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ウィリアム・ウェグマン特集
犬こそ人間の最高の友達。ウィリアム・ウェグマンが忠犬マン・レイのおかげで一流アーティストになったお話

ウェグマンの最初の写真集を入手したのは20年以上前のことだ。《象に扮したマン・レイ》と題された作品が表紙の『MAN’S BEST FRIEND』(1982,Abrams)である。鼻先にロング・ソックスを被せられ牙をつけさせられた、ワイマラナーのもの悲しげな表情が印象的だった。普通の犬だったら、いやがってそんな格好は絶対にさせないだろうし、させられたとしてもすぐさま前足で何とか外そうと必死になるだろう。

売れない現代美術の画家ウェグマンが妻の強い願いから、ワイマラナーの子犬を35ドルで買ったのが1970年。尊敬するアーティストの名前を拝借してマン・レイと名づけた。最初は犬の姿や動作をスケッチする程度だったが、写真とビデオに興味を持ち始めたとき、じゃれついて制作の邪魔をするマン・レイに芸をさせるとカメラ目線で演技する才能があることに気がついた。どんなポーズもいやがることなく、いつしか写真もビデオも愛犬マン・レイの独擅場となる。

若いときは引き締まった肉体美のワイマラナーも、老齢になると皮膚はたるみ毛の艶もなくなり老醜の姿は痛々しい。そこで洋服を着せたりベビー・パウダーをふりかけるなどしてカムフラージュの結果、現在のウェグマンのスタイルの基礎が出来上がったのである。人生は長く、犬生は短し、10年以上におよぶ共同制作活動の結果、TVショーに出演するほど有名になったマン・レイであったが犬生をまっとうすることになった。

ヴィレッジ・ヴォイス紙の一面大きく「マン・オブ・ザ・イヤー」に取り上げられ、美術雑誌には追悼記事が掲載された。「ウィリアム・ウェグマンの親友で仕事仲間でもあった犬のマン・レイ、1982年3月27日に没す。彼は1970年7月27日カリフォルニアのロング・ビーチ生まれ。ウェグマンとの交際からこの才能に恵まれたワイマラナーは演劇的性質を発揮し、数多くの写真、ポラロイド、ビデオ作品を共作。数点のドローイングも手伝ってくれたという。・・・中略・・・彼が元気な姿を見せてくれたのは2月のテレビ番組デビッド・レターマン・ショーが最後であったが当夜の人気を独占していた」。

二度と犬は買うまいと心に決め、絵画制作に戻ったウェグマンが次の愛犬フェイ・レイと運命的な出会いをするのは4年後の1986年であった。大人しい雌のフェイはどんなポーズもこなし、頭や鼻にものを載せるのも得意、コスプレも大好きといったウェグマンのアートのために生まれてきたワイマラナー。彼女をモデルに20X24インチの大型ポラロイドカメラで撮影した作品は飛ぶような売れ行き、@ギャラリータグボートで取り扱っている作品も90年代のフェイがモデルとなっている。

フェイ・レイの9匹の子供たちのうち才能を受けついだバッテイーナ、チュンド、クルーキーの3匹、孫のバッティ、曾孫のチップ、チップの子供のボビンとキャンディ、その子供のペニーと一大ファミリーとなり、セサミストリートのレギュラー出演、CMをはじめ、作品としても家族総出演の「シンデレラ」、「赤頭巾」、「マザーグース」といった写真集やビデオが制作された。また、関連するポストカード、カレンダーなどグッズ制作も本格化し、ドッグ・モチーフのウェグマン・ワールド・ブランド商品(犬用グッズのデザイン商品中心)も手がけ始め、今日に至っている。天国のマン・レイ君も主人と後輩たちの活躍に満足しているに違いない。