アートのある部屋
一生つきあっていける絵を見つけた喜び ~ゲルハルト・リヒター「Ice」

文/安田洋平 坂部 恵さんはカント哲学研究の第一人者で知られる大学教授です。定年を間近に控え、2003年に眺望の良い藤沢の高層マンションに引っ越されました。それにあわせてリビングに合う絵を探していらしたそうです。「生活で一番大事なこのスペースだけには、絶対に気に入ったものを掛けようと決めていました」。そして購入したのがゲルハルト・リヒターの「Ice」でした。
以前、賃貸マンションに住んでいた時分は自由にできなかったけれど、マンションを購入して、自然に絵を一枚欲しいと思われたそうです。リヒターの絵はタグボートのHPで見て一目惚れ。実物も見ず即決しました。「暗さのなかにふっと明るさがあるのがいいと思いました」。
絵を買った後に画集などを見て、学びました。「東ドイツに生まれ、戦争を体験してきた彼の絵は暗さが底に流れている。しかしその中に、光が差すように明るい赤や黄が出てくる」。
あれから3年が経ちますが、毎日眺めていても飽きない。それどころか、段々と最初は気がつかなかったことに気づくのが楽しい、と坂部さん。
リヒターは世界のオークション市場でもトップクラスの画家。版画と言えど、結構なお値段もします。「考えました。でも毎日眺めるモノだから、そこであまりお金をけちることはしたくない。一生付き合うと思えば、高くない」。
お部屋に飾った感じは、「掛けかえシミュレーション」を使って試したりされたそうです。ご趣味は他にも、アンティーク・カメラがお好きで、ローライ、ライカ、ニコン……。数十台をお持ちだとのこと。気が向いたときに江ノ島や鎌倉に撮影に出かけるのが楽しみです。
実はタグボートのアートディレクター広本氏とも浅からぬご縁があります。企業のトップ・エリートにカントを講義するセミナーの講師も務めていた坂部さんは、よく講義合宿の中休みに企業の方々を連れて川村記念美術館にいらっしゃいました。そこで広本氏から美術のことをあれこれ教えてもらうなどして、次第に家族ぐるみのおつきあいをするように(※当時広本氏は同美術館の学芸課長をしていました)。先日もゲルハルト・リヒター展を見に金沢21世紀美術館までご一緒しました。奥様と一緒に展覧会を楽しんだ後、夕食会で語らったのが楽しかったとか。
「いろいろお話を聞きながら、その中で絵の愉しみを深めていけるのが一番の贅沢ですね」。
晴れの日にはバルコニーに面した大きく開けた窓から富士山がよく見えるというこのマンション。リビングで読書をしながら、のんびりと絵に目をやる。それが今坂部さんにとって、一番お気に入りの時間ということです。
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| | バルコニーからの眺望。晴れの日には正面に富士山が見える。 | | 坂部さんと広本氏のツーショット | |
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| | 本棚には哲学書はじめ本がいっぱい。 | | ご自慢のアンティーク・カメラ | |
2006年08月04日 19:48