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タグボートセレクション 杉本博司
時を超越する写真家・杉本博司の展覧会が日米で開催
写真が刹那の光の像を切り取るものであるなら、杉本博司の作品はもはや「写真」の範疇を超えたかもしれません。なぜなら常にそこには「時の流れ」をも織り込んできたからです。この秋、東京とニューヨークでほぼ同時期に開催される2つの個展は、いずれもそんな作家の本質を体感できる貴重な機会と言えるに違いありません。
「アル・リンリン、バラブー」 1995年 ゼラチン・シルバー・プリント
42.3x54.2cm 写真提供=森美術館
森美術館では初の大規模回顧展

まず、六本木ヒルズ・森美術館で9月17日より開催される『杉本博司:時間の終わり』展は、1975年から2005年の間に制作された杉本の代表的なシリーズを一挙に見ることのできる初の大規模な回顧展。出世作としてその名を知らしめた『ジオラマ』(76年〜)。代表作として杉本ファンなら知らぬ人はいない『劇場』(78年〜)。そして映画館で上映中シャッターを開き続け、映画一本分の"光"を銀塩プリントの上に結晶させたとされる、まさに杉本博司写真の真骨頂と言われるのがこの『劇場』シリーズです。更に1997年から始まる、世界的に有名な傑作建築を撮った『建築』シリーズ、1999年からの『蝋人形』のポートレートシリーズ(それぞれ『Sugimoto Architecture』、『Sugimoto Portraits』という写真集にもなっています)など、新作・未発表作品を含め約100点が展示の予定です。


加えて、この展覧会のもうひとつの目玉とも言えるのが、『劇場』シリーズと並んで人気の高い『海景』シリーズの展示です。人が初めて海を見たときのような風景を想起させるこの『海景』ですが、今回はその展示のされ方がひときわ格別です。特別コラボレーションとして、「ダム・タイプ」の音楽監督や坂本龍一の楽曲のリミックスなどを手がけたことで知られるサウンド・アーティスト池田亮司の音楽が流れる中、この『海景』を楽しむことができます。また会期中10月19日と20日の2日間に限り、『海景』を展示するこの漆黒の空間に、特設能舞台を配置。杉本博司自身が手がけた舞台美術と『海景』がひとつとなり、あたかも「海に浮ぶ孤島のような」情景がつくりだされる中、観世銕之丞、浅見真州、野村萬斎らが舞う能『鷹姫』が公演されるとのこと。必見です!(詳しくは森美術館のサイトをご覧ください)
「カリブ海、ジャマイカ」 1980年 ゼラチン・シルバー・プリント
119.4X149.2cm 写真提供=森美術館
なお本展覧会は森美術館で開催の後、共同企画館であるワシントンDCのハーシュホーン美術館・彫刻庭園や、テキサスのフォートワース美術館にも巡回することが決定しています。

「古美術との融合」を目指したNY、ジャパン・ソサエティーでの展示

一方、ニューヨークのジャパン・ソサエティー・ギャラリーで開催される『Hiroshi Sugimoto: History of History』展では、自らの作品と、彼がその表現において「先生」と呼ぶ古美術とを併置する形で構成されるという、負けず劣らずのユニークな展覧会になっています。『海景』シリーズなどの作品と、古代石器や宗教的工芸品などを組み合わせた展示で、作家独特の歴史観が繰り広げられます。展覧会タイトルには「書かれた歴史と書かれなかった歴史、それからもうひとつ、これから書かれる歴史」の意味が込められています。なお杉本は古美術商を営んでいた経歴もあり、本展に出品されるそうした品々も杉本自身によるコレクションとのことです。

明解なコンセプトとユニークなアプローチで表現される杉本博司の作品は、30年余に渡るキャリアの中で国際的に高い評価を得てきました。近年、アートマーケットにおいてもコンテンポラリーフォト分野の成長が著しいのは知られるところですが、杉本はリチャード・プリンス、アンドレアス・グルスキーらと共に、 2004年度に最も作品が値上がりした写真作家の一人でもあります。その美しさはもちろん、時の流れを結晶化させたような人気の杉本作品を、ぜひこの機会にお楽しみください。



*展覧会について詳しくは各ミュージアムのサイトをご覧ください。
■森美術館『杉本博司:時間の終わり』
2005年9月17日〜2006年1月9日
http://www.mori.art.museum/contents/sugimoto/index

■ジャパン・ソサエティー・ギャラリー『Hiroshi Sugimoto: History of History』
2005年9月23日〜2006年2月19日
http://www.japansociety.org/events/upcoming.cfm