なぜ絵を集めようと思ったのですか? 『こころに利く漢方』著者であり、漢方医学の専門医、青山杵渕クリニックの杵渕先生に、絵を持つことで得られる楽しみについてお聞きました。 杵渕先生のご出発は精神科だったそうですが、何でも精神科医の先生にはアートコレクターが多いのだとか?
『こころに効く漢方』の著者、漢方医学研究所 青山杵渕クリニック所長の杵渕 彰先生がアートコレクターとしての顔もお持ちだと聞き、さっそくお話を伺ってきました。
先生はもともと精神科医から出発されていますが、うつ病、不眠症と言った精神ストレスからくる疾患や更年期障害に漢方が有効ではと考え、13年前から現代医学的治療と漢方の処方を組み合わせた治療を続けてこられています。近年、漢方はさまざまな慢性疾患に良いとされ、医院で使われるケースが増えてきていますが、先見の明を持たれていたということができるでしょう。
杵渕先生は現在、日本の版画家さんから、アメリカの現代アートまで幅広く絵のコレクションをされています。「もともとは岩手医科大の学生だったときに、同じ町の大学で美術をやっている人たちと一緒に遊んだりしていたことがきっかけでしたね。同年代だし、私の知らない世界のことを知っているから、話していて楽しかったのです。それで個展を見に行ったりもするようになった。その頃はお金がなくて買えなかったですけど(笑)」
卒業後、東京の病院に勤務してからは、画商さんと知り合いになりいろいろ教えてもらううち、絵を買い始めるように。わかったのは「絵は、手元に置いてみるとわかってくることがある」ということ。何を考えてこの絵を描いたのか、そんなことを想いながら見るのは楽しい。「普通の商品と違って、個人的な動機から、表現しなければ、とつくられたところが面白い。そのときの、その人のメッセージが込められている」
またニューヨークに旅行で行ったときには、画商さんから紹介してもらった方に、オークションの下見会などに連れて行ってもらったりもしました。「いろいろ説明してもらいながら見ると楽しいんですよね」。そのときの体験がきっかけとなって、日本に帰ってからアメリカの現代アートも購入するようになったということです。
今、クリニックにはおだやかな気分にさせてくれる感じの絵が飾られています。「アートに直接的なセラピーの効果があるとかおおげさなことではありませんが、空間のホスピタリティは大事にしています。絵を飾るのもそのひとつ。また私自身、自分の近くに心地よいと感じられるものを置いておきたい」。
杵渕先生はいろんな方と出会う中で得た趣味を楽しまれているだけ、と自然体の姿勢を終始お崩しになりませんでしたが、つねに進取の精神を忘れずいろんなものに好奇心をもって触れることこそ人生の豊かさ。そんなことを改めて感じた一日でした。
文/安田洋平

青山杵渕クリニック所長・杵渕 彰先生。お気に入りで集めているという版画家・落田洋子さんの作品と。
杵渕先生が岩手医大の学生だった頃からの旧知の間柄という版画家・百瀬寿さんの作品。
診療所内。絵があることでやわらかさ穏やかさが生まれている印象。