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タグボートセレクション ゲルハルト・リヒター
ゲルハルト・リヒター 世界を映し出す、美しい鏡
ジャーマン・アート特集の最後を飾るのは、ゲルハルト・リヒターです。日本初となる本格的な回顧展が金沢21世紀美術館で開催中(10/26で終了)、11月3日からは千葉県佐倉市の川村記念美術館で新たに始まります。リヒターの本物を見ることができる、貴重な機会。展覧会とあわせて、ぜひ本稿をお楽しみください。
「2本の蝋燭」 1982年
「2本の蝋燭」 1982年
油彩、カンヴァス 個人蔵(c)Gerhard Richter
*写真提供=川村記念美術館(本記事中の図版すべて)
待望の展覧会がやってくる

現代絵画の世界最高峰と言われるドイツの画家、ゲルハルト・リヒター。その40年にわたる画業を一望できる、本格的な回顧展がこの秋から始まります。今年初めにデュッセルドルフのノルトライン=ヴェストファーレン州立美術館で10万人を超える動員数を記録した展覧会の国際巡回となります。約50点の作品で構成される本展覧会は時代ごとの主要な作品を見ることができるばかりか、ここ2、3年に発表された新作も含まれています。展示作品の中には2メートルを超す大作ペインティングも少なくなく(1978年作の「雲」などは4メートルもあります)、またリヒターの私蔵作品も数多く出品されます。海外ではたくさんの回顧展が開催されているにもかかわらず、これまで日本ではまとまった点数の作品を見られる展覧会がほとんどなかっただけに、今回の回顧展はまさに千載一遇の機会。今年一番の目玉の展覧会と言っても過言ではありません。



「モーターボート (第1ヴァージョン)」 1965年
「モーターボート (第1ヴァージョン)」 1965年
油彩、カンヴァス 個人蔵 (c)Gerhard Richter
多くのファンを魅了し続ける最高の画家

言うまでもなく、存命の画家の中で最も傑出した存在、それがゲルハルト・リヒターです。2004年のオークション市場においても現役作家の中でダントツの売上1位を記録。国際的な評価は、93年のパリ市立近代美術館をはじめとするヨーロッパ各地の美術館を巡回した展覧会、あるいは2002年から翌年にかけてMoMA、サンフランシスコ近代美術館などアメリカ各地を回った大規模な巡回展を見てもわかります。また各界の有名人の中にもリヒターに心酔しているファンは多く、たとえば俳優のジュード・ロウもその一人。彼は映画の役づくりをするにあたって、リヒターの抽象画からインスピレーションを受けて行ったことがあると語っているほどです(2004年9月号の『Cut』誌インタビュー)。


「アブストラクト・ペインティング」 1992年
「アブストラクト・ペインティング」 1992年 
油彩、アルミニウム板 個人蔵 (c)Gerhard Richter
世界を映し出す「鏡の絵画」

「私は“面白い”ものには興味はない。“美しい”ものに興味がある」。リヒターの巨大な作品の前に立ったことがある人なら、その言葉には尽くせない美しさに思わずため息が出てしまうはずです。「フォト・ペインティング」と呼ばれる、写真を再現描写したリヒターの作品を指して、その並外れたテクニックが凄い、とよく言われます。しかしリヒター曰く「技術は重要ではない、“何をどう見るか”にこそ意味がある」。またこうも言っています。「どんなものにも美しく見える瞬間がある」。人は世界を眺めるのに、意味づけをし、いとも簡単に見慣れて消費してしまいます。けれども、現実はどう見るかによって美しくもなり、美しくなくもなる。2003年にリヒターが発表した新作“絵画”は何と、重ね合わせて壁にたてかけただけの、11枚のガラスでした。けれどもそこにぼやけて映りこんだ景色は、彼のその他の作品と変わらぬ美しさを放っていました。「鏡は絵とよく似ている」。そう語るリヒターにとって絵画とは、現実を無垢に映し出す鏡のようなものなのかもしれません。


「バラ」 1994年
「バラ」 1994年 
油彩、カンヴァス 個人蔵 (c)Gerhard Richter
それはセザンヌよりも美しい

「多くの写真は、最上のセザンヌよりも美しい」(『ゲルハルト・リヒター 写真論/絵画論』より 淡交社・刊)。リヒターは、描く自分の主観が入ってしまうことが好きではない、と言っています。社会主義国家の旧東ドイツで生まれ育った後、彼は1961年に西側へ亡命していますが、そうした半生からかイデオロギーへの懐疑心を強く持っています。“セザンヌ”とは、自分の主観で世界とはこういう見え方をするものだ、と言い切ってしまうことに対する懐疑心の喩え、写真とは、世界をありのままに映し出すことの喩え、と解釈することができるのではないでしょうか。リヒターの絵画は、世界とはこう見るべし、ではなく、見る者にいかに見るか、を委ねます。リヒターは自身がフォトペインティングを描くために収集・整理した何千何百という写真を「アトラス(ATLAS)」と呼んでいます(「アトラス」とはそもそもギリシャ神話に登場する地球を支える巨人の名ですが、今では世界を普遍的に体系化する書物全般までを指します)。画家ゲルハルト・リヒターは、世界の中で起こっているさまざまな事象、そこにひそむ「ありのままの美しさ」を、ただ静かに私たちの前に置き続けている。だからこそ、その絵画は普遍的な魅力を持っていると言えるのではないでしょうか。



-「ジャーマン・アート特集」は今回で終わりになります。ご意見をぜひお聞かせください。-

〔本稿は、「ゲルハルト・リヒター -絵画の彼方へ-」展を担当されている、川村記念美術館学芸員・林寿美さんに伺ったお話を元に構成しました。本展覧会では、ノルトライン=ヴェストファーレン州立美術館学芸員アネッテ・クルシンスキさんによる展示作品の解説レクチャーなど、関連イベントも充実しています。詳しくは同館HPをご覧ください。〕
■タグボートで購入できるゲルハルト・リヒターの作品はこちら
「ゲルハルト・リヒター -絵画の彼方へ-」展

2005年11月3日(木・祝)-2006年1月22日(日) 川村記念美術館
http://www.dic.co.jp/museum/exhibition/richter/index
抽選で招待券を5組10名様にプレゼントします。

■耳寄り情報
ゲルハルト・リヒターのエディション作品 お探しできます!
品薄と価格高騰で、タグボートでも安定的な仕入れが難しくなってきているリヒター作品。しかしながら、今回の展覧会で改めてリヒターの素晴らしさをスタッフ一同再認識し、作品探索を強化いたします。過去の取り扱い作品はもちろんのこと、未取り扱いの作品についても、カスタムオーダーで作品をお探しいたします。お探しを購入ご希望の方は、下記リンクのお申し込みフォームにてご連絡下さい。
※記載した価格レンジは、海外での取引実績を参考としたものであり、変動が生じます。あらかじめご了承ください。
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Kerze (Candle) Victoria II Teydelandschaft
作品名 Kerze (Candle)
シートサイズ 90 x 95cm
想定価格レンジ(シート価格)
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作品名 Victoria II
シートサイズ 80 x 60cm
想定価格レンジ(シート価格)
45万円〜55万円
作品名 Teydelandschaft
シートサイズ 46 x 34.5cm
想定価格レンジ(シート価格)
70万円〜80万円