展も素晴らしかった宮本佳美さんの作品も。

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個展では植物を描いた作品でしたが、今回はポートレイトと情景がモチーフに。

美しく緻密な陰影で描き上げられるさまざまな場面、ていねいに導かれる透明感が幻想性を高めると同時に、流れる時間の静けさも思い浮かんできます。

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水田寛さんの作品を観られたのも嬉しかったです。

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大作から小品まで、さまざまなサイズで展開される独特なリズム。

色使いの絶妙さの冴えは加速し、深められ、描かれるさまざまな場面に潜むいろんなテンションが、作品を眺めていると時にじわりと、時に唐突に現れてきて、その解釈の変化のダイナミズムが楽しいんです。

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上のグリーンの作品、あとの空間に展示されていた濃紺の作品と、全体を覆う色の強さがもたらすインパクトと、そこに注入される情景のダイナミズム、異なるスピード感が一つの画面に収められているのはホントに興味深いです。

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Hyon Gyonさんの作品、先に京都市立芸術大学で開催されたグループショーに出展された壁面インスタレーションが再登場、これがまた嬉しい!

まず、ガラス張りのところに並ぶさまざまな紐や靴など。こういったものをこういうふうに配置するだけでHyon Gyonさんの世界が構築されてしまうのも興味深いです。

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壁面の展開の迫力はとにかく壮絶です。

パネルの大作を中心に据え、額に収められたちいさな作品がその左右に配され、ダイナミズムも創出されています。

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ペインティングの色使いのアグレッシブさ、色彩のひとつひとつのシャープさ、それらが絡まって生み出される混沌。描かれる世界観とこれ以上ないくらいにさまざまな要素が響き合い、加えてユーモアが全開に繰り出されて、一見暗そうで実は相当にポジティブな雰囲気が溢れているように感じられます。

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さらに、その両脇にあたかも増殖するようにして展示される数多くの小品も、凄まじい妖し気な雰囲気を発しています。

重ねられた化学繊維を焼く、といういかにも危うい手法で描き出される肖像画。ペインティングでは、人物は登場するものの、顔は描かれたことがないようで、表情が描かれた展開はこれらが初めて、というのも興味深く感じられます。

おそらくコントロールが難しい手法で紡がれる人物の表情はそうとうに崩れた感触が醸し出され、顔のパーツが描かれているにもかかわらず匿名性も漂います。さらに色のヴィヴィッドさと焦げ痕の生々しさとのギャップも深いインパクトをもたらしているように思えます。

こちらの展開も楽しみです。

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それぞれの展開にも期待が膨らむグループショーでした、空感のポテンシャルとアーティストのクリエイティビティとが力強く重なって、強いイ刺激が得られた次第です。

Galerie Sho Presents 8 Emerging Artists 古川卓,星岳大,上條絵奈,Iain Lonsdale,望月梨絵,Michelle Park,吉岡雅哉,ZED

Galerie Sho Contemporary Art

東京都中央区日本橋3-2-9 三晶ビル B1F

2/13(金)~3/14(土)日祝・2/20休

11:00~19:00(土:~17:00)

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Galerie Sho Presents 8 Emerging Artists

Galerie Sho Contemporary Art

3-2-9-B1F,Nihonbashi,Chuo-ku,Tokyo

2/13(Fri)-3/14(Sat) closed on Sunday and national holiday

11:00-19:00(Sat:-17:00)

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国内外の8名の若手アーティストをフィーチャーした展覧会、興味深いクリエイションが並んでいました!

まず、階段を下りた正面に現れたZEDさんのペインティング。

誰が誰だか知っていれば分かるくらいの見事な描写、それがこの絵の具の立体感で表現されていて、作品自体はシンプルな肖像画ながら、ぐんぐんと引き込まれていきます。

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凄まじい臨場感が強く訴えかけてきます。

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盛り上げられた絵の具の立体的なテクスチャーがもたらす陰影が、力強さを加速させます。

具象性の説得力と、部分にフォーカスを当てたときに伝わってくるミニマムな抽象性。さまざまな面白さが凝縮されています。

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吉岡雅哉さんの作品、TWS本郷での個展も印象に残っていますが、今回もコンビニの明るい日常の景色とそこで繰り広げられるシュール極まりない場面とのギャップが放つ強烈な危うさ、そのコントラストの面白さは相変わらずのキレを放っています。

都庁での展示も控えているのですが、いったい何を繰り出してくるか興味津々です。

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上條絵奈さんのペインティングは陰影の深みに惹かれます。

実にユニークかつシンプルな構図、しかし大胆に繰り広げられる光の表情の表現が、不思議な深みをもたらしているように感じられます。

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星岳大さんの木版画作品。Oギャラリーでのグループ展でも拝見していて印象に残っているのですが、今回も木版画らしいあたたかみと木版画とは思えないシャープさとが放たれる闇の風景と光の表現が、独特の味フューチャリスティックな味わい奏でているように思えます。

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陰影の大胆な表現に目を見張らされます。

それぞれの場面の「分かる」感じの静かな痛快さ。そしてそこに収められるゆったりとした気配。やさしく心に響き渡ります。

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望月梨絵さんの作品も大変興味深いです。

ひとつの画面にさまざまなモチーフが、さまざまなテンションで組み込まれ、軽やかな雑多感、ユニークな混沌が生み出されているように思えます。

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縮尺のイメージのブレの面白さも印象的です。

異なる質感が大胆に重ねられ、ぐんと小さく引き込まれるようなところあり、ぶわっと広がるような感触もあり、といった具合に楽しいスケール感にもおおいに惹かれます。

そして、全体のレイドバックしたような色調がその混沌をひとつに纏めているような印象も覚える次第です。

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古川卓さんの作品は、配色の面白さやモチーフの際どい曖昧さなどの面白さに加え、スクラッチが奏でるスピード感も印象的です。

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ずらりと並ぶ作品群、ほぼ同じ構図が並び、リズム感ある壁面インスタレーションを繰り出しながら、それぞれの奥行き感も面白い雰囲気をもたらしているように思えます。

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Michelle Parkさんの版画作品はとにかく素朴なかわいらしさが魅力的です。

映像作品のために制作された版画作品、朴訥として、無垢な雰囲気が滲みます。

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いちばん奥の通路の空間に展示されたIain Lonsdaleさんの作品も面白い!

グラフィティ的なアプローチの痛快さに加え、画面に精巧に施される立体的なアプローチの面白さと、ふたつの重なる世界がポジティブな雰囲気を放ち、実に痛快です。

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今回初めて拝見するアーティストの作品が多く、それぞれの面白さも印象に残ります。

あらためてそれぞれのソロでの展開も楽しみです。

大和由佳展「存在の満ち欠け」

neutron tokyo

東京都港区南青山2-17-14

2/7(土)~3/1(日)月休

11:00~19:00

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Yuka Yamato exhibition

neutron tokyo

2-17-14,Minami-aoyama,Minato-ku,Tokyo

2/7(Sat)-3/1(Sun) closed on Monday

11:00-19:00

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空間にもたらされる、ある雰囲気。

neutron tokyoでの大和由佳さんの個展に行ってきました。

大和さんの作品、インスタレーションが奏でる独特の雰囲気。素材の質感や造形が醸し出すプリミティブなイメージなど、さまざまな要素が絡み合い、重なり合って独特な気配を生み出す、そういった感触がこれまで拝見した作品や展示を思い返すと脳裏に蘇ってくるのですが、neutron tokyoの企画展第2弾として開催された今回の個展でも、その特徴的な空間を活かし、さまざまな情景にいろんな想いや考えが重ねられた空間が展開されていました。

1階、扉を開いてすぐの空間。

天井から吊り下げられる、金魚を思い起こさせる造形。

黒い色合いが何かを燃やしたかのような風合いを醸し出し、触ると朽ちるような繊細な雰囲気で満たされながら、その実、これらはブロンズ製で。狭い場所を通過するたびに空気の揺れや身体の一部が触れたりすることでちりちりと繊細な音が響き渡り、印象として暗い空間に、神々しい爽やかさがすうっと広がります。

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その奥の一角には、ひとつの台が。そしてその上には、今度は紙を焦がしてカットされたような、近業のシルエットの山。同じかたちの違う素材でのリフレインが、このふたつの空間を脳内で繋げ、イメージの広がりをもたらしてくれます。言葉で説明ができない説得力が伝わってきます。

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さらに続く空間では、床に水が溜められ、そのほぼ真ん中に1匹の金魚が。

手前のたくさんの金魚の群れと、こちらの1匹の存在、それらがまた関連し合います。

際どく水面から浮く位置に吊られる金魚の儚げで強い存在が、手前の空間のひとつひとつの存在に奥行きを与えるような気がします。

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階段から以降は随所にオブジェ作品が姿を現していました。

これまでは発表された作風の展開に加え、階下の金魚の台上のインスタレーションも。

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金魚のシルエットは平面の作品でも展開されています。

加えて、その他のモチーフもユニークな行程を経て画面にそのシルエットを落とし込まれ、知性に訴えるような奥深さを感じさせる平面世界がそれぞれで奏でられていたのも印象に残っています。

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3階のインスタレーションは、これからの大和さんの展開のイントロダクションのような感触が興味深いです。

さまざまな砂を瓶のなかに詰め、地層の断面を表出させたような造形。用いられる素材の無骨と繊細を併せ持つ感触が、そこに分厚い時間や時空も収められているような想像も浮かんできます。

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おおらかな世界観、提示される壮大なイメージと、知性を刺激するアプローチのユニークさ。

決して器用ではなく、徹底して愚直な印象もこれまでと変わらないながら、独創的な展開はさらに深まり、そして広がっているように感じられた次第です。

空間全体にもたらされるアクション、ひとつの作品が醸し出す雰囲気。随所に身体性も凝縮された感じも印象に残ります。

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大庭大介「The Light Field ー光の場ー」

magical, ARTROOM

東京都渋谷区恵比寿1-18-4 NADiff A/P/A/R/T 3F

3/6(金)~4/5(日)12:00~20:00

SCAI THE BATHHOUSE

東京都台東区谷中6-1-23 柏湯跡

3/6(金)~4/4(土)日月祝休

12:00~19:00

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Daisuke Ohba "The Light Field"

magical,ARTROOM

1-18-4-3F,Ebisu,Shibuya-ku,Tokyo

3/6(Fri)-4/5(Sun)

12:00-20:00

SCAI THE BATHHOUSE

6-1-23,Yanaka,Taito-ku,Tokyo

3/6(Fri)-4/4(Sat) closed on Sunday,Monday and national holiday

12:00-19:00

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「画家」としての矜持。

magical,ARTROOMSCAI THE BATHHOUSEとで同時開催の、大庭大介さんの個展です。

大庭さんの作品を拝見したのは六本木にあったころのHIROMI YOSHIIのグループ展が初めてで、以来、その後々スペースに入ったmagical,ARTROOMでの個展や東京藝術大学の修了制作、MA2Galleryでのグループショー、近いところでは昨年のECHOなど、折に触れて接する機会を得ています。そして、そのたびにだんだんと大庭さんというひとりのアーティストの存在の力強さ、大きさをさらに力強く、大きく感じ、今に至る次第で。

大きな流れを自ら生み出しながらダイナミックに進んでいくようなスタンスを感じるのですが、確実にその経歴の大きなエポックとして刻まれる今回の個展、それぞれのスペースで静かに、そしてストイックに、美しく力強い空間を作り上げています。

magical,ARTROOM、エレベーターを降りて入って右手に並ぶ小品4点。

空間に入り込む自然光の影響がほとんどないこの一角で、蛍光灯の照明に照らされ、淡々と輝く渦。

ひとつの画面の中の4×4の渦、それを整然と2×2の配置で構成、画面に配される渦の微妙な色彩の違い、そして同じ構図で異なる配色の妙が、観る角度により豊かに表情を変化させます。

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3/29の日曜日の日がまだ高い時間に伺ったこともあり、奥のガラス張りの面から自然光が入ってきていて、その光のほうへと向かっていくような空間構成が、この大庭さんのストイックな世界観へとゆったりと誘ってくれます。

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メインのスペースには、5点の大作がずらりと並びます。

すべて下地を塗布する行程の様子が生々しく伝わる画面傍、分厚い画面。まったく同じ構図で構成される5つのペインティングは、微妙に渦ごとの色の配置に変化を取り入れ、また渦の凹凸が紡ぎ出す微妙な陰影が、画面に壮大なリズムをもたらしているように感じられます。

画面に対して斜めに降り注ぐ自然光が画面全面を照らし、微妙な色のコントラストを立ち上げ、フューチャリスティックな感覚を押し上げているようにも思えます。

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ある角度からだと、使用される色彩の差異が隠され、空間に落とし込まれる硬質なリズムが立ち上がってきます。

ゆっくりと、並ぶ作品の前を移動しながら、画面の色の輝きの変化を実感します。

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ひとつの空間に展示された作品すべて、たったひとつの行為の繰り返しのみが記され、その行為の集積によって作品が築かれているという事実に圧倒されます。

ちょうど大庭さんのトークも聞くことができ、これらの渦の作品は、目測で中心を決めて面相筆でなるべく美しく渦を描くように心がける、というシンプルなルールのみを設けて制作されたのだそう。

おそらく渦が並ぶ空間を見せるだけであれば、当然プリントなどを用いてもっとイージーに創り出すことは可能なのですが、これらが絵画であり、アナログな行為の集積であり、そこにはそれだけの時間の経過、積み重ねが存在するということに思い至るとき、空間が持つ重厚感、そして神々しさに圧倒されます。

ただ渦を描く。その渦も、何かのアイコンを示すものではなく、観たままの渦であって、それが示すのは渦を描くという行為のみ、という姿勢のストイックさにも感じ入ります。これだけの空間を、ただ「描く」という行為だけで創り出すためにどれだけの時間が費やされ、どれだけのコンセントレーションが保持されたのだろう、と。

大庭さんの代名詞でもある光る絵の具が用いられ、渦ごとに微妙に色が使い分けられている点において、エンターテイメント性も織り交ぜられているのですが、それ以上に描くことの力を見せつけられたような気がします。

続いてSCAI THE BATHHOUSEの空間。まず、おおらかなストロークによって描かれる山並みを思わせる作品が出迎えてくれます。

緻密なストロークの集積で描かれる作品を多く拝見していることもあり、この展開は新鮮です。壮大なスケール感が創出されているように思えます。

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この手前の空間の向かいの一角に展示された作品も魅力的です。

咲く桜の美しさ、日本の絵画の主題としてもっともスタンダードなモチーフを取り上げながら、用いる絵の具のユニークさが斬新なテイストをもたらしているように思えます。深々とした雰囲気も持ちながら、外へと向かって弾けるように放たれる世界観も心にヴィヴィッドに、そして静かに響きます。

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両脇からのパーテーションで区切られた奥の空間。

ここに創り出された光景の圧倒的な雰囲気。素晴らしいです。

最初に伺ったとき、涙がこぼれそうになったほどの神々しさ、美しさ。

ていねいに描き上げられる樹海の光景、自然の光景を具象的に再現しているにもかかわらず、絵の具の光沢がフィクショナルな雰囲気ももたらして、さらにこのサイズで創出されていることで、一気にこの世界へと心が導かれていきます。

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最初に伺ったのは夜、そして斜視を撮らせていただいたのは昼の時間帯に伺ったとき。

ふたつの異なる時間でまったく違う表情を見せるこの空間、そのポテンシャルにも感じ入ります。

天上の窓から注ぐ自然光に照らし出され、さまざまな色彩の光沢が表出し、美しいコントラストがここぞとばかりに姿を現します。

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夜に伺ったときは、パーテーションのなかに設置された白熱灯が画面の照明から作品を照らし出します。

変化しない光が、自然光が入る時間帯の動的なイメージを隠し、今度は淡々とたゆたう時間の経過を思い起こさせ、より重厚な神々しさを立ちのぼらせるんです。

ふたつの展示をそれぞれ異なる時間帯で拝見し、「絵画」の力強さを実感した次第です。

大庭さんが描く絵画は美しいです。美しいものを観たいと思う心を満たしてくれるという意味において、シンプルな美しさをもっていると思います。

しかし、それだけではない、「描く」というプリミティブな行為の崇高さや、それによって作られたものがそれに接する人にもたらす心の動きや広がりへの可能性も提示してくれているような気がします。

また、輝く絵の具を自然光が入る空間で提示することで、絵を観るという行為に時間が伴っていること、そしてそのすべての瞬間が一期一会であることにあらためて気付かせてくれるような印象も覚えます。

そのことを、角度や時間帯によって表情を変える絵画で分かりやすく提示している一方で、ストイックな姿勢と行為を圧倒的な分量で積み上げ、それをストレートに提示することで、厚みと奥行きも創出しているように感じられます。

さまざまな要素が絶妙なバランスで織り込まれ、そしてこれだけのボリュームで展開しておきながらなおそれ以上の可能性を感じさせてくれる展覧会だと思うのです。

この二つの空間で体験し、得ることができたイメージを時折思い返し、膨らませ、これから大庭さんが創り出す世界へも真摯なスタンスで対峙したいと心に誓った次第です。

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樫木知子

OTA FINE ARTS

東京都中央区勝どき2-8-19-4B

3/13(金)~4/17(金)日月祝休

11:00~19:00

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Tomko Kashiki

OTA FINE ARTS

2-8-19-4B,Kachidoki,Chuo-ku,Tokyo

3/13(Fri)-4/17(Fri) closed on Sunday,Monday and national holiday

11:00-19:00

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独特の世界観がさらに深化する...

OTA FINE ARTSでの樫木知子さんの個展です。

まず、それにしても凄い制作ペースだなぁ、と驚かされます。

昨年開催されたCASOとMEMでの5人展、オオタファインアーツでの3人展、ふたたびMEMでの個展、そして今年の卒業修了制作展にあわせて開催された京都市立芸術大学でのグループショー、さらにはVOCA展と、この1年間だけでもこれだけエポックな展覧会をこなされていることに感嘆させられます。

そして、ただこなしている感じはいっさいなく、拝見するたびにその風合いに深みが増しているように思えるのが嬉しいんです。

今回の個展では、これまでのどこか描きかけな感触が一貫していた樫木さんの作風におおきな変化が感じられます。

画面全体にしっかりと背景も描かれ、より強くその状況を思い起こさせる作品が多く出展されているのがまず興味深いです。

その臨場感が、樫木さんが描く人物の独特な気配感をさらに妖しく立ちのぼらせているようにも感じられます。

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京都市立芸術大学のグループショーに出展されていた作品があらためて出品されているのも嬉しいです。

全体に漂う儚げな風合いに、頭にかぶさる風鈴のようなモチーフの赤の鮮やかさが際立ちます。そして奇妙極まりないこの状況にもするりと引き込まれていきます。

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淡い色彩が醸し出す儚げな気配。

そこに無数の、そしてバラエティにも富むストロークが重ねられ、まるで薄い皮膜のなかに存在するかのような、妖しい緊張感が生み出されているような気がします。

どこか水面を思い起こさせる淡い青。気配に存在を浮かび上がらせる欄干が現実世界との不思議な距離感をもたらしているように思えます。

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こちらの作品も、画面全体にしっかりと描き手の意図が籠る筆致が繰り出された作品。

支持体として用いられている木板の質感も活かされながら、さまざまな木目が走る床が描かれ、不思議な空間性を奏でています。

くっきりと施される線がマンガ的な雰囲気を感じさせてくれるのも面白いです。キャッチーな風合いが強められることでこの情景へのイメージもより立体的で具体的になるような感じで、妖しさともにユーモアの雰囲気も伝わってくるような気がします。

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もちろん、これまでの樫木さんらしい空間性の作品も。

この余白の大胆過ぎる「間」がもたらす不安定感、するりと線描だけが気まぐれに描かれていて、しかし相当に危うげな緊張感も醸し出しているように感じられるんです。

全体を覆うレトロな色調、低く屈んで何やら床に何かを描いている短髪の女性の独特の妖婉さ。さまざまな要素が絡み合って混ざり合って、これだけ何もない情景に薄くて分厚くて、淡くて濃密な気配が繰り広げられているようで、その独創的で妙にリアルな幻想の気配に包み込まれるような感じがします。

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正面の壁面左に展示された作品は、さらに強烈に濃密な妖しさを醸し出しているように感じられます。

余白の気配感、何もないところに何らかの存在を感じさせ、それでも際どいまっさらな感触が、今回の個展に出展された作品の中でも特に密度の濃い強いモチーフの存在感を際立たせ、立ち上げています。

指を絡ませる二人、その絡む指を描く線のうねりに大いに唸らされます。見どころの多い展覧会ですが、敢えてぶち上げさせていただくと、この指の凄まじく過剰に艶かしい絡みを観るだけでもここへと足を運ぶ甲斐があると思えるほど、それほどまでに濃い世界が子の僅かな部分に凝縮されているように感じられるんです。

無論、頭髪を描く緻密なストローク、チェックのシャツのリアルな歪み、うっすらと背景に消え入るような肢体など、さまざまな表情が一つの画面のなかに収められて、無数のクライマックスが描き現されています。

淡白と濃密のコントラストの妙。あらためて、凄い世界だと思います。

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カウンター奥の応接室に展示された小品も必見です。

ちいさな画面に描かれる妖しい表情、仕草、佇まい。緩やかな照明のもとで、叉独特の雰囲気を醸し出しています。

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加速する独創的なエキゾチシズムに大いに魅了された次第です。

どこかレイドバックしたような色調、何度も触れましたがほぼ何も描かれない余白が醸し出す仄かな気配の、それなのに強烈な感じ。そしてその殺伐の一歩手前の状況にもたらされる濃密。

描く痕跡、そして表面を削ることでもたらされる擦り痕のサディスティックな感触。

さまざまな要素が混ざり合い、妖しい混沌が生み出され、淡い気配を背負いながらじわじわと迫り、こちらの好奇心を覆い、つつみ込んできます。

これからどんな世界を描いていくのだろう、どんな物語を紡いでいくのだろう、と、興味もこれまで以上に湧いてきます。実に楽しみなクリエイションです。

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小西真奈 Portrates

ARATANIURANO

東京都中央区新富2-2-5 新富二丁目ビル3A

2/28(土)~4/4(土)日月祝休

11:00~19:00

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Mana Konishi "Portrates"

ARATANIURANO

2-2-5-3A,Shintomi,Chuo-ku,Tokyo

2/28(Sat)-4/4(Sat) closed on Sunday,Monday, and national holiday

11:00-19:00

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小西真奈さんが人物を描く・・・。

僕が拝見してきた限り、これまでも人が登場する作品はあってもそこには匿名性がしっかりと保たれ、それが情景の臨場感をもり立てていたように感じられたのですが、その小西さんの今回の個展のテーマが肖像画となると、いったいどうなるのだろう、どんな雰囲気が醸し出されるのだろう、とおおいに興味が湧いてきた次第で。

いや、ART@AGNESのARATANIURANOのゲストルームのデスクの引き出しの引き出しのなかに入っているのを見せていただいたと思います、ああ、小西さんが人物を描くとこういう雰囲気なんだ、と感じ入ったことを思い出します。

ARATANIURANOでの小西真奈さんの個展です。

冒頭でくどくどと書いた通り、今回の小西さんの個展では、空間に踏み込むとたくさんの視線が画面から放たれ、それはこちらを見ているものもあり、どこかあらぬ方向へと向けられているものあり、とさまざまで。

いつもと違う風合いがまず新鮮です。そしてそこに、またいつもと違う深みを感じます。

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これまで主に風景を描かれてこられた小西さんが描くからこそ、「人物」というモチーフの強さをより感じるような気がします。

作品ごとに「引力」があるように思えるんです。絵の中の視線に自然と目が向かいます。

そして、無意識に絵のなかの人物の心を探っていっているんです。

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肖像画、人物画の面白さ、強さを感じつつ、小西さんらしい筆さばき、そこにある気配を掴み、ひとつひとつのストロークに込めて画面に色をもたらしていく感触もいつも以上に伝わってくるような印象も興味深いです。

人物の描写のていねいさが、背景の気配、そこに漂う空気の、気の流れを表現する色彩の重なりの、絵画としての抽象性も際立って感じられて、その面白さにも感じ入るのです。その抽象性が、肖像画としての引力をより強いものへと押し上げているようにも思えてきます。

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入り口右手の壁面に展開される小品群も楽しい雰囲気を立ちのぼらせています。

小西さん自身の肖像画もあり、かわいい女の子のかわいい笑顔あり、ふっと浮かべるアンニュイな表情もそこかしこに織り込まれ、いろんな時間や物語が思い浮かんできます。

明るい色、ピンクやみどり、黄色の鮮やかさ、実に気持ちがいい発色も、それぞれの情景の「よい」雰囲気を思い起こさせてくれるような気がします。

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これまで保たれてきた匿名性が、今回の個展ではまったく逆の方向に振れているように感じられます。

すべての作品に、数点は小西さんの自画像なので分かるものの、少なくとも僕は直接は存じ上げない方々が描かれていて、誰だか分からないにもかかわらず、描き手である小西さんの「こころ」「想い」が、繊細さや溢れる慈しみが、しっかりと画面に注ぎ込まれているように思えて、そのあたたかい関係性がこちらの心にもゆったりとやさしく響いてきます。

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あったかくて、やさしい後味も心地よく、それでいてやはり、小西さんの作品らしい独特の緊張感も伝わってくる展覧会です。

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麻生知子「家に帰る」

Gallery Jin

東京都台東区谷中2-5-22 山岡ビル1F

3/13(金)~4/4(土)月火休

12:00~19:00(最終日:~17:00)

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Tomoko Aso "at home"

Gallery Jin Projects/JinJin

2-5-22-1F,Yanaka,Taito-ku,Tokyo

3/13(Fri)-4/4(Sat) closed on Monday and Tuesday

12:00-19:00(last day:-17:00)

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すわ!

あの麻生さんが抽象画か!

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・・・なんてわけないんですけど(汗)

もとい!

今年のVOCA展にも参加の麻生知子さんのGallery Jinでの個展です。

上の作品もあるべきところにある、しかるべきところに展示されているのですが、それはもうギャラリーに入っていきなりあの麻生ワールドが展開しています。

カウンターの後ろの壁面に展示された作品、すでに

そりゃそうだろう!Σ( ̄口 ̄;)

と全力で脱力。

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なんていうか、ある意味「無駄に律儀」というか、一瞬「あれ?」と思わせる構図ながら、よくよく考えると前出のツッコミがスポーンと心に浮かんできます。

よくもまあ、こういう日常を引っ張ってくるものだな!と。

これなんてもう、

蚊帳だな!Σ( ̄口 ̄;)

凄まじい勢いで蚊帳だな!Σ( ̄口 ̄;)

って感じで。

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さらに繰り出されるヒネリもまた堪らなかったり。

わざわざ畳を分割したキャンバスで1畳1畳再現、敢えて言おう、この「無駄」っつー感じってゆーか、

そこまでやんなくても伝わるから!Σ( ̄口 ̄;)

ってゆー感じが堪らんのです。

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これなんてもう、言葉もないわ!Σ( ̄口 ̄;)

一瞬何か分からない感じ、分かった瞬間の凄まじい脱力といったらもう...あまりにも感動的で変な涙が出てきそうです(笑)。

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さらに、日常の場面、人の動きも画面に納めた作品も。

こういった構図が空間に織り込まれることで不思議なり情感ももたらされているように感じられます。

・・・いちおう言っとこうか。

取っ手が!取っ手がぁぁ!Σ( ̄口 ̄;)

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食べ物を描いた作品も楽しいのです。

麻生さんが描くペインティングって適度もとい適当(笑)なリアリズムの追求が痛快極まりない、その塩梅は名人芸の境地に達していると言っても過言ではないと思うのですが、ところどころ、絵の具の盛り上げで臨場感醸し出しちゃったり固い構図にマスキングを駆使してシャープにそのかたちを描き出したりしていることもあって、その質感のギャップがまた以下略な感じでありまして。

エビフライの衣とか、豆腐の角とか。はい。

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もうひとつ、麻生さんの特徴的なところといえば、やはり鈍い感じの色調で、この渋い色彩の重なりが独特の空気感を醸し出しているように感じられます。

レイドバックしたような雰囲気がもり立てられて、現代の日々の日常はもちろん、日本人が持つある種の共通認識のようなもの、敢えて言うとサザエさん的な理想の日常感が演出されているようにも思えてくるんです。

さまざまな面白味がじわじわと伝わってきます。

今回の空間インスタレーションも面白すぎなのです。

ひとつだけ本物が忍び込ませたるあたりがもう(以下略)

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で、今のところ日本的なモチーフが描かれ、繰り広げられていますが、麻生さんのフィルターを通すと異文化はどういうふうに表現されるのかも興味があります。

加藤豊 個展 "NIGHT SHIFT"

waitingroom

東京都世田谷区三軒茶屋1-5-9 メゾン湘樺101

2/21(土)~4/4(土)金土のみ

13:00~19:00

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Yutaka Kato solo exhibition "NIGHT SHIFT"

waitingroom

1-5-9-101,Sangenjaya,Setagaya-ku,Tokyo

2/21(Sat)-4/4(Sat) Friday and Saturday only

13:00-19:00

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シャープな滲みで綴られる陰影の妙。

waitingroomでの加藤豊さんの個展です。

三軒茶屋のマンションの一室にあらわれるアートスペース、waitingroom。玄関でまず、ちいさな作品が出迎えてくれます。

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ちいさな空間ということもあり、コンパクトな作品がスペースのところどころにコレクションと合わせて展示されています。

抑えたトーンでていねいに紡がれる気配の感触。ちいさな画面ながら、そのリアリティはしっかりと伝わってきます。明るさと影との境目の巧みな表現が心地よく響いているように感じられます。

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メインのスペース、といってもコンパクトなのですが、そこに展示された3点の作品。

大きさが異なるスクエアの画面が並んでいて、このリズム感がまず楽しいです。

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そして、大きい画面ほど部分にフォーカスし、もっともちいさな画面がいちばん「引き」の情景を描いている、という遊び心もまた楽しいんです。

都市の夜景を、そこにあるもの、建造物を対象としつつ、むしろそこに広がる光を捉えることで、画面の中の風景に時間のイメージに奥行きをもたらしているようにも思えます。

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一角に展示された水彩のドローイングの小品も見応えがあります。

モノクロームのものあり、さまざまな色彩が用いられたものあり、そして取り上げられる風景にもバリエーションに富んでいて、眺めていて次々と発見が。

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ドローイングの軽やかさが、パネル作品とはまた異なる深みを感じさせてくれます。

サイズのコンパクトさも含め、1点1点に注ぎ込まれる精度とそれが奏でる説得力に、軽やかで深い心地よさを覚えます。

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描かれる情景の気配の感触がとにかく気持ちがいいんです。

眺めていて、何かを探るような前がかりの姿勢が必要なくて、そこに描かれる情景が醸し出す感じにただ委ねているだけでいい、シンプルな味わいが心地よさをゆったりと盛り上げてくれるような感じです。

また、こういう空間で拝見できたこともその嬉しさを押し上げてくれたような気がします。

加藤さんの今後の展開も、waiting roomがこれから紹介するクリエイションも、ともに楽しみです。

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《3/24》

VOCA展2009

上野の森美術館

東京都台東区上野公園1-2

3/15(日)~3/30(月)

10:00~17:00

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アムステルダムから帰国、成田へ着いて京成ライナーで終点まで乗ったら上野、乗り物に乗る時間が長く続いて外の空気も吸いたくて上野公園へ足を向けたらそういえばVOCA展やってるじゃありませんか、というわけで、行ってきました。

今年は「嬉しい」VOCA展。そんな感じです。

既知のアーティストが多く、それぞれの力作の向こうにアーティストの気持ちや心意気が伝わってくるかのようで。

グランプリ受賞の三瀬夏之介さんの作品はホントに素晴らしかったです、壮大なスケール感といい、描き込みと構図の緻密さといい、見応えも見どころも目一杯挿入されているような印象です。

宇田川愛 "developing Utopia"

KIDO PRESS

東京都江東区清澄1-3-2-6F

3/7(土)~3/28(土)日月祝休

12:00~19:00

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Ai Udagawa "developing Utopia"

KIDO PRESS

1-3-2-6F,Kiyosumi,Koto-ku,Tokyo

3/7(Sat)-3/28(Sat) closed on Sunday,Monday and national holiday

12:00-19:00

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再訪。

宇田川愛さんの作品を初めてちゃんと拝見したのは今年のART@AGNESで、そのときのたのあの上に置かれる布の作品のどこか儚げな雰囲気を奏でる繊細さが印象に残っているのですが、今回の個展では大作にまず目を奪われた次第。

透過性のある薄いメッシュ地にうっすらと漂うように広がる青は、豊かな空間性と神々しさを感じさせてくれます。それを背景に描かれる鳥かごと木の黒いシルエット、そして下方に広がる草むらの白いシルエットとがこの景色のイメージに不思議な臨場感をもたらしているように思えます。

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インスタレーションの構成で、鳥かごのオブジェも合わせて。

籠のなかに、ふわふわとやさしい光が灯るように、飛ぶ鳥と天使、そしてキノコが。メッシュのペインティングと響き合って、幻想的な雰囲気を導き出しているように思えます。

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アクリルケースの額に収められた作品も。先の大作を目にしてこの作品に触れると、そのなかに封じ込められる世界感への想像も豊かに膨らみます。

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奥のスペースに展示されていた作品は、ファンタジックな物語性が押し出されるかのような彩りとモチーフの多彩さが楽しいです。

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《3/25》

吉田暁子 個展「視/夜 (しや) _意義黎明」

東京画廊+BTAP

東京都中央区銀座8-10-5-7F

3/25(水)~4/18(土)日月祝休

11:00~19:00(土:~17:00)

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前回の個展も印象的でしたが、今回はこれまでのイメージの積み上げを深く裏切るような壮大さと深みが創出されているような感じです。

大作を中心に巧みに要素を重ね、組み合わせながら、独創的なエキゾチシズムが紡がれています。

寺島みどり 見えていた風景「空」

neutron tokyo 1F main gallery

東京都港区南青山2-17-14

3/25(水)~4/12(日)月休

11:00~19:00

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昨年の大阪での個展が印象に残っている寺島みどりさん。東京、大阪、京都と3カ所で開催される今回の個展、以前の上下を分つ色彩の展開から一転し、風景を思わせるような異なるダイナミックな展開が繰り出されています。

まず、最初のスペースの大作に圧倒されます。

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比較的小さな作品も、その色と筆の運びのエネルギーが凝縮されたような抽象世界が治められているように感じられます。

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2階とあわせ、空間を豊かに活かしながら、さまざまな情景が現れては消える構成も心に染み入ります。

前回から今回と、寺島さんの描く世界の変化を体感し、今後どういう風になっていくかもいっそう楽しみに思えてきます。

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齋藤周展「春を兆す日」

neutron tokyo 3F mini gallery

東京都港区南青山2-17-14

3/25(水)~4/12(日)月休

11:00~19:00

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寺島さんの個展と同時開催の、齋藤周さんの個展です。

3階へと向かう階段から、暖かい色彩と不思議なかたちが独特な雰囲気へと誘ってくれます。

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抽象性の高い色彩のストロークの重なりと、そこに忍び込ませるようにして描かれる具象的な線描が、不思議な空間性を導き出しているように感じられます。

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その平面の作品に、キューブやプレートなどが組み合わせられ、空間にさまざまなかたちでアクセントが生み出されているのも楽しいです。

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奥の広い壁面での展開も楽しいです。

おおらかさと、伺った時間帯が遅かったこともあり、照明のあたたかな風合いとがよい塩梅で響き合っていて、どこか懐かしいような雰囲気も伝わってきたような気がします。

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《3/27》

TAMATAMA 久保田珠美 久保田玲奈 Long Long Wedding Road

H.P.FRANCE WINDOW GALLERY MARUNOUCHI

東京都千代田区丸の内2-4-1 丸の内ビルディング1F

3/27(金)~5/28(木)

11:00~21:00(日祝:~20:00)

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hpgrp gallery 東京での個展も素晴らしかった久保田珠美さんと、その妹で現在ニューヨークに在住のアーティスト、久保田玲奈さんによるインスタレーション。

おふたりに昨今起こった深い事象への想いを織り込みながら、神々しい世界が繊細に紡ぎ上げられています。

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天空を歩むようにして並ぶ花嫁姿の白い人形。手に持つ日常品がなんともユーモラスな雰囲気を奏でながら、現実世界との不思議な距離感を思い起こさせてくれます。

床に撒かれるように置かれる、白く染められた日常品は、生死観を醸し出しているような印象を覚えます。残された品々が醸し出す記憶の断片が、幻想的な風合いを奏でているようにも感じられます。

ほぼ全体を覆う玲奈さんのオブジェとインスタレーションに、珠美さんのペインティングがさらにその色彩の濃密さを加速させ、そのなかの世界へと繋がる「窓」のような感じで配置されているのも興味深いです。

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《3/28》

Recent Works vol.2 - 川口奈々子、三宅砂織、山元勝仁、他

Yuka Sasahara Gallery

東京都新宿区西五軒町3-7 ミナト第3ビル4F

3/28(土)~4/18(土)日月祝休

11:00~19:00

前回に引き続き開催の、同ギャラリーとゆかりあるアーティストの作品が揃う展覧会。

今回は川口奈々子さんのペインティングがずらりと並ぶさまが壮観です。うねるようなヴィヴィッドな色彩が放つアバンギャルドさ、呑み込まれるようなエネルギッシュな雰囲気に圧倒されます。

山元勝仁さんの半立体的な作品と、和田典子さんの木と糸のオブジェが壁から生えるように展示されている様子、色合いの面白さが空間に響きます。

そして、三宅砂織さんのモノクロームの世界が深いアクセントになっています。

麻生知子「家に帰る」

Gallery Jin

東京都台東区谷中2-5-22 山岡ビル1F

3/13(金)~4/4(土)月火休

12:00~19:00(最終日:~17:00)

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なんかね、もうね、たまんないわけですよ。

確かに家に帰ってるわな、という臨場感は相変わらず大胆で面白いです。

それにしても「そう描くか!」という痛快さ、どんよりとしていて何故かキレがいいのもなんだか不思議な味わいで。

そのあといろいろと回りながら、リニューアルされた東京都現代美術館へも。

コレクション展、よく知るアーティストの作品も多数展示されていて嬉しいことこの上ないのですが、なかでも内海聖史さんの「三千世界」が、同空間に展示されたサム・フランシスのペインティングにまさに襲いかからんばかりに壁面に展開されているのが圧巻!

田村香織&高津戸優子 GIrl Sense

gallery坂巻

東京都中央区京橋2-8-18 昭和ビルB2F

3/23(月)~4/4(土)日祝休

12:00~19:00(土:~17:00)

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昨年に引き続いて開催の、同じ組み合わせによる2人展。

まず、田村香織さんの作品、相変わらずの緻密な世界、繊細に画面に彫られる溝が凝縮され、幻想的な世界を生み出しています。

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透明感のある深い緑がお馴染みですが、今回はモノクローム主体の作品も。

画面下の赤が効いています。

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さらに、五線紙を支持体に採用した作品も面白いです。

もともとプリントされている音符の並びがポップな背景となって現れているのも楽しげです。

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高津戸優子さん、まず正面のドローイング群に意識が奪われます。

和み系の表情のキャラクターのモチーフ、その軽やかさがよい感じに壁面と空間に作用しているような印象です。

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キャンバスの作品もずらりと並びます。

さまざまな要素がユーモラスな雰囲気を醸し出していて。なんともほっこりとした気分が盛り上げられるような感じです。

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山科理絵展

GALLERY SHOREWOOD

東京都港区南青山3-9-5

3/23(月)~4/16(木)日祝休

11:00~18:00

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山科さんを個展で拝見するのは今回が初めて。

長きにわたって観続けてきた世界が空間ひとつをつつむ感触は、なんだか感慨深いです。

これまで小品を中心に発表されていたので、大作を拝見できるのも嬉しいです。

田代裕基 個展「MIND TRAVEL」

YUKARI ART CONTEMPORARY

東京都目黒区鷹番2-5-2 市川ヴィラ1階

3/14(土)~4/18(土)日月火休・水:事前予約制

11:00~19:00(最終日:~17:00)

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今回はこうきたか!

さまざまなかたちに彫り上げられる鳥たちのオブジェ。それぞれに音楽のジャンルが冠されていて、その面白さも。

あの独特の味わいを持つ仕上がり感はそのままに、ユニークさが加速しているような印象で、相変わらずの見応えです。

藤田淳/ジョン・トレンブリー

GALLERY SIDE2

東京都港区東麻布2-6-5

3/14(土)~4/11(土)日月祝休

11:00~19:00

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響き合うふたつのグラフィカルな世界。

マスキングなども駆使され、シャープな情景がヴィヴィッドに広がっています。

この日は六本木アートナイトということもあり、藤田さん自らのレコードコレクションも披露、なかなか聴けないフリージャズもたっぷり聴けて満足です。

《買った本》

「恋文の技術」森見登美彦

「ミッキーかしまし」西加奈子

「告白」湊かなえ

「ひとり日和」青山七恵

「モダンタイムス」伊坂幸太郎

「にわか大根 猿若町捕物帳」近藤史恵