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Webギャラリーでの発表という新たな領域への参加

  宮崎宏康

宮崎宏康

『逃れようにも逃れられない逃れたくない、一度挟まれたら抜け出せない。そう、彼らは「乳男=THE MILK MEN」。飛び交う乳煙、ミルク飴、辺りに漂う乳の匂い。両脇を乳男に挟みこまれ、完全に逃げ場を失ったあなたは、かつて体験したことの無い快感にただ体を預けるしかない。特濃ミルクキャンデーの甘い香りの中で、乳白色に染まりゆくあなたの脳裏をよぎるのは、懐かしいような甘酸っぱいような曖昧な記憶・・・。』
(「乳男」レポートより抜粋)


[究極の表現形態=路上パフォーマンス]


これまでの私の主な活動は、特殊着ぐるみによる2人組の路上パフォーマンスでした(写真:「乳男=THE MILK MEN」・「筒男=THE PIPE MEN」)。コミュニケーションを図るための機能を装備した特殊着ぐるみを身に纏い、偶然出会った通りすがりの人々を巻き込んでそこにお祭的な「場」をつくりだす、という行為を繰り返していたのです。
それは、我々にとって【つくる→展示する→鑑賞してもらう→感想を聴く→またつくる】という段階的な手間を省き、すべてを瞬時に把握する究極の表現形態だったのです。
またそれは、見る側と見せる側の境界を曖昧にする実験でもありました。


[路上パフォーマンスの限界]


しかし、作品を直接体感し一体となってもらう相手は、通行人の中から抽出された一人とその周辺であり、たった一人のための贅沢な作品であると同時に、より多くの人に体験して欲しいという思いとのジレンマと、時間と体力の限界という壁にぶち当たるのです。


[Webの可能性]


一方、Webギャラリーでの発表という新たな領域への参加は、圧倒的に多数の人々に作品を閲覧してもらう場としての可能性を感じていました。ここでは、文字=2次元の常識に挑む"ひらがな-フィギュア"作品群を、なんとかWeb対応可能な解説付き画像にして登録しました。しかし、立体作品のWeb画像での表現には割り切りも必要です。実際、はじめの一年間は多少のリアクションはあったものの、作品が売れる事はありませんでした。


[YAJ vol.2 Realの再認識]


今回、YAJ vol.2にお誘いをいただき、"ひらがな-フィギュア"作品群をはじめて実際に展示しました。作品に含ませた、観客の動きを誘発する視覚的仕掛けをネタに、偶然出会った通りすがり(入場者に限られますが)の人々に絡み続けるその行為は、まさにパフォーマンスそのものでした。作品を前にした人々の間に自然に会話がはじまり、パフォーマンスで感じたものと同じ場の空気がそこにありました。そんな中、ついに作品を購入してくれる方が現れた時には、必死で冷静さを装いつつも、歓喜に躍りました。そこからのパフォーマンスにも、いつもより多めに拍車がかかります。するとさらに、何人かの方々から今後につながるお話もいただけました。
Webのメリットとはやはり別に、現実の空間でのライブ展示、直接のコミュニケーションこそ大切であることを再認識した濃密な2日間でした。