![]() |
![]() |
|
TAGBOATのオフィシャルアドバイザーであり、アートディーラーとして国際的に活躍している「アート・オフィス・シオバラ」代表・塩原将志さんをお迎えして今のアート状況をいろんな側面からお話いただきました。以下、2008年3月15日にエムアウト本社で行われましたセミナーのレポートです。 文/安田洋平 |
毎月1、2回海外に出かけてはアート作品を見て回るようにしています。第一に私が心がけていることは「できるだけ数を見ること」です。たくさんの作品に出会い、いろんな人に会ってできるだけの情報を集めるうちに精度が上がってくると思っています。
美術品の価値は何で決まるか。最初に申し上げたいのは、作品が良くなければ価格に反映することもない、という点です。資産価値を決定する上で最初に来る前提とは「良い作品であること」。
では良い作品とは何でしょう。私が考える、そのための条件を挙げてみます。
条件その1 「今の時代を反映していること」。現代アートは今の時代を伝えるためにあると思います。後世、その作品が普遍的価値を持つとしても、“時代の必然”を映し出していることが条件とされるのではないでしょうか。
条件その2 「迫真性を持つこと」。美術評論家・市原研太郎さんの言葉「描かれたものが実際のもの以上に迫真性を持っているか」(『ゲルハルト・リヒター 〜光と仮象絵画〜』)にある通り、『事実以上の感動を与えてくれるもの』であることが大事。
この2点を考えながら見て、3000ドル以下の作家なら自分の「目」を信じて買います。今可能性があると思って買い付けている作家は、私が死んだ後本当の評価がされるのかもしれない。しかし本当にいいものは必ずスタンダードとなると信じています。
絵には2種類の価格があります。1番目が「プライマリー・プライス」。取り扱い画廊の販売価格です。その作品が最初に世に出る時の価格ですね。画廊とアーティストの取り分が一緒になって設定されます。プライマリー・プライスは、画廊の信頼性・影響力・企画力・販売力、あるいは作家のキャリア・将来性・作品の完成度などが価格決定の要因となってきます。
2番目が「セカンダリー・プライス」。再販売価格のことです。これは作品が一人歩きし、売り手と買い手の合意によって決まる価格です。またそこで介在するオークション、ディーラーによる手数料なども価格決定の要因となってきます。他に「地域」や「時期」も価格に影響を及ぼします。たとえば最近のアンディーウォーホルのオークションプライスを見ていると、ロンドンで回顧展があった後に高くなっている。大きな露出度があった後に価格も大きく動く可能性があるのです。
私のようなアートディーラーは、まずアートフェアにできる限り行くようにしています。世界中からギャラリーが集まってくるアートの見本市・アートフェアは、現在、主要なものだけでも20以上あります。現在一番大きなアートフェアとして知られているのは「アートバーゼル」ですが、このような大規模なアートフェアだと、付随して小さなアートフェアも行われるので、最初に大きなフェアを見て、それから小さなフェアを見て若い作家若い画廊を見て回ります。さらにフェアの時期は世界中からアートの好きな人が集まるので、画廊もいい展覧会を入れ、美術館で行われる展覧会も良い企画のものが多いので、それらもチェックします。
ディーラーとして作品を購入するにあたってチェックしていることを挙げてみます。
(1)過去のオークションの履歴/落札価格ばかりに目が行きがちですが、実は総出品件数・総落札件数も大事です。いくら高く売れていても1点2点では信頼性に乏しい。総落札件数が多ければそれだけ社会的ニーズが高いということになります。
(2)美術館展覧会への出品歴/露出度が高ければそれだけ価格の信頼性も出てきます。ですから大きな美術館でどのくらい出品歴があるかという確認は欠かせません。加えてトリエンナーレ、ビエンナーレといった国際展に出ているかどうかも重要です。こうした国際イベントに出るときには作家は気合が入るので、その作家にとって後々代表作となるような作品を出すこともよくあります。
(3)パブリックコレクション/どこの美術館に収蔵されているかを示すデータです。買うという行為は対価を出して自分のものにするわけなので、パブリックコレクションに入っているということはその作家を評価する上で非常に有効な指標になります。
(4)受賞歴/海外の有名な賞は露出度も高いですし、価格も含めて大きな影響力を持っています。例えばロンドンのテートギャラリーが主催する「ターナー賞」があります。授賞式がテレビで放映されたりするような大きなイベントで、ダミアン・ハースト、クリス・オフィーリはじめそうそうたる作家がこれまで受賞しています。 他にはアメリカの「ヒューゴ・ボス賞」があります。これはファッションブランドのHUGO BOSSが1996年に始めた賞で、今まで受賞した作家にはマシュー・バーニー、リクリット・テラバーニャなどがいます。ここは何が大きいかというとグッゲンハイム美術館の館長が審査員に入っていて、受賞者はグッゲンハイムで個展が開かれることになっている点です。
(5)取り扱い画廊/取り扱い画廊の「他にどんな作家を扱っているか」を調べます。画廊というのは作家と一緒に戦っていく運命共同体であるので、画廊を見ないで作家・作品を考えることはできません。そこの画廊から出ている出版物も目を通します。美を扱う仕事ですから出版物にデザインセンスがなければいけないし、あるいはどんな評論家がその画廊をサポートしているのかなどもくまなくチェックします。
(6)作家本人と話す 作家と一緒に作品の前に立ってその作品のことを話します。自分の作品の前に立って嘘をつける作家はいませんから。
画廊と取引で付き合うようになると、取り扱い作家の年間予定の情報を送ってきます。その画廊で行う個展の情報はもちろん、美術館で行う個展、グループ展、アートフェアへの出展予定、作家関連の出版物にいたるまでそれを見れば知ることができます。同時に、マネージメントがしっかりしている画廊かを見る一つの指標と言えます。画廊のウェブサイトを見てどういう作家を扱っているか・どういう活動をしているかを研究するのも大事でしょう。