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タグボートセレクション 蜷川実花
今、最も“旬”なフォトグラファー・蜷川実花 自作を語る
 
―― 本当に桜を見上げたときの何とも言えない気持ち良さが伝わってくる。 この写真を見たときにそう感じました。小山登美夫さんは蜷川さんの写真のことを「中に入っていく写真」とおっしゃっていたのですが、いつもどんな風に撮っていらっしゃるのですか?

すごくシンプルで、空が青いなとか花がきれいだとか、基本的にはそれだけなんです。 でも、撮るときはものすごく集中していて、それこそ風に揺れている花の気分になったり、 そこにぶらさがっているカマキリに感情移入するくらいにその中に入り込んでいる。 そういうときは世界中にこの花と私しかいない、という気持ちになります。 おそらく写真を撮る人なら誰でも、何かに心をつき動かされてシャッターを切るのだと思いますが、 その純度というか、それがすごく高くなれるときがあるのです。 そういうときに撮った写真は、結果として自分でも気に入ることが多いですね。
―― カメラは常に持ち歩いているのですか?

普段からカメラを持ち歩くということはしません。必ず、「今日は写真を撮るぞ」と思ってカメラを持って出かけます。 そうするとスイッチが入るというか、急にいろんなものが見えてくる。 感度のレベルが変わるんです。こんなにも世界は美しいんだ、と気づき出す。 だから、こんなところに蟻がいたとか、モノが語りかけてくる声を聞いて拾っている感じです。 逆に撮る気満々だとそういうものたちが逃げていってしまうんです。
 
―― 花はいつ頃から撮り始めたのですか?

花は写真を始めた最初の頃から撮っていますが、 集中して撮り出したのはここ4年ぐらいです。 「Acid Bloom」では自分の本当に気に入っているものだけを、 7000枚以上の花の写真の中から選びました。ただしシリーズとは言っても、 撮影した時間や場所は本当にまちまちなんです。 例えばこれは伊豆の下田で撮った早咲きの桜だし、 近所で撮ったものもあれば、グアムや上海まで花を撮りに出かけるときもあります。
 
―― はかなさや妖しさみたいなものも蜷川さんの写真からは伝わってきます。
 
花、金魚、それから女性にしてもそうですが、 私が好んで撮っているモチーフに共通することは、 輝く瞬間が一瞬であるものたちということです。 長くはとどめておけない、はらはらするような、 それが私を突き動かすのだと思います。「Liquid Dreams」でも、 香港に行ったときにガイドブックで見つけた金魚ストリートが面白くて、 金魚ばかり撮ってみたことが直接のきっかけでした。しかし後になって考えてみると、 金魚とはとても不思議な存在というか、人間に鑑賞されるためだけに改良され続けてきた生き物なのです。 しかも人工的であればあるほど、短命だという。それに惹かれて、 しばらくは金魚ばかり、タイや上海、日本のデパートの屋上など方々に撮りに行っていました。
―― 「Acid Bloom」シリーズの中に青いバラの作品がありますが、本当に目を奪われるような美しさです。
しかし、あんなに青いバラってあるのですか。
 
あれは香港のお花屋さんの店先で撮ったものなのですが、白いバラに青い色水を吸わせて着色したものを売っていたんです。 金魚と同じで人工的につくりだしたバラ。他にも黒いバラとかありましたよ。
―― 最近では去年、今年と海外のアートフェアに小山登美夫ギャラリーから作品を出されていますよね。
海外での反応はいかがですか。


アートフェアではお客さんが買ってくださったところにたまたま居合わせたのですが、すごく楽しげな顔をして、 「色がとってもきれ いね」と言われたのが嬉しかったですね。 それから、オーストリアのグラーツでグループ展に参加したときに、 若い女の子たちがこれかわいい、あれかわいいとキャーキャー言いながら見ていて、 まったく日本で展覧会を行っているときと変わらないのに驚きました。 きっとどこへ行っても、私の写真は腕組みをして難しい顔で見るという感じではないのでしょう。 楽しんで見ていただければ、それが一番嬉しいですね。
(2005.3.10 蜷川実花さんのオフィスにて)