トップページ > ジュリアン・オピー

タグボートセレクション ジュリアン・オピー
アンビエント、ロック、そしてヌード
SCAI THE BATHHOUSEで行われたジュリアン・オピー個展「Films and Paintings」展示風景より(2005年5月12日−6月18日)
今年5月、谷中の元銭湯を改装したギャラリー、「SCAI THE BATHHOUSE」でジュリアン・オピーの個展に行ったときのこと。足を踏み入れたとたん、目に飛び込んできたのは、かすかにゆらめく水面の映像だった。湖の風景が美しく、静けさに溢れた様子で描かれている。アンビエント・ミュージックがよく似合いそうだ。かつてセイント・エチエンヌの5thアルバム「サウンド・オブ・ウォーター」のジャケットにオピーの描いた、空港を描いた風景が使われていたが、そこで感じたのと同じ、颯爽とした空気感が会場に流れていた。

UKロックバンド、「Blur」ベストアルバムのジャケットデザインを手がけた、と言えばわかる人も多いかもしれない。漫画『タンタン』に登場するような、点点の目をしたポートレートは深く人々の印象に刻まれている。音楽とのつながりで言えば、2005年のU2のワールドツアー「Vertigo 2005」で、ステージに設置された巨大な液晶画面のうえに、オピーのアニメーション作品「歩く人」が映し出されたことは記憶に新しい。

58年、ロンドン生まれ。ロンドンでも老舗の現代美術ギャラリーとして知られるリッソン・ギャラリーを始め、世界各地のギャラリーで個展を行っている彼は、デビュー当時から高い注目を集めてきた。CGを用いて極度に平坦かつ単純化されたポートレートや風景を描くが、一見漫画のコマのようにも見えるその作品は、実は並外れたデッサン力から成り立っている。北斎や広重など日本の美術からも影響されているというが、彼のアートワークは「スーパーフラット」と呼ばれる、アート/デザインの昨今の潮流にも多大な影響を及ぼした。また、ダミアン・ハーストをはじめとして、"YBA派(Young British Artistsの略)"と呼ばれる、90年代から台頭してきたイギリスの新しい世代が世界のアートシーンを賑わせていくことになるが、それに先駆け「ロンドンがアートの流行をつくり始めている」と人々に予感させるきっかけをつくったのも、オピーだった。

 
  SCAI THE BATHHOUSEの展示風景より
「Blur」の例にも見る通り、最も有名なのはポートレートのシリーズだろう。ライター、ギャラリスト、レーシングドライバー、ミュージシャン、モデル……。さまざまなタイプの人々がこれまで彼のポートレート・シリーズに名前を連ねてきた。その中にはこんな人が、という有名人も数多く含まれている。F1ホンダの佐藤琢磨やスーパーモデルのケイト・モス、ミュージシャンのブライアン・アダムスなど。オピーのファンはファッションやデザインの業界にも多い。画集を見てそれを探すのもまた楽しみの一つだ。



「Hijiri with hands together」
2005 Silkscreen on painted wooden board h.90 x w.69 x d.4 cm
お問い合わせ:SCAI THE BATHHOUSE www.scaithebathhouse.com
ヌードも、オピーを語るキーワードの一つだ。04年3月にリッソン・ギャラリーで行われた個展では、モデルのサラが体をくねらせながら服を脱いでいく様子が、アニメーション・フィルムによって描き出されていた。ミニマルな線しかない、しかし見事に動きを捉えられている作品だ。またこのときには会場にギターが鳴り響いていた。ブライアンの曲だ。ブライアンのポートレートを描く代わりに、「曲を一曲書いてもらえないかと提案した」とオピーは言っている。

オピーの作品は、カジュアルでありながら、絵としての高いクオリティを感じさせる。もはや、デザインやイラストと、ファインアートの境界線すら忘れさせてくれる、本当の洗練というべきものがそこにある。
(文・構成=安田洋平)





 
  「The road climbed still.....」
2005 Dye on nylon on wooden stretcher 
h.104 x w.171 x d.3.5cm
お問い合わせ:SCAI THE BATHHOUSE
http://www.scaithebathhouse.com
ジュリアン・オピー 1958年生まれ。
1979-82年ゴールドスミス・カレッジ・オブ・アートで学ぶ。ロンドンの老舗画廊リッソン・ギャラリーをはじめとして世界各地で展覧会を開催。日本では、91年に名古屋のKoji Ogura Gallery、2000年、2005年に東京・谷中のSCAI THE BATHHOUSEで新作個展を行っている。日本で常時見られる作品には、汐留・電通本社ビルのロビーに電光掲示板による動画のインスタレーション「動く人」がある。2004年10月から2005年10月まで、NYのシティーホール・パークで大々的なオピーの作品の屋外展示がされた。作家のオフィシャルWEBサイトでは、最新情報がチェックできるほか、オリジナルのスクリーンセーバーなどがダウンロードできる。
ジュリアン・オピー公式サイト http://www.julianopie.com