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アートのお悩み相談室 ~できてしまったカビや波うち、どうしたらよいのでしょうか?

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文/@GALLERY TAGBOATアートディレクター・広本伸幸

タグボートの記事の中では、比較的地味な内容にもかかわらず熱心にお読みいただいてありがとうございます。 早速あるお客様から、「大事に飾っていた作品にカビが生えてしまったようなのですが」とお便りと写真(※1)がメールで届きました。確かに重症のようです。幸いなことにちょうど別のお仕事をお願いしていた修復家の方の都合がつき、タイミングよく見てくださることになり、作品が届いた翌日、直ぐに処置していただけたのです。

修復のお仕事
 修復家の七つ道具は、綿棒、消しゴム、様々な薬品、面相筆、ルーペ、懐中電灯、カッターナイフ、小さなアイロン、ドライヤー、電動ドライバーなど工具類、他にもメスやピンセット(※2)。白衣にマスク姿はどうみてもお医者さん。酸性、アルカリ性のph度を調べるリトマス試験紙のようなものもあり、小学校の理科の実験を思い出します。
 作業を始める前に、まず全体と各部分の写真撮影、美術館の所蔵品や展覧会出品作品の場合には、コンディション・レポート(作品状態調書)というカルテに相当する書類が作成されます。余談ですが、海外の主要な美術館には必ずコンサベーター(作品保存管理担当者)という職員がいて、作品の物理的な状態を常にチェックし、貸出しする際には、作品と一緒に貸出先までついていきます。クーリエといいますが、エア・カーゴ(貨物便)の飛行機に同乗したり、長距離輸送の美梱車(美術品輸送専用トラック)に乗ったり、かなり大変な仕事です。大規模な展覧会の前は、作品とともに開梱作業、展示作業に立ち会う各国からのクーリエたちが集まって、国際会議のような光景が繰り広げられます。

修復作業
 さて、具体的な修復作業の詳細をお伝えするのは困難ですが、汚れやカビの除去は、乾いた綿棒に消しゴムの細かなカスをつけて汚れを落としていく乾式、溶剤や水溶性の薬剤を綿棒に含ませて汚れを落としていく湿式に分けられます。後者の場合、汚れが落ちた後使用した溶剤や薬剤を中和させる作業と、紙作品の場合、湿らしたために波打ちが生じないようプレスする作業も必要となります。この波打ちですが、しわしわが目立ち始めたらカビが生えてくる可能性大です。波打ち(※3)だけの場合でも修復が出来れば、しておかれることをお奨めします。
 何人かの修復家の方のお手伝いというか、見習いをさせてもらったことがありますが、本当に根気のいる作業だと思いました。黙々と細かな作業に集中するためか、カラオケで憂さ晴らしという人もいるようです。基本的には普段も無口で大人しい人が多いですが。
 長時間の作業の結果、見事に復元、きれいに元通りになったときの満足感は何ものにもかえがたいだろうと思います。汚れやカビを除去され、しわしわもぴんと伸びてまっさらになった作品(※4)は新たな生命を取り戻したといえるでしょう。

 しかし、修復家のお世話にならないよう、作品の展示場所や保管場所には十分配慮してあげてください。また光(紫外線)による褪色は修復不可能ですので、紙作品の場合、季節に合わせてかけかえるのが良いでしょう。キャンバスの油絵は光による褪色の心配はあまりありません。
 お気に入りの作品どうぞ末永く大切にしてあげてください。

 

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  1:カビのできてしまった作品   2:修復家の七つ道具  
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  3:修復前   4:修復後  

2006年07月31日 10:56