「石」にまつわる漢字を視覚的、即物的に絵の具を用いて織っていきました。縦組み横組みといった定方向なテクストの流れから文字を解放し、多方向的な流れをもつ言語空間を生み出すことを意図しています。作品のなかで「石」「山」「皮」「川」「少」という漢字が、偏と旁の構造や音節をきっかけに繋がり合います。「山」の頂きから「川」に流され、砕かれ「破」壊され「岩」から「砂」へと変化していく「石」にまつわる膨大な時間をその繋がりのなかで表現しました。絵の具の凹凸から生まれる影や光の反射により文字が浮かび上がり、鑑賞者の立ち位置によって文字は表情を変えます。形と意味、言葉と物質、見ることと読むことの間にある相互的な関係を探求しました。