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幕内政治が覗いたおすすめアートイベント情報

梅田哲也「迷信の科学」

OTA FINE ARTS

東京都中央区勝どき2-8-19-4B

4/25(土)~5/22(金)日月祝休

11:00~19:00

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Tetsuya Umeda "Science of Superstition"

OTA FINE ARTS

2-8-19-4B,Kachidoki,Chuo-ku,Tokyo

4/25(Sat)-5/22(Fri) closed on Sunday,Monday and national holiday

11:00-19:00

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雑然の中に、無数に潜むクールなアクセント。

そのかっこよさに、あらためて脱帽。

OTA FINE ARTSでの梅田哲也の個展です。

薄暗いギャラリーのそこかしこに配置される数々の「現象」。

それが何であるか分かるさまざまなものが組み合わせ、加工され、ギャラリースペースの各所に配置されて、深い時間を遅々と紡いでいきます。

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「スイッチ」として機能する扇風機。

羽のモーターのスピードに手が加えられ、して羽が外された代わりに接点となる針金のようなものが取り付けられ、金属製のフェンスに引っかかりながら回転。フェンスと接点が接する瞬間にごく微小な火花が散り、その瞬間、配線が繋がる別の電球が光を灯し、あるいはチューブか何かに空気が送り込まれてバケツなどに溜まる水を揺らします。

それぞれの「かたち」としての生々しさ、臨場感は、身近であるぶん余計にスリルを伴って迫ります。

ちらちらと繊細に灯る光の儚げな風合いが、または唐突に放たれる強烈な光やバケツ内の水が鳴らす振動音など、それぞれのアタック感のインパクトが、空間全体の光景とのギャップをもたらしているようにも感じられ、そのギャップがこちら側の感性を別の世界へと引きずり込んでいくかのように感じられます。

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カウンター奥にもひっそりと、シンプルなフォルムの作品が。

天井から吊り下げられたバーがスピードを変えながら回転し、時おり尖端の電球を灯らせます。この感じは実に素朴で、妙に愛おしく、かわいらしくも思えてくるから不思議です。

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今回、分かる範囲でもっとも多くの「もの」と「現象」とが組み合わせて展開されるのが、およそギャラリーの入り口からいうと左奥の一角に展開されたインスタレーション。

実にバラエティに富んだ事象がひとつの配線のなかで引き起こされていきます。その過程を確認するように眺めるのがとにかく面白く、好奇心を煽り、すこしずつ仕組みを理解していくのも楽しく感じられます。

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ここで展開される「器具」のなかでももっとも奇天烈な存在感を放つのが、天井から吊るされるバーに吊り下げられた樹脂の容器とさらにそこにぶら下がる指金。

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そしてその真下に鎮座する、なみなみと濁る液体が満たされた樽。

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この「現象」がどういう仕組みで起こるのかが僕の想像力と知識とではしっかりと説明できずもどかしいのですが、ある条件が整ったときに吊るされた容器に水が注ぎ込まれ、その重さで指金が樽の中へと沈んで通電、その一角のあらゆる「もの」が一斉に「現象」を引き起こします。

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バケツ内などの明かりが灯り、チープなレコード盤が回転してキュルキュルとユーモラスなノイズを奏で、その一瞬、ギャラリー全体が明るく、騒がしくなります。

この一瞬の不思議な爽快感というか、達成感、高揚感がこちらの好奇心を満たし、それまでの、ここで進む時間との対峙から解放されるような感触も沸き立つんです。

あまりにも一斉に起こるので、それに惑わされるような印象もあり、それすら痛快に感じられます。

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昨年の水戸芸術館クリテリオムでの展示と、今年初めのART@AGNESでのオオタファインアーツのゲストルームでのインスタレーション、それぞれの空間に充満していた知性とスリルの交錯。それらは強く印象に残っていて、今回の個展ではいったいどんな展開を、と興味津々だったわけですが、ぱっと目にした瞬間のむしろ雑然とした感じ、有り体に表現するとガラクタの集積といった感じがすると思うのですが、分かっているとそこにいったいどれだけのアイデアとインスピレーションが詰まっているのだろう、と、期待と高揚でいっぱいになるんです。

これまでの経験で培った独自のスキルと理論、そして自らの制作を通じ、またさまざまなジャンルとの交流によって獲得した感性とが相まって創り出される刺激的な空間。

その過程の中で、空間自体が持つポテンシャルも冷静に見極めながら(例えば配線の具合や、今回の展示でいうと床の耐水性も大事な要素だったようです)、ランダムに見えるようでいて実は絶妙な配置でそれぞれのアイテムが落とし込まれていて、それが空間全体の説得力を深化させているようにも感じられます。

とにかく面白い、そしてなによりかっこいい。文句なしにかっこいい!

ここでしか得られない刺激が、梅田さんのクリエイションに触れることでしかもたらされないイメージが確実に存在していると思います。

実際に展示空間に接し、そこで引き起こされる無数の現象と、それが構築する深遠な世界を体感してほしいです。

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一括りにしてしまうのは乱暴なのですが、田中功起さんの最近の目覚ましい活躍や金氏徹平さんが横浜美術館で大規模な個展を開かれていたりと、最近、日常の素材のあからさまな引用でさまざまなイメージを提供するクリエイションに注目が集まっているように感じられます。

出来上がった作品なり空間とイマジネーションやインスピレーションとの距離が、例えばペインティングや彫刻などと比較するとカ格段に短いように思える、というか、反射神経速度を限りなく短くすることで、作品に反映されるイマジネーションの純度を上げているような感じがするクリエイション。

無論、その過程にはペインティングなどとはまったく異なるイメージのの編集作業は存在しているはずで、むしろそこにある程度の、もとい相当の深さや厚みがないと説得力の有る「作品」は生み出されないとも思います。それを踏まえて、こういったアーティストが繰り出すアプローチのユニークさに、最近は僕自身もおおいに惹かれます。