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「≒天明屋尚」映画公開記念! 映画監督に聞いたアーティストを『撮る』ということ
海外では普及しているアート・ドキュメンタリーの分野。日本でもようやく注目が高まりつつあるようです。ドキュメンタリー映画「≒(ニアイコール)」シリーズは、テレビのドキュメンタリー番組とは違う視点から、アーティストの、人間としての魅力に迫るドキュメンタリー。今夏公開の第4弾の主役は、FIFA公式アートポスターに唯一人の日本人として選ばれ、タグボートギャラリーセレクション・ミヅマアートギャラリーの『旬』の作家、天明屋尚。映画「≒天明屋尚」の監督・石崎豪氏に公開前に映画の見所などをうかがいました。
石崎豪氏

「≒天明屋尚」の監督・撮影・編集を手がけた石崎豪氏

©2006 B.B.B.INC
映画『≒天明屋尚』オフィシャルサイト
http://www.bbb-inc.co.jp/tenmyouya
2006年6月3日(土)より、東京渋谷ライズエックスにてレイトショー。
http://www.cinemarise.com
2006年6月24日(土)より、大阪シネ・ヌーヴォにてレイトショー。
http://www.cinenouveau.com
2006年6月24日(土)より、金沢シネ・モンドにてレイトショー。
http://www.cine-monde.com/

©2006 B.B.B.INC.

©2006 B.B.B.INC.
映画では、作品制作シーンや展示設営など見所満載

左より清水プロデューサー、石崎氏、天明屋氏、井瀧プロデューサー

「≒天明屋尚」完成披露試写会
左より清水プロデューサー、石崎氏、天明屋氏、井瀧プロデューサー

アートへの入口

−−「≒(ニアイコール)」シリーズは各監督が撮りたい被写体を選ぶ、というコンセプトですね。なぜ天明屋さんを選ばれたのですか?
僕は現代美術にはなじみがなく、ずっと映像や音楽という分野で活動してきました。美術を知らないのに撮りたいと思うアーティストは? と言われ頭に浮かんだ人はただ一人、それが天明屋さんでした。たまたま展覧会を通りがかり「現代日本若衆絵図」の鎌倉の大仏やパラパラを一目見て「カッコいいな」と。現代美術から、ではなくて感性の切り口から入ったんです。スタイルは日本画なのに、テーマはヒップホップやストリート。その独特のフィルターの通し方に惹かれました。そんな多面性の、素の部分に近づきたい、撮ってみたいと思い、指名しました。
もうひとつの理由は「日本ってカッコいいんだ」っていうことを伝えたかった。1999年から、NYで映像作品を発表していたんですが、それまでNYの影響を受けて制作していた作品を観たお客さんに「何で日本人なのに海外の真似をしているの?」と言われた事を機に、日本をテーマにした作品作りをしていこうと思ったんです。そんな時に天明屋さんの作品に出会って「ああ、もうやっている人がいる」って思いました。 最近も、日本の老舗企業が海外の企業に買収されたりとか、日本全体が元気なくなっちゃった気がするけど、自国に対する自信がないというより、自国にカッコいいものやカッコいい人がいるのを知らないだけだと思うんです。
−− 一般的なドキュメンタリー作品との違いは何でしょうか?
ドキュメンタリーっていうと淡々と記録していく手法が一般的かな、と思います。時間通りに追って、カット編集をして…。だけど僕の作るドキュメンタリーはグラフィック的な編集をしています。
アーティストの魅力や素顔を引き出しながらありのままを撮りたい、追いたいって気持ちが強かった。筋書きや構成は全くなく、最初からひたすら撮りました。僕にとっては、どれだけ空気になれるか、が重要でした。カメラに見られてるってやっぱり普通じゃないですからね。意識しちゃう。どんなに近づいても常にカメラがあること自体不自然だから、そうした意味では「=(パーフェクトイコール)」ではない。僕のファインダーを通した天明屋さんで、主観も多少入っているから「≒(ニアイコール)」なんです。

「天明屋尚」というパズルのピースを集めた

−−映画の冒頭で天明屋さんも「俺を入口にして美術に興味を持ってもらえれば」と…
そう、その言葉が一番のテーマ。最初、天明屋さんはあまり自分のことをしゃべらない。言葉ではなく絵で表現する人だから当然なんですが、構成が難しいから、じゃあいろんな人に聞いてみようと、取り巻く人たちにインタビューをしました。彫り師の方や中学生、現役教師の声が拾えて厚みが出ました。よく映画・映像の編集って感情をつなぐ、とか言われるんですが、今回は言葉をつむぐ作業でした。話を聞くうちにいつの間にか僕も「狩野派」が説明できるようになったり、刺青のかっこよさに魅せられたんです。「天明屋尚」というパズルがあったら、そのピースピースをいろんな人に聞いて集めた感じ。自身は一匹狼で「孤高の絵師」っていうコピーなんだけど、新しい発見はみんなにサポートされているなって言う、愛を感じました。
−− 注目して欲しい映画の見所は?
ものづくりしている人には天明屋さんの作業風景を見ると、思うところがあるはず。何でここまでやるんだってくらい描き込むし。スピード重視の現代には逆行しているかもしれないけど。「見所」ならぬ「聞き所」としては描いているときの筆の「キュッキュッ」って音を聞いて欲しいですね。これは中盤あたりから出てきます。最初の頃は、遠慮や距離感があって近づけないんです。もちろんズームで寄ることはできるけど、3mの距離から撮るのと、30cm至近まで近づいて撮るのでは全然違う。顕著な点が、「音」です。

浮世絵のように親しめる映像ドキュメンタリー

−−CMドキュメンタリーと映像ドキュメンタリーの違いは何でしょう?
一番違う点は、映画は皆さんがお金を払って見に来る、という点ですね。CMは商業サイトやスクリーンで無料で見れる。もうひとつは、長さですね。僕が作ったCMは1本あたり2分くらいだけど、今回の映画は80分という長編だから、勢いだけでは維持できない。ドキュメンタリーというとアカデミックなモノクロで、という印象が強いけど、根本は映像という娯楽だと思っているので楽しめないといけない。
−−好きなドキュメンタリー作品ってありますか?
「水曜どうでしょう」というドキュメンタリーバラエティー番組。ローカルの深夜枠が全国区に進出して来たんです。全然決めてなくて、行き当たりばったりの収録を編集している、あれこそドキュメンタリーの真髄。BGMや効果音を多用せず、見る人の感情をあおっていなく「≒(ニアイコール)」と同じように言葉でつないでいます。売れたからって浮き足立たないで、もっとローカルに密着して、自然体でやっている藤村ディレクターのスタンス、ドキュメンタリーなのに娯楽の要素もあり、作品の持つ「空気感」が楽しめるところが素晴らしいと思っています。自分にとって「アート」って答えが一つじゃないと思ってる。人それぞれ答えがあって。
−−初めて取り組まれた映画作品、クランクアップを迎えた時はいかがでした?
正直、編集どうしようって気持ちが強かったです。始めから終わりまでずっとてこずっていましたから。また、“映画”を作るという事で、力んでいた私に井瀧プロデューサーが映画は総合芸術なんて言われていているけれども、浮世絵的な感覚で作ってもいいんじゃないとアドバイスをくれた時は、肩の力も抜け編集作業もうまくいったのを覚えています。また、エンドロールを作っていたとき、撮影中は僕と天明屋さんだけで作業をしていたけど、実はたくさんの人が関わってひとつの作品が作り上がったのを実感しました。映画ならではの醍醐味でしたね。ストリートから入った自分が作ったから、アートファン以外の人も楽しめるはず。アートに興味を持つ入口になればうれしいですね。

<インタビュー収録 2006年5月10日>

タグボートで買える天明屋尚の作品はこちら
http://ec.tagboat.com/jp/products/list.php?author_id=111&tngs_flg=0

おすすめの作家 天明屋尚特集
../select/vol23.htm

石崎豪氏・プロフィール

1975年5月13日生まれ。
1993年神奈川県立菅高等学校卒業後、一旦は映像制作会社に入社するが、2000年に独立。1999年〜2001年ニューヨークでのコラボレーションイベント「SYNCHRONIZATION(シンクロナイゼーション)」を開催。映像作品を発表する。
現在フリーランスで国内はもとより、国外の映像制作にも携わる。
近年では、ABSOLUT VODKAワールドキャンペーン「ABSOLUT METROPOLIS」にてFilm Directorを務める。本作が、長編映画初監督となる。
石崎豪ウェブサイト
http://homepage.mac.com/gomixx/

映画鑑賞券プレゼント

映画公開を記念して、タグボートでは5組10名様に渋谷・ライズXでの映画鑑賞券をプレゼント致します。

ご応募ありがとうございました。応募は6月15日をもって締め切りました。発送をもって当選のお知らせとさせていただきます。