2005年10月05日

graf 豊島秀樹さん インタビュー

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大阪を拠点に家具、デザイン、アート、食などにいたる「暮らしのための構造」を考え活動を続けるクリエイティブ・ユニット、graf。彼らが手掛けたカフェや店舗、企画制作したプロジェクトは国内外にあり、現在も多様なアイディアを発信し続けています。また、奈良美智+grafとして知られているプロジェクトでは、展示空間としての小屋を奈良美智と共同で制作しています。そのコラボレーション作品は、2003年12月のgraf media gm(大阪)を皮切りに東京(原美術館開催時レポート)、横浜、青森、台北、ソウル、NYなど様々な都市で現在までに12回開催されました。今回の横浜トリエンナーレで奈良美智+grafとしての出品は13回目になります。一体横浜トリエンナーレでgrafは、奈良氏とどのような空間をコラボレートするのでしょう? 今年の秋はgrafの活動が、各媒体で大注目されましたね。そこで、タグボートではgrafで企画・制作担当をしていらっしゃる豊嶋秀樹さんからお話を伺いました。




熱心に、わかりやすいようにと、心を砕いてくれます。


(*1)豊嶋氏は8月21日までのソウルRodin Gallery での展覧会撤収と、9月8日から始まるNYのMarianne Boesky Gallery での展覧会の準備で国外にいたのです。


9月21日、オープン1週間前。制作真っ只中。ふ頭の高さ8m!
天井いっぱいに建てられた小屋のサイズに圧倒されます。


問題の9月27日、開催日前日。 内覧会でした。
「あれ?シャッター。閉まってる?」


9月27日には間に合わなかったようですね。
この日の昼、graf media gm : YOKOHAMAにて豊嶋さんに遭遇。9月26日から徹夜作業でまだ制作中とのこと。目が真っ赤でした。

(*2)2005年6月17日~8月21日 「Yoshimoto NARA From the Depth of My Drawer」Rodin Gallery(韓国・ソウル)で発表した小屋の呼称。横浜トリエンナーレまでは奈良美智+graf史上、最大サイズの小屋だった。Web site:
http://www.leeum.org/
html/intro.asp

(*3)2005年9月8日~10月8日「Yoshimoto NARA」Marianne Boesky Gallery(米国・NY)
Web site:
www.marianneboesky
gallery.com/index2.php


「いいな~!」という声が聞こえてきそう?豊嶋さんの携帯。奈良さん直筆着せ替え付。

(*4)http://www.graf-d3.com/yokohama/

(*5)ワーク・イン・プログレス:展覧会場では常に何かが行なわれています。何度か会場を訪れるたびに展示作品も変化していることでしょう。成長する作品。時間、コミュニティーとの関わりから作品も変化し、変遷していく可変的な物事として作品を考えます。(横浜トリエンナーレHPのディレクターズ メッセージより抜粋)


grafの皆さん。その日の作業を終えて一杯。お疲れ様でした。

(*6)2006年7月からは、青森の弘前の煉瓦倉庫にて「A to Z」展開催予定。奈良美智+grafがこれまでに制作してきた小屋が一同に集まります。

◇grafの活動詳細:
YOSHITOMO NARA+grafのHP:
http://www.harappa-h.org/AtoZ/
grafのHP:http://www.graf-d3.com/


Q:今回の横浜トリエンナーレでは、奈良美智+grafとして出品されていますね。そもそも奈良さんとコラボレーションのはじまりはどうだったのですか。

奈良さんは何度か大阪のgrafのギャラリーに遊びに来てくれていて、それでgrafのギャラリーで個展を開いてもらうことになったんです。その時に奈良さんがgrafのみんなと制作したら面白いんじゃないかな、と言ってくれてその個展で一緒に制作をしたんですね。それがはじまりです。

Q:一緒にやりたいと思ったのは、どうしてでしょうか。

奈良さんが、僕らの工場を見たときに一緒にやりたいと。それで僕も奈良さんのアトリエを見にいったんです。奈良さんて「奈良美智」って名前がどーんとあるし、今までやってきていることも違うし、どうしたらいいかわかんないじゃないですか。でもお互いのアトリエをみた時に、表面的な部分では全然違うかもしれないけど根っこの部分にすごい近いところがあるなあと感じて、それで一緒にやりたい、と。

Q:今回の横浜トリエンナーレでは9つの小屋をたてると聞きましたが、進み具合はいかがですか?

いや~、全然進んでない。最初のプランでは8月の前半までに外観を全部作っちゃおう、8月後半には内部のディティールにこだわっていこうって予定をたてていたんです。でも帰国してみたら(*1)、まだ作っては駄目、という通達が待っていただけだった(笑)。

Q:それはどうして?

建築の法律の問題で引っかかっています。思いのほか、条件が厳しい。絵的には、倉庫の中で僕らの小屋の展示をするってすごくいいんだけれど、法律では倉庫の改造計画という扱いになってしまって。とにかく規制が多い。 キュレーターも美術館の人だから倉庫での展覧会なんて初めてだし、そういう建築の規制は予想できないですよね。奈良さんとやっている小屋プロジェクトの中では、今回が一番大変かもしれない。まあそうはいってもやんなきゃいけないし、多分27日にはできる!楽観的です(実際には30日までかかりました・・・)。

Q:開催まであと2週間ですか、厳しいですね。

いや、いつもはもっと短いんですよ。たいてい美術館の展示替の期間は、1週間から10日間くらいしかとれないので。

Q:いつもの奈良さんとの制作は、どんなプロセスで進むのですか?

まず奈良さんと一緒に会場の下見に行きます。やっぱり現場を見ないとイメージがわかない。現場を見て2人でやりとりしながらラフなイメージを作る。あとは、ご当地モノのネタも必ずリサーチして、廃材が入手できそうな場所を探して、材料の手配まで頼んで帰ってきます。 大阪に戻ってからは、現場で出てきたラフなイメージを大工の野澤くん(graf)にスケッチを描いて説明する。そうは言っても廃材が揃うかわからないし、設計通りに立てられるものでもないので、事前にできるのは心の準備くらいなんだけど(笑)。 でも作業に入ってからは、直感で作っている感じです。仕上げとか微妙な寸法なんかは作りながらどんどん変えていっちゃう。小屋の傾斜とか勾配も感覚です。長い棒をもって「もうちょっと上、もうちょっと上、そこ!」みたいな(笑)。 あるライターの方に‘絵画的な空間のつくり方’と言われました。建築は最初に図面があってそれに近づいていく作業だと思うけど、僕らがやっていることは途中で変えたりやり直したり、どちらかといえば絵画を描いていくのに近いのかな。

Q:図面通りにはいかないのですね。

対外的な必要性もあるので一応図面は作るけど、僕らが本気で図面を引くのは実は解体の時なんですよ。あとで再現できるように、解体した小屋のひとつひとつのピースに番号を打っていく。ソウルハウス(*2)で2000ピースくらいはあるんじゃないかなあ。

Q:そんなにピースがあるのでは、朝から晩までハードな作業が続くのでは?

いやいや、最初はゆったりめにやってますよ。ただ、最後は朝から夜中までずっと作業している(笑)。
そうそう、横浜に来る前にNYのMarianne Boesky Gallery(*3)で奈良さんの個展があってそこでも小屋を作ってきました。ギャラリーの白い壁に囲まれた空間にまっ白い小屋(Chelsea White House)を作ったのですが、途中でギャラリーを紺色の空間にしたら夜の雰囲気になるし、そこに明かりが灯っている白い小屋があったらすごくいいなあ、とか言い出して。結局ギャラリーの人にお願いしてギャラリーの壁から天井まで全部紺色に塗り替えました。ペンキ150リットルくらい使った。出来上がったのはもう本当にギリギリでした。でも評判はよかったです。

Q:奈良さんとの作品は、展覧会ごとにどんどん規模が大掛かりになってきているようですね。

そうなんですよ。今思い出すと、奈良さんとのはじめの展示なんてすごいちゃっちかった。壁たてて、ベニヤを敷いて、ガムテープで貼っただけ、みたいな作品だった。この2年でやたらと凝るようになったなあ。材料も最初は何でもよかったのに、だんだん古い家の素材とか、そのモノの歴史があるようなものがいい、とか言い出して、美術館担当の人を悩ませるように(笑)。

Q:材料にこだわりがあるんですね。

その辺で売っているものではないから調達が難しいけれど、廃材は素材の裏にその土地や場所のストーリーが宿っているのがいいと思う。
今回は地元で探してもらったものと昨年大阪でやった展示で使った廃材を使いまわしてます。台湾やソウルの展覧会の時はアジア的というか規制がゆるいのか廃材も多くて、小屋20軒は建てられるくらい集まった。それでつい小屋のサイズも大きくなっちゃったんですけど(笑)。

Q:grafさんは今回、カフェもプロデュースされていますね。

最初に横トリ(横浜トリエンナーレ略称)の関連企画として、アーティストたちの受け皿になるような、幅広い人たちとネットワークが作っていけるたまり場的なものが欲しいと頼まれたので。大阪で僕らがやってるgraf media gm(*4)みたいな感じがいいということで、川俣さん(総合ディレクター)や芹沢さん(キュレーター)らと相談しながら作りました。ソファなどはもらってきた家具のリサイクルで、単管を使った工事現場みたいな感じの内装デザインは、“ワーク・イン・プログレス(*5)”という今回の横トリのコンセプトや会場の雰囲気にリンクさせてます。

Q:grafさんの仕事のフィールドは幅広いのですね。

grafはいろんな奴がいるから幅広くなるんだと思う。たとえば、店を出したいという人がgrafに内装を頼んで店を出すことになったら、今度は広告もgrafにグラフィックやる奴がいるし、シェフもいるからメニューも一緒に考えることができる。次に家具をいれたいとか絵がほしい、となったらうちのショールームやギャラリーから家具や絵も、ということになっていって。ほんとに戦略的なことはなにもなくて、導かれるままに活動して今のgrafがあると思います(*6)。

Q:奈良美智+grafの活動としては今後どのような予定がありますか?

横トリの後には、12月に大阪のgraf media gmでの展示、来年の1月~2月にロンドン、タイでの制作を予定しています。(*6)

Q:最後に今回のトリエンナーレの見所をあげていただけますか。

う~ん・・・、景色がいい!横浜でロマンチックな気分に浸りに来てください。カップルで来てくれると一番いいかもしれない、うん、是非カップルでいらしてください(笑)。 横トリ自体も参加型の展示やイベントが沢山あるし、日々変わっていくかんじがあって楽しめると思います。

本日は本当にありがとうございました。


インタビューを終えて


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超多忙にも関わらずじっくりとインタビューに答えてくれた豊嶋さん。気さくな人柄を反映するかのようにインタビューの途中、豊嶋さんの周りにはタイ人ミュージシャンやトリエンナーレ参加作家ら友人知人が沢山集まってきました。小屋の制作のためキャラバン隊のごとく各地を移動しているとのことですが、行く先々の世界中が自分のフィールドだ、という頼もしさを感じました。作品に託して日常と非日常を繋いでいきたい、それを自然体でどんどん実現していくgrafが、次のプロジェクトでは何をみせてくれるのかとても楽しみです。

投稿者 TAGBOAT : 11:42 | コメント (0)