犬が目を覚ますと、目の前には横たわる犬が見えた。
彼は少し太り気味の腹をもったりと体にのせて気持ちよさそうに眠っている。口にはいい味のしそうな骨があった。不思議なことに、犬は宙に浮いていて、上から彼を眺めていた。身動きは取れず、目の前のいい骨を見つめるほかやることもない。
いけない、涎がたれてしまった。それは彼のおでこに落ちた。その時、犬は自分自身のおでこにも何か違和感を感じたのだった。どういうことだ?真下の犬をもう一度眺める。犬のくせに、仰向けで寝ている。まるで自分が昼寝をする時のようだ。そのまま眺めていると、隣の部屋から自分の名前が呼ばれた。返事をしようとしたが、声が出ない。何度か試して、やっと声が出たと思ったら、目の前の犬も同時にみっともないヘンテコな呻き声を出した。