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幕内政治が覗いたおすすめアートイベント情報
2009年6月アーカイブ

坂本真澄展「体育のじかん」

Gallery MoMo Roppongi

東京都港区六本木6-2-6 サンビル第3 2F

6/13(土)~7/3(金)日月祝休

12:00~19:00

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SAKAMOTO Masumi "Time of physical education"

Gallery MoMo Roppongi

6-2-6-2F,Roppongi,Minato-ku,Tokyo

6/13(Sat)-7/3(Fri) closed on Sunday,Modnay and natinoal holiday

12:00-19:00

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Gallery MoMo Roppongiでの坂本真澄さんの個展です。

独特の筆致,色使いというか、なんとも味わい深いテイストが滲んできます。

そしてテーマが「体育」、この辺のギャップがユニークな雰囲気をさらに濃くしているように感じられます。

なんたっていきなり

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つり輪か!Σ( ̄口 ̄;)

しかも日本代表!Σ( ̄口 ̄;)

おおらかな動きと妙に深みのある目、空間性と垂れる絵の具。そしてレイドバックしたような色合いがレトロな雰囲気をもたらしているように思えます、ていうかこの唐突感でいきなりこの世界へと引き込まれます。

そしてさらにめくるめく場面。

全体のほんのりメロウで強烈に懐かしいような雰囲気、どことなくほのぼのと牧歌的な感触とは裏腹に,ピンク地に広がる白のレース模様やブランコのチェーン部分を覆う花などの細かい描写もみっちりと描き込まれていたりして、その辺りのギャップにも惹かれます。

・・・ていうか一帯どんなシチュエーション(汗)。。。

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そして今度は耳かきか!Σ( ̄口 ̄;)

描かれる人たちの独特な表情が効いてきます。

うっすらと、しかし細かく施される陰影が、そして大きな黒目が妙に懐かしい風合いを奏でていて、それが妙に覚めたような表情に深い味わいをもたらしているように思えます。

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さらにこの辺りまでくると参った、そんな感じで。

おっとりとしたテイストとレイドバックしたようなシチュエーション設定は伊豆売れの作品においても徹底されていて、べたっと塗られる色面のムラも、細かい描き込みのコントロールしきれないズレも、その特有の雰囲気をより濃密なものへと向かわせているように感じられます。

肌で感じる空気感が特別に濃いように思えるんです。

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で、いきなりやんちゃ炸裂。

この辺りになるともう、逆に押し切られてしまうような感じが痛快です。

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板をカットして人のかたちが立体的にも表現された楽しい作品も。

むしろ古いアプローチに感じられるのですが,それはそれ、やはり、かえって雰囲気が濃く,より臨場感も強く伝わります。

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・・・むしろ暴走。

さまざまなかたちで空間に大小のアクセントが持ち込まれています。

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滲みなども巧みに織り交ぜられて描かれるシーン、その揺らめくような空気感が印象に残ります。

随所から感じられる独特の遊び心。ほんのりふわふわと、デジャヴのような感触を強く促します。

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伊藤彩『生まれつきJ』

ArtJam Contemporary

東京都渋谷区恵比寿1-18-4 NADiff A/P/A/R/T 2F

5/22(金)~6/21(日)月休

12:00~20:00

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Aya Ito "Naturaly J"

ArtJam Contemporary

1-18-4-2F,Ebisu,Shibuya-ku,Tokyo

5/22(Fri)-6/21(Sun) closed on Monday

12:00-20:00

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何だか捕らえ所がないっていうか・・・

とにかく変な世界なのー!

ArtJam Contemporaryでの伊藤彩さんの個展、会期の最初と最後に行ってきました。

平面と立体とが奇妙な響きをもたらしていて、なんだかその空間にいることに妙な臨場感を感じます。

なんだろねー。この世界観。。。

みたいに呑気に眺めているとですね...

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アピールか!Σ( ̄口 ̄;)

理不尽な判定に対する審判へのアピールか!Σ( ̄口 ̄;)

カード(カレー券orキムチ券)でももたっらのか!Σ( ̄口 ̄;)

いや実際は案外どうしようもなくくだらないことのような気もしなくもないんですけど、とにかく気になってしまいます(汗)。

さらにアピールは続く・・・

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広げる両腕、妙に堂に入っています。

口のかたちから察するに「アー」とか「マー」とか言ってそうなんですけど、この不思議なかわいらしさがなんとも愛おしく。

そしてその後ろの仏様のような達観の表情、さらに右後ろのちいさなのとか、状況がさらに意味不明、混沌としてきまして。

ああ!

楽しい!

楽しい気持ちに理由などない!

・・・・・

いや、あるわけですけど。それを具体的な言葉にするのがもどかしいだけで。

不思議な生物たちが登場し、その世界観の広がりをさらに押し進めて行きます。

伸びる影の臨場感が、その場所のイメージを具体的なものへと引き上げてくれているようにも感じられます。重力感とかも曖昧になってきているし...。

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この空間に入ってすぐに

!Σ( ̄口 ̄;)

と思わずにいられないのが中央に聳える立体作品。

でかかった。

異様にでかかったんです。

男の子、広げる両手のひらに謎の生命体。

その一段下にもさらに謎めく生命体。

そしてアロエ。なぜにアロエ!Σ( ̄口 ̄;)

しかし不思議な説得力で空間を満たすんです。

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このインスタレーションが平面に収められた作品も。

この関係性が実に面白い!興味深い!

登場するそれぞれのキャラクターが三次元から二次元へと押し込められることでイマジネーションが自由を得て、ヴィヴィッドな色彩は伸びやかに、派手派手しく、そこに登場するキャラクターたちはいっそうの生命の力を奏でながら、でもなんとも不思議な雰囲気が充満しているように感じられます。

なんでしょねーこの痛快な感じは!.

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さまざまな平面作品は、先に紹介したものが平面と立体とで関係性をもっていたように、複数の作品が時間の流れを思い起こさせる構成のものも。

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謎めく縮尺感。土管に手を突っ込む赤いシルエットの女、奥には赤い屋根の家。

景色全体に馴染むグラデーションがそれぞれの存在の気配の曖昧さを導き出して、ドラえもんのワンシーンに出てきそうな、共有される空き地のイメージが身近さをもたらし、それが想像の幅を思いもよらぬ方角へと広げてくれるような。

そして、この作品の一瞬後。

風・・・ではない何かが吹き抜けて、屋根やら土管の穴の影などだけが残って。

どこかおっとりとした雰囲気が滲んでいただけに、この作品のスピード感は鮮やかなインパクトを放っているように感じられます。

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ちいさなオブジェ群によるインスタレーションもまた楽しげ。

遊び心というか、自然な感性をそのまま発揮させたような感じがころころと小気味よい風合いを奏でているように思えます。

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京都市立芸術大学での学内展で拝見した空間も、ゆっくりと作品を拝見する余裕はなかったものの、伊藤さんの作品の部屋に充満していた雰囲気は相当にインパクトがあって、

なんだか凄いところに来ちゃった!Σ( ̄口 ̄;)

・・・的な印象だけが強く残っています。

その後、ART AWARD TOKYOと今回の個展とであらためて拝見して、やっぱり変なことを実感した次第。

いや、いいんです!

このヘンな感じ、断固支持!

天真爛漫さ、無邪気さがそのままうようよいきいきしてるイマジネーションが生み出す世界は、思いもよらぬイメージを思い浮かべさせてくれます。

もっと楽しみたい、今度はどんな風に、良い意味で呆れさせてくれるかが楽しみです!

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市川孝典展 VINTAGE BROWN

PLSMIS

東京都港区南青山4-17-4-1F

6/17(水)~6/30(火)

11:00~19:00

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Takanori Ichikawa VINTAGE BROWN

PLSMIS

4-17-4-1F,Minami-Aoyama,Minato-ku,Tokyo

6/17(Wed)-6/30(Tue)

11:00-19:00

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繊細な手法が放つスリリングな静謐。

そして、その行程に、描かれる世界に潜むクールネス。

PLSMISでの市川孝典さんの個展です。

実に魅力的な光景がそこかしこから、静かに迫ってきます。

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線香の炎で紡ぎ出される「絵画」。

支持体となる紙を焦がすことで描かれるモチーフの圧倒的なリアリティに圧倒されます。

紙を焦がして穴をあける、また焦げたことによる褐色がもたらす色調。敢えて表現するならば、支持体を「こわす」ことで描かれる絵の深みとスリルは相当なもので、さらにモノクロームの渋みも加わり、そこから醸し出される雰囲気には鋭さも含まれているように感じられます。

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作品の儚げな風合いとは裏腹に、凄まじいほどの臨場感で観る者を圧倒してきます。

壁を這う蔦が描き出す混沌。これほど複雑で、そして感覚で捉えることが難しいモチーフでさえ、一切の下描きなしの状態から、記憶を辿って制作されるのだと伺い、さらに、眼前に現れる情景の深みに驚嘆、驚愕し、引き込まれます。

俯瞰した時の高度な再現性がもたらす説得力溢れる臨場感、至近で眺めると一転してそこに繰り広げられた行為の痕跡のひとつひとつが、騒がしいほどに鋭く視界に飛び込んできます。

細微とはいえ、線香の炎のストロークが重なれば重なるほどに紙は焼け焦げ、しかしそれも際どく白の部分が残されることで、鮮やかな陰影が導き出されていることにも大いに驚かされます。奇跡と背中合わせの神業。凄まじい集中力。とにかくここまでコントロールできていることへ唸らされます。

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俯瞰した風景がある一方で、サックスのアップを描ききった作品の渋さにも引き込まれます。

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陰影だけでもたらされる臨場感。

影の部分を描きだす(敢えてこう表現しますが)色面のみでこれほどまで..。.

かしゃかしゃと動くキーのメカニカルな感触も、艶かしい曲線を持つホーンの部分も、実に写実的に表現されていて、思わず感嘆の溜め息も。

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2点組のシャンデリアの作品、こちらは薄めの焦げ具合ながら、それが儚げな記憶の感触を創出しているようにも思えて、さまざまな想いもよぎっていきます。

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それぞれの作品から放たれる鋭く繊細な臨場感、そしてに囲まれた空間に満ちる渋くクールな気配。

この手法へのこだわりが、また自信や自負といったものが、焦げた紙であり、ものとしては非常に脆弱なはずの作品に、存在としての凄まじい強度をもたらしているように感じられます。

なによりかっこいいんです。それはもう、文句なく。

鮮烈な静謐を放つリアリズムに、焦げた紙の生々しさにぜひとも直に触れ、そのインパクトを感じてほしいです。

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Kodama Gallery Project 18 関口正浩「うまく見れない」

児玉画廊|京都

京都府京都市南区東九条柳下町67-2

5/30(土)~7/11(土)日月祝休

11:00~19:00

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Kodama Gallery Project 18 Masahiro Sekiguchi "Can't see well"

Kodama Gallery Kyoto

67-2,Yanaginosita-machi,Higashi-kujo,Minami-ku,Kyoto-shi,Kyoto-fu

5/30(Sat)-7/11(Sat) closed on Sunday,Monday and national holiday

11:00-19:00

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ユニークな手法による、どうしようもない脆さ。そしてそれが放つ、イメージとしての強度とインパクトの凄み。

児玉画廊|京都での関口正浩さんの個展です。

児玉画廊といえば、田中秀和さん、池谷保さんをはじめ、フレッシュな抽象表現のクリエイションを立て続けにレコメンドし、その度に驚かされ、興奮させられているのですが、今回の関口さんもその流れでピックアップされる個性として、とにかくぱっと目にした瞬間からその独創的なマチエルと随所に現れるスリリングさに一気に引き込まれてしまった次第です。

独特の色調の色面が画面上に重ねられます。

しかも、この色面はいわゆる「塗る」のではなく、絵の具を一旦、例えると「湯葉」のように薄いシート状に成形し、それを物理的に重ねることで構築されているのだそう。

その行為の過程に伴ってもたらされる皺や色面のエッジの切れが、凄まじいスリルを内包する力強い世界観をもたらしているように感じられます。

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画面に生み出される皺がもたらすアバンギャルドなテイスト。

力強いズレや歪みがこちらの好奇心を煽ります。絵の具の素材感もしっかりと発揮され、表面の艶のある光沢が光を弾きながら、しかしむしろ荒々しい画面の立体感がアグレッシブなイメージの創出も促してきます。

この作品においては、画面から溢れる薄い色の重なりが、その質感の繊細さを表出しているのにも引き込まれていきます。

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多数の色が用いられる作品から、色数を減らすことで色調の統一感が導かれ、それがこの手法によって生み出されるマチエルの面白さが際立って迫る作品も。

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そして、ずらりと並ぶ大作の、広大な色面が放つインパクトにも大いに惹かれます。

さまざまな色が重力感を伴いながら重厚に並び、その壮観さに圧倒されながら、しかしただ色が並んでいるのではない、色の提示され方のスリル感がミニマムな視界へと好奇心を向かわせます。

さまざまなイメージに翻弄されるのがまた堪らないんです。

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この薄い絵の具の重なりが生み出す面白さは、単に広い色面がところどころの皺とともに提示される壮観さだけに留まらない...やはりこれも手法の性ではあるのですが、シワが寄ってしまうのと同時に部分的に破れてしまうところがあって、それがまたすごくいいんです。

ピンと張った状態にキープされる絵の具。その支持体から浮いた部分の一部が破け、あいた穴の部分にもたらされる凄まじい緊張感。これだけ眺めていても充分に十時チスタイメージが得られるような気もしてきます。

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さらに、その穴やヒビから最も表面の色より下、支持体側にかさなる色面が顔を覗かせ、それがまた強烈にミニマムな光景として迫り、凄まじい濃密な密度を伴ってのインパクトを放ってきます。

例えば鉄筋に湧く錆やアスファルトのヒビなどの意図せず生まれる抽象的な面白さと通じるような、気付いてしまうクールさといった感じで、そういった要素をひとつひとつを見付けていく度にこの世界の奥のほうへと導かれていきます。

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大作を中心に、比較的小さめの画面の作品も展示され、色彩感のバリエーションは幅広く、さらにそれぞれが色彩としてのインパクトを備えていて。

無数の発見に溢れていて、大いに煽られ、興奮させられた次第です。

そしてこのクリエイションの面白さをダイナミックに引き出す、ほぼリフォームも完了したこのスペースのポテンシャルにも舌を巻きます。

さまざまなスケール感で広がるイメージ。

手法の面白さを存分に堪能、このアイデアのシンプルさが生み出す面白さはさらに可能性もはらんでいるように感じられ、またこの手法でここまでのサイズの作品を生み出すバイタリティとあわせ、今後の関口さんの進化や展開も楽しみです。

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《6/19》

恒良英男 edge

AISHO MIURA ARTS

東京都新宿区住吉町10-10

6/19(金)~7/5(日)月休

13:00~21:00(日:~19:00)

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面白い!

フォークやスプーンに穴があけられて装飾的にアレンジされていたり、また溶接されて、さらに額装されることで物語性も生み出されているのもまた興味深かったり。

立体的なアプローチやインスタレーションも楽しいです。

玉ノ井哲哉『夢を見ない夜…』展

MORI YU GALLERY TOKYO

東京都新宿区西五軒町3-7 ミナト第三ビル4F

6/6(土)~6/27(土)日月祝休

12:00~19:00

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モチーフにお菓子がたくさん取り入れられているので、もっとポップな世界観を想像していたのですが、さにあらず。

相当にサディスティックというか、むしろホラー的な感じが迫ってきて、そのギャップに大いに戸惑わされてしまった次第。

ポップさとスプラッタ的なホラーさとが混在するインスタレーションが展開されています。

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中央に置かれる椅子、そこに配されるドーナツや絞りから出したクリーム、背もたれのチョコレートに垂れる白いソース、それぞれの造形の精度の高さ、臨場感に感じ入りつつ、吹き荒ぶように迫る怖さにぎょっとしたり。

空間を構成するのとともに、その作品を取り込んだ写真作品も合わせて展示されていて、強烈な世界観がさらにリアルに提示されています。

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この女の子なんてもう、アメリカのホラー映画の引用を強く感じてしまうわけで...。

無邪気に見えるさまが余計に逆の側面を立ち上げているように思えます。

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写真に写っているものとは違うのですが、お菓子を組み合わせて作られたチェーンソー。

色やモチーフのかわいらしさを思って接するホントにケガしますよってうまいこといてる場合か!Σ( ̄口 ̄;)

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立体と写真とを用いて、独創的なアプローチで独自の世界観の提示が繰り広げられ、そこに取り込まれるふたつのテイストの凄まじいギャップがドラマチックなほどに力強く迫り、翻弄してくるんです。

僕の場合はカワイイ方面からのアプローチでしたが、コワイ方から入ってくる方もいらっしゃるそうで、そちらの場合でもまた相当に振り回されるようです。

いずれにしても、大変興味深い世界です!

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「変成態-リアルな現代の物質性」展 vol.2 冨井大裕×中西信洋 揺れ動く物性

gallery αM

東京都千代田区東神田1-2-11 アガタ竹澤ビルB1F

6/13(土)~7/18(土)日月祝休

11:00~19:00

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横たわる冷静。ふたつのクリエイションが静かに響き、お互いの個性を引き立て合いながら、豊かな空間性とゆったりとした時間の流れを感じさせてくれます。

それぞれの代名詞的な作品が揃い、アーカイブ的な構成になっているのも興味深く感じられます。

100 degrees Fahrenheit vol.1 梅沢和木 笹田晋平 高橋つばさ 彦坂敏昭

CASHI

東京都中央区日本橋馬喰町2-5-18-1F

6/5(金)~7/11(会期延長)(土)日月祝休

11:00~19:00

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再訪。

僭越ながら、まるで僕の好みを見透かして選んでくれたみたいなセレクションが堪らないグループショーです!

彦坂敏昭さん、お馴染みのの燃える家。緻密な版による線、さまざまな素材を用いて施される複雑なグラデーションが、硬質な混沌を導き出しています。

今回の作品はさらにひとつひとつの配色の力強さ、深みがシャープなコントラストをもたらし、それが線の強度も引き上げているように思えて、よりいっそうの硬質に進化したテイスト感が堪らないです。

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以前から気になっている方のひとり、AISHO MIURA ARTSでのグループショーでも印象に残っている梅沢和木さん。

現在開催中のトーキョーワンダーウォールにも出展されています。

梅沢さんのアプローチも実に面白く、文字など出力、携帯などに用いられるシールといったデジタルな感触の素材もふんだんに取り込み、そこに極度に鮮やかな色彩の絵の具を大胆に重ねることで、相当にフューチャリスティックで、かつ鮮烈にヴィヴィッドな混沌を生み出しています。

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大小の画面を組み込み、コーナーで構築されるインスタレーション、そこに立ちのぼる竜巻のようなスピード感溢れる雰囲気のインパクトも痛快。そして1点ずつの空間性の大胆さ、重なる色の過剰さと背景の白のフラットさとのギャップも面白いです。

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また、ちいさなキューブも面白い!

オープニングのときに持たせていただいたんですが、その重量感はけっこうびっくりします。

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トーキョーワンダーサイト本郷での個展も印象的だった笹田晋平さん、そのときの曼荼羅風の作品も面白かったのですが、今回はそのときにも発表されていた別シリーズの肉の作品。この臨場感、サイズが放つ分厚い世界観は、過剰にコミカルで、そこにメッセージ性も横たわっているようにも感じられ、なかなかの深みを醸し出します。

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文京アートでも個展もステキだった高橋つばささんも登場。

こちらもコーナーを活かして角度をつけて壁面構成、パノラマ風に組み上げられた緻密な線が舞う情景の清々しい混沌が楽しいです。

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そして、円形の画面の作品も。

ちょっと高いところに展示されていて、満月に漂う雲、そんな気配感も深遠にイメージを押し拡げてくれます。

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こちらの展覧会、会期延長になったようです、ぜひじっくりと拝見してほしいクリエイションが揃っていることもあり、嬉しい限りです。

中矢篤志展「CIRCLE」

Gallery MoMo Ryogoku

東京都墨田区亀沢1-7-15

6/6(土)~6/27(土)日月祝休

11:00~19:00

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今回はふたつの空間でひとりずつ、それぞれ個展形式で紹介しているGallery MoMo Ryogoku。手前の細長い空間では中矢篤志さんのちょっと妖し気なファンタジーが広がっています。

いきなり巨大な立体がお出迎え。

いきなりそのファンタジックな世界観に引き込まれます!

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お馴染みの、バブルが湧くような感じが毒々しさを生み出しつつ、軽やかな色彩でメロウな空気感も膨らませるペインティングが並んでいます。

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軽やかな色とモチーフの小動物的な感じがかわいらしさを奏でつつ、どこか危うさも醸し出してるのが印象的です。

迂闊に近づけいない雰囲気があって、それが逆に意識を引き込んでいきます。

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クッションのような素材感も楽しい中谷さんの作品、入り口正面奥の壁面には小品が散らばって、なんとも楽しげな情景が生み出されています。

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1点ずつを眺めていくと、そのアクセントの強烈さに、さらに惹かれていきます。

ちいさな画面に収まるめくるめく色彩のうねり、キャッチーなテイストと危うさとの混在が、独特のファンタジックなイメージも不思議な方向へと立体的に広げてくれます。

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ひと味違う雰囲気の作品も。

クッションのような感触はそのままに、どこかレイドバックしたような、そして硬質な感触が新鮮です。

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独特のメロウネスというか、あたたかさ、まろやかさが今回も印象に残ります。

空間全体にそれがふわりと満ちています。

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人見元基展「楽園」

Gallery MoMo Ryogoku

東京都墨田区亀沢1-7-15

6/6(土)~6/27(土)日月祝休

11:00~19:00

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奥のスペースでは人見元基さんの木彫作品が展示されています。

中矢さんの空間から一転してどこか不器用というか、もったりとした感触がコミカルな雰囲気を醸し出しているように感じられる空間。そこに注ぎ込まれているユーモアが独特な味わいを醸し出しています。

まず目に飛び込んでくるのがバイク型のかたつむり。

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実際に乗れそうなサイズなのがまた、イメージの距離を塚づけてくれています。

そして、さまざまな箇所のていねいな造形と配色がさらに強いインパクトをもたらしているように感じられます。

オートバイなのにかたつむりて!みたいなツッコミは意外と思い浮かばず、むしろそのおっとりとした雰囲気が印象に残ります。

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淋しげな佇まいが印象的な、腰掛けるオウムの作品。

擬人化されたフォルムが雰囲気をさらに強めているように感じられ、その切なげな感じにほのかに胸が詰まるような...。

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遊び心とメランコリックさとが備わる作品がそこかしこに配され、無垢さがやわらかいアクセントとなり、漂う緩やかな時間の流れがなんともいえない居心地を紡ぎ出しています。

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wahすみだ川のおもしろい」展

すみだリバーサイドホール・ギャラリー

東京都墨田区吾妻橋1-23-20

6/20(土)~7/20(月)

10:00~19:00

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いやもう。

なんだかもう。

人のアイデアを「行動あるのみ」の姿勢で実行するwahの3人組。東京芸大先端の修了制作展では発表された作品群のキッチュさは今でも忘れられないのですが、今回も相当に振り切ったことをやっちゃってます!

ていうかゴルフて!Σ( ̄口 ̄;)

屋内でゴルフて!Σ( ̄口 ̄;)

ていうか船上!Σ( ̄口 ̄;)

・・・・・

どっちだよ!Σ( ̄口 ̄;)

どっちもだから困る...。

市川孝典展 VINTAGE BROWN

PLSMIS

東京都港区南青山4-17-4-1F

6/17(水)~6/30(火)

11:00~19:00

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TRAUMARISで拝見して印象に残っている市川孝典さんの線香の炎で描かれるタブロー。そのときに発表されていた作品を含め、それぞれが持つ深みとじっくりと対峙できるのがまず嬉しいです。

制作手法を考えると信じられないほどに緻密に再現されているさまざまな風景やモチーフ、そのスリルに意識が入り込んでいきます。

《6/20》

坂本真澄展「体育のじかん」

Gallery MoMo Roppongi

東京都港区六本木6-2-6 サンビル第3 2F

6/13(土)~7/3(金)日月祝休

12:00~19:00

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空気感を思い起こさせる滲みとレースなどを描く細やかな線など、独特の筆致と色使いが醸し出す独特の雰囲気。人のかたちなどにカットされたパネルに描くなどのユニークな手法も取り入れながら、ユーモラスな感触を伴って緩い世界観をもたらしています。

そういうモチーフが出てくるわけではないのですが、子どもの頃に駄菓子屋で買ったお菓子を食べたのを思い出した時のような、なんだか懐かしい感じが妙に心に残ります。

松原健「果実の肖像」

MA2Gallery

東京都渋谷区恵比寿3-3-8

6/20(土)~7/18(土)日月祝休

11:00~19:00

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深いイメージが構築されています。

ずらりと並ぶ写真が深遠な雰囲気とメッセージ性を紡ぎ出し、その繊細な空気感が印象的です。

オープニングパーティーでビオラ・ダ・ガンバの演奏があり、終わりの頃でしたが、その貴重な演奏を聴けたのもまた嬉しかったです。

「ひとことガレット」片山大輔 個展&「ひとになる」高あみ 個展

YUKARI ART CONTEMPORARY

東京都目黒区鷹番2-5-2 市川ヴィラ1階

6/20(土)~7/18(土)日月火休(水:事前予約制)

11:00~19:00(最終日:~17:00)

片山大輔090620.jpg 高あみ090620.jpg

ふたつの空間でひとりずつ、それぞれが独特の世界を築き上げています。

手前が片山大輔さん。空間の真ん中に置かれる立体作品、大きなアクリルケースに収められる、服を取り入れた平面の作品、そしてタブローと、バリエーションに富んだアプローチの作品を揃えていながら、一貫する雰囲気が味わいを深めているように感じられます。

奥の展示室では高あみさんのセラミックの作品が。今回は女性の頭部のオブジェなど、1点ずつの作品が独自の世界を醸し出し、それらが揃うことでさらに深い空気感を導き出しているように感じられます。

《6/21》

この日は雨で、外出の時間もちょっと遅くなってしまったのですが、まず足を向けたのが東京都現代美術館で最終日だった池田亮二さんの個展。

最終日に行ってる場合ではなかった・・・。

あの世界は僕にとってど真ん中、ミニマムなサウンドとシンクロして展開される複雑な映像インスタレーション、いつまでもそこに浸っていたくなるほど。

「Dataplax」はCDで持っていて買った頃はずっとそれだけ聴いていて、今でもたまに聴くほどに大好きなアルバムなのですが、その音世界が視覚でも展開されたような感じがとにかく堪らなかったです。

地階のスペースでの白い空間でのサウンドインスタレーション、そして展示された平面作品の、敢えて作品の本質を生々しく表出させ、提示したような構成も印象に残ります。

片平菜摘子「かなたのちかく」

Gallery Jin

東京都台東区谷中2-5-22 山岡ビル1F

6/13(土)~6/28(日)月火休

12:00~19:00(最終日:~17:00)

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淡い色彩が印象的、やわらかい風合いが仄かな切なさとをもたらす多色摺りの木版画。

もう長く拝見している片平菜摘子さんの作品、変わらない世界観と、それでも少しずつ深みをましているように感じられるのがまた嬉しいです。

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豊かな空間性が今回も印象に残ります。

広さ、そこにちょこんと灯るように、人影や一軒家が描かれ、その「ひとつだけ」の淋しげな雰囲気に、そしてその繊細な空気にいろんな記憶がよぎっていきます。

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今回は水彩のドローイングの小品も数点発表されていて、こちらの世界にも惹かれます。

うっすらと広がる淡い色彩、豊かで繊細な滲み、木版画とは違うテイストで、しかし同様に広がる空気感、空間性。儚げな風合いが心をとらえてきます。

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&Co.Soon:EYE

magical, ARTROOM

東京都渋谷区恵比寿1-18-4 NADiff A/P/A/R/T 3F

6/21(日)~7/18(土)日月祝休(初日を除く)

12:00~20:00

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自動車のボンネットに描かれるグラフィティ。線の密度に惹かれて近づいて、独特のアバンギャルドなリズムも楽しく、また離れて俯瞰したときに異なるシュールな情景が飛び込んでくる痛快さも。

地下のNADiffのギャラリースペースでのレコードショップのインスタレーションも面白い!

《6/25》

田中麻記子 “kiwi & guava”

GALLERY at lammfromm

東京都渋谷区上原1-1-21 山口ビル1F

6/19(金)~7/24(金)

12:00~20:00(土:11:00~、日祝11:00~19:00)

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前回のhpgrp東京での個展から間髪入れずに開催の田中麻記子さんの個展、そのときに尋常でない混沌とした雰囲気から一転して、実に軽やかな雰囲気、伸びやかで自然体のウォールペインティングと、そこにまるで実がなるように、ちいさな作品が散らばって展示され、エンターテイメント性に富んだ壁面が作り上げられています。

その小品たち、それぞれの画面におよそひとつのモチーフ、ひとつの場面が描かれていてかわいらしいことこの上なく、さらにタイトルがまたユーモラスで堪らないです。

田中さんならではの濃密な色使いと緻密な筆致は随所に感じられ、それがこういった世界も導き出せるんだ、という驚きもまた痛快です。

あわせて過去の作品をプリントしたグッズなども展示されていて、こちらの繊細な雰囲気もまた印象に残ります。

妻木良三 境景

ラディウムーレントゲンヴェルケ

東京都中央区日本橋馬喰町2-5-17

6/5(金)~6/27(土)日月祝休

11:00~19:00

Ryozo TSUMAKI "KYOKEI"

Radi-um von Roentgenwerke AG

2-5-17, Nihonbashi-Bakuro-cho,Chuo-ku,Tokyo

6/5(Fri)-6/27(Sat) closed on Sunday,Modnay,and national holiday

11:00-19:00

Google Translate(to English)

繊細で緻密なスロロークが紡ぐ、とてつもなく、渋い幻想世界。

ラディウムーレントゲンヴェルケでの妻木良三さんの個展、ストイックな気配の感触に満ち、深遠な世界観が横たわっています。

妻木さんの作品をはじめて拝見したのは、目黒区美術館での鉛筆画を集めたグループショーで、そのときは額のなかに浮かせた状態でそれぞれのタブローが展示されていたと記憶しているのですが、今回は円形の画面を採用、有機的な世界に豊かさがもたらされ、さらに壮大で荘厳なイメージの広がりを思い起こさせてくれます。

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妖し気な気配が画面の中にうごめき、息づいているように感じられます。

ぐんと聳える無数の盛り上がり、その連なり。絶妙な陰影が紡ぎ出す情景。まるで、その空間に大河の時間の経過が存在しているかのような、とてつもない重厚さが思い浮かんできます。このスケール感の尋常でない感じ、壮大なイメージの想起を促す力強さにもおおいに惹かれます。

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鉛筆によって紡がれるストイックな濃淡は、余白の白さとで美しいコントラストを導き出します。まるで墨の滲みにも似た滋味溢れる質感に心打たれ、そして平滑な画面により、さらなる美しさが引き出されているように思えます。

長い時間の蓄積を思い起こさせる情景感。おそらく相当に抽象的なイメージが基となっていると思われるのですが、画面に横たわる景色は聳える岩のようにも、または虚空を煙る雲のようなもののようにも思えてきます。いずれにしても、このなかでしか感じられない、思い描くことのない独創的な世界観が力強く伝わってくるんです。

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円形の画面がとにかく効いています。

圧倒的な描き込みと緻密かつ大胆な陰影、それらが生み出すダイナミックな奥行きとスケール感。ずっと奥へと、遠くへと広がっているような豊かな空間性は、画面が円形であることで自然に、画面の外側へのイメージのおおらかな広がりも促します。直接的に壁面に作用し、留まるところなく想像は膨らみ続けていきます。

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透明アクリルのケース状の額に収められた小品も。

コンパクトに纏められた情景にもたしかな強度が備わって、力強くイメージの膨張を促してくるように思えます。

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展覧会のタイトルにある「境景」という言葉がさらに深遠なスリルをもたらしているように感じられます。

分厚い空間性と時空のイメージの創出は、想像上の世界でありながらも力強い臨場感を伴って迫ります。備わるイメージの強度が、そして促されるイメージの厚みが現実世界との境の存在にも深い説得力をもたらすように感じられます。

そして、現実と妻木さんが生み出す世界との境は、いわゆる絵画的、視覚的なものだけに留まらず、言葉/物語、あるいは肌触り/空気感で感じ取るようにも思えます。もしくは無意識のなかに潜むのかも、と思ったり...。

今回は円形の画面の作品によって空間が構成され、そこにたゆたう壮大な気配がからだを包み、心の中にイメー時の膨らみをもたらしてくれたような気がします。

大きな作品などもぜひ拝見してみたいです。

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西山裕希子展「鏡のすき間」

PANTALOON

大阪府大阪市北区中津3-17-14

6/7(日)~6/28(日)月火休

水~金:17:00~21:00、土日:12:00~19:00

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Yukiko Nishiyama "at the edge of reflection"

PANTALOON

3-17-14,Nakatsu,Osaka-shi,Osaka-fu

6/7(Sun)-6/28(Sun) closed on Monday and Tuesday

17:00-21:00(Saturday and Sunday:12:00-19:00)

Google Translate(to English)

清々しく響き合う空気感。

PANTALOONでの西山裕希子さんの個展です。

作品のひとつひとつが持つ空間性のユニークさ、染織だからこその清潔感溢れる画面、新鮮で深遠な要素が豊かに重なって、思わず深呼吸したくなるような空間がもたらされているように感じられます。

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ひとつの画面に、レイヤーのようにいくつかのモチーフが重ねて収められ、布の質感もそこに重なって、独特の奥行き感、立体的なイメージが生み出されています。

ていねいな線描によって描かれる手、写真からプリントされたコップ。今にも手にとりそうな瞬間をスローモーションで捉えたかのような臨場感に、右斜め上の短く細かい線がさらにそこに流れる気配や時間のイメージにリアリティをもたらしているように感じられます。

そして、小さな作品でありながら、壁面と空間に作用し、爽やか静かな情景を導き出しているように思えるのも印象的です。

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2階には、アートコートギャラリーで拝見したのとほぼ同じインスタレーションが再現されています。

ただ、同一作品ではなく、同じモチーフを基に制作されているものの別のバージョンとのこと。

アートコートギャラリーでは通路部分の空間に展示されていて、たっぷりと注がれる自然光を受けつつ、どこか文学的な響きを奏でていたのが印象に残っていますが、こちらではさらに白い空間ということもあって、例えるとリミックスのような展開のように思えてその雰囲気が心地よく、そして興味深く感じられます。

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椅子の上に置かれた作品、髪をとかす女性の後ろ姿をシンプルに線で表現し、長い髪の毛の流れをおよそ数えられるほどの本数で描き上げ、さらにこちらも必要最小限の線の数で表現される服のしわがもたらすリアリティ、さらに裾の部分にわずかに現れる色面が、まるで気の利いた小説のなかにある短いセンテンスでの描写のようで、すっとそのシーンを思い浮かばせてくれるようなナチュラルなイメージの広がりが心地よいです。

椅子の上に置かれていることも、さまざまな想いをもたらしてくれます。

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もう少し奥へと進むと、今度は鏡だけの作品が現れます。

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鏡のなかに、まるである瞬間を引っ掻くようにして残される場面。

そこを過ぎ去った想い。深遠な物語性を情感豊かに紡ぎ出しているように思え、さらに鏡という素材の独特の気配がその物語の奥行きをさらに深めているようにも感じられます。

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このスペースの突き当たりにふたたび染織による作品が。

シンプルな線で引き出される清々しい情景が印象的です。

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もうひとつの2階のスペースには、対の構成による染織作品が展示されていて、コンパクトなスペースに豊かな空間性を導き出しています。

画面ごとの大胆な構成。大きな余白が、横たわる人の姿を際立たせるだけでなく、抜けるような画面の白さに隠されたさまざまな風景を思い起こさせてくれ、それぞれの画面で微妙にずらされる位置が、おおらかな時間の流れの存在を思い起こさせてくれるんです。

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西山さんの作品は染織であり、ほぼ線描で構成されていながら、それらはただ線が引かれたのではなく、蝋で染める線の部分を細かく残していきながら少しずつ染めていく、という実に気の遠くなるような過程を経て制作されています。しかし、最後に蝋を洗い落とすという行程が入ることでより清らかな画面が生み出され、染織の秘める力がしっかりと作品の美しさへと反映されて、豊かな空間性をもたらしているように感じられます。

さらに、鏡の作品があることで、布の質感からもさまざまな想いを促します。

伺った時間はまだ陽が高く、窓からも自然光が入り込んで、画面の布の白さがケレン味なく光を反射し、その効果が空間全体に作用していっそうの清々しい空気感を演出しているようにも思えます。まったく異なる鏡の反射の質感とのコントラストも、そこかしこに現れる物語性に深みを生み出します。

ひとつのストーリーのなかに入り込み、さまざまなイメージが促されながら、充実した時間を通り過ぎていったような後味も心地よく感じられる展覧会です。

さまざまな空間での響きを体感してみたいクリエイションです。

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"Perlenpoesie" 小沢さかえ

MORI YU GALLERY KYOTO

京都府京都市左京区聖護院蓮華蔵町4-19

5/30(土)~7/5(日)月火祝休

12:00~19:00

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Sakae Ozawa "Perlenpoesie"

MORI YU GALLERY KYOTO

4-19,Shogoin.rengezou-cho,Sakyo-ku,Kyoto-shi,Kyoto-fu

5/30(Sat)-7/5(Sun) closed on Monday and Tuesday

12:00-19:00

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さらに広がり続ける物語・・・!

昨年の東京での個展から半年足らず。

MORI YU GALLERY KYOTOでの小沢さかえさんの個展です。

独特の深みと軽やかさをそなえる独特の色彩。ゆたかな表情の筆遣い。

とにかく嬉しいのが、今回の個展もすべて新作で、小沢さんのステキな世界を体感できることでして。

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僕は読んでないし映画も観ていないのでもしかしたら違うかもしれないのですが、想像で、さまざまな童話の延長線上にハリー・ポッターの壮大なスケールの物語があるのだとしたら、今回の小沢さんの作品群もまさにそんな感じです。

高まるファンタジックな雰囲気、ひとつひとつの景色はより厚い臨場感が蓄えられて、眺めているとさまざまな場面にふわっと誘われていきます。

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描かれるものの表情や仕草の瑞々しさ、清々しさがとにかく心地よく響きます。

大きな画面いっぱいに描かれる、さまざまな木々や草がひしめくように生えるどこかの場面。鬱蒼としていながらも、天上から射し込む淡くて繊細な光が神々しい雰囲気を導いて、そこで右手に持つじょうろを振りかざす女の子の後ろ姿の可憐さに、さらにおおらかに舞うようにして撒かれる水の飛沫の輝きに、なんとも言えない独特の空気感を感じ、その儚げな感触になぜだか胸が詰まります。

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今回の個展でも、確か東京でのと同じく、壁に作品タイトルが鉛筆による手書きで記されています。これがまた...。

天真爛漫な絵の具の広がりとは裏腹に、ちょこんと添えられるかわいらしい文字が、無垢な雰囲気をさらに押し上げ、高めているようにも思えます。

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今回出品されたなかでもっとも大きな作品、これと対峙した瞬間、思わず涙腺が刺激されてしまったほどの臨場感。

激しい筆遣いや画面を垂れる絵の具がもたらす大胆なテクスチャー、ところどころに現れる、そこだけグラデーションを消してしまったかのように強い存在感を放つ黒の影。鬱蒼とした雰囲気は先に紹介した作品と比べていっそう深遠になって、そこにただ佇む女の子の後ろ姿を目にして、そこに漂うただならぬ深い影と、心に満ち溢れるさまざまな想いに、なんだか不思議と切ない気分に...曖昧なんだけど、感覚的にその淋しさやかなしみが分かるような気がして。。。

そして添えられたタイトルを目にして、さらにグッとくるんです。

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奥の一角は小品などもたくさん展示され、いっそうバリエーションに富んだ独特の雰囲気に満ち溢れています。

向かい合わせに展示されるほぼスクエアの大作、こちらは全体を覆う紫色が心を一気に引き込みます。

その深く妖し気な色彩を背景に浮かぶさまざまなモチーフ。優雅に走る馬車、こちらを覗くように見る熊、花の群れ、飛ぶ鳥のシルエット、画面を飾る玉の列。また絵の具の滲みや垂れも、幻想的な雰囲気を深めることに一役買っているように感じられます。

おそらく主人公はベッドに落ちていく女の子なんだろうなぁ、ここに描かれている世界は夢のなかなのかも、と想像しつつ。

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さらに向かいの壁面に展示された作品も、独特の幻想性をたたえます。

不思議な重力感、家があって庭があって噴水があって、女の子たちや動物たちがいて。

その空間だけを眺めていても充分にその情景に導かれていくのですが、さらに俯瞰したときに見えてくるさまざまな要素、主に花や葉なのですが、まるでこの空間が浮かび上がっているかのような、宇宙的な世界観も伝わってきて、そのスケール感を思い起こさせる力にも驚かされてしまいます。

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さらに小品など、ひとつひとつが放ち、奏でる情景の雰囲気におおいに惹かれます。

シンプルなものからある具体的な世界観をその画面のみで語り尽くしてしまっているかのような強いインパクトをそなえるもの、ユーモアがにじみ出ているものなど、作品ごとの性格はさまざまですが、やはりすべては小沢さんが創り出す物語の一遍のように思えてきて、眼前の色彩の味わいにさらに大きな喜びも湧いてきます。

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とにかく感謝したい展覧会です。

続けて拝見していくうちにその世界観の広がりや深みに入り込み、そこかしこに存在する豊かな表情を見付けていく度に、さらに深いところへと誘われていくんです。

全体から奏でられる、浮遊感に満ち、やわらかな膨らみをそなえる情景、それらが紡ぎ出す繊細な物語。そこかしこに発見もあって、そのひとつひとつが見つかるとこちらにやさしく微笑んでくれそうな風合いもまた嬉しかったり。

いわゆる具体的な、という点では饒舌ではないのですが、自然とそこに横たわる時間に心を委ねて、心をよぎるさまざまな想いに浸るのが心地よいんです。

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桂典子“このこたちのカルナヴァル”

Gallery Art Composition

東京都中央区佃1-11-8 ピアウエストスクエア1階

5/30(土)~6/13(土)日祝休

11:00~18:00

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NORIKO KATSURA

"Le Carnaval de ces Enfants"

Gallery Art Composition

1-11-8-1f,Tsukuda,Chuo-ku,Tokyo

5/30(Sat)-6/13(Sat) closed on Sunday and national holiday

11:00-18:00

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ああ!

騒がしい!

この騒がしさが堪らない!

Gallery Art Compositionでの桂典子さんの個展、凄まじい描き込みがとにかく賑やかな世界観を生み出していて、痛快に途方に暮れてしまった次第。

入り口からいきなり立体のアプローチも取り込まれた楽しいインスタレーションがお出迎え。

画面から溢れ、壁を伝い、テーブルの上でうごめくモチーフは、一瞬

お前ら落ち着けぇぇ!Σ( ̄口 ̄;)

と思いつつも、やはりその賑やかさに楽しい気分にさせられます。

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画面にもたらされる圧倒的な情報量。

描かれるあらゆるものに顔がいちいち緻密に描き込まれて、色合いの落ち着いた感触とは裏腹に、実に騒々しく賑やかな情景が作り上げられていて圧倒させられます。

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聳える珊瑚を思い起こさせ、そこに集まるさまざまな生物、そんなイメージが力強く引きずり出される作品。

色彩のバリエーションの多彩さも、ひときわ目を惹きます。

そしてそれ以上に、無数の生命の存在が強烈に濃密な気配を生み出していて、その暑苦しい感じというか、画面に留まらないスケール感に呆然とさせられるんです。真ん中にドーン!と描かれる巨大な顔の

可愛いのか貴様!Σ( ̄口 ̄;)

可愛く見えるじゃないかチクショウ!Σ( ̄口 ̄;)

的な強烈な存在感に、そしてそのまわりをキャァキャァとざわめきながら漂う混沌に

うるさい!Σ( ̄口 ̄;)

落ち着け!Σ( ̄口 ̄;)

と脳内が大変なことに。

むしろ落ち着け俺、的な感じな訳ですが、とにもかくにもこの賑やかさは堪らないんです。

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食卓を描いた作品は、桂さんが創り出す世界観の真骨頂が展開されます。

食物のすべてが持ちあわせていたはずの生命、それらの存在をふたたび考えさせてくれるような深い感触も織り交ぜながら、やはり凄まじいまでに騒がしい情景が、一切の隙を残さず緻密な筆致で描き切られていて、その密度に引き込まれます。

さらに、ひとつひとつのモチーフに描かれる顔のなんとも愛らしい、時にグロテスクでもあるんですけど、憎みきれない感じもまた。。。

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小品も楽しいです。

登場する顔の数は少ないものの、それでも失せない騒々しさ。

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もっとも大きな作品、これまででも充分にうるさくてもう勘弁、という思いを許さないのか、ダイナミックに描かれる洋風のおつまみが描かれたテーブルで、さらに騒がしい情景が描き上げられていて圧巻。

よくぞ描きました!的な情報数、そして密度にただただ感服。なんでしょうかこの心地よい敗北感は(笑)。

なんだかもうひっきりなしにペチャクチャペチャクチャペチャクチャペチャクチャ.....としゃべりまくる無数の声が聞こえてきそうで、

分かった分かった!Σ( ̄口 ̄;)

分かったから!Σ( ̄口 ̄;)

と、もう降参。この凄み、密度には完全に白旗を掲げた次第でございます。

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あわせて展示されていたペン画も楽しい!

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遊び心をふんだんに含んだ緻密な描き込みのドローイングがずらりと並んでいます。

機械の奇妙さ、動物の表情の豊かさ、ひとつのモチーフを構成する線の数と密度に引き込まれ、ペインティングにおける描き込みの尋常でない感じが可能なのも道理、なるほど、と納得させられます。

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既にペインティングとしての重厚感を作り上げているように感じられる桂さん、これからいったいどうなっていくんだろう、と興味もわいてきます。

すべての作品で「描き切る」ということが達成されているように思えて、密度はどこまでも濃いのですが、清々しさも伝わってきます。

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椛田ちひろ椛田有理 二人展 断続的対話 -Intermittent communication-

ART TRACE GALLERY

東京都墨田区緑2-13-19 秋山ビル1F

5/31(日)~6/21(日)木休

12:00~19:00(金:~21:00)

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Chihiro Kabata Yuuri Kabata -Intermittent communication-

ART TRACE GALLERY

東京都墨田区緑2-13-19-1F,Midori,Sumida-ku,Tokyo-to

5/31(Sun)-6/21(Sun) closed on Thursday

12:00-19:00(Fri:-21:00)

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それぞれ異なるモノクロームの世界を展開する椛田姉妹の展覧会に行ってきました。

入り口付近にまず、おふたりの小品が小気味よく展示されていて、お互いの個性が軽やかに提示されていて、ステキな導入が作り上げられていました。

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おなじ空間での個展を拝見している、椛田有理さん。波打ち際の光景を、あるいは切れ間がどこまでも連なる空と雲とを、グラデーションを排除して白と黒とでシャープに描ききってしまったかのような、力強いモノトーンの情景が導き出されています。

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画面に横たわる黒と白。さまざまな奥行き感、ゆかたなスケール感、空間性が脳裏に浮かんできます。

その一方で、画面表面の艶やかな仕上がりや顔料の盛り上がりなどの素材の質感が生々しい臨場感を濃密に放出して、その力強い感覚にも引き込まれます。

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椛田ちひろさんの作品は、とにかくその尋常でない仕事の量に圧倒されます。

画面の黒い部分を覆い尽くす、ボールペンの線。束にして握ったボールペンをひたすら画面に走らせ、黒のインクを押し込むようにして描かれる作品は、アバンギャルドな混沌が騒々しく響いているように感じられます。

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ボールペンだけでなく、さまざまなアプローチが持ち込まれ、素材が重ねられることで独創的なマチエルが導き出されているのも興味深いです。

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用いられる素材を失念してしまってもどかしいのですが、顔料の盛り上がりがあり、それをボールペンが押しつぶして、ユニークな立体感が生み出されています。

さらに、鏡面のような艶やかさも妖しい奥行き感を醸し出します。そこがあたかも異界への入り口のように存在していて、その奇妙な感覚にも惹かれます。

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会期中に行われていた共同の公開制作も興味深かったです。

厚めのアクリルボードの表裏にそれぞれのクリエイションが描き出され、テクスチャーのコントラストも面白いリズムとなって現れているように感じられ、またお互いげ描き出す情景の響き合いが生まれる過程、制作途中の臨場感も印象に残っています。

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姉妹でのユニットとしての活動も楽しみです。

それぞれがもたらす情景は、動線も、時間のイメージも、精緻な部分で何もかもが異なっていながら、一方でモノクロームであることの統一感がしっかりと存在していて、それがユニークな響きを導き出しています。

対として眺めていると、お互いが描く世界が「部分」と「全体」の関係(しかも、それぞれどちらにも解釈できるんです)を思い起こさせたり、テイストの差異の衝突がさらに新たなイメージの創出を促したりと、無限の広がりが生み出される可能性が横たわっているように思えます。

次の展開、より大胆なものを期待してしまいます!

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窪田美樹 個展「かげとりと、はれもの」

hpgrp GALLERY 東京

東京都渋谷区神宮前5-1-15 CHビルB1F

6/5(金)~6/28(日)月休

11:00~20:00

Miki Kubota -Deshadowd and swelling-

hpgrp GALLERY Tokyo

5-1-15-B1F,Jingu-mae,Shibuya-ku,Tokyo

6/5(Fri)-6/28(Sun) closed on Monday

11:00-20:00

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進化する解釈。深化する彫刻。

hpgrp GALLERY 東京での窪田美樹さんの個展です。

「見えないところを表出する」という感じのユニークでストイックな作風、今回はそこに新たなアプローチの作品も発表され、いっそうクリエイティビティが孤高へと向かったような印象を受けた次第です。

昨年のshiseido art eggなどでも発表された、家具を削り出す作品。

木製の椅子を切り、隙き間を埋め、新たな平滑面を創出することで斬新な美しさが提示されています。

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思いもよらぬさまざまな表情が生み出されていて、もとのかたちとのギャップがさらに深遠なイメージを思い起こさせてくれます。

背もたれだった部分、彫り上げられおおらかな弧がもたらされ、組み上げられた角材の空間を埋めるベニヤの板とパテ。そこには、少なくともその椅子よりも具体的なかたちは存在せず、ほぼ無意識的に、ただ「埋める」「削る」という作業をストイックにおこなったことで表出されている抽象的な情景が現れ、さらに、生々しく提示される素材の質感との硬質なギャップが深いイメージの想起を促してくれます。

そこには実に単調な、敢えて意識を遠ざけ、無にするような印象を思わせるアプローチが繰り広げられていながら、だからこそのピュアな美しさがもたらされているようにも感じられ、興味深く思えます。

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おそらく観音開きの衣装タンスが基となっている作品。

こちらにもアクロバティックなアプローチが注ぎ込まれていて、分厚い時空のイメージが創出されているように思えます。

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ただ、おそらく感覚的に削られている部分。

展示では棚のように出っ張る部分に渋いブルーやピンクのパテが微妙な空間を埋め、削られて、そこからはあたかも別の時空が現実空間を削り取った痕跡のような重厚で深遠なスリルが伝わってきます。

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そしてこの作品におけるインパクトは、なんといっても作品を緩やかに貫く数珠状の木製の球の群れ。

ひとつの列となって、端から端へと球体が連続し、板を通過する部分ではそれらは板のなかに入り込んでいて、その状況のシュールさに思わず後ずさりしそうなほどの妖しく危ない気配、凄まじく冷静な狂気を感じます。

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こうやって提示される作品にもたらされている空間性の尋常でない密度に感嘆させられる次第です。

隙き間を埋め、表面を削ることで本来見えない部分を表出させる、という行為。見えない部分が見えるようになったときに、見えている景色は本来はいったいどの地点から眺めているのだろう、という想像が始まると、次第にその立ち位置の解釈の斬新さに唸らされます。

窪田さんの作品が見せる光景は、こうやって削られることで見えてきてはいるものの、あらためて考えるとたまたま家具の状態だと「見えない」だけで、存在しているわけで、だとすると、こうやってストイックな行為によって導き出された光景は、CTスキャン的なイメージに拠ってみると実際は無限に存在するということになり、それが眼前に「もの」として存在する作品に秘められる情報の膨大さに、あらためて圧倒されるんです。

そしてこの作品には、今度はこの立体造形をひとつの空間として捉え、そこを木の数珠が通過することで臨場感を伴って強烈に、そして静かに提示されているように感じられ、皿に斬新で複雑な三次元(もしかしたらさらに高次元)のイメージの世界へと誘ってくれるような気もしてきます。

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今回の個展で発表されている新たなシリーズは、これまでの「埋めて削る」作品と比較すると実に騒々しい表面の質感を晒しています。

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これまでとは圧倒的に異なる、より生々しい有機的な感触。

二人掛けの椅子が丸められた紙に覆われて、あらたな造形が導き出されているのですが、この紙は椅子の表面の布の模様と、おそらくその骨組みとして内側にある木材の表面とが裏表にプリントされているものなのだそう。

この椅子の内外の表面の柄に覆われ、しかもそれがくしゃくしゃと丸められることでさらに無数の平面の交錯を生み出しているように感じられ、凄まじく複雑なイメージが脳内に増殖していきます。

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プリントの艶やかさや色見の有機的な感触から、過剰なまでに実に生々しい色彩感に包まれていて、ぱっと目にした瞬間はグロテスクなインパクトに襲われるのですが、じっくりと対峙しているとここから滲むイメージの深みに加え、やはり造形としての美しさにも気付かされます。

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事務所のスペースにも数点の脅威深い作品が。

重箱の作品を拝見すると、このストイックな手法はイメージの深遠さだけでなくしっかりと美しさも導き出すことができる、ということを力強く提示してくれているように感じられます。

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そして、平面作品が大変興味深いです。

立体作家、三次元での表現を主戦場として制作されているアーティストの平面作品はいつも刺激的なのですが、窪田さんもその例に漏れず。

グラビアかなにかの画像を色で埋め、新たな空間のイメージが提示されていて、一貫するアプローチのユニークさが面白く感じられます。

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今回はメインスペースではまったく異なる肌合いの作品が2点ずつ展示されているのですが、これだけ激しく差異のある作品でありながら、窪田さんが制作されたものとしての説得力は大変強く伝わってきます。

全体に横たわる雰囲気は静謐そのものです。しかし、作品から放たれるイメージは刺激に富み、分厚く斬新な空間性が体感できるように思えます。

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始まった今年度のTWS-Emerging、その最初に、3名のフレッシュな個性がフィーチャーされています。

TWS-Emerging 116 福島沙由美「鏡游掬~きょうりさらい~」

トーキョーワンダーサイト本郷

東京都文京区本郷2-4-16-2F

6/6(土)~6/28(日)月休

11:00~19:00

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TWS-Emerging 116 Sayumi Fukushima / The unreal image is replaced with the collection real image.

tokyo wonder site Hongo

2-4-16-2F,Hongo,Bunkyo-ku,Tokyo

6/6(Sat)-6/28(Sun) closed on Monday

11:00-19:00

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2階の広い展示室は、Gallery Qでの個展も印象的だった福島沙由美さんの個展。

お馴染みのモチーフで、さらに縦長の画面と爽やかな透明感が引き立つ青の画面が並び、統一感ある清々しい空間が創り出されています。

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ひとつひとつの画面にていねいに施される、水泡を思わせるおおらかで豊かな、そして繊細な陰影。それが空間的な表情をよりいっそうの独特の深みへと導いているように思えます。

そこに映り込む花の表情も、瑞々しさや可憐さが引き立てられるかのようにしてていねいに描き上げられていて、その美しさに引き込まれていくんです。

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不思議な空間性がそれぞれの画面にもたらされていて、その緩やかな重力感に心を委ね、ほどよくひんやりとした心地よい気分に浸って・・・。

描かれる花とともに浮かぶような感触。それを視覚から感じ取っていきながら、たゆたう儚げな気配にも惹かれます。

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1点1点の作品に秘められた繊細さ、水のかたちという際どいバランスが保つ瑞々しくも儚げな美しさ、そしてすっと入り込んでいってもしかしたら帰れないかも、というやさしいスリルを伴う奥行き感。沸き起こるいろんなイメージはひとつひとつがやわらかくて、保たれる絶妙なバランスに感じ入る次第です。

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福島さんの個展は展示替えも行われるとのことで、6/16より異なる空間が創り出されているようです。そちらもぜひ拝見したいです。

パーテーションで区切られる3階では、手前で諏訪奈都美さん、奥で坂本紀恵さんが紹介されています。

TWS-Emerging 118 諏訪奈都美:anima

トーキョーワンダーサイト本郷

東京都文京区本郷2-4-16-3F

6/6(土)~6/28(日)月休

11:00~19:00

諏訪奈津美090606.jpg

TWS-Emerging 118 Natsumi Suwa "anima"

tokyo wonder site Hongo

2-4-16-3F,Hongo,Bunkyo-ku,Tokyo

6/6(Sat)-6/28(Sun) closed on Monday

11:00-19:00

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溢れる色彩、そのひとつひとつの強い存在感。

エッジの立ち上がりに厚みがあるように感じられる色が重ねられて描かれるさまざまな風景は、情報量の多さとも相まって力強く、そして静かに迫ってきます。

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独特の色調が描かれる風景の空気感に作用し、幻想的なイメージを導きだしているように思えます。

樹木の表面の凹凸やたくさんの花弁を持つ花など、大胆で豊かな色調の解釈でうねるような混沌が、しかし実にていねいに、繊細に紡ぎだされていて、全体から感じる厚みと裏腹の細やかな感触に心地よい戸惑いを覚えます。

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くっきりとした色面による構成は、独特の立体感を生み出しているように思えます。

今回展示されている作品の中で唯一の静物画的な作品で、背景に配されるパターンのリズミカルなアプローチは何層にも重なって揺らめくような奥行き感が紡ぎだされているように感じられます。そしてそこに浮き出すように存在する花瓶と花、さらにその奥に潜む鳥。なんとも不思議な物語性が滲み出てきているように感じられて静かな嬉しさが沸き起こってきます。

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タイトル通りに動物がモチーフとなった作品が多く展示されていて、その独特の雰囲気にも引き込まれていきます。

画面ごとにもたらされる色調の中に潜むようにして描かれる動物や鳥たちの表情は、ときに鋭さを持ち合わせていて、見付けて目が合う瞬間のスリルが鮮烈に立ち上がってくるものも。

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小品や楕円の画面の作品も空間にアクセントをもたらします。

揺らめきをも綴っていく色のかさなりと全体的に暗いトーンが、鬱蒼とした雰囲気を思い起こさせ、それが空間的なインパクトも生み出しているように感じられ、そこに入り込んでしまったかのような錯覚もまた楽しいです。

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さらにインスタレーションとしての遊び心もふんだんにちりばめられています。

意表を突くところに動物が突如として佇んでいたりするんです。

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ある具体的なイメージをもたらす諏訪さんの展示から一転、今度は情動的な抽象の世界が待ち受けています。

TWS-Emerging 117 坂本紀恵「明滅する都市と、それをのみ込む大なまず」

トーキョーワンダーサイト本郷

東京都文京区本郷2-4-16-3F

6/6(土)~6/28(日)月休

11:00~19:00

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TWS-Emerging 117 Norie Sakamoto / a flicking city and a big catfish

tokyo wonder site Hongo

2-4-16-3F,Hongo,Bunkyo-ku,Tokyo

6/6(Sat)-6/28(Sun) closed on Monday

11:00-19:00

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力強い抽象世界が迫ります・・・!

薄暗い照明のなかに、情動的なストロークが荒れ狂い、そしてその奥に隠される色彩とのコントラストがさらに動的なイメージを煽ります。

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入り口正面に現れる大作の迫力にも、一気にのみ込まれます。

大きな画面をダイナミックに横切っていく筆跡、刹那そこに現れるゆらゆらと揺れる線、絡み合う螺旋の上昇感、唐突に現れる「顔」。いっぱいのクライマックスとアクセントが溢れ、衝突し合い、凄まじいエネルギーが放出されているように感じられ、しかし同時に内面的で、その閉じたなかでの無限、狭さ故に抑えられずに膨らんでしまった情動と衝動が嵐のように展開されているようにも思えます。

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エネルギーという点においては、画面の大小が差異を生み出すことは内容にも感じられるのも痛快です。

焦燥をそのままぶつけたかのような激しい筆致は、奥に収まる冷静なストライプの上でさらにアグレッシブさを増して現れているように感じられます。

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そして、その荒れ狂う世界観とは裏腹に、壁面に貼られるほんのわずかなテキストの存在感が静かに感性を突き刺してきます。

情動と冷静とが混在する空間が、さらに複雑な混沌へとイマジネーションを導いていくような気もしてきます。

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それぞれの画面から奏でられる。抽象的でありながらもざっくりと紡がれる物語性にも惹かれていきます。

もっといろいろと拝見してみたい、今後の展開も楽しみなクリエイションです。

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《6/12》

近藤未奈展「たとえば、こんな時間」

@Gallery銀座フォレスト

東京都中央区銀座1-9-8 奥野ビル507

6/8(月)~6/13(土)

12:30~19:00(最終日:~17:30)

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久し振りの近藤未奈さんの個展、前回のステンシルでていねいに色とモチーフが軽やかに散りばめられたかわいい作品から一転、筆のストロークの動きを活かしたようなテクスチャーが印象的な小さなペインティングが並んでいました。

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身近な情景が描き上げられて、さらに微妙に歪んでいる感じが、そこにさまざまな感情がたゆたうような雰囲気をもたらします。

やさしくてあたたかみがあって、そして仄かに淋しさを感じさせてくれます。

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ラルフ・ペーターズ

BASE GALLERY

東京都中央区日本橋茅場町1-1-6 小浦第一ビル1F

5/25(月)~6/30(火)日祝休

11:00~19:00

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さまざまな風景をデジタル加工し、余白を大胆にもたらす写真作品が並んでいます。

画面下部に低く収まる雄大な景色やきらびやかに電飾が輝く夜景、それらと上方に広がる圧倒的な余白が、さらに壮大なスケール感を生み、同時にその場面に存在しているはずの人の気配が極限まで抑えられ、無機的な空気感も放たれているような感じがして、フュ^チャリスティックな感覚に満たされます。

また、文字情報などが消されたスタンドの写真も不思議な静けさが広がっていて印象に残ります。

倉重迅展「Hollow Point」

MIZUMA ART GALLERY

東京都目黒区上目黒1-3-9 藤屋ビル2F

6/12(金)~7/11(土)日月祝休

11:00~19:00

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ふたつの空間にひとつずつのインスタレーション。

映像と、そのなかに収められるモチーフとが対になっているのですが、

そこか!Σ( ̄口 ̄;)

そこにもっていくか!Σ( ̄口 ̄;)

という痛快な展開、クライマックスというかツボの位置の大胆さにやられます。

大島梢展「図鑑」

ミヅマ・アクション

東京都目黒区上目黒1-3-9 藤屋ビル5F

6/12(金)~7/11(土)日月祝休

11:00~19:00

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緻密な筆致で様々なモチーフを詰め込むようにして描き、妖しく深いダイナミズムを創出する大島梢さんの個展。

今回は今まで以上に大胆に「色面」での展開が繰り広げられていて、その色の豊かな透明感やファンタジックな気配が強く印象に残ります。

《6/13》

貴志真生也「リトル・キャッスル」

Kodama Gallery

京都府京都市南区東九条柳下町67-2

5/30(土)~7/11(土)日月祝休

11:00~19:00

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1階と2階との内装も完了し、いよいよ本格稼働の京都の児玉画廊、前回の展覧会は観に行くことができなかったのですが、今回はそれぞれの階で若手のアーティストがフィーチャーされ、空間が持つポテンシャルが存分に活かされ、伸びやかに個性が発揮されていて痛快な展覧会が行われています。

その1階は貴志真生也さんのインスタレーション。

ビニールソシートやベニヤ板、角材、発泡スチロールなどで作り上げられる空間は、ご覧になられる方ごとにさまざまなイメージをもたらすようなのですが、僕は「弔い」のイメージが思い浮かんだ次第。ざっくりとモノの質感をそのままに残しながら、それぞれに自然に意味を汲み取らせてしまうような展開は大変興味深いです。ファイルも拝見し、面白い作品も多くて、今後の展開も楽しみです。

Kodama Gallery Project 18 関口正浩「うまく見れない」

Kodama Gallery

京都府京都市南区東九条柳下町67-2

5/30(土)~7/11(土)日月祝休

11:00~19:00

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2階は平面作品。児玉画廊がピックアップする若手の抽象表現には毎度その強烈な個性にやられてしまうのですが、この関口さんも例に漏れず。

湯葉のように薄く伸ばして硬化させたシート状の油絵の具をキャンバスに敷き重ねて、実に興味深い、絶妙の緊張感を発する画面が創出されています。

西山裕希子展「鏡のすき間」

PANTALOON

大阪府大阪市北区中津3-17-14

6/7(日)~6/28(日)月火休

水~金:17:00~21:00、土日:12:00~19:00

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アートコートギャラリーでのグループショーでも拝見している西山裕希子さん。そのときも仄かな気配と意味深な雰囲気を醸し出すコンパクトなインスタレーションが展開されていて印象に残っているのですが、今回もそのときに発表されていた作品も再登場し、染色の清々しさも活かされた独特の線描作品がもとからの空間の爽やかさと相まって、心地よい響きを生み出しています。

田中奈津子

MEM

大阪府大阪市中央区今橋 2-1-1 新井ビル4階16号室

6/13(土)~7/4(土)日月祝休

11:00~18:00

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「銭湯」をテーマに、ユーモラスな場面が描きあげられています。

そのコミカルな雰囲気の心地よさとともに、色の鮮やかさや随所に施されている立体的なアプローチなどの要素にも嬉しくなってきます。

大阪・ハンブルク友好都市提携20周年記念事業 現代美術交流展 TWINISM

AD&A gallery

大阪府大阪市西区京町堀1-6-2

6/6(土)~6/21(日)木休

13:00~20:00

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東京とハンブルグとで開催されているユニークな企画展。

離れたふたつの場所で、参加アーティストは同じ作品を提供。一卵性双生児的な関係性を持つ空間が創りだされているとのことで、それに思いを馳せるとなんとも不思議な気分になってきます。

SCAI THE BATHHOUSEでの個展も印象的だった小笠原美環さんの深遠な雰囲気を奏でるペインティング、ひたすら、今風に言うところの「エアビンタ」を食らい続ける男の映像がなんともシュールな稲垣智子さんの作品、川辺ナホさんの黒い水滴の抽象性が謎めいた時間を紡ぐ映像作品など、心に引っかかりをもたらすクリエイションが独特の気配を生み出しているなかで、もっともインパクトを受けたのが谷口顕一郎さんの作品。

路面、もしくあは壁面に生み出された凹みを象った黄色いプレート、とにかくかっこいい!

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かたちの面白さがそのまま取り込まれ、そこにさまざまな細工を施しながら、シャープな抽象性を引き出しています。実に緻密に、その意図されずに生まれたかたちが再現されることで、フォルムの説得力も強固に提示されていて、ただそのかたちの面白さに好奇心が膨らんでいきます。

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台上に置かれた作品も面白いです!

これも同様にへこみがモチーフとなっていて、それを分解し蝶番でふたたび接合、関節が生まれたプレートを折り曲げて台の上に乗るように組んである、というもので、平面が立体へと置き換えられる面白さに加え、蝶番の関節のメカニカルなテイストも加わり、より無機的なインパクトが生み出されていて、そのかっこよさにイマジネーションも大いに刺激された次第です。

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なんでも今年の初めに同ギャラリーで個展が開催されていたとのこと。谷口さんは今展覧会への参加でも分かるのですがドイツ在住で、その時も来日はされていないそうなのですが、このクリエイションに満たされる空間をチェックできなかったことを知り、今更ながらに悔やんでいまして...。

また、昨年の岡本太郎賞にも出展されていたらしく、そのときの記憶もなく。。。

ぜひしっかりと拝見したいクリエイション、今度こそちゃんと見逃さないようにしないと!

《6/14》

平川暁朗「嘘つきの宇宙を飛びたがった獣」

GALLERY はねうさぎ

京都府京都市東山区三条通り神宮道入ルホリホックビル2F

6/9(火)~6/14(日)

12:00~19:00(最終日:~17:00)

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カラフルな色彩がふんだんに用いられ、随所に細密な描き込みも施されるシャープなファンタジックワールド。

独特のスケール感と雰囲気が、鮮やかな色彩感と相まってユニークなインパクトを生みだしています。

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文字なども織り込まれた作品では、ユーモアもそこに加わり、より妖し気でポップな混沌が導きだされているように感じられます。

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さまざまなサイズの作品、さまざまな色彩のものが展示されていて、それぞれの画面に紡ぎ上げられる細やかな描き込みとシュールでアバンギャルドな物語性、そして大胆な実験性が、複雑な奥行き感をもたらしているように感じられます。

またぜひ拝見したいクリエイションです。

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小沢さかえ「珠玉のポエジー」

MORI YU GALLERY KYOTO

京都府京都市左京区聖護院蓮華蔵町4-19

5/30(土)~7/5(日)月火祝休

12:00~19:00

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東京での個展から約半年という短いインターバルで開催の、小沢さかえさんの個展。

何が嬉しいかって、今回もすべて新作!

大作から小品までさまざまなサイズとかたちの画面のなかで繰り広げられている場面や気配はさらにファンタジックに、そしてやさしく深く、いろんな心の動きや表情も思い起こさせてくれるピュアな佇まいであの独特の世界観が展開されています。

松井沙都子展『a ghost』

neutron kyoto

京都府京都市中京区三条通烏丸西入ル 文椿ビルヂング2F

6/9(火)~6/14(日)

11:00~23:00

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昨年の大阪での個展も印象的だった松井さん。

今回は京都ニュートロンのユニークな空間で、そのフューチャリスティックな雰囲気と相乗効果を生み出すようなシャープな構成と色調とで描き上げられた作品が並べられ、その個性もより際立って感じられた次第です。

入り口側の壁面に展示された対の線描。抽象性が興味深い面白味を醸し出しています。

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メインは大きな作品で、腕や手、裾などを思い起こさせるモチーフが、ぎりぎりでそのイメージの具体化をかわしていくような絶妙の曖昧さがで描き込まれ、また背景にパール色が採用されて大きな水玉模様も配されて、シャープな奥行きも生み出していて、その鮮烈な静謐に引き込まれていきます。

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ステンシルやマスキングが採用されているようで、描かれるモチーフのエッジの立ち上がり方も整然としたイメージの創出を促し、さらに落ち着いたリズム感を思い起こさせてくれているように感じられます。

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おかひろし個展「浮動する風景」

Antenna AAS

京都府京都市西京区川島粟田町18-23

6/7(日)~6/21(日)土日のみ

12:00~20:00

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ANTENNAの元メンバーで、今年初めのTSCAでの展覧会では通路のスペースに展示された平面作品で、お札に覆われた画面に工場や住宅などを律儀な線描と幾何学的な構図で描いていたおかさんの個展。

若干うろ覚えなところがあるのですが、自身が過ごしたさまざまな場所の景色を組み合わせ、台上に配置して構成されています。

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律儀なまでに保たれる角度が、冷静な感覚をもたらしているように感じられます。

そしてそれが独特の知性とユーモラスとが響き合う風合いを生み出して、眺めていても有る距離感を保ちながら、そこから意識が入り込んでいくような感じが心地よいです。

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アクロバティックな展示方法も新鮮に感じられます。

脚立に乗っ双眼鏡で眺めるのもまた楽しかったり。

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visible and invisible mixed media+painting 岡山愛美 後藤真依 柴田精一 唐仁原希 待場宗生 宮崎浩太 八木良太

MATSUO MEGUMI+VOICE GALLERY pfs/w

京都府京都市南区東九条西岩本町10 オーシャンプリントビル/OAC1F

6/13(土)~7/5(日)月休

12:00~19:00(最終日:~17:00)

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先月の写真作品を集めたパート1も面白かったこの企画。

そのときは特にYUKARINAさんのドキッとするような斬新な展開のインパクトと物語性の深みが印象に残っているのですが、今回はざっくり言うと写真以外のクリエイションが一堂に会し、フレッシュな感性が豊かな空間を満たしています。

ペインティングは3名、まず今年の101 Tokyo COntemporaray Art Fairでもひときわその色の鮮烈さが印象に残っている後藤真依さんの作品の強烈な存在感に思わず後ずさり。

ヴィヴィッドなオレンジの色調で、女の子の半身がダイナミックに描かれていて、その強烈さに圧倒されます。

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唐仁原希さんのペインティングは、後藤さんのと同様に赤系統の色調な印象に残りますが、そのなかに描かれる幻想性、ファンタジックなテイストが繊細で儚げな物語性を醸し出しているように感じられます。

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発色の鮮やかさと深み、そこに描かれる女の子の大きな目。

キャラクターのナイーブな個性の立ち上がり方に、妙に引き込まれるんです。

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宮崎浩太さんは一転してサディスティックな筆致でアバンギャルドな景色を描いた作品で、空間の一角を支配しています。

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どこかおどろおどろしさをたたえるモチーフをダークな色調で描いていながら、なんだか滑稽な感じも滲んでくるという...。

不思議なテイストが心に引っかかりをもたらします。今後の展開が気になるクリエイションです。

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他のクリエイションも興味深いです。岡山愛美さんのブラインド越しに上映される映像のもどかしさ、八木良太さんの独特の切れ味の映像作品、柴田精一さんの緻密な切り紙で壁面全体で展開されるインスタレーション、待場宗生さんの不思議な存在感を醸し出す空間性、それぞれの個性がこれからの展開を期待させてくれます。

《6/18》

木原千春

シブヤ西武 B館8階 美術画廊

東京都渋谷区宇田川町21-1

6/9(火)~6/21(日)

10:00~20:00(木金土、6/17、6/21:~21:00)

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ダイナミックな筆遣いが壮大な情景を導きだす木原千春さんのペインティング。

今回はそこに緻密な筆遣いが加味され、さらにモチーフとしてエキゾチックなものが多く採用されて、これまでとは異なる展開が楽しいです。

特に風神雷神図は圧巻!

L_B_S 名和晃平

@メゾンエルメス 8階フォーラム

東京都中央区銀座5-4-1

6/19(金)~9/23(水)7/15、9/16休

11:00~20:00(日:~19:00)

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圧巻の空間が創出されています。

お馴染みのシリーズのもの、僕は初めて拝見できたのですが久々の登場となる作品、そして六本木クロッシングでも発表されたSCUMの新展開と、それぞれに見応えがあり、また上からも眺められる面白さも加わって、さまざまな角度からその力強さが堪能できるのが嬉しいです。

《買ったCD》

Movements in Colour」Movements in Colour

Sky & Country」Fly

「BOYS,BE ANBITIOUS!」井上敬三(中古)

「ありあまる富」椎名林檎

《買った本》

「少女七竃と七人の可愛そうな大人」桜庭一樹

「神去なあなあ日常」三浦しおん

今回のOTA FINE ARTS、日韓のふたりのアーティストが、それぞれ個展形式でフィーチャーされています。

それぞれに圧倒的で独創的な世界観が展開されていて、そのコントラストも大変興味深く響いているように思えます。

イ・スーキョン

OTA FINE ARTS

東京都中央区勝どき2-8-19-4B

5/30(土)~7/4(土)日月祝休

11:00~19:00

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Yee Sookyung

OTA FINE ARTS

2-8-19-4B,Kachidoki,Chuo-ku,Tokyo

5/30(Sat)-7/4(Sat) closed on Sunday,Modnay and national holiday

11:00-19:00

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エレベーターの扉が開いた瞬間。

暗い照明設定の展覧会が多いこの空間にあって、それが真逆の方向に振り切られた、圧力をも感じるような明るさが一気に迫ってきます。

吊られる蛍光灯の下に並ぶ金継ぎされた陶器群。その存在感は思わず後ずさりしてしまいそうなほど。

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7月から開催される丸亀市猪熊弦一郎現代美術館での「Double Fantasy 韓国現代美術展」も控えるイ・スーキョンさん。まず、割れた陶の欠片を金継ぎで再構築し、新たに生命が吹き込まれたオブジェがずらりと並べられているインスタレーション。

この強い照明の意図は、スポットでは雰囲気が立ち上がりすぎてしまい、このオブジェが持つ本質的な美しさを逆に隠してしまうから、とのこと。実際に欠片として取り込まれている陶のパーツの艶が白い光を浴びてその力を発揮し、金の高貴さもシャープに表出され、ポジティブな美しさが鮮烈に引き出されているように感じられます。

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さまざまな欠片が組み上げられ、あらたな造形として現れたそれぞれのオブジェ。そこにはほんのりと遊び心のようなものも軽やかに奏でつつ、その一方で「破片を接ぐ」という仕事への一切の感情を抑え込んだ姿勢、そのストイックさも伝わってくるような気もしてきます。

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接がれて絵柄が新たな関係性を導きだしているのも大変興味深いです。

細かく割れてしまった欠片のなかに描かれる風景は、その小ささ故に天地の感覚が失われ、意味が喪失され、反比例して抽象性が立ち上がってきています。そして、そういったモチーフが金で繋げられていくことで、さらに混沌とした気配が紡がれていくような印象も覚えます。

無論、かたちの繋がりとも相まって、そこに新たな意味や存在の意義が吹き込まれているように思え、感じ入る次第です。どこまでも深遠なイメージに沈み込んでいきます。

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一転して平面作品には凄まじい情動が溢れます。

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大きな画面を這う無数の赤い線。

その色がダイレクトにアグレッシブなイメージへと転化され、混沌とした世界観にのみ込まれていくかのような錯覚も覚えます。

加えて、豊かな表情を見せる線が描き出すモチーフは、寸でのところでそれが何を描いているかが分からない、という際どさを持ち合わせていて、それが独特の緊張感を導きだしているように思えてきます。

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インスタレーションと平面作品、それぞれにじっくりと対峙したい世界です。

もうひとりのアーティスト、見附さんは手前のサブスペースで。

見附正康

OTA FINE ARTS

東京都中央区勝どき2-8-19-4B

5/30(土)~7/4(土)日月祝休

11:00~19:00

見附正康090530.jpg

Masayasu Mitsuke

OTA FINE ARTS

2-8-19-4B,Kachidoki,Chuo-ku,Tokyo

5/30(Sat)-7/4(Sat) closed on Sunday,Modnay and national holiday

11:00-19:00

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コンパクトな空間に配される台。そこに置かれる4点の大皿。

その皿に施される緻密な線。圧巻の密度を誇る「赤絵」に、ただただ感嘆させられます。

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この「仕事」を現代美術の空間で体感できることの嬉しさといったら・・・。

ある意味、究極的に整然とした狂気...そんな言葉さえ浮かんでくるほどに、そこで展開されている仕事の精度と密度に呆然、そして圧倒させられるんです。

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遠目で俯瞰した時の、皿そのものの色と赤とのコントラストがまず美しいです。

伝統が生み出す美しさ、その説得力も、迷いなくまっすぐに迫ってきます。

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そして、至近で...。

これが筆で描かれたと理解するのに時間を要します。信じられないほどに細い線が、しかもまさに一糸乱れぬ整然とした間隔で、ていねいに紡がれて、大皿のおおらかな湾曲面に絶妙な弧と緻密な紋様が描かれています。さらに薄く引かれる赤の色面や随所に灯される金色の点描がアクセントとなって情景をさらに豊かなものへと押し上げているように思えます。

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これだけの密度が施された皿を観て、そのめくるめく紋様の展開に唖然とし、深い感動に浸れます。

そして、最初の線は引かれる瞬間に思いを馳せると、そのスリリングな瞬間に身震いしそうなほどの緊張感が脳裏を貫きます。

ほんの数ミリの線の密集、またミリよりもさらにひとつちいさな単位で言い表したくなるようなあまりにも細密な点描を目にして、その筆致のひとつひとつが愛おしく思えてきます。

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あらためて、この仕事がこの空間で体感できることに大いに感謝したくなってきます。

たった4枚の大皿に施される、息を呑むほどの繊細さ。この細密の世界を多くの方に接していただきたいと切に願います。

青木良太

TKG Daikanyama

東京都渋谷区猿楽町29-18 ヒルサイドテラスA棟1

5/28(木)~6/20(土)日月祝休

11:00~19:00

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Ryota Aoki

TKG Daikanyama

29-18-A1,Sarugaku-cho,SIhuya-ku,Tokyo

5/28(Thu)-6/20(Sat) closed on Sunday,Monday and natioal holiday

11:00-19:00

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現代美術と響き合う陶芸、追求される力強いフォルム。

TKG Daikanyamaでの最後の展覧会、陶芸の青木良太さんの個展です。

昨年のTKG Editionsでの個展ではさまざまな皿や食器が展示され、それぞれが爽やかさとぬくもりとを醸し出していたのが印象に残っていますが、今回はメインで展示されたのがオブジェ。その意表を突く作品の力強さと空間構成に驚かされ、だんだんとそこから滲む渋みや深みに入り込んでいきます。

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象徴的なモチーフの立体作品が並びます。

太い矛先を思い起こさせる、重厚感溢れるオブジェ。天を衝くような格好で台上に置かれ、その勇ましいフォルムと深みある色合いに圧倒させられます。

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かたちのユニークさにも、さまざまな想いが過ります。

陶器の置物というとまず何らかの「かたまり」となったかたちを思い浮かべるのですが、今回出展されている青木さんの作品は、一様に縦の動線を力強く保っています。

「ひも造り」という伝統的にある手法を用いて成形されているとのこと。土をひも状に細長く伸ばし、それをとぐろを巻くようにして縦に積み、ある程度の高さが積まれると崩れないように乾かしてからさらに上方へと伸ばしていく、という手順で作り上げられているようで、いったいどうやって造形するんだろうという謎は解けたのですが、しかしやはり焼き物としてのユニークなかたちはワクワクとしたイメージを促してくれます。

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仕上げのバリエーションの多さも楽しいです。

釉薬などを用いてさまざまな表情を生み出し、なおかつ焼く過程で自然に生まれるざらつきや艶などがそれぞれの自立するオブジェの個性を際立たせているように思えます。色とかたちの関係性の豊かさが、空間全体にコントラストをもたらし、細やかな質感がもう半歩作品へと近づかせて、いろんな角度から見つかっていく滋味溢れる表情に引き込まれていくんです。

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最初に伺ったとき、それから2度3度と足を運ぶ度に、その面白さは増していきます。

第一印象のインパクトから落ち着いて接することのできる2度目以降からは、よりじっくりとそれぞれの作品が醸し出す味わいに浸れるような気がします。全体のかたちの凛とした力強さ、そこかしこから滲み出る深み・・・。時間が経ってもいろんな表情が溢れてくるようで、いつまでも眺めていたくなるんです。

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陶板も展示されています。

かたちがシンプルなものに落とし込まれている分、その表面の抽象性が立ち上がってきているように思えます。また、おそらく銅で継がれた部分に現れる線の存在感が、アバンギャルドさ、前衛性を放っているようにも感じられて、陶芸表現の奥深さに触れたような思いもして興味深いです。

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凄まじい力強さにじっくりと接したあとで、カウンター奥に展示された「ふりだし」を眺めると・・・!

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このいとおしさといったら、もう・・・。

てのひらに収まるサイズのかわいらしさといい、遊び心が感じられる仕上げといい、またたくさんあることもあって、楽しい気分がふわっと広がります。

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湾曲する透明のパーテーションが楽しい動線を生み出すこの空間。TKG Daikanyamaとしての展覧会が最後なのは残念ですが、その最後に空間の個性が充分に活かされたインスタレーションが創り出されていることに大きな嬉しさも覚えた次第です。

未来的な雰囲気が溢れる空間と、陶芸の渋みとのギャップの楽しさ。ぜひ直に味わってほしいと思うのです。

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ムラタ有子新作絵画展

GALLERY SIDE2

東京都港区東麻布2-6-5

5/23(土)~6/20(土)日月休

11:00~19:00

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Yuko Murata new works

GALLERY SIDE2

2-6-5,Higashi-azabu,Minato-ku,Tokyo

5/23(Sat)-6/20(Sat) closed on Sunday and Monday

11:00-19:00

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GALLERY SIDE2でのムラタ有子さんの個展です。

いやもう、ホントに良いです。

その個性にこれまで何度も感動させてもらって、コロコロと楽しい気持ちにさせてもらっていて、なお、今回の個展でていねいに作り出されている空間に、嬉しいため息が漏れるんです。

何の変哲もない、高さと間隔を揃えて展示された作品たち。

そのあまりの空間的なおさまりの良さに、ギャラリーの正面の3つの壁面と対峙してそこから一歩も進まなくても、絵に近づかなくても、なんとも言えないほんのりと切なくて、こみ上げる愛おしさに浸ってしまいます。

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隣り合う作品同士が、そして作品が展示される壁同士が艶やかな響きをもたらします。

いつものように1点完結のストーリーをそなえるちいさな作品たち。壁面にできる余白と作品の画面との面積の割合を考えると、あまりにもちいさな絵たち。しかし、充分にその余白に作用し、空間に作用して、やさしい空気を軽やかな醸し出しているように感じられます。

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コーナーごとに、足を止め、そこにおとずれる物語に心を委ねていく・・・。

さまざまな縮尺で描かれ、たとえば小動物が佇むものと大きな俯瞰風景とが隣り合っていたりすると、なんとなくその関係性が自然と脳裏にわき上がってきます。

描かれる光景の関係性とともに、色のコントラストも楽しいです。画面に厚く乗る油絵の具の瑞々しいしっとりとした質感、背景と主題とがどちらも同じくらいの強さで色が迫ってきて、その風合いもまたムラタさんらしい独特の味わいを感じさせてくれます。

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そして、1点ごとから感じ取れるユーモアも嬉しい限り。

さまざまな光景はコミカルにデフォルメされていて、さらに筆の運びの生々しさ、モチーフと色の重なりとの、奥行き的な順番としてのおかしな関係性など、さまざまな要素が楽しい風合いをもたらしているように感じられます。

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ほんのりと広がる淋しい感触、何となく切なくなってくる感じが、コミカルな味わいをただ楽しい雰囲気に落とし込ませない、独特の世界観を紡ぎだしているように感じられます。

それぞれに潜む物語性の深み。言葉にしてしまうときっと実にあっさりとしていて、でも行間に潜むイメージの厚みが相当なもので、そのなかに入り込んでいったり、また画面の中に施されるさまざまな、ちょっとした遊び心に触れて嬉しくなったり。

支持体は板とキャンバスとを行き来し、ドローイング作品も数点展示されていたりしますが、変わらない味わいに癒されつつ、そのなかでさまざまな試みが奥行きを確実に深めているように思えるんです。

素敵な空間を体感できます、ぜひここに静かに溢れるさまざまなイメージを堪能してほしいです。

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谷村彩 個展

Yuka Sasahara Gallery

東京都新宿区西五軒町3-7 ミナト第三ビル4F

5/16(土)~6/20(土)日月祝休

11:00~19:00

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Aya Tanimura exhibition

Yuka Sasahara Gallery

3-7-4F,Nishi-gokencho,Shinjuku,ku,Tokyo

5/16(Sat)-6/20(Sat) closed on Sunday,Monday and national holiday

11:00-19:00

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溢れ、うねるリズムが奏でる妖しくて爽やかな世界観。

Yuka Sasahara Galleryでの谷村彩さんの個展です。

谷村さんの作品は、今年のART@AGNESで拝見していて、そちらではパネルに描かれていて、素材の質感と編まれる髪のモチーフとのユニークな感触が印象に残っています。

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緻密な描き込み。仄かにユーモラスなテイストが滲み、そこに複雑な奥行き感ももたらされているように思えます。

そして、今回の個展では、紙を支持体によりダイナミックな展開も繰り広げられています。

並ぶ2枚の紙の作品、ほぼ鏡合わせのような情景のなかに、さまざまなうねりがもたらされ、その密度にのみ込まれていくような感じも伝わってきます。

ストロークの塊の真ん中の密度の濃さ、そして外側の繊細な広がり。緻密に描かれる髪の毛のかたちが、逆にさまざまなスケール感を導きだしているように思えます。

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もっと自由なイマジネーションが解放されたような、ユニークな空間性が楽しい作品も・・・!

さまざまなかたちに編まれる髪が虚空を舞い、浮遊するような感触は、無重力のイメージを思い起こさせてくれます。シュールでコミカル、不思議な重力感が痛快です。

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鉛筆画とあわせて展示されている木彫の作品がまた素晴らしいんです。

直に空間に作用する気配感。ていねいに彫られる、編まれる髪のかたちのリアリティにも引き寄せられます。

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木の素材の強さが重力をも裏切って、それがユニークなおおらかさをもたらしてくれます。

おそらく枝のかたちをそのまま活かしたフォルム、その自然なしなやかな曲線がおおらかな空間性をもたらして、さらに木のナチュラルな色味がモチーフとなる髪の生々しさを抑え、やさしい風合いを奏でているようにも思えてきます。

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輪切りの木片を彫った作品も楽しい!

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美しい木目が活かされた木彫のちいさなオブジェ。

薄く彫り上げられたその作品は、あたかも1枚の薄いシート状のものが縮んだようなフォルムとなっていて、その質感がなんともかわいらしいです。揺らめく弧のなかに走る年輪の流れ、ナチュラルな色のコントラスト、てのひらに乗ってしまう程よい大きさ。さまざまな要素が楽しい雰囲気を醸し出しています。

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鉛筆画と木彫、異なるメディアで繰り広げられる世界はそれぞれ高い精度が繰り広げられて、その説得力に感服させられます。

さまざまな遊び心もふんだんに織り込まれ、モチーフの自由度が充分に活かされて豊かな情景や空間性を導きだしています。

そしてそこから掬いとるおおらかなイメージ、もっと好奇心が入り込んでいくようなミニマムさ。シャープで痛快なインパクトと刺激に満ちているように思えます。

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和田絢「sleep/motif」

児玉画廊|東京

東京都港区白金3-1-15-1F

5/16(土)~6/20(土)日月祝休

11:00~19:00

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Aya Wada "sleep/motif"

Kodama Gallery Tokyo

3-1-15-1F,Shirokane,Minato-ku,Tokyo

5/16(Sat)-6/20(Sat) closed on Sunday,Monday and national holiday

11:00-19:00

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具象的なモチーフが放つポップなリズム。

そして、そこから立ち上がるユニークなテクスチャー。

児玉画廊|東京での和田絢さんの個展です。

さまざまなサイズの作品が並び、そのスマートな配置が清々しさを奏でているように感じられます。

一角に纏められた写真群。

そこに収められているスナップは写真なので無論究極的に具体的なモチーフが捉えられているのですが、レンガを積むように並べられていて、そのかたまりにたのしい「リズム」が伴なわれて提示されていることに加え、鮮やかな「色」や「かたち」のシャープさも弾けるように迫ってきて痛快です。

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この写真のモチーフのなかからも多数タブローに落とし込まれているのもあって、それを見付けていくのもまた楽しかったり。

ボールペンやサインペンなど、身近な素材を用いて描かれるタブロー。それが親しみやすさと、逆に驚きとをもたらしてくれるように感じられます。

大きめの紙にびっしりとストロークが詰め込まれた作品。無数のストロークによって塗り潰される色面にはダイナミックなうねりが生み出され、全体からキャッチされるある景色や場面のイメージのなかに凄まじいボリュームのパルスが弾けていて、それが新鮮なインパクトをもたらしてくれるように思えます。

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ボールペンの細かい線と、それ以外のさまざまな質感の線や色面とのコントラストも楽しいです。

青いシルエット、緑の植物、その程よくていねいに描かれる細かい表情の臨場感。それらの有機的なイメージと、右側の薄いグレーの無機的な感触が、不思議な世界観をもたらしています。もしかしたら建物の影かも、みたいな想像も脳裏を過りながら、どことなく不安定で、それがまた豊かな空間性と斬新なワビザビのようなものを醸し出しているように思えて、独特の心地よさを感じさせてくれます。

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ちいさな画面がずらりと並ぶ作品、そのリズム感は痛快!

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画面ごとに展開されるさまざまな場面の細やかな表現に、いくつかの種類の青と黒の黒さが響き合ってポップな風合いを奏でているのもまた楽しいです。

そして何より、色のシャープな立ち上がり方が気持ちいい!

さまざまな形や色が、さらに」余白さえもいくつものアクセントとなって、軽やかな画面、そのシンプルさのなかに無数の発見があるような気がします。

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さまざまな色彩が用いられる作品も、さらに賑やかにミニマムなリズムが放たれ、真っすぐに目に届いて迫ってきます。

まず、ひとつひとつがとにかくかわいいんです。描かれるモチーフはそれが何でそこがどこか何となく伝わるリアリティがあって、それは強さ、インパクトに転化されているように思えます。その一方で、程よくデフォルメされ、さらに生命の気配をポジティブに消したような風合いが、そこに収められる色や形、さらには質感の強度を高めて、鮮烈さの束となって痛快な世界観を構築しているように思えてきます。

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さまざまなイメージの種をもたらしてくれる、楽しい雰囲気に満ちた世界。

素材などが奏でる軽やかさと独特の密度感、そこに満ちるフレッシュな感性と、勢いや思い切り、そして迷いや戸惑いも全部含め、そしてやはり溢れる描く楽しさが生み出す独特のバランスが絶妙な距離感を生み出しているように感じられます。

まっすぐな爽やかさは心地よい後味も残してくれます・・・!

ここからどういうふうに展開していくのかも楽しみなクリエイションです。

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一回の会期でふたりのアーティストを紹介するmagical, ARTROOM、今回は山本努さんと正木美也子とがそれぞれのコーナーで個展を開催しています。

異なるメディアで、しかしドットが登場するという点で共通していて、その距離感にも興味深さを覚えた次第です。

まずは山本努さんのエリアから。

[DICE PROJECT 005] cloud:山本努

magical, ARTROOM

東京都渋谷区恵比寿1-18-4 NADiff A/P/A/R/T 3F

5/20(水)~6/16(火)日月祝休

12:00~20:00

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[DICE PROJECT 005] cloud:Tsutomu Yamamoto

magical, ARTROOM

1-18-4-3F,Ebisu,Shibuya-ku,Tokyo

5/20(Wed)-6/16(Tue) closed on Sunday,Monday and national holiday

12:00-20:00

Google Translate(to English)

エレベーターを降りて左手にまず小品が。

山本さんのドローイング作品とのこと。

詳しく制作手法や素材を伺っていないのですが、何層かの透明のフィルムがアクリル板に重ねられているような感じで、そこで試される山本さんのストローク、いわゆる「描く」という行為の解釈が興味深いです。

それぞれ明と暗とが並ぶような構成にも実験的な雰囲気を感じます。

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メインの作品は3点。先日まで開催されていたART AWARD TOKYOや、INAX GALLERYでの個展でも発表されていたコンセプトが、コンパクトなボックスのなかに収められて展開されています。

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表面に施される雲の情景。そして下部の整然と並ぶドット穴。

その質感が、行為の蓄積としては実にアナログであるにもかかわらず、むしろフューチャリスティックなテイストが全面に押し出されているように感じられるのも興味深いです。

その一方で、ボックス内部から放たれる光はいわゆる三原色なのだそうで、赤が手前に、そしていちばん遠くまで届く青が画面の上方まで照らしている...そういう現象も組み込まれているところにも、美しさに加えて知性も伝わってきます。

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このクリエイションが、本格的に空間に取り組んだらどんな世界を見せてくれるだろう、と思うとワクワクしてきます・・・!

続いてメインスペースへ。

こちらには正木美也子さんのドローイングとペインティングが並んでいます。

正木美也子 [Who is Stalin?]

magical, ARTROOM

東京都渋谷区恵比寿1-18-4 NADiff A/P/A/R/T 3F

5/20(水)~6/16(火)日月祝休

12:00~20:00

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Miyako MASAKI [Who is Stalin?]

magical, ARTROOM

1-18-4-3F,Ebisu,Shibuya-ku,Tokyo

5/20(Wed)-6/16(Tue) closed on Sunday,Monday and national holiday

12:00-20:00

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正木さんの作品を拝見し、ご本人ともお目にかかれてお話しして、強く印象に残っているのが、制作されているものについて、くっきりと離隔と伴う言葉で説明されたことで。

イメージとしてもっと曖昧に描かれていると思っていただけに、そのコンセプトの強固さに、おおいに感嘆させられました。

おそらく、純粋に作品を観て得る情報のみでキャッチできるイメージと、その作品に潜むコンセプトや行為を知ってから対峙するのとではまったく印象が変わってくると思います。

僕自身、nichido contemporary artでのグループショーで正木さんの作品をはじてめしっかりと拝見したときのなんだか曖昧で抽象的な印象と、今回得たイメージとでは相当に差異があるんです。

まず、ドローイング群が目に飛び込んできます。

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カラフルなドットがひたすら紡がれ、何かのかたちをもたらすものや、もっとそのドットが「面」としての体裁を失うかのような、くるりとペンで描かれるちいさな円の凝縮である情景を導きだしている作品、それぞれにドローイングとしての軽さや実験性が伝わってきます。

それでいて、その緻密な行為の積み重ねが生み出す奥行き感や、高い密度にもまた惹かれます。絵としてのシンプルな面白さも伝わってくるんです。

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奥に展示された横長のドローイングの大作は、サイズもそのまま迫力へと転化され、スケール感の大きな景色を導きだしているように思えます。

ある場面がもつ立体的な空間性や時間性さえも、緻密な仕事の積み上げとストロークのひとつひとつが放つ衝動とによって画面の中に注入されているようにも感じられます。

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ペインティングは一転して絵の具の強さがぐんと迫ります。

くっきりとした鮮烈な色彩感と、そこにもたらされる無数のドット。ミニマムに展開し続けるパルスの複雑さ、その情報のボリュームに呆然としながら、ひとたび距離を置くとある情景が浮かんできて、そのギャップがまた意識をのみ込んでいきます。

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こちらのペインティング作品、ニュースなどで目にしてインパクトを覚えた場面をモチーフに制作されているのだそう。

つまり、これだけ抽象的なイメージが放たれていて、その実、この作品が具象画であることに驚かされ、またそれが逆に強い説得力をもたらしているように思えます。

さらに印象的なのが、この無数のドットがすべて、筆先をちょんと画面に触れて描かれる「点」ではなく、「こう描く」というしっかりとした意図の基に丁寧に丸や弧であるということ。それは確実に、しっかりとした意図と確信の基で制作されている証しのようにも思え、興味深く、また伝えられるべきイメージをより強いものにしているように思えるんです。

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アーティストとコンセプトと作品、それぞれの関係へと思いを馳せると、それがいろんなイメージをもたらしてくれます。

ある事件や場面と正木さんの関係があり、その距離感を探り、フォルムを具現化する、すなわちモチーフとアーティストとのあいだに作品があるようにも思える一方で、アーティスト自身が、自らを通じてさまざまな事件や情景を他者に伝える、提示するようなかたち...モチーフとアーティストとを結び、その延長線上に作品があるようなイメージも思い浮かんできます。

作品によってはそこに描かれているもののフォルムを比較的簡単にキャッチできるものもあれば、抽象性が立ち上がってドットの集積の印象からなかなか抜け出せない者も合ったりと、強固な統一感にがっしりと収まっていながらも、それぞれが放つ印象にさまざまな差異が生じているような気がするのも興味深く感じられます。

そこにつぎ込まれるモチベーションとキープし続けられるコンセントレーションへの敬意も心に浮かび、そして同時に、さらに大きなサイズの作品へと挑戦されたらどんな世界が広がっていくだろう、と、そんな想像も沸き起こってきます。

じっくりと対峙して、さまざまなアカデミックなイメージを得たい、得てほしい展覧会です。

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《6/5》

妻木良三 境景

ラディウムーレントゲンヴェルケ

東京都中央区日本橋馬喰町2-5-17

6/5(金)~6/27(土)日月祝休

11:00~19:00

妖し気で有機的なスロ-クの集積で、豊かな奥行きと深遠な陰影をもつ情景が描き上げられています。

目黒区美術館で開催された鉛筆画をテーマとしたグループ展では水張りされない緩やかな撓みをもつ画面に描かれていましたが、今回はフラットな画面での展開で、それが描写の繊細さを際立て、いっそうの緻密な風合いが鮮烈に奏でられているように感じられます。

100 degrees Fahrenheit vol.1 梅沢和木 笹田晋平 高橋つばさ 彦坂敏昭

CASHI

東京都中央区日本橋馬喰町2-5-18-1F

6/5(金)~6/27(土)日月祝休

11:00~19:00

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4名の高密度のクリエイションを展開するアーティストがフィーチャーされた展覧会です。

ヴィヴィッドなリズムが複雑に放たれ、フューチャリスティックなカオスを生み出す梅沢和木さんと先日の文京アートでの個展も素晴らしかった高橋つばささんはアクロバティックでチャレンジングな状況を作品に持ち込み、その一方で、笹田晋平さんと彦坂敏昭さんはこれまで拝見したスタイルの作品を出品していて、それぞれに密度の濃いクリエイションが展開され、見応えがあります。

河地貢士個展「マリオ鎮魂~第1,043,020,XXX,XXX回告別式~」

LOWER AKIHABARA

東京都千代田区東神田1-11-7 東神田M.Kビル1F

6/5(金)~6/26(金)日祝休

11:00~19:00

河地貢士090605.jpg

そういうことか!Σ( ̄口 ̄;)

《6/6》

ムラタ有子新作絵画展

GALLERY SIDE2

東京都港区東麻布2-6-5

5/23(土)~6/20(土)日月休

11:00~19:00

ムラタ有子090523.jpg

お馴染みのちいさな画面のペインティング。いつもと変わらない独特のかわいい雰囲気とつややかな絵の具の質感、シンプルにデフォルメされ、豊かな素朴さが零れてきます。

そして、ペインティングの展覧会なだけじゃなくて、むしろ空間を楽しむ展覧会のような印象も。それぞれの位置で眺めたとき、視界が捉える情景のバランスはすべてが絶妙なんです。

矢柳剛 個展「一日一生、365日の痕跡 そして今」

東京画廊

東京都中央区銀座8-10-5-7F

6/5(金)~6/27(土)日月祝休

11:00~19:00(土:~17:00)

矢柳剛090605.jpg

なんだか凄い説得力・・・!

カラフルな色彩がシャープに組み込まれるペインティングから自身によるデザインがプリントされたスカーフをコラージュとして取り入れた作品など、大ベテランのアーティストが制作したクリエイションとは思えないほどに世代的なイメージをあっさりと跨いで、その鮮やかさと軽やかさに驚かされます。

太田代なほ展 耳をすまして、凛として・・・

galleria grafica bis

東京都中央区銀座6-13-4 銀座S2ビル1階

6/1(月)~6/6(土)

11:00~19:00(最終日:~17:00)

太田代なほ090601.jpg

キュートな幻想世界が空間に溢れていたのが印象的です。

まず、ペインティングの大作がすごかった!

淡い色彩で綴られる有機的なモチーフ、それらは画面のそこかしこにゆらゆらと浮遊するように散らばって、奇妙な生命のイメージを醸し出しながら独特の世界観を奏でています。くっきりとしたかたちがコミカルな風合いをあらわしていて、なんとも楽しい印象が心に浮かびます。

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太田代なほ07.JPG 太田代なほ06.JPG 太田代なほ05.JPG

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写真作品は、またひと味違う世界観を繰り広げています。

こちらもまたご自身で制作される人形を配し、さらに不思議な気配をポップに紡ぐ作品。ジェルのように透明な素材によって形づくられた人形たちのファンタジックな風合いや、どこかほのかに響く淡い儚げな感触など、いとおしいような気持ちが満ちていくんです。

今回は発表されなかった立体作品によるインスタレーションもぜひ拝見したいです。

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太田代なほ01.JPG

伊勢裕人展

GALLERY b.TOKYO

東京都中央区京橋3-5-4 第1吉井ビルB1

6/1(月)~6/13(土)日休

11:00~19:00(金:~21:00、最終日:~17:00)

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アバンギャルドな世界を繰り広げる伊勢さんの個展、前回は身体の一部分を彫り上げた木彫の作品を配置したインスタレーションでしたが、今回は平面作品が発表されています。

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素材感が醸し出す暗く濃厚な世界観。

絵の具のべったりとした生々しさと、ぐにゃりとしていて硬い質感も醸し出す樹脂のテクスチャー、全体を覆うダークで汚れたような風合い、そのひとつひとつがかさなって繰り広げられる雰囲気は、重々しいスピード感で覆いかぶさるように迫ってきます。

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画面の中にもたらされる空間性の奇妙なバランスにも惹かれます。

すべてが手探りで、描いたというより、感覚的な純度はむしろ上げられているように、行為の痕跡が残されているように思えるのも興味深いです。

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空間との相性もよく感じられます。

充分に、むしろ過剰に「深い」雰囲気が、どういう風になっていくかも興味深いです。

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松山賢|地図

GALERIE SHO CONTEMPORARY ART

東京都中央区日本橋3-2-9 三晶ビル B1F

6/6(土)~7/18(土)日祝休

12:00~19:00(土:~17:00)

松山賢090606.jpg

このライトなエロティシズムはちょっと照れるような印象をもたらしながらもなんとも痛快で。

可愛らしい表情や仕草が、圧倒的に巧みな筆致による具象表現と、そのリアリティの精度をあたかも逆手に取るかのように、面白いという意味で「余計」な要素が持ち込まれ、それがまた独特な世界観を生み出しているように感じられるんです。

見事な描写とキャッチなシュールさとが混在し、その雰囲気にもスウィートさと鋭さとが絡み合って迫ってきます。

山本磨理

ぎゃらりぃ朋

東京都中央区銀座1-5-1 第三太陽ビル2F

6/5(金)~6/13(土)日休

12:00~19:00

山本磨理090605.jpg

個展や修了制作などで拝見して、その色彩感が強く印象に残っている山本磨理さん。

今回はすべて落ち着いた額に収められ、黒と紺の間のような、そして透明感もたたえる暗い色彩を背景にさまざまな色彩が映え、独創的なファンタジックな世界が描き上げられています。

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その暗い背景に浮かぶモチーフの幻想的な雰囲気を導きだす繊細な筆致にも惹かれます。

朧げな気配の感覚に、なんだか高貴なイメージも淡く浮かんでくるように思えます。

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色彩の重心の低さと立ちのぼるような雰囲気との差異も、世界観をさらに独特なものへと押し上げているように思えます。

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《6/7》

TWS-Emerging 116 福島沙由美「鏡游掬~きょうりさらい~」

トーキョーワンダーサイト本郷

東京都文京区本郷2-4-16-2F

6/6(土)~6/28(日)月休

11:00~19:00

福島沙由美090606.jpg

TWS-Emerging 118 諏訪奈都美:anima

トーキョーワンダーサイト本郷

東京都文京区本郷2-4-16-3F

6/6(土)~6/28(日)月休

11:00~19:00

諏訪奈津美090606.jpg

TWS-Emerging 117 坂本紀恵「明滅する都市と、それをのみ込む大なまず」

トーキョーワンダーサイト本郷

東京都文京区本郷2-4-16-3F

6/6(土)~6/28(日)月休

11:00~19:00

坂井紀恵090606.jpg

3名の女性アーティストが紹介されている、今回のTWS本郷でのお馴染みの企画、TWS-Emerging。それぞれが個性を発揮し、そのコントラストも楽しいです。

2階の福島沙由美さんは、瑞々しい青が広がる縦長の画面が並び、ふわりとふくらむ大きな泡の幻想的なモチーフと、そこに繊細な筆致で花が描かれ、爽やかな幻想世界が紡ぎだされています。

3階では、手前で諏訪奈都美さん、奥で坂本紀恵さんの個展。

諏訪さんは濃い色の色面を重ねてさまざまな動物が見え隠れする情景が描き上げられ、その濃密な世界観に沈み込んでいき、坂本さんの抽象画のあばんギャルドで焦燥的な筆致が今度は激しくイマジネーションを煽り、揺さぶってきます。

1階のO氏コレクションでの榎倉冴香さんと松原壮志朗さんの作品が醸し出す分厚い世界観と合わせて、ボリューム的にも見応えのある空間が展開されています。

椛田ちひろ椛田有理 二人展 断続的対話 -Intermittent communication-

ART TRACE GALLERY

東京都墨田区緑2-13-19 秋山ビル1F

5/31(日)~6/21(日)木休

12:00~19:00(金:~21:00)

椛田ちひろ・有理090531.jpg

椛田ちひろさんと椛田有理さんの姉妹による2人展。

無彩色という共通点が空間全体に統一感をもたらし、そしてそれぞれのテクスチャーの違いが楽しいコントラストを導きだしています。

ずらりと配される大作、会期中にも制作される厚めのアクリル板を用いた共作など、さまざまなアプローチが豊かな面白さを醸し出しているように思えます。

秋山さやか「あるくゆく 日暮里―ヒグレ―谷中」

HIGURE 17-15 cas

東京都荒川区西日暮里3-17-15

5/20(水)~6/28(日)月休

12:00~20:00

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1階から2階へと続く階段に可愛らしい色と素材感の刺繍が施された白い布のトンネルがかぶせられ、そこを登ると大きな画面のタペストリーが現れます。

谷中日暮里界隈の地図がプリントされた薄手の布にライブで刺繍が施されていっている、秋山さんのお馴染みの展開のクリエイション。おそらくご自身が辿られた動線を記録するように布に刺繍やパッチワークを施していくのだと思うのですが、どうしてもそこに面白味が感じられず・・・。しっかりと作品コンセプトを伺っていないこともあって、僕の解釈の狭さもあると思うのですが、もし移動の跡を辿ることを提示するのであれば、僕の移動のほうがおそらくシュールでワケが分からなくて面白いだろうな、でも僕自身がそれ自体に意味を感じなかったり...とさまさまな想像が過るんです。

もう少しじっくりと接してみたいと思います。

《6/9》

山口英紀

新生堂

東京都港区南青山5-4-30

6/10(水)~6/21(日)

11:00~18:00(最終日:~17:00)

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昨年のディレクターズ・アートフェア「ULTRA001」にて、僕が受け持った壁面で紹介した山口英紀の個展です。

新生堂の中地下のスペース、その入り口にカラーの作品。

本城直季さんの写真を思わせるポップなジオラマ風の都市風景が、例によって緻密な筆致で描き上げられています。

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壁面、天井、床が黒めの色調で統一された空間に、絹本と紙本の作品をそれぞれ4点ずつ展示。

一部額装された作品もありますが、基本的にパネルのまま展示、それぞれの絵肌の美しさもじっくりと味わえます。

墨の表情の精緻さに加え、散らばる銀箔がその情景の気配を繊細に奏でます。

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ミニチュア風の都市風景作品ももう1点、こちらはモノクロの作品。

ぼかしは薄い和紙を何枚も重ねることでもたらされています。

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もう1点の色がついた作品、密生するクローバーが描かれています。

その臨場感に驚かされるのですが、このなかにひとつだけ四つ葉のクローバーが描かれていたりします。

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直にご覧頂ければ幸いです、よろしくお願いいいたします。m(__)m

debut! ver. Haruna YAMASHITA 山下春菜 個展

谷門美術

東京都港区北青山3-3-7 第一青山ビル1F

5/30(土)~6/20(土)日月祝休

13:00~19:00

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初日に伺い、そのときはホントに展示を覗いただけといった感じで終えてしまったので、あらためて行ってきました。

ゆらめくような独特の筆致で描かれる、さまざまな作品、多くが「料理」をモチーフとしているようで、伺ったタイミングが絶妙だったせいか、お腹がすいてすいて(笑)。

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色彩感や仕上がりのテクスチャーがなんともいえない味わいを醸し出していて面白いです。

そして、料理を面白い切り取り方で平面に落とし込むことでユニークな構図とダイナミックな立体感が生み出され、そのおおらかさにも痛快な気持ちにさせられます。

山下春菜 09.JPG 山下春菜 08.JPG 山下春菜 07.JPG

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大作も楽しい!

さまざまな筆致が入り交じり、不思議な奥行き感や立体感を発しながら、独創的なダイナミズムを創出しているように思えます。こうなってくると天地の感触というか、空力感からも解放されているようなイメージも思い浮かんできて、痛快さがさらに増していきます。

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窪田美樹 個展「かげとりと、はれもの」

hpgrp GALLERY 東京

東京都渋谷区神宮前5-1-15 CHビルB1F

6/5(金)~6/28(日)月休

11:00~20:00

メインスペースに並ぶ4点の立体作品。

お馴染みのアプローチの作品に加え、ソファの表面を両面にプリントが施され丸められた紙で覆い尽くされる新たな展開の作品も展示されていて、まったく異なる質感ながら、伝えたいイメージというか、それが窪田さんの作品であることの説得力が強く伝わることが大変興味深く感じられます。

事務所のスペースに展示されているドローイング的な平面作品も実に興味深いです。

村山留里子「色とマント」

山本現代

東京都港区白金3-1-15-3F

5/16(土)~6/13(土)日月祝休

11:00~19:00(金:~20:00)

村山留里子090516.jpg

MURAYAMA Ruriko 'colour and Cloak'

YAMAMOTOGENDAI

3-1-15-3F,Shirokane,Minato-ku,Tokyo

5/16(Sat)-6/13(Sat) closed on Sunday,Monday and national holiday

11:00-19:00(Friday:-20:00)

Google Translate(to English)

独特の感性で綴られるリズム。

その積み重ねで築かれる、ユニークなスケール感。

山本現代での村山留里子さんの個展です。

入り口から絶妙にブラインドとなっているギャラリースペース。歩みを進めて目に飛び込む巨大な色の塊に、一気に静かな高揚が高まります。

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府中市美術館で昨年末から今年初めにかけて開催された「府中ビエンナーレ」にも出展された作品の再登場。美術館では最初のエリアに展示されていて、作品のサイズへのインパクトを感じたのですが、今回は閉じた空間的にじっくりと作品と対峙でき、そこにかける時間が伝わるイメージに厚みをもたらしてくれます。

ひたすら縫い繋げられた布片。ほぼ方形であるそれぞれの色のかたちは手仕事によって渕の部分が縫われることで微妙な歪みがもたらされ、それがずらりと連なって独特のカオスを生み出しているように感じられます。

まず、あらためてそのサイズに圧倒された後、じっくりと部分ごとに焦点を当てて眺めると、今度は不思議な奥行き感が伝わってくるんです。明るい色と濃い色とが隣り合い、それが複雑な立体感を紡ぎだしていて、ひとたびその凹凸のイメージにスイッチが入るとパルスのようにリズムが鳴り、元々のかたちの無機質さが布の質感と手仕事とによって有機的なものへと変換されて、ポップな混沌をどんどん展開、めくるめく色面の連なりをイマジネーションが泳いでいくかのように、留まることのないリズムを追いかけていくような感じが思い浮かんで楽しいです。

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府中では全体が吊り下げられて色面の壁を創り出していたのですが、今回は下の部分が床に届き、布の質感をよりリアルに伝えてきます。

もたらされる緩やかな湾曲が、正面の平面部分とはまた異なる雰囲気を作り出しているように感じられ、イメージの広がりももたらしてくれます。

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さらに床に置かれた部分、別の重力感がもたらされていて、そこからは布のやさしい風合いをより強く感じます。

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この大きなタペストリー風の作品が「色」で、もうひとつの「マント」は奥まった一角に展示されています。

照明が落とされた一角に黒いマントが吊り下げられ、「色」の鮮烈でウォームな雰囲気から一転し、静かな緊張感が降り注ぐ空間が創りだされているように感じられます。

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黒いマントの内側にびっしりと施される装飾は村山さんのクリエイションの真骨頂。

お馴染みのさまざまな素材を取り入れて創り出される艶やかな気配が、これまでにない閉じた空間に詰め込まれていて、これまで以上に妖し気なイメージが促されます。

「隠される」という提示手法がスリリングな雰囲気を導き出しているように思えるんです。

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さまざまな素材が持つ艶やかなイメージを過剰なまでに引き出し、繊細さを失うことなくシャープで濃密なエネルギーを生み出すような印象を、村山さんのクリエイションに対して持っているのですが、二つの作品で構成された今回の個展ではその密度がさらに濃く、そしてそこに壮大で深遠なスケール感が備わり、本来の独創的な世界観にさらに奥行きがもたらされているように感じられた次第です。

ギャラリーの硬質な雰囲気さえもこれだけ変容させうるパワーを持ったクリエイション、それが7月から開催される東京都庭園美術館での展覧会で、どんな響きや深みを放つかも楽しみです。

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川元陽子個展「for the present」

NANZUKA UNDERGROUND

東京都港区白金3-1-15-2F

5/16(土)~6/13(土)日月祝休

11:00~19:00

川元陽子090516.jpg

Yoko Kawamoto [for the present]

NANZUKA UNDERGROUND

3-1-15-2F,Shirokane,Minato-ku,Tokyo

5/16(Sat)-6/13(Sat) closed on Sunday,Monday and national holiday

11:00-19:00

Google Translate(to English)

NANZUKA UNDERGROUNDでの川元陽子さんの個展です。

ギャラリーに入った瞬間、その明るさに度肝を抜かれます。

空間との比較でいうと圧倒的にちいさなペインティング作品が整然と配置され、その1点1点に描かれる風景は一様に、強烈に「日中」の空気感を放っています。小さいながらもポジティブなエネルギーに溢れていて、そのインパクトは圧巻です。

そして、その1点ごとの描写の精度にもおおいに感嘆させられます。

描かれる風景は、人の手が入った自然、もしくは人工物が風化し自然に馴染んだ情景といった感じの場所が多く、人の気配を感じさせないながら、画面にもたらされる色彩は活き活きとして、純粋な絵画としての力に満ちているように思えます。さらに巧みにグラデーションが紡がれ、おおらかな情景が導きだされています。

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入り口を入るとまず目に射し込むように届く作品群。

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どこまでも奥へと続いていくような青空のスケール感、鉄管の錆の赤茶の深み。雑草の力強い緑。真っすぐに伸び、そのままスピード感が伝わってくる道路のシャープさ。それぞれの作品に描かれるモチーフの臨場感は一様に凛としていて、思わず瞳孔が開き、瞬きするのを忘れてしまうような錯覚を覚えるほどの鮮烈さを持って迫ってきます。

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全体を貫く乾いた空気感も印象的です。

どこまでも真っすぐなインパクトが、さらにドライなイメージも盛り上げてくれているようにも感じられます。

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積み上げられるブルドーザー群。

一切の隙を許さず、ストイックに眼前の光景が再現されているように感じられ、その精巧さにおおいに感じ入ります。

汚れるブルドーザーと、輝きと艶やかさをたたえるセダンの美しさとのコントラストも印象的で、アバンギャルドなリズム感を醸し出しながら、それでも圧倒的にポジティブなイメージを思い起こさせてくれるのが嬉しく、興味深いです。

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絵画を観る充実感に満たされます。

「UNDREGROUND」を謳う空間でこれだけ屋外的な作品が観られる面白さも心に響き渡ります。

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寺内誠展

ギャラリー広田美術

東京都中央区銀座7-3-1 ぜん屋ビル1階

5/29(金)~6/13(土)日休

11:00~19:00

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Makoto Terauchi exhibition

Gallery Hirota Bijutsu

7-3-1-1F,Ginza,Chuo-ku,Tokyo

5/29(Fri)-6/13(Sat) closed on Sunday

11:00-19:00

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追求される美しい気配。

ギャラリー広田美術での寺内誠さんの個展です。

お馴染みの透明感溢れる色彩が、それぞれの画面の中で豊かな広がりを奏でています。

そしてその情景の雰囲気は、ストイックなまでにさらに高貴な深みを紡ぎだしているように感じられます。

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異なる風景をレイヤー状に重ねて組み上げられ、新たに生み出される風景。

寺内さんのこれまでの作品も同様の行程を経て制作されていますが、今回発表された作品では、これまで以上にさらに重ねられる風景の「つなぎ目」がなくなったような印象で、より自然な情景へと昇華されているように思えます。

そのなかにもたらされているグラデーションの美しさにも惹かれます。まるで光が透過しているかのような神々しい気配が広がり、絶妙な色彩で描かれるシルエットに、眺めていてそのものの存在と気配の存在の両方を自然に掬いとっているような感じがします。

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これまでの作風からも引き継がれる美しい色使いに加え、細やかな表現もさらに深みと繊細さが増しているように感じられます。

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一角に展開される、ほぼ同じモチーフの作品。

空間で接すると、統一感のある印象に加え、繊細に透明感を放つ色彩のイメージとが観賞後も心に残るのですが、こうやって同じサイズの作品が並ぶのを拝見すると、あらためて色のバリエーションの豊かさにも驚かされます。

それぞれの色調のなかにもたらされている濃淡が、木漏れ日のようにやさしく滲む光や、その光を受けて煌めく葉の表情を巧みに引き出しているようにも思えてきます。

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今回出品されているなかでもっとも大きなサイズの作品。

ちいさな空間のなかでその存在感はひときわ強く放たれ、その鮮やかで透明な空気感や気配の感触に満たされます。

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さらに繊細に研ぎ澄まされる個性。徹底して美しいイメージを追い求め、それを画面に描きだしていく、その過程にストイックな姿勢も感じられます。

それが気配の深みに、そして世界観の豊かな奥行きにも反映されているような気がします。

シンプルさも保ちつつ、さらに立体的なイメージの豊かさがましていうようで、これからの展開も楽しみです。

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廣江友和 "Uneasy place"

MEGUMI OGITA GALLERY

東京都中央区銀座5-4-14 銀成ビル4F

5/15(金)~6/13(土)日月祝休

12:00~19:00

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Tomokazu Hiroe "Uneasy place"

MEGUMI OGITA GALLERY

5-4-14-4F,Ginza,Chuo-ku,Tokyo

5/15(Fri)-6/13(Sat) closed on Sunday,Monday an national holiday

12:00-19:00

Google Translate(to English)

精緻な再現性とユニークな提示手法が醸し出す危うい雰囲気と空間性。

MEGUMI OGITA GALLERYでの廣江友和さんの個展です。

取り上げるモチーフの可愛らしさ、それをしっかりとした描写力でリアルに描き上げ、さらにそこにシュールな要素を持ち込む(あるいは「組み合わせる」、または「引く」)ことで危うい情景が通ぎ出されているように感じられます。

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ビニール樹脂製の人形がモチーフとなった作品。

無垢なかわいらしい表情にも惹かれる一方で、奇妙な感触、シュールなインパクトが鋭く迫り、届きます。

人形が絵の中で身につけている服はファッション雑誌か何かからの引用だそうで、それが人形の幼く無垢な表情とのギャップを生み出し、さらによく見ると首の部分が余白になっているのに気付くとシュールなイメージは一気に加速します。

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廣江友和11.JPG

今回発表されている廣江さんの作品は、画面を厚めの透明樹脂シートが直に覆っています。それが視覚的に艶やかな効果を生み、ペインティングの具象性を高めているようにも感じられます。

至近で眺めると、予想以上に画面自体の生々しさが伝わり、第一印象とのギャップに惑わされます。むしろ画面には細かいスクラッチが無数に走り、そのざらつきが一見写真と見紛うほどに追求されている描写のリアリティから、その「もの」のインパクトや描く行為の痕跡の臨場感が鋭く迫ってきます。

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人形のリアルな描写と、背景に施される線の矩形が生み出すユーモラスな空間性も面白いです。

本来伝わるはずの奥行き感にズレがもたらされ、その大胆さが新鮮で斬新なイメージを促してくるように感じられます。

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また、モチーフの配置によって創り出される空間性も楽しいです。

犬のぬいぐるみを引く(ように見える)熊のぬいぐるみ。これ自体は赤い線で繋げられている、もっというと熊の左手と犬の首を赤い直線が結んでいるだけで出来上がる物語性も興味深く、さらにそれを囲むちいさな家に縮尺のイメージがずらされ、さらに空間を不思議なものへと押し上げているように思えます。

廣江友和05.JPG 廣江友和04.JPG 廣江友和03.JPG

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さまざまなテクスチャーが重なり、ユニークな世界観が築き上げられています。

背景となる白のザウザクと音を立てるようなマチエル、それを覆うビニールのあからさまに生々しい艶やかさ。描かれる人形や玩具の可愛らしさとは裏腹の危うい物語性。奥行き感を思い起こさせる足下に滲む影と主に赤で描き加えられる平面的な色面や矩形。持ち込まれるアイデアや要素の関係性が無数に複雑なギャップやコントラストを生み出して、硬質シュールさをたたえるなストーリーが紡がれているように感じられます。

もっといろいろと拝見したいクリエイションです。

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染谷亜里可 新作展 "Monster"

Kenji Taki Gallery

愛知県名古屋市中区栄3-20-25

5/9(土)~6/20(土)日月祝休

11:00~13:00、14:00~18:00

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Arika Someya new works "Monster"

Kenji Taki Gallery

3-20-25,Sakae,Naka-ku,Nagoya-shi,Aichi-ken

5/9(Sat)-6/20(Sat) closed on Sunday,Monday and national holiday

11:00-13:00,14:00-18:00

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意識をのみ込む、圧倒的に壮大な気配感。

Kenji Taki Galleryでの染谷亜里可さんの個展です。

近作としてお馴染みのベルベットの作品と、油彩や機械油を用いた作品やドローイb具とバリエーションに富んだ内容で、それぞれ見応えがあり、さまざまなイメージの広がりをもたらしてくれます。

1階のメインスペースにベルベットの作品が展示されているのですが、まず、その奥の階段のところから。

ここから、ドローイング作品などが展示されています。

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異なるメディアやサイズで々と思われるモチーフが登場してくるのも興味深いです。

素材の差異が、伝える雰囲気・・・想起させるイメージにも違いをもたらし、それが今回の個展でキャッチする世界の幅と奥行きをもたらしているように思えます。

機械油(だと記憶しています)を用いた作品。

素材が放つアバンギャルドが、小さい作品ながら強烈に迫ってくるような気がします。

染谷さんというと現在はベルベットの印象が強いですが、以前は機械油で大掛かりな作品も制作されていたようで、イメージの回帰も思い起こさせてくれるのも興味深いです。

僕自身、このスタイルの作品を拝見するのは初めてで、ベルベットの高貴な雰囲気と真たく異なる重厚な感じが印象的です。

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2階、額装されたドローイング作品が並びます。

こういう世界観をお持ちなのか、と、思わず前のめりになってしまうほどに引き込まれる情景が描き上げられているように感じられます。

色のイメージや思いのほか情動的な筆致が、ちいさな画面でありながら、使える色彩のバリエーションやその自由度など、ある意味において機械油の作品以上に前衛的な風合いに煽られ、堪らなく感じられます。

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油彩の作品も素晴らしいです。絵の具が持つ素材の滑らかな濃度がスケール感に転化されているように思えます。

こちらもちいさな作品なのですが、そのなかに収まりきれない分厚い雰囲気はイマジネーションを押し広げ、頭の中でこの世界観が膨らみ続けていくかのようです。

トーンの前衛感やユニークな奥行き感など、俄然、大きな油彩作品も拝見したくなってきます。

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そして1階のベルベットの作品群。

この深みと緻密さが、他の作品の奥行きさえも広げさせているように思えるほど、壮大で荘厳な雰囲気が創り出されています。

東京での展覧会では発表されていない大作がずらりと並び、ダークな雰囲気で空間全体を満たしています。

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謎めく妖し気なモチーフが並びます。

入り口からもっとも近い壁面に展示された、艶かしくも深いブルーが印象的な作品。

脱色によって表出される白も映え、揺らめくように滲むようなテクスチャーを創り出し、これまでの染谷さんのベルベット作品とも異なる不思議なイメージを思い起こさせてくれます。

この色彩だと直感的に空や海を思い起こしますが、その自然の景色との距離感も世界感を立体的にしているようにも思えてきます。

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そして、その青の色彩のアクセントを包み込んでくる大作。

同じモチーフが並び、それが画面の大きさに伴って巨大なシルエットとしてふたたび迫ってきます。

無論、これまでの作品と同様に画面との位置の差異がそのまま見える情景に変化をもたらし、ゆっくりと動きながら眺めていくとそれに伴い画面も変化、ある瞬間にぐんと巨大な像が現れ、その感触もまたこの世界のボリュームを深め、密度も高めてきます。

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加速し膨張する荘厳さ。

ダークな色調と、そこに備わる光の表情とのコントラストが妖し気で危うげな雰囲気を鮮烈に、そして重厚に立ちのぼらせているように思えます。

画面が大きくなったことで筆致(と呼んでいいのか分からないのですが・・・)が大胆になっているようにも思えます。陰影の表現など、視覚で掬いとるイメージに収まらない分厚い情景や空間性、そしてベルベットの高貴な素材感などとも相まって醸し出される雰囲気の深みも強く印象に残ります。

画面全体に描かれるダイナミックなシルエットと、作品によっては拝見となる部分に緻密に紋様も描き込まれ、重ねられる表現も豊かな奥行きをもたらしているように思えます。

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しっとりとした視覚的なやさしい刺激と、それとは裏腹に、荘厳であるからこそ生まれるスリルや焦燥感がなんとも興味深いです。

北条貴子 Resonating light part.2 Paintings

sowaka

京都府京都市南区東寺東門前町90 sowakaビル2F

5/15(金)~6/14(日)金土日のみ

12:00~19:00

北条貴子090403.jpg

Takako Hojo Resonating light part.2 Paintings

sowaka

90-2F,Toji-Higashi-Monzen-cho,Minami-ku,Kyoto-shi,Kyoto-fu

5/15(Fri)-6/14(Sun) Friday,Saturday and Sunday only

12:00-19:00

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騒がしく溢れかえる緑。

sowakaでの北条貴子さんの個展、第1部のドローイング展に引き続いて、第2部のペインティングによる構成です。

一部、前回発表された水彩のドローイング作品が引き続いて展示されています。

水彩らしい繊細な滲みを伴う、緩やかな透明感を奏でる風景が描き上げられています。

余白がそのまま光を現すかのような艶やかさを感じさせてくれていたり、緑の濃淡が鬱蒼とし、冷たい湿度を保つ空気感を醸し出していたりと、ちいさな画面からさまざまなイメージを思い起こさせてくれます。

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そして、今回のメインとなるペインティング作品。

水彩のテクスチャーから一転し、ひとつひとつのストロークの生々しい臨場感が画面に力強く重ねられて、その厚みが濃い密度となって迫ってきます。

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入り口から左側のスペース並ぶ大作群が展示された一角は、濃く深い緑に囲まれて、その艶やかさに包み込まれ、あたかも深い森のなかに入り込んだかのような錯覚を脳裏に想起させてくれます。

子どもの頃に持っていた絵の具のセットのエピソードを思い出します。

色がひとつのパッケージのなかに何十色も揃えられたセットのなかにある、複数の緑系の色の絵の具。「図工」でその日は絵を描く内容で、先生から出されたお題が「絵の具のなかから5色選んで、それだけで絵を描いてください」というもので、ある子がその緑系の5色を選んで描いて、それはもう画面に緑を溢れさせていて面白かったのですが、北条さんの作品を眺めていると、それと近い好奇心の存在を感じさせてくれます。

まるで「緑しか使ってはいけない」と思ってしまうほどにストイックなまでに色の統一感を持たせ、ダイナミックに林のなかの風景が力強く描かれているように感じられます。もっとも、緑しか使わないことへは遊びの感触も相応に入っているように感じられるので、ある「実験的」なアプローチが繰り広げられているように感じられるのもまた興味深く感じられます。

それでまたよく眺めているとそこここに黒や赤系との色が紛れ込んでいたりして、その色たちが仄かなアクセントとなって画面に灯っているのもまた心に響きます。

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風景としての臨場感、おそらく最後にニスかなにかが塗布されていると思うのですが、艶やかに仕上げられた画面とも相まってそこに見える風景には透明感と豊かで鮮烈な光の表情が溢れ、爽やかなイメージが心の中に一気に広がります。

至近で眺めると、今度は油彩の素材としての力強さがぐんと立ち上がってきます。如何ともし難い衝動が込められるかのような激しい筆致が画面に溢れ、遠目で眺めると清々しい風景なのが至近では相当に強い抽象性が感じられるのも面白いです。騒々しいほどに、複雑にエネルギーが衝突しているようなイメージも思い浮かんできます。

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清々しいおおらかさと、焦燥感に煽られるかのように繰り出される衝動的な激しいストロークの臨場感。このふたつのイメージが響き合って、力強い緑の世界が圧倒してきます。

そして、大きな画面の作品では、そのサイズがそのままスケール感に転化され、壮大さにも感嘆させられます。

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生川晴子 けはい

白土舎

愛知県名古屋市中区錦1-20-12 伏見ビル地階

5/16(土)~6/13(土)日月祝休

11:00~19:00

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Haruko Narukawa

Hakutosha

1-20-12-B1F,Nishiki,Naka-ku,Nagoya-shi,Aichi-ken

5/16(Sat)-6/13(Sat) closed on Sunday,Monday and natinoal holiday

11:00-19:00

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時間をかけて、じんわりと広がっていく世界観のふくよかな、豊かな味わい。

白土舎での生川晴子さんの個展に、昨年に引き続いて拝見することができました。

今年のVOCA展にも出展されていて、そこで拝見した作品がホントに素晴らしくて印象に残っているのですが、その作品も今回の個展でふたたび発表されています。

印象的なモチーフと不思議な透明感と奥行きとを備えた色彩が、それぞれの画面に収まり、広がっています。

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バナナ、月、密林、人のシルエット。

それぞれのモチーフは、程よいユーモアをたたえながら、生川さんの作品の随所に登場しています。そして、作品を拝見していてそれらの意味を具体的に、ある理屈や理由で説明することは難しいのですが、感覚的な確信というか、「なんとなくわかる」感じについては間違いなく持てているように思えます。

その「感覚的な確信」から、この独特の色彩で描かれる、気配に沈むような幻想的な情景が、描かれるさまざまなモチーフの隙間を繋げて、またもや言葉にするのは難しいのですが、ある物語が心の中に紡がれていくように感じられ、そういう時間を過ごせること、浸れることがなんとも心地よいんです。ゆっくりとその想像のスピードの流れに委ねて、漂うように描かれる世界に入っていきたいような感じがします。

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筆遣いのまろやかさ、それによって綴られる不思議な深みをたたえる世界観。

どこか宗教的で、イメージとしての奥行きは、時間が経つに連れてより豊かになっていきます。ほんのりと抽象的な風合いを醸し出すところや、感覚的な糸が働いて描き出される心地よく奇妙な情景のひとつひとつが緩やかに響きます。

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小さな作品、おそらく目玉がモチーフとなっているような気がするのですが、それが広い壁面にぽつねんと掛けられて、しかししっかりと空間が作り上げられているのも印象的で、興味深いです。

描かれない部分の空間的な余白にもしっかりと作用しているような気がします。

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今回の個展で発表されたもっとも新しい作品は、今後の展開が大いに期待される世界観が奏でられています。

奥の壁面に並ぶ2点の作品。硬質な黒が広がるなかに白の陰影による山のシルエットが横たわり、さらに縮尺のイメージのズレをもたらす瓶のようなモチーフも登場しています。

眺めていて静かに引き込まれる情景です。

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紡がれる世界にキャッチーな要素や鑑賞者を圧倒する強さはそれほど感じられず、なかなか伝わりにくいクリエイションのように思えるのですが、それでもひとたびその世界観への理解がもたらされると、ただ生川さんの作品と接しているだけでなんともいえないやさしいイメージが広がって、緩やかに充実した時間が過ごせるような気がするんです。

作品に登場するひとつひとつが、その物腰のやわらかさでゆったりとしたイメージを促してくれます。

ひらがなで「けはい」と現される展示タイトルも何となく納得です。

また観たい、長く接していたい、味わっていたいとクリエイションだと思うのです。

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《5/28》

青木良太

TKG Daikanyama

東京都渋谷区猿楽町29-18 ヒルサイドテラスA棟1

5/28(木)~6/20(土)日月祝休

11:00~19:00

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昨年のTKG editionsでの器の展示から一転し、今回メインスペースに並ぶのは壮観な趣きを放つオブジェ群。この空間おなじみの湾曲した透明のパーテーションでつくり出された動線のなかに、天を突くようなかたちや多くのループを持つものなど、実にユニークな雰囲気がそれぞれのオブジェから漂っているように感じられます。いかにも陶らしいものから鈍い銀色を奏でるものまで、渋い彩色も印象的です。

《5/29》

寺内誠展

ギャラリー広田美術

東京都中央区銀座7-3-1 ぜん屋ビル1階

5/29(金)~6/13(土)日休

11:00~19:00

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寺内さんの作品は長く拝見していますが、いくつもの景色がレイヤー状に重なって紡ぎ出される透明感溢れ瑠雰囲気がさらに奥行きを増し、組み合わせられる景色の差異がほとんど失せ、神々しいまでの繊細な光のイメージが描き現されているように思えます。大小さまざまなサイズの作品が並び、色使いで豊かなコントラストも創出しながら、独自の世界観がいっそう深められています。

Poh Wang「3時のはかなごと」

H.P.FRANCE WINDOW GALLERY

東京都千代田区丸の内2-4-1 丸の内ビルディング1F

5/29(金)~7/23(木)

11:00~21:00(日祝:~20:00)

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Poh Wangの作品は大阪のアートコートギャラリーでのグループショーで拝見していて、実に印象的な...もとい、ある意味において凄まじく脱力のクライマックスに大いに感嘆させられたのが印象に残っていて、さて今回はどんな展開を繰り広げてくるのか興味津々だったのですが、展示自体は実にシンプルに組み上げられています。

白い壁面に並ぶ、時計と「O」「V」「E」「R」の文字。時計は実際の時間を提示しています。

で、常に「OVER」となっているのが、今回の展覧会タイトルの時間になると、実にロマンチックなことになるという...そういう主旨で、シンプルな提示がスタイリッシュで、しかも仕掛けとしてもなんともユーモラスです。

実際に今のところ3時になったところを目にしていないのですが、会期中なんとか時間を合わせてチェックしたいです。

また、このウィンドウと入口をはさんで反対側の小さなスペースには、ユーモア満載の視点でさまざまなロマンスが提示されていて、こちらも眺めていて思わずにやけてしまいます。

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《5/30》

片野まん個展「Golden age」

MORI YU GALLERY TOKYO

東京都新宿区西五軒町3-7 ミナト第三ビル4F

4/25(土)~5/30(土)日月祝休

12:00~19:00

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エネルギッシュな雰囲気が痛快な片野まんさん、今回の個展に最終日に滑り込みで。

まず大作の迫力に圧倒されます!

大きさがそのままダイナミズムへと転化されて、さらにひとつの作品に入ってくる要素の分量もその際図に比例して増え、実に凄みのあるボリューム感が作り上げられていて壮観です。

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無論、小さめの作品も楽しいです。

くっきりと描き現される線の力強い存在感、充満するコミック的なテイストが身近なイメージをもたらし、親しみある世界で膨らむ賑やかさに呑み込まれます。

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多数展示されていたドローイングもまた楽しい!

キャンバスの作品から要素をひとつだけ抜き出して描いたようなものから、まったく謎めくものまでさまざまなモチーフが描かれていながら、やはりひとつの濃密な世界観に収まっているように感じられるのも痛快です。

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谷村彩 個展

Yuka Sasahara Gallery

東京都新宿区西五軒町3-7 ミナト第三ビル4F

5/16(土)~6/20(土)日月祝休

11:00~19:00

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今年のART@AGNESのYuka Sasahara Galleryのゲストルームでは意見して印象的だった谷村彩さん。そのときは空間の制約もあってかパネルに直描きのドローイング作品でしたが、今回は大きな和紙におおらかなうねりが展開されたものや木彫作品など、一貫した髪の毛のモチーフでさまざまな展開が繰り広げられています。

加えて、輪切りにスライスした木片を彫って、まるで萎んで歪んだ紙ような彫刻作品もあって、これがいいんです。

Djordje Ozbolt

TARO NASU

東京都千代田区東神田1-2-11

5/22(金)~6/20(土)日月祝休

11:00~19:00

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こういう作品を拝見すると、日本と海外のアーティストの差異を強く感じます。

油彩のコンテンポラリーペインティングにしっかりと属していつつ、ほのかに、しかし自然に織り込まれる宗教観のようなものが、描かれる情景をいっそう濃いものへと引き上げているように感じられます。

さまざまな作風の物が揃えられ、ダリのようなシュールな構図と構成のものから、もっとざっくりとした筆致で殺伐と描かれるものもあったりとそれぞれ見応えがあり、なかでも虚空を浮かぶ手の壮大さにおおいに感嘆させられた次第です。

対峙した時間だけのイマジネーションの刺激をくれるような、深い説得力を持つペインティングのように思えます。

平野真美展

KIDO Press, Inc.

東京都江東区清澄1-3-2-6F

5/23(土)~6/20(土)日月祝休

12:00~19:00

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前回のGallery Jinでの個展も印象的だった平野真美さん、今回も前回に引き続き銅版画とペインティングの作品で小さな空間を繊細な雰囲気で満たします。

さらに儚げな風合いが進められているように感じられます。銅版の多色刷りのモノタイプの作品は、色と色との境目が淡く、それがやわらかな質感を感じさせてくれます。

微妙な色使いが奏でるピアニッシモの色世界。消え行くような色の存在感にいとおしさを覚えます。

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その色彩感や世界観はペインティングにもしっかりと引き継がれています。

銅版画作品と比較すると画面に施される色そのものの強さや深みは増しているものの、どこか淋しげな風合いや、繊細な雰囲気はそのままに、淡々と素朴な気配がやさしく紡がれているように感じられます。

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ローリー・シモンズ

TOMIO KOYAMA GALLERY

東京都江東区清澄1-3-2-7F

5/23(土)~6/20(土)日月祝休

12:00~19:00

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写真の中にフィギュアや雑誌かなにかの写真を切り取ったものなどを取り入れ、キュートで大人びた幻想世界が展開されているように感じられます。

レイドバックしたような静けさが全体を覆うしっとりとした、なんとなく間接照明を当てられている雰囲気の中に広がり、それぞれの作品と対峙していると、イメージとして就寝前に読む短編のようなナチュラルな人肌のぬくもりが伝わってくるような気がします。

桂典子"このこたちのカルナヴァル"

Gallery Art Composition

東京都中央区佃1-11-8 ピアウエストスクエア1階

5/30(土)~6/13(土)日祝休

11:00~18:00

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尋常でない密度にただ圧倒されます!

昨年のTCAFで拝見してその時も相当に印象に残ったのですが、今回の個展ではそのときに出展されなかったサイズの大作も多数展示され、さらにドローイングも一角にずらりと並べられて、振り向くとそこが壮観、そんな空間が創り出されています。

モチーフとして登場する食べ物に目を付けることで生命のイメージが加えられて、底にメッセージ性を感じつつ、一方でなんともコミカルな風合いに、凄まじく濃密な色調であるけど楽しい気分も盛り上がってきます。

井上裕起展 salaMandala/NIPPON-ISM

和田画廊

東京都中央区八重洲2-9-8 近和ビル302

5/19(火)~5/31(日)

13:00~19:00

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初日に伺い、最終日にもう一度。

展示の回を重ねるごとに凄みを増す、井上さんのサンショウウオ。

最初に拝見した展示でのてのひらに乗る木彫のカラフルなサンショウウオからはまったく想像できない、ダイナミズムもユーモアも加速し膨張した巨大サンショウウオが、背中のびっしりと鮮やかなモンモンとここだけ石で出来たクリクリのオメメで力強く迫ります!

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木彫、石彫と展開され、FRPという自由度の高い(と思うのですが、実際に作られる方にとってはどうなんだろう・・・)素材を手にしてどんどん表現に広がりがもたらされていくのは、続けて拝見していて大変痛快です。

さて次は、という期待もめちゃくちゃ膨らみます!

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Cellar Collection

Gallery Cellar

東京都中央区銀座1-21-14

5/26(火)~6/6(土)日月祝休

12:00~19:00

名古屋から銀座へと移転したGallery Cellar。その記念としてのコレクション展です。

中ザワヒデキさんや鈴木雅明さん、細川真希さんといったお馴染みのクリエイションが並び、それに出会えるのがまず嬉しいです。そして、鎌谷徹太郎さんのヴィヴィッドでリアリティが徹底して追求されたペインティングも!

また、現代美術のクラシックても呼ぶべき作品も展示されています。

伺った時点では今後の展覧会の予定は未定とのことなのですが、これからどんな企画が行われていくかも楽しみです。

池永康晟

ギャラリーアートもりもと

東京都中央区銀座3-7-20 銀座日本料理会館2F

5/20(水)~5/30(土)日休

10:30~18:30

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池永さんの久々の個展、うっかいして初日の前の日に伺って準備中のところをお邪魔してしまったのですが、もう少し早いタイミングで伺いたくも、結局最終日になってしまった次第。

久しぶりに、岩絵の具の美しさを堪能できたような気がします。

乾いた感じではなく、ほどよく湿度を保つ池永さんの作品の中での岩絵の具。しっとりとして、それがレイドバックした色彩のなかに潤いと色香を醸し出し、艶のある雰囲気を創り出しているように感じられます。

描かれる女性の仕草や表情にも引き込まれます。

憂いを帯びたような、そしてどこか達観しているような静かな落ち着きに満ちる表情。底に冷たさはなく、懐かしいような風合いや、やわらかくて温かみのある空気感がていねいに紡がれているように思えるんです。

じっくりと眺めていたい作品です、今回はすべて額装され、そのスマートな収まりかたも印象に残ります。

またあらためて拝見したいです。

岩崎宏俊 -Between Showers-

Gallery Terra Tokyo

東京都港区麻布台2-3-5 NOAビル1F

5/30(土)~7/11(土)日月祝休

11:00~19:00

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映像作品とその原画、さらにその作品からは制して描かれたドローイングで構成されています。

木炭かなにかで描かれるアニメーションとドローイングは訥々とした内省的な世界を奏で、じっくりと対峙しているとじわりと心に静かな世界感が響いてくるような感じです。

平田あすか "dejavu"

YOKOI FINE ART

東京都港区東麻布1-4-3 木内第二ビル6F

5/15(金)~5/30(土)日月祝休

11:00~19:00

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こちらも初日に伺い、最終日にふたたび。

今回の個展を拝見する前の時点での平田さんの作品のイメージは、「空間の世界」「余白の世界」といったものでしたが、意外にもそこに描かれた世界はリズムに溢れていて驚かされました。

イメージに近い作品も数点。

構成のシュールさ、描かれる顔の白目に奇妙な雰囲気を感じ、描かれるモチーフのひとつひとつすべてに何か意味を追い求めてしまうようななんとも不思議な奥行きのある世界が描かれ、それが広い余白に引き立てられるようにして提示されて、さらに「いったいなんだろう、どういう意味だろう」と自らその深みへと嵌まり込んでいきます。

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描かれる絵の緻密さにも惹かれます。

その状況、シチュエーションは凄まじくシュールで、思い浮かぶ物語をもし言葉にしていったら相当にワケの分からないものになるだろうと思うのですが、ひとたび描き味に目を向けると、支持体の和紙の質感と相まって、派手派手しさこそないものの、じんわりと響く渋い美しさが潜んでいるのが感じられます。

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そして今回の展覧会での大作群の世界感は圧巻です。

これまで空間にひとつのモチーフ、という感じで描かれていたのが群れをなし、さらに整然と並び、または無秩序に散らばって描かれ、奇妙な軽やかさを備えるカオスを放っています。

ワケの分からない感じも逆に加速、縮尺感のズレによるユーモラスな感じも加わり、不思議なイメージがさらに深まっていきます。

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シュールで謎めく、そして濃密なのに軽い短編を読んだ時の達成感、そんな印象が心のなかに灯ります。

いちばん近いのが舞城王太郎氏のサディスティックな小説だったり。

もっといろんなイメージがもらえそうな世界観です。

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入谷葉子展「お山の家」

neutron tokyo 1F Main Gallery + 2F Salon

東京都港区南青山2-17-1-1&2F

5/13(水)~5/31(日)月休

11:00~19:00(最終日:~18:00)

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こちらも最終日、の1日前に滑り込みで。

鮮やかな色彩が大きな画面いっぱいに広がっていて爽やかな雰囲気が心地よいです。

そしてこれがすべて色鉛筆で描かれているというのが凄い!

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整然とした構図とエッジの効いたシャープな色面とで描かれる日常の風景。

色鉛筆ということもあり、すべての色に緩やかなグラデーションは取り入れられず、それがグラフィカルな鮮やかさを醸し出しているように感じられます。

また、この作品を含む数点でコラージュが取り入れられ、この作品だとドアの取っ手の部分なのですが、それが全体的に自然な風合いのなかにアクセントとして軽やかなインパクトをもたらしてくれます。

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紙に直に描かれる作品で、紙の大きさを色鉛筆で埋め尽くすことへの身体性も、キャッチーな色調と構図が奏でるポップな要素と相まって不思議なイメージを膨らませてくれます。

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額装された作品も多数展示されていました。

色鉛筆の風合いが効いて、身近な感触が嬉しいです。

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もっともインパクトがあったのが、壁に展示された2匹の犬。

それぞれ絶妙の仕草が再現されていて、他の作品での落ち着いた感触とはまた違う動的なイメージが伝わって痛快に感じられます。

それぞれの作品に、入谷さん自身の経験や想いが響いているような感じも伝わってきます。

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櫻井智子展 「わらべの目」

neutron tokyo 3F Mini Gallery

東京都港区南青山2-17-14-3F

5/13(水)~5/31(日)月休

11:00~19:00(最終日:~18:00)

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入谷さんの個展と同会期で開催の櫻井智子さんの個展。

さまざまな動物たちが墨で描かれ、水墨特有の滲みの味わいや一転しての細かい描き込みとで、水墨画と聞いてまず思い浮かべる深みと、予想外にも細やかなテクスチャーで緻密に模様などが描き込まれていて、思わず気持ちが前のめりに。

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圧巻の密度が痛快です。

タコを描いた作品、足の吸盤ひとつひとつがていねいに描かれ、さらに迫力のある目やいわゆる頭部の不思議な紋様などがフィクショナルな感触を立ちのぼらせ、動的なダイナミズムをも醸し出していて壮観です。

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亀も面白いです。

表情の絶妙に意志を感じさせ、深い物語性を奏でる重厚な存在感がまず堪らなく感じられます。

それでいて、いわゆる「ジャポネスク」な雰囲気は失われていないのが嬉しかったりします。

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大作から小品まで、さまざまなサイズの作品に描かれた動物たちは数点を除けば一様に無垢で、さらにそれらが持つ格好よさがまた痛快です。

実に見応えのある水墨画です。

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TEAM 15 MIHOKANNO「Hello! MIHOKANNO」

トーキョーワンダーサイト渋谷

東京都渋谷区神南1-19-8

5/30(土)~7/20(月)月休(祝日の場合は翌火休。7/20は開館)

11:00~19:00

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今、上野の森美術館での高橋コレクション展「ネオテニー・ジャパン」や原美術館での「ウィンター・ガーデン」と、今の日本のコンテンポラリーアートのアーカイブ的な展覧会が開催されていますが、そういう視点でいくとこの展覧会も見逃し厳禁な企画展だと思うのです。

自然発生的に集まったメンバーの作品が並び、それぞれが個展としてひとつの空間を構成し得るほどの力作がパッケージされ、それくらいのものがひとつの空間で響き合い、ぶつかり合いながらポジティブなエネルギーを発しているように感じられます。

イ・スーキョン

OTA FINE ARTS

東京都中央区勝どき2-8-19-4B

5/30(土)~7/4(金)日月祝休

11:00~19:00

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エレベーターを降りた瞬間に目に飛び込む光の塊、その下に広がっている深みある空間に圧倒され、一気に心が引き込まれます。

さまざまな陶器の欠片を金継ぎで再構築し、別の有機的なフォルムのオブジェが創り出されていて、その感触を低く設置された蛍光灯の強烈な明るさの照明が照らし、一切の演出を排除しオブジェそのものが持つ美しさが残酷なまでに引き出されていて、その様子にさらに圧倒されてしまいます。

奥へ入って左手にある赤い線が踊る大作も凄まじいエネルギーが秘められているように感じられます。

見附正康展

OTA FINE ARTS

東京都中央区勝どき2-8-19-4B

5/30(土)~7/4(金)日月祝休

11:00~19:00

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大皿に施される、信じられないくらいに緻密な紋様。迷いなくすらりと伸びる線の交錯が幾何学的な奥行き感を放ち、緻密なドットが豊かな濃淡を生み出しています。

4点の大皿、それらに複雑に展開される細密な赤絵の世界。イ・スーキョンさんの陶の表現とはまた異なる深みが奏でられ、そのコントラストも深く印象に残ります。

羽部ちひろ

MEM

大阪府大阪市中央区今橋 2-1-1 新井ビル4階16号室

5/16(土)~6/6(土)日月祝休

11:00~18:00

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Chihiro Habu exhibition

MEM

2-1-1-4F,Imabashi,Chuo-ku,Osaka-fu,Osaka-shi

5/16(Sat)-6/6(Sat) closed on Dunday,Monday and national holiday

11:00-18:00

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なんだかイイ味出てるんですよ(笑)。

MEMでの羽部ちひろさんの個展です。

昨年開催された「ペインティングの恋人」やFUKUGAN GALLERYでの3人展などで作品を拝見して、もってりとした感触と凄いスケールの膨らみを持つ世界観とのギャップがなんとも味わい深くて印象に残っているのですが、今回初めて拝見する個展での羽部さんの作品群、ドールハウスっぽいシチュエーションをモチーフに、ユーモアをより膨らませたかのような楽しげな雰囲気の作品が並んでいます。

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DMに採用されている作品は、予想に反して比較的小さめです。

筆の流れがシャープな雰囲気を漂わせる背景の紺色、そこに「いかにも」なかたちの家の断面が、紺色の背景とは違う場所なんですよ、というのを強く現すような、でもどこかおっとりとした赤で現され、その中にさまざまな要素が入り込んでいます。家具の可愛らしい雰囲気と、屋根裏の壮大さとのギャップが楽しい!

描いたところもあれば、コラージュで表現されているところもあって、その自由度の高さもまた楽しいんです。

そして何より、1階と2階とを繋ぐ階段のかたちが最高です(笑)。

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テーブルを囲む人々のシルエットが描かれた作品。

赤の稜線で描かれる人々、その内側がモノクロームの林になっているあたりが独特の幻想性を醸し出しているように思えます。

黒の背景、その上に広がる空色と両端に灯るエンブレム、さまざまな要素が不思議な関係性を生み出して、抽象的な物語性を奏でます。

で、嬉しいのがテーブルの上の山!このモチーフが出てくると羽部さん、という感じがするんです!

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大きな作品、こちらでは家の中をモチーフに、さまざまな要素が描かれていて、これまた楽しいんです。

カラフルなソファにさり気なく描き込まれる林、随所に施されるコラージュのアクセント。部屋の中のさまざまなものが小さくても印象的な雰囲気を醸し出しながら、さらにコミカルな縮尺感と奥行き感も重なり、なんとも不思議で痛快なシーンとなって現れているように思えます。

案外身近な感じで、でもいろんな発見が次々に見つかっていきます。

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小品や、唯一の立体的なアプローチの作品も

なんだかもう、個人的に階段がいちいちツボで。

これ、

どうやって登んだよ!Σ( ̄口 ̄;)

もとい、

登れんのかよ!Σ( ̄口 ̄;)

って感じなのが堪らないです(笑)。

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一角に集められた小品群もまた、楽しい雰囲気を醸し出しています。

実験的なもの、これからの展開が楽しみになってくるようなものもあれば、今回の展覧会に一貫するテーマに沿ったようなものもあって。それぞれが独特のイメー時をもたらしてくれます。

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キャンバス、紙、それぞれの支持体で、自由に伸びやかに繰り広げられる場面。さまざまなものが唐突に登場しているようで、眺めていると奇妙で滑稽な説得力がじんわりと心の中に届いてきて、結構な壮大さを持ち合わせていながらもなぜだかやんわりと和やかな気分にさせてくれます。

自然体でありつつ、イメージに対する「ピュア」な姿勢はもしかしたらきっちりと保たれているのかもしれない、とも思えます。この広がりや膨らみがこれからどんな楽しい世界を見せてくれるかも楽しみです。

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池田幸穂展「晴れた日」

GALLERY MoMo Roppongi

東京都港区六本木6-2-6 サンビル第3 2F

5/15(金)~6/5(金)日月祝休

12:00~19:00

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IKEDA Sachiho "The fine day"

GALLERY MoMo Roppongi

6-2-6-2F,Roppongi,Minato-ku,Tokyo

5/15(Fri)-6/5(Fri) closed on Sunday,Monday and national holiday

12:00-19:00

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のんびりほっこりとただよう雰囲気、ふわりと痛快な空間性。

GALLERY MoMo Roppongiでの池田幸穂さんの個展です。

さまざまなサイズの作品が並び、そこかしこから初夏らしい、清々しい色彩が広がります。

入り口から右手の壁面に展示された、今回もっとも大きな作品、これが気持ちいいんです。

ただその景色を目で辿っていくだけでなんとも愉快な気分が盛り上がってきます。同時に、そこかしこに描かれる人たちの和やかな感じ、のんびりと芝の上に車座になって座っていちゃり、緑に囲まれながら一息ついていたり、なんとものどかな日常が描き現されていて、これだけ大きなサイズの作品でありながら、実に身近な印象で、眺めているだけでホッとするんです。

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大作では画面いっぱいに庭園が描かれていてそれ自体のダイナミックさが痛快ですが、他の作品ではユニークでユーモラスな空間性が繰り広げられててこちらもまた楽しい!

敷石、芝、松、桜といった日本的なモチーフがほどよくデフォルメされて描かれ、それがまず庭園のなかに配置され、さらにその庭園がひとつの空間のなかに収められて、不思議な空間性が創り出されています。

奥行きの感じもなんだかシュールで、それがコミカルな空気を奏でています。

さらにその庭園を囲むようにころころと並ぶワンポイント的なモチーフがかわいいの(笑)。

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一転して、

家!Σ( ̄口 ̄;)

な作品。

ま、驚くようなことではないのかもしれませんけど、その直球な構図があたたかい笑いを誘います。

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そして、遊び心にも溢れます。

何ていうか、

押すと転がるかも!Σ( ̄口 ̄;)

みたいなずんぐりむっくりとしたお家のかたちがまず面白い!

庇とか絶妙なツッコミどころだし(笑)。

さらに、壁や屋根の明るい色使いとムラのある色面の味わい深さ、そして何より、入り口のガラス面に映り込むように描かれる葉っぱやアンテナを伝う電線を覆う蔦などの描き込みがなんとも楽しい!ひとつひとつのかたちが繋がらず、キワキワで余白を保ちながら、リズミカルに描き込みが繰り広げられていて、さらに色彩のバラエティの豊かさも相まって、軽やかにうねる奥行き感が堪らないです。

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楽しい空間性はさらに深化します。

ふたつの木に挟まれた空間に広がる情景。蛇行する川のキュートなおおらかさ、さまざまな色に染まる山肌、夕焼けと闇のグラデーションに浮かぶ赤い月、またはお陽さま。

聳える2本の樹木の表皮のレインボーカラーがまたユーモラスな気配を醸し出し、一転してその外側の何もない感じが異次元のイメージを促して、なんとも不思議なシチュエーションとなって現れています。

淡い絵の具のテクスチャーが軽やかな風合いを醸し出しているのにも惹かれます。

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さまざまな空間が繰り広げられています。

それぞれに味わいがあり、不思議な縮尺感とコミカルな風合い、そして細かくもシリアルになりすぎていない描き込みが楽しい雰囲気を生み出しています。

そのひとつひとつと接していて、それぞれに結構なスケール感がもたらされているのですが、軽やかな色使いなどによって和やかな気分で心を満たしてくれます。

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そして、さらにユーモアが加速して・・・!

あーもう!

かわいいじゃないかぁぁぁ!Σ( ̄口 ̄;)

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描き手の楽しい気持ちがあふれているのが伝わってきて、こちらも楽しくなってきます。

何より、この色に囲まれているとホッとするというか、細かくても歩く早さのテンポで軽快に紡がれるリズム、色使いも構図も実は大胆なんだけどそこに観る人を圧倒するような迫力はなくて、どこまでもおおらかで和やかな情景が展開されています。

あらためて、展覧会のタイトルが心に軽やかに響きます・・・!

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佐藤雅晴「ピンクのサイ」

Gallery Jin

東京都台東区谷中2-5-22 山岡ビル1F

5/9(土)~6/6(土)月火休

12:00~19:00(最終日:~17:00)

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Masaharu Sato "Pink Sigh"

Gallery Jin

2-5-22-1F,Yanaka,Taito-ku,Tokyo

5/9(Sat)-6/6(Sat) closed on Monday and Tuesday

12:00-19:00(last day:-17:00)

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Gallery Jinでの佐藤雅晴さんの個展です。

佐藤さんの作品を拝見して、その精度に驚かされます。

手、筆、版と描く「道具」は広がっていき、デジタルが第4の道具(ホントに4番目かどうかは別にして...汗)として機能していることが実感でき、そこに深い説得力を感じます。

写真をコラージュして創り出されるシュールな場面。コラージュの時点で残る、異なる画像から合わせられたその接する部分への違和感を、加工して処理するのではなくマウスで「描く」ことであらたなひとつのシーンを生み出す...その緻密さと、仄かに残る「描き痕」が、新鮮な驚きと味わいが伝わってきます。

あらぬところから現れる両手で顔が覆われる女性。

至近で眺めて、圧倒的な写実性、特に髪の毛がそれこそ1本1本描かれていることに目を剥き、大いに驚かされます。

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もともとコラージュによって構成される情景は、異なる縮尺のモチーフが奔放に組み込まれ、圧巻の写実性とによって凄まじくシュールな世界観を紡ぎだします。

地面が落ち葉でびっしりと覆われる冬の林のなか、そもそもこんなところに穴があること自体が相当に変な感じなのですが、そこから巨大な手が現れて、尋常でない重厚な迫力がシャープに放たれます。それを見つめる女性、空の色、密集する樹木の表皮などが奏でる自然な雰囲気がこの状況の不自然さと不思議なギャップを生み、精緻な写実表現がこれほど大胆な景色のキッチュへの疑念を消し、その不思議さに意識がするりとのみ込まれていきます。

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比較的自然な場面が描かれた作品も、不思議な空気感が醸し出されているように感じられます。

巧みに表現される陰影、光の表情。垂れる受話器や倒れたカップからこぼれるコーヒーからは、その場面に人がいたこと、その残り香を繊細に放ち、たったこれだけの要素でJISに深く豊かな物語性を滲ませます。

徹底して追求される写実性は、ある部分ではギリギリの際で写真に近づくことが抑制されているように思え、、逆に写真以上の鮮烈な臨場感を表現しているように感じられるところもあったりと、描き味に対して、また描き味からもさまざまな想像が膨らみます。

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実にバリエーションに富んだ情景が並べられています。

それぞれが物語としての独立性を持ち、渋く繊細な気配を奏でながら、静かにイマジネーションを刺激し、その広がりを促してくれるような....

読後感がやさしく清々しい掌編の小説に触れたような、そんな気分に浸れます。

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写真をパソコンの画面上でトレースして描く、という手法で制作されるそうなのですが、単に写実性が追求されているだけでなく、そこにさまざまな、細かい解釈の交錯が無数になされることで、ユニークな気配が紡ぎだされているように感じられます。写真と見紛うほどの精度でありながら、仄かにアニメーション的な雰囲気も持ち合わせていて、それが独特のファンタジーを想起させてくれるようにも思えます。

佐藤さんの作品を拝見してさまざまな想像が生まれるのが楽しいんです。

デジタルで描かれる作品群、つまりはここに展示されている作品はすべて「数値化」されているわけで、それはすなわち、例えばタブロー作品と比較したときに同じものが出来てしまう可能性、偶然そういうことが起きる確立が格段に高いわけで。。。

そのことに対してなんとなく「残念な感じ」をこれまで持っていたのですが、テクノロジーが進化し、ここまで緻密な表現が可能になっている現実を目の当たりにし、そして「これを再現するために費やされる時間」×「この作品を創り出すための想像力と集中力」の分量を思うと、「残念な感じ」というのは霧散して、あらためてここに描き上げられた世界に対しておおいに感嘆させられます。

この手法での表現、どこまで行くのだろう、とワクワクしてきます。

今回の個展ではアニメーションは発表されていないのですが、101TokyoでのGallery Jinのブースや今年の岡本太郎賞で拝見したアニメーションのシャープな世界観も印象に残っていて、機会があればそちらの展開もあらためて拝見したいです。

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今津景 個展

NODA CONTEMPORARY

愛知県名古屋市中区栄3-32-9 アークロック栄ビル3F

5/8(金)~6/6(土)日祝休

11:00~19:00

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Kei Imazu exhibition

NODA CONTEMPORARY

3-32-9-3F,Sakae,Naka-ku,Nagoya-shi,Aichi-ken

5/8(Fri)-6/6(Sat) closed on Sunday and national holiday

11:00-19:00

Google Translate(to English)

さらにヴィヴィッドさと深みを増す臨場感。

NODA CONTEMPORARYでの今津景さんの個展です。

巧みな色使い、筆遣いで展開される光の表現、それに奥行きや動的なイメージなどが深化し、作品の中に描き上げられる独特の妖し気な雰囲気に、迫力が伴ってきているような印象を覚えます。

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「絵画」としての味わいが今まで以上に強く感じられます。

それぞれ「光」と「影」を現す暖色と寒色とを繋げるグラデーションは滑らかかつシャープ。奥へと広がる都会の街並みの美しいパースは精緻に描き込まれるビル群の硬質な感じとそこに漂う気配のあたたかみとが見事に響き合い、またさらに遠くで広がる空のクラシカルな絵画的風合いと、手前に何故か屋外のソファでアイマスクをしてくつろぐ男性のシュールなシチュエーションとのギャップ、そしてそれでも崩れない絶妙なバランスがフューチャリスティックな世界観を奏でているように思えてきます。

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時おり顔をのぞかせる朽ちた情景感、どことなく殺伐として、寂しげ、という感情を超える空気感のなかに、そんなの関係ないとばかりにいつもの日常を謳歌するかのような人々の仕草が不思議な雰囲気を発します。

下の作品、後ろに浮かぶように広がる現代建築のシルエットと手前の土が剥き出しで廃棄場のような風合いを感じさせる場所、シチュエーション的には切羽詰まった印象を持つのですが、そこに立つ3人の子どもは無邪気ケータイを掲げて写メを撮る...全体を覆う大胆な陰影の表現の美しさ、それぞれのモチーフの緻密な再現性、それらが跳ね返ってシュールさをより先鋭的なものへと押し上げているような感じもしてくるんです。

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ビル群のみを描いた作品も1点展示されています。

この作品のクールさが尋常でなく...。

ビル窓のシルエット、しかしそれらは無論整然とビルの壁に配列され、その硬質なリズム感を放ちます。しかし、わずかに滲んだような風合いが揺らめく空気感や妖し気な気配を思い起こさせます。

そして、構図の面白さにもおおいに惹かれます。ビルに挟まれ、狭められた視界に広がるスカイスクレイパーの密集。異様なまでに過剰に放たれる明るい光はその気配に焦燥感を、同時に現代に降りる神々しい気配のイメージもたらしているようにも思えます。

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新しい展開の作品も。

こちらも大変興味深い空気感が大胆に横たわっています。

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殺伐とした気配感は急速に加速します。

さらに寄る視点で描かれた情景。佇む女の子の表情や仕草、その足下などに散らばる廃材らしきもの、床や壁など、緻密に再現されながら、いったいここがどこなのか、屋内なのか外なのかも分からないシチュエーションの謎めきにも惹かれます。

奥にある崩れかけた家、その壊滅の様子の緻密な描き込みと、一転して画面のそこかしこに施される垂れる絵の具のアバンギャルドさ。要素のイメージの強さがあたかも勝負させるかのように画面に注ぎ込まれ、それが危うげな雰囲気をもり立てているような気がします。

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これまで折に触れて拝見している今津さん、拝見する度に、加速する再現性と、常に投入される実験的な要素に驚かされ、魅了されます。

画面の距離感の変化も興味深く、また、シュールネスも力を得てさらに鮮烈な臨場感をもたらしているように感じられます。

今回の個展ではメインスペースでは大作がずらりと並び、その臨場感にも圧倒された次第です。

新しい作品ほど、登場する人物の顔がていねいに描かれていることも興味ぶかいです

これからの展開も楽しみです!

今津景01.JPG

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writer name:幕内政治
birth:1971/6/17
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