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―一体どうやってできている?! 雑誌のページがアートに変身 ジョン・スパラガナの作品を目にすると、まず白く粉を吹いたような画面に引き寄せられます。作品は片側半分がまるで霧のようで、もう半分はなめらかな光沢を放つという、異なる質感がミックスされているのです。実はこの作品、雑誌のグラビアページを素材に作られたもの。霧のような白い画面は、容赦ないまでに引っかき、揉み擦ってぼろぼろにすることで得られます。作家によると、そのコントラストは『老いと若さに対するメタファー』。なるほど言われてみると、ぼろぼろの方は老人の肌のようだし、古ぼけた様子に時間の無常な経過が感じられます。一方、光沢のある方はモデルの瑞々しい肌の弾力や生命感がそのまま残っているのです。 ―消費され、捨てられてゆく素材から作り出されるアート スパラガナだけでなく、雑誌や広告の写真、グラビアポスターを素材に作られるアートが昨今のマーケットで目立ってきています。カットワークを施したり、ペン・ドローイングを描きこんだり、写真とそっくりのペインティングに起こしたり…。名うてのギャラリーがこぞってプッシュ、主要なアートフェアでは必ずといっていい程目にします。まさに今のトレンドです。技法もアイディアも様々な中、共通しているのは、そのままでは廃棄される素材に手を加えて新しい作品に「再生・変換」するというコンセプト。
―驚異のハンド・テクニック。しわと光沢のコントラスト スパラガナは、雑誌のページを手で揉みこすり、丸め、引っ掻き、徹底的にくしゃくしゃにします。インクは剥げて退色し、紙の繊維は破壊されてティッシュペーパーほどの薄さになるのです。素材となる街角のニューススタンドの雑誌や無作為に送られてくるDMの広告は、本来1ヶ月くらいで消費され、我々の意識からも消えてゆく運命。ぼろぼろにされたにも関わらず、美しい「アート」に変換されるのが面白く、皮肉を感じます。 2004年から発表され続けている“Sleeping Beauty”シリーズは、ファッション雑誌に掲載されたメランコリックな美女をモチーフにした人気作。「眠れる美女たち」の名の通り、ぼろぼろの部分はまるで霧の中で眠っているかのような、まどろんだ空間が演出されています。フェアや個展を経るたびに価格が上がっていく実力派作家のオリジナル作品。このたび、その人気シリーズから貴重な6点を新入荷いたしました! ぜひこの機会に、スパラガナの作品をご堪能下さい。
1958年、ニューヨーク生まれ。 シカゴを中心に活動。1980年ミシガン大学卒業、87年スタンフォード大学にて芸術修士号を取得する。雑誌の広告写真をぼろぼろになるまで引っ掻き、イメージを消失させることで別の「アート」へと変換する、一連の作品シリーズで高い評価を受ける。ニューヨーク、ヒューストンをはじめ、各地のアートフェアや展覧会で発表され、着実にキャリアと実力を伸ばしている。2004年、シカゴのMonique Meloche Galleryで個展を開催する。2005年には第一回の開催となったart LAに出品、話題を呼ぶ。1987年からヒューストンのライス大学で教鞭をふるい、現在准教授として活躍中でもある。 |