2005年10月26日

横浜美術館 雪山行二館長インタビュー

横浜美術館雪山行二(ゆきやまこうじ)館長からお話をうかがいました。

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   2005年10月12日 横浜美術館にて

   雪山さんは、中学・高校・大学の先輩です。
   後輩のように見えるのが残念。

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―まずは、今回の横浜トリエンナーレですが、どうご覧になりましたか。

今回のトリエンナーレでショックだったのは、これは前回も同じでしたが、いわゆる絵画というものがなくなってしまったことですね。絵画はルネッサンス以来諸々の造形芸術のなかでも「王」であったのに、もう絵画らしい絵画というのはなくなってしまうのかなあ、とそんな寂しい感じがしました。

―マーケットでは、絵画はまだ主流で動いていますが、展覧会になると、インスタレーション作品が出品されることが多いようですね。個々の作品ではいかがですか。

南アフリカ出身のロビン・ロードの「シャワー」が好きです。米田知子さんもよかった。高嶺格さんは手の込んだものをやっているなあ、とちょっと驚いた。あと、ブラジル出身のトニーコ・レモス・アウアッドのカーペットの綿毛をかき集めたオブジェも面白いですね。
それにしても、中国パワーには圧倒されました。どこの国の作家もある程度美の規範のようなものをひきずっていると思うのだけれど、中国の作品はただただすごいね。知的な束縛がなくて自由であるように感じました。

―今年のトリエンナーレは、開幕まで一年を切ってからのディレクター交替劇により、川俣正さんがディレクターになられたわけですが、雪山さんは川俣さんをどう評価なさいますか。

私はなぜか横浜トリエンナーレのディレクター選考委員会の委員の一人だったんですよ。実は当初から川俣さんを推していました。アーティストとしても面白いし、なにか型破りなトリエンナーレになるのではないかな、と期待していました。
去年の暮れにディレクターを引き受けてくれたのですが、開幕まで一年を切っている時期に引き受けるのは大冒険です。自分は貧乏に慣れているから、お金はなくてもなんとかなる、と言ってくれました。ボランティアを使うことにも慣れていますし、市民参加活動に力も入れてくれてますね。作品もオープンまでには出来上がらないかも、なんて言っていたけれど、ほぼすべて出来上がっているし、短い期間で本当によくやったじゃないですか。前回みたいにビッグネームはないし、塩田千春さんのようなインパクトの強い作品がないのはさびしい感じがするけれども。まあいいんじゃないですか。ただ、大規模なトリエンナーレをひとつのテーマでくくるのは無理があるかと思います。
トリエンナーレで面白い作品を見つけて、今後そのアーティストたちがどうなっていくか、追ってみるのもいいかもしれないですね。私は前回のトリエンナーレで塩田さんを見てすっかり気に入りまして、それからは彼女が日本で展覧会をやるといつも見に行っていますよ。

―横浜美術館からは天野太郎さんがトリエンナーレのキュレーターとして活躍されていますね。

うちからは、天野君ともう一人の学芸員、木村さんの二人が今年1年間トリエンナーレで仕事をしてもらっています。天野君は優秀ですね。時代感覚は抜きん出て鋭いものがありますよ。
ただ、美術館としてはトリエンナーレの一部として機能するのではなく、ちょっと離れたところからトリエンナーレに協力する、それも重要な役割ではないかな、と思っています。

―横浜美術館では現在、李禹煥展を開催していらっしゃいますね。

李禹煥は大衆的な意味で人気がないことはわかっていたけれどもね。それに比べてトリエンナーレは若い人がやたら多い、カップルが多いよ(笑)。なぜか李禹煥展はカップルが少ない。作品の前でいちゃいちゃしていたら李先生に怒られそうな雰囲気だ。でも、李禹煥展にいらした方は、皆さんすごく感動して帰って行かれます。トリエンナーレと横浜美術館の両方を合わせてみて欲しいですね。横浜美術館の後にトリエンナーレを見ていただければ、現代美術がどういう方向へ動き出しているのかがわかると思いますよ。

―最後になりますが、今回始まったばかりなのに気が早いのですが、次のトリエンナーレに期待することを教えてください。

今回は家族連れで来ても楽しめるトリエンナーレだと思うけれども、今後すべてがただ楽しい、面白いという祭典にはなってほしくないですね。何でもかんでもアートだというわけではない。面白いことは面白いで結構。でも果たして、その作品が本当に人を感動させる力があるのか、面白いけれどもだからどうなのか? と考えてみる必要はあると思います。「参加型アート」の将来も気になるところです。

―本日はお忙しいところ有難う御座いました。

>> 横浜美術館HP


投稿者 TAGBOAT : 15:09