制作プロセス 私は制作をする上で「モチーフをどう描けるか。」という点を大切に考えている。 私の絵の多くは油絵の具の厚塗りである。筆致の方向性や絵具の厚み、特に色はよく捏ねて、一つ一つ確認した上で、要素を選んで描いている。絵の中で、嘘があってはならないのだ。 私は人間であり、よく間違えてしまう生き物です。絵を描く過程の中に一度選んだ線や色が間違っていた、と気づくことがあります。 しかし、私はそこに焦点をあてることにしました。私が間違っている、と判断したことに疑いを持ち始めます。描かれているキャンバスの上において、正直に一度見えたものに線や色に間違いはあるのでしょうか?絵画の罠。多くの画家が間違いだと思い込んでいるだけです。私の絵は、自分にとっての正直さを受け入れます。 私は、一度みえた線や色を消すように画面上で描くようなことはしません。私の多くの作品は、痕跡を残すようにして描くようになっております。 何故なら、正直に選んで描いた痕跡を消し去ってしまうということは正解に辿りつくまでの足跡を自身にとって消し去ってしまうことになります。 しつこく一周して、自由な絵に正解なんてあるのでしょうか。画家は答えのないものに正解を出そうとする、お仕事だと私は思います。 絵具の足跡や痕跡を消し去るという行為は、絵を嘘にしてしまいまうことだと私は考えております。私は一枚一枚の絵と向き合います。 私は、普段は写真を使って制作に用いることが多いです。 私はポールセザンヌ、という画家が小さい頃から大好きです。彼は人間の目で自然を描いてきました。セザンヌは、移りゆく時の流れを絵画表現しようとしました。本当に素晴らしいです。 私に大きな影響を与えている画家の1人です。 私は対象が動かない、ほぼ完璧なもので無ければ、描きづらさと違和感を強く覚えてしまいます。体験時間や環境が変わっていくのを嫌がっていることを1つの絵の要素となっております。 私は、自身の内に流れている時間の流れを描くことに絵のまた一つの面白みがあると、考えております。 最後に、 私の実感としてあるモチーフの「美」を疑いつづけた痕跡から鑑賞者は「美」を追い求めている時の私の向き合い続けた時間の流れを感じとって頂ければ幸いです。 ただ、この絵が「すき」というピュアなお考え方でも大いに光栄でございます。2018年の油絵の具で表現している、現代アートなのです。 ありがとうございました。