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幕内政治が覗いたおすすめアートイベント情報

いしかわかずはる 個展「welcome home」

YUKARI ART CONTEMPORARY

東京都目黒区鷹番2-5-2 市川ヴィラ1階

5/2(土)~6/6(土)日月火、5/10~5/18休(水:事前予約制)

11:00~19:00(最終日:~17:00)

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Kazuharu Ishikawa "welcome home"

YUKARI ART CONTEMPORARY

2-5-2-1F,Takaban,Meguro-ku,Tokyo

5/2(Sat)-5/30(Sat) closed on Sunday,Monday,Tuesday and 5/10-5/18(Wednesday:appointment only)

11:00-19:00(last day:-17:00)

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ほんのちょっとのアイデアが、想いに広がりとあたたかみをもたらして。

YUKARI ART CONTEMPORARYでのいしかわかずはるさんの個展です。

前回の個展から1年とちょっと。

いつもの画面に毛糸を乗せただけのシンプルな線で豊かな表情を描き出すいしかわさん、今回の個展では、ひとつひとつの作品にほんのわずかに情報のバラエティが増やされて、その行き過ぎないバランス感が絶妙で、これまで紡がれ続けられてきたほんわかとした楽しげな雰囲気がいっそう和やかになったような印象を受けた次第です。

さまざまな試みが独特の糸の作品に注ぎ込まれていきます。

透明アクリル板に着くグリーンの糸、画面の底にはファーが敷かれていて、浮かぶような空間性が演出されています。

眺める角度によって変わるファーの陰影。それが描かれる人の顔に静かな表情をもたらし、その場面で流れる時間もイメージさせてくれるような感じがしてきます。

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最初の展示室でのもうひとつのユニークな支持体の作品。

銀色のラメが入った布の上に黒の糸で男性の横顔が。

こちらの作品、直に目にするとなんとも不思議な雰囲気が伝わってきます。この鯔背な横顔の味わい深いリアリティとは裏腹に、線がまるで画面からわずかに浮いて定着しているかのような感触が。

銀色の布を鏡面にかぶせているそうで、そのこと自体に気付くにはけっこう分かりづらいのですが、そのアイデアが充分に活かされて、今回の個展でも、またこれまで拝見した石川さんの作品の中でもある種異色な風合いを醸し出していて、一旦視線をこの作品に送るとなかなか外せない、懐の深い魅力を盛った世界が放たれているように感じられます。

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これまでの作品と同様にシンプルに、一色で塗られたキャンバスに糸を置く作品も。

しかし、これまでのいしかわさんんの作品を考えると「禁じ手」的に、ひとつの作品にいろんな色の糸が用いられていて、カラフルさを手にした自由さと、それでもなお雰囲気を伝える必要最小限の線のみを場面から引き上げて画面に落とし込んでいる感じは和やかな痛快さをもたらしてくれます。

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白い糸と黄色い糸とで描かれた作品。シンプルに線を場面から引き上げて画面に落とし込むスタイルが堪能できるのはもちろん、いしかわさんの真骨頂のひとつでもある大胆な空間性も実におおらかでユーモラスで、楽しく感じられます。

こちらの作品でもさまざまな試みが繰り出されています。パラレルでくっついておおらかなラインを形成する線、その平行する2本の糸の上にさらにわずかに濃い色の糸が乗せられ、線に表情を出すことが試されていたりと、さまざまなアイデアがシンプルな線にユニークな要素が持ち込まれているのがなんとも興味深いです。

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続く奥の展示室では、前回の個展でも発表された透明アクリル板を用いたスタイルの発展型とも呼べるような作品が。

複数のアクリル板が重なり、それぞれに毛糸の線が施されて三次元的な要素が直接的に織り込まれ、ユニークな立体感が生み出されています。

そして、手法の面白さ、新鮮さとともに、描かれている場面の和やかな雰囲気が実にふくよかに表現されていることがなんとも嬉しく感じられます。

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今回のメインとも呼ぶべき作品からは、やさしい気持ちが伝わってくるように感じられます。

赤い糸、その赤さをやさしく引き立てるバックの、ほんのりと染まるピンク色。

描き現されている線のシンプルさ、おおらかでユーモラスな空間性が奏でる和やかな空気感。その情景のほかの要素が思い浮かぶような楽しさ、繊細な色彩に包まれるような心地よさが、豊かな味わいをもたらしてくれるような感じで、思わず笑みがこぼれてしまいます。

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用いられる糸の色とバックの色彩との色調のバランスの巧みさと大胆さ、さまざまな場面から必要最小限なだけ引き上げられる線のユーモラスな風合い。

楽しくて和やかな要素がほどよく詰まっているように感じられます。

そして、前回まで感じられたストイックな感触が幾分か抑えられているような感触、さらに1点ずつ完結されるストーリー性も興味深いです。

そんな作品がそろって生み出される空間の雰囲気は、やはり、いかにもいしかわさんらしい、どこかのどかで緩やかで、空間性のおおらかさややさしい色彩がさまざまなユニークなイメージの創出を促してくれるように思えてきます。

素材の親しみやすさも、描かれる世界を身近に感じさせてくれます。懐かしいような風合いも嬉しいです。そこに自由なアイデアが絶妙に織り込まれて、いっそう楽しく伝わるような感じがまた、さらに嬉しさを膨らませてくれます。

ぜひ実際に観て、その和やかさを感じてほしいです。

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