大学在学中、ロシアの切り絵アニメ作家ユーリ・ノルシュテインとの衝撃的な出会いをきかっけに、アニメーション制作に情熱を注ぐこととなります。
様々な手法で自己表現を模索し、精力的に制作・発表を続けます。ミュージックPVに作品が抜擢されるなど、その才能は瞬く間に開花しました。
また2年間の構想を経て制作された作品『鳥獣剣士』は、2005年に開催され動員数2000万人を超えた愛知万博にて、「EXPO剣道フェスティバル」の一幕に上映され、「切り絵アニメ作家:名取祐一郎」の本領を遺憾なく発揮し、高い評価を受けました。
同作は、文化庁メディア芸術祭審査委員会推薦作品にも選ばれています。
翌年2006年には、単身インド・ネパールへ1年間に及ぶ放浪の旅に出ます。(これまでの生活環境から一変、ヒマラヤ山脈に登り、現地の村に滞在して、異文化で暮らしました。こうした体験を経て、作品にはより豊かな感性と創造性が加わりました。
名取にとって「描く」という行為は、作品を作る上で不可欠なプロセスです。
素材には油画、水彩、日本画、版画、クレヨン、インクなどを用いて、あくまでも手描きで描きます。それらを丁寧にはさみで切りとって、背景画の上に置き、福笑いのように動かして一コマずつ撮影していく事が基本となります。
完成した映像から受ける印象は、まさに「動く絵画」。
物語にはしばしば動物を擬人化して描く表現や、実在の昔話に準えたストーリーが取り入れられています。
そこには、遠野物語に代表される様な民話や昔話など口頭伝承で伝えられて来た土着の文化に興味をもつ作者のこだわりが伺えるでしょう。
「”桃太郎”などの有名な物語よりも埋もれて忘れ去られていく様なささやかな物語をアニメ化する事で光を当て、残していきたい」という思いから、その事をライフワークとして日々取り組み続けています。