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タグボートセレクション アイオナ・ロジール・ブラウン 来日インタビュー
ヒップホップ”な浮世絵を描き出す
アイオナ・ロジール・ブラウン 来日インタビュー
これまでも海外出張の折には、ロンドンのアートフェアでディノス・チャップマンと握手をしたり、NYで大御所フランク・ステラやヴィック・ムニーズのアトリエを訪問したりと、アーティストと間近に接する機会が数多くありました。が、今回はなんと、南青山にあるタグボート本社にアーティストが来訪! アイオナ・ロジール・ブラウン、ヒップホップと浮世絵をミックスしたような作品で知られるアメリカ人アーティストです。アイオナは今年2月より日米友好基金と文化庁が共催で行う、日米芸術家交換プログラム・フェローシップで来日しています。今は大阪に滞在しているとのことですが、このたび東京へは彼女の大好きな歌舞伎を目当てに上京したのだそう。この機会を借りて、アイオナに作品についてお聞きしました。  
アイオナ・ロジール・ブラウン
アイオナ・ロジール・ブラウン
(Iona Rozeal Brown)

「無題T(女)」 2003年
*写真をクリックすると作品詳細が見られます。
 
―― アディダスのジャージを着て、頭にかんざしを刺した“ガングロ”少女の絵など、アイオナさんが描く作品にはブラック・カルチャーと日本の文化が混ざっていますね。日本文化の影響を受けたのはどのようなきっかけからですか?

とても幼い頃から日本の文化に興味があったし、実際に触れる機会も多かったのね。11歳のとき、ワシントンのケネディ・センターに歌舞伎の公演が来ていて、母が連れて行ってくれたのをよく憶えているわ。女形の美しさに魅せられて、母が「あれは男性の役者なのよ」って言うのをちっとも信じられなかった。今でも歌舞伎は大好きよ。お気に入りの役者は坂東玉三郎、それに中村勘三郎もいいわね。


―― ペインティングの作品には、日本の武士を連想させるようなイメージのものもあります。

ワシントンには自然史博物館(注:スミソニアン博物館の一部)があって両親とよく行っていたの。館内には日本の武士の装束が展示されていて、それが好きでへばりつくようにして見ていたものよ。武士のアイテムで一番好きなのは兜。日本の兜は他では見たことのないようなカラフルさや奇抜さに満ちていて、とても魅力的だわ。
―― 歌舞伎や能のどんなところから刺激を受けますか。

「無題U(男)」 2003年
*写真をクリックすると作品詳細が見られます。
 
歌舞伎はダイナミックで動きがあってエンターテインメント性も高いので、例えるなら映画のようなもの。実際、日本の映画も好きなの。中でもクロサワの『乱』や『7人の侍』は素晴らしいわ。一方、能は精神世界に深く入り込んでいくものでしょう。だから私の作品の中には歌舞伎からビジュアルのインスピレーションを、能からは精神性の面で吸収している面があると思います。


―― 時々日本語のカタカナなども作品中に書かれていたりしますね

言葉としての意味はわからないけれど、日本語の形が美しくて気に入っているの。大相撲で使われる字体(相撲文字のこと)は特に好き。


―― 90年代の末に初来日されたとき、渋谷の「ガングロギャル」を見てブラック・カルチャーの影響力を強く認識されたと聞いていますが?

実は今日ここに来る途中にも見かけて、未だにいるんだ、と驚いたわ。初めて日本でガングロギャルに会ったとき、私の目には彼女たちが90年代末の渋谷のシンボルのように映った。黒人の歴史は知らずに、イメージだけを「記号化」して真似している点がユニークだわ。私のバックボーンであるブラック・アメリカンのカルチャーがそういうかたちで日本文化に及ぼすのを見て面白かったし、だから制作のモチーフにもしようとした。でも最近、江戸時代の浮世文化と現在のアメリカにおけるヒップホップ・カルチャーとの間には、どこか大衆性や物語性の面で通じているところがあるような気がしているの。
―― 今後のご予定について教えてください。
 
夏に帰国するけど、11月にはアメリカで個展をやる予定です。日本で過ごした日々は今後の制作活動にも、私自身にも大きな影響になるでしょう。作品づくりももちろん重要だけど、いろんなものをこの機に吸収したいわ。今は制作のかたわら、週に4日は剣道に通っているの。琴も習い始めたし、本屋に通ってはヒップホップの雑誌やゆかたの本などを買い込んだりしているわ。
アイオナはとても気さくな人柄で、軽快なトークで自身のこと、作品のことを語ってくれました。
それにしても聞きしにまさる日本フリーク!
ニューヨーク・タイムスやワシントン・ポストでも取り上げられたりと、このところ海外のメディアでも話題に上る機会が多いアイオナ・ロジール・ブラウン。作品もNY、LA、ワシントンなど、大都市のギャラリーで売り切れになっています。タグボートでも近日新入荷の予定。どうぞお楽しみに!
(インタビュー収録;2005.4.26 エムアウト本社にて)