
生と死の完成をバロック的にそして衝撃的に突きつけるベルギーのアーティスト、ヤン=バン・オースト。
ボードレールの詩集『悪の華』が持つメランコリーに突き動かされた寓話性に魅せられ、それを一貫したテーマに据えて取り組んだドローイング・シリーズ「Baudelaire Cycle」より、9点のドローイングをご紹介! 来日ショートインタビューもありますので、バン・オーストの世界をたっぷりお楽しみください。
来日中のバン・オースト氏にお話をうかがいました。
展覧会場のncaにて 作品とバン・オースト氏。
- --バン・オーストさんがドローイングを始めたきっかけを教えてください。
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始めたのは、1992年から。
当時の僕の作品はとても暗かった。それで、自分自身をリラックスさせようと、水彩ドローイングをはじめたんだ。名づけて“サンデードローイング”。彫刻作品とは完全にスタイルが違うカラフルで明るい作品だよ。
- --今回タグボートに出品していただく“Baudelaire Cycle”シリーズは、どういったコンセプトの作品なんですか。
- フランスのシャルル・ボードレールの詩集『悪の華』からインスピレーションを得て制作したシリーズなんだ。女性は美しいけれども同時に危険な要素もある、という、ロマンティックな思想が基になっている。“サンデードローイング”とは異なって、色調も落ち着いた感じに仕上がっているだろう?
毎日そのテーマに沿って描いていたのだけれども、それぞれがまったく違う特色を見せた作品になってしまうんだ。毎日の気持ちがそのまま作品に表れてきているからね。実際の事件に触発された作品もある。パリ人肉事件(1981年、フランスで起こった猟奇事件。当時、フランスに留学していた佐川一政がオランダ人留学生を射殺し、その肉を食べた。)とか。
はじめのうちは、自分自身をコントロールして描いていたんだけれど、だんだんと僕自身が現れてくるようになって、そのうちドローイングが僕自身よりも強いパッションを持つようになってきてしまった。1日1枚を課していたのに、3ヶ月で300枚以上を描いていたよ。
- --いろんな作風やマテリアルが使われて、バラエティ豊かですね。
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違うカラーのペンを複数持って同時に描くことでぶれたイメージを楽しんだり、口紅を使ってみたり…。ミッキーマウスや漫画を基にした作品や、コラージュ、一筆書き、あとは所有している日本の浮世絵春画を基にした、芸者に似せたエロティックなイメージもある。
- --バン・オーストさんにとってアートとは、どんなものなのでしょうか。
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僕にとって、美しいものは必ずしも良いアート作品というわけではない。人は、ビジュアルで判断することが多いけれども、裏にある魂をみなければ、アートのメッセージを見失うことになる。パワーとパッション、そして人を惑わす魅力がある作品がアートだと思っている。
- --バン・オーストさんの作品はまさにそういった感じですね。
ところで、日本は始めてですか?
- うん。日本人は、自分に厳しく、規律を守り、礼儀正しいイメージがあるよ。調和を愛する感覚もあると聞いている。
アートは、感情の揺れや葛藤から生まれるものだと思っているから、今回の僕の個展に日本の人たちがどう反応するのか、今からとても興味があるんだ。
(2007年12月4日 ncaにて 個展設営中のヤン=バン・オースト氏に聞く)
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