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幕内政治が覗いたおすすめアートイベント情報

宮永愛子展「はるかの眠る舟」

MIZUMA ART GALLERY

東京都目黒区上目黒1-3-9 藤屋ビル2F

4/22(水)~5/23(土)日月休(4/29、5/4~5/6開廊)

11:00~19:00

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Aiko Miyanaga "Dwelling in a boat"

MIZUMA ART GALLERY

1-3-9-2F,Kami-meguro,Meguro-ku,Tokyo

4/22(Wed)-5/23(Sat) closed on Sunday and Monday

11:00-19:00

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封じ込められる時と、放たれる時と。

MIZUMA ART GALLERYでの宮永愛子さんの個展です。

資生堂ギャラリー、国立新美術館と大きなスペースでの展示が続き、3次元的にダイナミックなインスタレーションを展開してきた宮永さん、いったいどんな空間をつくり出しているだろうとさまざまな想像を巡らせて臨んだのですが、前者ふたつとはことなり実にシンプルに構成され、空間的な「間」が印象に残るインスタレーションが紡がれています。

入り口右手にある1枚の作品。

畳まれたテーブルナプキンを開いて、そこに鏡写しで左右に書かれることば。清楚な文字と鏡写しであることが、この空間で繊細な存在感を放ち、ちいさなアクセントとなって不思議なイメージをもたらしてくれます。

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眠るように置かれる1台の箱、長持が置かれただけの空間。

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箱と蓋との隙き間から闇へと滲む光が神々しい雰囲気を立ちのぼらせています。

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開けると、お馴染みのナフタレンのオブジェが積み木といっしょに収められています。

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底に広がる白い光が、半透明のナフタレンを直に照らし、その素材の繊細な質感を引き出します。

そして、緩やかな時間を経て昇華し続ける素材は、生々しく時間が流れ、過ぎ行く事実を実感させてくれます。

ナフタレンでできたブロック、積み木の家の中に並ぶ椅子、そしてうさぎのぬいぐるみ。それぞれのモチーフはおそらく実際にあるものを象って制作されていて、それぞれのものの持ち主、それに触れ、かかわった人々との関係性や気配、残り香のようなものが消えゆく様子を思い起こさせてくれるような感触も。

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奥のスペースではコンパクトな作品が。

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大きめの台の上に置かれるふたつの平たい透明の円柱のケース、そのなかに外向きに円形に並ぶちいさな椅子のオブジェ。ひとつは包みが解かれぬまま、中に並ぶ椅子も原形を留め続け、もうひとつはまるで並ぶ椅子の円の一部から朽ちていくかのように、だんだんとそのかたちが現象によって消し去られていっています。

椅子の脚の部分、床面と設置するところだけがかろうじて残る様子などはなんともいえない切ないイメージをもたらしてくれたり。

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コーナーに置かれたちいさな台の上には、樹脂でコーティングされた鍵が。

ほんのわずかに外気との接触があるようで(最初は絶たれているのですが、この作品のオーナーに外気との接触を「解く」タイミングが委ねられているのだそう)、このひと月ではどれだけかたちが消えてしまっているか分からないのですが、果たして1年、3年、10年と時間が経ったときにいったいどうなっているのだろう、と想像するとそのゆったりと横たわる時間の長さに気が遠くなるような感じもして、また、たったこれだけのサイズの作品にそれだけの壮大さを感じることへも感動させられます。

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会期中4回拝見し、これまでの同様のインスタレーションと比較すると昇華の速度がコントロールされていて原形を比較的しっかりとどめているものが多く、とはいえ、部分的に朽ちてしまっていてそれが儚さと冷静な狂気性を思い起こさせてくれたり、さらに昇華して箱やケースの内側に再結晶されたナフタレンの現象の臨場感へも引き込まれます。

宮永さんのさまざまな作品を拝見して、一貫して感じるのがそこに緩やかでもしっかりと過ぎる時間の存在とその事実の儚さで、さらに「もの」や「場所」と「人」、その「想い」を繋ぐものとして、それぞれが機能しているように思えます。

ナフタレンの作品ではそれがもっとも顕著に伝わってくるように感じられます。

また、ナフタレンという素材の美しさと、それが持つ現象の神々しさが、さらにさまざまなイメージの創出を促してくれているようにも感じられます。

独特なスタンスと繊細な感性で紡がれる、深遠なファンタジー。そんな印象に包まれます。

どんな「気配」が導かれるか、これからの展開ももちろん楽しみです。