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幕内政治が覗いたおすすめアートイベント情報

海老原靖 SLEEPERS

WADA FINE ARTS

東京都中央区築地3-2-5 第2平和田ビル

5/8(金)~5/29(金)日月祝休

11:00~19:00

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Yasushi Ebihara SLEEPERS

WADA FINE ARTS

3-2-5,Tsukiji,Chuo-ku,Tokyo

5/8(Fri)-5/29(Fri) closed on Sunday,Monday and national holiday

11:00-19:00

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「背景」が描かれることで、深まる危うさのリアリズム。

WADA FINE ARTSでの海老原靖 さんの個展、前回に引き続いての「LUST」シリーズの新作が発表されているのですが、今回のキャンバス作品にはすべて、背景が描き込まれていて、これまでの「LUST」の極度に過剰な無垢が放つものとはまた異なる臨場感で、独特の危うさが溢れているように感じられます。

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肌の色と背景とが同じく白で表現され、妖し気な奥行き感と微妙な筆致で表現される陰影、そして髪の毛の細密な描き込みがシャープに立ち上がる従来の「LUST」シリーズから一転、実に濃い色彩と情報密度が背景にもたらされ、描かれる人物の肌の白さ、神々しい気配がいっそう際立って感じられます。

さらに、シチュエーションがよりリアルに伝わってきて、それがさらにその場面の空気感をナイーブなものへと押し上げているようにも感じられます。

背景の描写の巧みさにも惹かれます。ベッドや枕の複雑でランダムなパッチワークの硬質なうねりや手前のベッド傍の板の木目、花と葉が這うような壁など、強い表現が横たわり甘い表情を浮かべる裸の男の子の儚げな存在感とのギャップを加速させているように思えます。

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鮮やかな芝の緑が鋭く目に届く作品。

この鮮烈さ、インパクトも強く印象に残ります。

そこに群れるようにして横たわる3人の(おそらく)男の子。同じように上半身裸で青紺のパンツを履き、パンツの皺の濃淡とほぼ凪ぎの質感で透明感溢れる白が広がる上半身の肌、そこに芝の深い緑が加わりこの3つの色彩の美しい「衝突」が、状況の妖し気な感触とは裏腹の爽快なアグレッシブさを奏でているように感じられます。

色彩が訴える力にあらためて感嘆させられる、そういう印象が伝わります。

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淡い色彩で一つの画面が貫かれる作品も。

細密な頭髪やふわりと鮮烈に染まる頬や耳などは「LUST」の世界感そのままに、奥の薄いグリーンのストライプとチェック模様のシャツとが仄かなテイストの色調で描かれ、印象として裸のように思えてくるのが不思議で、それが独特のスリルへと昇華されているように感じられるのが興味深かったりします。

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ドローイング作品も多数展示されています。

こちらはおよそ一つの画面にひとりが登場するシンプルな構成で、仕草の艶かしさと濃密とも淡白とも取れる気配の感触が、白いマット紙に白の額の中に収められることでさらに独特の豊かな繊細さや鋭さを伴って放たれているように思えます。

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背景がその場面の物語性を、状況の輪郭を強く表出させ、海老原さん自身が表現する世界のオリジナリティをさらに多角的に押し拡げたような感じがします。

立体的な広がりを見せるクリエイション、多様性がもたらされてもその強く懐の深い個性はいささかも薄まることはなく、むしろさらに特別で格別な濃密さを得ているような感じさえします。

このスリルがどういうふうに広がり、変化していくか、大変興味深いです。

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