2005年10月28日
横浜トリエンナーレ2005 アートツアー・レポート
10月22日、タグボートのアート・ディレクター広本伸幸をツアーガイドに横浜トリエンナーレ アートツアーを開催いたしました。
今回のトリエンナーレはディレクターの川俣正が、「作家の独白でなく、受け手とのキャッチボールをみせられる展覧会にしたい」とその狙いを話す通り、「観客参加型」の作品が多いのが特徴。皆が一緒になって作品に参加することができ、アートを媒介にしたとても楽しい時間を過ごしました。
そのツアーの様子をレポートいたします。
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元町・中華街駅改札で参加者と待ち合わせ。 心配事のひとつであった雨もかろうじて降らず、スタッフ一同胸をなでおろしました。 参加者の皆さんも元気に集まります。
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ダニエル・ビュランのにぎやかな紅白旗がたなびく、山下公園脇の入場ゲートからふ頭会場までの道。祝祭気分が盛り上がりますが、実はその距離約700m。はっきり言って、長いです。
しかし、参加者同士話が弾み、あっという間にゲート到着!
会場を入ってすぐ正面、60年代以降日本現代美術界で最も影響力の大きい美術家の一人である高松次郎の「工事現場の塀の影」が目に飛びこみます。本作は「影」をテーマとして追い続けた高松の記念碑的な代表作品の再現作品。
パネルにある影に自身の影が重なり作品の一部になります。高松の遺作である「影」シリーズから現在までの現代美術の流れに思いを馳せ、ちょっぴり厳粛な気持ちでスタートします。
「告知一森」
Photo by 木奥恵三
写真提供:横浜トリエンナーレ組織委員会
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「はい、ポーズ!」 鮫に襲われた!?
ナリ・ワードさん本人。9月某日。
笑顔の素敵な気さくな方でした。
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参加者の皆さん、お気に入りのぬいぐるみ選びに真剣です。
映像インスタレーションの部屋
明かりを落とした暗い部屋なので、撮影はできませんでした。ツアーの様子をお伝えできず残念です。
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Photo by 黒川未来夫
写真提供:横浜トリエンナーレ組織委員会
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12:00~ 自由時間
みなさん思い思いにアートを楽しみました。

屋代敏博さん作品の前にて。カメラを覗き込む。

マップ片手にうろうろ。
KOSUGE1-16作品。上から会場を見下ろす。
「じゃ~ん!」奈良美智のサイン入デザイン本2冊購入。持参のかわいい袋に入れて。
ミュージアムショップにて物色中。
3時間におよぶツアーは13時に終了いたしました。
この後、参加者の方達と中華街で懇親会をおこない、さらに白熱したアート談義が繰り広げられました。
ツアーを終えて *****************************
「今後もリアルでアートを見たり、直接お話できるような企画をお願いします」
というお言葉を多数いただき、スタッフ一同大変うれしく思います。また、アート情報や企画のアイディアなど、タグボート側もお客様から日ごろ感じていらっしゃるアートのご意見を聞くことができ、今後の励みになりました。ツアーに参加してくださった皆さま、本当にありがとうございます。
今後もタグボートでは、アートの意見交換の場を持てるようなアートツアーを企画して行きたいと思います。企画してほしいツアー、アイディアなどのご意見をいただけましたら幸いです。
<広本より>
マーク・ロスコ、フランク・ステラなどアメリカの美術については、話しなれていたのですが、今回のトリエンナーレは名前も知らない作家ばかり。一夜漬けも間に合わず、高松次郎さんの言葉をお借りしてスタートしました。前の週のNHK新日曜美術館の特集をご覧になっていた方も多く、かえって教えていただくこともあったりして...
昔の修学旅行ならいざしらず、30人近くの大人が揃って行動するのは無理な話、知り合ったばかりの方同士が何気なくおしゃべりしながら楽しそうにしていらっしゃる姿があちこちに見られ、自由見学という言葉を思い出しました。忘れてましたが、やっぱりアートは自由に見るものだと思います。
懇親会も楽しく和やかにあっという間に2時間が・・・ 初めてお目にかかる良いお客さま、素敵なお客様に囲まれて、私はじめスタッフにとって幸せな1日でした。ご参加有難うございました。
広本伸幸
投稿者 TAGBOAT : 19:51
2005年10月26日
横浜美術館 雪山行二館長インタビュー
横浜美術館雪山行二(ゆきやまこうじ)館長からお話をうかがいました。
2005年10月12日 横浜美術館にて
雪山さんは、中学・高校・大学の先輩です。
後輩のように見えるのが残念。
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―まずは、今回の横浜トリエンナーレですが、どうご覧になりましたか。
今回のトリエンナーレでショックだったのは、これは前回も同じでしたが、いわゆる絵画というものがなくなってしまったことですね。絵画はルネッサンス以来諸々の造形芸術のなかでも「王」であったのに、もう絵画らしい絵画というのはなくなってしまうのかなあ、とそんな寂しい感じがしました。
―マーケットでは、絵画はまだ主流で動いていますが、展覧会になると、インスタレーション作品が出品されることが多いようですね。個々の作品ではいかがですか。
南アフリカ出身のロビン・ロードの「シャワー」が好きです。米田知子さんもよかった。高嶺格さんは手の込んだものをやっているなあ、とちょっと驚いた。あと、ブラジル出身のトニーコ・レモス・アウアッドのカーペットの綿毛をかき集めたオブジェも面白いですね。
それにしても、中国パワーには圧倒されました。どこの国の作家もある程度美の規範のようなものをひきずっていると思うのだけれど、中国の作品はただただすごいね。知的な束縛がなくて自由であるように感じました。
―今年のトリエンナーレは、開幕まで一年を切ってからのディレクター交替劇により、川俣正さんがディレクターになられたわけですが、雪山さんは川俣さんをどう評価なさいますか。
私はなぜか横浜トリエンナーレのディレクター選考委員会の委員の一人だったんですよ。実は当初から川俣さんを推していました。アーティストとしても面白いし、なにか型破りなトリエンナーレになるのではないかな、と期待していました。
去年の暮れにディレクターを引き受けてくれたのですが、開幕まで一年を切っている時期に引き受けるのは大冒険です。自分は貧乏に慣れているから、お金はなくてもなんとかなる、と言ってくれました。ボランティアを使うことにも慣れていますし、市民参加活動に力も入れてくれてますね。作品もオープンまでには出来上がらないかも、なんて言っていたけれど、ほぼすべて出来上がっているし、短い期間で本当によくやったじゃないですか。前回みたいにビッグネームはないし、塩田千春さんのようなインパクトの強い作品がないのはさびしい感じがするけれども。まあいいんじゃないですか。ただ、大規模なトリエンナーレをひとつのテーマでくくるのは無理があるかと思います。
トリエンナーレで面白い作品を見つけて、今後そのアーティストたちがどうなっていくか、追ってみるのもいいかもしれないですね。私は前回のトリエンナーレで塩田さんを見てすっかり気に入りまして、それからは彼女が日本で展覧会をやるといつも見に行っていますよ。
―横浜美術館からは天野太郎さんがトリエンナーレのキュレーターとして活躍されていますね。
うちからは、天野君ともう一人の学芸員、木村さんの二人が今年1年間トリエンナーレで仕事をしてもらっています。天野君は優秀ですね。時代感覚は抜きん出て鋭いものがありますよ。
ただ、美術館としてはトリエンナーレの一部として機能するのではなく、ちょっと離れたところからトリエンナーレに協力する、それも重要な役割ではないかな、と思っています。
―横浜美術館では現在、李禹煥展を開催していらっしゃいますね。
李禹煥は大衆的な意味で人気がないことはわかっていたけれどもね。それに比べてトリエンナーレは若い人がやたら多い、カップルが多いよ(笑)。なぜか李禹煥展はカップルが少ない。作品の前でいちゃいちゃしていたら李先生に怒られそうな雰囲気だ。でも、李禹煥展にいらした方は、皆さんすごく感動して帰って行かれます。トリエンナーレと横浜美術館の両方を合わせてみて欲しいですね。横浜美術館の後にトリエンナーレを見ていただければ、現代美術がどういう方向へ動き出しているのかがわかると思いますよ。
―最後になりますが、今回始まったばかりなのに気が早いのですが、次のトリエンナーレに期待することを教えてください。
今回は家族連れで来ても楽しめるトリエンナーレだと思うけれども、今後すべてがただ楽しい、面白いという祭典にはなってほしくないですね。何でもかんでもアートだというわけではない。面白いことは面白いで結構。でも果たして、その作品が本当に人を感動させる力があるのか、面白いけれどもだからどうなのか? と考えてみる必要はあると思います。「参加型アート」の将来も気になるところです。
―本日はお忙しいところ有難う御座いました。
>> 横浜美術館HP
投稿者 TAGBOAT : 15:09
2005年10月14日
横浜トリエンナーレ参加作家 ピアニスト 向井山朋子 来日インタビュー
9月27日、プレス内覧会にて。「for you」の作品発表をする向井山朋子さん。
ふ頭前。マスコミからインタビューを受ける。
そうです。本日9月27日のオークションから始まる私の作品“for you”の作品発表のため、3日前に来日しました。明日オランダに戻り、コンサート前日となる10月25日にまた来日する予定です。
―今回はただお一人の落札者と共有する一夜きりのコンサートのために、会場のホールを貸しきり、ご自身もオランダと日本を往復され、準備が大掛かりですね。
そうですね、会場は横浜みなとみらいホールといって2020人は収容できるとても大きなホールです。きちんとライトアップされ、最高のピアノが用意され、クロークが3名、チケット切りが2名、シャンパンバーでは、シャンパンのサービスもあります。私自身もアムステルダムからコンサートのためだけに来日するのです。一夜に1000万円はかかっているでしょうか。
それが全部、たった一人の観客の15分間の演奏会のためだなんて、贅沢ですよね。私は今回の横浜トリエンナーレにおけるこのコンサートは「至福のプロジェクト」であると考えています。
―確かに至福ですね。オークションで最高値落札者一名のみが“for you”を享受することができるのですよね。
ええ。お金の話で恐縮なんですけれど、お金を払っていただいても、私の作品の場所や空間はその時にしか存在しないもので、物質的に残るものではありません。また、一対一の関係でないと成立しませんので、自分の体験を他者と共有することもできません。評論家や録音といったコンサートの証人となるものもありません。そうなると、購入者は何に支払いをしているのでしょうか。演奏に対してでしょうか、贅沢さを得るためでしょうか、好奇心のためでしょうか。購入者なしには作品も成立しないのですから自分自身に支払っているのかもしれませんね。私の作品は、「カネと精神性」、この2つの関係を考えざるを得ない仕掛けになっていると思います。
―大変興味深いアプローチだと思いますが、このシリーズをはじめたきっかけは何だったのでしょうか。
友人のアコーディオン奏者の話からヒントを得ました。彼が、スカンジナビアでソロ・コンサートを開いた日が、運悪く大きなサッカーの試合と重なってしまったんですね。開演になって舞台に上がってみると、観客は女性たった一人。そこで彼は舞台から降りて行き、握手をして自己紹介をし、彼女の選んだ作品を演奏して、最後には晩御飯を一緒にたべたんですって。音楽を媒介にした、従来とは違う観客とのコミュニケーションの形だと思いました。
―ご友人の話がヒントになったのですね。
はい。作家というのは誰しも自らの作品を「誰のため」に制作しているのかと考えることがあると思います。それを追及するために始めたのが“for you”のプロジェクトです。“for you”という作品は、観客が瞬時に、そのコンサートを成立させているのは自分である、とはっきり理解できるしかけになっています。
―そこは従来のコンサートとは違う点ですね。
そうですね。演奏者と空間、そしてそれを受ける観客がいないと“for you”は成立しない。受け手の存在が、作品成立のためになくてはならない、非常に重要な要素なのです。さらに、観客はその場所に座っている自分自身の内的体験の歴史、それまで培ってきた感受性がコンサートを成立させているという事実とも対峙することになるのです。また、演奏者にとっても誰のためにやるのか、非常にわかりやすい。
―お客様の反応はいかがですか。
人によります。泣かれたり、動けなくなってしまうお客様もいます。
―向井山さんも?
いえ、私は客観的でいられるように心がけています。出来るだけよい演奏をする、それだけです。お客様のイメージにあわせたり、それによって演奏が左右されることのないように常に客観的でいるようにしています。
あるとき、死期が近い方が聴きにくるというので、できるだけ明るい曲を演奏してください、と頼まれたことがあります。その晩、すごく考えたのですが、結局そういった事情は考えずに演奏することにしました。ただ、演奏後に私はその方の夜やその方の帰りの旅路をずっと想像してしまいました。その時の心情や意味合いというのは、演奏前に決めるものではなく演奏後についてくるものだと思っています。 100人の観客がいれば100通りの感動があるのですから。そして、この“for you”ではそれを分かち合えるのは演奏者である私とその演奏を受ける人だけなのです。
―そういった“for you”の空間をつくるものは、何であると思いますか。
・・・・・。 「力」であると思います。これはその場で感じるものだと思いますが。舞台に降ってくるような、私と観客の巻き起こす力である、としか言いようがありません。
インタビューを終えて
相手の目をじっと見つめ、ゆっくりと、丁寧に答えてくださいました。落ち着いたしっとりした風情のなかにも、作品や自身の演奏、観客に対する真摯な思いや信念が伝わり、熱のこもるインタビューになりました。
最終落札者しか味わえない横浜トリエンナーレ2005作品の“for you”。もし私がその「you」であるなら、一体どのようなコンサートができあがるのだろう!? そういった想像は結局自分への興味や期待であったりするのかもしれません。
こうしている今もネット・オークション上では、チケットの値段があがっています。思わずどんなコンサートが展開されるのだろう、と期待がふくらみますが、それは落札者と向井山さんにしかわからないことなのですよね。
<2005年9月27日 横浜トリエンナーレ2005会場となる横浜市山下ふ頭3号にて>
投稿者 TAGBOAT : 11:34 | コメント (0)
2005年10月07日
向井山朋子“for you” -ピアノリサイタル

向井山朋子 “for you”
“for you”の観客はたった一人。ピアニストにとっても、観客にとっても、一夜限りの夢のようなリサイタルです。誰も介在しないその空間で、そこで起きたことを共有できるのは、向井山朋子とたった一人の観客だけです。観客はそこで、何を見、何を聴き、何を感じるのでしょうか。
今回発表される“for you”のチケットはたった1枚です。チケットを手にした一人の観客のために、向井山朋子は、アムステルダムから片道12時間をかけて横浜へやってきます。総客席数2020席の横浜みなとみらいの巨大ホールの照明が灯り、扉は開かれ、エレベーターが動き、給仕がクロークやシャンパンバーで一人の観客のためにすべては用意されています。そして、その人のために特別につくられたプログラムを、ピアニストが一人の観客のために15分間弾き、幕は閉じられます。このコンサートはレコーディングによって記録され、世界でたった一つの記憶のオブジェとしてマスターテープはガラスのオブジェにパッケージされて観客に手渡されます。
このプロジェクトのチケットは、クジやルーレットのように運によって決められるのではなく、「場」を共感したい人々の自由意志によって一定期間内に取り決められます。現代社会における1つの象徴として、このチケットは、国籍、年齢を問わず、さまざまな観客が参加できるオークション形式によって、価格が取り決められます。“for you”プロジェクトは、オープニングでの向井山朋子本人によるステートメントの発表を皮切りに、オークションが開始され、落札されてから演奏が行なわれるまでの、一連のプロセスが横浜トリエンナーレ2005における向井山朋子の作品発表となります。作品価格は、受け手である観客が決める権利を持っています。オークションが行なわれている間は、アーティストは完全に受け手となり、たった一人の観客からの指名をアムステルダムで待っています。そして、幸運にもこのたった一枚のチケットを手に入れることのできた観客は、当日本番に、ピアニストが待つみなとみらいのコンサートホールに入ったとき、観客と演奏者の立場は逆転し、観客が完全に受け手となってすべてを享受する立場になります。「すべてを自分で決め、すべてを自分で受け止める」というシンプルな命題、今回のトリエンナーレのテーマでもある「日常からの跳躍」が向井山朋子からのメッセージ“for you”なのです。そして、プロセスの中でチケットを落札できなかった人々も、入札で自らの意志を示した時点ですでに作品に関わって参加しているのです。
『あらゆるものの価値が「カネ」で定められてしまう現代、「あなた」がチケットにつける値段は、何に対してつけられる数字なのでしょうか。』
-向井山朋子
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2005年10月26日(水)20:00演奏開始。19:30 までにご 来場ください。 |
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横浜みなとみらいホール 大ホール(2020席!) 〒220-0012 横浜市西区みなとみらい2-3-6 TEL:045-682-2020 FAX:045-682-2023 みなとみらい駅(東急東横線直通みなとみらい線)下車、 「クイーンズスクエア横浜連絡口」より徒歩3分 http://www.city.yokohama.jp/me/mmhall/ |
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www.mukaiyamatomoko.com 入札締切日は2005年10月19日(水)20:00です。 |
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(平日11:00-18:00) 03-5501-5617 竹田、高村 hitoshitakeda@hotmail.com |
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投稿者 TAGBOAT : 20:19 | コメント (0)
タグボート・アートツアーレポート
お楽しみに!
投稿者 TAGBOAT : 17:41
2005年10月05日
graf 豊島秀樹さん インタビュー

熱心に、わかりやすいようにと、心を砕いてくれます。

(*1)豊嶋氏は8月21日までのソウルRodin Gallery での展覧会撤収と、9月8日から始まるNYのMarianne Boesky Gallery での展覧会の準備で国外にいたのです。

9月21日、オープン1週間前。制作真っ只中。ふ頭の高さ8m!
天井いっぱいに建てられた小屋のサイズに圧倒されます。

問題の9月27日、開催日前日。 内覧会でした。
「あれ?シャッター。閉まってる?」

9月27日には間に合わなかったようですね。
この日の昼、graf media gm : YOKOHAMAにて豊嶋さんに遭遇。9月26日から徹夜作業でまだ制作中とのこと。目が真っ赤でした。
(*2)2005年6月17日~8月21日 「Yoshimoto NARA From the Depth of My Drawer」Rodin Gallery(韓国・ソウル)で発表した小屋の呼称。横浜トリエンナーレまでは奈良美智+graf史上、最大サイズの小屋だった。Web site:
http://www.leeum.org/
html/intro.asp
(*3)2005年9月8日~10月8日「Yoshimoto NARA」Marianne Boesky Gallery(米国・NY)
Web site:
www.marianneboesky
gallery.com/index2.php

「いいな~!」という声が聞こえてきそう?豊嶋さんの携帯。奈良さん直筆着せ替え付。

(*4)http://www.graf-d3.com/yokohama/
(*5)ワーク・イン・プログレス:展覧会場では常に何かが行なわれています。何度か会場を訪れるたびに展示作品も変化していることでしょう。成長する作品。時間、コミュニティーとの関わりから作品も変化し、変遷していく可変的な物事として作品を考えます。(横浜トリエンナーレHPのディレクターズ メッセージより抜粋)

grafの皆さん。その日の作業を終えて一杯。お疲れ様でした。
(*6)2006年7月からは、青森の弘前の煉瓦倉庫にて「A to Z」展開催予定。奈良美智+grafがこれまでに制作してきた小屋が一同に集まります。
◇grafの活動詳細:
YOSHITOMO NARA+grafのHP:
http://www.harappa-h.org/AtoZ/
grafのHP:http://www.graf-d3.com/
奈良さんは何度か大阪のgrafのギャラリーに遊びに来てくれていて、それでgrafのギャラリーで個展を開いてもらうことになったんです。その時に奈良さんがgrafのみんなと制作したら面白いんじゃないかな、と言ってくれてその個展で一緒に制作をしたんですね。それがはじまりです。
Q:一緒にやりたいと思ったのは、どうしてでしょうか。
奈良さんが、僕らの工場を見たときに一緒にやりたいと。それで僕も奈良さんのアトリエを見にいったんです。奈良さんて「奈良美智」って名前がどーんとあるし、今までやってきていることも違うし、どうしたらいいかわかんないじゃないですか。でもお互いのアトリエをみた時に、表面的な部分では全然違うかもしれないけど根っこの部分にすごい近いところがあるなあと感じて、それで一緒にやりたい、と。
Q:今回の横浜トリエンナーレでは9つの小屋をたてると聞きましたが、進み具合はいかがですか?
いや~、全然進んでない。最初のプランでは8月の前半までに外観を全部作っちゃおう、8月後半には内部のディティールにこだわっていこうって予定をたてていたんです。でも帰国してみたら(*1)、まだ作っては駄目、という通達が待っていただけだった(笑)。
Q:それはどうして?
建築の法律の問題で引っかかっています。思いのほか、条件が厳しい。絵的には、倉庫の中で僕らの小屋の展示をするってすごくいいんだけれど、法律では倉庫の改造計画という扱いになってしまって。とにかく規制が多い。 キュレーターも美術館の人だから倉庫での展覧会なんて初めてだし、そういう建築の規制は予想できないですよね。奈良さんとやっている小屋プロジェクトの中では、今回が一番大変かもしれない。まあそうはいってもやんなきゃいけないし、多分27日にはできる!楽観的です(実際には30日までかかりました・・・)。
Q:開催まであと2週間ですか、厳しいですね。
いや、いつもはもっと短いんですよ。たいてい美術館の展示替の期間は、1週間から10日間くらいしかとれないので。
Q:いつもの奈良さんとの制作は、どんなプロセスで進むのですか?
まず奈良さんと一緒に会場の下見に行きます。やっぱり現場を見ないとイメージがわかない。現場を見て2人でやりとりしながらラフなイメージを作る。あとは、ご当地モノのネタも必ずリサーチして、廃材が入手できそうな場所を探して、材料の手配まで頼んで帰ってきます。 大阪に戻ってからは、現場で出てきたラフなイメージを大工の野澤くん(graf)にスケッチを描いて説明する。そうは言っても廃材が揃うかわからないし、設計通りに立てられるものでもないので、事前にできるのは心の準備くらいなんだけど(笑)。 でも作業に入ってからは、直感で作っている感じです。仕上げとか微妙な寸法なんかは作りながらどんどん変えていっちゃう。小屋の傾斜とか勾配も感覚です。長い棒をもって「もうちょっと上、もうちょっと上、そこ!」みたいな(笑)。 あるライターの方に‘絵画的な空間のつくり方’と言われました。建築は最初に図面があってそれに近づいていく作業だと思うけど、僕らがやっていることは途中で変えたりやり直したり、どちらかといえば絵画を描いていくのに近いのかな。
Q:図面通りにはいかないのですね。
対外的な必要性もあるので一応図面は作るけど、僕らが本気で図面を引くのは実は解体の時なんですよ。あとで再現できるように、解体した小屋のひとつひとつのピースに番号を打っていく。ソウルハウス(*2)で2000ピースくらいはあるんじゃないかなあ。
Q:そんなにピースがあるのでは、朝から晩までハードな作業が続くのでは?
いやいや、最初はゆったりめにやってますよ。ただ、最後は朝から夜中までずっと作業している(笑)。
そうそう、横浜に来る前にNYのMarianne Boesky Gallery(*3)で奈良さんの個展があってそこでも小屋を作ってきました。ギャラリーの白い壁に囲まれた空間にまっ白い小屋(Chelsea White House)を作ったのですが、途中でギャラリーを紺色の空間にしたら夜の雰囲気になるし、そこに明かりが灯っている白い小屋があったらすごくいいなあ、とか言い出して。結局ギャラリーの人にお願いしてギャラリーの壁から天井まで全部紺色に塗り替えました。ペンキ150リットルくらい使った。出来上がったのはもう本当にギリギリでした。でも評判はよかったです。
Q:奈良さんとの作品は、展覧会ごとにどんどん規模が大掛かりになってきているようですね。
そうなんですよ。今思い出すと、奈良さんとのはじめの展示なんてすごいちゃっちかった。壁たてて、ベニヤを敷いて、ガムテープで貼っただけ、みたいな作品だった。この2年でやたらと凝るようになったなあ。材料も最初は何でもよかったのに、だんだん古い家の素材とか、そのモノの歴史があるようなものがいい、とか言い出して、美術館担当の人を悩ませるように(笑)。
Q:材料にこだわりがあるんですね。
その辺で売っているものではないから調達が難しいけれど、廃材は素材の裏にその土地や場所のストーリーが宿っているのがいいと思う。
今回は地元で探してもらったものと昨年大阪でやった展示で使った廃材を使いまわしてます。台湾やソウルの展覧会の時はアジア的というか規制がゆるいのか廃材も多くて、小屋20軒は建てられるくらい集まった。それでつい小屋のサイズも大きくなっちゃったんですけど(笑)。
Q:grafさんは今回、カフェもプロデュースされていますね。
最初に横トリ(横浜トリエンナーレ略称)の関連企画として、アーティストたちの受け皿になるような、幅広い人たちとネットワークが作っていけるたまり場的なものが欲しいと頼まれたので。大阪で僕らがやってるgraf media gm(*4)みたいな感じがいいということで、川俣さん(総合ディレクター)や芹沢さん(キュレーター)らと相談しながら作りました。ソファなどはもらってきた家具のリサイクルで、単管を使った工事現場みたいな感じの内装デザインは、“ワーク・イン・プログレス(*5)”という今回の横トリのコンセプトや会場の雰囲気にリンクさせてます。
Q:grafさんの仕事のフィールドは幅広いのですね。
grafはいろんな奴がいるから幅広くなるんだと思う。たとえば、店を出したいという人がgrafに内装を頼んで店を出すことになったら、今度は広告もgrafにグラフィックやる奴がいるし、シェフもいるからメニューも一緒に考えることができる。次に家具をいれたいとか絵がほしい、となったらうちのショールームやギャラリーから家具や絵も、ということになっていって。ほんとに戦略的なことはなにもなくて、導かれるままに活動して今のgrafがあると思います(*6)。
Q:奈良美智+grafの活動としては今後どのような予定がありますか?
横トリの後には、12月に大阪のgraf media gmでの展示、来年の1月~2月にロンドン、タイでの制作を予定しています。(*6)
Q:最後に今回のトリエンナーレの見所をあげていただけますか。
う~ん・・・、景色がいい!横浜でロマンチックな気分に浸りに来てください。カップルで来てくれると一番いいかもしれない、うん、是非カップルでいらしてください(笑)。 横トリ自体も参加型の展示やイベントが沢山あるし、日々変わっていくかんじがあって楽しめると思います。
本日は本当にありがとうございました。
インタビューを終えて

超多忙にも関わらずじっくりとインタビューに答えてくれた豊嶋さん。気さくな人柄を反映するかのようにインタビューの途中、豊嶋さんの周りにはタイ人ミュージシャンやトリエンナーレ参加作家ら友人知人が沢山集まってきました。小屋の制作のためキャラバン隊のごとく各地を移動しているとのことですが、行く先々の世界中が自分のフィールドだ、という頼もしさを感じました。作品に託して日常と非日常を繋いでいきたい、それを自然体でどんどん実現していくgrafが、次のプロジェクトでは何をみせてくれるのかとても楽しみです。