プロフィール
斎門富士男
1960年生まれ。
大阪写真専門学院卒業後、断続的にアメリカ、ヨーロッパ諸国、インド、ネパール、中国などを旅する。旅の中で写真を学び、独自の表現を探した。1993年から1997年の間、中国の農村を旅し続けたことで中国人を被写体とするポートレイト写真に出会う。
作品は「CHINESE LIVE」(パルコ出版)「STAR KIDS」「上海人」(光琳社)と出版され、「STAR KIDS」はパルコギャラリーで1カ月間の写真展を開催。最近ではインドネシアのバリ島に在住しながら、島の人々や風景、犬たちなどを撮影。海辺や農村で鎖につながれず、自由に暮らしている犬たちは「犬たちの海」として講談社から出版されている。
また、カラープリントの分野では草分け的な存在であり、その独自の色調を持つオリジナルプリントは評価が高く、個展などで販売されている。
1998年出版「トーキョー・カーニバル」(新潮社)などの活動により、2001年、講談社文化賞写真賞を受賞。写真展は渋谷パルコギャラリー、横浜ランドマーク、エプサイトギャラリーなど15回を数え、写真集は約20册が出版されている。
「Night Flower’s Show」
月の夜も、星も見えない夜も、雨降る夜も、「今夜は撮りたい」という衝動にかられたら、花を求めてのガーデンを歩き回る。月の光になったような気持ちで、花を照らすとスポットライトを浴びた女性のように鮮やかで妖艶な姿が浮かんでくる。
甘い匂いの清楚な花は蝶のように、空を舞い、しなやかな茎を持つ花は風が吹くたびに、ダンスを踊っているようだ。雨の粒を宝石のようにまとったゴージャスな花は静かに佇み、微笑む。
深い海や宇宙で暮らす、見たことのない生き物に見えたりもして、不思議な時間が流れて行く。あるいはそれぞれの花の小劇場。庭の片隅で、木の下で、夜ごと、新しいストーリーを繰り広げる。たったひとりで密かに愉しむ暗闇の“It’s Show time!”
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誕生ストーリー
伊豆の小さな村にアトリエがある。
そこで写真を撮ったり、プリントしたり、暮らしたりしている。
明治元年に建てられたという古い庄屋づくりの家と、庭。
御神木といわれる、大きな樹がある裏庭にも花がある。
奥には人がほとんど踏み入らない竹林。村全体を守っているかのようだ。
その家に引っ越したのは3年前。 |
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それまでも村の畑の花や家々の庭先の花壇を、なんとなく撮っていたが、さほど熱中するでもなかった。引っ越して、しばらくすると何を思ったのか急に妻が花を植えはじめた。庭が花でいっぱいになると、裏山にまで植えたり、種を蒔いたりしている。
1年もしないうちに、花はどんどん増えていき、今では、花のジャングルのようだ。もともとあった日本の古い花もたくさんあって、数えきれない種類の花が季節ごとに咲いているのを見ているうちに、自然に撮るようになった。 |
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夜の花を撮り出したのは、暗くなっているのに花を閉じるのを忘れた、昼顔を見つけた時だ。
空中を飛ぶ青いクラゲのように見えた、その瞬間から夜の庭は新しい遊び場で、くつろぐ時間となっていった。
- あとがき(タグボートアートディレクター広本)
- 夕闇が迫り、繁華街の光が眩しくなるとそわそわし始めるのは、都市に生活するものの特性だろうか。
「今夜は飲みたい」と夜の街を徘徊しても、美しい花に出会うことはない。あるのは人工的な花ばかり、そこに美を見出すには、相当量のアルコールを必要とする。そして「勘違い」のストーリーが始まるのもそれからだ。
齋門富士男の撮る夜の花は普通は見ることのない花の美しさを見せてくれる。夜も眠らない花は、眠れない人間に微笑み囁きかけてくる。花を相手にゆっくりと部屋で飲み明かす夜があってもいいかもしれない。
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