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あの『TOKYO NOBODY』の中野正貴が撮った1980年代アメリカ『MY LOST AMERICA』タグボートにて近日発売予定!

中野正貴 作品インタビュー

『MY LOST AMERICA』について

中野正貴氏 ポートレート
─ 中野さんが20代から何度か通って撮影された80年代のアメリカの風景が収まった写真集ですが、 なぜアメリカなのでしょう?
 当時、僕がとても影響を受けた文化的なものは全部アメリカから来ていたので、そのルーツが見たいと思いアメリカに行きました。あの頃、広告や写真も、良いと思ったものはアメリカから全部出てきていたし、大衆文化が育つ土壌があるのだろうな、と思って、それを観てみたかった。70年後半から80年代にかけて西海岸ブームがあって、音楽もイーグルスの「ホテルカリフォルニア」なんかがヒットして、雑誌もポパイやブルータスでアメリカ特集をよくしていたんです。広告の撮影でも西海岸の風景が多くて。最初に行ったのは大学生でした。写真はもちろん、アメリカの文化全体に対して憧れがありました。
─ 実際に行かれて、いかがでしたか?
 街の風景もアルファベットで書いてあって、もうそれだけで、「格好いい」。街を歩く人々が、たとえスナップで撮っても、個性が溢れていました。ニューヨークは、文字通り“近代”都市だった。ニューヨークは、どんな小さな道や路地裏にも近代都市のにおいがするのが、素敵だな、と単純に思いました。僕の写真を撮る動機はそもそも単に美しいというより「格好いいな」と思わないと写真は撮らない。それが大前提です。僕にとっては、看板だけでも、「おー、アメリカ!」ってそれだけで興奮するものがあった。いろんな広告の戦略に載せられて、「格好いいな」って思ってました(笑)。
─ 『My Lost America』は、若い頃の作品ですよね。そのあとに中野さんご自身は、『TOKYO NOBODY』や『東京窓景』など東京の都市風景を撮影して発表されたわけですが、なぜ、近作ではなく23年前の作品を、今、発表しようと思われたのでしょうか。
 まずこの作品はコダックのコダクロームというポジで撮影したのですが、現在その生産が中止になって、もうこのフィルムで撮影できなくなるという事が背景にありました。コダクロームの特徴である淡い色調の写真を発表する最後のチャンスだと感じました。ずっとアナログでやってきた僕にとって写真は大きな転換期に来ていると思います。そこであえて今、アナログで、それもポジで撮影した写真集を出そうと思った。
 また、このアメリカを歩きまわった経験が僕が日本の都市風景を撮影しようとしたきっかけとなっているので、20代の僕が見た80年代のアメリカを知らない人に、疑似体験してもらえるような本を出したかった。はじめてアメリカに行き、お金も無く言葉もろくにわからずに心細い思いをしながら、好奇心一杯でわくわくしながら、歩き回って撮った。その経験を、本を観る人に、80年代を追体験として味わってほしいな、と。今の日本では、アメリカの物や風景を当たり前のように感じていますが、その頃は訪れるたびに新鮮な発見が随所にありました。
─ 確かにこの写真集は、見ているだけで、当時の街をうろついているような、リアルな気分になれます。中野さんの興奮も伝わりますし。
 個人的な思いが強いけど、この本は、自分が『TOKYO NOBODY』などで都市をテーマに撮っているものの原点だと思っています。その場を自分自身が歩き回り、生活していた、「そこに僕がいた」、みたいな感じが出ていると思います。僕の写真の基本は「歩く」、のです。歩かないと何にも出会わない。
─ そんな中野さんの今、撮ってみたい都市は?
 もう一回アメリカに行ってみたいですね。アメリカの古い都市。アメリカのルーツ探しとか。それから、ヨーロッパ。プラハとか、歴史がある所を撮りたいですね。最近フィレンツェとミラノに行ったんですが、自分達の街の歴史を大事にしていて、心地よかった。ぜひプラハに取材に行きたいと思ってます。

『CROSSING of BOWERY st.and DELANCEY st.NY, JUL, 1983』について

CROSSING of BOWERY st.and DELANCEY st.NY, JUL, 1983
─ 晴れてフラッグがはためいているにぎやかなダウンタウンの日中に、どう観てもおかしな一人の男性が歩いてて。違和感のある作品ですよね。
 70年代後半は、アメリカもベトナム戦争を経て経済的にも、弱ってきて決して明るいだけではありませんでした。ものすごく小さな歩幅でよたよたと震えながら黒人の男性が歩いてくる街角の光景が、僕にとってあの時代のニューヨークを象徴しているような気がしたのです。このBoweryという地区は、今はファッション・ブティックが並んでおしゃれになっているけれども、この頃はドラッグも流行していて、歩くのもおぼつかないような人が路上に倒れてるのも普通だってりした。そういう人たちを見て、都会で生きるって大変だな、いろんな人たちが生きているんだなと感じました。
─ 本のタイトルでは、撮影日は7月となってますね。
 実は撮影日は、8月3日でした。これは展覧会で作品を大きく引き伸ばしで初めて確認できたのです。
この前日は日本から持っていった僕のカメラが一斉に壊れたという不思議な日でした。だからこの作品は、壊れたカメラで撮っています。斜めにピントがあって、左と右があっていて、真ん中がすごくぼけています。4×5のカメラは、わざとあおって撮影したりしますが、35ミリでナチュラルに撮ったのですが、偶然あおられている状態になっています。それが、逆に面白い効果を生んでいます。
 背景の看板の色や文字も強烈だし、こちらに歩いてくる人と、遠くにいる人との対比とか、こういう対比表現にこだわっていたのです。ドラマティックに撮っているわけじゃないけれども、偶然が生み出す関係性がある。この写真で、奥に映っている人を見てください。危険な場所で生活しているから、5個も6個も鍵をつけて一生懸命あけようとしているけど、なかなか鍵が合わない!一方で、その横をすり抜けて、酔っ払いがのんびりのんびり歩いてる。僕がまさにニューヨーク的だな、と感じて本の最初の1ページにした写真です。
CROSSING of BOWERY st.and DELANCEY st.NY, JUL, 1983

価格:120,000円(税抜)
サイン入り写真集『MY LOST AMERICA』付!
CROSSING of BOWERY st.and DELANCEY st.NY, JUL, 1983

『BLEECKER st. NY, AUG, 1983』について

BLEECKER st. NY, AUG, 1983
─ この被写体の女性は自然な表情ですが望遠で撮影したのですか?
 この女性は、ニューヨークで出会った3人グループの一人。彼女が肩からカメラをぶら下げていたので、道端で「写真とってるの?」っていうような会話を交わしたんです。「これからモデル撮りに行くけど、一緒に行く?」みたいな。至近距離で、標準レンズで撮りました。会話している最中、ふっと気付いたら日が暮れてきて、彼女の顔に丁度、陽があたった。その時のスナップショットです。
 この写真集のディレクションを依頼したデザイナーの立花文穂さんが、気にいって表紙に選んでくれました。
─ 「NOBODY」で有名な中野さんにしては珍しく人物もたくさん入っていますね?
 今でも人物もたくさん撮影しますが、本を作る際に500枚以上のアメリカのプリントを立花さんに見せました。このシリーズは単なるアメリカの風景というだけでなく、人物もよく撮れていて面白い。ということで風景と人物を織り交ぜて、アメリカの西と東の風景を、場所や時間に関係なく、組むことになりました。撮影した僕自身は思い入れが強くてどれも良い写真に思えてしまうのですが、立花さんが、初めて見る人にも見やすい本としてうまく編集してくれたと思っています。
BLEECKER st. NY, AUG, 1983

価格:120,000円(税抜)
サイン入り写真集『MY LOST AMERICA』付!
BLEECKER st. NY, AUG, 1983

『HOLLYWOOD FRWY EXIT for HOLLYWOOD blvd.  LA, MAR, 1979』について

HOLLYWOOD FRWY EXIT for HOLLYWOOD blvd.  LA, MAR, 1979
─ 「CROSSING of BOWERY」について伺った時、この頃は、対比にこだわっていたと、おしゃってましたが、この作品は、四角い窓や、三角の標識、直線の木々など、様々な形が対比されるかのように表れていて、楽しい。
 これは、フリーウェイの出口で撮った写真。
フリーウェイから飛ばしてきた車が、スピードを落として、出口で一旦止まって。で、改めて街の中心にむかっていく、っていう所ですね。
─ この中心ラインがスタートライン?
 そうそう、スタートライン。いわゆるアメ車で、運転しているおじさんもものすごくアメリカチックで。そこにピカって光があたって、背景にパームツリーが立っていて。文句なしにカリフォルニア的な風景でした。日本ではないし、ヨーロッパでもない。アメリカでしかない。まさに西海岸のアメリカンシーンですね。
─ アメリカの人がこの場所を撮ってもこうはいかないかもしれないですね。
そうですね、普通過ぎる風景だから。撮ろうとも思わないかもしれません。
─ 車が登場すると、時代が出ますね。
 確かに。車は、時代を感じさせますね。
僕は都内も車で常に移動し、車の中から風景も見続けているので、車への思いも強いかもしれません。
  一昨年、同じ場所へ行ったのだけど、ここは全然変わってなかった。ファッションと車は、時代性が出ますでね。今のアメリカを撮ろうと思ってロスに行ったら、見た目は全然変わっていない印象でした。ビルも建ったけど、風景は全く一緒。ニューヨークは逆で、80年代とはもう全然違っていました。
HOLLYWOOD FRWY EXIT for HOLLYWOOD blvd. LA, MAR, 1979

価格:120,000円(税抜)
サイン入り写真集『MY LOST AMERICA』付!
HOLLYWOOD FRWY EXIT for HOLLYWOOD blvd.  LA, MAR, 1979
協力:gallery ART UNLIMITETED